【実施例】
【0046】
(材料および方法)
(ヒトES細胞およびiPS細胞の維持および分化)
hESC系H1(Thomson et al., 1998)および再プログラムさ
れたヒトiPS細胞系(MSC−iPS1; (Park et al., 2008)
)を、この研究において使用した。それらを、以前に記載されるとおり(Kennedy
et al., 2007)、hESC培地中の照射したマウス胚性線維芽細胞上で維
持した。分化の前に、上記細胞を、hESC培地中、マトリゲル(BD Bioscie
nces, Bedford, MA)上で24〜48時間にわたって培養することによ
って、フィーダーを除去した。EBを生成するために、hPSCを、コラゲナーゼB(1
mg/ml; Roche, Indianapolis, IN)で20分間にわたっ
て、続いて、短時間のトリプシン−EDTA(0.05%)工程で処理した。細胞を、細
胞スクレイパーで穏やかに剥がして、小さな集合物(10〜20細胞)を形成させた。集
合物を、ペニシリン/ストレプトマイシン(10ng/mL)、L−グルタミン(2mM
)、アスコルビン酸(1mM)、モノチオグリセロール(MTG, 4×10
−4M;
Sigma)、およびトランスフェリン(150μg/mL)を補充したStemPro
−34(Invitrogen)中に再懸濁した。BMP−4(10ng/mL)、bF
GF(5ng/mL)、アクチビンA、6μM SB−431542、VEGF(15n
g/mL)、Dkk(150ng/mL)、IL−6(10ng/mL)、IGF−1(
25ng/mL)、IL−11(5ng/mL)、SCF(50ng/mL)、EPO(
2U/mL 最終)、TPO(30ng/mL)、IL−3(30ng/mL)およびF
lt−3L(10ng/mL)を、示されるように添加した。培養物を、5% CO
2/
5% O
2/90% N
2環境において最初の8日間にわたって維持し、次いで、5%
CO
2/空気環境へと移した。全ての組換え因子はヒトであり、R&D Systems
(Minneapolis, MN)から購入した。
【0047】
(T系統分化のためのOP9−DL4共培養)
Delta−like 4を発現するようにレトロウイルスで形質導入したOP9細胞
(OP9−DL4)を生成し、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび20% FBSを
補充したα−MEM培地(OP9培地)中で、先に記載されるように(La Motte
−Mohs et al., 2005; Schmitt et al., 2004
)維持した。5〜10×10
4の選別したヒトEB由来サブセットを、OP9−DL4細
胞を含む6ウェルプレートの個々のウェルに添加し、rhFlt−3L(5ng/mL)
およびrhIL−7(5ng/mL)(Peprotech, Rocky Hill,
NJ)を補充したOP9培地中で培養した。rhSCF(100ng/mL)を、最初
の8日間のみにわたって添加した。5日間ごとに、共培養物を、激しくピペッティングし
、40μm細胞ストレーナーを通して間質細胞を除去することによって、新鮮なOP9−
DL4細胞の上に移した。
【0048】
(赤芽球/骨髄系分化のためのOP9−DL1共培養)
選別した細胞を、24ウェルプレート中のVEGF(5ng/mL)、TPO(30n
g/mL)、SCF(50ng/mL)、Flt3(10ng/mL)、IL−11(5
ng/mL)、およびBMP−4(10ng/mL)を含むOP9培地中、照射したOP
9−DL1単層上で7日間にわたって、2×10
4細胞/ウェルの濃度で培養した。細胞
を上記のように採取した。
【0049】
(再集合アッセイ)
選別した集団を、25×10
4細胞/mLで6日目の培地に再懸濁し(
図1A)そして
50μLを、低クラスター96ウェルプレートのウェルに添加した。翌日、1条件あたり
2ウェルをプールし、1mLの培地を添加した低クラスター24ウェルプレートへと移し
た。24時間後、8日目の培地を上記ウェルに添加し、正常酸素条件(normoxic
condition)に移した。
【0050】
(T細胞活性化)
SB処理CD34
++CD43
−細胞を、OP9−DL4細胞上で37〜40日間にわ
たって共培養した。刺激のときに、共培養物を、12ウェルプレートの個々のウェル中の
新鮮なOP9−DL4細胞上に播種した。全てのウェルに2ng/mL rhIL−7お
よびrhIL−2を補充したOP9培地を与え、刺激したウェルに、5μg/mL α−
CD3(クローンHIT3a)mAbおよび1μg/mL α−CD28(クローン28
.2)mAbを添加した。4日間の後に、フローサイトメトリーを行った。
【0051】
(フローサイトメトリーおよび細胞選別)
以下の抗体を、これらの研究のために使用した:CD3−APC(クローンUCHT1
)、CD4−APC−EFluor750(クローンRPA−T4)、CD5−PE−C
y7(クローンL17F12)、CD7−FITC(クローンM−T701)、CD8−
eFluor−650 NC(クローンRPA−T8)、CD31−FITC(クローン
WM59)、CD33−FITC(クローンHIM 3−4)、CD34−APC(クロ
ーン8G12)、CD34−PE−CY7(クローン4H11)、CD41−APC(ク
ローンHIP8)、CD42b−PE(クローンHIP1)、CD43−PE(クローン
1G10)、CD45−APC−eFluor750(クローン2D1)またはCD45
−PacificBlue(クローンH130)、CD56−PE−Cy7(クローンB
159)、CD90−APC(クローン5E10)、CD117−APC(クローン10
4D2)、CD144−PE(クローン123413)、KDR−PE(クローン891
06)、TCRγδ−FITC(クローン11F2)、TCRαβ−PE(クローンT1
0B9.1A−31)。染色した細胞を、示された時点において、LSRII(BD B
iosciences)フローサイトメーターを使用して分析した。データ分析を、Fl
owJoソフトウェアを使用して行った。Tリンパ系研究については、生細胞および6−
ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)取り込みの欠如に対してゲーティング
し、続いて、CD45を発現する細胞に対してゲーティングすることによって、分析を行
った。全ての抗体を、以下を除いて、BD Biosciences(San Dieg
o, CA)から購入した:CD8 eFluor−650 NCおよびCD34−PE
−CY7をeBioscience(San Diego, CA)から購入し、KDR
をR&D systemsから購入した。細胞を、Sick Kids/UHNフローサ
イトメトリー施設においてFACSAria
TMII(BD)セルソータ−で選別した。
【0052】
(Tリンパ系前駆体頻度分析)
アクチビンA誘導性EBもしくはSB処理EBのいずれかから単離したCD34
+CD
43
−細胞の限界希釈アッセイ(LDA)を、連続希釈によって行った。CD34+CD
43−を、FACS Ariaセルソータ−を使用して上記EB集団から選別し、上記ア
クチビンA処理サブセットのうちの10000(n=22)、3000(n=54)、1
000(n=57)、300(n=84)もしくは100(n=90)の細胞、または上
記SB処理サブセットのうちの10000(n=21)、3000(n=54)、100
0(n=60)、300(n=83)、100(n=114)もしくは30(n=48)
の細胞を、OP9−DL4細胞を含む96ウェルプレートの個々のウェルへと入れた。前
駆体を16日間にわたって培養し、その後、採取およびフローサイトメトリー分析を行っ
た。CD45
+CD7
+ CD43
+CD5
+細胞の存在をスコア付けした。前駆体頻度
を、ポワソンモデルに適用される最尤法(Groth, 1982)によって決定した。
【0053】
(造血コロニーアッセイ)
5×10
3〜2.5×10
4の選別した細胞もしくは2.5×10
4〜5.0×10
4
の非分画EB集団のいずれかを、以前に詳細に記載されるように(Kennedy et
al., 2007)、特定のサイトカインを含む1% メチルセルロースに蒔くこと
によって、造血コロニー潜在能の分析を行った。赤芽球、赤芽球/骨髄系細胞および骨髄
系細胞(マクロファージもしくはマスト細胞のいずれか)からなるコロニーを、10〜1
4日間の後に定量化した。
【0054】
(定量的リアルタイムPCR)
総RNAを、RNAqueous RNA Isolation Kit(Ambio
n)で調製し、RNase非含有DNase(Qiagen)で処理した。100ng〜
1μg RNAを、ランダムヘキサマーおよびオリゴ(dT)を使用して、Supers
cript III Reverse Transcriptase(Invitrog
en)でcDNAへと転写した。リアルタイム定量的PCRを、MasterCycle
r EP RealPlex(Eppendorf)で行った。全ての実験を、SYBR
Green JumpStart Taq ReadyMix(Sigma)を使用し
て三連にて行った。オリゴヌクレオチド配列は、要求に応じて入手可能である。遺伝子発
現を、コントロール(ACTB)に対するDeltaCtとして評価した。
【0055】
(ウェスタンブロット)
分化の2日目にDMSO、アクチビンA、および/もしくはSBを添加して30分間後
に、ウェルを採取し、RIPA緩衝液を使用して氷上で溶解した。タンパク質を、SDS
−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に転写し、Smad2抗体(Cell
Signaling, 1:1000)およびホスホ−Smad2抗体(Millipo
re, 1:1000, Ser 465/467)で一晩プローブした。膜を、LI−
COR Biosciences Odyssey画像化システムを使用してスキャンし
た。
【0056】
(T細胞レセプター再配列のPCR分析)
ゲノムDNAを、Qiagen DNeasy Blood and Tissueキ
ットを使用して、アクチビンA処理もしくはSB処理したCD34
+CD43
−/OP9
−DL4共培養物から単離した。ゲノムDNA(200ng)を、30サイクル(95℃
において1分間;66℃において2分間;および72℃において5分間)にわたって、1
.5mM MgCl
2、1U Taq Polymerase、10mM dNTP、お
よび以前に公開されたプライマーの各々400nM(Timmermans et al
., 2009)を含む25μL 反応緩衝液中でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によ
って増幅し、Dβ2−Jβ2 T細胞レセプター遺伝子再配列を検出した。PCR生成物
を、293T線維芽細胞およびヒト出生後胸腺細胞(PNT)を、それぞれ、生殖細胞系
列コントロールおよび再配列コントロールとして使用して、アガロースゲル電気泳動を使
用して分離した。
【0057】
(結果および考察)
(hESCの無血清および間質なしでの造血分化)
無血清条件および間質なしの条件下での二次造血プログラムの前駆体を生成するために
、本発明者らは、BMP−4、アクチビンA、bFGFおよびVEGFと、造血サイトカ
インとを一緒にした、最適化ステージ特異的組み合わせを有する既知組成培地中で、胚様
体(EB)としてH1 hESCの分化を誘導した(
図1A)。この誘導スキームでは、
コロニー形成細胞が分化の6日目程度の早さで検出された。それらの数は、次の3日間に
わたってわずかに増え、次いで、分化の11日目まで劇的に増え、その後、15日目まで
低レベルへと下降した(
図1B)。これらのステージで検出された前駆体の大部分は、赤
芽球に限定されたが、多分化能性赤芽球−骨髄系細胞および骨髄系コロニー形成細胞の両
方がまた、少数ではあったものの存在した。赤芽球前駆体およびそれらの発生の一時的な
パターンが優勢であることは、この早期の造血集団がヒト一次造血を代表し得ることを示
唆する。
【0058】
アクチビン/ノーダルシグナル伝達は、mESC培養物における一次造血発生に必要と
される(Nostro et al., 2008; Pearson et al.,
2008)ので、本発明者らは次に、この経路がhESC誘導性造血に影響を及ぼすか
どうかを決定するために、アクチビンA濃度を変化させた(
図1C)。アクチビンAの濃
度を上昇させると、13日目のEBにおいて骨髄系前駆体の減少および赤芽球前駆体の増
加がもたらされた。対照的に、アクチビン/ノーダルインヒビターであるSB−4315
42(SB; (Inman et al., 2002))の添加によってこの経路を
阻害すると、ほぼ全ての赤芽球前駆体が除去された(
図1C)。これらの結果から、この
早期赤芽球前駆体集団の発生は、分化の2日目〜4日目の間のアクチビン/ノーダルシグ
ナル伝達のレベルによって影響を受けることが示される。0.3ng/mLのアクチビン
Aが骨髄系前駆体および赤芽球前駆体の両方を効率的に誘導したと仮定して、本発明者ら
は、別段示されなければ、その後の研究についてこの濃度を使用した。
【0059】
EBを、CD34、CD43、CD41およびCD45(hESC−分化培養において
発生する最も早期の造血細胞上で発現すると以前に示された細胞表面マーカー(Vody
anik et al., 2006))の発現について規定した時点でアッセイした。
CD34
+細胞の実質的な集団は、分化の6日目までに検出された。この集団は、次の9
日間にわたってサイズが着実に減少し、15日目までにはもはや検出不能であった(
図1
D)。CD43
+細胞は、9日目までに出現し、その時点で、CD34およびCD43発
現パターンは、他者によって報告されたもの(Timmermans et al.,
2009; Vodyanik et al., 2006)に類似であった。CD34
+CD43
+集団は経時的に減少したが、CD34
−CD43
+集団は増大した。CD4
1
+細胞は、分化の9日目までに存在したのに対して、CD45
+細胞は、13日目まで
有意なレベルでは検出されなかった。
【0060】
(CD34/CD43集団の造血潜在能)
分化の9日目において観察されたプロフィール(
図2A)は、Timmermans
et al. (2009)がT細胞前駆体を同定したステージにもっともよく似ている
ので、本発明者らは次に、コロニーアッセイおよび表面マーカー発現によって、造血潜在
能に関してこのステージからの異なるCD34/CD43画分を分析した。全ての赤芽球
、骨髄系および赤芽球/骨髄系前駆体をCD43
+画分へと分離し(
図2B)、より早期
の研究からの知見(Timmermans et al., 2009; Vodyan
ik et al., 2006)を確認した。P1(CD34
+CD43
−)もP5(
CD34
−CD43
−)も、いかなるコロニー形成細胞をも含まなかった。CD43
+前
駆体から生成される赤芽球コロニーの大部分は、小型で密集した形態であり、高レベルの
ε−グロビンおよび非常に低レベルのβ−グロビンを発現する大きな有核細胞を含んだ(
図6D, E)。このことは、それらが原始赤芽球(primitive erythr
oblast)であることを示した。
【0061】
以前の研究から、CD41aおよびCD235aの共発現は、原始赤芽球(primi
tive erythroid)および巨核球前駆体を含むhESC培養物において早期
に発生する集団を同定することが示された(Klimchenko et al., 2
009; Vodyanik et al., 2006)。フローサイトメトリー分析
から、CD41aおよびCD235aは、赤芽球前駆体をもっぱら含むCD43
+ P3
集団およびCD43
+ P4集団上でも広く発現されていることが示された。CD45発
現は、P2画分およびP3画分の小サブセットに制限され、CD235aとは決して共発
現しなかった(
図2Cおよびデータは示さず)。P1画分およびP5画分における細胞は
、これらのマーカーのうちのいずれも発現しなかった。まとめると、これらの結果は、以
前に記載されたものと一致し、CD41aおよびCD235aの早期の発現がヒト一次造
血の出現のしるしであるという解釈を裏付ける。
【0062】
(CD43
+CD41a
+CD235a
+集団は、CD34
+前駆体から発生する)
本発明者らは次に、規定した条件下で生成した原始赤芽球集団がCD34
+中間体に由
来するかどうかを決定することを対象にした。なぜなら、以前の研究から、血清誘導性培
養物において生成した最も早期のhESC由来の造血細胞がCD34
+前駆体から発生す
ることを示したからである(Vodyanik et al., 2006)。この問題
に対処するために、本発明者らは、分化の6日目(CD43
+CD41a
+CD235a
+原始集団の増殖より前のステージ)での前駆体を分析した。この段階において検出され
たCD34
+CD43
−集団およびより小さいCD34
+CD43
+集団の両方(
図2D
)を選別し、再集合させ、さらに3日間にわたって培養し(合計で9日目)、その後、分
析した。CD34
+CD43
+由来の集団全体が、CD43を発現し、これらの細胞の大
部分が、CD41aおよびCD235aを共発現した(
図2D,下側パネル)。対照的に
、CD34
+CD43
−由来の集団のうちの50%のみがCD43を発現し、これらのう
ち、約60%が、CD41aおよびCD235aを共発現した(中央パネル)。これらの
差異と一致して、CD34
+CD43
+集団は、CD34
+CD43
−集団より13倍多
くの前駆体を生成し(
図2E)、その大部分は、原始赤芽球であった。CD34
+CD4
3
−集団は、主に骨髄系前駆体を生じた。まとめると、これらのデータから、ヒト一次造
血は、分化培養において6日目程度の早さで出現するCD34
+前駆体から発生し、CD
43の共発現によって同定され得ることが明らかに実証される。
【0063】
(CD34/CD43画分の二次造血潜在能)
RT−qPCR分析から、SOX17(これは、マウスESC分化モデルにおいて二次
造血の出現を規定する(Irion et al., 2010))は、P1細胞におい
て最高のレベルで発現し、P2細胞においてより低い程度で発現し、P3およびP4の原
始集団では全く発現しないことが明らかとなった(
図2F)。LMO2およびGATA2
は、全ての集団において発現したのに対して、GATA1発現は、赤芽球前駆体を最高頻
度で含んだP4由来の集団において最高であった。
【0064】
9日目のCD34
+/CD43
+集団の二次潜在能(definitive pote
ntial)をさらに評価するために、各々を、OP9−DL4上で共培養することによ
ってT細胞潜在能についてアッセイした(Schmitt et al., 2004)
。T細胞前駆体は、これらの細胞が最高のレベルのSOX17を発現するという結果と一
致して、P1においてのみ検出された(
図3A)。P3画分およびP4画分は、OP9−
DL4間質上での2週間の培養後に、いかなるCD45
+細胞をも生成しなかったのに対
して、P2細胞は、2週間の時点で検出可能である一時的なCD45
+集団を生じたが、
Tリンパ球を生成することができなかった(
図3A)。P1細胞は、培養して14日目程
度の早さでCD5
+CD7
+ T細胞前駆体を、28日目までにCD4
+CD8
+ T細
胞を、および42日目にTCRαβ
+もしくはTCRγδ
+いずれかを発現するCD3
+
T細胞を生成した(
図3B,C)。T細胞発生の程度をさらに特徴付けるために、本発
明者らは、TCR Dβ2−Jβ2再配列の存在について、共培養した細胞に由来するゲ
ノムDNAを分析した。
図8に示されるように、上記hESC由来のT細胞は、ポリクロ
ーナルDβ2−Jβ2再配列を示す多重PCR生成物を含んだ。本明細書で記載されるh
ESC由来のCD34
+/OP9−DL4培養物からの早期および後期のT系統分化マー
カーの発現パターンは、臍帯血由来HSCを使用して代表的には観察されるもの(Awo
ng et al., 2009)に類似している。
【0065】
EB発生の時間分析から、分化の6日目のCD34
+集団はまた、11日目にCD34
+CD43
−集団およびCD34
+CD43
low集団の両方を含んだ(
図3E)ので、
T細胞潜在能を有する前駆体を含むことが明らかにされた(
図3D)。このステージにお
いて同定されたCD34
+CD43
low集団は、以前に記載されたT前駆体集団(Ti
mmermans et al., 2009)に類似であり得る。対照的に、3日目の
KDR
+血管芽細胞集団は、T細胞を生じなかった。このことは、リンパ系潜在能を有す
る前駆体が分化の3日目〜6日目の間のどこかで発生することを示す(データは示さず)
。
【0066】
まとめると、これらの分析からの知見は、分化の9日目では、二次造血前駆体(T細胞
潜在能によって規定されるとおり)がCD34
+CD43
−集団に制限され、CD43
+
一次造血集団とは異なることを示す。
【0067】
(アクチビン/ノーダルシグナル伝達の要件が、一次造血および二次造血を区別する)
アクチビン/ノーダルシグナル伝達は、mESC分化培養における一次造血において役
割を果たすことは公知であり(Nostro et al., 2008; Pears
on et al., 2008)、本発明者らのここでの以前の知見は、それが赤芽球
前駆体の早期の変動(wave)に必要とされることを示した(
図1C)ので、本発明者
らは次に、本発明者らが、上記経路の適切にステージ設定した(staged)阻害を介
してCD43
+/CD41a
+/CD235a
+集団全体の発生を選択的にブロックし得
るかどうかを決定することを対象とした。分化の最初の24時間以内に添加すると、アク
チビン/ノーダルインヒビターであるSBは、原始線条/中胚葉形成のためのこの経路の
公知の要件(Conlon et al., 1994)と一致して、分化の5日目に検
出したKDR
+CD34
+造血性中胚葉集団の誘導を完全にブロックした(
図4A)。し
かし、SBの添加を遅らせて分化の2日目〜4日目の間に添加した場合、KDR
+集団お
よびCD34
+集団は通常どおりに発生し、アクチビンA誘導性集団におけるものとサイ
ズが類似であった(
図4C)。ウェスタンブロット分析から、2日目のEBにおいてホス
ホ−SMAD2の存在が示された。このことは、内因性アクチビン/ノーダルシグナル伝
達がこのステージにおいて活発であることを示した(
図4B)。デンシトメトリーからは
、ホスホ−SMAD2のレベルは、SB処理後に有意に低下することが確認された。この
ことは、SBがアクチビン/ノーダルシグナル伝達をブロックしたことを示した。9日目
のEBの分析から、2日目〜4日目の間のこの経路の阻害は、CD43
+集団の発生を完
全にブロックするが、CD34
+細胞に影響を及ぼさないようであることが明らかになっ
た(
図4C)。9日目でのCD43
+集団の完全な阻害は、分化の2日目でのSBの添加
に依存した。なぜなら、3日目まで遅らせたところ、いくらかのCD43
+細胞の発生を
生じたからである(
図9)。大きなCD43
+集団は、培養の12日目までのSB処理E
Bから発生した。しかし、アクチビンA誘導性EBに由来するものとは対照的に、これら
の細胞は、CD41aもCD235aも発現しなかったが、CD45は発現した(
図4C
)。SB処理CD43
+集団のマーカープロフィールは、培養の12日目〜16日目の間
に変化しなかった。9日目に予測したように、アクチビンA誘導性集団の大部分は、CD
41aおよびCD235aを共発現した。
【0068】
CD43
+CD41a
+CD235
+集団の非存在および本発明者らの以前の結果と一
致して、赤芽球前駆体は、ここでアッセイした時点のいずれにおいてもSB処理EBで検
出されなかった(
図4D)。RT−qPCR分析から、SB処理EBから単離したCD3
4
+集団は、アクチビンA誘導性EBにおいて生成したCD34
+CD43
−集団より高
いレベルのSOX17およびAML1Cを発現することが明らかになった(
図4E)。L
MO2、GATA1、GATA2、およびHOXB4の発現のレベルは、上記2つの集団
において匹敵した。
【0069】
アクチビンA誘導性CD34
+細胞に類似して、SB処理の9日目のCD34
+前駆体
は、OP9−DL4細胞上で培養した場合にT細胞を生成した(
図5A)。興味深いこと
に、限界希釈分析から、SB処理CD34
+集団におけるT細胞前駆体の頻度は、アクチ
ビンA誘導性CD34
+CD43
−集団におけるより3倍超高いことが明らかになった(
表1)。このことは、分化培養早期での一次造血プログラムの阻害が、9日目のCD34
+集団におけるT細胞前駆体の富化と合致することを示した。アクチビンA誘導性前駆体
から生成したT細胞で認められるように、SB処理CD34
+細胞に由来するT細胞はま
た、ポリクローナルDβ2−Jβ2再配列を示した(
図8)。共培養の36〜43日目ま
でに、細胞の大部分は、生殖細胞系列バンドの喪失によって示されるように、TCRβ再
配列を示した。
【0070】
【表1】
a アクチビンAもしくはBのいずれかで処理したEB培養物から得られた、選別したC
D34
++CD43
−を、OP9−DL4細胞を含む96ウェル/プレートのウェルに数
を制限して入れ、16日間にわたって培養し、その後、フローサイトメトリー分析のため
に採取した。
b 個々のウェルを、CD45
+CD43
+CD7
++CD5
+染色に基づいてT細胞の
存在についてスコア付けした。ポワソンモデルに適用される最尤法を介して統計分析を行
った。
【0071】
これらのT細胞が機能的であったかどうかを決定するために、35〜40日間にわたっ
て培養した細胞を、可溶性のα−CD3抗体およびα−CD28抗体で4日間にわたって
刺激した。
図5Bに示されるように、刺激したCD3+ T細胞は、コントロール細胞と
比較して、前方散乱の増大を示し、これは、サイズの増大を反映し、早いステージでの活
性化を示した(June et al., 1990)。上記α−CD3/α−CD28
誘導性細胞はまた、活性化ヒトT細胞上で古典的にアップレギュレートされるCD25お
よびCD38の2つのマーカーの有意により高いレベルを発現した(P≦0.01)(F
unaro et al., 1990; Schuh et al., 1998)。
また、通常のヒトT細胞活性化と一致して、CD45ROアイソフォームの増大は、刺激
hESC由来のT細胞で観察された(
図5B)。活性化マーカーの発現におけるこれらの
変化は、hESC由来のT細胞が、刺激を感知しこれに応答し得る機能的T細胞レセプタ
ーを有することを示す。まとめると、広範囲なTCR再配列の証明とともに、機能的T細
胞レセプターの存在から、hESC由来のT細胞は、通常の成熟を受けていることが示唆
される。
【0072】
まとめると、これらの研究からの知見は、アクチビン/ノーダル経路の早期ステージの
阻害が一次造血をブロックする一方で、二次CD34
+集団(definitive C
D34
+ population)のT細胞潜在能を増強することを実証する。それらは
また、SB処理EBにおいて発生するCD43
+集団が、CD41aおよびCD235a
発現に関して9日目のアクチビンA誘導性集団とは異なることを示し、よって、本発明者
らがCD43発生の明確な一次ステージ(primitive stage)および二次
ステージ(definitive stage)を定義することを可能にする。
【0073】
(CD34+集団の造血潜在能)
上記アクチビンA誘導性(示されず)およびSB処理の二次CD34
+集団は、CD3
1、KDRおよびVE−CAD(HE上で見いだされるマーカー)((Tavian e
t al., 2010)において総説される)、ならびにCD90およびCD117(
CD34
+ 臍帯血由来のHSC上で見いだされるマーカー)(
図6A;(Doulat
ov et al., 2010; Notta et al., 2011))を共発
現する。しかし、これらの集団は、CD45を発現しなかった。上記集団がT細胞潜在能
に加えて骨髄系潜在能および赤芽球潜在能を示したかどうかを決定するために、上記細胞
を、造血性サイトカインの存在下でOP9−DL1間質細胞上で培養した。造血細胞の増
殖のために通常使用される野生型OP9細胞(Feugier et al., 200
5)ではなく、OP9−DL1細胞を使用した。なぜなら、本発明者らは、それらがより
多数の赤芽球前駆体の発生を支援することを見いだしたからである(示さず)。共培養の
7日間の後に、アクチビンA誘導性CD34
+細胞は、CD43
+CD45
+集団、なら
びにCD41a
+小集団を生成した。これらのCD41a
+細胞のうちのいくつかでのC
D42bの共発現は、それらが発生している巨核球を表すことを示唆する。SB処理CD
34
+細胞は、有意なレベルのCD41aもしくはCD235aを発現しないCD43
+
CD45
+集団を生じた(
図6B)。
【0074】
CD34
+CD43
−集団はまた、共培養の7日間の後に、赤芽球および骨髄系前駆体
潜在能を獲得した(
図6C)。興味深いことに、SB処理細胞は、アクチビンA誘導性前
駆体より有意に高い数の赤芽球および赤芽球−骨髄系前駆体を生じた。このことは、T細
胞前駆体に加えて、この集団がまた赤芽球/骨髄系潜在能において富化されていることを
示唆した。上記共培養から生成した赤芽球前駆体は、9日目のCD43
+由来の原始赤芽
球コロニーより実質的に大きなコロニーを生じた(
図6D)。両方のコロニータイプが、
有核赤血球を含んだ(
図6D,下側パネル)が、CD34
+−OP9−DL1共培養由来
のコロニーは、CD43由来の原始コロニーより有意に高い量のβ−グロビンを発現した
(
図6E)。ε−グロビン発現については逆のパターンが認められたが、大きなコロニー
が、このグロビンのかなりのレベルをなお発現する。CD34
+由来の骨髄系集団は、マ
クロファージ系統、マスト細胞系統および好中球系統の前駆体からなった(
図10)。ま
とめると、これらの共培養研究からの知見は、CD34
+二次集団が、T細胞潜在能に加
えて、赤芽球および骨髄系を示すことを明らかに示す。
【0075】
(iPSCからの二次造血発生)
上記の定向分化アプローチが、他のヒト多能性幹細胞系に適用され得るかどうかを決定
するために、本発明者らは、
図1Aにおけるように、iPSC系MSC−iPS1(Pa
rk et al., 2008)を誘導した。
図7(A,B)に示されるように、分化
は、予測したCD34
+/CD43
+集団およびCD34
+/CD41
+集団、ならびに
赤芽球、赤芽球/骨髄系および骨髄系前駆体の範囲の発生をもたらした。2日目〜4日目
の間のSBの添加は、hESC系で認められるように、CD41
+/CD43
+集団なら
びに赤芽球および赤芽球−骨髄系前駆体の発生を阻害した。さらに、アクチビンA分化条
件もしくはSB分化条件のいずれかによって生成したCD34
+細胞は、CD3を共発現
し(
図7C)、Dβ2−Jβ2 TCR再配列を示した(
図8)CD4
+CD8
+ T細
胞を生成した。まとめると、これらの結果からは、T細胞発生およびアクチビン/ノーダ
ルシグナル伝達のステージ設定した操作の組み合わせは、hiPSC培養物における二次
造血前駆体を同定および富化し、該二次造血前駆体を一次造血前駆体から区別するために
使用し得ることが実証される。
【0076】
hPSCからのHSCの誘導は、早期胚においてこの集団を生じる発生プログラムを確
立するストラテジーを要する。異なるモデル生物を使用する研究を考察することによって
、発生の進行であって、HEとして公知の二次造血前駆体集団の誘導および、この集団に
おける造血の発生運命へのその後の特殊化を含むHSCの生成に至るという、多分化能性
前駆体および移植可能な細胞を生じるという、発生の進行が概説される。PSC分化培養
における胚性造血を反復することの大きな難題は、2つの造血プログラムが空間的に分離
しておらず、結果として、早期ステージにおける一次造血の優勢が、該2つのプログラム
が進むにつれて二次造血前駆体を同定することを困難にしている。この研究において、本
発明者らは、hPSCからの二次造血の開始を追跡するためにT細胞潜在能を使用し、そ
うするにあたって、発生上の潜在能、細胞表面マーカーおよびアクチビン/ノーダルシグ
ナル伝達に対する依存性に基づいて、一次造血プログラムから区別され得る二次造血プロ
グラムを同定した。
【0077】
転写因子GATA2、LMO2、AML1C、ならびに造血表面マーカー(CD45も
しくはCD43)ではなく内皮表面マーカー(KDR、CD31、VE−CAD)を含む
二次CD34
+集団の発現プロフィールは、それがヒトHEの等価物を表すことを示唆す
る。T細胞潜在能を有するこれらの特徴を伴う集団の生成は、特有であり、HSCを生成
することにおける重要な最初の工程を表す。いくつかの他の研究が、造血潜在能を示すh
ESC由来の内皮前駆体集団を記載した(Choi et al., 2012; Ho
ng et al., 2011; Wang et al., 2004; Zamb
idis et al., 2005)。これらの報告のうちの最も近年のものにおいて
、Choi et al (2012)は、一次造血プログラムの前駆体であるBL−C
FC(血管芽細胞)とは異なるようである血液生成内皮前駆体(HEP)を同定した。し
かし、リンパ系潜在能は、この研究においても他の研究のうちのいずれにおいても評価さ
れていなかったので、これらの集団が二次造血プログラムの前駆体を表すかどうかは明確
でない。
【0078】
OP9−DL1上での7日間にわたる共培養の後に、CD34
+集団は、CD43およ
びCD45の発現をアップレギュレートし、赤芽球および骨髄系前駆体潜在能(造血の発
生運命へのHEの特殊化の等価物を表し得る移行)を獲得する。本発明者らの研究は、O
P9−DL1間質が、赤芽球前駆体発生を促進することにおいてOP9間質より効率的で
あることを示した。このことは、Notchシグナル伝達がこの特殊化工程に必要とされ
得ることを示唆した。CD34
+由来の赤芽球前駆体は、アクチビン誘導性CD43
+由
来原始赤芽球コロニーとは形態的に異なり、かつこれより有意に高いレベルのβ−グロビ
ンを発現する大きな赤芽球コロニーを生成する。これらの結果と、それらが表現型上およ
び時間的に異なる集団から発生するという事実とを合わせると、これらの赤芽球前駆体が
同じではないことが明らかに実証される。以前の研究は、血清誘導性EBにおいて異なる
赤芽球前駆体が経時的に出現することを記載し、それらが一次造血および二次造血の両方
の後代を表すことを示唆した(Chadwick et al., 2003; Zam
bidis et al., 2005)。本明細書で記載されるCD34
+由来の赤芽
球前駆体は、CD43
+由来の一次前駆体とは異なるが、それらは、高レベルのε−グロ
ビンをなお発現する。CD34
+由来の前駆体が、一次プログラムを過ぎた1つの工程(
一次赤血球生成および二次赤血球生成との間の移行)を表すことは、可能である。
【0079】
9日目のEBにおいてCD34
+二次前駆体が同定されたので、本発明者らは、初めて
、以下の特性を示す別個のヒト二次造血集団および一次造血集団(モデル;
図7D)を規
定することができた。第1に、9日目において出現する一次造血集団は、CD43と一緒
に、CD41aおよびCD235aを発現するのに対して、9日目の後に発生する二次集
団は、CD43と一緒に、CD45を発現するが、CD41aもCD235aも発現しな
い。CD41aおよびCD235aは、それらが、それぞれ、巨核球および赤芽球系統に
制限される二次プログラムにおいてより後期のステージで発現する(Andersson
et al., 1981; Phillips et al., 1988)。第2
に、ヒト一次造血プログラムの発生は、分化の2日目を過ぎて、アクチビン/ノーダルシ
グナル伝達に依存する。二次造血は、対照的に、分化の2日目〜4日目の間にこの経路を
必要としない。第3に、一次造血および二次造血はともに、CD34
+前駆体から発生す
る。6日目でのCD43
+とCD34との共発現は、一次プログラムの開始を規定するよ
うである。なぜなら、原始赤芽球前駆体の大部分は、この集団に由来するからである。両
方のプログラムがCD34
+前駆体から発生するという事実は、このマーカーがPSC分
化培養における造血発生をモニターするために十分ではなく、発生の最も早期のステージ
において一次前駆体および二次前駆体を区別する新たな表面マーカーを同定する必要性を
強調することを明らかに示す。
【0080】
この研究において低分子SB−431542でアクチビン/ノーダルシグナル伝達経路
を操作することは、hESC培養における造血システムの確立におけるその役割への、同
様にヒト二次造血の起源への新規な考察を提供した。SB−431542は、アクチビン
/ノーダル経路の非常に強力かつ選択的なインヒビターとして同定されたが、他の経路の
阻害も、BMP4、ERK、JNKもしくはp38 MAPKを含むキナーゼの阻害も観
察されてこなかった{Inman, 2002 #48}。SBが2日目のEBにおいて
ホスホ−Smad2レベルを低下させること(
図4B)、および、それが赤芽球コロニー
形成に対してアクチビンAとは反対の効果を有する(
図1B)という本発明者らの実証は
、原始赤芽球系統に対するその効果が、未知の標的ではなくアクチビン/ノーダル経路の
阻害を介して媒介されるという強力な証拠を提供する。以前の研究から、アクチビン/ノ
ーダルが、BMP−4およびWnt経路に加えて、全て、原始線条形成、中胚葉誘導およ
び造血特殊化を含むhPSC培養における早期の誘導工程において役割を果たすことが実
証された(Davis et al., 2008; Jackson et al.,
2010; Kennedy et al., 2007; Kroon et al
., 2008; Sumi et al., 2008; Vijayaragava
n et al., 2009)。この報告におけるアクチビン/ノーダル経路インヒビ
ターのステージ設定した添加は、発生の早期ステージにおけるこの経路の役割を強化する
。なぜなら、分化の1日目〜2日目の間の添加は、いかなるKDR
+細胞の発生をも妨い
だからである。このことは、中胚葉形成の欠如を示す。さらに、本発明者らの研究は、ヒ
ト一次造血発生の最も早期のステージにおけるアクチビン/ノーダルシグナル伝達の以前
に同定されていなかった要件を証明する。この点に関して、以前の研究が、この経路がま
たマウス一次造血発生に必要とされることを示した(Nostro et al., 2
008, Pearson et al., 2008)ように、マウスおよびヒトの一
次造血は、同様に調節されるようである。本発明者らのウェスタン分析は、2日目のEB
においてアクチビン/ノーダルシグナル伝達を示すホスホ−SMAD2の存在を実証する
一方で、この効果を媒介する相互作用する経路および/もしくは下流経路は、現在も未知
である。分化の2日目〜4日目の間にSBと一緒に、Wnt、NotchおよびSHHを
含む他の経路のアゴニストおよび/もしくはアンタゴニストの添加は、阻害効果にほとん
ど影響を有しなかった。このことは、それらがこの効果を媒介することに直接関与しない
ことを示唆した(データは示さず)。
【0081】
一次造血をブロックすることに加えて、分化の早期ステージにおいてSBを添加すると
、CD34
+集団の潜在能に影響を及ぼすようでもあった。SB処理CD34
+集団は、
より高いレベルのSOX17およびAML1Cを発現し、対応するアクチビンA誘導性集
団より高い頻度の赤芽球およびT細胞前駆体を含んだ。これらの結果は、分化の早期ステ
ージにおけるシグナル伝達の操作が、より後期のステージの細胞の潜在能に影響を及ぼし
得、よってこのような研究のための規定した誘導条件および正確なステージ特異的プロト
コルを使用することが重要であることを強調し得るということを明らかに実証する。
【0082】
まとめると、ここで報告された知見から、Tリンパ系、骨髄系および赤芽球潜在能、な
らびにプレHSC集団を示す表面マーカーおよび遺伝子発現パターンを示す二次造血前駆
体集団を同定した。本発明者らは、ここで同定した二次前駆体が、hPSCからのHSC
の生成における第1の工程を表し、よって、最も早い造血前駆体へのその特殊化および移
植可能な幹細胞への成熟を制御する調節経路を定義するための、容易にアクセス可能な標
的集団を提供するという仮説を立てている。二次造血のマーカーを提供することに加えて
、規定の誘導条件下でのhPSCからT細胞を生成する能力は、この系統の発生起源、な
らびにインビトロモデルおよびインビボモデルにおいて上記細胞の機能的潜在能を研究す
る特有の機会を提供する。
【0083】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書で記載されてきたが、本発明の趣旨もしくは添
付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明に対するバリエーションが行われ得る
ことは、当業者によって理解される。本明細書で開示される全ての文書は、参考として援
用される。
【0084】
(参考文献)
【0085】
【数1】
【0086】
【数2】
【0087】
【数3】
【0088】
【数4】
【0089】
【数5】
【0090】
【数6】
【0091】
【数7】