【実施例】
【0102】
〔実施例1a〕
泡浮遊選鉱分離、特に超微粒および極微粒用に設計されたものと、機械的および熱的脱水技法との併用によって、石炭微粒の脱塩および脱水を達成できる。
【0103】
石炭スラリーを濾過し、これをタンクに回収してから、添加量を制御して泡浮遊選鉱剤を添加する。密閉系のエアコンプレッサからのプロセス水および濾過空気で充填されたミクロ粒子分離機を使用して、親水性ミネラル材料から疎水性炭素材料を選別する。炭素粒子を含有する泡が、タンクからあふれ出て、開いた頂部の樋に集められる。ミネラルパルプが分離タンク中に流出するまで保持される一方、脱塩された石炭スラリーは、脱気後に、ペレット化工程にポンプ圧送される。さらに、必要に応じて、様々な公知の摩砕技法(炭化水素油を粉砕助剤として使用する技法を含む)によって、石炭粒度の縮小を達成できる。
【0104】
脱塩された極微粒炭スラリーの機械的脱水を、回転式真空ドラムフィルタまたは圧濾器で遂行する。結果として生ずる極微粒炭湿潤ケークを、熱的または機械的に乾燥させて粉末形態にする場合もあれば、ペレット状にしてから乾燥させる場合もある。ミキサーの中で、ペレット化のための特定の改質剤を濾過ケークに添加し、ペレット化を最適化してから、改質されたケークを押出機に運搬して、この押出機で圧縮してペレット状にする。次いで、脱塩炭ペレットを封入コンベヤベルトおよびバケットエレベータで直立式ペレット乾燥機に搬送し、熱的に乾燥させた。このペレット乾燥機で、脱酸素高温プロセス空気を、極微粒炭ペレットに直接吹き込む。
【0105】
このようにして、極微粒炭1、3、4b、5、7および8を調製した。表3を参照のこと。これらの画分を粒度の降順に並べて示したのが、以下である。
・石炭3(d90=14.2μm)>石炭1(d90=12.0μm)>石炭4b(d90=8.0μm)>石炭7(d90=6.7μm)>石炭5(d90=5.1μm)>石炭8(d90=4.3μm)。
【0106】
石炭D、F、5、6および8は、灰分含有率がそれぞれ1.4質量%、1.5質量%、1.5質量%、1.8質量%および1.6質量%であり、灰分含有率が極めて低い石炭の例である。石炭7の灰分含有率は、僅か0.8質量%と例外的に低い。燃料油灰分含有率の仕様には、0.01質量%(舶用蒸留燃料油)から015質量%(舶用RFOグレードのRMK)に至るまでのばらつきが見られる。燃料油の灰分含有率がゼロに近いと想定した場合、RMKに添加しても支障がなくかつ仕様の域に留まりうる極微粒炭D、F、5、6、7および8の比率はそれぞれ、10.7質量%、10.0質量%、10.0質量%、8.3質量%、18.8質量%および9.4質量%である。石炭7と一緒に調製された別の泡浮遊選鉱画分である石灰7Aは、灰分含有率が0.5質量%とさらに低かった。同様に、石炭7Aを、最高30質量%の添加量でRMKに添加できるだけでなく、最高2質量%の添加量で舶用蒸留燃料油に添加しても差し支えない。
【0107】
また、これらの調製技法によって生成される極微粒炭は硫黄分含有率が低い。たとえば、表3中の石炭3および石炭8は、硫黄分含有率の低い石炭の例(それぞれ1.0質量%および0.9質量%)であり、硫黄上限が3.5質量%のほとんどのRFOグレードにおいて容易に使用できる。石炭7の硫黄分含有率は僅か0.4質量%と例外的に低く、0.5質量%という低い硫黄限度を義務付ける将来(2020年以降)の舶用RFOグレードに適合するであろう。それ程に低いRFO中の硫黄規格値に適合することが期待されている製油所では、大規模な投資を行っているため、極微粒炭ビジネスに向けた明確な機会がある。
【0108】
〔実施例1b〕
大型塊および石炭粒子を粉砕して、石炭極微粒を湿潤媒体の形で得る
【0109】
灰分含量もしくは含水量が低いこと、または粉砕が容易であること、たとえばハードグローブ粉砕性指数が高いこと等の、有利な石炭特性に基づいて、石炭の種類を選択するとよい。様々な標準破砕技法および粉砕サイズ縮小技法によって、石炭極微粒を湿潤媒体の形で得た後、脱水した。
【0110】
1.製造された洗浄済の湿潤石炭(たとえば、表3中の石炭Dまたは石炭F)を、たとえば高圧粉砕ローラーミルまたはジョークラッシャーで破砕して50mmまたはその付近からおよそ6mmまで縮小させる。好適な機器の製造元は、Metso Corporation(Fabianinkatu 9 A, PO Box 1220, FI-00130 Helsinki, FIN-00101, Finland)またはMcLanahan Corporation(200 Wall Street Hollidaysburg, PA 16648, USA)である。
【0111】
2.好適なボールミル、ロッドミルまたは撹拌媒体デリターで、6mm未満の湿潤スラリーを生成し、40μmまで縮小させる。好適な機器の製造元は、Metso Corporationである。この後に、任意選択的に、石炭を高剪断ミキサーにかけて高剪断粉砕してもよい。好適な高剪断ミキサーの製造元は、Charles Ross & Son Co.(710 Old Willets Path, Hauppauge, NY 11788, USA)またはSilverson Machines, Inc.(355 Chestnut St., East Longmeadow, MA 01028, USA)である。
【0112】
3.ナノミル(ペグミルまたは水平ディスクミルのいずれか)を用い、40μm未満のスラリーを1μm未満またはその付近まで縮小させる。好適な機器の製造元は、NETZSCH-Feinmahltechnik GmbH(Sedanstrasse 70, 95100 Selb, Germany)である。また、Isamillsを使用して摩砕および研磨によって粒度を5μm未満に縮小できる。これらのミルは広く入手可能であるが、現在は生産中止となっている。
【0113】
4.高圧にて作動するチューブプレスを用い、メンブレンフィルタまたは垂直プレート圧力フィルタに通して、およそ50質量%から20質量%未満またはその付近まで脱水する。代替の脱水方法としては、(米国特許出願公開第2015/0184099号(特許文献28)に記載の)振動支援型真空脱水、およびMcLanahan Corporation製等の圧濾器が挙げられる。
【0114】
5. 下掲のものを用いて、2質量%を下回るまで脱水する。
a. 流動床、ロータリー式乾燥機、フラッシュ乾燥機またはベルト乾燥機のような熱乾燥機。好適な機器の製造元企業は、ARVOS Group(Raymond Bartlett Snow Division.4525 Weaver Pky.Warrenville, Illinois 60555, USA)およびSwiss Combi Technology GmbH(Taubenlochweg 1, 5606 Dintikon, Switzerland)等である。
b. たとえば、米国特許第3327402号明細書(特許文献29)、米国特許第4459762号明細書(特許文献30)および米国特許第7537700号明細書(特許文献31)に記載されているような、アルコール類、エーテル類またはケトン類を用いた溶媒脱水技法。
【0115】
〔実施例1c〕
大型塊および石炭粒子を粉砕して、乾燥状態の石炭極微粒を得る
【0116】
標準的な破砕、粉砕および微粉化によるサイズ縮小化技法によって乾燥状態の石炭極微粒を得た。
【0117】
1.乾燥した生シーム石炭を、ジョークラッシャーで30mm未満のサイズになるまで破砕する。
【0118】
2.分級機内蔵型ボールミルを使用するか、または遠心摩砕ミル(たとえば、現在は製造中止となっているが広く入手可能なLopulcoミル)を使用して、乾燥した石炭を、30mm未満から45μm未満のサイズまたはその付近まで粉砕する。好適な機器の製造元は、Loesche GmbH(Hansaallee 243, 40549 Duesseldorf, Germany)、およびBritish Rema
Process Equipment Ltd(Foxwood Close, Chesterfield, S41 9RN, U.K.)である。
【0119】
3.空気マイクロナイザー(または、ジェットミル)を用い、1μm未満またはその付近まで縮小させた。好適な機器の製造元は、British Remaである。
【0120】
このようにして、灰分含有率が1.4質量%と極めて低い石炭Dから、幾つかの異なるサイズの画分(石炭2A〜2E)を調製した。表3および表5を参照のこと。これらの画分を粒度の降順に並べて示したのが、以下である。
・ 石炭2E(d90=86μm)>石炭2D(d90=21.1μm)>石炭2C(d90=15.1μm)>石炭2B(d90=6.7μm)>石炭2A(d90=4.4μm)。
【0121】
燃料油の灰分含有率がゼロに近いと想定した場合、RMKに添加しても支障がなくかつ仕様の域に留まりうる極微粒炭D比率は10.7質量%である。石炭Dは、硫黄分含有率が0.6質量%と非常に低い石炭のもう1つの例であり、ほとんどのRFOグレードにおいて容易に使用できる。
【0122】
〔実施例1d〕
乾燥石炭を、燃料油または同様な油製品と共に粉砕して、極微粒炭−燃料油のケークを得る
【0123】
Netzsch LME4水平メディアミルまたはLaboratory Agitator Bead Mill「LabStar」器具で、燃料油を固体濃度40〜50質量%の流動媒体としてスラリー中に混合し、乾燥石炭(たとえば、表3中の石炭D)を粉砕して、極微粒炭を燃料油中に混ぜ込んだケークを得た。
【0124】
このようにして、極微粒炭Dの試料を、それぞれ異なるサイズで(d90値をそれぞれ僅か10.7μmおよび2.2μmに)調製した。
【0125】
結果として得られた、ディーゼル−石炭の混合物Dは、粉砕完了時には十分に分散された。石炭とディーゼルとのスラリー40質量%を、1リットルのメスシリンダーに周囲温度にて貯蔵して、周囲温度で分散試験を行った。24時間後に、メスシリンダーの上部、中央部および底部から分散したスラリーの試料50mlを採取し、濾過により石炭含有率を算出した。頂部層、中間層および底部層のそれぞれにおける石炭含有率値34.7質量%、35.2質量%および40質量%が得られた。このことから、ディーゼル中の極微粒炭の分散が、周囲温度にて少なくとも24時間安定であることが明らかにされた。実施例15に記載されている希釈法を用いたレーザー散乱によって、燃料油ケーク中の石炭粒子の粒度分布が得られた。
【0126】
〔実施例2〕
燃料油中の極微粒炭の分散は、様々な形態の極微粒炭の高剪断混合によって達成できる
【0127】
乾燥極微粒炭粉(たとえば、表3中の石炭試料1、3、4b、8および5)、極微粒炭の乾燥ペレット、または極微粒炭を炭化水素油に混ぜ込んだケーク形態のものを、容器に入れた高剪断ミキサーで燃料油中に解凝集、分散させ、必要に応じて、分散性を高める助けになる添加剤を添加する。任意選択的に、キャビテーションの誘発によって脱凝集を増強する超音波機能を、容器に取り付けてもよい。剪断混合は、周囲温度で、あるいは高粘度の燃料油の場合、高温で(典型的には最高50℃で)遂行する。好適な剪断ミキサーは、Charles Ross & Son Co.(710 Old Willets Path, Hauppauge, NY 11788, USA)製、Silverson Machines Inc. (355 Chestnut St., East Longmeadow, MA 01028, USA)製、およびNetzsch-Feinmahltechnik製のものである。
【0128】
このプロセスは、通常、蒸留プラント、オイルデポもしくはバンカー設備、発電所、または工業プロセスの現場で実施される。結果として生じた燃料油/極微粒炭の分散液は、撹拌および加熱装置付きタンク中で周囲温度にて数か月間安定な状態で貯蔵することもできれば、あるいは高温にて短期間貯蔵することもできるし、また、本製品をエンドユーザーの燃焼装置に即座に送達することもできる。
【0129】
〔実施例3〕
極微粒炭−燃料油の混合物の特性
【0130】
3種の燃料油(2種のRFO試料と、1種の舶用蒸留液(すなわち舶用ディーゼル))に極微粒炭試料を混ぜ込み、分散を助けるための添加物を添加して、ある範囲の仕様パラメータについて一連の分析テスト結果を得た。
【0131】
同じ属(generic)の米国産低揮発分瀝青炭源から誘導された極微粒炭の試料4種(試料1、3、4bおよび8)と、米国産高揮発分瀝青炭の試料3種(試料5、6およびD)と、コロンビア産高揮発分瀝青炭の試料1種(試料F)と、もう1種のオーストラリア産試料(試料7)とを併用して試験した。
【0132】
石炭試料の特性評価試験は、表3に示してある。極微粒炭試料はそれぞれ、粒度および灰分含有率の点で異なっている。
・試料1は灰分含有率が最も高く(8.5質量%)、試料4bは試料1と比べて灰分含有率が僅かに低い(7.0質量%)。
・試料3は、試料1と比べて灰分含有率が低く(4.5質量%)、平均粒度は6.2μm(d50=7.0μm)である。
・試料8、試料5、試料6、試料Dおよび試料Fは、灰分含有率がはるかに低い(1.4〜1.8質量%)。
・試料Dおよび試料Fは、d50粒度が16〜17μmと最も大きい。
・試料8および試料5はそれぞれ、d50粒度が1.8μmおよび1.5μmと最も小さい。
・試料6および試料7はそれぞれd50粒度が3.4μmおよび3.2μmと比較的小さいのに対して、試料7は灰分含有率が全ての試料のなかで最も低い(0.8質量%)。
【0133】
試料1および試料3は同じ低揮発分瀝青炭源由来のもので、試料5および試料6は2つの異なる高揮発分瀝青炭源由来のものである。特性評価試験の結果を表3に示す(n.a.=未だ利用不可能)。全ての極微粒炭試料(DおよびFを除く)では粒子の99%超が直径20μm未満であり、試料5は、1μm未満の極微粒炭粒子が最高の比率(30質量%)を占めた。
【0134】
表3 極微粒炭試料の特性評価試験の結果(n.d.=未測定)
【表5】
試料3をキシレンに、試料4b、5、6、7および8を水に、残りをディーゼルにレーザー分散させて、粒度分布を特定した。
** 石炭2A〜2Eは、それぞれ異なる粉砕方法を用いて、石炭Dから調製されたサイズ画分である。
【0135】
表4中の3種の極微粒炭試料3、4bおよび8を添加することにより、密度および粘度の両方における上昇が観察される。試料3>試料4b>試料8の密度の急速な上昇は、粒度の変化と関連している可能性がある。しかしながら、試料3と試料8との間の粘度上昇率にはほとんど差がない。このことは、驚くべきことに、石炭粒度を平均粒度6.2μmから1.8μmに減らしても、粘度にはほとんど影響が及ばないことを示唆している。試料4bの粘度の増分は、他の2つの石炭の粘度の増分よりも小さい。この原因としては、この石炭の灰分含有率が高いことが考えられる。
【0136】
10質量%の極微粒炭試料1を極重質RFO−1に添加すると、15℃において密度が999.5kg/cm
3から1026.9kg/cm
3に微増したことが観察され(60℃において密度に関して類似の結果が得られ)、それに対応して、50℃において粘度が881CStから1128CStに微増したことも観察された。
【0137】
1質量%の極微粒炭試料1を舶用ディーゼルに添加すると、15℃において0.8762g/cm
3から0.8769g/cm
3へと、密度における極小ではあるが検出可能な増分が観察され、60℃において密度に関して類似の結果が得られた。これに対応して粘度が終始一貫して増加することは検出できなかった。
【0138】
また、
図3および
図2に、諸グレードの舶用RFOの密度および粘度について限度を示す。
【0139】
極微粒炭の添加によって、密度および粘度の及ぼす影響が増大する。この増大は、隣接するグレードの燃料油間における密度および粘度の差異にほぼ対応している(表1a〜表1c)。驚くべきことに、10質量%の極微粒炭を添加すると、燃料油グレードが次の重質燃料油グレードに変わるだけであることが判明した。したがって、5質量%の極微粒炭3、または5質量%の極微粒炭8を添加すると、RFO−IIのグレードがRMK380からRMK700に変わる。密度が1010kg/m
3を超え、かつ粘度が700mm
2/sを超えると、舶用および定置式機器に対するRFO極微粒炭の適用制限が厳重になり、特定の極微粒炭が密度および粘度を増加させる速度が、実際に適応できる極微粒炭の最大量を算定するうえで、灰分含有率よりも重要となる可能性がある。
【0140】
RFOに極微粒炭を添加した際に粘度は上昇するが、RFOの流動点は極微粒炭の添加による影響を比較的受けない。このことは、予期しない有利な所見であった(表3)。なお、RFOの流動点測定において繰返し精度および再現精度はそれぞれ2.6℃および6.6℃であり、値をそれぞれ3℃または9℃としても、値が6℃の場合と有意な差異はない。ゆえに、試料3および試料4bの添加量を10質量%とした場合、どちらの試料も流動点には有意に影響しなかった。一方、粒度を最小限に抑えた石炭試料8を10質量%および15質量%として添加すると流動点が僅かに(12℃まで)上昇したが、極微粒炭を1質量%として添加した場合、同様に、舶用ディーゼルの流動点には影響しなかった。
【0141】
表4 RFO、舶用ディーゼル、およびこれらと極微粒炭との混合物における分析試験の結果(n.m.=測定不能。n.d.=未測定。全ての試料中に、燃料油分散剤添加物が低添加量で含有されている場合)
【表6】
【0142】
極微粒炭をベース燃料油に混合することによって、RFOおよび舶用ディーゼルの引火点が改善される(すなわち、値が上昇する)(実施例7および
図4)。5質量%の石炭試料、3または石炭試料8を添加すると、RFO−IIの引火点がそれぞれ15℃および12℃上昇し、石炭試料3または8の添加量が10質量%の場合、および石炭試料8の添加量が15質量%の場合に、引火点が更に上昇することが実証された。同様に、1質量%極微粒炭試料1を添加するだけで、引火点が9℃改善された(不図示)。このように石炭燃料油混合物の引火点を操作することができれば、非混合燃料油が仕様の域から外れた場合に、混合物を仕様の域に戻すのに有効でありうる。予測可能な方法で引火点を調整する用途に使える燃料添加剤は現在市販されていない。石炭燃料油混合物の引火点の操作が可能ならば、非混合燃料油が仕様の域から外れたとしても、混合物を仕様の域に戻すのに有用と考えられる。
【0143】
RFO酸性度の測定値である全酸価(TAN)は、極微粒炭の添加によって改善できる(実施例8)。とはいえ、試験された全ての混合物からは終始一貫した改善が観察されない。一方、石炭3では、添加量が0質量%から、5質量%、10質量%へと増加するにつれて、RFO−IIのTAN値が0.3mg KOHから、0.12mg KOH、0.01mg KOH(燃料1g当たり)へと漸次に減少した。しかしながら、5質量%の石炭8を添加すると、TANは0.3mg KOHから0.03mg KOH(燃料1g当たり)へと著しく減少し、続いて、10質量%および15質量%ではそれぞれ、TANは、ベース燃料単独の値と相応した値0.35mg KOHおよび0.26mg KOH(燃料1g当たり)へと変化した。
【0144】
〔実施例4〕
粒度がそれぞれ異なる高揮発分瀝青炭−RFO混合物における粘度
【0145】
石炭Dに由来する異なる粒度の5種の極微粒炭試料(試料2A〜試料2E)をRFO−IIに混合し、最高15質量%の添加量で粘度を測定した(表5ならびに
図2aおよび
図2b)。本明細書において調査された全ての主炭(親石炭Dを含む)の分析詳細を、表3に示す。
図3に示すように、石炭含有率の増加につれてRFO−II−石炭の混合物の粘度は上昇するが、粘度上昇率には著しい差がある。実際に、粘度に対して及ぶ影響は、粒度の差異によるものの方が、石炭含有率の増加によるものよりも大きい。
【0146】
粘度上昇の速度が最低なのは石炭2Eで、2D<2C<2Bおよび2Aを下回っている。ゆえに、RFO−極微粒炭の混合物の粘度上昇は、粒度に反比例する。ここで、2Aおよび2Bにおいて粘度と粒子径との相関関係が逆転していることには、特に意味はない。
2Aにおいて、d50およびd90は2Bよりも低いが、サブ1μm粒子の含有率は35%に達し、10μm径未満の粒子含有率が2Bよりも低く、d95、d98およびd99値は2Bよりも高い。
【0147】
表5 高揮発分瀝青炭D由来の異径石炭粒子画分をRFO−IIに混合した場合の粘度の結果
【表7】
【0148】
また、
図2aおよび
図2bに、舶用RFOの幾つかのグレードの粘度限度を示す。極微粒炭の添加が粘度上昇に及ぼす影響は、隣接するグレードの燃料油の間の粘度の差異に対応しうる(表1a〜1c)。5質量%または10質量%の極微粒炭を添加しても、燃料油グレードが、粘度の高い燃料油グレードに変更されるだけである。ゆえに、最高10質量%の極微粒炭2Eの添加によって、RFO−IIがRMG380グレードから500グレードになり、5質量%の2B、2C、2Dまたは2Eの添加によって、RFO−IIが700グレードになる。
【0149】
大抵の船舶において使用されるRFO粘度の上限が50℃において700cStであるのと同様、大抵の定置式ボイラーにおいてはRFO粘度(たとえば、RFO−1の場合)の上限は100℃においておよそ60cStである。つまり、粘度の上昇によって、使用できる石炭含有率の最大値が制限される。同様に、粒子径が粘度上昇に影響を与える場合、粒度分布は、RFO中の極微粒炭の許容可能添加量を決める臨界因子となる。サブ1ミクロンの粒子は、添加量の増加につれて、RFO粘度の増加を加速させるが、驚くほど高添加量のサブ1μmに適合できる。たとえば、およそ8質量%の石炭2AのRFO−I混合物は、35%にも達するサブ1ミクロン粒子を含有する限りにおいて、舶用用途に許容される。
【0150】
〔実施例5〕
粒度の異なる諸ランクの石炭−RFOの混合物における密度
【0151】
石炭D(試料2A〜2E)、ならびに石炭3、4b、7および8に由来する異なる粒度の3種の極微粒炭試料を、RFO−IIに混合した。表6に示すように、密度が15質量%まで添加量に対して測定された。
図3に示すように、石炭含有率の増加につれて、RFO−II−石炭混合物の密度が増加するが、添加量よりも密度の増加率の方が広い範囲にわたる。
【0152】
粘度変化とは対照的に、密度に対する影響の度合いは、石炭含有率の増加が及ぼす影響よりも、異径粒子が及ぼす影響の方が小さい。密度の上昇率は、石炭2Eでは最小であり、2Dおよび2Cではほぼ同じであり、石炭3、7および8では最も大きい。この順序は、粒度の増加とほぼ一致している。ゆえに、RFO−極微粒炭の混合物における密度上昇は、粒度に反比例する。
【0153】
表6 高揮発分瀝青炭2および7、ならびに低揮発分瀝青炭3、4aおよび8由来の、異径石炭粒子画分をRFO−IIに混合した場合の密度の結果(これらの石炭の粒度データを、表5および表3に示す)。
【表8】
【0154】
また、
図3aおよび
図3bに、諸グレードの舶用RFOの密度限度を示す。粘度の場合と同様、極微粒炭の添加が密度上昇に及ぼす影響はまた、隣接するグレードの燃料油同士の間の密度のばらつきに対応しうる(表1a〜表1c)。再三繰り返すが、ここで見出された発見は、10質量%の極微粒炭を添加しても、燃料油グレードが密度の高い燃料油グレードに変わるだけである、つまり、RFO−IIにおいて、5質量%の極微粒炭2A〜2Eのいずれかを添加すると、RMGグレードはRMKグレードに変わる、という驚くべきものであった。
【0155】
大抵の船積みに使用されるRFO密度の上限は、実際には15℃で1250kg/m
3であり、これを決めるのが、最も繁用されている型式の遠心分離機(Alcapタイプ)の上限操作限界である。旧式の燃料油遠心機によっては、15℃で1010kg/m
3までという上限操作限界が定められているものもある。定置式ボイラー燃料油仕様は通例、最大密度要件を伴わない。
【0156】
密度および粘度の増加につれて、舶用および定置式機器に対するRFO極微粒炭の適用制限が厳重になる可能性があり、これら両方のパラメータを特定の極微粒炭が増加させる速度は、実際に適合できる極微粒炭の最大量を定量する際に、灰分含有率と同じくらい重要となりうる。
【0157】
〔実施例6〕
粒度の異なる諸ランクの石炭−RFOの混合物における流動点
【0158】
実施例5で使用したのと同様な一連の石炭をRFO−IIに混合した場合の、流動点を測定した。その結果を表7に示す。極微粒炭をRFOに添加すると粘度が上昇するにしても、極微粒炭の添加による、RFOの流動点の増分量は、少しだけに限られる。このことは、予期しない有利な発見であった。
【0159】
RFOの流動点の測定における反復精度および再現精度はそれぞれ2.6℃および6.6℃であり、値をそれぞれ3℃または9℃としても、値が6℃の場合と有意な差異はない。ゆえに、試料3および試料2Cの添加量を最高10質量%および15質量%までとした場合、どちらの試料も流動点には有意に影響しなかった。一方、石炭試料2A、2B、2Bおよび8を10質量%および15質量%として添加すると流動点が僅かに(12℃まで)上昇した。後者4種の石炭試料の粒度は、石炭2Cおよび石炭3よりも小さい。このことは、石炭粒度が小さくするほど、RFO混合物の流動点の上昇率が大きくなることを示唆する。これは、石炭含有率が同じなら、石炭粒度を最小限に抑えた場合に、粘度の上昇率が大きくなるのが観察されることと対応している(実施例4)。
【0160】
表7高揮発分瀝青炭2および7、ならびに低揮発分瀝青炭3および8由来の、異径石炭粒子画分をRFO−IIに混合した場合の、流動点(これらの石炭の粒度データを、表5および表3に示す)。
【表9】
【0161】
〔実施例7〕
粒度の異なる諸ランクの石炭−RFOの混合物における引火点
【0162】
実施例3で考察したように、極微粒炭1をベース燃料に混合することによって、舶用ディーゼルおよびRFOの引火点を有意な量だけ改善すること(すなわち、値の上昇)が可能となる(表4)。実施例6で使用したものと同様な一連の石炭を、RFO−IIに混合して、引火点を測定した。結果を、表8および
図4に示す。
【0163】
表8 高揮発分瀝青炭2および7、ならびに低揮発分瀝青炭3および8由来の、異径石炭粒子画分をRFO−IIに混合した場合の引火点結果(これらの石炭のサイズデータを、表3および表5に示す)。
【表10】
【0164】
試験の対象となった6つの石炭試料のうちの5つは、僅か5質量%の極微粒炭を添加すると、RFO混合物の引火点が、RFO−II単独使用の場合の108℃から、120℃以上へと上昇し、その増分は10℃を上回った。RFO−IIにさらに10質量%および15質量%の石炭を添加すると、さらに引火点の値がそれぞれ約125℃および約130℃へと上昇した。一事例において、10質量%および15質量%の石炭2Cを添加した際に、引火点が150℃へと上昇した(
図4)。
【0165】
これらパラメータの増分は有意であり、RFO製油所での製造時には制限的な仕様パラメータとなる可能性がある。燃料油混合物の引火点を操作できれば、非混合燃料油が仕様の域から外れた際に、その混合物を仕様の域内に戻すのに有効と考えられる。状況把握を助けるため言うなら、引火点を予測可能な方法で調整するのに利用できる商用の燃料添加剤は、皆無であるということである。
【0166】
〔実施例8〕
粒度の異なる諸ランクの石炭−RFOの混合物における全酸価
【0167】
RFO酸性度の測定値である全酸価(TAN)は、極微粒炭を添加することによって改善できる(表9)が、試験の対象となった全ての混合物から終始一貫した改善が観察されるとは限らない。一方、石炭3の添加量を0〜5質量%から10質量%へと増やすと、RFO−II TAN値が0.3〜0.12mg KOHから0.01mg KOH(燃料1gあたり)へと漸減した。ただし、5質量%の石炭8を添加すると、TANが0.3mg KOHから0.03mg KOH(燃料1gあたり)へと著しく低下し、続いて、10質量%および15質量%ではそれぞれ、TANが、ベース燃料単独の値と相応した値0.35mg KOHおよび0.26mg KOH(燃料1gあたり)へと変化した。
【0168】
表9 高低揮発分瀝青炭3および8由来の異径石炭粒子画分をRFO−IIに混合した場合の、全酸価(TAN)(これらの石炭のサイズデータを、表3および表5に示す)。
【表11】
【0169】
〔実施例9〕
RFO−極微粒炭の混合物の分散安定性
【0170】
ステンレススチール製装具は、RFOにおける極微粒炭試料の分散を試験する用途に対応するように設計されたものである(
図4)。混合容器の底部より上15cm、30cmおよび45cmの箇所には、試料を抜取するための3つのポートが具備されていた。25℃では、試験対象のRFOの粘度が極微粒炭を分散させることができないほど高くなりすぎたため、装具を80℃まで予熱した。10質量%の風乾極微粒炭とRFOとの混合物に、燃料油分散剤添加物を加えて、8,000〜9,000rpmにてそれぞれ異なる(10〜60分間の)時間間隔で剪断混合し、その後、80℃において1時間〜7日間の期間にわたって静置した。試料採取用の各ポートから分散液を取り出し、焼結体を通して高温濾過して、固体材料を収集してから、固体材料の重量をIP375に準拠して秤量した。
頂部、中間および底部の試料における固体の含有率が同じ場合、分散が良好であることを示す。幾つかの事例では、混合容器の実際の底部でさらに測定を行った。RFO IIと石炭試料3との混合物に関する一連の分散試験の結果を、表10に示す。
【0171】
この結果は、10質量%の極微粒炭のRFO分散液を生成できることを実証している。
これらの分散液は、分散剤添加物を加えて60分間剪断混合して調製されたものである場合、最高48時間にわたって安定である(試験8)。10分間の混合を行った場合に限り、安定時間が24時間に短縮された(試験1〜4)。
【0172】
1質量%の極微粒炭と舶用ディーゼルとの混合物に、燃料油分散剤添加物を加え、100mlガラス製試料瓶中で11,000rpmにて20分間剪断混合し、次いで周囲温度にて1時間および24時間静置した(試験12および試験13)。続いて、これを、超音波浴中で繰り返した(試験14および試験15)。1時間沈降させた後、試料の頂部(第1部)および底部(第2部)から、燃料と石炭粒子との懸濁液の10mLのアリコートを、エッペンドルフピペットで採取した。焼結ガラス製ブフナーフラスコを用い、各アリコートを、あらかじめ秤量した0.8μmの硝酸セルロースメンブレンフィルタに通して真空濾過した。固体残渣およびフィルタをn−ヘプタンで4回洗浄した後、再秤量して、最低限24時間の乾燥時間を経て、各アリコート中の未溶解固体の質量、ひいては分散均一性を定量した。
【0173】
この結果から判るように、少なくとも1時間にわたって安定な、1質量%の極微粒炭の舶用ディーゼル分散液を生成できる。超音波浴中で剪断混合が起こると、分散液の均一度が高まる。
【0174】
表10 RFOおよび舶用ディーゼルに極微粒炭を混合した場合の分散試験の結果(n.d.=不特定。全ての試験番号の試料中に、燃料油分散剤添加物が低添加量で含有されている場合)(ボールド体の数字は、分散が中断されたことを表す)
【表12】
【0175】
〔実施例10〕
RFOに極微粒炭3を混合した場合(分散剤添加物有りまたは無し)の分散安定性
【0176】
実施例9に示すような10質量%の極微粒炭のRFO分散液を生成できる。この分散液は、80℃において分散剤添加物を加えて60分間剪断混合して調製されたものである場合、80℃において最高48時間にわたって安定である。実施例9に記載されているものと同じ方法を用い、更なる研究を遂行した(表11)。ゆえに、試験No.9では、10質量%の石炭3を分散させ、80℃において分散剤添加物無しで2日間保持した。試験No.8は、分散剤添加物有りとしたことを除けば、試験No.9と同一であった。両方の試験で明らかにされたように、頂部層、中間層および底部層において懸濁された、ほとんど全て(91〜97質量%)の極微粒炭で、分散が安定であった。しかし、分散炭の含有率(初期石炭含有率に対する割合として表される)は、分散剤無しの場合(91〜94質量%)よりも分散剤が存在する場合の方が僅かに高い(95〜97質量%)。このことから、この分散剤の添加によって分散安定性が改善されていたことが判る。
【0177】
市販の分散剤添加物を含めることによって、分散が改善される。好適な燃料分散剤添加物は、ほとんどの石油燃料添加物製造業者、たとえば、Innospec Ltd.(Oil Sites Road,
Ellesmere Port, Cheshire, CH65 4EY, UK)、Baker Hughes(2929 Allen Parkway, Suite 2100, Houston, Texas 77019-2118, USA)、BASF SE(67056 Ludwigshafen, Germany)によって製造されている。
【0178】
〔実施例11〕
極微粒炭3をRFOに混合することによる、分散安定性の長期化
【0179】
分散剤添加物の存在下、80℃において60分間の剪断混合を経た、10質量%の極微粒炭3のRFO−II溶液の分散安定性を、期間を4日間および7日間に延長して試験した(試験No.10および試験No.11、表11を参照のこと)。
【0180】
頂部層、中間層および底部層において懸濁したほとんど全て(97〜102質量%)の極微粒炭では、4日後に、優れた安定性が得られた(試験10)分散における実験誤差および分散炭の測定値から、一部の混合物に関して100%を僅かに上回る値が報告されていることに留意されたい。100質量%を上回るこれらの値は、分散が中断されたときに粒子が沈降し始めるデッド底部層に属さない限り、100質量%と大きさが有意に異ならないものとして扱うべきである。
【0181】
表11 RFO−IIおよびRFO−IIIに極微粒炭を混合した場合の、さらなる分散試験の結果(ボールド体の数字は、分散が中断されたことを表す。試験No.9以外の全ての試験番号の試料中に、燃料油分散剤添加物が低添加量で含有されている場合)
【表13】
【0182】
試験IIにおいて、分散実験が、80℃で7日間延長された。この事例において、頂部層、中間層および底部層に懸濁されたほとんど(80〜81質量%)の極微粒炭で、依然として比較的に良好な安定性が得られた。これらの2つの試験から明らかなように、これらの分散液が4日間を超える優れた安定性を有し、7日間後に少量の沈降が始まる。
【0183】
これらの石炭を分散させたRFO−II溶液は、いったん80℃において装具(
図1)で調製された後に、半ゼラチン状態で周囲温度にて冷却され、1年以上わたって安定な分散液として貯蔵された。
【0184】
〔実施例12〕
最高30質量%までの様々な石炭含有率範囲をカバーする極微粒炭−RFO混合物における分散安定性
【0185】
種々の濃度(10〜30質量%)の極微粒炭2BのRFO−III溶液の、80℃での分散安定性(分析の詳細については表5を参照)を、80℃において60分間剪断混合し、80℃において4日間保存した後に、測定した(試験No.16〜19、表11を参照のこと)。それぞれ10質量%、15質量%および20質量%の極微粒炭を添加した全ての試料について、ほとんど全て(90→100質量%、実施例10の注釈に留意のこと)の粒子が3つの主要層中に懸濁されている優れた安定性が得られた。石炭2BをRFO−IIIに30質量%加えた混合物もまた、デッドボトムにおいて極めて少量の沈着が起こるのみの、良好な安定性(81〜87質量% 90→100質量%の極微粒炭が頂部層、中間層および底部層に懸濁)を示した。
【0186】
〔実施例13〕
異なる石炭ランクおよび粒度範囲をカバーする極微粒炭−RFO混合物における分散安定性
【0187】
80℃において60分間の剪断混合して、4日間保存した後の、15質量%の極微粒炭7および8のRFO−III溶液の分散安定性を、試験した(試験No.20〜21および表11を参照のこと)。15質量%の石炭8を添加した混合物について、ほとんど全て(95→100質量%、実施例10の注釈に留意のこと)の極微粒炭が3つの主要層に懸濁されている優れた安定性が得られた。15%の石炭7を添加した混合物の安定性は良好であるが、頂部層にて70質量%、中間層および底部層にて100質量%であったのと比較して、デッドボトム層(129質量%)において小さな沈着の形跡が存在する。石炭8(d50=1.8μm)の粒度は、石炭2B(d50=2.7μm)および石炭7(d50=3.2μm)の粒度よりも小さい。この理由から、石炭7よりも石炭8および石炭2Bの方が、安定性能が良好化されたと考えられる。
【0188】
〔実施例14〕
灰分含有率が極めて低い種々の添加量の高揮発性石炭とRFOとの混合物における燃焼性
【0189】
5〜15質量%の種々の添加量の石炭7とRFO−IIIとの混合物の燃焼性を、Standard Institute of Petroleum (London) Method IP541により特定し、圧縮点火エンジンにおいて用いられる残渣燃料の点火特性および燃焼性の定量的測定を行った。この方法では、一定体積の燃焼室内で、小型の副試料を圧縮空気中に射出し、各燃焼サイクル中の射出の開始および圧力の変化を検出する。これを25回繰り返して、着火性および燃焼性を、圧力−時間、および圧力変化速度−時間トレースの平均値から計算する。
【0190】
表12 石炭7をRFO−IIIに混合した場合の、着火性および燃焼性
【表14】
【0191】
表12に、様々な着火性および燃焼性、ならびにこれらの各々に関して従来のRFOに適用可能な範囲を示す。5〜15質量%の石炭7をRFO−IIIに混ぜ込んだ混合物が、これらの適用範囲内に収まるかどうかは、ベースRFO、石炭の種類および石炭粒度、ならびに石炭含有率の選択に依存する。このパスデータから、そのようなRFO−石炭の混合物が、通常の大型、低速および中速の舶用ディーゼルエンジンにおいて良好に機能することが判る。
【0192】
〔実施例15〕
極微粒炭を分散させたRFO混合物における粒度分布
【0193】
粒度分布は典型的に、一連の増分サイズ範囲間で粒子の粒子体積を測定するレーザー散乱法によって特定される。
図5に、石炭7の粒度分布を例証する。63μmの粒度を上回る場合、篩分けによって様々なサイズの画分に石炭を実際に分離することが可能であり、このようにして、石炭試料6を、63μmおよび125μmの2通りの篩サイズ間で調製した(表3)。
【0194】
図5に示すように、粒子分布幅は典型的に、x軸上の粒径値(d50、d90、d95、d98およびd99)によって定量化され、d50は、母集団の半分がこのd50値を下回る直径として定義されている。同様に、分布の90%がd90より下に位置し、母集団の95%がd95より下に位置し、母集団の98%がd98より下に位置し、母集団の99%がd99値より下に位置する。
【0195】
上記の点を考慮に入れ、これらの燃料油仕様に適合し、しかも、燃料油中に分散させることで少なくとも48時間にわたって安定である分散液を提供できる程度十分に低い鉱物質含有率(または灰分含有率)、含水率、硫黄分含有率および粒度を達成する石炭微粉をエンジニアリングできる、という驚くべき発見が為されてきた。さらに、比較的短い期間であれば、舶用燃料における1.0質量%の石炭充填を伴う極微粒炭粒子の安定した懸濁の調製は、RFOよりも粘度がはるかに低い。また、予期しないことに、1質量%の極微粒炭を混合した結果として、舶用ディーゼルの引火点が改善された。
【0196】
上記の結果に基づき、本発明の産業用途を以下に示す。
・燃料油中に最高30%までの混合比率で、燃料油と極微粒炭との混合物が、混合物の用途に好適となるように、石炭微粒をアップグレードすること。これにより、燃料油仕様における主な特性(灰分、水分、密度、粘度、発熱量など)の限度に適合するであろう。
・燃料油の硫黄分含有率が極微粒炭より高いグレードの燃料油を対象に、燃料油の硫黄分含有率を低減させること。
・燃料油の密度および粘度を上昇させる方法。たとえば、およそ10質量%の極微粒炭の添加によって、燃料油グレードを次に重い燃料油グレードに変えることができる。
・コストの低い混合物成分の導入によって燃料油の使用量を低減しながら、依然として同等の性能が得られるようにすること。
・極微粒炭を混ぜ合わせることで、舶用ディーゼルおよびRFOの引火点を改善すること。
【0197】
本発明の特定の実施形態を、本明細書中に詳細に開示してきたが、これは一例として、専ら例証のみを目的に為されたものである。前述の実施形態は、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の置換、改変および修飾を施すことが可能であることが、本発明者らによって想到される。
【0198】
〔その他の実施形態〕
以下では、本発明のその他の実施形態について説明する。
【0199】
〔1〕本発明は、燃料油組成物において、(i)少なくとも約90体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である粒状材料と、(ii)前記粒状材料が、前記燃料油組成物の総質量に対して多くて約30質量%の量で存在する液体燃料油であって、かつ、前記粒状材料が炭化水素質材料および炭素質材料からなる群から選択される前記液体燃料油と、を含む燃料油組成物でありうる。
【0200】
〔2〕前記粒状材料は石炭を含む〔1〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0201】
〔3〕前記石炭は硬炭、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、またはこれらの組み合わせから選択される堆積鉱物由来の固体炭素質材料を含む〔2〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0202】
〔4〕前記石炭は極微粒炭である〔2〕または〔3〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0203】
〔5〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0204】
〔6〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子が直径約10ミクロン以下である〔5〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0205】
〔7〕前記粒状材料を形成する少なくとも98体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である〔5〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0206】
〔8〕前記粒状材料は前記液体燃料油と混合される前に脱水される〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0207】
〔9〕前記粒状材料は含水率約15質量%未満である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0208】
〔10〕前記粒状材料は含水率約5質量%未満である〔9〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0209】
〔11〕前記粒状材料は含水率約2質量%未満である〔10〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0210】
〔12〕前記燃料油組成物の総含水率は5質量%未満である〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0211】
〔13〕前記燃料油組成物の総含水率は2質量%未満である〔12〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0212】
〔14〕前記粒状材料を、前記液体燃料油と混合する前に脱灰または脱塩に供する〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0213】
〔15〕前記粒状材料は、内在する灰分含有率が低い、脱水された超微粒炭調製物を含む〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0214】
〔16〕前記粒状材料の灰分含有率が約20質量%未満である〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0215】
〔17〕前記粒状材料の灰分含有率が約10質量%未満である〔16〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0216】
〔18〕前記粒状材料の灰分含有率が約5質量%未満である〔17〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0217】
〔19〕前記粒状材料の灰分含有率が約2質量%未満である〔18〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0218】
〔20〕前記粒状材料の灰分含有率が約1質量%未満である〔19〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0219】
〔21〕前記液体燃料油は、舶用ディーゼル、定置用途向けのディーゼル、定置用途向けの灯油、舶用バンカー油、残渣燃料油、および重質燃料油からなる群のうちの1種から選択される〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0220】
〔22〕前記液体燃料油は、ISO8217:2010、ISO8217:2012、ASTM D396、ASTM D975−14、BS 2869:2010、GOST10585−99、GOST10585−75および同等の中国標準規格からなる群から選択される燃料油規格のうちの1つ以上に含まれる主な仕様パラメータに準拠する〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0221】
〔23〕前記燃料油組成物は、ISO8217:2010、ISO8217:2012、ASTM D396、ASTM D975−14、BS 2869:2010、GOST10585−99、GOST10585−75および同等の中国標準規格からなる群から選択される燃料油規格のうちの1つ以上に含まれる主な仕様パラメータに準拠する〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0222】
〔24〕前記粒状材料が前記燃料油組成物の総質量に対して多くて約20質量%の量で存在する〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0223】
〔25〕前記粒状材料が前記燃料油組成物の総質量に対して少なくとも約0.01質量%の量で存在する〔1〕〜〔24〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0224】
〔26〕前記燃料油組成物は分散液形態の前記粒状材料を含む〔1〕〜〔25〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0225】
〔27〕前記分散液は少なくとも24時間にわたって安定である〔26〕に記載の燃料油組成物でありうる。
【0226】
〔28〕前記燃料油組成物は分散剤添加物を含む〔1〕〜〔27〕のいずれかに記載の燃料油組成物でありうる。
【0227】
〔29〕材料中の少なくとも約90体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である粒状材料と、前記粒状材料が燃料油組成物の総質量に対して多くて約30質量%の量で存在する液体燃料油と、を混合することを含み、前記粒状材料は炭化水素質材料および炭素質材料からなる群から選択される燃料油組成物の調製プロセスでありうる。
【0228】
〔30〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である〔29〕に記載のプロセスでありうる。
【0229】
〔31〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子が直径約10ミクロン以下である〔30〕に記載のプロセスでありうる。
【0230】
〔32〕前記粒状材料を形成する少なくとも98体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である〔30〕に記載のプロセスでありうる。
【0231】
〔33〕前記粒状材料を前記液体燃料油中に分散させる〔29〕〜〔32〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0232】
〔34〕前記分散は、高剪断混合、超音波混合、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により達成される〔33〕に記載のプロセスでありうる。
【0233】
〔35〕前記粒状材料は石炭を含む〔29〕〜〔34〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0234】
〔36〕前記粒状材料を、前記液体燃料油と混合する前に脱水する〔29〕〜〔35〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0235】
〔37〕前記粒状材料を、前記液体燃料油と混合する前に脱塩に供する〔29〕〜〔36〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0236】
〔38〕前記粒状材料は泡浮遊選鉱技法を介して脱塩される〔37〕に記載のプロセスでありうる。
【0237】
〔39〕前記粒状材料を、前記液体燃料油と混合される前に粒度縮小工程に供する〔29〕〜〔38〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0238】
〔40〕前記粒度縮小は、摩砕、粉砕、破砕、高剪断粉砕またはこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって達成される〔39〕に記載のプロセスでありうる。
【0239】
〔41〕前記液体燃料油は、舶用ディーゼル、定置用途向けのディーゼル、定置用途向けの灯油、舶用バンカー油、残渣燃料油、および重質燃料油からなる群のうちの1種から選択される〔29〕〜〔40〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0240】
〔42〕前記液体燃料油は、ISO8217:2010、ISO8217:2012、ASTM D396、ASTM D975−14、BS 2869:2010、GOST10585−99、GOST10585−75および同等の中国標準規格からなる群から選択される燃料油規格のうちの1つ以上に含まれる主な仕様パラメータに準拠する〔29〕〜〔41〕のいずれかに記載のプロセスでありうる。
【0241】
〔43〕燃料油に粒状材料を加えることを含む液体燃料油のグレードを変更する方法であって、前記粒状材料が微粒子形態であり、かつ、少なくとも約90体積%の粒子が直径約20ミクロン以下である方法でありうる。
【0242】
〔44〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子は直径約20ミクロン以下である〔43〕に記載の方法でありうる。
【0243】
〔45〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子は直径約10ミクロン以下である〔43〕に記載の方法でありうる。
【0244】
〔46〕前記粒状材料を形成する少なくとも98体積%の粒子は直径約20ミクロン以下である〔43〕に記載の方法でありうる。
【0245】
〔47〕前記液体燃料油のグレードは、ISO8217:2010、ISO8217:2012、ASTM D975−14、ASTM D396、BS 2869:2010、GOST10585−99、GOST10585−75および同等の中国標準規格からなる群から選択される燃料油規格の1つ以上に含まれる主な仕様パラメータに準拠する〔43〕〜〔46〕のいずれかに記載の方法でありうる。
【0246】
〔48〕液体燃料油の引火点を調整する方法であって、前記方法は前記液体燃料油を粒状材料と混合することを含み、前記液体燃料油は、舶用ディーゼル、定置用途向けのディーゼル、定置用途向けの灯油、舶用バンカー油、残渣燃料油、および重質燃料油からなる群から選択される方法でありうる。
【0247】
〔49〕前記粒状材料は石炭を含む〔48〕に記載の方法でありうる。
【0248】
〔50〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子は直径約20ミクロン以下である請求項48または49に記載の方法でありうる。
【0249】
〔51〕前記粒状材料を形成する少なくとも95体積%の粒子は直径約10ミクロン以下である〔50〕に記載の方法でありうる。
【0250】
〔52〕前記粒状材料を形成する少なくとも98体積%の粒子は直径約20ミクロン以下である〔50〕に記載の方法でありうる。