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特開2020-98207風力タービンコーティング監視システム及びその運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-98207(P2020-98207A)
(43)【公開日】2020年6月25日
(54)【発明の名称】風力タービンコーティング監視システム及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20200529BHJP
   G01N 17/02 20060101ALI20200529BHJP
【FI】
   G01N27/26 351H
   G01N17/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-225254(P2019-225254)
(22)【出願日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】107145357
(32)【優先日】2018年12月14日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】513185951
【氏名又は名称】財團法人船舶▲曁▼▲海▼洋▲産▼▲業▼研發中心
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 岳聯
(72)【発明者】
【氏名】陳 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】鍾 承憲
(72)【発明者】
【氏名】呉 華桐
(72)【発明者】
【氏名】許 淑▲うぇん▼
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA04
2G050BA02
2G050BA05
2G050CA02
2G050CA03
2G050EB02
2G050EB03
2G050EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な洋上風力発電設備の構造腐食のためのリアルタイム監視システムを完成させること。
【解決手段】表面に少なくとも1つのコーティングを有する監視対象と、前記監視対象に接続され、信号生成装置を備えた微小電気機械システムと前記微小電気機械システムに接続されたプリント回路基板とを含み、前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を測定するためのコーティング監視モジュールと、前記監視対象及びコーティング監視モジュールに接続され前記監視対象の実際のコーティングインピーダンス値を計算するためのポテンショスタットと、前記コーティング監視モジュールに接続され、前記実際のコーティングインピーダンス値に基づき前記コーティングインピーダンス測定値を校正するためのコンピューティングデバイスと、を含む。また、風力タービンコーティング監視システムの運用方法も提案される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に少なくとも1つのコーティングを有する監視対象と
信号生成装置を備え、前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を測定するための微小電気機械システムと、前記微小電気機械システムに接続されたプリント回路基板とを含み、前記監視対象に接続されたコーティング監視モジュールと、
前記監視対象及び前記コーティング監視モジュールに接続され前記監視対象の実際のコーティングインピーダンス値を計算するためのポテンショスタットと、
前記コーティング監視モジュールに接続され、前記実際のコーティングインピーダンス値に基づき前記コーティングインピーダンス測定値を校正するためのコンピューティングデバイスと、
を含む、風力タービンコーティング監視システム。
【請求項2】
前記監視対象のコーティング材料は、単層エポキシ樹脂又は単層ポリウレタンである、請求項1に記載の風力タービンコーティング監視システム。
【請求項3】
前記微小電気機械システムには、システム回路が設計されている、請求項1に記載の風力タービンコーティング監視システム。
【請求項4】
前記システム回路は、前記監視対象を既知抵抗と直列に接続する、請求項3に記載の風力タービンコーティング監視システム。
【請求項5】
前記信号生成装置の出力周波数は、1Hzである、請求項1に記載の風力タービンコーティング監視システム。
【請求項6】
信号生成装置が信号電圧を出力するステップ(A)と、
コーティング監視モジュールを通じて監視対象の表面コーティングのコーティングインピーダンス測定値を測定するステップ(B)と、
ポテンショスタットを通じて前記監視対象の表面コーティングの実際のコーティングインピーダンス値を測定するステップ(C)と、
コンピューティングデバイスが前記実際のコーティングインピーダンス値に基づき前記コーティングインピーダンス測定値を校正するステップ(D)と、
を含む、請求項1に記載の風力タービンコーティング監視システムの運用方法。
【請求項7】
前記監視対象のコーティング材料は、単層エポキシ樹脂又は単層ポリウレタンである、請求項6に記載の風力タービンコーティング監視システムの運用方法。
【請求項8】
前記ステップ(B)において、前記コーティング監視モジュールの測定方法は、前記監視対象を既知抵抗と直列に接続し、分圧計算式を通じて前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を計算することである、請求項6に記載の風力タービンコーティング監視システムの運用方法。
【請求項9】
前記ステップ(B)において、前記コーティング監視モジュールの測定方法は、前記監視対象を容器に接着させた後で塩化ナトリウム腐食溶液に注ぎ、溶液中の参照電極を入れることで、経路が形成された後、前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を測定する、請求項6に記載の風力タービンコーティング監視システムの運用方法。
【請求項10】
前記信号生成装置の出力周波数は、1Hzである、請求項6に記載の風力タービンコーティング監視システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンコーティング監視システム及びその運用方法に関し、特に、様々な洋上風力発電設備に適用される風力タービンコーティング監視システム及びその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食性環境における物体(地中埋設管、海上作業構台、風力発電機、橋梁の鋼構造又は船体)の腐食状況を知るため、肉眼で観察する必要がある。ただし、海底にある物体(例:海上作業構台の鋼構造等)である場合、探査作業を行うために人員を海底に潜らせる必要があり、ダイバーにとってリスクが高く且つ費用も高かった。金属腐食性の監視は、腐食しやすい環境(例:海中又は地中)で頻繁に使用され、様々物体の腐食状態を監視して、物体が深刻な損傷を受ける前に交換できるようにすることである。
【0003】
しかしながら、腐食向け測定技術の多くは実験室規模にのみ適用され、最も主要な理由はこれらの腐食測定技術が一般的な電気化学インピーダンス測定などの多数かつ複雑な機器の使用を必要とするためである。被測定物以外に、測定過程で超大型電源供給装置、参照電極、補助電極及びビーカーなどを一緒に架設して測定することができる。
【0004】
したがって、これらの腐食測定技術を洋上風力タービンに適用する場合、如何にして多くの測定機器の要件を克服するかが難題であった。さらに、これらの腐食測定技術は、現在現場で手作業による実行に依存しているが、ほとんどの洋上風力タービンは無人構造に属し、同時に洋上風力発電所が航路から離れておち、検査及び保守員が頻繁に現場に赴くことができない。これにより、如何にして腐食監視に遠隔制御及び遠隔伝送の機能を与えることが重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本発明の目的は、システム構造の簡素化を目指し、様々な洋上風力発電設備の構造腐食のためにリアルタイム監視システムを完成させ、保守員に風力タービンの状態を早期発見させ、直ちに修理や補強することができる風力タービンコーティング監視システムを提案することである。一方、監視システム自体のために保護メカニズムを実施し、データの信頼性を確保しながら、監視システム自体の腐食状況も本発明の考慮事項である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の風力タービンコーティング監視システムは、表面に少なくとも1つのコーティングを有する監視対象と、前記監視対象に接続され、信号生成装置を備えた微小電気機械システムと前記微小電気機械システムに接続されたプリント回路基板とを含み、前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を測定するためのコーティング監視モジュールと、前記監視対象及びコーティング監視モジュールに接続され前記監視対象の実際のコーティングインピーダンス値を計算するためのポテンショスタットと、前記コーティング監視モジュールに接続され、前記実際のコーティングインピーダンス値に基づき前記コーティングインピーダンス測定値を校正するためのコンピューティングデバイスと、を含む。
【0007】
また、本発明は、風力タービンコーティング監視システムの運用方法を更に提案し、前記運用方法は信号生成装置が信号電圧を出力するステップ(A)と、コーティング監視モジュールを通じて監視対象の表面コーティングのコーティングインピーダンス測定値を測定するステップ(B)と、ポテンショスタットを通じて前記監視対象の表面コーティングの実際のコーティングインピーダンス値を測定するステップ(C)と、コンピューティングデバイスが実際のコーティングインピーダンス値に基づき前記コーティングインピーダンス測定値を校正するステップ(D)と、を含む。
【0008】
ステップ(B)において、前記コーティング監視モジュールの測定方法は、前記監視対象を既知抵抗と直列に接続し、分圧計算式を通じて前記監視対象のコーティングインピーダンス測定値を計算することである。
【0009】
ステップ(B)において、前記コーティング監視モジュールの測定方法は、前記監視対象を容器に接着させた後で塩化ナトリウム腐食溶液に注ぎ、溶液中の参照電極を入れることで、経路が形成された後、前記監視対象の実際のコーティングインピーダンス値を測定する。
【0010】
上記本発明の概要は、本発明の幾つか態様及び技術的特徴に対し基本的な説明を行うことを目的とする。本発明の概要は、本発明の詳細な説明ではないため、その目的は特別に本発明のキーとなる或いは重要要素を挙げることなく、本発明の範囲を画定するために用いられることはなく、単に本発明のいくつかの概念を簡潔に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る風力タービンコーティング監視システムを示す模式図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る様々な洋上風力発電設備を示す模式図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る微小電気機械システムのシステム回路図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係るポテンショスタットの測定を示す模式図である。
図5】監視対象のコーティングがエポキシ樹脂試料(200μm)の場合の測定結果比較図である。
図6】監視対象のコーティングがエポキシ樹脂試料(250μm)の場合の測定結果比較図である。
図7】本発明の好ましい実施形態に係る監視対象のコーティングの等価回路モデルを示す模式図である。
図8】本発明の好ましい実施形態に係る風力タービンコーティング監視システムの運用方法フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の技術的特徴及び実用効果を理解し、明細書の内容に基づいて実施することができるように、以下、好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明は、洋上風力タービンに用いられるコーティング監視システム及びその運用方法を提案し、システムのサイズを大幅に縮小することで、監視システムを洋上風力タービンの構造に直接取り付けることができるようにし、同時に風力タービン腐食の程度について一定の測定精度を維持させ、また無線伝送機能を備え、測定データを遠隔地の検査員に送信でき、腐食の程度がひどく風力タービンを早期にメンテナンスさせることで、風力タービン構造の損傷のリスクを軽減ことができる。
【0014】
まず、図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態に係る風力タービンコーティング監視システムを示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の風力タービンコーティング監視システム100は、表面に少なくとも1つのコーティングを有する監視対象110と、前記監視対象110に接続され、信号生成装置132を備えた微小電気機械システム131と前記微小電気機械システム131に接続されたプリント回路基板133とを含むコーティング監視モジュール130と、前記監視対象110及び前記コーティング監視モジュール130に接続されたポテンショスタット150と、前記コーティング監視モジュール130に接続されたコンピューティングデバイス170と、を含む。上述の各構成要素の測定及び計算により、洋上風力タービンコーティングのインピーダンス値をリアルタイムで取得すると共に風力タービンの腐食の程度を分析でき、保守員に風力タービンの状態を早期発見させ、直ちに修理や補強することができる。
【0015】
本実施形態では、監視対象110は、様々な洋上風力発電設備又は洋上風力発電設備から取り外された部分であってもよい。図2を参照すると、洋上風力発電設備は、海面Bの上に設けられた水面上部分及び海面Bの下に設けられた水面下部分を備え、一般に水面上部分は風力タービンブレード(49、59、69、79、89)、風力タービンナセル(48、58、68、78、88)、タワー(47、57、67、77、87)及びタワー基部Aを少なくとも含む。
【0016】
水面下部分は、基礎又は支持構造の違いによって態様が異なり、例えば、重力式基礎(Gravity foundation)を備えた構造の場合、よく見られる形態が三角形の基部40及び洗掘保護装置41を備え、水面上のタワー47と水面下の柱45が結合部46を介して接合され;モノパイル式(Monopile)構造の場合、水面上のタワー57と水面下の基礎杭55が、結合部56を介して接合され、基礎杭50が、海床Cに取り付けられた部分の構造を表し;ジャケット式(Jacket)構造の場合、通常海床Cの基礎杭60の上に設けられ、支持構造(例えば支柱65、対角支柱64、X接点63、K接点62で構成できる)と接合し、水面上のタワー67と水面下の支持構造が主に結合部66を介して接合されている。
【0017】
具体的には、支持構造の支柱65の間に対角支柱64が設けられ、対角支柱64の設置により、対角支柱64と支柱65との接合部にK接点62が形成され、対角支柱64と隣接する対角支柱64との間にX接点63が形成され;三脚式(Tripod)構造の場合、名前が示すように3本の基礎杭70を持ち、基礎杭70と支柱75との間は通常対角支柱74で接合され、水面上のタワー77と水面下の柱75が結合部76を介して接合され;より深い海域に設けられた洋上風力タービンは、浮体構造を使用してその水面下構造の設置を変更することもでき、例えばアンカー80を通じてアンカーチェーン81と接続し、アンカーチェーン81の長さが必要性に応じて変更され、アンカーチェーン81が浮力装置及び支持装置(82、85)に接続され、水面上のタワー87と水面下の支持装置85が結合部86を介して接合される。
【0018】
洋上風力発電設備が腐食性環境と主に接触する領域は、水面上の大気部(海面B上の風力タービンブレード、風力タービンナセル及びタワー)、飛沫帯部、潮汐部、没水部(海面B下の水中部分)及び海泥部の五大部分に分けられる。大気部は、海水と直接接触しないため、塩化物イオン濃度と腐食因子の損傷程度が最も低く、十分な耐食性を備えたコーティングが施されている限り、洋上風力タービンの耐用年数を効果的に延ばすことができ;水面下の没水部は、通常陰極防食法で保護され;潮汐部は、コーティングによる保護をメインで、陰極防食をサブとする防食措置が講じられ;腐食が最も著しいのは、潮汐が届かないが波が衝突したり、打ち上がったりする「飛沫帯部」であり、飛沫帯部が最高仕様の防食コーティングに依存しなければならない。前記監視対象110のコーティング材料は、単層エポキシ樹脂或いは単層ポリウレタンである。
【0019】
本実施形態では、コーティング監視モジュール130は、洋上風力発電設備(すなわち、前記監視対象)に設けられてもよく、具体的には、コーティング監視モジュール130は洋上風力発電設備の大気部、飛沫帯部、潮汐部、海泥部及び没水部の五大領域に設けられてもよく、特に、「飛沫帯部」を本実施形態の主要な測定領域とする。また、前記コーティング監視モジュール130は、信号生成装置132を備えた微小電気機械システム131と、前記微小電気機械システム131に接続されたプリント回路基板133と、を含む。
【0020】
具体的には、コーティング監視モジュール130は、コーティングインピーダンスアナライザ(Coating Impedance Analyzer、CIA)とも呼ばれ、主にFPGA微小電気機械システム131及びプリント回路基板133で構成され、FPGA微小電気機械システム131が備える信号生成装置132が信号生成の機能を提供し、電源供給及びデータ伝送のため、コンピューティングデバイス170に接続されるため、外部機器の使用を大幅に減らすことができる。測定時間を短縮させるため、コーティング監視モジュール130は、1Hzの単点周波数で試料を測定して測定性能をテストし;コーティング監視モジュール130は、測定原理の変化、及び単点サンプリング周波数の選択により、1回の測定時間を1分未満に短縮でき、測定に必要な時間やコストが大幅に削減される。
【0021】
また、測定ターゲット(監視対象110)のコーティングインピーダンス値は、10オーム〜10オームの範囲に設定されるので、参照用の既知抵抗値が10オームとして選択される。コーティング監視モジュール130の動作原理は、電圧分配原理であり、すなわち各負荷に分配された電圧はそのインピーダンスに比例し、したがって、既知抵抗Zrefと監視対象110(コーティング)を直列に接続すると共に10mV交流電圧を印加して既知抵抗Zref及び監視対象110(コーティング)を通過した後の両端の電位差を測定すると、電圧分配原理により監視対象110コーティングインピーダンス値Zを推定することができる。以下にコーティング監視モジュール130のシステム回路図を参照しながら、さらに説明する。
【0022】
さらに、コーティング監視モジュール130には、システム回路が設計されおり、システム回路の設計図は、主にプリント回路基板133及び微小電気機械システム131の2つの部分に区分され、図3を参照することができる。プリント回路基板133の部分では、前記システム回路13が前記監視対象を既知抵抗Zrefと直列に接続し、前記既知抵抗Zrefの両端に信号電圧の入力端子V及び信号電圧の出力端子Vが設けられ;一方、信号電圧の入力端子Vは、微小電気機械システム131の信号生成装置132と接続でき、かつ前記信号生成装置132が信号電圧をプリント回路基板133に出力する。入力端子Vの信号電圧及び出力端子Vの信号電圧を取得した後、既知抵抗Zrefの抵抗値と組み合わせると、下式で表される分圧式の変換を通じて監視対象のコーティングインピーダンスZ測定値を知ることができ;最後に、アナログデジタル変換器(ADC)によりコーティングインピーダンスZ測定値をデジタル信号に変換して微小電気機械システム131に送る。前記既知抵抗Zrefの抵抗値は、10オームであり;前記信号生成装置132は、10mVの信号電圧を出力する。また、前記コーティング監視モジュール130は、前記微小電気機械システム131及び前記コンピューティングデバイス170に接続された遠隔伝送装置(図示せず)をさらに含み、前記遠隔伝送装置がコーティング監視モジュール130により測定されたコーティングインピーダンス測定値を、無線方式でデータ値を外部に伝送できる。
【0023】
【数1】
【0024】
また、風力タービンコーティング監視システム100内の監視対象110のコーティングの標準精度を測定するため、コーティング監視モジュール130で標準的なカラーコードの抵抗に対し精度テストを実施し、ポテンショスタット150を標準とし、標準的なカラーコードの抵抗値が10オーム〜1.5×10オームで、範囲が10オーム〜10オームの測定ターゲットをカバーする。システム内の監視対象110は、ポテンショスタット150と接続でき、具体的には、監視対象110の部分を取り外して測定し、前記ポテンショスタット150は監視対象110の実際のコーティングインピーダンス値を測定して標準とし、また前記実際のコーティングインピーダンス値のデータが前記コーティング監視モジュール130を経由してコンピューティングデバイス170に伝送され、コーティング監視モジュール130から伝送されたコーティングインピーダンス測定値とポテンショスタット150から伝送された実際のコーティングインピーダンス値を比較分析し、また実際のコーティングインピーダンス値に基づきコーティングインピーダンス測定値のデータを校正する。
【0025】
前記コンピューティングデバイス170は、産業用コンピュータ、パソコン、サーバー又は計算機能及び電源供給を備えた他のデバイスであり得、かつ保守員が監視対象の腐食変化を観察できるように、上記実際のコーティングインピーダンス値及び実際のコーティングインピーダンス値の履歴記録を保存するデータベースをさらに含み得る。データベースの構築は大量の長期的に蓄積された海事ビッグデータを提供でき、当業者或いは研究員が入手してその後の統計分析を実施するのに便利である。
【0026】
図4を参照すると、もう1つの部分は、風力タービンコーティング監視システム100内の監視対象110コーティングの試料の精度測定を行い、まず監視対象110(監視対象の部分)を水道管容器230の下方(測定対象面積Aは約5〜10cm、好ましくは7cm)に接着させた後、濃度3.0〜4.0wt%(好ましくは3.5wt%)の塩化ナトリウム腐食溶液250を容器230内に注ぐと共に溶液中に参照電極210(グラファイトカーボンロッド)を入れて精度測定のシステムが経路を形成させ、測定環境の温度を室温25℃に制御する。監視対象110のコーティングは、耐食性に優れたコーティングを選択でき、例えば厚さ200μm又は250μmの単層エポキシ樹脂或いは厚さ30〜50μmの単層ポリウレタンなどの材料であり、その交流インピーダンス値が全て10オーム以上である。測定の開始時、信号生成装置で出力される交流電位を微小電位(10mV)に設定することで、測定過程でコーティングに損傷を与えないよう確保し、この電位で測定されたデータとポテンショスタット150で測定されたデータを比較し、コーティング監視モジュール130のコーティング交流インピーダンスに対する測定精度を議論する。
【0027】
本実施形態の監視システム100の測定方法は、最初の測定對象が監視対象110のコーティングのコーティングインピーダンス測定値であり、さらにポテンショスタット150で測定された実際のコーティングインピーダンス値のデータを双方向参照として使用する。
【0028】
例えば、下記表1内のコーティング監視モジュールで測定されたデータ(コーティングインピーダンス測定値)をポテンショスタット150で測定されたデータ(実際のコーティングインピーダンス値)に対応すると、ポテンショスタット150の測定結果と非常に近く、かつターゲットの下限(10オーム)よりも1桁低い10オームの抵抗を測定する場合でも、精度は良好であり、ターゲットの上限(10オーム)の1.5×10オームより高い抵抗を測定する場合でも優れた精度が維持されていた。
【0029】
【表1】
【0030】
標準抵抗測定精度テストの予備実験結果は、コーティング監視モジュールが測定できるインピーダンス値は1.5×10オームに達することを実証した。実際コーティングに適用される測定性能をテストするため、コーティング監視モジュールを利用してコーティング試料を測定し、更にポテンショスタット150からのデータを双方向参照として使用する。図5及び図6を参照すると、図5は監視対象コーティングがエポキシ樹脂試料(200μm)の場合の測定結果比較図であり;図6は監視対象コーティングがエポキシ樹脂試料(250μm)の場合の測定結果比較図である。図内の黒丸曲線は、ポテンショスタット150で測定されたインピーダンスの結果を示し、十字記号曲線がポテンショスタット150で測定された位相角の結果を示し、黒四角点がコーティング監視モジュール130の測定結果である。
【0031】
図5は、高インピーダンスコーティングに対するコーティング監視モジュール130及びポテンショスタット150の測定結果の精度が良好(コーティング監視モジュール130で測定されたコーティングインピーダンス測定値は、1.23×10オームで、ポテンショスタット150で測定された実際のコーティングインピーダンス値が1.54×10オームであった)を示しており;図6は、他のグループの高インピーダンスコーティングの測定結果精度が低いこと(コーティング監視モジュール130で測定されたコーティングインピーダンス測定値は1.26×10オームで、ポテンショスタット150で測定された実際のコーティングインピーダンス値が5.33×10オームであった)を示している。ポテンショスタット150で測定された2つのコーティング試料の1Hzインピーダンス値は、ほぼ同じであることが2つのグラフから分かるが、位相角曲線から図5の監視対象のコーティング特性が中低周波帯においてコンデンサ(位相角−90度)から抵抗器(位相角0度)に変換されるため、インピーダンス曲線は低周波帯において斜線から水平線に変わり;図6の試料の位相角は、純粋なコンデンサに近い特性を示し、インピーダンス曲線からも低周波帯での曲線の傾きはあまり変化せず、コンデンサ特性が支配的である場合でも斜線で示していることを観察できる。
【0032】
以上の結果から分かる通り、異なるコーティングの抵抗値が同じであっても、コーティング特性が異なると、測定精度が低下する可能性がある。その原因は、その理由は、コーティング自体の完全性、コーティングと基材との間の界面などの異なる状況により、抵抗器又はコンデンサなどの電子素子の特性に類似する特性が生じると推測される。10mVのAC信号を測定対象のコーティングシステムに入力すると、この信号がこれらの電子素子の影響を受け、信号が理想的な抵抗器を通過する場合、出力信号と入力信号との間の位相差は0度であり;信号が理想的なコンデンサを通過した場合、出力信号と入力信号との間の位相差が−90度で、しかしながら、実際のコーティング監視モジュールは単一の抵抗器或いはコンデンサ素子の特性で構成されず、複数の抵抗器とコンデンサが直列或いは並列に接続されて複雑な回路を形成し得出力信号を遅延させることで位相差を生じさせ、したがって、コーティングを通過する10mVのAC信号によって生成された分圧を受け取った後、やはり適切な信号処理を行う必要があり、位相シフトを校正してからコーティング監視モジュールで測定されたコーティングインピーダンス値を算出できる。
【0033】
コーティングの特性を評価する時、監視対象コーティングの等価回路モデルを構築するのは、RC回路がしばしば使用される。図7を参照すると、本発明の好ましい実施形態に係る監視対象のコーティングの等価回路モデルを示す模式図である。図内のRは、分極抵抗とも呼ばれる電荷移動抵抗を表す。これは原子状態からイオン状態への金属の障害であり;Rは、溶液インピーダンスを表し;Cdlは、電気二重層コンデンサを表す。基本的な回路理論からも分かるように、この回路の合計インピーダンス式は、下式で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
式中、Cdlのインピーダンス式は下式で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
dlのインピーダンス式を回路の合計インピーダンス式に代入し、式を導出すると、下式で表されるコーティングの合計インピーダンス式を得ることができる。
【0038】
【数4】
【0039】
上式から合計インピーダンスには実部と虚部が含まれることが分かる。実部と虚部は各々抵抗器及びコンデンサによって生じるインピーダンスであり、コンデンサが信号の位相遅をさせ、信号処理及び計算時、この問題を考慮しない場合、コンデンサ特性が顕著なコーティングを測定する時、比較的大きな誤差が生じる場合がある。したがって、本発明は、位相シフトで生じた誤差を校正し、コーティング監視モジュールの測定がより正確になり、洋上風力タービンコーティングの健全性状態の監視により適したものになると期待される。
【0040】
最後に、本実施形態の監視システム100及びコーティング監視モジュール130は、保守員に風力タービンの構造状態に注意を促すために用いられる;しかしながら、監視システム100及びコーティング監視モジュール130自体が受ける腐食損傷も重要な課題である。このため、本実施形態は、耐塩水噴霧性材料を選択し、かつ、監視システム及びコーティング監視モジュールを保護するハウジングとして気密箱を使用することで、監視システム100及びコーティング監視モジュール130自体の安全を確保し、正常な動作機能を維持する。
【0041】
具体的な実験方法は、試作した密閉箱を約一週間塩水噴霧環境に置き、箱内の金属片(例:鋼片或いは鉄片)の露出部の腐食を受けた状態をチェックして箱の保護性を確認する。まず、食塩水溶液5wt%を使用し、塩水噴霧環境の温度を33〜37℃に制御し;金属が塩化物イオン腐食の影響を受けやすい特性を考慮して、筐体部分がアクリル製防水ケース及びプラスチック製防水ケースをそれぞれ選択して塩水噴霧試験を行った。アクリル製密閉箱の原料は、サイズが750cm程度の15mmのアクリル板を使用し、また船用電気機器の保護筐体の設計を参考にし、気密性を確保するために円形リングを追加し、4隅部をネジで締め付ける場合、不均一な応力により変形することも考慮したため、複数のM3ネジを追加で使用し、下方の2つの開口部は、監視システム及びコーティング監視モジュールに必要な作用電極及び補助電極のために準備した外部コネクタである。上記で使用されているネジは、全て耐食性チタン金属製である。
【0042】
次に、本発明の風力タービンコーティング監視システムの運用方法を説明する。幾つかの実施形態では、風力タービンコーティング監視システムの運用方法は、例えば上記の風力タービンコーティング監視システムを使用してもよい。以下、図6を参照しながら本発明の運用方法を説明し、図6は本発明の好ましい実施形態に係る風力タービンコーティング監視システムの運用方法フローチャートである。
【0043】
図6のステップに示すように、本実施形態の運用方法は、まずステップ(A)において、コーティング監視モジュール130を洋上風力発電設備(或いは前記監視対象110)に固設し、監視対象110を洋上風力発電設備から一部を取り出した後、コーティング監視モジュール130に接続するよう設けてもよい。次に、コーティング監視モジュール130内の微小電気機械システム131が備える信号生成装置132の電源を入れ、前記信号生成装置132を通じて信号電圧をプリント回路基板133に出力する。
【0044】
その後、ステップ(B)において、前記コーティング監視モジュール130は、前記監視対象110の表面コーティングを測定し、前記監視対象110の表面コーティングのコーティングインピーダンス測定値を得る。具体的には、コーティング監視モジュール130では、前記微小電気機械システム131及びプリント回路基板133の測定方法(図3)は、前記監視対象110を既知抵抗Zrefと直列に接続すると共に前記既知抵抗Zrefの両端に信号電圧の入力端子V及び信号電圧の出力端子Vが設けられ;一方、信号電圧の入力端子Vは、信号生成装置132と接続でき、かつ前記信号生成装置132が信号電圧をプリント回路基板133に出力する。入力端子Vの信号電圧及び出力端子Vの信号電圧を取得した後、既知抵抗Zrefの抵抗値と組み合わせると、下式で表される分圧式の変換を通じて監視対象のコーティングインピーダンスZ測定値を知ることができ;最後に、アナログデジタル変換器(ADC)によりコーティングインピーダンスZ測定値をデジタル信号に変換して微小電気機械システム131に送る。前記既知抵抗Zrefの抵抗値は、10オームであり;前記信号生成装置132は、10mVの信号電圧を出力する。
【0045】
【数5】
【0046】
具体的には、前記コーティング監視モジュール130の測定方法は、監視対象110(監視対象の部分)を水道管容器230の下方(測定対象面積Aは約5〜10cm)に接着させた後、濃度3.0〜4.0wt%(好ましくは3.5wt%)の塩化ナトリウム腐食溶液250を容器230内に注ぐと共に溶液中に参照電極210(グラファイトカーボンロッド)を入れて精度測定のシステムに経路を形成させ、測定環境の温度を室温25℃に制御する。監視対象110のコーティングは、耐食性に優れたコーティングを選択でき、例えば厚さ200μm又は250μmの単層エポキシ樹脂或いは厚さ30〜50μmの単層ポリウレタンなどの材料であり、その交流インピーダンス値が全て10オーム以上である。測定の開始時、信号生成装置132で出力される交流電位を微小電位(10mV)に設定することで、測定過程でコーティングに損傷を与えないよう確保し、この電位で測定されたデータとポテンショスタット150で測定されたデータを比較し、コーティング監視モジュール130のコーティング交流インピーダンスに対する測定精度を議論する。
【0047】
さらに、ステップ(C)において、前記監視対象110に接続されたポテンショスタット150は、前記監視対象110の表面コーティングを測定し、前記監視対象110の表面コーティングの実際コーティングインピーダンス値を得、コーティング監視モジュール130を通じて前記実際コーティングインピーダンス値をコンピューティングデバイス170に伝送する。
【0048】
最後に、ステップ(D)において、コンピューティングデバイス170は、コーティング監視モジュール130内の微小電気機械システム131で測定されたコーティングインピーダンス測定値及びポテンショスタット150で測定された実際のコーティングインピーダンス値を受信し、さらに前記実際のコーティングインピーダンス値に基づいて、位相シフトで生じる誤差を校正でき、コーティング監視モジュールの測定がより正確になり、洋上風力タービンコーティングの健全性状態の監視により適したものになると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の風力タービンコーティング監視システム及びその運用方法の利点は、システムのサイズを大幅に縮小することで、風力タービンコーティング監視システムを様々な洋上風力発電設備に直接取り付けることができ或いはコーティング監視モジュールを洋上風力発電設備に取り付けた後、無線方式で測定された数値を外部に伝送することができる。また、風力タービンコーティング監視システムは、監視対象の保守コストを削減でき、風力タービン構造の現況をリアルタイムで把握すること及び予知保全の機能を持っていることで、監視費用及び監視対象交換人員の危険性を低減できる。さらに、監視システム及びコーティング監視モジュール自体は、腐食による損傷から保護する機能を持つことでシステム自体の安全性を確保し、正常な動作を維持できる。
【0050】
ただし、上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施範囲は、そのような実施形態に限定されるものではなく、すなわち、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容に従って行われる簡単な変更や潤飾を加えるものは、本発明の保護範囲内に網羅される。
【符号の説明】
【0051】
100 風力タービンコーティング監視システム
110 監視対象
130 コーティング監視モジュール
131 微小電気機械システム
132 信号生成装置
133 プリント回路基板
150 ポテンショスタット
170 コンピューティングデバイス
13 システム回路
210 参照電極
230 容器
250 溶液
40 基部
41 洗掘保護装置
45、75 柱
46、56、66、76、86 結合部
47、57、67、77、87 タワー
48、58、68、78、88 風力タービンナセル
49、59、69、79、89 風力タービンブレード
50、55、60、70 基礎杭
62 K接点
63 X接点
64、74 対角支柱
65 支柱
80 アンカー
81 アンカーチェーン
82、85 支持装置
A タワー基部
B 海面
C 海床
ADC アナログデジタル変換器
ref 既知抵抗
コーティングインピーダンス測定値
入力端子
出力端子
R 電荷移動抵抗
溶液インピーダンス
dl 電気二重層コンデンサ
(A)〜(D) ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
2020098207000001.pdf