【解決手段】支持アームはメインアーム7と、メインアームに連結部9を介して連結される作業アーム11とからなり、メインアームの先端部側が内側に屈曲され屈曲点より先端部側に屈曲部74が形成される。作業アーム4は屈曲部の先端部に設けられる連結部に水平方向に回動自在に取付けられる。屈曲部に可動の可動屈曲部75が設けられ、可動屈曲部は反進行方向から負荷を受けた場合のみ外方側に回動する回避動作をする。可動屈曲部は、回動軸76と、該回動軸に軸着されたクラッチ77と、クラッチを回動軸方向に付勢する復帰ばね78とを有する。可動屈曲部の回動軸76は連結部の回動軸91とは異なる位置に設けられるため、回避動作の際、可動屈曲部がメインアームの延長線上より大きく拡開する。よって、後進時における機体の旋回動作が行いやすくなり、スムーズに障害物から脱出することができる。
請求項1又は請求項2記載の自走式作業機において、上記可動屈曲部は、回動軸と、該回動軸に軸着されたクラッチと、該クラッチを回動軸方向に付勢するばねとを有し、屈曲部の先端部に形成されることを特徴とする自走式作業機。
請求項3又は請求項4記載の自走式作業機において、上記係合部が傾斜面と、該傾斜面に連続する係合面と、該係合面に連続する上面とからなり、上記傾斜面が上記係合面に向かって傾斜されるとともに、上記係合面の傾斜面側及び上面側の周縁部の傾斜が緩やかに形成されることを特徴とする自走式作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記背景より、障害物を気に掛けずに、草刈作業等における後進走行が容易にできる自走式作業機を供することを目的とする。また作業バランスや走行安定性の良好な自走式作業機を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本願発明請求項1による自走式作業機は、本体部と、該本体部の進行方向両側に設けられた走行部と、該本体部に支持アームを介して連結される作業部とからなり、上記支持アームはメインアームと、該メインアームに連結部を介して連結される作業アームとからなり、上記メインアームの先端部側が内側に屈曲され屈曲点より先端部側に屈曲部が形成され、上記作業アームは屈曲部の先端部に設けられる連結部に水平方向に回動自在に取付けられ、さらに上記屈曲部に可動の可動屈曲部が設けられ、該可動屈曲部は反進行方向から負荷を受けた場合のみ外方側に回動する回避動作をすることを特徴とする。
また本願発明請求項2による自走式作業機は、請求項1記載の自走式作業機において、上記可動屈曲部の回動軸は、上記連結部の回動軸とは異なる位置に設けられることを特徴とする。
また本願発明請求項3による自走式作業機は、請求項1又は請求項2記載の自走式作業機において、上記可動屈曲部は、回動軸と、該回動軸に軸着されたクラッチと、該クラッチを回動軸方向に付勢するばねとを有し、屈曲部の先端部に形成されることを特徴とする。
また本願発明請求項4による自走式作業機は、請求項3記載の自走式作業機において、上記クラッチは係合部が互いに面対称の係合面を有する上部と下部とからなることを特徴とする。
また本願発明請求項5による自走式作業機は、請求項3又は請求項4記載の自走式作業機において、上記係合部が傾斜面と、該傾斜面に連続する係合面と、該係合面に連続する上面とからなり、上記傾斜面が上記係合面に向かって傾斜されるとともに、上記係合面の傾斜面側及び上面側の周縁部の傾斜が緩やかに形成されることを特徴とする。
また本願発明請求項6による自走式作業機は、請求項3乃至請求項5のいずれか一記載の自走式作業機において、上記クラッチの係合面が2個であることを特徴とする。
また本願発明請求項7による自走式作業機は、請求項3乃至請求項5のいずれか一記載の自走式作業機において、上記クラッチの係合面が1個であることを特徴とする。
また本願発明請求項8による自走式作業機は、請求項3又は請求項7記載の自走式作業機において、上記ばねが下部クラッチ方向に負荷されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明による自走式作業機によれば、反矢示方向の後進時において障害物に衝突すると、作業部は可動屈曲部が障害物に押圧されて外方に回動するため、
図1に2点鎖線で示すA位置に位置する。可動屈曲部により回動した作業部のこの位置Aは、走行部より側方に大きく突出していないため、機体の左右バランスが大きく変化することがない。このため、左右それぞれの走行部の接地圧の変化が少なくなり、走行部の空転などによる走行への不都合がなくなるので、安定した走行をすることが可能となる。
【0011】
また、後進時に作業部が障害物に衝突しないように機体操作をしなくてもよいので、機体操作が楽になり、危険な草刈作業に専念することができる。
【0012】
請求項2による自走式作業機は、請求項1記載の自走式作業機において、上記可動屈曲部の回動軸は、上記連結部の回動軸とは異なる位置に設けられ、可動屈曲部の回動軸がより屈曲点側に設けられるため、回避動作の際、連結部の回動軸と同軸に置いた場合より、可動屈曲部がメインアームの延長線上より大きく拡開する。このため、後進時に通過可能な幅が増えるので、後進時における機体の旋回動作が行いやすくなり、スムーズに障害物から脱出することができる。
請求項3による自走式作業機は、請求項1又は請求項2記載の自走式作業機において、上記可動屈曲部は、回動軸と、該回動軸に軸着されたクラッチと、該クラッチを回動軸方向に付勢するばねとを有し、屈曲部の先端部に形成されるため、回避動作された作業部を過負荷位置より元位置へ復帰させる際、ばねの付勢力により容易に操作することができ、操作性を良好とすることができる。
請求項4による自走式作業機は、請求項3記載の自走式作業機において、上記クラッチは係合部が互いに面対称の係合面を有する上部と下部とからなるため、初期状態(通常状態)において、各係合部のすべての係合面を面状に密着させることができる。つまり、クラッチの摩擦力を安定して確保することができるので、回避状態に移行する際の作動トルクを安定させることができる。換言すれば、係合部の変形に対する作動トルクの誤差が小さい。よって回避動作が容易となる。
請求項5による自走式作業機は、請求項3又は請求項4記載の自走式作業機において、上記係合部が傾斜面と、該傾斜面に連続する係合面と、該係合面に連続する上面とからなり、上記傾斜面が上記係合面に向かって傾斜されるとともに、上記係合面の傾斜面側及び上面側の周縁部の傾斜が緩やかに形成されるため、一層小トルクでの回動が可能となり、回避動作が一層容易となる。
請求項6による自走式作業機は、請求項3乃至請求項5のいずれか一記載の自走式作業機において、上記クラッチの係合面が2個であるため、回避動作の際のがたつき防止が一層確実になる。
請求項7による自走式作業機は、請求項3乃至請求項5のいずれか一記載の自走式作業機において、上記クラッチの係合面が1個であるため、回避動作の際のがたつき防止をすることができる。
請求項8による自走式作業機は、請求項3又は請求項7記載の自走式作業機において、上記ばねが下部クラッチ方向に負荷されるため、回避動作された作業部の元位置への復帰が一層容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、実施の形態を示す図面に基づき、本願発明による自走式作業機をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
図1乃至
図3において、自走式作業機1は、本体部2と、走行部3と、作業部4からなり、ラジコンと呼ばれる操作送信機(図示省略)により操縦され、矢示方向に走行する。
【0016】
本体部2は、本体フレーム21が水平方向に設けられ、該本体フレーム21に後に述べる駆動輪31を駆動せしめる走行モータ(図示省略)を備えた走行部3が配置され、上記走行モータの駆動源たるバッテリ(図示省略)が載置される。23は本体フレーム21に設置される制御部であり、該制御部には自走式作業機1の主電源等を操作する主電源スイッチが配される。24は本体カバーである。
【0017】
走行部3は本体部2の進行方向両側に配設される。該走行部3は、上記した走行モータ(図示省略)、駆動輪31たる後輪と従動輪32たる前輪からなり、両輪間に転輪33を介して、クローラベルト34が掛け渡される。また本体フレーム21に、走行フレーム35が固着されており、この走行フレーム35に上記した走行モータ、駆動輪31、従動輪32及び転輪33の回転軸芯が回転可能に取り付けられる。
【0018】
作業部4は、本体部2の進行方向前方に設けられ、刈刃41と、該刈刃41を作動させるモータ42と、刈刃41の回転に支障を来たさないようにするため設けられる接地体43と、刈り取った草が飛散しないよう設けられる刈刃カバー44とからなる。上記作業部4は、作業状態における最下点つまり接地体43の位置が前輪32の回転軸の位置より下方側とされる。作業部4は、作業状態又は非作業状態の選択が可能となっている。
【0019】
5は本体部2に設けられた昇降自在の昇降アームである。該昇降アーム5に支持アーム6のメインアーム7が取り付けられる。該支持アーム6は昇降自在のメインアーム7と、該メインアーム7に連結部9を介して連結される作業アーム11とからなる。
【0020】
メインアーム7は、基部72と、延長部73と、屈曲部74とからなる。基部72は進行方向と直交方向に横設され、端部に設けた回動軸71が上記昇降アーム5のボス部(図示省略)のアーム固定用の孔(図示省略)に回動自在に嵌合される。延長部73は基部72から進行方向に屈曲されて形成される。屈曲部74は先端部側の一部が屈曲点74aから内側に鈍角の屈曲角Cにて屈曲されて形成される。上記屈曲部74と作業アーム11とは連結部9を頂点とする三角形状に形成される。
上記屈曲部74の先端部側は、屈曲点74aと先端部74bの中間部に設けた回動可能の回動軸76により、回動可能の可動屈曲部75に形成される。
【0021】
上記回動軸71の周面には貫通孔(図示省略)が設けられ、該貫通孔に、メインアーム7固定用の第1固定ピン76がばね(図示省略)により脱離可能に挿入される。上記第1固定ピン76、図示しないばね及び図示しない突起にて第1固定部(図示省略)が形成される。
【0022】
4は上記作業アーム11の先端部に設けられた作業部であり、回転自在の刈刃41と、該刈刃41を駆動するモータ42と、該モータ42を内蔵するハウジング45と、該ハウジング45に設けられる回転可能の回転カバー46と、上記ハウジング45の頂上部に固着される刈刃カバー44とからなる。上記回転カバー46は、直径が刈刃41の直径より大に形成され、かつ、上記刈刃カバー44の下方即ちハウジング45の垂直方向の中間部であって、上記刈刃41の回転域の上方の位置に回転可能に取付けられる。上記回転カバー46は上記刈刃41の回転軸47と同軸に設けられる。46aは回転カバー46の軸受、46bは回転カバー46の外縁に設けられた緩衝部材である。
【0023】
上記刈刃カバー44は、ハウジング45の後部頂上部に、刈刃41を被覆するように固着される。44aは該刈刃カバー44の下端部に固着されたゴムカバーであり、その下端が刈刃41の設置位置より下方に取付けられる。上記刈刃カバー44は取付け箇所以外の上方及び前方の部位が開放されている。
【0024】
9は連結金具からなる連結部であり、上記メインアーム7の先端部74bに、水平方向に回動自在に連結される。詳しくみると、連結部9は、
図7乃至
図9に示すように、上記メインアーム7の先端部74bに回動軸91が水平方向に回動自在に嵌着され、他方水平方向に延びる連結片90に作業アーム11が連結される。上記連結部9は、平面視機体全幅D
3の略中心線上であって、正面視機体の略中央部に位置する重心Gの位置に設けられる。93は弾性体であり、ガイドロッド94に巻着され水平方向に付勢される。該弾性体93の付勢力は障害物衝突時に機体の走行力より小に設定される。この弾性体93の付勢力により、後述するように、作業中回避動作された作業部4が元位置に復帰する。
【0025】
上記回動軸91は回動支点となり、その近傍に作業アーム11の第2規制体12を設ける。この第2規制体12は、作業状態における作業アーム11の上方への過度の回動を規制する上部第2規制体12a及び作業アーム11の下方への過度の回動を規制する下部第2規制体12bからなり、両方相まって作業アーム11の垂直方向への過度の回動を規制する。即ち、刈刃41の地面に対する過剰傾斜は、刈り跡がきれいにならない等の不都合が生じるため、連結部9の回動支点部の近傍に、上部第2規制体12a及び下部第2規制体12bを固設する。この上部第2規制体12により、作業状態において、作業アーム11が過剰に回動して刈刃との角度が付きすぎることを防止する。また、下部第2規制体12bにより、作業状態において、作業アーム11が過剰に下方に回動できないように規制している。本実施例では、作業アーム11がほぼ水平より下方へは回動されないよう、規制されている。
【0026】
92は第2固定部であり、第2固定ピン92aと、該第2固定ピン92aが挿入される第2固定孔92bと、該第2固定ピン92aを付勢するばね92cとからなる。13は作業アーム11の垂直方向の回動支点となる回動軸である。
16は第3固定部であり、ばね15(
図9(A)(B)に示す)により脱離可能に挿入される第3固定ピン14からなる。該第3固定ピン14は、作業アーム11に向かって付勢されたばね15が巻着され、作業アーム11の基部に、作業アーム11に直交する方向にて設けられる。該第3固定ピン14の周面には突起14aが設けられ、固定時に該突起14aがロック孔14cに挿入されることにより、作業アーム11がロックされる。11aは作業アーム11の周面に設けられた第3固定孔である。第3固定ピン14は長孔からなるスライド孔14bを介して第3固定孔11aに挿入される。
【0027】
図10及び
図12は昇降アーム5の詳細を示す。52は昇降モータ、52aは昇降モータ52の出力軸であり、該出力軸52aは昇降ギヤ53に歯合する。該昇降ギヤ53は昇降アーム5に直交する方向に設けられ、垂直方向に回動する。54は昇降アーム5と一体に昇降される作用ピンである。55は上記昇降ギヤ52に突設された下降規制手段である。即ち、該下降規制手段55は、上記昇降ギヤ53に、昇降ギヤ53と直交する方向にて固着され、上記作用ピン54に当接して昇降アーム5の下死点を形成する。56は昇降アーム5の昇降支点となる支点ピンであり、上記昇降アーム5が回動自在に嵌合される。57は上記昇降アーム5の作用点側端部に設けられるばねであり、上方に付勢され、その付勢力により上記昇降アーム5、ひいては作業部4を押し上げる。58はばね57のガイドピンである。上記昇降アーム5は支点ピン56に回動自在に嵌合される。59は上記昇降アーム5の支点部材である。
【0028】
図3乃至
図6は上記可動屈曲部75の詳細を示す。上記可動屈曲部75は、メインアーム7の先端部側が内側に屈曲されて形成された屈曲部74の先端部側に設けられる。即ち、屈曲部74の屈曲点74aと先端部74bの中間部に水平方向に回動可能に設けられる。該可動屈曲部75は、回動軸76と該回動軸76に軸着されたクラッチ77と、該クラッチ77を回動軸76の長手方向に付勢する復帰ばね78とを有し、屈曲部74の先端部側に形成される。79は屈曲部74に固定されたベースであり、上記可動屈曲部75を屈曲部74に連結する。
【0029】
上記クラッチ77は、
図6(A)に示すように、上部クラッチ77Aと下部クラッチ77Bとからなる。上部クラッチ77Aと下部クラッチ77Bとは相対する互いの係合部77a、77bが面対称に形成される。即ち、
図6(B)に示すように、上記係合部77a、77bは、各々、
図6(B)視下方に傾斜する第1傾斜面80a、80b(以下「第1傾斜面80」と総称する)と、第1係合面82a、82b(以下「第1係合面82」と総称する)と、
図6(B)視下方に傾斜する第2傾斜面84a、84b(以下「第2傾斜面84」と総称する)と、第2係合面86a、86b(以下「第2係合面86」と総称する)とからなり、第1傾斜面80と第1係合面82とは、下側緩傾斜面81a、81b(以下「下側緩傾斜面81」と総称する)を介して連続しており、また上側緩傾斜面83a、83b(以下「上側緩傾斜面83」と総称する)を介して連続する第2傾斜面84と第2係合面86とは、下側緩傾斜面85a、85b(以下「下側緩傾斜面85」と総称する)を介して連続する。第2係合面86と前記第1傾斜面80とは上側緩傾斜面87a、87b(以下「上側緩傾斜面87」と総称する)を介して連続する。上記下側緩傾斜面81、85及び上側緩傾斜面83、87は第1係合面82及び第2係合面86の内側及び外側の周縁部に略水平状態面に形成される。
【0030】
図中、88aは座金間に係止された調整ばねであり、ナット88bの回動により、クラッチ77の作動トルクを調整する。88cは上記ベース79と一体化されたボルトである。89は上部クラッチ77Aの回動を止めるキーである。
【0031】
ここで、各部の寸法について説明する。図示実施例において、走行部3の全長W
1は765mm、走行部3前端から作業部4までの突出量W
2は804mm、機体の全長W
3は1569mmである。クローラベルト34の幅D
1は100mm、走行部3の全幅D
2は578mm、本体の全幅D
3は654mm、作業状態での機体の全幅D
4は874mm、作業状態における作業部4の機体中心線からの突出量D
5は547mm、回避動作時の同突出量D
6は290mmである。作業部4の高さH
1は89mm、機体の全高H
2は400mmである。延長部73の長さは474mm、作業アーム11の長さは416mmである。接地長L
1は405mm、軸距長L
2は495mmである。本実施例では、機体の重心Gは、機体の中心線から10mmずれ、前輪よりから進行方向後方へ192mm、接地高195mmに位置する。
【0032】
次に、まず後進走行における回避動作について説明する。
機体が反矢示方向に後進し、作業部4の直後に障害物等が衝突すると、作業部4が障害物に押圧されるので、可動屈曲部75は外方に回動され、
図1に2点鎖線で示すA位置に位置する。このときクラッチ77に回転方向に力がかかる。この様子を
図6(A)、(B)を参照して説明する。クラッチ77に回転方向に力がかかると、第1傾斜面80を有する第1係合面82に上方に向かう力が生じる。さらに作業部4が障害物に押されると、これによる押圧力が調整ばね88aの設定トルクに打ち勝つため、各係合部は上方の第2傾斜面84、第2係合面86に向かい、上部クラッチ77A及び下部クラッチ77Bがさらに回転する。
クラッチ77の回転が進むと、互いの係合面82、86を乗り上げ、互いの係合面82、86には回転の障害となる規制物がないので、これ以降は、作業部4が押された初期段階のトルクより、格段に低いトルクで回動する。係合面82、86より回転方向の後方即ち上側緩傾斜面83、87の傾斜度は緩く設定しているので、回動に要するトルクを、係合面82、86同士が面した状態より小さくすることができる。よって可動屈曲部75は
図4に示す通常位置から
図5に示す過負荷位置に容易に回動する。
【0033】
障害物の通過後、作業部4の過負荷位置から通常位置への復帰は、作業者による手動で行う。この場合、復帰ばね78による元位置への回転力と、ナット88bによって係止された調整ばね88aによる緩い傾斜面を戻す方向への押圧力により、作業部4を容易に復帰することができる。かくして、クラッチ77が傾斜面80、84をのぼり第1係合面82、第2係合面86に係合することにより、作業者が元の位置に戻ったことが判る。
【0034】
可動屈曲部75により回動した作業部4のこの位置Aは、走行部3より側方に大きく突出していないため、機体の左右バランスが大きく変化することがない。このため、左右それぞれの走行部3の接地圧の変化が少なくなり、走行部3の空転などによる走行への不都合がなくなるので、安定した走行をすることが可能となる。
【0035】
また、後進時に作業部4が障害物に衝突しないように機体操作をしなくてもよいので、機体操作が楽になり、危険な草刈作業に専念することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、上記可動屈曲部75の回動軸76は、上記連結部9の回動軸91とは異なる位置に設けられ、可動屈曲部75の回動軸76がより屈曲点74a側に設けられるため、連結部9の回動軸91と同軸に置いた場合より、回避動作の際、可動屈曲部75がメインアーム7の延長線上より大きく拡開する。このため、後進時に通過可能な幅が増えるので、後進時における機体の旋回動作が行いやすくなり、スムーズに障害物から脱出することができる。
【0037】
また上記可動屈曲部75は、回動軸76と、該回動軸76に軸着されたクラッチ77と、該クラッチ77を回動軸76方向に付勢するばね78とを有し、屈曲部74の先端部に形成されるため、回避動作された作業部4を過負荷位置より元位置へ復帰させる際、復帰ばね78の付勢力により容易に操作することができ、操作性を良好とすることができる。
またクラッチ77の作動トルクは、屈曲部74の回動軸76と同軸に設けた調整ばね88aによって、任意で調整可能であり、障害物の状態や好みに応じて調整することができる。
【0038】
また上記クラッチ77は係合部77a、77bが互いに面対称の係合面を有する上部77Aと下部77Bとからなるため、クラッチ77による回動規制が可能となり、回避動作が容易となる。
【0039】
この点を詳述する。本実施の形態においては、初期状態(通常状態)において、各係合部77a、77bのすべての係合面80〜87を面状に密着させることができる。つまり、クラッチ77の摩擦力を安定して確保することができるので、回避状態に移行する際の作動トルクを安定させることができる。換言すれば、係合部77a、77bの変形に対する作動トルクの誤差が小さい。仮に、クラッチを単なる孔部に凸部がある一点で引っ掛かるだけの構成だとすると、少なくともどちらか一方に少しでも係合部の変形が生ずると引っ掛かってしまい、設定した作動トルク以上のトルクをかけないと作動しなかったり、反対に設定とは低いトルクで作動したりする場合があり、回避動作が不安定となる。
また、クラッチの製作上、上部及び下部のクラッチを使い分ける必要がない。つまり、上部と下部とで専用部品化することがないので、製作コストを抑制できる。
【0040】
さらに本実施の形態はクラッチ77を上下にかみ合わせる構造のため、前方に突出することがないので、草の中に作業機が前進して分け入るときに、草が引っ掛かることがない。ちなみに、実施例ではクラッチを上方に積み重ねて配置しているが、下方に向けて積み重ねてもよい。こうすると、上方への突出が抑えられ、より上方への制約がある場所でもアクセスが容易になる。
【0041】
また上記係合部77a、77bが傾斜面80、84と、該傾斜面80、84に連続する係合面82、86と、該係合面82、86に連続する上側緩傾斜面83、87とからなり、第1傾斜面80と第1係合面82とは下側緩傾斜面81を介して連続しており、また第2傾斜面84と第2係合面86とは下側緩傾斜面85を介して連続しており、さらに各傾斜面81,85,83,87が各係合面82,86の内側及び外側の周縁部に略水平状態面に形成されるため、一層小トルクでの回動が可能となり、回避動作が一層容易となる。
【0042】
また上記クラッチ77の係合面が2個であるため、回避動作の際のがたつき防止が一層確実になる。
【0043】
上記調整ばね88aが下部クラッチ77B方向に負荷されるため、回避動作された作業部の元位置への復帰が一層容易となる。
【0044】
なお、矢視する前進走行における回避動作については次の通りである。
<通常時の機体動作>
支持アーム6は、メインアーム7及び作業アーム11によって、草刈部4が適正な対地角度を維持した状態で昇降する。なお、本願発明において「適正な対地角度」とは草刈部4が接地面に接触した場合に接地面と平行を保つことができることであって、完全な角度維持を意味するものではない。
草刈部4は、
図1に実線で示す位置、つまり走行部3より外側の位置で草刈作業をする。このとき、草刈部4は弾性体93の付勢力によって、走行部より外側に突出された位置にて作業をしている。
【0045】
<異常時の機体動作>
草刈部4が障害物に衝突したとき、草刈部4は次のような回避動作をする。
即ち、草刈部4は弾性体93の付勢力に打ち勝って障害物に押されるため、内側即ち
図1に2点鎖線で示す位置B(走行部3、3間の領域内)まで回動する。
機体が障害物を通過すると、作業アーム11が弾性体93の付勢力により、外側即ち
図1に実線で示す位置まで回動するため、元の位置に復帰する。よって元のように草刈作業を継続することができる。回避動作の間、刈刃は回転したままであるので、草刈作業の中断はない。
よって、作業者は草刈部4と障害物との衝突を気にせず作業することができ、機体の操作が容易となる。
【0046】
ここで、回避動作と回転カバー46との関係について説明する。機体が障害物と当接した場合、作業部4の回避動作と回転カバー46の回転動作とは互いに連携しながら障害物に対する回避動作をする。即ち、障害物に当接した場合、作業部4は、直径が刈刃41の直径より大に形成されている回転カバー46があるため、障害物を転動しながら連結部9を軸にして水平方向に回動する。この作業部4の回動は、機体1が矢印方向に前進し、かつ、作業部4の前方あるいは側方から障害物等に当接され押圧された場合は、
図1Bの位置となる。また機体1が反矢印方向に後進し、かつ、障害物が作業部4の後方を押圧した場合は、
図1Aの位置となる。
よって、刈刃41の損傷を防止するとともに、障害物への損傷も防止し、作業を継続することができる。
【0047】
また回転カバー46と刈刃カバー44との上下位置の関係につき、回転カバー46は刈刃カバー44の下方であって刈刃41の回転域の上方に位置している。よって作業部4の全高を抑制することができ、作業部4の上方に障害物が位置していても、作業部4が潜り抜け作業をすることができる。
【0048】
また、回転カバー46は、モータ42を内蔵するハウジング45の垂直方向の中間部に回転可能に設けられるため、機体1の前進に伴い生ずる送行風が、後方に設置された刈刃カバー44により停滞乃至はね返り、この送行風によりハウジング45内を、さらにはモータ42を冷却することができる。この結果、簡易なカバー構成によるにもかかわらず、モータ42の異常発熱による作業停止を防止することができる。
【0049】
また、回転カバー46の上方のハウジング45に部材が配置されず、ハウジング45が露出された状態であるので、走行中に伴う風を常時当てることができる。この場合、回転カバー46の前方に刈取り対象の草が多量にあったり、回転カバー46の下方側に刈取り後の草の滞留などがあることがある。このような場合、十分に送行風が当たらなかったりすると冷却不足に陥ることがある。反対に、ハウジング45の下部に回転カバー46を設置する場合を考えると、刈刃41と回転カバー46の隙間が狭くなるので、刈取り後の草の流れが阻害されて草の排出性能が悪くなる。また、刈刃41と回転カバー46の隙間を広く取ろうとすると、作業部全体の高さが高くなり、不都合が生じる。さらに回転カバー46がハウジング45の垂直方向の中間部に設けられているため、作業部4の高さを抑制しながら、上記のようなモータ42の冷却不足や草の排出不良を防止することができ、作業部全高の抑制と冷却性能の維持をバランスさせているのである。
【0050】
回転カバー46の前方は開放されているため、草刈作業中順次追ってくる草等を押し倒すことがないので、作業効率の低下を防止することができる。
【0051】
回転カバー46の回転軸47と刈刃41の回転軸47とが同軸であるため、伝動機構が大幅に簡易化される。よって伝動ロスが可及的に少となり、また故障リスクの低下、コスト低下に寄与する。また作業部4の上方が回転カバー46、刈刃カバー44及び作業アーム11のみとなるので、作業部4の高さを一層抑制することができる。
【0052】
回転カバー46の外縁には緩衝部材46bが取り付けられているため、刈刃41の損傷や障害物への損傷を一層防止することができる。
【0053】
刈刃カバー44の後端部はゴムカバーからなるため、刈取った草等を柔軟に受け取めることができるから、後方への飛散防止に一層効果的である。
【0054】
ここで走行安定性について説明する。本実施の形態においては機体前方で作業アーム11により外側に突出される作業部4とメインアーム7の屈曲部74とが連結部9を頂点にして互いに反対側に設けられるため、機体の進行方向に対する左右のバランスが大きく異なることが防止され、走行部への偏荷重による直進性の低下、傾斜地での転倒に対する安定性を確保など、走行の安定性に寄与する。
【0055】
この点を詳述する。左右の走行部3のいずれか一方に接地荷重が偏り、偏荷重になると、接地荷重が小さい側の走行部3はスリップして、操縦者の意図した走行が困難になる。例えば、直進させようと操作しても、機体が片方の走行部3のスリップによって、駆動力が地面に伝わらず、結果として直進せずに旋回する。あるいは、左右の走行部3のうち、接地荷重が大きい側に旋回する場合、接地荷重が小さい側の走行部3がスリップするため機体を旋回させることができない等、走行に関し効率的に行えない不都合が生じる。とくに、機体の左右側に傾斜した地面を走行する場合、上記した不都合な点がより顕著に出てくる。また、転倒に関し、上記同様に、機体の左右側に傾斜した地面GLを走行する場合で、接地荷重が大きい側の走行部3が傾斜面の低い側に位置した状況が発生すると、転倒のリスク等が増大することから、安全性確保のためにも、前述した状況の発生は極力避ける必要がある。偏荷重があった場合、左右の傾斜方向が入れ替わると、作業者が感じる操作感も変化するため、安全な作業機の運用には、進行方向の左右における重心Gはできる限り、中央寄りにすることが好ましい。
【0056】
したがって、操縦者が機体を走行させる際に、走行する地形を気にすることなく、円滑に操作するためには、機体全体の重心Gの位置を、左右走行部3、3が接地する部分の中央近傍に位置させることが重要である。
本願発明においては前記したように、機体の進行方向に対する左右のバランスが大きく変化するのが防止されるので、走行部3の偏荷重による直進性の低下や傾斜地での転倒に対する安定性を確保することができるのである。
【0057】
昇降アーム5は昇降ギヤ53と作用ピン54により機体が下方のみで支持される構造であるので、次に詳述するように、草刈部4が障害物に乗り上げても、草刈部4は地面に追従することができる。
【0058】
即ち、作業部4の昇降に際し、上下方向の回動支点部は、昇降アームの回動支点56(
図10、
図12に示す)、メインアーム7の回動支点71(
図1に示す)、作業アーム11の回動支点13(
図7乃至
図9に示す)の3か所に存在する。とくに、進行方向の左右方向に延びる回動軸を持つ昇降アーム5の回動支点56及びメインアーム7の回動支点71によって、地面追従効果を発揮する。詳しく述べると、作業部4の上下方向の移動は、昇降アーム5の昇降が担当し、作業部4の傾きを昇降アーム5に支持されたメインアーム7の回動により維持する。すなわち、
図11に示す窪地P1の場合又は
図12(A)に示す凸状地P2の場合、回動支点部とくに左右方向の回動軸を上記した2か所、つまり、昇降アームの回動支点56及びメインアーム7の回動支点71に設けることにより、刈刃41の地面に対するアプローチの自由度が増加し、刈刃41の回転面は地面に対し平行を保つことができる。この結果、草刈作業時は、刈刃が地面に接触して破損したり、刈刃の回転面と地面との角度が悪く、例えば対地角度が極端に付くなどした場合でも、草刈ができない等の不具合を解消することができる。
また、作業アーム11の回動支点13の上下回動によって、機体の進行方向の左右方向への傾斜にも対応することができる。さらに言えば、作業アーム11は垂直方向に多少の遊びがあるため、下方への追従は自重により回動され、上方へは衝突した障害物の押圧力により回動する。よって本実施の形態によれば、地面追従性が従来に比し格段に向上された。
【0059】
このように、上下方向の回動支点軸を合計3か所とすることにより、前後左右の傾斜面や凹凸に対応することができる。また、草刈部4が回避回動中であって、この回避回動領域に凹凸部があっても、昇降アーム5、メインアーム7及び作業アーム11の3か所が協働することにより、この領域中の回動時でも地面に追従しながら草刈り作業をすることができる。
【0060】
本実施の形態では、作業部4の作業状態における接地体43の最下点が走行部3の従動輪32の回転軸より下方側に位置する。よって、走行部3より前方の作業部4が位置する作業面が、作業部4が接地している作業面より窪んだ状況においても、作業部4がこの窪んだ作業面に追従することができ、凸部P2のみならず凹部P1への追従も可能となる。
【0061】
また、図示実施形態のような構成とすることにより、両立が困難であった草刈部4を連結するアーム類の簡素化の実現と草刈性能の確保を同時に達成する。つまり、機体前方に大きく草刈部4がオーバーハングするにもかかわらず、機体全体の重心は走行部の接地領域に対し中央部に位置させることができる。これは、上記した草刈部4の地面追従効果に加え、前後バランスの問題も解決する。つまり、前後のバランスが良好であるので、草刈部4が前方に沈み込む、あるいは、前方に'つんのめる'ような現象がない。この結果、草刈部4は地面に対して適正な位置関係を保ったまま草刈をすることができるので、作業者が地面の状況を逐一気にせずとも、草刈をすることが可能となるのである。
【0062】
この地面追従性に関し、本実施の形態によれば、
図12のように走行面に凸部が形成された路面においても、前記したように機体の進行方向に対する左右のバランスが大きく異なることが防止されるので、走行部3への偏荷重による直進性の低下、傾斜地での転倒に対する安定性を確保など、走行の安定性が良いのである。
【0063】
また走行安定性に関しては、本実施の形態によれば、部品点数も比較的少なく、機体から突出する草刈に係る部分を軽量に保ち、かつ、機体全体の重心バランスを適正に保つことができるから、地面追従性や走行安定性が良好であり、作業者は草刈作業に専念することができる。
【0064】
上記実施の形態の場合、作業部4自体の高さがメインアーム7より高い場合でも、屈曲部74によって作業部4との干渉を回避することができるので、作業部4自体の高さに制限を設けることなく、機体の中央部に回避動作させることができる。
【0065】
本願発明は上記実施の形態に制限されない。例えば、クラッチ77は障害物との衝突を感知する引掛り部があれば、他のオーバトルククラッチであってもよい。またクラッチの係合面は1個以上あればよいが、複数個とすれば確実性が向上し、クラッチ全体の垂直方向の高さを抑制できるので望ましい。
また接地体43は走行地面に通常時当接されていてもよい。
また連結部9の位置は重心Gの位置の近傍であれば、正確に重心Gの位置に設けなくても足りる。
また作業部4は、作業状態における最下点つまり接地体43の位置が前輪32の上部より下方側であってもよい。
また本願発明による自走式作業機は、必ずしもラジコン操縦されなくてもよい。