【解決手段】シェーピングドラム10においてビード部42を支持するビードロックセグメント22の外周側に設けられるシールゴム30において、シールゴム30の外周側に円筒状タイヤ部材40を挟んでビード部42が入り込む凹部31が形成され、凹部31は底面32と底面32からシェーピングドラム10の軸方向両側へ連続するテーパー面33、34とからなり、底面32に対する、シェーピングドラム10の軸方向端部側のテーパー面33の角度が、11°以上24°以下であることを特徴とする。
前記シェーピングドラムの軸方向端部側の前記テーパー面が、軸方向内側の前記テーパー面より軸方向に長い、請求項1又は2に記載のシェーピングドラム用シールゴム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示すように、シールゴム130の凹部131は底面132とそこから連続するテーパー面133、134とで形成されているが、従来のシールゴムではテーパー面133、134が底面132から大きく立ち上がっており、底面132に対するテーパー面133、134の立ち上がりの角度が大きかった。そのため、シェーピングドラムに円筒状タイヤ部材40がセットされ、
図8に示すように円筒状タイヤ部材40の外周側にビード部42がセットされると、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41が凹部131の形状に沿うよう変形して立ち上がってしまっていた。
【0006】
このように円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41が立ち上がっていると、円筒状タイヤ部材40の軸方向中央部が膨張して出来た本体部43にビード部42を押さえ付けるステッチャーをしようとするときに、軸方向外側部分41が邪魔になってビード部42の根元(
図8におけるビード部42の下端部近傍)にステッチングツール50を当てられないという問題があった。また、ステッチングツール50をビード部42の根元に当てようとすると円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41に当たってしまい、軸方向外側部分41に皺が生じるという問題もあった。また、円筒状タイヤ部材40にはカーカスプライが含まれておりカーカスプライには平行に並べられた複数のコードが入っているが、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41が立ち上がることによりコードの並び方が乱れるという問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、ビード部がセットされたときの円筒状タイヤ部材の軸方向外側部分の立ち上がりが小さいシェーピングドラム用シールゴム及びシェーピングドラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のシェーピングドラム用シールゴムは、シェーピングドラムにおいてビード部を支持するビードロックセグメントの外周側に設けられるシールゴムにおいて、前記シールゴムの外周側に円筒状タイヤ部材を挟んで前記ビード部が入り込む凹部が形成され、前記凹部は底面と前記底面から前記シェーピングドラムの軸方向両側へ連続するテーパー面とからなり、前記底面に対する、前記シェーピングドラムの軸方向端部側の前記テーパー面の角度が、11°以上24°以下であることを特徴とする。
【0009】
また、実施形態のシェーピングドラムは、前記シールゴムが前記ビードロックセグメントの外周側に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
実施形態のシールゴム及びシェーピングドラムによれば、前記底面に対する前記シェーピングドラムの軸方向端部側の前記テーパー面の角度が所定範囲内であることにより、ビード部がセットされたときの円筒状タイヤ部材の軸方向外側部分の立ち上がりが小さい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0013】
1.シェーピングドラム及びシールゴムの構造
シェーピングドラム10の一例について説明する。
【0014】
図1に示すように、シェーピングドラム10は、1本の支持軸12と、支持軸12に支持された左右一対のドラム部20とを備えている。左右一対のドラム部20は支持軸12に対して摺動可能である。
【0015】
支持軸12は、中空の外筒14と、外筒14の内側に外筒14と同心に配置された中心軸16とを備える。中心軸16はモータ駆動によって回転する。支持軸12は図示しないクラッチ機構を備え、このクラッチ機構により、外筒14と中心軸16とが連結されて外筒14と中心軸16とが一体となって回転する連結状態と、外筒14と中心軸16とが分離されて中心軸16のみが回転する非連結状態とが、切り替え可能となっている。
【0016】
中心軸16の左右方向(中心軸16の延長方向)の一方には右ねじ部17aが設けられ、他方には左ねじ部17bが設けられている。右ねじ部17a及び左ねじ部17bには、それぞれナット部18が連結されている。ナット部18は外筒14の内部で左右方向に移動可能な大きさである。2つのナット部18にはそれぞれ連結部材19が固定されている。
【0017】
右ねじ部17a及び左ねじ部17bの外周側の場所には、それぞれ、外筒14を内外へ貫通する案内溝15が設けられている。前記連結部材19は、それぞれ、案内溝15を通って外筒14の外部へ出て、ドラム部20に固定されている。
【0018】
この構造のため、外筒14と中心軸16とが非連結状態となって中心軸16のみが回転すると、右ねじ部17a及び左ねじ部17bと2つのナット部18との作用によって、左右の連結部材19が案内溝15の内側で接近又は離隔する方向(すなわち左右方向)に移動し、左右の連結部材19に固定された左右のドラム部20も接近又は離隔する方向に移動する。
【0019】
また、外筒14と中心軸16とが連結状態となって共に回転すると左右のドラム部20もそれらと一体となって回転する。
【0020】
左右のドラム部20には、それぞれ、複数のビードロックセグメント22が設けられている。その具体的な構造は次の通りである。
【0021】
まず、ドラム部20には、その軸方向から見て放射状に配置された複数の収納穴21が設けられている。収納穴21の内部にはそれぞれビードロックセグメント22が設けられている。ビードロックセグメント22は、収納穴21の内壁に対して摺動可能で、ドラム部20の径方向へ移動可能になっている。
【0022】
ドラム部20の内部であって収納穴21の奥の場所にはシリンダ室24が設けられ、シリンダ室24の内部にはピストン26が摺動可能に設けられている。図示しない流体供給手段がシリンダ室24のピストン26より奥の場所に流体を供給すると、ピストン26がビードロックセグメント22を押す方向へ移動する。するとピストン26に押されたビードロックセグメント22がドラム部20の径方向外側へ上昇する。一方、流体供給手段がシリンダ室24のピストン26より奥の場所から流体を吸引すると、ピストン26が上記と逆方向へ移動し、ビードロックセグメント22がドラム部20の径方向内側へ下降する。
【0023】
左右のドラム部20の全てのビードロックセグメント22は、同時に上昇したり下降したりするよう制御される。
【0024】
図2に示すように、ビードロックセグメント22の上部にはシェーピングドラム10の周方向へ延びる溝23が形成されている。この溝23にゴム製のシールゴム30が嵌まっている。シールゴム30は、シェーピングドラム10の1周にわたる円形になるように延びており、シェーピングドラム10の1周分のそれぞれのビードロックセグメント22の溝23に嵌まっている。
【0025】
シールゴム30の外周側には凹部31が形成されている。凹部31は、底面32と、底面32からシェーピングドラム10の軸方向端部側(軸方向外側)へ連続する平面状の外側テーパー面33と、底面32からシェーピングドラム10の軸方向内側へ連続する内側テーパー面34とから形成されている。
図4や
図5に示すようにシェーピングドラム10の外周面上に円筒状タイヤ部材40がセットされ、その外周側にビード部42がセットされると、
図6に示すようにビード部42が円筒状タイヤ部材40を押さえつつシールゴム30の凹部31に入り込むことになる。
【0026】
底面32に対する外側テーパー面33の角度θ
1、言い換えれば外側テーパー面33の底面32からの立ち上がりの角度θ
1は、11°以上24°以下である。外側テーパー面33の頂部37の底面32からの高さL
1は、例えば5mm以上15mm以下である。一方、底面32に対する内側テーパー面34の角度θ
2、言い換えれば内側テーパー面34の底面32からの立ち上がりの角度θ
2は、前記の角度θ
1より大きいことが好ましい。また、外側テーパー面33のシェーピングドラム10の軸方向の長さL
2が、内側テーパー面34のシェーピングドラム10の軸方向の長さL
3より、長いことが好ましい。
【0027】
シールゴム30には、凹部31からシェーピングドラム10の軸方向内側に延びる延長部35が形成されている。その延長部35の先端部36がドラム部20の所定の位置(例えば
図1に示すシリンダ室24の外側)に固定されている。
【0028】
ビードロックセグメント22よりもシェーピングドラム10の軸方向端部側(軸方向外側)には、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の巻き上げを行う不図示のターンアップ装置が設けられている。ターンアップ装置としては、例えば、円周状に配置された複数のアームの先端部が全体として拡径しながら円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41を押し上げていくターンアップツールや、膨張することによって円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41を押し上げる風船状のターンアップブラダーが使用される。
【0029】
2.空気入りタイヤの製造方法
空気入りタイヤの製造方法の一例について説明する。
【0030】
まず、円筒形のドラム上に、インナーライナー、カーカスプライ、サイドウォールゴム、ベルト下パッド、チェーハー等が積層されて、
図3に示す円筒状タイヤ部材40が形成される。カーカスプライのコード44は円筒状タイヤ部材40の軸方向に延びている。
【0031】
次に、円筒状タイヤ部材40がシェーピングドラム10にセットされる。このとき、左右一対のドラム部20は離隔しており、また、ビードロックセグメント22は下降している。円筒状タイヤ部材40は左右一対のドラム部20に跨がるようにセットされる。
【0032】
次に、
図4に示すように、円筒状タイヤ部材40の左右両側にそれぞれビード部42がセットされる。ビード部42は、金属製のビードコアの外周側にゴム製のビードフィラーが接着されたものである。ビード部42は、左右両側のビードロックセグメント22の上方の場所にセットされる。そのため円筒状タイヤ部材40は、ビード部42と、ビードロックセグメント22に嵌められたシールゴム30とに挟まれる。その後、ビードロックセグメント22がドラム部20の外径方向へ上昇し、それによってビード部42が固定される。
【0033】
次に、
図5に示すように、円筒状タイヤ部材40における2つのビード部42の間の部分を円筒状タイヤ部材40の径方向外側へ膨張させるシェーピングが行われる。シェーピングは、支持軸12の中心軸16のみを回転させることによって左右のドラム部20を接近させながら、2つのビード部42の間で円筒状タイヤ部材40の内径側へ空気を充填することにより、行われる。このシェーピングによって円筒状タイヤ部材40の2つのビード部42の間の部分がトロイド状に膨張し本体部43となる。図示省略するが、本体部43の外径側の部分にはトレッド部が貼り付けられる。
【0034】
このとき、
図6に示すように、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41は、シールゴム30の外側テーパー面33の傾斜に沿うように山形にやや立ち上がっている。しかし、上記のように外側テーパー面33の底面32からの立ち上がりの角度θ
1が24°以下と小さいので、立ち上がりは小さい。
【0035】
次に、円筒状タイヤ部材40の本体部43とビード部42との間の空気を抜くステッチャーが行われる。ステッチャーは、ステッチングツール50をビード部42の根元(
図6におけるビード部42の下端部近傍)に当て、先端に向かって(すなわち
図6の上向に向かって)移動させることにより行われる。
【0036】
次に、ターンアップ装置により円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の巻き上げが行われる。
【0037】
以上によりシェーピングドラム10上で生タイヤが完成する。生タイヤが完成すると、ビードロックセグメント22が下降してビード部42が解放され、シェーピングドラム10から生タイヤが取り外される。
【0038】
次に、生タイヤが、金型に挿入され、金型内部で加熱及び加圧されることによって、加硫成型される。所定時間加硫成型されることによって空気入りタイヤが完成する。
【0039】
3.本実施形態の効果
以上の実施形態では、シールゴム30の凹部31において底面32に対する外側テーパー面33の角度θ
1が24°以下であるため、シールゴム30の上方に円筒状タイヤ部材40を挟む形でビード部42がセットされても、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の立ち上がりが小さい。
【0040】
そのため、ステッチャーを行うときに、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41に邪魔されることなく、ステッチングツール50をビード部42の根元に当てることができる。そのため円筒状タイヤ部材40の本体部43とビード部42との間のエア残りを防ぐことができる。また、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の立ち上がりが小さいため、円筒状タイヤ部材40を構成しているカーカスプライのコードの並び方に乱れが生じにくい。
【0041】
また、シールゴム30の凹部31において底面32に対する外側テーパー面33の角度θ
1が11°以上であるため、ビード部42がシェーピングドラム10の軸方向端部側へ外れにくい。特に、シェーピングによって円筒状タイヤ部材40の中央部が膨張して本体部43が形成されると、本体部43の内圧でビード部42にシェーピングドラム10の軸方向端部側への力がかかるが、そのような力がかかってもビード部42が外れにくい。
【0042】
また、シールゴム30の凹部31の外側テーパー面33が曲面の場合、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41がその曲面に沿って大きく立ち上がるおそれがあるが、外側テーパー面33が平面であればそのおそれがない。
【0043】
また、シールゴム30の凹部31の外側テーパー面33のシェーピングドラム10の軸方向の長さL
2が、内側テーパー面34のシェーピングドラム10の軸方向の長さL
3より長ければ、シールゴム30の凹部31の底面32に対する外側テーパー面33の角度θ
1及び外側テーパー面33の頂部37の底面32からの高さL
1の設計の自由度が上がる。
【0044】
また、シールゴム30の凹部31の底面32に対する内側テーパー面34の角度θ
2が前記の角度θ
1より大きければ、ステッチャーのとき等にビード部42にシェーピングドラム10の軸方向内側への力が加わってもビード部42が外れにくい。
【0045】
そして、このようなシールゴム30がビードロックセグメント22の外周側に設けられたシェーピングドラム10によれば、エア残り等の不具合を減らすことができる。
【0046】
4.実施例及び比較例
ビードロックセグメントに装着されるシールゴムにおいて、シールゴムの凹部の底面に対する外側テーパー面の角度θ
1を変化させ、効果を評価した。評価結果を表1に示す。表1において、「立ち上がり高さ」とは、外側テーパー面の頂点から円筒状タイヤ部材の軸方向外側部分の立ち上がりの頂点までの高さ(参考のため
図8にL
4として示す)のことである。
【0048】
表1からわかるように、θ
1が25°以上の場合は、ステッチャーのときにステッチングツールが円筒状タイヤ部材の軸方向外側部分に当たり、軸方向外側部分に皺が生じてしまった。θ
1が10°以下の場合はビード部がシールゴムの凹部から外れてしまった。また、θ
1が15°以上20°以下の場合は、軸方向外側部分に皺が全く発生せずビード部もしっかり凹部に固定されたままで、最も良かった。