【解決手段】鋳造装置10は、入子90を備える金型20と、この金型20へ溶湯を供給する溶湯供給装置30と、入子90へ強制冷却用の気体を供給する気体供給機構40とを備えている。入子90は、金型用鋼より熱伝導率が格段に大きなタングステン製とし、ストレート通路より格段に通路長さが大きな渦巻き形又は蛇行形の気体通路を内蔵する。
【効果】本発明の入子は、通路を渦巻き形又は蛇行形とし、材質をタングステンなどの高い熱伝導率材とし、冷媒を気体にすることで、従来の水冷入子と遜色がないものとなった。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関の構成要素の一つであるシリンダヘッドは、鋳造法で製造される。鋳造法では、金型のキャビティにアルミニウム合金などの溶湯を注入し、溶湯の凝固が完了したら金型から取り出す。取り出されたものが、シリンダヘッドとなる。
【0003】
内燃機関における燃焼室の形状は、出力に大きく影響する。そのため、燃焼室の精度が要求される。
シリンダヘッドは燃焼室の一部を形成するため、その部分は精度、強度が要求される。
【0004】
シリンダヘッド用金型において、燃焼室形成部を冷却することが提案されている(例えば、特許文献1(
図4、
図5)参照)。
冷却することで、燃焼室形成部の熱変形及び凝固組織の粗大化を抑制することができる。熱変形がなければ、燃焼室の精度を高めることができる。また、冷却することで、鋳物の組織を緻密にし強度を高くすることができる。
【0005】
従来のシリンダヘッド用金型の下型を、
図12に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、シリンダヘッド用金型の下型200には、入子201が取り付けられる。この入子201には、冷却通路202が設けられている。
図12(a)のb矢視図である
図12(b)に示すように、冷却通路202は、ロングドリルで開けられ、両端がプラグ203で塞がれることで、形成される。このような冷却通路202は、「ストレート流路」と呼ばれる。
冷却通路202に、水を流すことで、入子201の温度上昇を防止する。
【0006】
同様に、入子を使用してシリンダヘッドを鋳造する技術が、特許文献2に開示されている。
特許文献2は、低圧鋳造方法において、加圧開始から燃焼室部分の凝固が完了するまで入子を水令し、凝固が完了した後は入子を空冷することで、燃焼室部分の組織を緻密化させる技術に関する(特許文献2、段落0030、0031)。
【0007】
この特許文献2には、次に述べる問題点が存在する。
水又は空気を流す冷却媒体通路において、空気を水に切り替えると、暫くは空気混じりの水が流れる。空気は冷却能力が低いため、水が100%になるまで、水を流し続ける必要がある。安定するまで、待たなければならないので、生産効率が低下する。
【0008】
また、管内に存在する水と水との間に空気が介在すると、水が流れにくくなることが知られている。空気が圧縮性流体であるため、入側の水の圧力が出側の水にうまく伝わらないからである。そこで、水等の液体を流す管には、空気抜き弁を設け、空気を排出する構造が採用される。
しかし、
図12(a)に示す冷却通路202は、最上位にあるため、空気を容易に抜くことはできない。
よって、1つの冷却媒体通路に水と空気を交互に流すという特許文献2の技術は、推奨されない。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2の技術には、次に述べる共通の問題点が存在する。
図12に示す冷却通路202の内壁面に、水に含まれる成分(カルシウムなど)が酸化物や水酸化物に変化した形態で付着する。この付着物は鉄などの金属より、格段に熱伝導率が小さい。熱伝導率が小さいと、水で入子201を十分に冷却することができなくなり、入子201の溶損が心配される。
【0010】
そこで、入子の冷却に水を使用しない鋳造技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、水を使用しない入子を備えた鋳造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、入子を備える金型と、この金型のキャビティへ溶湯を供給する溶湯供給装置と、前記入子へ強制冷却用の気体を供給する気体供給機構とを備えている鋳造装置であって、
前記入子は、タングステン、モリブデン、タングステンカーバイドの少なくとも1種を主材料とする粉末からなる燒結品であり、
この燒結品は、前記強制冷却用の気体を流す気体通路を内蔵していることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の鋳造装置であって、
前記気体通路は、渦巻き形又は蛇行形を呈していることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の鋳造装置であって、
前記気体通路の断面の一部は、前記入子の前記溶湯が接する面の近くに位置していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1記載の鋳造装置であって、
前記金型は、内燃機関のシリンダヘッドを鋳造するものであり、
前記入子は、燃焼室を形成するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、金型用鋼より格段に熱伝導率が大きいタングステン、モリブデン又はタングステンカーバイドで入子を作製した。加えて、入子に気体通路を内蔵した。
よって、本発明により、水を使用しないで気体のみを使用する入子を備えた低圧鋳造装置が提供される。
【0018】
請求項2に係る発明では、気体通路は、渦巻き形又は蛇行形とした。
従来の入子が、1本のストレート通路に水を流す金型用鋼製であったものを、本発明の入子は、通路を渦巻き形又は蛇行形とし、材質をタングステンなどの高い熱伝導率材とし、冷媒を気体にすることで、従来の水冷入子と遜色がないものとなった。
【0019】
請求項3に係る発明では、気体通路の断面の一部は、入子の溶湯が接する面の近くに位置している。
入子において、溶湯が接する面が最も高温になる。気体通路が入子の溶湯が接する面の近くまで延びているため、入子は効果的に冷却される。
【0020】
請求項4に係る発明では、本発明を内燃機関のシリンダヘッドに適用した。
本発明により、空冷入子の鋳造法でありながら、燃焼室が緻密な組織で構成されたシリンダヘッドが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1に示すように、鋳造装置10は、入子90を備える金型20と、この金型20へ溶湯32を供給する溶湯供給装置30と、入子90へ強制冷却用の気体を供給する気体供給機構40とを備えている。
気体供給機構40で供給する気体は、空気、窒素、二酸化炭素又は同等のガスの何れでもよく、種類は問わない。
【0023】
金型20は、例えば、下型21と、左右にスライドする左サイド型22及び右サイド型23と、左サイド型22及び右サイド型23に載せる上型24と、下型21の上面中央に載せられた入子90と、この入子90と左サイド型22に渡される崩壊中子25と、入子90と右サイド型23に渡される崩壊中子26とからなる。
【0024】
溶湯供給装置30は、例えば、ヒータを内蔵する炉体31と、この炉体31で囲われ溶湯32を貯える鍋33と、この溶湯32に上から差し込まれるストーク(導管)34と、鍋33の上部に圧縮気体を送る送気管35とを備えている。送気管35から(大気圧+50kPa)程度の圧力の気体を送る。すると、溶湯32は押し下げられる。この押し下げに伴って溶湯32の一部がストーク34内を上昇し、金型20内のキャビティ27に供給される。
【0025】
(大気圧+50kPa)は、ダイカスト圧力より格段に低いため、この鋳造法は低加圧鋳造と呼ばれるが、「加」を省いて、低圧鋳造とも呼ばれる。本書では、低圧鋳造の呼称を採用した。
【0026】
気体供給機構40は、例えば、コンプレッサや圧縮気体タンクのような圧縮気体源41と、この圧縮気体源41から入子90まで圧縮気体を送る気体供給管42と、入子90から用済みの気体を排出する気体排出管43とを備えている。
気体供給管42に、ストップ弁44及び流量調節弁45を備えており、所望の流速又は流量の気体を入子90へ供給することができる。
【0027】
このような構成の鋳造装置10において、入子90を気体で強制冷却しつつ、溶湯供給装置30でキャビティ27へ溶湯32を供給することで、鋳造品を得ることができる。
鋳造品は、内燃機関のシリンダヘッド50を例に説明する。ただし、鋳造品はシリンダヘッド50に限定されるものではない。
【0028】
図2に示すように、鋳造品としてのシリンダヘッド50は、上部に動弁機構(
図3、符号70)を収納する凹部51を有し、下部中央に燃焼室52を有し、左側に吸気通路53を有し、右側に排気通路54を有する。
【0029】
燃焼室52は、入子(
図1、符号90)で形成される。
崩壊中子(
図1、符号25)は溶湯の凝固が完了したら、壊されて掻きだされる。得られた空洞が吸気通路53となる。
同様に、崩壊中子(
図1、符号26)で、排気通路54が形成される。
【0030】
シリンダヘッド50を含む内燃機関60を、
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、内燃機関60は、シリンダブロック61と、このシリンダブロック61に載っているシリンダヘッド50と、このシリンダヘッド50の上面を覆うヘッドカバー63とを有する。
シリンダヘッド50の吸気通路53及び排気通路54は、動弁機構70により開閉される。
【0031】
動弁機構70は、吸気通路53を開閉する吸気バルブ71と、この吸気バルブ71を閉じ側へ付勢する吸気側ばね72と、吸気バルブ71を開側へ押す吸気側ロッカアーム73と、この吸気側ロッカアーム73を支える吸気側ロッカアーム軸74と、この吸気側ロッカアーム軸74を揺動するカム軸75と、排気通路54を開閉する排気バルブ76と、この排気バルブ76を閉じ側へ付勢する排気側ばね77と、排気バルブ76を開側へ押す排気側ロッカアーム78と、排気側ロッカアーム78を支える排気側ロッカアーム軸79とからなる。排気側ロッカアーム78もカム軸75で揺動される。
【0032】
吸気バルブ71と排気バルブ76の下方が燃焼室(正確には、燃焼室頂部)52となる。
吸気側ばね座82や排気側ばね座83は、鋳造品に機械加工を施すことで形成される。
吸気側バルブシート84や、その上方に配置される吸気側バルブガイド85や、排気側バルブシート86や、その上方に配置される排気側バルブガイド87は、鋳造品に機械加工を施した後に、鋳造品に嵌められる。
【0033】
燃焼室52は、高温の燃焼ガスに晒されるため、他の部位よりも、高温強度が要求される。入子90で冷却することで、燃焼室52の金属組織を緻密化することができる。緻密化すると強度が高まることが知られている。
【0034】
図4に示すように、入子90は、第1横穴91と、この第1横穴91から斜めに延びる第1縦穴92と、この第1縦穴92に続く入口93aと、この入口93aから延びる気体通路93と、この気体通路93の出口93bと、この出口93bから下がる第2縦穴94と、この第2縦穴94から延びる第2横穴95とを備えている。
【0035】
気体通路93は、縦長矩形又は長円断面を呈し、上端は入子90の上表面の近傍に達している。入子90の上表面は溶湯と接する面である。上表面の近傍に達する気体通路93に冷媒を流すことにより、入子90で最も高温になる上表面を効果的に冷却することができる。
【0036】
すなわち、気体通路93の断面の一部は、入子90の溶湯が接する面(この例では上表面)の近くに位置している。入子90において、溶湯が接する面が最も高温になる。気体通路93が入子90の溶湯が接する面の近くまで延びているため、入子90は効果的に冷却される。
【0037】
図5(a)は
図4の5a−5a線断面図であり、気体通路93は、渦巻き形を呈している。
図5(b)は、比較例を示し、入子221は、ロングドリルで穿けられたストレート通路222の両端がプラグ223で塞がれている。
また、
図5(c)は、本発明に係る変更例を示し、気体通路93は、蛇行形を呈している。
【0038】
図5(b)に示すストレート通路222において、入口222aと出口222bとの間の距離をLとする。入口222aとプラグ223との間は冷媒溜まりとなり、冷却に殆ど貢献しない。出口222bとプラグ223との間も同様である。よって、距離Lが冷却に寄与する長さとなる。
図5(a)に示す気体通路93のうち、入口93aと出口93bとの間の距離は、概ね、7×Lであった。
また、
図5(c)に示す気体通路93は、入口93aと出口93bとの間の距離が、概ね、6×Lであった。
【0039】
渦巻き形や蛇行形を呈する気体通路93は、従来のストレート通路222の6〜7倍の長さにすることができた。
ただし、渦巻き形や蛇行形を呈する気体通路93の形成は、容易ではない。そこで、渦巻き形を呈する気体通路93の形成方法を、
図6〜
図9に基づいて説明する。
【0040】
図6(a)に示すように、第1ダイ101と、この第1ダイ101に下から嵌める第1下パンチ102と、この第1下パンチ102の上方に配置する第1上パンチ103とからなる第1成形型100を準備する。そして、第1ダイ101に、タングステンを主材料とする粉末としての金属混合粉104を投入する。
【0041】
金属混合粉104は、主材料としてのタングステン粉末105と、補助材料としてのニッケル粉末106との混合物が好適である。なお、主材料はタングステン粉末の他、モリブデン粉末やタングステンカーバイド粉末であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
混合割合としては、主材料が80〜99質量%、残部が補助材料であればよい。
【0042】
図6(b)にて、第1ダイ101内の金属混合粉104を、第1下パンチ102と第1上パンチ103で圧縮する。
以上により、
図6(c)に示す第1圧粉成形体107が得られる。
次に、
図6(d)に示すように、第1圧粉成形体107に、下へ開放されている溝状の気体通路93を機械加工により形成する。
尚、第1上パンチ103に溝状の気体通路を形成する凸部を設け圧縮時に気体通路93を同時に造ることも可能である。
【0043】
図7(a)に示すように、第2ダイ111と、この第2ダイ111に下から嵌める第2下パンチ112と、この第2下パンチ112の上方に配置する第2上パンチ113とからなる第2成形型110を準備する。そして、第2ダイ111に、金属混合粉104を投入する。
金属混合粉104は、第1圧粉成形体(
図6、符号107)の構成要素と同材とする。
【0044】
図7(b)にて、第2ダイ111内の金属混合粉104を、第2下パンチ112と第2上パンチ113で圧縮する。
以上により、
図7(c)に示す第2圧粉成形体114が得られる。
【0045】
図7(d)に示すように、第2圧粉成形体114に、機械加工により、長い第1横穴91と、この第1横穴91の先端から立ち上がる第1縦穴92と、第1横穴91の反対側に設けられる短い第2横穴95と、この第2横穴95の先端から立ち上がる第2縦穴94とを形成する。
【0046】
次に、
図8(a)に示すように、第2圧粉成形体114に第1圧粉成形体107を重ねる。第1圧粉成形体107と第2圧粉成形体114の境目が境界117となる。
得られた重畳体118は、第1縦穴92が気体通路93の入口93aに繋がり、第2縦穴94が気体通路93の出口93bに繋がっている。
【0047】
次に、
図8(b)に示すように、重畳体118を焼結炉120に入れ、液相焼結処理を施す。
焼結炉120は、例えば、円筒の容器121と、この容器121に内張りされた断熱材122と、容器121内に配置されるヒータ123と、容器121内を真空排気する真空ポンプ124とからなる。
【0048】
真空ポンプ124で真空引きされると、大気圧が容器121の外周面に掛かる。容器121が円筒であるため、潰れる心配はない。炭素(カーボン)は大気中では燃えるが、真空中では燃えない。よって、断熱材122にカーボンファイバーを使用し、ヒータ123に炭素棒を使用することができる。炭素棒は通電するだけで赤熱しヒータの役割を果たす。
【0049】
なお、液相焼結処理は、真空中の他、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス)雰囲気で実施してもよい。よって、焼結炉120は、真空式焼結設備に限定されない。
【0050】
液相焼結法とは、焼結中に一部の成分が溶解し、液相混在の状態で進行する処理法である。実施例に基づいて再度説明を試みる。
タングステンの融点は、3380℃であり、ニッケルの融点は、1453℃である。容器121内を真空状態にした上で、ヒータ123により1500℃程度に保つ。
すると、低融点側のニッケル粉末が液相化し、高融点側のタングステン粉末は固相のままで、液相混在の状態による液相焼結が進行する。
【0051】
以上により、
図9(a)に示すタングステン系又はこれに類する焼結品としての入子90が得られる。
この入子90では、気体を、第1横穴91に供給すると、この気体は第1縦穴92を介して気体通路93に進入し、気体通路93を通る間に入子90を隅々まで冷却する。温まった気体は、出口93b、第2縦穴94、第2横穴95を介して排出される。
【0052】
図9(b)は、
図9(a)のb部拡大図であり、入子90の一般部の断面を示す。タングステン粒子96は、ニッケル溶融物97で隙間が埋められるようにして、焼結される。
図9(c)は、
図9(a)のc部拡大図であり、出口93bと第2縦穴94との境界付近、すなわち境界(
図8、符号117)を示す。
図9(b)と同一であって、タングステン粒子96は、ニッケル溶融物97で隙間が埋められるようにして、焼結される。
【0053】
仮に、図示せぬ通常のA焼結品とB焼結品とを重ね、再度焼結接合すると、A焼結品とB焼結品との境界に不可避的に境界層ができる。2回実施した焼結で発生した境界層は、強度低下の要因となり好ましくない。
対して、本実施例では、焼結は1回のみ実施するため、境界層はできない。すなわち、
図8(a)に示す第1圧粉成形体107と第2圧粉成形体114の境界117が消失した上に、この接合部位が一般部と同じ形態で液相焼結され、有害な境界層ができない。
【0054】
このように、本発明に係る入子90には、
図9(a)〜
図9(c)で説明したように、境界層そのものが存在しない。結果、機械的強度は十分に高くなる。境界層は熱伝導を妨げるが、本発明に係る入子90は、境界層そのものが存在しないため、高い熱伝導性が維持される。
【0055】
以上に述べた入子90の優位性を、実験により確認した。その内容を以下に説明する。
○実験1:
・実験の目的:ストレート通路に対する渦巻き形の気体通路の優位性を確かめる。
・実験設備:
図1に示す低圧鋳造装置
・実施例での入子:
・・タングステン燒結品
・・渦巻き形の気体通路
・比較例での入子:
・・タングステン燒結品
・・ストレート通路
・冷媒:実施例、比較例とも空気
・溶湯:アルミニウム合金(AC2B)
【0056】
図10(a)に示すように、渦巻き形の気体通路93を有する入子90を備えた金型から鋳造品(シリンダヘッド50)を外した。直後に、赤外線温度計(又は輻射温度計)125で、入子90の中央(プラグ座55に対応する部位)を測温し、温度Taを得た。
また、
図10(b)示すように、ストレート通路222を有する入子221を備えた金型から鋳造品50を外した。直後に、赤外線温度計125で、入子221の中央を測温し、温度Tbを得た。
【0057】
図10(c)に示すように、Ta(実施例)は、341℃であった。対して、Tb(比較例)は、509℃であった。
ストレート通路を渦巻き形の気体通路に変更することにより、入子90の温度を大幅に下げることができた。
実施例と比較例において、入子の材質(タングステン)、冷媒(気体)は共通であり、冷媒通路又は気体通路の長さだけが異なる。通路長さの差により、実施例では大幅に温度を下げることができた。
【0058】
○実験2:
・実験の目的:DASIIが小さくなることを確かめる。
DASIIは、デンドライト二次アーム間隔(Dendrite Arm Spacing II)の略号である。DASIIは、サンプルのカット面を、顕微鏡で観察し測定することで得られる。DASIIは、凝固組織の大きさでを示し、組織の緻密さを判断する値の一つである。
【0059】
・実験設備:
図1に示す低圧鋳造装置
・実施例での入子:
・・タングステン燒結品
・・渦巻き形の通路
・・冷媒:気体(空気)
・比較例での入子:
・・タングステン燒結品
・・ストレート形の通路
・・冷媒:なし
・溶湯:アルミニウム合金(AC2B)
【0060】
図11(a)に示すように、渦巻き形の気体通路93を有する入子90を備えた金型から鋳造品を外した。得られた鋳造品のプラグ座55近傍から、サンプルを取得し、このサンプルを顕微鏡で拡大し、DASIIを複数箇所測定した。
また、
図11(b)示すように、ストレート通路222を有するが、実質無冷却の入子221を備えた金型から鋳造品を外した。得られた鋳造品のプラグ座55近傍から、サンプルを取得し、このサンプルを顕微鏡で拡大し、DASIIを複数箇所測定した。
【0061】
図11(c)に示すように、実施例では、DASIIは、最小値が22.6μmであり、最大値が27.8μmであり、平均値は26.1μmであった。
対して、比較例では、DASIIは、最小値が34.1μmであり、最大値が41.7μmであり、平均値は38.1μmであった。
【0062】
燃焼室におけるDASIIは、35μm以下、好ましくは30μm以下にすることが求められている。本実施例では、最大値が27.8μmであり、十分に要求を満たしている。
【0063】
尚、一般の入子は、鋳鋼又は金型用鋼とされる。鋳鋼又は金型用鋼の熱伝導率は、約50W/(m・K)である。
対して、本発明で採用したタングステンの熱伝導率は、177W/(m・K)である。 タングステンの方が、熱伝導率が3.5倍程度大きいため、冷却効率が良くなり、少量の気体で入子90を十分に且つ隅々まで冷やすことができる。
【0064】
炭素鋼(Fe)は融点が1540℃、熱伝導率が約50W/(m・K)である。
対してタングステンは融点が3400℃、熱伝導率が177W/(m・K)である。
また、モリブデンは融点が2620℃、熱伝導率が139W/(m・K)である。
また、タングステンカーバイドは融点が2870℃、熱伝導率が84W/(m・K)である。
【0065】
本発明者が、試作したところ、モリブデン系焼結品及びタングステンカーバイド焼結品も鋼より熱伝導率が高く、溶損に強いことが確認できた。
よって、タングステン粉末をモリブデン粉末に変更することでモリブデン系焼結品を得ることや、タングステン粉末をタングステンカーバイド粉末に変更することでタングステンカーバイド系焼結品を得るようにしてもよい。
【0066】
また、本発明の鋳造装置10で得る鋳造品は、シリンダヘッド50の他、ピストン中子や、ピストントップコアであってもよく、シリンダヘッド50に限定されるものではない。
【0067】
また、本発明の鋳造装置10は、実施例では低圧鋳造装置としたが、重力鋳造、高圧鋳造、砂型鋳造であってもく、低圧鋳造に限定されるもではない。
【0068】
また、気体通路93は、実施例では渦巻き形又は蛇行形としたが、直線形よりも冷却長さが稼げる形状であればよく、U字形、円形、平面形、フィン形などでもよく、渦巻き形や蛇行形に限定されるものではない。
この入子90では、気体を、第1横穴91に供給すると、この気体は第1縦穴92を介して気体通路93に進入し、気体通路93を通る間に入子90を隅々まで冷却する。温まった気体は、出口93b、第2縦穴94、第2横穴95を介して排出される。
DASIIは、デンドライト二次アーム間隔(Dendrite Arm Spacing II)の略号である。DASIIは、サンプルのカット面を、顕微鏡で観察し測定することで得られる。DASIIは、凝固組織の大き