【解決手段】シェーピングドラムにおいてビード部を支持するビードロックセグメント22の外周側に設けられるシールゴム30において、シールゴム30の外周側に円筒状タイヤ部材を挟んでビード部が入り込む凹部31が形成され、凹部31にシールゴム30の周方向に延びる溝60が形成され、成型された生タイヤを容易に外すことができる。
前記シールゴムにおける前記凹部の全面積に対する、前記溝が形成されている部分の面積の割合が、10%以上70%以下である、請求項1に記載のシェーピングドラム用シールゴム。
前記凹部が底面と前記底面から前記シェーピングドラムの軸方向両側へ連続するテーパー面とからなり、前記底面及び前記テーパー面に前記溝が形成された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシェーピングドラム用シールゴム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0011】
1.シェーピングドラム及びシールゴムの構造
シェーピングドラム10の一例について説明する。
【0012】
図1に示すように、シェーピングドラム10は、1本の支持軸12と、支持軸12に支持された左右一対のドラム部20とを備えている。左右一対のドラム部20は支持軸12に対して摺動可能である。
【0013】
支持軸12は、中空の外筒14と、外筒14の内側に外筒14と同心に配置された中心軸16とを備える。中心軸16はモータ駆動によって回転する。支持軸12は図示しないクラッチ機構を備え、このクラッチ機構により、外筒14と中心軸16とが連結されて外筒14と中心軸16とが一体となって回転する連結状態と、外筒14と中心軸16とが分離されて中心軸16のみが回転する非連結状態とが、切り替え可能となっている。
【0014】
中心軸16の左右方向(中心軸16の延長方向)の一方には右ねじ部17aが設けられ、他方には左ねじ部17bが設けられている。右ねじ部17a及び左ねじ部17bには、それぞれナット部18が連結されている。ナット部18は外筒14の内部で左右方向に移動可能な大きさである。2つのナット部18にはそれぞれ連結部材19が固定されている。
【0015】
右ねじ部17a及び左ねじ部17bの外周側の場所には、それぞれ、外筒14を内外へ貫通する案内溝15が設けられている。前記連結部材19は、それぞれ、案内溝15を通って外筒14の外部へ出て、ドラム部20に固定されている。
【0016】
この構造のため、外筒14と中心軸16とが非連結状態となって中心軸16のみが回転すると、右ねじ部17a及び左ねじ部17bと2つのナット部18との作用によって、左右の連結部材19が案内溝15の内側で接近又は離隔する方向(すなわち左右方向)に移動し、左右の連結部材19に固定された左右のドラム部20も接近又は離隔する方向に移動する。
【0017】
また、外筒14と中心軸16とが連結状態となって共に回転すると左右のドラム部20もそれらと一体となって回転する。
【0018】
左右のドラム部20には、それぞれ、複数のビードロックセグメント22が設けられている。その具体的な構造は次の通りである。
【0019】
まず、ドラム部20には、その軸方向から見て放射状に配置された複数の収納穴21が設けられている。収納穴21の内部にはそれぞれビードロックセグメント22が設けられている。ビードロックセグメント22は、収納穴21の内壁に対して摺動可能で、ドラム部20の径方向へ移動可能になっている。
【0020】
ドラム部20の内部であって収納穴21の奥の場所にはシリンダ室24が設けられ、シリンダ室24の内部にはピストン26が摺動可能に設けられている。図示しない流体供給手段がシリンダ室24のピストン26より奥の場所に流体を供給すると、ピストン26がビードロックセグメント22を押す方向へ移動する。するとピストン26に押されたビードロックセグメント22がドラム部20の径方向外側へ上昇する。一方、流体供給手段がシリンダ室24のピストン26より奥の場所から流体を吸引すると、ピストン26が上記と逆方向へ移動し、ビードロックセグメント22がドラム部20の径方向内側へ下降する。
【0021】
左右のドラム部20の全てのビードロックセグメント22は、同時に上昇したり下降したりするよう制御される。
【0022】
図2に示すように、ビードロックセグメント22の上部にはシェーピングドラム10の周方向へ延びる溝23が形成されている。この溝23にゴム製のシールゴム30が嵌まっている。シールゴム30は、シェーピングドラム10の1周にわたる円形になるように延びており、シェーピングドラム10の1周分のそれぞれのビードロックセグメント22の溝23に嵌まっている。
【0023】
シールゴム30の外周側には凹部31が形成されている。凹部31は、底面32と、底面32からシェーピングドラム10の軸方向端部側(軸方向外側)へ連続する外側テーパー面33と、底面32からシェーピングドラム10の軸方向内側へ連続する内側テーパー面34とから形成されている。後述するようにシェーピングドラム10の外周面上に円筒状タイヤ部材40がセットされ、その外周側にビード部42がセットされると(
図11及び
図12参照)、
図3に示すようにビード部42が円筒状タイヤ部材40を押さえつつシールゴム30の凹部31に入り込むことになる。
【0024】
シールゴム30には、凹部31からシェーピングドラム10の軸方向内側に延びる延長部35が形成されている。その延長部35の先端部36がドラム部20の所定の位置(例えばシリンダ室24の外側)に固定されている。
【0025】
ビードロックセグメント22よりもシェーピングドラム10の軸方向端部側(軸方向外側)には、円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の巻き上げを行う不図示のターンアップ装置が設けられている。ターンアップ装置としては、例えば、円周状に配置された複数のアームの先端部が全体として拡径しながら円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41を押し上げていくターンアップツールや、膨張することによって円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41を押し上げる風船状のターンアップブラダーが使用される。
【0026】
2.シールゴムに形成された溝の構造
図2〜
図5に示すようにシールゴム30の凹部31にはシールゴム30の周方向に延びる溝60が形成されている。溝60は、以下の(1)〜(7)で説明する特徴のうち1つ以上を備えるものとすることができる。
【0027】
(1)溝の面積比率
シールゴム30における凹部31の全面積に対する、溝60が形成されている部分の面積の割合(この割合を「溝の面積比率」とする)は、10%以上70%以下であることが好ましい。すなわち、シールゴム30における凹部31の全面積:溝60が形成されている部分の面積=1:0.1〜1:0.7であることが好ましい。
【0028】
ここで「面積」とは、底面32、外側テーパー面33及び内側テーパー面34のそれぞれを垂直な方向から見たときの面積のことである。従って、例えば「凹部31の全面積」は「凹部31を形成する全ての面32、33、34のそれぞれを垂直な方向から見たときの面積の総和」と言い換えることができる。ここでの「面積」を考えるにあたり溝60の深さは考慮しない。
【0029】
また、溝60の面積比率は、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
溝60の面積比率が50%より大きい場合は、溝60と溝60との間の凸条61(
図4及び
図5参照)の部分の合計面積が溝60の部分の合計面積より小さい。溝60の面積比率が50%より小さい場合は、凸条61の部分の合計面積が溝60の部分の合計面積より大きい。
【0031】
(2)溝の長さ
図4に示すように溝60はシールゴム30の外周側で1周するものであっても良い。
【0032】
また
図5に示すように溝60は周方向に分割されたものであっても良い。すなわち、所定長さの複数の溝60が同一円周上に並んでいても良い。このような溝のことを「周方向分割溝」と言うこととする。
【0033】
(3)溝の本数
図2〜
図5に示すように、溝60は凹部31の幅方向(すなわちシールゴム30の周方向に直交する方向)に複数本形成されていることが好ましい。特に、凹部31に形成されている溝60の数が3本以上12本以下であることが好ましく、6本以上8本以下であることがさらに好ましい。
【0034】
ここで、周方向分割溝に関しては、同一円周上に並んだ複数の溝全体で1本の溝として数える。
【0035】
(4)溝の形成場所
図2〜
図5に示すように、溝60は、底面32、外側テーパー面33及び内側テーパー面34のそれぞれに形成されていることが好ましい。ただし溝60が底面32にしか形成されていなくても良い。
【0036】
(5)追加の溝
シールゴム30の周方向に延びる溝60に加えて、シールゴム30の幅方向に延びる横溝や、シールゴム30の周方向に対して傾斜して延びる傾斜溝が形成されていても良い。横溝又は傾斜溝が形成されていると、溝が全体として格子状に形成されていることになる。
【0037】
(6)溝と溝との間の凸条
2本の溝60の間に形成された凸条61の幅方向断面形状としては、
図6に示す台形、
図7に示す長方形、
図8に示す三角形、
図9に示す半円形等がある。
【0038】
図6の台形のような、上面64と側面65とのなす角θが鈍角(すわなち直角より大きい角)となる形状が、生タイヤに傷を付けにくいので、長方形や三角形より好ましい。また、
図9の半円形も、生タイヤに傷を付けにくいので、三角形より好ましい。
【0039】
(7)溝の深さ
溝の深さは例えば1.5mm以上2.5mm以下である。
【0040】
3.空気入りタイヤの製造方法
空気入りタイヤの製造方法の一例について説明する。
【0041】
まず、円筒形のドラム上に、インナーライナー、カーカスプライ、サイドウォールゴム、ベルト下パッド、チェーハー等が積層されて、
図10に示す円筒状タイヤ部材40が形成される。カーカスプライのコード44は円筒状タイヤ部材40の軸方向に延びている。
【0042】
次に、円筒状タイヤ部材40がシェーピングドラム10にセットされる。このとき、左右一対のドラム部20は離隔しており、また、ビードロックセグメント22は下降している。円筒状タイヤ部材40は左右一対のドラム部20に跨がるようにセットされる。
【0043】
次に、
図11に示すように、円筒状タイヤ部材40の左右両側にそれぞれビード部42がセットされる。ビード部42は、金属製のビードコアの外周側にゴム製のビードフィラーが接着されたものである。ビード部42は、左右両側のビードロックセグメント22の上方の場所にセットされる。そのため円筒状タイヤ部材40は、ビード部42と、ビードロックセグメント22に嵌められたシールゴム30とに挟まれる。その後、ビードロックセグメント22がドラム部20の外径方向へ上昇し、それによってビード部42が固定される。
【0044】
次に、
図12に示すように、円筒状タイヤ部材40における2つのビード部42の間の部分を円筒状タイヤ部材40の径方向外側へ膨張させるシェーピングが行われる。シェーピングは、支持軸12の中心軸16のみを回転させることによって左右のドラム部20を接近させながら、2つのビード部42の間で円筒状タイヤ部材40の内径側へ空気を充填することにより、行われる。このシェーピングによって円筒状タイヤ部材40の2つのビード部42の間の部分がトロイド状に膨張し本体部43となる。図示省略するが、本体部43の外径側の部分にはトレッド部が貼り付けられる。
【0045】
次に、ターンアップ装置により円筒状タイヤ部材40の軸方向外側部分41の巻き上げが行われる。
【0046】
以上によりシェーピングドラム10上で生タイヤが完成する。生タイヤが完成すると、ビードロックセグメント22が下降してビード部42が解放され(このとき生タイヤがシールゴム30から外れる)、シェーピングドラム10から生タイヤが取り外される。
【0047】
次に、生タイヤが、金型に挿入され、金型内部で加熱及び加圧されることによって、加硫成型される。所定時間加硫成型されることによって空気入りタイヤが完成する。
【0048】
4.本実施形態の効果
上記のように本実施形態では、シールゴム30の凹部31に周方向に延びる溝60が形成されているため、シェーピングドラム10で生タイヤを成型するときの生タイヤとシールゴム30との粘着を防ぐことができ、成型された生タイヤを容易に外すことができる。
【0049】
ここで、溝60の面積比率が10%以上70%以下であれば、成型された生タイヤを特に容易に外すことができ、また生タイヤが変形しにくい(ここで言う変形とは、生タイヤが溝60に押し付けられることによって生じる溝跡のような変形のことである)。溝60の面積比率が40%以上60%以下であると、このような効果がさらに大きい。
【0050】
また、溝60の本数が3本以上だと生タイヤをシールゴム30から特に容易に外すことができる。また、溝60の本数が12本以下だと生タイヤに多数の溝跡が付かず好ましい。溝60の本数が6本以上8本以下だとこのような効果がさらに大きい。
【0051】
また、溝60が底面32だけでなく外側テーパー面33及び内側テーパー面34にも形成されていれば、シールゴム30から生タイヤを外すことがさらに容易である。
【0052】
また、シールゴム30の周方向に延びる溝60に加えて横溝又は傾斜溝が形成され、全体として溝が格子状に形成されていれば、シールゴム30から生タイヤを外すことがさらに容易である。
【0053】
5.実施例及び比較例
凹部における溝(上記実施形態の溝60に相当する溝)の面積比率が異なる複数のシールゴムを準備し、それぞれのシールゴムをシェーピングドラムに使用して生タイヤの成型を行った。そして、生タイヤをシールゴムから外した後の生タイヤの変形と、生タイヤをシールゴムから外すときの密着とを評価した。ここで、生タイヤの変形とは、生タイヤがシールゴムの溝に押し付けられることによって生じる溝跡のような変形のことである。
【0054】
表1に結果を示す。表1における記号の意味は次の通りである。
<変形>
◎:ほとんど変形しなかった
〇:若干変形したものの許容範囲内であった
<密着>
◎:生タイヤをシールゴムから外すときに密着感がなく容易に外すことができた。
〇:生タイヤをシールゴムから外すときに小さな密着感があったが容易に外すことができた。
△:生タイヤをシールゴムから外すときにやや大きな密着感があったがある程度容易に外すことができた。
×:生タイヤをシールゴムから外すときに大きな密着感があり外すのに苦労した。
【0055】
表1からわかるように、溝の面積比率が100%すなわち事実上凹部に溝が無い場合は、生タイヤをシールゴムから外すのが容易でなかった。それに対し、シールゴムの凹部に溝が形成されていれば生タイヤをシールゴムから外すのが容易であった。