(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-97795(P2020-97795A)
(43)【公開日】2020年6月25日
(54)【発明の名称】均衡のとれた装甲貫通‐破片化性能を有する防御用途のための7xxx合金
(51)【国際特許分類】
C22C 21/10 20060101AFI20200529BHJP
C22F 1/053 20060101ALN20200529BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20200529BHJP
【FI】
C22C21/10
C22F1/053
C22F1/00 631Z
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 694A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-26798(P2020-26798)
(22)【出願日】2020年2月20日
(62)【分割の表示】特願2016-555702(P2016-555702)の分割
【原出願日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/948,870
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】504274240
【氏名又は名称】コンステリウム ロールド プロダクツ−レイヴンズウッド,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Constellium Rolled Products Ravenswood,LLC
(71)【出願人】
【識別番号】513149104
【氏名又は名称】コンステリウム ヴァレ エスアー(アーゲー,エルティーディー)
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM VALAIS SA(AG,LTD)
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ジャックロ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ニジンスキー,ミカエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高力アルミニウム合金製の軍用車両のための装甲部品を提供する。
【解決手段】所定の組成を有する7xxx合金からなり、厚さが0.5〜3インチのプレートの形状であり、7xxx合金は過時効されて、(i)V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1290(Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、V50の単位はフィート/秒である)の弾道限界V50のフラグメント疑似粒子、(ii)V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+610(Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、V50の単位はフィート/秒である)の弾道限界V50の装甲貫通が得られることを特徴とする装甲部品。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
7xxxシリーズアルミニウム合金から製造される装甲部品であって、アルミニウム合金は
‐8.4重量%≦Zn≦10.5重量%
‐1.3重量%≦Mg≦2重量%
‐1.2重量%≦Cu≦2重量%
‐Zr、Sc、V、Hf、CrおよびMnから選択される少なくとも一つの分散質形成元素であり、分散質形成元素の総含有量は0.05重量%より高く、Zr含有量は0.15重量%未満、Sc、Cr、HfおよびVの含有量はそれぞれ0.3重量%未満、Mn添加の最大値は0.30重量%
‐アルミニウム、偶発的元素および不純物である残余
からなり、
7xxx合金は厚さが12.7から76.2mmのプレートの形状であり、
7xxx合金は、時効されて
(i)下記のような弾道限界V50のフラグメント疑似粒子:
V50(FSP 20mm)>0.7715T2−17.75T+393
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
(ii)下記のような弾道限界V50の装甲貫通:
V50(0.30cal AP M2)>−0.1331T2+22.22T+186
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
が得られる、
ことを特徴とする装甲部品。
【請求項2】
Mg/Zn≦0.20であることを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項3】
0.9≦Cu/Mg≦1.1であることを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項4】
分散質形成元素がジルコニウムであり、その含有量は0.05重量%〜0.15重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項5】
Fe<0.1重量%およびSi<0.1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項6】
7xxxシリーズアルミニウム合金は、
8.5重量%≦Zn≦9.5重量%、
1.5重量%≦Mg≦2重量%、
1.4重量%≦Cu≦1.8重量%、
Fe<0.1重量%、
Si<0.1重量%、
0.05重量%≦Zr≦0.15重量%;残余はアルミニウムおよび偶発的元素および不純物、
からなることを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項7】
1.8重量%≦Mg≦2重量%であることを特徴とする、請求項6に記載の装甲部品。
【請求項8】
FSP V50弾道限界は、下記のように、
V50(FSP 20mm)>0.7715T2−17.75T+402 (I−a)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装甲部品。
【請求項9】
FSP V50弾道限界は、下記のように、
V50(FSP 20mm)>0.7715T2−17.75T+411 (I−b)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装甲部品。
【請求項10】
AP V50弾道限界は、下記のように、
V50(0.30cal AP M2)>−0.1331T2+22.22T+213 (II−a)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装甲部品。
【請求項11】
AP V50弾道限界は、下記のように、
V50(0.30cal AP M2)>−0.1331T2+22.22T+241 (II−b)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、およびV50の単位はm/sである)
であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装甲部品。
【請求項12】
前記プレートは融接され、溶接後の最大引張強さは、溶接前の最大引張強さの45%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【請求項13】
前記プレートは融接され、溶接後の最大引張強さは303MPaより大きいことを特徴とする、請求項1に記載の装甲部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7xxxシリーズアルミニウム合金のような、高力アルミニウム合金製の軍用車両のための装甲部品に関するものである。より詳細には、車両の外側面に装着する着脱式パネルである装甲外殻壁およびアドオンアップリケを製造するために使用される装甲部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、装甲シールドは通常、鋼鉄、アルミニウム、チタン、またはそれらの合金の金属パネルを含む。そのようなパネルは一般的に、貫通爆弾の衝突中の運動エネルギーを吸収する優れた能力を有する。しかしながら特に合金鋼製の場合、そのようなパネルは重く、車両が支持する重量に関してはエネルギー吸収に関する有効性は低い。したがって、そのような用途にはアルミニウム合金製のアルミニウム部品が好まれる。
【0003】
装甲パネルは、衝撃および衝突にさらされる面、および背面または出口面を有する。金属装甲パネルへの衝撃で、徹甲弾はパネル内で完全に停止されるが、パネルのその背面での損傷の結果、破片が形成されパネルから車両内部に向かって激しく放出されることがある。
【0004】
合金の化学組成に関する全ての表示は、別に記載が無ければ、合金の総重量に基づく重量による質量パーセンテージとして表示される。1.4Cuという表記は、重量%での銅含有量に1.4乗じることを意味する。合金の表示は、当業者には公知の「The Aluminium Association」の規定に従っている。質別の定義は、ヨーロッパ規格EN515に定められている。
【0005】
静的機械特性、言い換えれば最大引張強さUTS、引張降伏応力TYS、および破断点伸びAは、別に記載が無ければEN10002−1規格による引張試験によって測定され、片が採取される場所およびそれらの方向は、EN485−1規格によって定義される。別に記載が無ければ、EN12258−1による定義が適用される。
【0006】
装甲パネルは、それらのシールドの有効性を特徴付けするために一般に二種類の試験を受ける。第一の試験は、徹甲弾を停止させるそれらの能力を定量化するためのもので、文字「AP」(「Armor Piercing」)によって表示され、耐貫通性を特徴付けする。第二の試験は、破砕された破片を生じさせる衝撃に耐えるそれらの能力を定量化するためのものである。この第二のタイプの試験は略語「FSP」(「Fragment simulated projectiles」)として参照される。これらの試験中、装甲パネルは、様々な形状およびサイズ(AP試験では紡錘体の形状、FSP試験ではよりずんぐりした形状)の弾のターゲットである。各種類の試験では、テストパネルの厚さおよび前記装甲パネルが防御しようとする脅威の種類に応じて、複数の形状が弾で使用される。例えば米軍仕様MIL−DTL−46063Hによると、7039合金製で1.5”より厚いプレートは、0.5”口径AP M2弾によるAP試験を受け、一方1.5”より薄いプレートは、0.3”口径AP M2弾によるAP試験を受ける。しかしながら実際には、1.5”よりわずかに厚いプレートでのAP試験では、0.3”口径AP M2弾がまだ使用されている。
【0007】
両方の試験において、弾を停止させ運動エネルギーを吸収する能力は、速度の大きさを有する「V50弾道限界」と呼ばれるパラメータによって定量化される。V50とは、例えばMIL−STD−662(1997)規格によって定義されている、装甲材料の貫通確率が50%である速度である。それは、部分的な貫通に対応する最高速度を有する結果、
および完全な貫通に対応する最低速度を有する結果を同数採取することにより生じる、弾が衝突時に達する速度平均を計算することによって設定される。衝突する弾、または(弾のまたは試験サンプルの)いずれかの破片が、試験サンプルの後ろに配置された薄いウイットネスプレートを貫通するとき、完全な貫通が生じる。
【0008】
全ての装甲材料において、装甲貫通抵抗およびフラグメント疑似粒子抵抗は拮抗作用であり、材料が高いAP抵抗を有するとき、多くの場合FSP抵抗は貧弱である。反対に、高いFSP抵抗を有する材料は、多くの場合平凡なAP抵抗を示す。
【0009】
米国特許第8206517号明細書には、主に7.0〜9.5重量%のZn、1.3〜1.68重量%のMg、1.2〜1.9重量%のCu、0.4重量%以下の少なくとも一つの粒子構造元素を含み、残余はアルミニウムおよび偶発的元素および不純物である7xxxシリーズアルミニウム合金製の、厚さが1〜4インチのプレートの形状の装甲部品が開示されている。前記7xxxシリーズアルミニウム合金は過時効され、その結果降伏強さ、FSP性能、および破砕抵抗に関する三つの条件に同時に適合するはずである。米国特許第8206517号明細書で特許請求されている7xxxシリーズアルミニウム合金の化学的性質は、大部分はAA7085合金のそれと重なる。米軍仕様MIL−DTL−32375(MR)は、公称厚さが0.500〜3000インチの非融接用途用の7085鍛造アルミニウム合金装甲プレートをカバーする。この明細書によると、7085合金は溶接不可能なアップリケ装甲としてのみ使用されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第8206517号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い装甲貫通(AP)抵抗およびフラグメント疑似粒子(FSP)抵抗を同時に有する7XXX合金を完成させることは一般的に困難である。さらに、溶接後に基準を満たした挙動を有し、したがって溶接装甲外殻壁を製造するために使用される7xxx合金を完成させることは、より困難である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の目的は、7xxxシリーズアルミニウム合金から製造される装甲部品であって、アルミニウム合金は主に
‐8.4重量%≦Zn≦10.5重量%
‐1.3重量%≦Mg≦2重量%
‐1.2重量%≦Cu≦2重量%
‐少なくとも一つの分散質形成元素であり、分散質形成元素の総含有量は0.05重量%より高い
‐実質的にはアルミニウム、偶発的元素、および不純物である残余
からなり、
7xxx合金は厚さが約0.5から約3インチ、すなわち約12.7から約76.2mmのプレートの形状であり、
7xxx合金は過時効されて
(i)下記のような弾道限界V50のフラグメント疑似粒子:
V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1290
(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)
(ii)下記のような弾道限界V50の装甲貫通:
V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+610
(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)
が得られる、
ことを特徴とする装甲部品に関する。
【0013】
亜鉛、マグネシウム、および銅は、本発明による装甲部品のアルミニウム合金の主要な合金元素である。50年以上前に装甲用途用に開発されたアルミニウム合金AA7039と比較すると、前記アルミニウム合金は銅を含み、Zn含有量が高く、Mg含有量が低い。
【0014】
亜鉛は、第一の主要合金元素である。本発明の枠内で定義された範囲のMgおよびCu含有量と組み合わされて、APおよびFSP弾道試験で、すなわち同一の鋳造合金から製造されたサンプルについて同時に得られる最も高い結果は、Zn含有量が約8.4重量%以上および約10.5重量%以下で得られる。Zn含有量は好ましくは、約8.5重量%から約9.5重量%、より好ましくは約8.5重量%から約9.0重量%である。
【0015】
マグネシウム含有量は、亜鉛含有量よりかなり低い。有利には、Mg/Zn比は0.20以下であり、但しMgおよびZnはアルミニウム合金中のマグネシウムおよび亜鉛の重量パーセンテージである。本発明の枠内で定義された範囲のZnおよびCu含有量と組み合わされて、APおよびFSP弾道試験で同時に得られる最も高い結果は、マグネシウム含有量が約1.3重量%未満、および約2重量%より高いときに得られた。好ましくは、マグネシウム含有量は、約1.5重量%から約2重量%、より好ましくは約1.8重量%から約2.0重量%、すなわち約1.75重量%から約2.04重量%である。
【0016】
AA7039と比較すると、銅はさらに主要な合金元素である。本発明の枠内で定義された範囲のZnおよびMg含有量と組み合わされて、APおよびFSP弾道試験で同時に得られる最も高い結果は、銅含有量が約1.2重量%以上および2重量%以下で得られた。好ましくは、Cu含有量は約1.4重量%から約1.8重量%である。本出願人はまた、銅およびマグネシウム含有量(重量%)がほぼ同じとき、一般的に0.9≦Cu/Mg≦1.1のとき、同時に最も高い装甲貫通(AP)抵抗およびフラグメント疑似粒子(FSP)抵抗が得られることに気づいた。
【0017】
Zr、Sc、V、Hf、Ti、CrおよびMnのような分散質形成元素を添加して、粒子構造を制御する。分散質形成元素の最適レベルは処理によって変化する。好ましくは、分散質形成元素は主にジルコニウムである。好ましくは、Zr含有量は約0.15重量%未満、より好ましくは約0.08重量%未満である。
【0018】
別の分散質形成元素を単独で、または他の分散質形成元素とともに添加することができる。例えば、スカンジウムを分散質形成元素として添加してもよい。その含有量は好ましくは約0.3重量%未満、およびより好ましくは約0.18重量%未満である。ジルコニウムと組み合わせるとき、ScおよびZrの合計は、好ましくは約0.17重量%未満である。クロム、ハフニウムまたはバナジウムは、約0.3重量%未満、好ましくは約0.15重量%の含有量で添加することができる。マンガンは単独で、または他の分散質形成元素の一つと組み合わせて添加することができる。Mn添加の好ましい最大値は約0.30重量%である。
【0019】
残余は、実質的にアルミニウム、偶発的元素、および不純物である。「実質的に」とは、少量の他の元素が意図的に添加されることを意味すると理解されよう。「偶発的元素および不純物」とは、合金に意図的に添加されるわけではないが、製造過程の結果として、または個別の合金元素の天然不純物として、不可避的に合金中に発生する元素および不純物の含有を意味すると理解されよう。Fe含有量は、好ましくは約0.3重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満である。Si含有量は、好ましくは約0.2重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満である。好ましくは、100重量%とした合金の総重量に基づき、総不純物含有量は約0.15重量%以下で、各々他の不純物元素は約0.05重量%まで存在する。
【0020】
本発明による合金製品は、従来の溶融方法によって製造され、インゴット型に鋳造される。ホウ化チタンまたは炭化チタンなどの結晶成長抑制剤を使用することがある。スカルピングおよび460〜520℃で5〜60時間均質化した後、インゴットはさらに熱間加工、通常は複数の工程で熱間圧延され、厚さが0.5〜3インチであるターゲットゲージに近いプレートが得られる。次に製品は、好ましくは460〜480℃で1〜5時間固溶化熱処理され、95℃未満に焼入れされる。製品はさらに、例えば2%まで、一般的には1〜3%の範囲で、例えば引き伸ばしによって加工され、次に時効させて、組み合わされた目標弾道特性を得る:
V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1290 (I)
V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+610 (II)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)
【0021】
使用する単位が国際単位系であるならば、適合すべき不等式は下記の通りである:
V50(FSP 20mm)>0.7715T
2−17.75T+393 (I’)
V50(0.30cal AP M2)>−0.1331T
2+22.22T+186 (II’)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さ(単位mm)であり、23mm〜41mmの範囲であり、およびV50の単位はm/sである)
【0022】
本発明によると、装甲部品の7xxx合金プレートの厚さは約0.5〜3インチ、すなわち約12.7〜76.2mmである。しかしながら、米軍規格によって、そのような厚さには最小FSP 20mmおよび0.3cal AP M2 V50値が要求されるので、満たすべき弾道APおよびFSP不等式は、より狭い厚さ範囲(0.9”〜1.5”)に関連する(例えば、MIL−DTL−46063HおよびMIL−DTL−32375を参照)。このため、「7xxx合金は過時効され、・・・が得られる」の文章、それに続く前記7xxx合金が厚さ0.9”〜1.5”のプレートの形状であるときだけ測定することができる特定の弾道特性によって、前記範囲の厚さを有するプレートの形状の7xxx合金について規定された時間‐温度、過時効スケジュールが、特許請求された範囲内の0.9”より薄い厚み、または1.5”より厚い厚みを有するプレートの形状の前記7xxx合金にも適用されることを意味することが理解されよう。
【0023】
それらに対して実行される時効処理が何であれ、公知の合金はそのような有利な性能バランスを示さない。時効処理が、高いV50(0.3cal AP M2)値を得ることに適し不等式(II)を満たすならば、FSP特性は劣り、したがってV50(FSP 20mm)は不等式(I)に適合しない。同様に、時効処理が、高いV50(FSP 20mm)値を得ることに適し不等式(I)を満たすならば、AP特性は劣り、したがってV50(0.3cal AP M2)は不等式(II)に適合しない。
【0024】
好ましくは、均質化は約493〜507℃で約20時間実施され、さらにインゴットは第一の通路で、440℃近傍の温度で熱間圧延され、圧延製品は次に約470〜475℃で約2〜4時間固溶化熱処理され、次に冷水への浸漬または冷水の噴霧、または急速冷却によって焼入れされ、続いて少なくとも二つの工程で過時効処理される。一般的な二段過時効処理は、約110〜130℃で約4〜8時間、加えて約140〜160℃で約12〜20時間である。好ましい二段過時効処理は、約115〜125℃で約5〜7時間、加えて約145〜155℃で約14〜18時間である。
【0025】
別の実施態様では、時効処理の150℃での総等価時間は25時間を越えず、好ましくは約5時間から約25時間の範囲にあり、さらに好ましくは約10時間から約20時間の範囲にある。150℃での等価時間t(eq)は、下記式によって定義される。
【0026】
【数1】
【0027】
上記の式において、Tは時間t(単位は時間)とともに進行する処理の瞬間的ケルビン温度であり、T
refは150℃(432K)に選択した基準温度である。t(eq)は時間で表示される。15683Kの一定値は、Mgの拡散活性化エネルギー、Q=130400J/molから派生する。t(eq)として与えられた式は、加熱および冷却工程を考慮する。
【0028】
本発明の好ましい一実施態様では、合金の化学組成は下記の通りである:
8.5重量%≦Zn≦9.5重量%、
1.5重量%≦Mg≦2重量%、
1.4重量%≦Cu≦1.8重量%、
Fe<0.1重量%、
Si<0.1重量%、
0.05重量%≦Zr≦0.15重量%、残余はアルミニウムおよび偶発的元素および不純物。
【0029】
ある実施態様では、化学組成および製造方法によって、より良好なV50弾道結果を得ることができる。例えば、FSP弾道限界は下記のようになる:
V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1320 (I−a)、またはさらに
V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1350 (I−b)、
一方、AP弾道限界は、なお不等式(II)に適合する。
【0030】
別の実施態様では、FSP弾道限界は下記のようになる:
V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+700 (II−a)、またはさらに
V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+790 (II−b)
一方、FSP弾道限界は、なお不等式(I)に適合する。
【0031】
好ましい一実施態様では、7xxx合金の化学的組成は
8.5重量%≦Zn≦9.0重量%
1.8重量%≦Mg≦2重量%
1.4重量%≦Cu≦1.8重量%
Fe<0.1重量%
Si<0.1重量%
0.05重量%≦Zr≦0.15重量%、残余はアルミニウムおよび偶発的元素および不純物であり、
7xxx合金は厚さ0.5〜3インチのプレートの形状であり、
7xxx合金は過時効されて
(i)下記のようなV50弾道限界のフラグメント疑似粒子:
V50(FSP 20mm)>1633T
2−1479T+1350 (I−b)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)
(ii)下記のようなV50弾道限界の装甲貫通:
V50(0.30cal AP M2)>−282T
2+1850T+790 (II−b)
(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)
が得られる。
【0032】
さらに、本発明による装甲プレートを溶接して、装甲外殻を製造することができる。§5.9 of the Ground Combat Vehicle Welding Code 19207−12472301によると、引張り試験サンプルを機械加工して、突合せ溶接の溶接後強さを測定した。そのサンプルは、0.5”プレートを端と端を合わせて配置して、MIG技術を使用してそれらを溶接することによって得られた。このようにして得られた突合せ溶接は、41ksiより高い最大引張強さを示し、それは溶接前の引張強さの少なくとも45%に等しい。本発明者は、フィラーワイヤの適切な選択によって、突合せ溶接は44ksiより高く、さらには47ksiより高い引張強さを有することがあることに気づいた。後者の場合、溶接後の最大引張強さは、溶接前の引張強さの少なくとも50%に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1a】本発明による装甲プレートで得られるFSP弾道性能を示すグラフである。
図1aで「最小」と呼ぶ黒い線は、V50(FSP 20mm)=1633T
2−1479T+1290(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)である。
【
図1b】本発明による装甲プレートで得られる0.3cal AP M2弾道性能を示すグラフである。
図1bで「最小」と呼ぶ黒い線は、V50(0.30cal AP M2)=−282T
2+1850T+610(但し上記式において、Tはプレートの厚さであり(単位インチ)、およびV50の単位はフィート/秒である)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例1:APおよびFSP特性
合金プレート製品は、下記の化学組成(重量%)を有する合金から製造された。
【0036】
合金AおよびBは、本発明による化学組成を有する。合金Cの亜鉛含有量は、特許請求された最小含有量より低い。合金CのMg/Zn比はほぼ0.25であり、すなわち0.20より高い。合金DはAA7039シリーズアルミニウム合金に属する。
【0037】
プレート製品は、下記の方法を使用して製造された:
‐組成が表1に示されている合金のインゴットを鋳造し、
‐インゴットを均質化し、
‐均質化したインゴットを熱間加工して、中間ゲージに到達させ、
‐プレートを固溶化熱処理し、
‐焼入れし、
‐前記プレートを冷間加工して、最終ゲージに到達させ、
‐表2に示したように引き伸ばしたプレートを人工時効させる。
【0038】
プレート製品は、0.9”〜1.6”の範囲で変動する様々な厚さを有し、それらの弾道特性について試験した。二つの弾道試験は、米軍規格MIL−STD−662F(1997)にしたがって実施された。すなわち、0.3インチ(7.62mm)発射物を使用する装甲貫通試験、および20mmフラグメント疑似発射物を使用するFSP試験が実施された。下記表2に記載した結果を
図1aおよび
図1bで図示する。
【0039】
AA7039シリーズプレート製品、特に最も薄いプレート(D−3、D−4およびD−5)はかなり良好なFSP弾道特性を有するが、一方でAP弾道特性は劣っている。より厚いプレートD−1およびD−2は、APおよびFSP弾道特性のどちらも劣っている。
【0040】
C合金プレート製品についての結果は、FSP性能が高いときAP性能は劣り(C−1)、AP性能が高いときFSP性能が劣っている(C−2、C−3)ことを示す。
【0041】
プレート製品A−1、A−2、A−3、B−1、およびB−2は、高いAPおよびFSP性能を組み合わせて有する。サンプルA−4は、A−1と同じ厚さを有する。A−4は、A−1より大幅に過時効された。A−4のAP弾道性能は、A−1より少し低い。A−4のFSP弾道性能は、A−1より著しく低い。
【0043】
実施例2:溶接後の強さ
合金A製の一対の0.5インチ厚みのプレート製品を、L方向に沿って突合せ溶接した。合金A製のもう一対の0.5インチ厚みのプレート製品を、LT方向に沿って突合せ溶接した。それらは、Ground Combat Vehicle Welding Code 19207によって、MIG技術、パルス溶接電流、およびAA5356またはAA4043の1.2mmまたは1.66mm径のフィラーワイヤを使用して溶接された。引張り試験サンプルを機械加工して、これらの突合せ溶接の溶接後の強さを測定した。引張り試験の結果を表3に示す。いずれにせよ、溶接後の最大引張強さは、少なくとも40.8ksi(281MPa)に等しく、すなわち溶接前の最大引張強さ(607MPa−88ksi)の45%以上である。
【0044】
フィラーワイヤの適切な選択によって、突合せ溶接は溶接前の引張強さの50%に少なくとも等しい最大引張強さを有することが注目される。また突合せ溶接は、44ksi(304MPa)より高い、さらに47ksi(324MPa)より高い引張強さを有することが注目される。