(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-100785(P2021-100785A)
(43)【公開日】2021年7月8日
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20210611BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20210611BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B25J19/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2021-53700(P2021-53700)
(22)【出願日】2021年3月26日
(62)【分割の表示】特願2019-28492(P2019-28492)の分割
【原出願日】2019年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】507140357
【氏名又は名称】SKソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勝彦
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS11
3C707KS12
3C707KS13
3C707KS20
3C707KS22
3C707KS23
3C707KT01
3C707KX06
3C707KX19
3C707LS15
3C707LT01
3C707LT06
3C707LT08
3C707LU03
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV12
3C707MS06
3C707MS07
3C707MS09
3C707MS14
3C707MS15
3C707MS27
(57)【要約】
【課題】ロボットの可動範囲内の人や物などの物体とロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクターとの干渉を回避すること。
【解決手段】本発明では、エンドエフェクター(4)と物体(7)との接近を検出するための接近センサー(9)と、エンドエフェクター(4)の動作を検出するための動作センサー(11)とを有し、動作センサー(11)の検出値からエンドエフェクター(4)の進行方向を求め、エンドエフェクター(4)の進行方向に接近センサー(9)のセンシング方向を向けて接近センサー(9)でエンドエフェクター(4)と物体(7)との接近を検出し、接近センサー(9)の検出値に基づいてエンドエフェクター(4)の動作を制御することにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの可動範囲内の人や物などの物体とロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクターとの干渉を回避するロボットの制御方法において、
エンドエフェクターと物体との接近を検出するための接近センサーと、エンドエフェクターの動作を検出するための動作センサーとを有し、
動作センサーの検出値からエンドエフェクターの進行方向を求め、エンドエフェクターの進行方向に接近センサーのセンシング方向を向けて接近センサーでエンドエフェクターと物体との接近を検出し、接近センサーの検出値に基づいてエンドエフェクターの動作を制御することを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項2】
前記接近センサーの検出値からエンドエフェクターと物体との相対加速度を求め、相対加速度に応じてエンドエフェクターの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項3】
前記物体の位置を認識する認識センサーの検出値に基づいて、接近センサーのセンシング方向をエンドエフェクターの進行方向に向けるように制御することを特徴とする請求項1に記載のロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの可動範囲内の人や物などの物体とロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクターとの干渉を回避するためのロボットの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、製造業等において産業用ロボットとして従来より幅広く利用されてきている。特に近年においては、労働人口の減少を補うために工場内で作業者と協力して働く協働ロボットが注目されている。
【0003】
このロボットにおいては、ロボットの可動範囲内の人や物などの物体と衝突すると、人を損傷させてしまったり、物やロボットが破損してしまうおそれがあるため、その衝突を回避する制御が必要となる(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−1217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットには、アームの先端にエンドエフェクターが設けられ、エンドエフェクターで各種の作業を行うように制御されるものがある。このロボットにおいては、アームの先端に設けられたエンドエフェクターが広い範囲で素早く動き回ることもあり、また、エンドエフェクターの形状も必ずしも滑らかな形状とは限られない。
【0006】
一方、ロボットの可動範囲内の人やその人と共に移動する物は、俊敏に移動することもあり、また、ロボットのエンドエフェクターとの衝突によって、人の目や口などの身体を重度に損傷させてしまったり、物の商品価値が損なわれる状態にまで破損させてしまうおそれがある。
【0007】
そのため、アームの先端にエンドエフェクターが設けられたロボットにおいては、エンドエフェクターと人や物などの物体との干渉を回避することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、ロボットの可動範囲内の人や物などの物体とロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクターとの干渉を回避するロボットの制御方法において、エンドエフェクターと物体との接近を検出するための接近センサーと、エンドエフェクターの動作を検出するための動作センサーとを有し、動作センサーの検出値からエンドエフェクターの進行方向を求め、エンドエフェクターの進行方向に接近センサーのセンシング方向を向けて接近センサーでエンドエフェクターと物体との接近を検出し、接近センサーの検出値に基づいてエンドエフェクターの動作を制御することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記接近センサーの検出値からエンドエフェクターと物体との相対加速度を求め、相対加速度に応じてエンドエフェクターの動作を制御することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記物体の位置を認識する認識センサーの検出値に基づいて、接近センサーのセンシング方向をエンドエフェクターの進行方向に向けるように制御することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、ロボットの可動範囲内の人や物などの物体とロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクターとの干渉を回避するロボットの制御方法において、エンドエフェクターと物体との接近を検出するための接近センサーの検出値に基づいてエンドエフェクターの動作を制御することにしているために、エンドエフェクターと人や物などの物体との干渉を回避することができる。
【0013】
特に、前記エンドエフェクターの動作を検出するための動作センサーの検出値からエンドエフェクターの進行方向を求め、エンドエフェクターの進行方向に接近センサーのセンシング方向を向けて接近センサーでエンドエフェクターと物体との接近を検出し、接近センサーの検出値に基づいてエンドエフェクターの動作を制御することにしているために、エンドエフェクターと人や物などの物体との干渉を精度良く回避することができる。
【0014】
また、前記接近センサーの検出値からエンドエフェクターと物体との相対加速度を求め、相対加速度に応じてエンドエフェクターの動作を制御することにした場合には、素早く動作するエンドエフェクターと俊敏に移動する物体(人)との干渉をより一層精度良く回避することができる。
【0015】
また、前記物体の位置を認識する認識センサーの検出値に基づいて、接近センサーのセンシング方向をエンドエフェクターの進行方向に向けるように制御することにした場合には、人や物などの物体とエンドエフェクターとの接近を早期に検出することができ、物体とエンドエフェクターとの干渉を良好に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るロボットの制御方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、ロボット1は、工場等の作業空間2に設置されており、可動するアーム3の先端にエンドエフェクター4が取付けられている。なお、一般的にアーム3は、多軸で構成され所定範囲内で自在に稼働するようになっているが、これに限られず、一定範囲内で一定方向への動作を行うものであってもよい。また、エンドエフェクター4は、ロボット1の作業内容に応じて1種類又は複数種類の動作を行う各種のものが含まれる。
【0019】
作業空間2の天井には、ロボット1と作業者5や物6などの物体7を認識するための認識センサー8が設けられている。なお、認識センサー8は、ロボット1や物体7を認識することができればよく、カメラ等の撮像手段でもよく、レーザーや音波などを用いたセンサーや電磁波等を用いた検出手段であってもよい。また、ロボット1と物体7とを同時に認識できる1台の装置に限られず、複数台の装置でロボット1と物体7とを同時に又は別々に認識できるものであってもよい。
【0020】
また、ロボット1のエンドエフェクター4には、エンドエフェクター4と物体7との接近を検出するための接近センサー9が移動機構10を介して設けられている。なお、接近センサー9は、エンドエフェクター4と物体7との接近を検出することができればよく、エンドエフェクター4と物体7との相対的な距離を計測できる距離センサーが好適である。接近センサー9は、検出範囲が予め定まっており特定の方向において検出が可能な指向性を有している。また、移動機構10は、エンドエフェクター4に対して接近センサー9のセンシング方向(指向方向)を移動させることができればよく、構造は限定されないが、エンドエフェクター4の動作速度よりも速く動作する構造とするのが好ましい。
【0021】
さらに、ロボット1のエンドエフェクター4には、エンドエフェクター4の動作(移動方向や移動速度など)を検出するための動作センサー11が設けられている。なお、動作センサー11は、エンドエフェクター4の移動方向や移動速度などの動作を直接的又は計算によって間接的に検出することができればよく、たとえば、加速度センサーとジャイロセンサーとの組合せなどが好適である。
【0022】
そして、
図2に示すように、ロボット1(アーム3、エンドエフェクター4)や認識センサー8や接近センサー9や移動機構10や動作センサー11は、コントローラー12に接続されている。コントローラー12は、認識センサー8や接近センサー9や動作センサー11からの検出値に基づいてロボット1や移動機構10を駆動制御するためのプログラムに従って制御するようになっている。なお、コントローラー12は、1台の装置で構成する場合に限られず、複数台の装置で個別に制御を行うように分散させて構成してもよい。
【0023】
コントローラー12は、認識センサー8でロボット1や物体7を認識し、必要に応じて警報音や警告灯などによって報知する。たとえば、コントローラー12は、認識センサー8で認識される領域を、作業空間2の全体の領域である作業領域と、ロボット1が可動する可動領域と、ロボット1のエンドエフェクター4から所定距離内の危険領域とに分け、各領域ごとに異なる報知を行う。
【0024】
また、コントローラー12は、接近センサー9でエンドエフェクター4と物体7との接近を検出し、接近センサー9の検出値に基づいてロボット1(エンドエフェクター4)の動作を制御する。たとえば、コントローラー12は、接近センサー9の検出値からエンドエフェクター4と物体7との相対距離を求め、相対距離が第1の所定距離未満となった場合には報知を行うとともにエンドエフェクター4の動作を低速にし、相対距離が第2の所定距離(第1の所定距離よりも近接した距離)未満となった場合にはエンドエフェクター4の動作を停止する。
【0025】
このエンドエフェクター4と物体7との接近による制御においては、エンドエフェクター4と物体7との相対距離に応じてエンドエフェクター4の動作を制御する場合に限られず、エンドエフェクター4と物体7との相対距離の時間的変化から算出される相対速度や相対加速度や相対加加速度などに応じてエンドエフェクター4の動作を制御することもできる。このように、時間的変化が加味される相対速度や相対加速度などのほうが共に移動するエンドエフェクター4と物体7との干渉を精度良く検出することができ、特に、相対加速度等の高次の加速度の場合には機敏で動作の予測が困難な人(作業者5)に対しても柔軟に対応することができる。
【0026】
さらに、エンドエフェクター4と物体7との接近による制御において、コントローラー12は、動作センサー11の検出値からエンドエフェクター4の進行方向を求めるとともに、そのエンドエフェクター4の進行方向と接近センサー9のセンシング方向とが一致するように移動機構10を駆動制御する。そして、コントローラー12は、エンドエフェクター4の進行方向に接近センサー9のセンシング方向を向けた状態で接近センサー9でエンドエフェクター4と物体7との接近を検出し、その接近センサー9の検出値に基づいてエンドエフェクター4の動作を制御する。
【0027】
その際に、コントローラー12は、常時、エンドエフェクター4の進行方向と接近センサー9のセンシング方向とを一致させてもよく、また、認識センサー8でロボット1や物体7の位置や距離を認識し、必要に応じてエンドエフェクター4の進行方向と接近センサー9のセンシング方向とを一致させてもよい。たとえば、認識センサー8によって物体7が可動領域に進入したことを認識した場合にだけエンドエフェクター4の進行方向と接近センサー9のセンシング方向とを一致させるように移動機構10を制御してもよい。また、認識センサー8によって物体7の動きを時系列的に追跡し、物体7がエンドエフェクター4に近接していることを認識した場合にエンドエフェクター4の進行方向と接近センサー9のセンシング方向とを一致させるように移動機構10を制御してもよい。
【0028】
以上に説明したように、上記ロボット1は、ロボット1の可動範囲内の人(作業者5)や物6などの物体7とロボット1のアーム3の先端に設けられたエンドエフェクター4との干渉を回避するように制御されており、エンドエフェクター4と物体7との接近を検出するための接近センサー9の検出値に基づいてエンドエフェクター4の動作を制御するように構成している。
【0029】
そのため、上記構成のロボット1では、エンドエフェクター4と人(作業者5)や物6などの物体7との干渉を回避することができ、ロボット1との衝突によって人(作業者5)が損傷したり物6やロボット1が破損してしまうのを防止することができる。
【0030】
また、上記ロボット1は、エンドエフェクター4の動作を検出するための動作センサー11の検出値からエンドエフェクター4の進行方向を求め、エンドエフェクター4の進行方向に接近センサー9のセンシング方向を向けて接近センサー9でエンドエフェクター4と物体7との接近を検出し、接近センサー9の検出値に基づいてエンドエフェクター4の動作を制御する構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成のロボット1では、エンドエフェクター4と人(作業者5)や物6などの物体7との干渉を精度良く回避することができ、ロボット1との衝突によって人(作業者5)が損傷したり物6やロボット1が破損してしまうのをより確実に防止することができる。
【0032】
また、上記ロボット1は、接近センサー9の検出値からエンドエフェクター4と物体7との相対加速度を求め、相対加速度に応じてエンドエフェクター4の動作を制御する構成となっている。
【0033】
そのため、上記構成のロボット1では、素早く動作するエンドエフェクター4と俊敏かつ予測困難に移動する物体7(特に人(作業者5))との干渉をより一層精度良く回避することができる。
【0034】
また、上記ロボット1は、物体7の位置を認識する認識センサー8の検出値に基づいて、接近センサー9のセンシング方向をエンドエフェクター4の進行方向に向けるように制御する構成となっている。
【0035】
そのため、上記構成のロボット1では、人や物などの物体7とエンドエフェクター4との接近を早期に検出することができ、物体7とエンドエフェクター4との干渉を良好に回避することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ロボット 2 作業空間
3 アーム 4 エンドエフェクター
5 作業者 6 物
7 物体 8 認識センサー
9 接近センサー 10 移動機構
11 動作センサー 12 コントローラー