【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に従い、
マイクロ流体デバイスを設ける工程と;
ここで、前記デバイスは、少なくとも一つの第1の捕捉領域と;前記第1の捕捉領域
の下流で前記第1の捕捉領域と流体連通する第2の領域と;を含み、
前記第1の捕捉領域は、標的粒子を選択的且つ放出可能に捕捉するための第1の手
段を含み、前記手段は、前記第1の捕捉領域中を流れる検体が前記手段の上を流れるよう
に構成され;
前記第2の領域は、前記第1の捕捉領域よりも容量が小さく、標的粒子を捕捉する
第2の手段を含み、前記第2の捕捉領域中を流れる検体が第2の手段(them)の上を流れ
るように構成される;
検体を前記第1の捕捉領域内に導入して、前記検体を、任意の標的粒子をトラップでき
る標的細胞を選択的且つ放出可能に捕捉するための前記第1の手段を用いて、第1の流量
で、前記第1の捕捉領域中に流す工程と;
トラップされた標的粒子を標的粒子を選択的且つ放出可能に捕捉するための前記第1の
手段から放出して、濃縮検体をもたらす工程と;
前記濃縮検体を前記第2のチャンバーに導入して、前記濃縮検体を、標的粒子をトラッ
プできる標的粒子を捕捉する前記第2の手段を用いて、前記第1の流量よりも低い第2の
流量で、前記第2のチャンバー中に流す工程と;
更なる処理工程を実行する工程と;
を含む、検体中の標的粒子を濃縮する方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記標的粒子は標的細胞である。
【0010】
好ましくは、標的細胞を選択的且つ放出可能に捕捉するための前記手段は、活性化され
た際に電極表面で標的細胞をトラップする複数の電極である。
【0011】
好ましくは、標的細胞を捕捉する前記第2の手段は、活性化された際に電極表面で標的
細胞をトラップする複数の電極である。
【0012】
驚くべきことに、発明者らは、DEP電極を有するチャンバーなどの第1の大きな領域
中に比較的高い流量で検体を流すことにより、初期の迅速な捕捉が可能となることを見出
し、捕捉された細胞はその後放出されることができ、更にその後、結果物としての濃縮フ
ローを第1の捕捉領域内でよりも低い流量で第2の小さなチャンバー中に流せることを見
出した。これにより、(特に、DEP電極を有するチャネル中に単に流す方法と比較して
)標的細胞を効率的且つ迅速に濃縮することができる。とりわけ、これにより、存在する
標的の量が多いか少ないかに関係なく、比較的大量の検体を時間的に有効な仕方で処理す
ることが可能となる。実際上、このシステムにより、検体は、第2の領域でよりも高い平
均速度で第1の領域を流れ渡ることができる。
【0013】
好ましくは、検体を前記第1の捕捉領域内に導入して、前記検体を、任意の標的細胞を
トラップできる標的細胞を選択的且つ放出可能に捕捉するための前記第1の手段を用いて
、前記領域にわたり第1の体積流量で、前記第1の捕捉領域中に流す前記工程は、検体を
前記第1の捕捉領域内に導入して、前記検体を、任意の標的細胞をトラップするように活
性化された前記電極を用いて、第1の流量で、前記第1の捕捉領域中に流すことを含む。
電極は、標的細胞を選択的にトラップするためにDEPを利用するように構成される。
【0014】
好ましくは、トラップされた標的細胞を、標的細胞を選択的且つ放出可能に捕捉するた
めの前記第1の手段から放出して、濃縮検体をもたらす前記工程は、トラップされた標的
細胞を放出して濃縮検体をもたらす時間後に、前記第1の捕捉領域内の前記電極を非活性
化することを含む。
【0015】
好ましくは、前記濃縮検体を前記第2のチャンバーに導入して、前記濃縮検体を、標的
細胞をトラップできる標的細胞を捕捉する前記第2の手段を用いて、前記第2の領域にわ
たり前記第1の流量よりも低い第2の体積流量で、前記第2のチャンバー中に流す前記工
程は、前記濃縮検体を前記第2のチャンバーに導入して、前記濃縮検体を、標的細胞をト
ラップするように活性化された前記電極を用いて、前記第1の流量よりも低い第2の流量
で、前記第2のチャンバー中に流すことを含む。電極は、標的細胞を選択的にトラップす
るためにDEPを利用するように構成される。
【0016】
好ましくは、前記少なくとも一つの第1の捕捉領域は、少なくとも一つの注入口及び少
なくとも一つの出口を含む。
【0017】
好ましくは、前記第2の領域は、少なくとも一つの注入口及び少なくとも一つの出口を
含む。しかしながら、この注入口及び(an)出口はチャネル内の領域から単に形成されて
いてもよい。
【0018】
このような細胞が元の検体に存在する場合にのみ、即ち、検体が病原体を含有するなら
ば、濃縮検体又は更に濃縮された濃縮検体への言及が標的細胞を含むものであると理解さ
れるであろう。
【0019】
任意的に、第1の捕捉領域はチャンバーである。
【0020】
任意的に、第2の領域はチャンバーである。
【0021】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口は、各チャネルが前記
第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口よりも小さい円周である複数のチャネルに
分かれる。
【0022】
好ましくは、前記複数のチャネルは複数の平行チャネルである。
【0023】
有利なことに、第1の捕捉領域を、複数の、好ましくは平行の、より小さな円周のチャ
ネルに分けることにより、より少量という特徴をもって比較的大量の検体を流すことがで
きる。第1の捕捉領域は今や実際上複数のチャネルを有する捕捉領域であるので、フロー
の中心が端よりも典型的に速いという層流特性にしばしば関連した課題が減る。とりわけ
、チャネルの端でのフローに関連した課題が軽減され、電極間の電圧降下を伴う問題が少
なくなる。
【0024】
好ましくは、前記複数のチャネルは前記少なくとも一つの第1の捕捉領域の出口で合流
する。
【0025】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口は、複数のチャネルに
分かれる少なくとも一つの分岐部を備える。
【0026】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの出口は、単一のチャネルに合
流する少なくとも一つの分岐部を備える。
【0027】
有利なことに、注入口のチャネルを分ける又は出口のチャネルを合流させる分岐部を使
用することで、圧力を上昇又は降下させるための再現可能且つ扱いやすい方途が得られる
。
【0028】
任意的に、前記マイクロ流体デバイスは複数の分離可能部を含んでいてもよい。
【0029】
任意的に、前記第1の捕捉領域内の前記電極を非活性化する前に、前記第1の捕捉領域
内に新たな緩衝剤又は媒体を流す。この新たな緩衝剤は水でもよい。その後電極を非活性
化する際に、標的細胞が新たな緩衝剤内に放出され、標的細胞の濃度がより高まった濃縮
検体が得られる。
【0030】
好ましくは、前記検体は低塩又は低イオン強度である。
【0031】
任意的に、更なる処理工程は、トラップされた標的細胞を放出して更に濃縮された濃縮
検体をもたらす時間後に、前記第2のチャンバー内の前記電極を非活性化することを含ん
でもよい。任意的に、前記第2のチャンバー内の前記電極を非活性化する前に、前記第1
の捕捉領域内に新たな緩衝剤又は媒体を流す。この新たな緩衝剤は水でもよい。その後電
極を非活性化する際に、標的細胞が新たな緩衝剤内に放出され、標的細胞の濃度がより高
まった更に濃縮された濃縮検体が得られる。
【0032】
任意的に、更なる処理工程は細胞をin situで溶解することを含んでもよく、任意的に
核酸抽出及び/又は核酸増幅を実行する。
【0033】
任意的に、前記第1の捕捉領域及び/又は前記第2のチャンバー内に、前記標的細胞に
対する抗体を導入してもよい。このような抗体としてはフルオロフォアを挙げ得る。
【0034】
任意的に、前記第1の捕捉領域及び/又は前記第2のチャンバー内に、前記標的細胞に
特異的な生物学的染色を導入してもよい。
【0035】
任意的に、光検出デバイスが設けられる。
【0036】
好ましくは、前記光検出デバイスは前記第2のチャンバーからの信号を検出するように
構成される。好ましくは、前記光検出デバイスは蛍光を検出でき、好ましくは蛍光を区別
又は分析できる。任意的に、前記光検出デバイスは励起源及び検出器を含む。
【0037】
任意的に、前記デバイスはフロー調整部を備える。任意的に、このフロー調整部はポン
プである。当業者には容易に理解されるであろうように、いくつかの方途でフローを調整
できる。マイクロ流体チャネル及びチャンバーの外形及びサイズを変更することにより、
並びに/或いは、ポンプなどの追加手段を用いることにより、フローの変更を達成できる
。
【0038】
好ましくは、前記第1の捕捉領域内の前記電極が活性化している際に、前記検体が前記
捕捉領域から廃棄物貯留槽に流れ出る。好ましくは、前記第1の捕捉領域内の前記電極が
非活性化している際に、前記検体が前記第1の捕捉領域から前記第2のチャンバーに流れ
出る。
【0039】
好ましくは、前記第2のチャンバー内の前記電極が活性化している際に、前記検体が前
記第2のチャンバーから廃棄物貯留槽に流れ出る。
【0040】
本発明の第二の態様によれば、
第1の捕捉領域と;前記第1の捕捉領域の下流で前記第1の捕捉領域と流体連通する第
2のチャンバーと;電極制御モジュールと;フロー制御手段と;を含み、
前記第1の捕捉領域は、少なくとも一つの注入口及び少なくとも一つの出口を含み、
使用中には、活性化された際に電極表面で標的細胞をトラップする複数の電極を更に含み
、前記電極は、前記第1の捕捉領域中を流れる検体が前記電極(them)の上を流れるよう
に構成され;
前記第2のチャンバーは、前記第1の捕捉領域よりも容量が小さく、少なくとも一つ
の注入口及び少なくとも一つの出口を含み、使用中には、活性化された際に電極表面で標
的細胞をトラップする複数の電極を更に含み、前記電極は、前記第1の捕捉領域中を流れ
る検体が前記電極(them)の上を流れるように構成され;
前記電極制御モジュールは、電極を活性化及び非活性化し;
前記フロー制御手段は、前記第2のチャンバー中の流量を前記第1の捕捉領域中の流
量よりも低くすることができる;
検体中の標的細胞を濃縮するためのマイクロ流体デバイスが提供される。
【0041】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口が、各チャネルが前記
第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口よりも小さい円周である複数のチャネルに
分かれる。
【0042】
好ましくは、前記複数のチャネルが複数の平行チャネルである。
【0043】
好ましくは、前記複数のチャネルが前記少なくとも一つの第1の捕捉領域の前記出口で
合流する。
【0044】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの注入口が、複数のチャネルに
分かれる少なくとも一つの分岐部を備える。
【0045】
好ましくは、前記第1の捕捉領域の前記少なくとも一つの出口が、単一のチャネルに合
流する少なくとも一つの分岐部を備える。
【0046】
任意的に、前記マイクロ流体デバイスは複数の分離可能部を含んでいてもよい。
【0047】
任意的に、前記デバイスは、前記第1の捕捉領域と流体連通する新たな緩衝剤又は媒体
の貯留槽を含む。任意的に、前記新たな緩衝剤又は媒体の貯留槽は前記第2のチャンバー
と流体連通する。或いは、第2の新たな緩衝剤又は媒体の貯留槽が前記第2のチャンバー
と流体連通する。任意的に、前記新たな緩衝剤又は媒体は水である。前記デバイスは、前
記電極が非活性化された際に、前記第1の捕捉領域及び/又は第2のチャンバー内に、新
たな緩衝剤又は媒体のフローを導入する制御モジュールを更に含んでいてもよい。
【0048】
任意的に、前記デバイスは、前記標的細胞に対する抗体の貯留槽を含む。任意的に、前
記抗体の貯留槽は流体連通している。
【0049】
任意的に、前記第1の捕捉領域及び/又は前記第2のチャンバー内に、前記標的細胞に
特異的な生物学的染色を導入してもよい。
【0050】
任意的に、光検出デバイスが設けられる。
【0051】
好ましくは、前記光検出デバイスは前記第2のチャンバーからの信号を検出するように
構成される。好ましくは、前記光検出デバイスは蛍光を検出でき、好ましくは蛍光を区別
又は分析できる。任意的に、前記光検出デバイスは励起源及び検出器を含む。
【0052】
任意的に、前記デバイスは前処理モジュールを含む。これには、前記検体を前処理する
ための、前記第1の捕捉領域と流体連通する追加的なチャンバーが挙げられ得る。これは
、前記検体の粘性、塩分含有量等を変えることを含み得る。
【0053】
任意的に、前記デバイスはフロー調整部を備える。任意的に、このフロー調整部はポン
プである。
【0054】
好ましくは、前記デバイスは廃棄物貯留槽を備える。任意的に、前記廃棄物貯留槽は前
記第1の捕捉領域と流体連通している。好ましくは、前記廃棄物貯留槽は前記第2のチャ
ンバーと流体連通している。
【0055】
本発明の第一の態様の好適な別形は、
マイクロ流体デバイスを設ける工程と;
ここで、前記デバイスは、第1の捕捉領域と;前記第1の捕捉領域の下流で前記第1
の捕捉領域と流体連通する第2の捕捉領域と;を含み、
前記第1の捕捉領域は、活性化された際に電極表面で標的細胞をトラップする複数
の電極を含み、前記電極は、前記第1の捕捉領域中を流れる検体が前記電極(them)の上
を流れるように構成され;
前記第2の捕捉領域は、前記第1の捕捉領域よりも容量が小さく、活性化された際
に電極表面で標的細胞をトラップする複数の電極を含み、前記電極は、前記第1の捕捉領
域中を流れる検体が前記電極(them)の上を流れるように構成される;
検体を前記第1の捕捉領域内に導入して、前記検体を、任意の標的細胞をトラップでき
るように活性化された前記電極を用いて、第1の流量で、前記第1の捕捉領域中に流す工
程と;
トラップされた標的細胞を放出して濃縮検体をもたらす時間後に、前記第1の捕捉領域
内の前記電極を非活性化する工程と;
前記濃縮検体を前記第2のチャンバーに導入して、前記濃縮検体を、標的細胞をトラッ
プできるように活性化された前記電極を用いて、前記第1の流量よりも低い第2の流量で
、前記第2の捕捉領域中に流す工程と;
を含む、標的細胞を濃縮する方法である。
【0056】
本発明のより良い理解のために、単なる例として、そして以下の図を参照して、実施形
態について説明する。