【解決手段】複数の粒子を有し、一部の粒子と他の粒子とが結合ポテンシャルで結合している高分子モデルD1であって、結合ポテンシャルとして、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている高分子モデルD1を、立体の計算領域Ar1に配置し、所定圧力及び所定温度を含む所定解析条件にて分子動力学計算を実行し、計算領域Ar1をx軸に所定距離W拡張し、変形後の計算領域Ar1の分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力になるように、計算領域Ar1を、x軸を固定したままy軸及びz軸に沿って変形し、分子動力学計算と計算領域Ar1のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す圧力一定制御を実行し、計算領域Ar1のx軸の拡張と、圧力一定制御とを繰り返し実行する。
前記高分子モデルは、複数のポリマー粒子が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーモデルと、複数の架橋剤粒子と、を有し、前記ポリマーモデルと前記架橋剤粒子とが結合した架橋高分子モデルである、請求項1に記載の方法。
複数の粒子を有し、一部の粒子と他の粒子とが結合ポテンシャルで結合している高分子モデルであって、前記結合ポテンシャルとして、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている高分子モデルを、立体の計算領域に配置するモデル配置部と、
所定圧力及び所定温度を含む所定解析条件にて分子動力学計算を実行する分子動力学計算実行部と、
計算領域をx軸に所定距離拡張するx軸拡張部と、
変形後の計算領域の分子動力学計算に基づく計算領域の圧力が前記所定圧力になるように、計算領域を、x軸を固定したままy軸及びz軸に沿って変形し、前記分子動力学計算と前記計算領域のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す圧力一定制御を実行する圧力一定制御部と、を有し、
前記x軸拡張部による前記計算領域のx軸の拡張と、前記圧力一定制御部による前記圧力一定制御とを繰り返し実行するように構成されている、高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションするシステム。
前記高分子モデルは、複数のポリマー粒子が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーモデルと、複数の架橋剤粒子と、を有し、前記ポリマーモデルと前記架橋剤粒子とが結合した架橋高分子モデルである、請求項3に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
例えば未加硫ゴムに硫黄などの架橋剤を加えて分子同士を結合(架橋)させた架橋高分子(いわゆる架橋ゴム)について一軸伸長試験が行われている。CAE(Computer Aided Engineering)を用いたコンピュータシミュレーションにおいても一軸伸長試験をシミュレーションできることが望まれる。架橋ゴムを一軸伸長すれば、やがて破断することは知られている。
【0003】
ゴムに限らず、分子シミュレーションにおいて、複数の粒子を含む高分子モデルは立体の計算領域に配置され、環境に応じた所定圧力及び所定温度の解析条件のもと分子動力学計算が実行される。計算領域の体積が高分子の体積となる。一軸伸長を模擬するための一つの手段として、計算領域をx軸に少しずつ拡張し、計算領域のy軸及びz軸については体積が一定となるようにx軸の拡張に併せて縮小させることが考えられる。
【0004】
しかしながら、体積を一定に制御する方法では、高分子モデルが破断を始めるであろう伸長比に到達しても応力が0にならず、破断が模擬できないことが分かった。
【0005】
破断を模擬するための方法として、特許文献1に記載の方法は、結合している粒子同士の距離が閾値よりも大きいときに結合を切断する切断処理を設けるようである。しかし、閾値の適切な設定が必要であり、また、距離に応じて切断する方法が妥当であるかを検討する必要がある。
【0006】
破断を模擬するための別の方法として、特許文献2に記載の方法は、ゴム要素の歪又は応力が閾値を超えていることを条件として、ポアソン比を変更し、破断を模擬するようである。しかし、ポアソン比を変化させることが妥当であるかを検討する必要がある。
【0007】
破断をも模擬するための別の方法として、非特許文献1に記載の方法は、計算領域のy軸及びy軸の大きさを固定したまま、x軸を少しずつ拡張させるようである。しかし、太さ(y軸及びz軸)が変化せず、ポアソン比0にてx軸に伸長することが現実におけるゴム等の高分子の破断現象を模擬できているとは言い難い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
[高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションするシステム]
本実施形態のシステム1は、ゴムなどの高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションし、破断現象が再現可能に構成されている。
【0016】
図1に示すように、システム1は、高分子モデル取得部10と、設定部11と、モデル配置部12と、分子動力学計算実行部13と、x軸拡張部14と、圧力一定制御部15と、を有する。これら各部10〜15は、プロセッサ、メモリ、各種インターフェイス等を備えたコンピュータにおいて予め記憶されている
図2に示す処理ルーチンをプロセッサが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。本実施形態では、1つの装置におけるプロセッサが各部の処理を実行しているが、これに限定されない。例えば、ネットワークを用いて分散させ、複数のプロセッサが各部の処理を実行するように構成してもよい。すなわち、1又は複数のプロセッサが処理を実行する。
【0017】
高分子モデル取得部10は、複数の粒子を有し、一部の粒子と他の粒子が結合ポテンシャルで結合している高分子モデルD1(データ)を取得する。高分子モデル取得部10は、高分子モデルD1を外部から取得してもよいし、高分子モデルD1を生成してもよい。本実施形態の高分子モデルD1は、
図3に示すように、複数のポリマー粒子20が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーモデル2と、複数の架橋剤粒子3と、を有し、ポリマーモデル2と架橋剤粒子3とが結合している。ポリマー粒子20には、他の粒子との間に非結合ポテンシャルが設定されていると共に、結合関係にあるポリマー粒子20との間に結合ポテンシャルが設定されている。架橋剤粒子3には、他の粒子の間に非結合ポテンシャルが設定されていると共に、結合関係にあるポリマー粒子20との間に結合ポテンシャルが設定されている。非結合ポテンシャルとして、FENE−LJ(レナードジョーンズ)やWCA(斥力のみのLJポテンシャル)が採用可能である。結合ポテンシャルとしては、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている。
図4は、FENE−LJと、切断可能ポテンシャル(quarticと表記する)と、を示す。横軸が粒子間距離rを示し、縦軸がポテンシャル[V
bond(r)]を示す。
図4に示すようにNENE−LJは、近距離側及び遠距離側のいずれ側においてもポテンシャルが無限大となる。一方、切断可能ポテンシャル(quartic)は、近距離側にてポテンシャルが無限大となるが、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならず、粒子間距離rがある程度大きくなると、ポテンシャル(引力)がそれほど大きくないため、切断が許容される。本実施形態において、切断可能ポテンシャルは、ポリマー粒子20とポリマー粒子20の間の結合ポテンシャルと、架橋剤粒子3とポリマー粒子20との間の結合ポテンシャルとの双方に設定されているが、これに限定されない。例えば、切断可能ポテンシャルを、ポリマー粒子20とポリマー粒子20の間の結合ポテンシャルのみに設定してもよいし、架橋剤粒子3とポリマー粒子20との間の結合ポテンシャルのみに設定してもよい。すなわち、2以上の結合ポテンシャルが存在する場合には、少なくともいずれかの結合ポテンシャルに設定すればよい。勿論、これらのポテンシャルは一例であって、その他の設定が可能である。
【0018】
設定部11は、高分子モデルD1の一軸伸長シミュレーションに用いる解析条件を設定する。解析条件としては、所定圧力、所定温度、計算領域の初期形状が挙げられる。所定圧力は大気圧、所定温度は大気温度が挙げられる。計算領域Ar1は、高分子モデルD1が配置される立体空間である。計算領域Ar1は、制約条件がない限り、内部の高分子モデルD1が収まる最小形状となるように常に変形する。それゆえ、計算領域Ar1の体積は、高分子モデルD1の体積を意味する。本実施形態における計算領域Ar1は、直方体をなしているが、これに限定されず、種々の形状を採用可能である。本実施形態では計算領域Ar1は周期境界条件が設定されているが、境界条件は定義変更可能である。
【0019】
モデル配置部12は、
図3に示すように、初期形状の計算領域Ar1に対して高分子モデルD1を配置する。ワーキングメモリD2で行う。
【0020】
分子動力学計算実行部13は、所定圧力及び所定温度を含む解析条件にて分子動力学計算を実行する。本実施形態では、LAMMPS(Large-scale Atomic/Molecular Massively Parallel Simulator)を使用しているが、これに限定されない。分子動力学計算実行部13は、平衡化処理が実行可能である。平衡化処理は、所定圧力及び所定温度において高分子モデルD1のエネルギーが最小化するまで高分子モデルD1の分子動力学計算を繰り返し実行する処理である。最小化するとは、高分子モデルD1のエネルギーがほぼ一定になる(エネルギー変動が閾値以下となる)まで各粒子30の挙動を計算する。高分子モデルD1の配置直後、後述する計算領域Ar1の変更直後は、分子動力学計算において安定状態であるとは必ずしもいえないためである。具体的には、計算領域Ar1に外から作用するx軸方向の圧力値Pxと、y軸方向の圧力値Pyと、z軸方向の圧力値Pzとは全て同一値であり、これらの圧力値Px、Py、Pzは所定圧力に基づき設定されている。
【0021】
x軸拡張部14は、
図5に示すように、計算領域Ar1をx軸に所定距離W拡張する。この拡張処理は、計算領域Ar1のy軸及びz軸を維持したままx軸に拡張する。拡張後の計算領域Ar1は、拡張前に比べて体積が大きくなる。計算領域Ar1のx軸の拡張と、後述する圧力一定制御とは所定終了条件が成立するまで繰り返し実行される。所定終了条件は、所定の伸長比となること等が挙げられる。本実施形態では、全ての拡張処理において所定距離Wは一定であるが、拡張処理を実行する毎に所定距離Wを変化させてもよい。なお、x軸は伸長方向であり、y軸及びz軸は、x軸に直交する。
【0022】
圧力一定制御部15は、圧力一定制御を実行する。圧力一定制御は、変形後の計算領域Ar1について分子動力学計算実行部13による分子動力学計算の実行と、計算領域Ar1のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す処理である。計算領域Ar1の変形処理は、変形後の計算領域Ar1について分子動力学計算実行部13が実行した分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力となるように、計算領域Ar1を、x軸を固定したままy軸とz軸に沿って変形させる処理である。圧力一定制御では、x軸が固定されるのでx軸の圧力値Pxは設定せず、計算領域Ar1に外から作用するy軸方向の圧力値Pyと、z軸方向の圧力値Pzとを所定圧力に基づき設定している。x軸に計算領域Ar1が拡張された直後は、体積が増えるため計算領域Ar1の圧力が所定圧力よりも下がる。圧力一定制御部15は、計算領域Ar1の圧力を上げるために、y軸とz軸に沿って計算領域Ar1を縮小させる。計算領域Ar1のy軸とz軸の縮小は、分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力になるまで少なくとも継続される。圧力一定制御では、内部圧力が低くなれば、y軸及びz軸に沿って計算領域Ar1が拡張される。よって、計算領域Ar1の体積が一定となる保証がない。圧力一定制御の繰り返し条件の一例として、圧力一定制御が所定ステップ実行されること、又は、圧力変動が閾値以下となること、などがあげられる。
【0023】
[高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションする方法]
図1に示すシステム1における1又は複数のプロセッサが実行する、高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションする方法について、
図2を用いて説明する。
【0024】
まず、ステップST1において、高分子モデル取得部10は、複数の粒子(2、3)を有し、一部の粒子と他の粒子とが結合ポテンシャルで結合している高分子モデルD1であって、結合ポテンシャルとして、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている高分子モデルD1を取得する。次のステップST2において、設定部11は、高分子モデルD1の一軸伸長シミュレーションに用いる解析条件を設定する。ステップST1と2は順不同である。
【0025】
次のステップST3において、モデル配置部12は、高分子モデルD1を、立体の計算領域Ar1に配置する。
【0026】
次のステップST4において、分子動力学計算実行部13は、所定圧力及び所定温度を含む所定解析条件にて分子動力学計算を実行する。この処理において平衡化処理を行っていることが好ましい。
【0027】
次のステップST5において、所定終了条件が成立しているかを判定し、所定終了条件が成立していないと判定された場合には、ステップST6の実行に移行する。所定終了条件が成立したと判定された場合には、処理の実行を終了する。所定終了条件は適宜設定可能であるが、例えば、予め設定した伸長比になること、又は所定の拡張回数となることが挙げられる。これにより、次のステップST6〜7は、予め設定した伸長比(又は拡張回数)になるまで繰り返し実行される。
【0028】
次のステップST6において、x軸拡張部14は、計算領域Ar1をx軸に所定距離W拡張する。この処理では、計算領域Ar1のy軸及びz軸はそのままにするため、計算領域Ar1の体積が拡張されることになる。
【0029】
次のステップST7において、圧力一定制御部15は、変形後の計算領域Ar1の分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力になるように、計算領域Ar1を、x軸を固定したままy軸及びz軸に沿って変形し、分子動力学計算と計算領域Ar1のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す圧力一定制御を実行する。ステップST6における圧力一定制御が、所定時間実行され、又は、圧力変動が所定閾値以下となる場合には、圧力一定制御の終了条件が成立したとして、ステップST5へ移行する。
【0030】
本発明のシミュレーション方法と、従来のシミュレーション方法を比較して説明する。
従来のシミュレーション方法は、計算領域Ar1の体積を一定にする制御である。計算領域Ar1をx軸に拡張すると共に、計算領域Ar1をy軸及びz軸に沿って縮小させ、体積を一定にする。
【0031】
本発明の方法(実施例)と従来方法(比較例)の比較結果を、
図6、7、8に示す。
図6は、横軸に初期状態に対する伸長比を示し、縦軸に応力を示している。
図7は、横軸に初期状態に対する伸長比を示し、縦軸に初期様態に対する体積比を示している。
図8は、本開示の方法により、計算領域Ar1内に分子が存在しない領域(ボイド)が発生し、ボイドが拡張し、破断に至る過程を示す図である。
【0032】
図6〜8に示すように、比較例では、伸長比が大きくなっても応力が0とならず、体積比も1のまま変化していないことがわかる。図示していないが、比較例ではボイドが発生しなかった。これに対して、本発明の方法では、伸長比が大きくなり、伸長比が5となるときに、応力が0となり、体積比も急激に大きくなることがわかる。本発明の方法では、破断現象を再現することができた。
【0033】
また、本発明の方法の妥当性を考察するために、架橋剤粒子3の量(架橋密度)を異ならせた複数の高分子モデルD1を用意し、応力が0となる時点(破断時点)と伸長比の関係をシミュレーションで算出した。硫黄などの架橋剤(架橋剤粒子3)が増加すれば、破断伸び(破断したときの伸長比)が低下することが知られている。
図9に示すように、架橋剤粒子3が増加すれば、破断伸びが低下していることがシミュレーションで再現でき、本発明が有用であることが確認された。
【0034】
従来の体積一定制御にてボイドが発生しない理由は、体積一定でx軸に伸ばせば伸ばすほど、y軸及びz軸の圧縮が大きく圧力が大きくなるので、ボイドを形成しにくい壊れにくい分子群が、ボイドを形成しやすい壊れやすい分子群の隙間に無理やり押し込まれ、結果、ボイドが発生せずに、高分子全体が延ばされる、と考えている。
これに対して本発明では、圧力一定制御であるので、壊れやすい分子群にも壊れにくい分子群にも同じように力が作用し、壊れやすい分子群が延びてボイドが発生すると考えられる。
【0035】
以上のように、本実施形態の高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションする方法は、
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
複数の粒子(ポリマー粒子20、架橋剤粒子3)を有し、一部の粒子と他の粒子とが結合ポテンシャルで結合している高分子モデルD1であって、結合ポテンシャルとして、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている高分子モデルD1を、立体の計算領域Ar1に配置し(ST3)、
所定圧力及び所定温度を含む所定解析条件にて分子動力学計算を実行し(ST4)、
計算領域Ar1をx軸に所定距離W拡張し(ST6)、
変形後の計算領域Ar1の分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力になるように、計算領域Ar1を、x軸を固定したままy軸及びz軸に沿って変形し、分子動力学計算と計算領域Ar1のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す圧力一定制御を実行し(ST7)、
計算領域Ar1のx軸の拡張(ST6)と、圧力一定制御(ST7)とを繰り返し実行する。
【0036】
本実施形態の高分子モデルの一軸伸長をシミュレーションするシステムは、
複数の粒子(ポリマー粒子20、架橋剤粒子3)を有し、一部の粒子と他の粒子とが結合ポテンシャルで結合している高分子モデルD1であって、結合ポテンシャルとして、遠距離側にてポテンシャルが無限大とならない切断可能ポテンシャルが設定されている高分子モデルD1を、立体の計算領域に配置するモデル配置部12と、
所定圧力及び所定温度を含む所定解析条件にて分子動力学計算を実行する分子動力学計算実行部13と、
計算領域Ar1をx軸に所定距離W拡張するx軸拡張部14と、
変形後の計算領域Ar1の分子動力学計算に基づく計算領域Ar1の圧力が所定圧力になるように、計算領域Ar1を、x軸を固定したままy軸及びz軸に沿って変形し、分子動力学計算と計算領域Ar1のy軸とz軸に沿った変形とを繰り返す圧力一定制御を実行する圧力一定制御部15と、を有し、
x軸拡張部14による計算領域Ar1のx軸の拡張と、圧力一定制御部15による圧力一定制御とを繰り返し実行するように構成されている。
【0037】
このように、計算領域Ar1のx軸の拡張と、圧力一定制御とを繰り返し実行することにより、計算領域Ar1内に粒子が存在しない空間であるボイドが発生し、高分子モデルの破断を再現可能となる。
【0038】
本実施形態のように、高分子モデルD1は、複数のポリマー粒子20が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーモデル2と、複数の架橋剤粒子3と、を有し、ポリマーモデル2と架橋剤粒子3とが結合した架橋高分子モデルであることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
例えば、
図1に示す各部10〜15は、所定プログラムをコンピュータのプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用回路で構成してもよい。また、本実施形態では1つのコンピュータにおけるプロセッサが各部10〜15を実装しているが、少なくとも1又は複数のプロセッサに分散して実装してもよい。
【0043】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0044】
本実施形態では、高分子モデルD1が、ポリマーモデル2と架橋剤粒子3とで構成されるモデルを例として挙げているが、結合ポテンシャル(結合相互作用)で結合された粒子を有する高分子であれば、適用可能である。