【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開の事実―1(発明に係る車両用シフト装置を備えた自動車を展示) 展示会名;東京モーターショー2019 展示日;令和元年10月23日(10月23日〜11月4日) 展示場所;東京都江東区有明3−11−1 東京ビッグサイト (2)公開の事実−2(発明に係る車両用シフト装置を備えた自動車を展示) 展示会名;MAZDA GLOBAL TECH FORUM 2019 展示日;令和元年8月26日(8月26日〜9月2日) 展示場所;Hotel Amerikalinjen Jernbanetorget 2,0154 Oslo,Norway (3)公開の事実−3(発明に係る車両用シフト装置を備えた自動車を展示) 展示会名;2019 MAZDA EUROPEAN TECHNOLOGY & DESIGN FORUM 展示日;令和元年11月25日(11月25日〜12月13日) 展示場所;Penha Longa Resort Estrada da Lagoa Azul,Linh■ Sintra,2714−511 Lisbon,Portugal
【解決手段】車両用シフト装置は、シフトレバーと、シフトレバーの上端部に取り付けられたシフトノブ13とを備える。シフトノブ13を車両の横方向の一方側から側面視する場合に、上面部13a、前側湾曲部13d、後側湾曲部13e、および後面部13fを有する。上面部13aは、前方へ行くほど下方に下がるように傾斜している。前側湾曲部13dは、上面部13aの前端から前方に膨出するよう構成されている。後側湾曲部13eの曲率半径は、前側湾曲部13dの曲率半径よりも大きい。後面部13fは、後側湾曲部13eの下端から後方かつ下方に延びる。シフトレバーが延びる方向に対して直交する方向の距離であって、前側湾曲部13dの前端から後面部13fの下部寄りの位置P13f2までの距離が、71mm以上81mm以下である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両に対しては、運転者の疲労を更に軽減することで、運転時のより高い安全性が確保できる構造の採用が求められている。これに対して、上記特許文献1に開示の車両用シフト装置では、シフトノブの上面部が把持した掌の形に合わせるべく曲面で構成されてはいるものの、サイズに関しては何ら考慮されていない。特に、手の大きさは、人の体格に起因して異なるため、手が大きい大柄な人や、逆に手が小さい小柄な人が上記特許文献1に開示の車両用シフト装置を操作した場合には、当該操作時にシフトノブを把持するのに腕の筋肉に力を入れなければならず、運転により疲労してしまうことが考えられる。
【0006】
なお、上記特許文献1に開示の車両用シフト装置は、変速機との間がケーブルでリンクされた装置であるが、エレキシフト装置(シフト・バイ・ワイヤ式のシフト装置)に関しても、上記車両用シフト装置と同様に改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、運転中における運転者の疲労を軽減することができる車両用シフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用シフト装置は、運転席の側方部分に設けられた車両用シフト装置であって、前記側方部分のフロア側から上方に向けて延びるように立設されたシフトレバーと、前記シフトレバーの上端部に取り付けられ、運転者がシフト操作する際の操作力が入力されるシフトノブと、を備え、前記シフトノブを車両の横方向の一方側から側面視する場合に、前記シフトノブは、前方に行くほど下方に下がるように傾斜した上面部と、前記上面部の前端から前方に膨出し、当該膨出した部分に続いて下方かつ後方に向かうように湾曲した前側湾曲部と、前記上面部の後端部から後方かつ下方に向かうように湾曲し、曲率半径が前記前側湾曲部よりも大きい後側湾曲部と、前記後側湾曲部の下端から後方かつ下方に延びる後面部と、を有し、前記シフトレバーが延びる方向に対して直交する方向の距離であって、前記前側湾曲部の前端から前記後面部の下部寄りの位置までの距離が、71mm以上81mm以下である。
【0009】
上記態様に係る車両用シフト装置では、シフトノブにおける前側湾曲部の前端から後面部の下部寄りの位置までの上記方向での距離を71mm以上81mm以下の範囲としているので、手が大きな大柄な人から手が小さな小柄な人まで大多数の人を対象として、運転中における運転者の疲労を軽減することができる。即ち、シフトノブにおける前側湾曲部の前端から後面部の下部寄りの位置までの上記方向での距離を71mm以上としているので、手が大きな大柄な運転者が中指や薬指をシフトノブの前側湾曲部に引っ掛けて当該シフトノブを前方から後方に向けて引く際にも人差指、中指および薬指が手首側に曲がりすぎることが防がれる。よって、手が大きな大柄な運転者が運転しても、シフトノブを後方に引く際の腕の筋の負担が軽減される。
【0010】
また、上記態様に係る車両シフト装置では、シフトノブにおける前側湾曲部の前端から後面部の下部寄りの位置までの上記方向での距離を81mm以下としているので、手が小さな小柄な運転者が掌を添えてシフトノブを後方から前方へと押し込む際にもシフトノブに対する掌の角度が浅くなりすぎない。よって、手が小さな小柄な運転者が運転しても、シフトノブを前方に押し込む際に中指等の滑りを生じ難い。
【0011】
以上より、上記態様に係る車両用シフト装置では、運転中における運転者の腕(特に、前腕の浅指屈筋および深指屈筋)の疲労を軽減することができる。
【0012】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記前側湾曲部のうち、前記前端から、前記前側湾曲部に沿って前記前端よりも上方に8mm以上12mm以下の箇所までの範囲は、10mm以上20mm以下の曲率半径で外凸に形成されている、とすることもできる。
【0013】
上記のように、前側湾曲部の前端(膨出した部分の前端)から、前側湾曲部に沿って前端よりも上方に8mm以上12mm以下の箇所までの範囲を、10mm以上20mm以下の曲率半径で外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)に形成する場合には、手が大きな大柄な運転者でも手が小さな小柄な運転者でも前側湾曲部の前端に人差指、中指および薬指を引っ掛けてシフトノブを後方に引く際にも、中指の根元部分等に対してシフトノブから加わる反発力を小さく抑えることができる。よって、手が大きな大柄な人が運転する場合、および手が小さな小柄な人が運転する場合も両方において、シフトノブを柔らかく包み込むような状態でシフト操作を行うことができ、運転中における運転者の腕の疲労を軽減するのに更に有効である。
【0014】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記シフトノブを前記車両の前記横方向の一方側から側面視する場合に、前記シフトノブは、前記前側湾曲部の下端から後方であって下方に延びる前面部を更に有し、前記前面部のうち、前記下端から、前記前面部に沿って前記下端よりも下方に60mm以上の箇所までの範囲は、30mm以上の曲率半径で外凸に形成されている、とすることもできる。
【0015】
上記のように、前面部における、前側湾曲部の下端(前面部との接続箇所)から、前面部に沿って下端よりも下方に60mm以上の箇所までの範囲を、30mm以上の曲率半径で外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)に形成する場合には、手が大きい大柄な運転者が前側湾曲部の前端に人差指、中指および薬指を引っ掛けてシフトノブを後方に引く際にも、中指等における前側湾曲部の前端に引っ掛けた部分から指先までの部分を30mm以上の曲率半径を以って構成された部分(前面部の少なくとも一部)に沿わすことで、運転中における運転者の腕の疲労を更に軽減することができる。
【0016】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記シフトノブにおける運転席側の側面部に出没可能に設けられ、前記運転席側の面が押面部とされたプッシュスイッチを更に備え、前記シフトノブを前記運転席側から側面視し、前記プッシュスイッチの前記押面部における中心を通り前記直交する方向に延びる仮想線を引くとき、前記後面部の前記下部寄りの位置は、前記後面部のうち、前記仮想線との交点から、前記後面部に沿って7.5mm下がった位置である、とすることもできる。
【0017】
上記のように、前記下部寄りの位置を設定する場合には、シフトノブを把持した運転者の親指でプッシュスイッチの押面部の把持を考慮した上で、運転中における運転者の腕(特に、前腕の浅指屈筋および深指屈筋)の疲労を軽減することができる。
【0018】
上記愛用に係る車両用シフト装置において、前記後面部の前記下部寄りの位置から、前記後面部に沿って前記下部寄りの前記位置よりも上方に25mm以上29mm以下の箇所までの範囲は、30mm以上36mm以下の曲率半径で外凸に形成されている、とすることもできる。
【0019】
上記のように、後面部のうち、上記下部寄りの位置から、後面部に沿って前記下部寄りの前記位置よりも上方に25mm以上29mm以下の箇所までの範囲を、30mm以上36mm以下の曲率半径で外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)に形成する場合には、手が大きな大柄な運転者が掌を後面部に沿わせる場合、および手が小さな小柄な運転者が掌を後面部に沿わせる場合の両場合にも、手首に近い部分から指の付け根に至る掌の角度が運転者にとって楽な角度となる。よって、上記のような構成を採用する場合には、運転中における運転者の腕の疲労を更に軽減するのに有効である。
【0020】
上記態様に係る車両用シフト装置において、ドライブポジションを含む複数の走行ポジション同士の間を切り替える際に前記シフトレバーの前記上端部が移動する軌跡を第1シフトレーン、前記複数の走行ポジションのうちの1つの走行ポジションとパーキングポジションとの間を切り替える際に前記シフトレバーの前記上端部が移動する軌跡を第2シフトレーンとするとき、前記第1シフトレーンは、前記車両の前後方向に延び、前記第2シフトレーンは、前記車両の前記横方向であって、前記第1シフトレーンから前記運転席の側へと近づくように延びており、前記シフトレバーを前記車両の前後方向の一方側から見るとき、前記走行ポジションにある場合の前記シフトレバーは、直立状態に対して前記上端部が前記運転席から離れる方向に傾斜した状態の第1姿勢をとり、前記パーキングポジションにある場合の前記シフトレバーは、直立状態または前記第1姿勢よりも直立に近い状態の第2姿勢をとる、とすることもできる。
【0021】
上記のように、複数の走行ポジション(例えば、リバースポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジション)を切り替える際にシフトレバーの上端部(シフトノブが取り付けられた部分)の軌跡である第1シフトレーンでは、シフトレバーが、直立状態に対して上端部が運転席から離れる方向に傾斜しているので(第1姿勢をとっているので)、運転中における運転者の腕(特に前腕の撓側手根屈筋および円回内筋)の疲労を更に軽減するのに有効である。即ち、上記のような構成を採用する場合には、複数の走行ポジションを切り替える際には運転者は掌を上面部などに沿わせて手を前後方向に動かすことになるが、シフトレバーを傾けることによってシフトノブの上面部も傾くことになり、運転者が腕の筋に力を入れずにシフト操作を行うことができる。
【0022】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記複数の走行ポジションおよび前記パーキングポジションを、前記車両の上下方向の一方側から見るとき、前記複数の走行ポジションのそれぞれおよび前記パーキングポジションは、互いに離間した位置に配置されており、シフトポジションが所定のポジションにある場合に、前記シフトノブに対して前記シフト操作がなされるまでは、当該ポジションが維持される、とすることもできる。
【0023】
上記のように、新たなシフト操作がなされるまで元のポジションが維持される、所謂、ステーショナリ式のシフト装置という構成を採用する場合には、モメンタリ式のシフト装置と違い、運転者はインジケータ等を確認しなくても現在のシフトポジションを直感的に認識することができる。よって、上記のような構成を採用する場合には、車両のより高い安全性を確保するのに有効である。
【0024】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記車両は、前記車両の前記横方向において、前記運転席に対して間隔を空けて配設された助手席と、前記運転席と前記助手席との間の部分に配設されたセンターコンソールと、を備え、前記車両用シフト装置は、シフト・バイ・ワイヤ式のエレキシフト装置であって、前記シフトレバーの回動中心を内部に収容する箱状のシフト装置ベースを更に備え、前記シフト装置ベースは、前記センターコンソールの内部に填め込まれており、前記センターコンソールにおける前記シフト装置ベースが収容された部分の底部の一部と前記フロアとの間には空間が空いている、とすることもできる。
【0025】
上記のように、センターコンソールの底部(シフト装置ベースが填め込まれた部分の底部)の一部とフロアとの間に空間が空いた状態とすることで、上記態様に係る車両用シフト装置がシフト・バイ・ワイヤ式のエレキシフト装置であることを乗員や周囲の人に認識させるのに有効である。また、車両の室内デザインの自由度を高めるという観点からも有効である。
【0026】
上記態様に係る車両用シフト装置において、前記シフトノブを前記車両の前記横方向の一方側から側面視する場合に、前記シフトノブは、前記前側湾曲部の下端から後方かつ下方に延びる前面部を更に有し、前記前側湾曲部の下端において前記前面部に接する第1接線を引き、前記上面部の前端において前記前側湾曲部に接する第2接線を引くとき、前記第1接線と前記第2接線との交点を第1交点とし、前記第1接線に沿って、前記第1交点から30mmの点を当該第1接線の終点とし、当該第1終点で前記第1接線に対して145deg.以上160deg.以下の角度で交差する仮想線を引き、前記仮想線に沿って、前記第1終点から30mmの点を当該仮想線の終点とするとき、前記前面部は、前記シフトノブを把持した運転者の中指の先端が当該シフトノブに当接しないように、前記下端から所定箇所までの範囲が、30mm以上の曲率半径で外凸に形成されている、とすることもできる。
【0027】
上記のように前面部を規定する場合には、前面部のうちの曲率半径を30mm以上とする範囲を、上記のように、前記前面部に沿って前記下端よりも下方に60mm以上確保することができない場合にも、手が大きい大柄な運転者が前側湾曲部の前端に人差指、中指および薬指を引っ掛けてシフトノブを後方に引く場合にも運転中における運転者の腕の疲労を更に軽減することができる。
【発明の効果】
【0028】
上記の各態様に係るは料用シフト装置では、運転中における運転者の疲労を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0031】
[実施形態]
1.車両1における車室内1aの構造
図1は、本実施形態に係る車両1の車室内1aの構造を示す斜視図である。なお、本実施形態で参酌する図面については、模式的に図示をしており、図のサイズ等は実際とは異なる場合がある。また、図中における「UP、「LO」、「FR」、「RE」、「LE」、「RI」は、それぞれ運転席に乗車した運転者が認識する「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左方」、「右方」を示している。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1の車室1aには、左右方向に並んだ状態で運転席2および助手席3が配置されている。左右方向において、運転席2と助手席3との間には間隔が空いている。なお、本実施形態では、左側に運転席2、右側に助手席3を配置した、所謂、左ハンドルの車両1を一例としている。
【0033】
運転席2の前方には、ステアリングホイール4が配置されている。ステアリングホイール4は、運転者が運転席2に着座した際に当該運転者の胸のあたりとなる高さ位置に配置されている。また、運転席2の前方には、下方のフロア部分にアクセルペダル5およびブレーキペダル6が配置されている。アクセルペダル5は、運転席2に着座した運転者の右足が置かれる位置に配置され、ブレーキペダル6は、アクセルペダル5よりも左側に配置されている。
【0034】
車室1aの前方部分には、フロントウインドシールド7が設けられている。フロントウインドシールド7は、例えば、合わせガラスで形成されている。フロントウインドシールド7の下端部分からステアリングホイール4の前方までの領域には、インストルメントパネル8が設けられている。インストルメントパネル8は、運転席2の前方から助手席3の前方まで車幅方向に延びるように設けられている。インストルメントパネル8は、ステアリングホイール4の前方に配置されたメータークラスタ部などを有する。
【0035】
運転席2の右側方部分であって、助手席3との間におけるフロア上には、センターコンソール9およびアームレスト10が配置されている。センターコンソール9には、車両用シフト装置11などの運転操作に係る入力デバイスが配置されている。アームレスト10は、センターコンソール9よりも後方に配置されており、運転席2や助手席3に着座した乗員が前腕や肘を載せるための場所である。
【0036】
2.車両用シフト装置11の外観構造
図2は、本実施形態に係る車両1が備える車両用シフト装置11の外観構造を示す斜視図である。
【0037】
図2に示すように、車両用シフト装置11は、センターコンソール9に対して当該センターコンソール9の上面部9aと略面一になるように填め込まれたシフト装置ベース15と、シフト装置ベース15の内方から上向きに起立状態で立設されたシフトレバー12と、シフトレバー12の上端部に取り付けられたシフトノブ13と、を有する。また、シフトノブ13の左側部分には、運転者の親指による操作を受け付けるプッシュスイッチ14が設けられている。
【0038】
シフト装置ベース15には、運転者の操作によるシフトレバー12の移動軌跡に合わせてシフトレーン15aが設けられている。なお、本実施形態に係る車両1では、所謂、ステーショナリ式のシフト装置を採用している。このため、運転者のシフト操作によりシフトレバー12の位置が所定のポジションに移動された場合には、次に運転者がシフト操作を行うまでシフトレバー12の位置が当該所定のポジションに保持される。
【0039】
また、シフト装置ベース15には、シフトレバー12が突出された部分よりも運転者側に部分に、インジケータ部15bが設けられている。運転者は、インジケータ15bの表示によってもシフトポジションの確認が可能となっている。
【0040】
なお、本実施形態に係る車両用シフト装置11は、エレキシフト装置(シフト・バイ・ワイヤ方式のシフト装置)である。
【0041】
3.シフトレバー12の回動に係る構造
図3は、シフトレバー12の回動に係る構造を示す正面図である。
【0042】
図3に示すように、車両用シフト装置11のシフト装置ベース15は、センターコンソール9の内部9bに填め込まれている。そして、シフト装置ベース15の上下方向寸法は、当該シフト装置ベース15がセンターコンソール9の内部9bに収まる寸法に設定されている。
【0043】
シフトレバー12は、運転者がシフトノブ13に手を添えてシフト操作することによって、シフトノブ13が取り付けられた上端部が前後方向および左右方向に移動するように回動可能となっている。そして、シフトレバー12の回動中心12aは、シフト装置ベース15の内部15cに配置されている。即ち、本実施形態に係る車両用シフト装置11は、所謂、ショートストローク式のシフト装置である。
【0044】
4.フロア1bに対する車両用シフト装置11の配置
図4は、車両用シフト装置11を右側から見た側面図である。
【0045】
図4に示すように、車両用シフト装置11のシフト装置ベース15は、センターコンソール9に填め込まれている(内装されている)。そして、センターコンソール9におけるシフト装置ベース15が填め込まれた部分の底部9cの一部が、フロア1bとの間に空間SPを空けた状態となっている。
【0046】
このような構造を以って配設された車両用シフト装置11を備える車両1においては、当該車両用シフト装置11がエレキシフト装置であることを乗員に実感させることができる。また、車室1a内のデザイン性という観点からも優れる。
【0047】
5.シフトパターン
図5は、車両用シフト装置11におけるシフトパターンを示す模式図である。
【0048】
図5に示すように、車両用シフト装置11では、リバース(R)ポジション15r、ニュートラル(N)ポジション15n、およびドライブ(D)ポジションが、この順で前方から後方に向けて略直線的に配置されている。これに対して、パーキング(P)ポジション15pは、Rポジション15rに対して左側(運転者側)に配置されている。
【0049】
シフトレバー12の移動軌跡に沿って設けられたシフトレーン15aは、Rポジション15r、Nポジション15n、およびDポジション15dの間でのシフトレバー12の移動に対応する前後方向レーン15a1と、Rポジション15rとPポジション15pとの間でのシフトレバー12の移動に対応する横方向レーン15a2とを有する。前後方向レーン15a1と横方向レーン15a2とは、Rポジション15rで連続しており、シフトレーン15aは、全体として略逆L字形状である。
【0050】
なお、本明細書では、Rポジション15r、Nポジション15n、およびDポジション15dを「走行ポジション」と総称する場合がある。
【0051】
運転者が停車中(パーキング中)の車両1を発進させようとする場合には、次のようなシフト操作を行う。
【0052】
先ず、運転者は、ブレーキペダル6を足で踏んだ状態でシフトノブ13を把持し、プッシュスイッチ14を押し込みながら親指でシフトノブ13を右側に移動させる。これによって、シフトポジションがPポジション15pからRポジション15rに移動する。
【0053】
次に、運転者は、シフトノブ13の前端部分に中指や薬指などを引っ掛けてシフトノブ13を後方に向けて移動させる。これによって、シフトポジションがRポジション15rからNポジション15n、さらにはDポジション15dに移動する。
【0054】
最後に、運転者は、ブレーキペダル6から足を放してアクセルペダル5を踏み込むことで、車両1を前進(発進)させることができる。
【0055】
逆に、運転者は、車両1を停車させてシフトポジションをPポジション15pに入れる場合には、次のようなシフト操作を行うことになる。
【0056】
先ず、運転者は、アクセルペダル5から足を放してブレーキペダル6を踏む。これにより、車両1が停車した後、運転者はシフトノブ13の後端部分を掌で前方へ押す。これにより、シフトポジションがDポジション15dからNポジション15nに移動する。
【0057】
次に、運転者は、ブレーキペダル6を踏んだ状態を維持したまま、シフトノブ13を把持しながらプッシュスイッチ15を押し込み、当該状態でシフトポジションをNポジション15nからRポジション15pへと移動させる。
【0058】
最後に、運転者は、シフトノブ13の右側側方部分を掌で左側へと押し、シフトポジションをRポジション15rからPポジション15pへと移動させる。この後、運転者は、パーキングブレーキをかける。
【0059】
6.Pポジション15pと走行ポジション15r,15n,15dとの間でのシフトレバー12の姿勢変化
図6は、Pポジション15pと走行ポジション15r,15n,15dとの間でのシフトレバー12の姿勢変化を示す模式図である。
【0060】
図6に示すように、車両用シフト装置11を車両1の後側から見たとき、シフトポジションが走行ポジション15r,15n,15dにある場合にはシフトレバー12が第1姿勢Pos1となり、Pポジション15pにある場合にはシフトレバー12が第2姿勢Pos2となる。第1姿勢Pos1では、シフトレバー12の中心線L1が右側(助手席3側)に傾斜した状態となる。
【0061】
一方、第2姿勢Pos2では、シフトレバー12の中心線L2が、略鉛直方向に直立した状態、または中心線L1よりも直立に近い状態となる。本実施形態に係る車両1では、車両1が水平な場所に停車している状態において、中心線L2は鉛直方向に直立した状態となる。
【0062】
本実施形態に係る車両用シフト装置11では、中心線L1と中心線L2とがなす角度θ1を10deg.以上となるようにしている。具体的には、本実施形態に係る車両用シフト装置11では、角度θ1を10deg.としている。
【0063】
7.シフトノブ13の外観構造
図7は、シフトノブ13の外観構造を示す斜視図であり、
図8は、シフトノブ13を左側より見た側面図である。
図9(a)は、手のサイズが異なる人の親指の大きさを表した表であり、
図9(b)は、押面部14aへの親指の接触領域を示す模式図である。
【0064】
図7に示すように、シフトノブ13の外周面は、曲面の組み合わせにより構成されている。そして、シフトノブ13の左側の側面部13bには、開口部13cが設けられており、側面部13bには、開口部13cから出没可能にプッシュスイッチ14が設けられている。
【0065】
図8に示すように、シフトノブ13の外周面にうち、運転者の掌や人差指、中指、および薬指などが沿う部分は、上面部13aと前側湾曲部13dと後側湾曲部13eと後面部13fと前面部13gとを含み構成されている。
【0066】
上面部13aは、運転者の掌および指の付け根部分が沿う部分であって、比較的緩やかな曲面を以って構成されている。そして、上面部13eは、後方から前方へと行くほど上方から下方に下がるように傾斜した曲面である。
【0067】
前側湾曲部13dは、上面部13aの前端に連続し、当該上面部13aの前端から前方に膨出し、当該膨出した部分に続いて下方かつ後方に向かうように湾曲した曲面である。後側湾曲部13eは、上面部13aの後端に連続し、当該上面部13aの後端から後方かつ下方に向かうように湾曲した曲面である。
【0068】
なお、本実施形態に係る車両シフト装置11のシフトノブ13においては、後側湾曲部13eの曲率半径R13eが前側湾曲部13dの曲率半径R13dよりも大きく設定されている。
【0069】
後面部13fは、後側湾曲部13eの下端P13eから後方かつ下方に延びるように構成された曲面である。前面部13gは、前側湾曲部13dの下端から後方かつ下方に延びるように構成された曲面である。
【0070】
前側湾曲部13dのうち、前端P13dから、前側湾曲部13dに沿って前端P13よりも上方に8mm以上12mm以下の箇所までの範囲は、曲率半径がR13dで外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)となっている。曲率半径R13dは、10mm以上20mm以下の範囲である。
【0071】
ここで、プッシュスイッチ14における運転者が親指で押圧する面である押面部14aの幾何中心をP14とし、当該幾何中心P14からシフトレバー12が延びる方向に対して直交する方向に仮想線L14を引き、仮想線L14と後面部13fの交点をP13f1とする。このとき、後面部13fのうち、交点P13f1から、後面部13fに沿った交点P13f1よりも上方に25mm以上29mm以下の箇所までの範囲は、曲率半径がR13fで外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)となっている。曲率半径R13fは、30mm以上36mm以下の範囲であり、例えば、30.6mmである。
【0072】
また、上記交点P13f1から下方に7.5mm(親指の幅である15mmの半分)の点をP13f2とする。このとき、仮想線L14の延伸方向での距離であって、前側湾曲部13dの前端P13dから上記点P13f2までの距離は、L13である。距離L13は、71mm以上81mm以下の範囲である。
【0073】
ここで、
図9(a)に示すように、親指の大きさは性別や体格により異なる。
図9(a)では、「JF」が日本人の女性、「JM」が日本人の男性、「AM」がアメリカ人の男性を示す。また、これらに続く数字は、体格の違いを示す分布での小さい人からの割合を示す。例えば、「05」との数字は、母数中における体格が小さい5%の人を示す。
【0074】
図9(a)に示すように、親指の大きさは、小柄な人で11.68mmであり、大柄な人で23.35mmである。即ち、アメリカ人全体の95%の人をカバーする場合にも、親指の大きさは23.35mmが最大であることが分かる。
【0075】
そして、押面部14aの幅については、最も大きな親指のサイズの65%程度を確保すれば確実に押圧できることが経験的に分かっている。これより、
図9(b)に示すように、押面部14aを押圧する際の親指の接触領域を直径15mmとしている。よって、上記のように、本実施形態に係る車両用シフト装置11では、交点P13f2の位置を交点P13f1から下方に7.5mm(親指の幅である15mmの半分)離れた点としている。
【0076】
前面部13gのうち、前側湾曲部13dの下端P13d2から、前面部13gに沿って前側湾曲部13dの下端よりも下方に長さL13g(15mm)以上の箇所までの範囲は、曲率半径がR13gで外凸の曲面(外側に膨らんだ曲面)となっている。曲率半径R13gは、30mm以上の範囲であり、例えば、30mmである。
【0077】
さらに、上記下端P13d2において前面部13gに接線L13g2を引く。また、上面部13aと前側湾曲部13dとの交点P13d1において前側湾曲部13dに接線を引く。このときの両接線の交点をP13d3とする。そして、接線L13g2に沿って、交点13d3を始点に30mmの点をP13g3とする。点P13g3で接線L13g2に対して角度θ13gで交差する仮想線L13g3を引く。この場合の点P13g3と、仮想線L13g3の終点P13g4との距離は30mmである。なお、交点P13d3は、運転者がシフトノブ13を把持した際に、中指等の第2関節が位置する箇所であり、点P13d3と点P13g3との間の距離30mmは、運転者の中指等における第1関節と第2関節との間の距離に相当する。
【0078】
ここで、仮想線L14の延伸方向の距離であって、前側湾曲部13dの前端P13dから後側湾曲部13eの下端P13f2までの距離、即ち、シフトノブ13を握った際の指の先端からシフトノブ13に接触する掌の下端までの距離は、L13である。距離L13は、上記のように、71mm以上81mm以下の範囲である。なお、シフトノブ13に接触する掌の下端は、親指がプッシュスイッチ14の押面部14aにおける中心に添えられていることを想定し、その際の接触する親指の下端位置(プッシュスイッチ14の押面部14aの中心位置から7.5mm下がった位置)まで掌が接触するものとしている。
【0079】
上記角度θ13gは、運転者が腕をリラックスさせた状態での中指等の第1関節の角度に相当し、145deg.〜160deg.(例えば、153deg.)である。また、上記の点P13g3と点P13g4との距離は、運転者が上記のように腕をリラックスさせた状態でも、中指等がシフトノブ13の下部13hの前面13hfに当たらない距離であって、運転者の中指等の長さを考慮した十分な距離である。
【0080】
8.前後方向にシフト操作するための要件
図10(a)は、シフトレバー12を後方向に動かす場合の運転者の手を示す模式図であり、
図10(b)は、シフトレバー12を前方向に動かす場合の運転者の手を示す模式図である。
【0081】
図10(a)に示すように、シフトレバー12を後方向に動かそうとする場合には、中指501をシフトノブ13における前側湾曲部13dの前端P13dおよびその周辺部分に引っ掛けて手500を後方向に引くこととになる。このとき、中指501で柔らかく包み込むことができる仮想球B1を想定するとき、中指501の第1関節P1と第2関節P2とを結ぶ線と、第2関節P2と第3関節P3とを結ぶ線とが角度θ2が90deg.以上とすることで、腕の筋に大きな力を入れる必要がない。
【0082】
次に、
図10(b)に示すように、シフトレバー12を前方向に動かそうとする場合には、掌をシフトノブ13の後面部13fに沿わせるとともに、中指501の第3関節P3の辺りを後側湾曲部13eに沿わせて手500を前方向に押すこととなる。このとき、掌および親指502で軽く包み込むことができる仮想球B2を想定するとき、当該仮想球B2の半径R1は、仮想球B2を柔らかく包み込むように握った場合の親指502の母指CM関節P4の位置と中指の第3関節P3の位置とにより規定されることになる。
【0083】
9.シフトノブ13のサイズ規定
図11(a)は、手のサイズが大きい運転者を基準としたシフトノブ13の最小許容寸法を決めるための模式図であり、
図11(b)は、手のサイズが小さい運転者を基準としたシフトノブ13の最大許容寸法を決めるための模式図である。
【0084】
図11(a)に示すように寸法を規定することにより、手のサイズが大きい大柄な運転者がシフトノブ13における前側湾曲部13dの前端P13dに中指を引っ掛けて後方向に引こうとするとき、掌の角度(手首背屈角)を45deg.とし、中指の曲げ角度を90deg.以下とすることで脱力した状態での(筋に大きな力を入れない状態での)操作が可能となる。このときに想定される仮想球B3の直径R3は、71mm以上である。仮に、R3が71mm未満である場合には、手のサイズが大きい運転者にとっては、シフトノブ13を後方向に引こうとするときに筋に所定以上の力を入れる必要があり、運転時における疲労を大きくしてしまうと考えられる。
【0085】
仮想球B3において、後端から反時計回り(上方向き)に45deg.の範囲、換言すれば、仮想球B3の後端から当該仮想球B3に沿った周長27mmの箇所までの範囲(B31)が、30mm以上36mm以下の曲率半径(例えば、30.2mmの曲率半径)で外凸の曲面に規定される。
【0086】
なお、上記において45deg.という角度は、手首背屈角が過大になりすぎず、運転者が手をシフトノブ13に沿わせたときに筋に余計な力を入れなくてもよい角度として規定されている。
【0087】
また、仮想球B3において、前端の若干下方の箇所から時計回り(上方向き)に当該仮想球B3に沿った周長10mmの箇所までの範囲(B32)が、10mm以上20mm以下の曲率半径で外凸の曲面に規定される。
【0088】
また、仮想球B3において、前端の若干下方の箇所から反時計回り(下方向き)に当該仮想球B3に沿った周長61mmの箇所までの範囲(B33)が、30mm以上の曲率半径で外凸の曲面に規定される。
【0089】
図11(b)に示すように寸法を規定することにより、手のサイズが小さい小柄な運転者がシフトノブ13における前側湾曲部13dの前端P13dに中指を引っ掛けて後方向に引こうとするとき、掌の角度(手首背屈角)を60deg.とし、中指の曲げ角度を60deg.以上とすることで脱力した状態でも滑らずに操作することが可能となる。このときに想定される仮想球B4の直径R4は、81mm以下である。仮に、R4が81mmを超える場合には、手のサイズが小さい運転者にとっては、シフトノブ13を後方向に引こうとするときに滑ってしまう可能性があり、滑らないように操作をしようとしてシフトノブ13を強く握る必要が生じて運転時における疲労を大きくしてしまうと考えられる。
【0090】
仮想球B4において、後端から反時計回り(上方向き)に45deg.の範囲、換言すれば、仮想球B4の後端から当該仮想球B4に沿った周長27mmの箇所までの範囲(B41)が、30mm以上36mm以下の曲率半径(例えば、30.2mmの曲率半径)で外凸の曲面に規定される。
【0091】
なお、上記において45deg.という角度は、上記同様の理由で規定されている。
【0092】
また、仮想球B4において、前端の若干下方の箇所から時計回り(上方向き)に当該仮想球B4に沿った周長10mmの箇所までの範囲(B42)が、10mm以上20mm以下の曲率半径で外凸の曲面に規定される。
【0093】
上記の事項を総合的に考慮した場合に、シフトノブ13を後方向に引く際には、中指の曲げ角度を60deg.〜90deg.の範囲とすること、および手首背屈角を45deg.〜60deg.の範囲とすることで、手のサイズが大きい人から小さい人まで幅広い人がシフト操作を行う場合においても、運転者が手でシフトオブ13を柔らかく包み込むように握ってシフト操作を行うことが可能となり、運転中における運転者の腕の疲労を軽減することができる。そのために、本実施形態では、
図8を用いて説明した各寸法L13、R13d、R13e、R13f、R13gを規定している。
【0094】
10.中指501の曲げ角度θ501と筋負担
図12(a)は、手500を側方側から見た模式図であり、
図12(b)は、前腕503の筋513,514を表す断面図である。
図13は、中指501を曲げていったときの筋負担の変化を示すグラフである。
【0095】
先ず、
図12(a)に示すように、前腕503の筋負担を計測するにあたり、手500を水平な台の上に載置して手首部分と中指501等の先端部501aとを台に当接させた状態を仮定する。そして、手首を台に対して相対的に動かない状態とした上で中指501等の先端部501aを矢印のように前後方向に動かし、中指501の角度θ501ごとの筋負担の計測を行った。
【0096】
図13に示すように、角度θ501が90deg.以下の範囲では、筋負担は12〜16mVの範囲で比較的安定した状態で推移している。これに対して、角度θ501が90deg.を超えると筋負担が大きく上昇している。具体的には、角度θ501が90deg.で16mV程度であった筋負担が、角度θ501が98deg.になると筋負担が32mV程度まで急激に上昇している。そして、角度θ501が98deg.以上の範囲でも、多少の変動はあるものの、筋負担は23mV程度以上の高い値を示した。
【0097】
ここで、
図12(b)に示すように、人差指、中指501、および薬指(第2指、第3指、および第4指)を曲げる場合には、前腕503における尺骨511や橈骨512の周囲にある浅指屈筋513および深指屈筋514が働く。このため、
図13を用いて説明したように、角度θ501が90deg.よりも大きくなるまで中指501等を曲げると、筋負担が増大し、腕(特に前腕503)の筋の疲労が大きくなることが分かる。
【0098】
なお、角度θ501の下限については、60deg.としている。これは、上述のように、手500のサイズが小さい小柄な運転者がシフトノブ13における前側湾曲部13dの前端P13dに中指を引っ掛けて後方向に引こうとする場合にも、脱力してリラックスした状態で滑らずにシフト操作をすることを可能とする下限である。
【0099】
[変形例]
上記実施形態では、
図11(a)を用いて説明したように、範囲B33を、前端の若干下方の箇所から反時計回り(下方向き)に当該仮想球B3に沿った周長61mmの箇所までの範囲としたが、設計上で61mmを確保することができない場合には、次のように当該範囲を規定することができる。
【0100】
図8を用いて説明したように、前側湾曲部13dの下端P13d2において前面部13gに接線L13g2を引く。また、上面部13aと前側湾曲部13dとの交点P13d1において前側湾曲部13dに接線を引く。このときの両接線の交点をP13d3とする。そして、接線L13g2に沿って、交点13d3を始点に30mmの点をP13g3とする。点P13g3で接線L13g2に対して角度θ13gで交差する仮想線L13g3を引く。この場合の点P13g3と、仮想線L13g3の終点P13g4との距離を30mmに設定する。交点P13d3は、運転者がシフトノブ13を把持した際に、中指等の第2関節が位置する箇所であり、点P13d3と点P13g3との間の距離30mmは、運転者の中指等における第1関節と第2関節との間の距離に相当する。
【0101】
上記角度θ13gは、運転者が腕をリラックスさせた状態での中指等の第1関節の角度に相当し、145deg.〜160deg.(例えば、153deg.)である。また、上記の点P13g3と点P13g4との距離は、運転者が上記のように腕をリラックスさせた状態でも、中指等がシフトノブ13の下部13hの前面13hfに当たらない距離であって、運転者の中指等の長さを考慮した十分な距離である。
【0102】
以上のように、範囲B33を61mm以上確保できない場合の各数値を規定することができる。
【0103】
上記実施形態では、左ハンドルの車両1を一例として採用したが、本発明は、右ハンドル車を採用することもできる。その場合には、上記実施形態とは左右の関係を反対にすることで、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0104】
上記実施形態では、ステーショナリ式の車両用シフト装置11を採用することとしたが、本発明は、モメンタリ式の車両用シフト装置を採用することもできる。この場合にもシフト操作を行う手との関係でシフトノブの外観形状を上記同様に規定すれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
上記実施形態では、走行ポジションとしてRポジション15r、Nポジション15n、およびDポジション15dの3つのポジションを備える構成としたが、本発明は、Rポジション、Nポジション、およびDポジションを含む4つ以上の走行ポジションを備える構成とすることもできる。例えば、SポジションやBポジションなどを備えることとしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、シフトレバー12の長さが比較的短いショートストローク式の車両用シフト装置11を採用することとしたが、本発明は、シフトレバーの長さが比較的長いロングストローク式の車両用シフト装置を採用することもできる。
【0107】
上記実施形態では、センターコンソール9におけるシフト装置ベース15が填め込まれた部分の底部9cの一部とフロア1bとの間に空間SPが空いた構造としたが、本発明は、必ずしも当該部分に空間が空いている必要はない。
【0108】
上記実施形態では、シフトノブ13の左側部分(運転者側の側面部分)にプッシュスイッチ15を設けることとしたが、本発明は、プッシュスイッチの配置に関してこれに限定を受けるものではない。例えば、シフトノブの前面部や上面部前方部分などにプッシュスイッチを設けることとしてもよい。
【0109】
上記実施形態では、車両用シフト装置11のシフト装置ベース15にインジケータ部15bを設けることとしたが、本発明は、インジケータ部の配置に関してこれに限定を受けるものではない。例えば、メータークラスターパネルやインストルメントパネルなどに設けることとしてもよい。