(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-102278(P2021-102278A)
(43)【公開日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】シート成形方法及び成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/26 20060101AFI20210618BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20210618BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-233746(P2019-233746)
(22)【出願日】2019年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】山田 康二
(72)【発明者】
【氏名】平泉 功太
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AR12
4F208MA01
4F208MA02
4F208MA03
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MG01
4F208MH06
4F208MJ14
4F208MJ15
4F208MJ22
4F208MJ29
4F208MK03
4F208MK20
(57)【要約】
【課題】成形品外の切除廃棄部分を減少させて原価率を改善する。シートが賦形時に過剰に伸ばされないようにして成形品の肉厚不足を防止する。
【解決手段】成形型の分割された第1型1と第2型2とで、加熱された熱可塑性樹脂製のシート7を挟んで成形する。第1型1と第2型2の、成形部とPL面との境界の成形境界形状4と、PL面の回りの型外周面形状5とが相似形である。型外周面形状5と相似形であるシート7の周縁部を複数のクランパー12でクランプし、第1型1と第2型2とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート7を所定程度変形させる直前までは、各クランパー12を成形型の外周面から所定距離離れた基本位置P1におき、第1型1と第2型2とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート7を所定程度変形させたときに、各クランパー12をシート面内方向に変位させてシート押込位置P2におく。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型の分割された第1型(1)と第2型(2)とで、加熱された熱可塑性樹脂製のシート(7)を挟んで成形するシート成形方法において、
第1型(1)と第2型(2)の、成形部とPL面との境界の成形境界形状(4)と、PL面の回りの型外周面形状(5)とが相似形であり、
前記型外周面形状(5)と相似形であるシート(7)の周縁部を複数のクランパー(12)でクランプし、
第1型(1)と第2型(2)とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート(7)を所定程度変形させる直前までは、シート(7)をクランプした各クランパー(12)を成形型の外周面から所定距離離れた基本位置(P1)におき、
第1型(1)と第2型(2)とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート(7)を所定程度変形させたときに、シート(7)をクランプした各クランパー(12)をシート(7)面内方向に変位させてシート押込位置(P2)におくことにより、シート(7)を押し込むことを特徴とするシート成形方法。
【請求項2】
分割された第1型(1)と第2型(2)とを有する成形型と、熱可塑性樹脂製のシート(7)の周縁部をクランプして、該シート(7)を第1型(1)と第2型(2)との間に配置するクランプ装置(10)とを含むシート成形装置において、
第1型(1)と第2型(2)は、成形部とPL面との境界の成形境界形状(4)と、PL面の回りの型外周面形状(5)とが相似形であり、
クランプ装置(10)は、前記型外周面形状(5)と相似形であるシート(7)をクランプするものであり、成形型の周囲に分散配置された複数の部分クランプ装置(11)を含み構成され、
部分クランプ装置(11)は、前記型外周面形状(5)と相似形の仮想ライン(L)上に配置されてシート(7)の周縁部の一部分をクランプするクランパー(12)と、該クランパー(12)をシート面内外方向に変位させる変位装置(15)とを備え、
第1型(1)と第2型(2)とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート(7)を所定程度変形させる直前までは、シート(7)をクランプした各クランパー(12)を成形型の外周面から所定距離離れた基本位置(P1)におき、第1型(1)と第2型(2)とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート(7)を所定程度変形させたときに、シート(7)をクランプした各クランパー(12)をシート面内方向に変位させてシート押込位置(P2)におくように、変位装置(15)を制御する制御装置を備えることを特徴とするシート成形装置。
【請求項3】
成形境界形状(4)と型外周面形状(5)とシート形状(8)は、非長方形である請求項1記載のシート成形方法。
【請求項4】
成形境界形状(4)と型外周面形状(5)とシート形状(8)は、非長方形である請求項2記載のシート成形装置。
【請求項5】
成形型(1,2)に外周面からPL面の一部を欠くように凹んだ凹所(6)が形成され、シート押込位置(P2)は、クランパー(12)の先端部が該凹所(6)に入り込んだ位置である請求項1又は3記載のシート成形方法。
【請求項6】
成形型(1,2)に外周面からPL面の一部を欠くように凹んだ凹所(6)が形成され、シート押込位置(P2)は、クランパー(12)の先端部が該凹所(6)に入り込んだ位置である請求項2又は4記載のシート成形装置。
【請求項7】
シート押込位置(P2)は、クランパー(12)の先端が型外周面に当たらないように設計上見込む最小限の隙間(g)をおいて近接した位置である請求項1又は3記載のシート成形方法。
【請求項8】
シート押込位置(P2)は、クランパー(12)の先端が型外周面に当たらないように設計上見込む最小限の隙間(g)をおいて近接した位置である請求項2又は4記載のシート成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製のシートを成形する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂製のシートを三次元形状に成形することを含む成形方法として、シートの真空成形、圧空成形又は真空圧空成形や、シートの成形を伴う表皮インサート射出成形等がある。これらの成形に用いるシート成形装置は、三次元形状の成形面を有する成形型と、シートを加熱して軟化させる加熱装置と、前記シートの周縁部をクランプして該シートを成形型に当接させるクランプ装置とを備えている。クランプ装置は、最も単純なものはシートの周縁部を連続周状にクランプする枠状のものであるが、成形面の三次元形状に応じてシートの一部が薄くなりすぎたり、しわになったりしないように、次のようなクランプ装置が考えられている。
【0003】
特許文献1には、成形型の周縁と平行する方向と直行する方向との2方向に移動可能な分割されたクランパーを移動させ、成形後のシートが厚くなる傾向の部分を引き伸ばし、成形後のシートが薄くなる傾向の部分を引き寄せ、次いで成形型を上昇させるかあるいはクランパー群を降下させることによりシートを成形型に当接させてから真空成形すること、そして、これにより成形品全体に適正なシート厚さを与えることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、シートの対向する2辺をそれぞれ把持するクランプ材のうち、少なくとも一方のクランプ材を他方のクランプ材に向けて移動させることにより、シートを真空成形型の上部に凹状に撓ませ、次いでクランプ材を下降させてシートを成形型の外縁に当接させてから真空成形すること、そして、これにより成形品の底部分の伸びが抑えられ、所定の肉厚が確保されることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、シートの周縁部を把持する複数の把持具が連結機構によって把持具の間隔方向及び前後方向に移動可能な状態に連結されてなる把持機構が複数設けられ、シートを加熱した後、把持具の間隔を広げ後退させてシートを延伸し、さらにシートを加熱するのに併せて、把持具の間隔を狭め前進させてシートを収縮させ、次いで熱成形型を上昇させてその上縁をシートに添着してから真空成形すること、そして、これにより熱処理を精密に制御でき、成形品の特性を改良できることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、シートの走行方向の端縁を把持する所定個数のクランプ手段と該手段を昇降する昇降機構と該機構を幅方向に移動させる幅調整機構とを具備する一対の幅クランプ装置と、シートの走行方向に直行する端縁を把持する所定個数のクランプ手段と該手段を昇降する昇降機構と該機構を走行方向に移動させる幅調整機構とを具備する一対の前後クランプ装置を用い、シートを一対の幅クランプ装置と一対の前後クランプで把持して、上成形型の形状にあわせて成形時の上成形型の下降速度に同調することにより、しわが発生せずに材料の歩留まりが向上することが記載されている。
【0007】
特許文献5には、シートの対向する短辺をそれぞれ全長にわたって把持する2つの第一クランプと、シートの対向する長辺の複数個所をそれぞれ把持する上下方向及び水平方向へ変位可能に構成された複数の第二クランプとを用い、第二クランプを上下方向の所定範囲で自在に移動させ、かつ、短辺方向の所定範囲で自在に移動させることによって、シートをストレスなくドローダウンさせ、次いでシートを成形型に密着させて真空成形すること、そして、これにより歩留まり良く均一な板厚の製品を成形加工できることが記載されている。
【0008】
特許文献6には、シートの前後方向両端を保持するチャック装置が傾斜して図示されている。各チャック装置は、複数個のクランプアームを備えるが、各クランプアームは一体として傾斜するように本体アームで連結されている。また、別の特徴として、上型が閉じる前にクランプ爪が開いてシートが開放され、シートは伸びつつ型内に流入することができ、しわ、キレツを回避できることが記載されている。さらに、上型を完全に閉じる段階で、スライド部材が前進し、シートを基材のアンダーカット部に押圧することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−49921号公報
【特許文献2】特開平8−132518号公報
【特許文献3】特開平10−58536号公報
【特許文献4】特開2009−101564号公報
【特許文献5】特開2015−58586号公報
【特許文献6】特開2014−226887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜6のクランプ装置を備えたシート成形装置には、次の問題点(1)(2)があった。
【0011】
(1)成形型の分割された第1型と第2型の相対向する対向面は、成形部(シート成形用の凸部又は凹部)とその回りのPL面(Parting Line)とからなる。成形部とPL面との境界の成形境界形状は、長方形(正方形も含む)である場合は少なく、非長方形である場合が多い。また、PL面は略一定幅に設計されることが多いから、PL面の回りの型外周面形状も、非長方形(成形境界形状と相似形で一回り大きい)である場合が多い。
しかし、特許文献1〜6等の従来のクランプ装置は、成形境界形状および型外周面形状によらず、長方形のシートの使用を前提とし、その周縁部をクランプするように構成されている。このため、
図7(b)に示すように、成形後のシート51の周縁と成形境界形状52との距離が大きくなり、成形品外の切除廃棄部分53(クロスハッチング部分)が増加して、原価率が悪化するという問題があった。なお、本明細書において、「長方形」の概念には正方形も含まれるものとする。
【0012】
(2)特許文献1〜4のクランプ装置は、シートの周縁部をシート面と平行の方向(面内外方向や面周縁方向)に変位させるが、その変位は、第1型と第2型とが接近する以前に行うものであり、第1型と第2型とが接近して成形部がシートを変形させる途中で行うものではなかった。そのため、成形部がシートを変形させるとき(賦形時)に、シートが型中心に向かって引き込まれて過剰に伸ばされ、成形品の肉厚不足が発生することがあった。これは品質低下ないし不良となる。
特許文献5のシート成形装置は、シートを1つの成形型の凹面に密着させるものであり、第1型と第2型とが接近して成形部がシートを変形させるものではない。
特許文献6は、上型を完全に閉じる段階でスライド部材が前進するが、それはシートをアンダーカット部に入れるためにすぎないし、スライド部材はクランプ装置ではない。クランプ装置は前進しない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、成形品外の切除廃棄部分を減少させて原価率を改善するとともに、シートが賦形時に過剰に伸ばされないようにして成形品の肉厚不足を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1]シート成形方法
成形型の分割された第1型と第2型とで、加熱された熱可塑性樹脂製のシートを挟んで成形するシート成形方法において、
第1型と第2型の、成形部とPL面との境界の成形境界形状と、PL面の回りの型外周面形状とが相似形であり、
前記型外周面形状と相似形であるシートの周縁部を複数のクランパーでクランプし、
第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させる直前までは、シートをクランプした各クランパーを成形型の外周面から所定距離離れた基本位置におき、
第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させたときに、シートをクランプした各クランパーをシート面内方向に変位させてシート押込位置におくことにより、シートを押し込むことを特徴とする。
【0015】
[2]シート成形装置
分割された第1型と第2型とを有する成形型と、熱可塑性樹脂製のシートの周縁部をクランプして、該シートを第1型と第2型との間に配置するクランプ装置とを含むシート成形装置において、
第1型と第2型は、成形部とPL面との境界の成形境界形状と、PL面の回りの型外周面形状とが相似形であり、
クランプ装置は、前記型外周面形状と相似形であるシートをクランプするものであり、成形型の周囲に分散配置された複数の部分クランプ装置から構成され、
部分クランプ装置は、前記型外周面形状と相似形の仮想ライン上に配置されてシートの周縁部の一部分をクランプするクランパーと、該クランパーをシート面内外方向に変位させる変位装置とを備え、
第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させる直前までは、シートをクランプした各クランパーを成形型の外周面から所定距離離れた基本位置におき、第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させたときに、シートをクランプした各クランパーをシート面内方向に変位させてシート押込位置におくように、変位装置を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【0016】
ここで、成形境界形状と型外周面形状は、長方形の場合も含むが、非長方形の場合の方が、相似形のシートを使用する本発明の特徴がより際立つ。
【0017】
シート押込位置としては、次の態様がある。
(ア)成形型に外周面からPL面の一部を欠くように凹んだ凹所が形成され、シート押込位置は、クランパーの先端部が該凹所に入り込んだ位置である。
(イ)シート押込位置は、クランパーの先端が型外周面に当たらないように設計上見込む最小限の隙間をおいて近接した位置である。
【0018】
<作用>
シート形状を成形境界形状及び型外周面形状と相似形にしたシートを使用するため、シートの周縁と成形境界形状との距離及びその間の面積が小さくなり、成形品外の切除廃棄する材料部分が減少して、原価率が改善する。
第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させる直前までは、シートをクランプした各クランパーを成形型の外周面から所定距離離れた基本位置におく。このとき、シートは型中心に向かって引き込まれて変形するため、クランプしたシートに引張力が働くが、変形はまだ所定程度に達していないので、シートが伸びすぎることはなく、むしろ適度な引張力によりしわの発生を防止することができる。
第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近して成形部がシートを所定程度変形させたときに、シートをクランプした各クランパーをシート面内方向に変位させてシート押込位置におくことにより、シートを押し込む。これにより、これ以降シートが型中心に向かってさらに引き込まれても、シートに働く引張力が低減されるため、シートが伸びすぎることはなく、成形品の肉厚不足を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、成形品外の切除廃棄部分を減少させて原価率を改善することができるとともに、シートが賦形時に過剰に伸ばされないようにして成形品の肉厚不足を防止することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は実施例1のシート成形装置のクランパーが基本位置にあるときの平面図である。
【
図2】
図2は同装置のクランパーがシート押込位置にあるときの平面図である。
【
図3】
図3は同装置によるシート成形方法を示し、(a)は第1型と第2型との間にシートを配置したときのIIIa−IIIa断面図、(b)は第1型と第2型とが接近して成形部がシートを変形させ始めたときの断面図である。
【
図4】
図4は同シート成形方法を引き続き示し、(a)は第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近したときのIVa−IVa断面図、(b)は第1型と第2型とを型締めしてシートを真空成形するときの断面図である。
【
図5】
図5は同シート成形方法を引き続き示し、第1型と第2型とを開いたときの断面図である。
【
図6】
図6(a)は
図3(b)の部分拡大断面図、(b)は
図4(a)の部分拡大断面図である。
【
図7】
図7(a)は実施例におけるシートの切除廃棄部分を示す平面図、(b)は従来技術におけるシートの切除廃棄部分を示す平面図である。
【
図8】
図8は実施例2のシート成形装置・方法を示し、(a)は第1型と第2型とが接近して成形部がシートを変形させ始めたときの部分拡大断面図、(b)は第1型と第2型とが所定間隔をおくように接近したときの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)シート
熱可塑性樹脂製のシートは、特定の熱可塑性樹脂、層構成、厚さ等に限定されず、熱可塑性樹脂については例えばエラストマーも含み、層構成については単層も複数層も含み、厚さについては例えばフィルムと称されるものも含む。
前述のとおり、長方形の概念には正方形も含まれる。
非長方形としては、特に限定されないが、長方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形・楕円形・その他の湾曲形状、異形等を例示できる。
【0022】
(2)成形型
成形型は、シートを三次元形状に成形することを含む成形に用いる型であれば特に限定されない。真空成形型、圧空成形型、真空圧空成形型、シートの成形を伴うインサート射出成形型等を例示できる。
成形型の成形面の向きは、特に限定されず、上下方向、左右方向のいずれでもよい。
【0023】
(3)部分クランプ装置
部分クランプ装置が成形型の周囲に分散配置される数は、特に限定されないが、4台以上が好ましく、6台以上がより好ましい。。
【0024】
(3−1)クランパー
クランパーの構造としては、特に限定されないが、シートをつかんでクランプする挟持機構等を例示できる。
【0025】
(3−2)変位装置
変位装置の構造としては、特に限定されないが、エアシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダー、ボールネジ等による装置を例示できる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0027】
[実施例1]
図1〜
図6に示す実施例1のシート成形装置は、分割された第1型1と第2型2とを有する成形型と、熱可塑性樹脂製のシート7の周縁部をクランプして、該シート7を第1型1と第2型2との間に配置するクランプ装置10と、該クランプ装置10の変位装置15を制御する制御装置(図示略)と、該シート7を加熱して軟化させる加熱装置(図示略)とを備える。
【0028】
下側の第1型1と、上側の第2型2は、上下方向に移動して開閉可能となっている。
第1型1は、上向きのPL面に対して中央部の成形部が突出したコア型(雄型)である。
第2型2は、下向きのPL面に対して中央部の成形部が凹んだキャビティ型(雌型)である。また、第2型2は真空成形型であって、成形部には真空吸引孔3が形成されている。
第1型1と第2型2は、成形部とPL面との境界の成形境界形状4が六角形であり、PL面の回りの型外周面形状5が、成形境界形状4と相似形で一回り大きい六角形である。
【0029】
本実施例では、シート形状8が型外周面形状5と相似形で一回り大きい六角形であるシート7を使用する。
【0030】
クランプ装置10は、成形型の周囲に分散配置された複数の部分クランプ装置11と、すべての部分クランプ装置11を支持する支持枠とから構成されている。詳しくは、型外周面形状5である六角形の各辺に対応して、計6台の部分クランプ装置11が間隔をおいて配置されている。
【0031】
部分クランプ装置11は、型外周面形状5と相似形で一回り大きい仮想ラインL上に配置されてシート7の周縁部の一部分をクランプするクランパー12と、該クランパー12をシート面内外方向に変位させる変位装置15とを備える。部分クランプ装置11間では、互いの変位装置15が相手のクランパー12を変位させない。
【0032】
クランパー12は、受け部材13と、受け部材13に蝶番により回動可能に取れ付けられた押さえ部材14と、押さえ部材14を回動されるアクチュエータ(図示略)とからなり、押さえ部材14が下へ回動したときに、押さえ部材14と受け部材13とでシート7の周縁部を挟持してクランプするようになっている。
【0033】
変位装置15は、支持枠に長孔にて一方向に取付位置調節可能に取り付けられた下台16と、下台16に長孔にて前記一方向とは直交方向に取付位置調節可能に取り付けられた上台17と、上台17に取り付けられて前記受け部材13を変位させる変位用アクチュエータ18とからなる。変位用アクチュエータ18により、クランパー12を前進させてシート面内方向に変位させ、クランパー12を後退させてシート面外方向に変位させる。変位用アクチュエータ18は、例えばエアシリンダーである。
【0034】
制御装置は、第1型1と第2型2とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート7を所定程度変形させる直前までは、シート7をクランプした各クランパー12を成形型の外周面から所定距離離れた基本位置P1におき、第1型1と第2型2とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート7を所定程度変形させたときに、シート7をクランプした各クランパー12をシート面内方向に変位させてシート押込位置P2におくように、変位用アクチュエータ18を制御するように構成されている。
【0035】
本実施例1では、成形型に型外周面からPL面の一部を欠くように凹んだ凹所6が形成され、シート押込位置P2は、クランパー12の先端部が該凹所6に入り込んだ位置である。このとき、シート7の周縁も、該凹所6に入り込むことが好ましいが、型外周面よりも外側にあってもよい。
【0036】
以上のように構成された実施例1のシート成形装置を用いて、次の方法でシート7を三次元形状に成形(賦形)することができる。
(1)
図1及び
図3(a)に示すように、シート7を全クランパー12でクランプし、開いた第1型1と第2型2との間に配置する。このとき、シート7をクランプした各クランパー12は、各変位装置15により、基本位置P1にある。また、加熱装置(図示略)により、シート7を加熱して軟化させる。
【0037】
(2)次いで、
図3(b)及び
図6(a)に示すように、第1型1と第2型2とが接近し始めて成形部がシート7を変形させ始めても、次に述べる
図3(c)の状態となる直前までは、シート7をクランプした各クランパー12を基本位置P1におく。シート7は型中心に向かって引き込まれて変形するため、クランプしたシート7に引張力が働くが、変形はまだ所定程度に達していないので、シート7が伸びすぎることはなく、むしろ適度な引張力によりしわの発生を防止することができる。
【0038】
(3)次いで、
図4(a)及び
図6(b)に示すように、第1型1と第2型2とが所定間隔をおくように接近して成形部がシート7を所定程度変形させたときに、シート7をクランプした各クランパー12を、各変位装置15により、シート面内方向に変位させてシート押込位置P2におくことにより、シート7を押し込む。これにより、これ以降シート7が型中心に向かってさらに引き込まれても、シート7に働く引張力が低減されるため、シート7が伸びすぎることはなく、成形品の肉厚不足を防止することができる。
【0039】
(4)次いで、
図4(b)に示すように、第1型1と第2型2とを型締めして、シート7をプレスするとともに、第2型2の真空吸引孔3を型外部の真空吸引装置により減圧してシート7を第2型2の成形部に真空吸引し密着させる。全クランパー12は、この成形前又は成形後にシート7をアンクランプして基本位置P1に戻る。
【0040】
(5)次いで、
図5に示すように、冷却後、第1型1と第2型2とを型開きしてシート7を取り出す。以上により、シート7が三次元形状に成形されてなる成形品ができる。
【0041】
本実施例1によれば、シート形状8を成形境界形状4及び型外周面形状5と相似形にしたシート7を使用するため、
図7(a)に示すように、成形後のシート7の周縁と成形境界形状4との距離が小さくなり、成形品外の切除廃棄部分9(同図のクロスハッチング部分)が減少して、原価率が改善する。
【0042】
[実施例2]
次に、
図8に示す実施例2のシート成形装置及びシート成形方法は、シート押込位置P2が、クランパー12の先端が型外周面に、各部の寸法誤差によって当たることがないように、設計上見込む最小限の隙間gをおいて、極限まで近接した位置である点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
【0043】
本実施例2によっても、成形品外の切除廃棄する材料部分を減少させて原価率を改善することができるとともに、シート7が賦形時に過剰に伸ばされないようにして成形品の肉厚不足を防止することができる。但し、これらの効果は実施例1の方が高い。
【0044】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 第1型
2 第2型
3 真空吸引孔
4 成形境界形状
5 型外周面形状
6 凹所
7 シート
8 シート形状
9 切除廃棄部分
10 クランプ装置
11 部分クランプ装置
12 クランパー
13 受け部材
14 押さえ部材
15 変位装置
16 下台
17 上台
18 変位用アクチュエータ
P1 基本位置
P2 シート押込位置
L 仮想ライン
g 隙間