特開2021-101757(P2021-101757A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021101757-加熱殺菌装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-101757(P2021-101757A)
(43)【公開日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】加熱殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/04 20060101AFI20210618BHJP
   F16J 15/46 20060101ALI20210618BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20210618BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20210618BHJP
【FI】
   A61L2/04
   F16J15/46
   F16J15/00 E
   F16J15/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-233327(P2019-233327)
(22)【出願日】2019年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】森 寛
(72)【発明者】
【氏名】森本 守
【テーマコード(参考)】
3J040
3J043
4C058
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040HA21
3J043AA01
3J043DA08
4C058AA01
4C058BB03
4C058DD01
4C058DD06
4C058DD13
4C058EE01
4C058EE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】扉接触面の遮蔽をエアーシールによって行ない、パッキンの劣化等による微少な漏れを検出可能な加熱殺菌装置の提供。
【解決手段】被殺菌物2を収容する殺菌槽1と殺菌槽内への被殺菌物収容のために開閉する扉3を持ち、殺菌槽と扉が接触する面には、殺菌槽開口部を囲むように設けた溝5と溝にはめ込んだパッキン6を設け、溝内に圧縮空気を供給することによってパッキンを押し上げるエアーシールを設置している加熱殺菌装置において、エアーシールの圧縮空気供給配管8の途中に圧縮空気用遮断弁10と圧力検出装置7を設け、圧縮空気をエアーシールの溝に供給して圧力を所定圧力まで高めてから圧縮空気用遮断弁を閉じることで、圧縮空気供給配管部分の圧力を保持するようにしておき、圧縮空気用遮断弁を閉じてからの経過時間が所定時間を経過する前に、圧力検出装置で検出している圧力が判定圧力より低くなった場合には、エアーシール不良の判定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物を収容する殺菌槽と殺菌槽内への被殺菌物収容のために開閉する扉を持ち、殺菌槽内に被殺菌物を収容して扉を閉じることで殺菌槽内を密閉した状態で被殺菌物を加熱して殺菌を行うようにしている加熱殺菌装置であって、扉を閉じた場合に殺菌槽と扉が接触する面には、殺菌槽開口部を囲むように設けた溝と溝にはめ込んだパッキンを設け、溝内に圧縮空気を供給することによってパッキンを押し上げてパッキンによる接触性を高めるエアーシールを設置している加熱殺菌装置において、エアーシールの溝へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給配管の途中に圧縮空気用遮断弁、エアーシールの溝から圧縮空気を排出する排気経路の途中に排気経路用遮断弁、圧縮空気用遮断弁及び排気経路用遮断弁よりもエアーシールの溝側での圧縮空気供給配管内の圧力を検出する圧力検出装置を設け、前記の圧縮空気用遮断弁、排気経路用遮断弁、圧力検出装置は、加熱殺菌装置の運転を制御する運転制御装置と接続しており、運転制御装置では、扉を閉じて圧縮空気用遮断弁を開、排気経路用遮断弁を閉とし、圧縮空気をエアーシールの溝に供給して圧力を所定圧力まで高めてから圧縮空気用遮断弁を閉じることで、圧縮空気供給配管部分の圧力を保持するようにしておき、圧縮空気用遮断弁を閉じてからの経過時間が所定時間を経過する前に、圧力検出装置で検出している圧力が判定圧力より低くなった場合には、エアーシール不良の判定を行うものであることを特徴とする加熱殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱殺菌装置において、運転制御装置は、加熱殺菌装置による殺菌処理を行う必要のない空き時間にエアーシール不良の判定を行うメンテナンスモードを持ったものであることを特徴とする加熱殺菌装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱殺菌装置において、運転制御装置は、加熱殺菌装置による殺菌処理工程の前にエアーシール不良の判定を行うエアーシール確認工程付き殺菌処理モードを持ったものであることを特徴とする加熱殺菌装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉することのできる殺菌槽内に非殺菌物を収容しておき、殺菌槽内へ熱水を噴射することや、殺菌槽内を高温の蒸気で満たすことによって殺菌槽内の被殺菌物を加熱して殺菌を行う加熱殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実公平3−15074号には、滅菌容器本体内に被滅菌物を収容して滅菌容器本体内を高温・高圧の蒸気で充満させることによって被滅菌物を加熱して滅菌処理を行う蒸気滅菌装置が記載されている。また、殺菌槽内にレトルト食品や缶詰などの被殺菌物を収容し、殺菌槽内の被殺菌物に向けて熱水を噴射したり、殺菌槽内を高温・高圧の蒸気で充満させたりすることで被殺菌物を加熱して殺菌を行う加熱殺菌装置も広く知られている。これら殺菌装置では、被殺菌物を出し入れするための開口部と、開口部をふさぐための扉を設けておき、扉を開いて被殺菌物の出し入れを行い、扉を閉じて殺菌槽内を密閉してから殺菌処理を行うようにしている。
【0003】
殺菌処理時の殺菌槽内は、100℃を超える熱水又は蒸気で加熱するために加圧することができるようにしており、前記扉はクラッチ扉など全周で固定し、内圧に耐えられるものが使用されている。また容器本体と扉の接触面からの蒸気漏れを防止するため、実公平3−15074号に記載されているように、接触面にはエアーシールが使用されている。
エアーシールは、扉接触面で殺菌容器の開口を囲むように環状の溝を設け、溝にパッキンをはめ込んでおき、殺菌容器内を密閉しておく間は上記溝内に圧縮空気を供給することでパッキンを溝から押し上げ、扉接触面にパッキンを強く押し付ける。
【0004】
エアーシールを用いることで、殺菌槽内が高圧になっても扉の接触面からの蒸気漏れを防止することができるようになるが、パッキンが劣化した場合にはエアーシールを行っていても殺菌槽内から蒸気が漏れ出ることになる。実公平3−15074号にあるようにエアーシールが作動していない場合には蒸気が多く漏れるが、パッキンの劣化による漏れの場合は漏れ出る量が少ないため、殺菌処理自体は行うことができる。しかしその分、加熱殺菌装置が蒸気漏れを検出することは難しく、蒸気漏れが放置されることがあった。パッキン劣化による蒸気漏れを放置しておくと、必要熱量が増加するためにランニングコストの上昇することになる。また、パッキンが劣化した場合にはエアーシールに使用している圧縮空気も漏れ出ることになるため、圧縮空気を補充し続けていないとエアーシールでの遮蔽効果が低下し、そのことによって蒸気漏れが発生することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−15074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、扉接触面の遮蔽をエアーシールによって行っている加熱殺菌装置において、パッキンの劣化などによる微少な漏れを検出することができる加熱殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被殺菌物を収容する殺菌槽と殺菌槽内への被殺菌物収容のために開閉する扉を持ち、殺菌槽内に被殺菌物を収容して扉を閉じることで殺菌槽内を密閉した状態で被殺菌物を加熱して殺菌を行うようにしている加熱殺菌装置であって、扉を閉じた場合に殺菌槽と扉が接触する面には、殺菌槽開口部を囲むように設けた溝と溝にはめ込んだパッキンを設け、溝内に圧縮空気を供給することによってパッキンを押し上げてパッキンによる接触性を高めるエアーシールを設置している加熱殺菌装置において、エアーシールの溝へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給配管の途中に圧縮空気用遮断弁、エアーシールの溝から圧縮空気を排出する排気経路の途中に排気経路用遮断弁、圧縮空気用遮断弁及び排気経路用遮断弁よりもエアーシールの溝側での圧縮空気供給配管内の圧力を検出する圧力検出装置を設け、前記の圧縮空気用遮断弁、排気経路用遮断弁、圧力検出装置は、加熱殺菌装置の運転を制御する運転制御装置と接続しており、運転制御装置では、扉を閉じて圧縮空気用遮断弁を開、排気経路用遮断弁を閉とし、圧縮空気をエアーシールの溝に供給して圧力を所定圧力まで高めてから圧縮空気用遮断弁を閉じることで、圧縮空気供給配管部分の圧力を保持するようにしておき、圧縮空気用遮断弁を閉じてからの経過時間が所定時間を経過する前に、圧力検出装置で検出している圧力が判定圧力より低くなった場合には、エアーシール不良の判定を行うものであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記の加熱殺菌装置において、運転制御装置は、加熱殺菌装置による殺菌処理を行う必要のない空き時間にエアーシール不良の判定を行うメンテナンスモードを持ったものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記の加熱殺菌装置において、運転制御装置は、加熱殺菌装置による殺菌処理工程の前にエアーシール不良の判定を行うエアーシール確認工程付き殺菌処理モードを持ったものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することで、パッキン劣化などによる微少な蒸気漏れを早期に検出することができ、蒸気漏れが発生した場合にはパッキン交換などの対処を早急に行うことができるため、蒸気漏れに気が付かないまま蒸気が無駄に排出されることや、蒸気漏れのために殺菌処理が不十分に終わってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図である。加熱殺菌装置は、円筒形の殺菌槽1内に被殺菌物2を収容しておき、加熱した噴射用水を被殺菌物2に向けて噴射することで被殺菌物2の加熱殺菌を行うものである。
【0013】
殺菌槽1の一方の端部には開口部を設け、開口部には扉3を設置しておく。扉3は開口部の開閉を行えるようにしたものであって、開口部の周囲と扉の周囲にはクラッチ部と万力部を設置しており、殺菌槽本体側のクラッチと扉側のクラッチをかみ合わせた状態で扉3を強く締め付けることができるようにしている。
【0014】
また扉3を閉じた場合に接触する殺菌槽側の面には、エアーシールを設置しておく。エアーシールは、殺菌槽の扉3との接触面に殺菌槽開口部を囲む形で溝5を設け、溝5にパッキン6をはめ込む。パッキン6をはめ込む溝5の底部には圧縮空気導入口を設置しておき、エアーシールで使用する圧縮空気を供給するためのコンプレッサ9を設置する。コンプレッサ9と圧縮空気導入口の間は、途中に圧縮空気用遮断弁10を設置している圧縮空気供給配管8で接続し、コンプレッサ9からの圧縮空気は圧縮空気供給配管8を通して溝5内に供給することができるようにしておく。溝5からの圧縮空気の排出は、途中に排気経路用遮断弁18を設置した排気経路14によって行うようにしており、圧縮空気用遮断弁10及び排気経路用遮断弁18よりもエアーシールの溝側の圧縮空気供給配管8には圧縮空気供給配管内の圧力を検出する圧力検出装置7を設ける。圧力検出装置7は、判定圧力より高いか低いかを検出するものであり、圧力スイッチを使用することができる。
【0015】
殺菌槽1の底部には噴射用水循環経路11の一端を接続し、噴射用水循環経路11の他端は殺菌槽1内の側部と上部に設置した噴射ノズル13に接続しておく。噴射用水循環経路11の途中には噴射用水循環ポンプ4を設けており、噴射用水循環ポンプ4を作動すると、殺菌槽1底部の熱水は噴射用水循環経路11を通って殺菌槽1内の噴射ノズル13へ送られ、噴射ノズル13から被殺菌物2へ向けて熱水を噴射することができる。
【0016】
そして、噴射用水循環経路11の殺菌槽底部に近い箇所には給水配管17を接続しており、給水配管中に設置している給水ポンプ16を作動することで、給水配管17から噴射用水循環経路11を通して殺菌槽内へ水が入るようにしている。また殺菌槽1の底部には蒸気を供給する蒸気供給配管も接続しており、殺菌槽底部に水をためた状態で蒸気供給配管を通して殺菌槽底部の水中に蒸気を供給することにより、殺菌槽底部の水を加熱する。加熱殺菌装置の運転制御は、加熱殺菌装置を構成している機器と接続した運転制御装置12を設置しており、運転制御装置12で行うようにしている。
【0017】
殺菌槽内への被殺菌物2の収容は、被殺菌物2をトレイ上に並べておき、被殺菌物2を乗せ置いたトレイを複数段重ねた状態で殺菌槽1内に収容する。殺菌槽1の開口部に設けている扉3を開いた状態で被殺菌物2を殺菌槽1内に収容した後、扉3を閉じて殺菌槽1内を密閉する。加熱殺菌時、殺菌槽1内は高圧になるため、扉3を閉じて固定した後にエアーシールを行う。コンプレッサ9からの圧縮空気を溝5に供給すると、圧縮空気が溝5のパッキン6を押し上げ、パッキン6が扉の接触面に強く押さえつけられる。圧縮空気の力でパッキン6を扉の接触面に押さえつけることで、殺菌槽1内が高圧になる場合でも、殺菌槽内の蒸気が扉接触面から漏れ出ることを防止することができる。
【0018】
被殺菌物2に向けて熱水を噴射することで被殺菌物2の加熱を行う場合、給水ポンプ16を作動することで殺菌槽1内の所定水位まで給水を行い、蒸気供給配管19を通して殺菌槽内の噴射用水中に蒸気を吹き込むことで、噴射用水の温度を高める。噴射用水温度が所定温度まで上昇すると、噴射用水循環ポンプ4の作動を行い、噴射用水の被殺菌物2への噴射を行う。噴射用水循環ポンプ4を作動すると、殺菌槽内底部の噴射用水は噴射用水循環経路11内を流れて噴射ノズル13へ向かい、噴射ノズル13から被殺菌物2へ向けての噴射が行われる。被殺菌物2へ向けて噴射された噴射用水は、被殺菌物2の表面を流れ、その際に被殺菌物2を加熱する。噴射用水は多数段積み重ねているトレイ内の被殺菌物2を順次加熱しつつ落下し、殺菌槽内底部へ流れ落ちていく。
【0019】
運転制御装置12は、被殺菌物2の温度を高める昇温工程、被殺菌物2の温度を殺菌温度で維持する加熱工程を行い、被殺菌物2を殺菌温度で所定時間維持することによって被殺菌物2の殺菌を行う。加熱による殺菌が終了すると、被殺菌物2を冷却する冷却工程に移行する。運転制御装置12は、殺菌槽1内への蒸気供給は停止し、殺菌槽1内へ水を供給することで噴射用水の温度を低下させて被殺菌物2を冷却する冷却工程を行う。処理槽内温度が冷却終了温度まで低下すると、冷却の工程を終了し、扉3を開いて被殺菌物2を殺菌槽1内から取り出すが、扉3を開く前に排気経路用遮断弁18を開くことで溝5内の圧縮空気は排気経路14を通して排出し、エアーシールを解除しておく。そして殺菌槽1内からの排水と排気を行った後に扉3を開き、殺菌槽1内から被殺菌物2を取り出して全体の工程を終了する。
【0020】
また運転制御装置12では、メンテナンスモードでエアーシール不良の判定、もしくはエアーシール確認工程付き殺菌処理モードでのエアーシール不良の判定を行う。メンテナンスモードでは、加熱殺菌装置による殺菌処理は行っておらず、扉は閉じた状態において、圧縮空気用遮断弁10を開、排気経路用遮断弁18を閉にしてコンプレッサ9からの圧縮空気をエアーシールの溝5に供給し、圧縮空気供給配管8内の圧力を所定圧力まで高める。そして圧力を高めた状態で圧縮空気用遮断弁10を閉じることで、圧縮空気供給配管8内の空気が逃げないようにして圧縮空気供給配管部分の圧力を保持する。圧縮空気用遮断弁10及び排気経路用遮断弁18を閉じていると、パッキン6の劣化による漏れが発生していなければ圧力は維持されるが、パッキン6が劣化していた場合にはパッキン6から空気が漏れ出るため圧縮空気供給配管8内の圧力は徐々に低下する。運転制御装置12では、圧縮空気用遮断弁10を閉じてからの経過時間が所定時間を経過する前に、圧力検出装置7で検出している圧力が判定圧力より低くなった場合には、エアーシールが不良であると判定し、エアーシール不良の出力を行うことでパッキンの交換を促す。
【0021】
パッキンは消耗品であって劣化は避けられず、パッキンが劣化すれば殺菌槽内からの蒸気漏れが発生するが、同時にエアーシールからの空気の漏れも発生することになる。容量の大きな殺菌槽内から蒸気漏れが発生しても、漏れ量が少ない場合には殺菌槽内の圧力はほとんど変化しないため、殺菌槽内の圧力を監視しても漏れを検出することは難しい。しかし、圧縮空気用遮断弁10と排気経路用遮断弁18を閉じることで保持しているエアーシール部の空気量は、殺菌槽内の量に比べて大幅に少ない量であり、この空気が漏れた場合には漏れ量が僅かであっても圧縮空気供給配管内の圧力はすぐに低下するため、パッキンの劣化をより確実に検出することができる。
【0022】
エアーシールの不良検出は、加熱殺菌装置によって殺菌処理を行っている時に行うこともできなくはないが、圧縮空気用遮断弁10を閉じて圧縮空気の供給を停止した際にパッキンの劣化が発生していると、エアーシールからの空気の抜けによってパッキン6を押さえる力が低下し、そのことによって殺菌槽内からの蒸気漏れが発生して被殺菌物2の殺菌が不十分になるリスクがあるため、殺菌処理は行っていない状態で行う方が好ましい。
【0023】
そこで運転制御装置12では、通常の殺菌処理運転とは別の工程によってエアーシール不良の検出を行うモードを設定しておく。エアーシール不良を検出するモードとしては、殺菌処理の必要がない加熱殺菌装置の空き時間を利用して行うメンテナンスモードと、加熱殺菌装置による殺菌処理の工程内に組み込んでエアーシールの確認を行うエアーシール確認工程付き殺菌処理モードがある。運転制御装置12では上記モードの両方を設定しておき、必要に応じてエアーシールの確認のモードを選択できるようにしている。
【0024】
メンテナンスモードによるエアーシール確認は、殺菌処理の必要がない状態で行うものであり、エアーシール確認のために扉を閉じてエアーシールの溝部分に圧縮空気による圧力を掛け、圧縮空気用遮断弁10を閉じて圧力を保持する。この場合、確認時間を長く設定することができるため、パッキンの劣化度が比較的小さく、空気漏れ量が少ない段階からパッキンの劣化を検出することができる。
【0025】
もう一方のエアーシール確認工程付き殺菌処理モードでは、殺菌処理工程の前にエアーシール確認の工程行う。殺菌処理のために扉を閉じ、エアーシールの溝部分へ圧縮空気による圧力を掛けた後、通常の殺菌処理ではその後もコンプレッサ9からの圧縮空気の供給を可能とするが、エアーシール確認を行う場合は圧縮空気用遮断弁10を閉じて圧力を保持する。そしてエアーシール確認のために所定時間保持し、圧力低下がないことを確認すると、圧縮空気用遮断弁10は開くことで、コンプレッサ9からの圧縮空気の供給が行えるようにして殺菌処理の工程を進めていく。
【0026】
この場合、殺菌処理の前にエアーシールの確認の工程が加わるものであり、確認時間を長くすると加熱殺菌装置の稼働率が低下するため、確認時間はメンテモードでの時間より短い時間に設定する。エアーシール確認工程付き殺菌処理モードは、パッキンに傷が付いた場合など、急に漏れが発生するケースにおいては特に有効となる。ある日急に漏れが発生し始めた場合でも、エアーシールの確認を行ってから殺菌を行うものとすることで、処理槽内への蒸気を供給する前に異常を検出することができる。
【0027】
メンテモードでのエアーシールの確認は、圧力保持時間を長く取ることができるため、微少な漏れでも検出することができる反面、エアーシールの確認は頻繁に行う場合でも1日の操業終了後となってしまうのに対し、エアーシール確認工程付き殺菌処理モードでは、微少な漏れの検出はできなくても、殺菌処理を行う前にエアーシールの確認を行うようにしているため、殺菌処理に影響するような漏れが急に発生した場合でも、中途半端に被殺菌物を加熱してしまって被殺菌物を無駄にしてしまうことを防止することができる。
【0028】
上記エアーシールの確認は、両方行うようにしてもよく、一方のみを行うようにしてもよい。また、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 殺菌槽
2 被殺菌物
3 扉
4 噴射用水循環ポンプ
5 溝
6 パッキン
7 圧力検出装置
8 圧縮空気供給配管
9 コンプレッサ
10 圧縮空気用遮断弁
11 噴射用水循環経路
12 運転制御装置
13 噴射ノズル
14 排気経路
15 給水弁
16 給水ポンプ
17 給水配管
18 排気経路用遮断弁
19 蒸気供給配管


図1