【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、表面処理された重質炭酸カルシウムとを含有する。
【0008】
[分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体]
湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(以下、単に「ポリオキシアルキレン系重合体」ということがある)(A)を含有している。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
−(R
1−O)
n− (1)
(式中、R
1は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)
【0009】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0010】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0011】
加水分解性シリル基としては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基のように、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。
【0012】
加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基、ジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基、トリクロロシリル基などのハロゲンが結合したハロゲン化シリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基が好ましく、ジメトキシシリル基が好ましい。
【0013】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ウレタン結合を含有していないことが好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)がウレタン結合を有していないことによって、湿気硬化性組成物は、冬季においても粘度が上昇することが抑制され、優れた塗工性を有する。
【0014】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、湿気硬化性組成物が冬季においても粘度が上昇することが抑制されて優れた塗工性を有するので、分子末端に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、分子両末端に加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。
【0015】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、湿気硬化性組成物が冬季においても粘度が上昇することが抑制され、更に優れた塗工性を有するので、分子末端にウレタン結合を介することなく加水分解性シリル基を有していることが好ましく、分子両末端にウレタン結合を介することなく加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。
【0016】
ポリオキシアルキレン鎖の末端にウレタン結合を介することなく加水分解性シリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体(A)は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0017】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、
分子中に加水分解性シリル基を有し、分子量分布が1.4未満で且つ数平均分子量が8000以上19000未満であるポリオキシアルキレン系重合体(A1)と、
分子中に加水分解性シリル基を有し、数平均分子量が19000以上50000以下であるポリオキシアルキレン系重合体(A2)との混合物である。
【0018】
ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の数平均分子量は、8000以上であり、9000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、11000以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の数平均分子量は、19000未満であり、18700以下が好ましく、18500以下がより好ましく、16000以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の数平均分子量が8000以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の弾性が向上すると共に、有機成分と無機成分との分離が抑制されて貯蔵安定性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の数平均分子量が19000未満であると、湿気硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0019】
ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の数平均分子量は、19000以上であり、19500以上が好ましく、20000以上がより好ましく、20500以上がより好ましく、21000以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の数平均分子量は、50000以下であり、40000以下が好ましく、35000以下がより好ましく、30000以下がより好ましく、25000以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の数平均分子量が19000以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上すると共に、有機成分と無機成分との分離が抑制されて貯蔵安定性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の数平均分子量が50000以下であると、湿気硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0020】
このように、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、数平均分子量の異なる二種類のポリオキシアルキレン系重合体(A1)及び(A2)の混合物であるから、湿気硬化性組成物の硬化物に、架橋密度の疎密を適度に形成させることによって、湿気硬化性組成物の硬化物に優れた弾性及び強靱性を付与している。そして、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)によって湿気硬化性組成物の粘度低下を図り、湿気硬化性組成物の塗工性を向上させつつ、ポリオキシアルキレン系重合体(A2)によって、有機成分と無機成分との分離を抑制して湿気硬化性組成物の貯蔵安定性を優れたものとしている。
【0021】
ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の分子量分布は1.4未満であり、1.3未満が好ましく、1.2未満がより好ましく、1.15未満がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の分子量分布が1.4未満であると、湿気硬化性組成物の粘度が低下し、使用環境にかかわらず優れた塗工性を有すると共に、湿気硬化性組成物の硬化物が優れた強靱性を有する。
【0022】
ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の分子量分布は1.4未満が好ましく、1.3未満がより好ましく、1.2未満がより好ましく、1.15未満がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の分子量分布が1.4未満であると、湿気硬化性組成物の粘度が低下し、使用環境にかかわらず優れた塗工性を有すると共に、湿気硬化性組成物の硬化物が優れた強靱性を有する。
【0023】
なお、本発明において、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体6〜7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0024】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうして、BHTを含むo−DCB溶液にポリオキシアルキレン系重合体を溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0025】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)中において、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)中において、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量は、98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量が50質量%以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の塗工性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量が98質量%以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上する。
【0027】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)中において、ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)中において、ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量が2質量%以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性及び弾性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量が50質量%以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の塗工性が向上する。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量とポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量の比[ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の質量/ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の質量]は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量とポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量の比[ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の質量/ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の質量]は、50以下が好ましく、35以下がより好ましく、25以下がより好ましく、20以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量とポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量の比[ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の質量/ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の質量]が1以上であると、湿気硬化性組成物の塗工性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の含有量とポリオキシアルキレン系重合体(A2)の含有量の比[ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の質量/ポリオキシアルキレン系重合体(A2)の質量]が50以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の弾性及び強靱性が向上する。
【0029】
[炭酸カルシウム]
湿気硬化性組成物は、表面処理された重質炭酸カルシウムを含有している。湿気硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)としてポリオキシアルキレン系重合体(A1)及び(A2)の混合物を含有していると共に、表面処理された重質炭酸カルシウムを含有している。従って、湿気硬化性組成物は、貯蔵時において、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と重質炭酸カルシウムとの分離が抑制されて優れた貯蔵安定性を有していると共に、硬化物は、優れた弾性及び強靱性を有している。
【0030】
重質炭酸カルシウムの表面処理は、特に限定されないが、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩によって処理されていることが好ましく、脂肪酸によって処理されていることがより好ましい。表面処理された重質炭酸カルシウムを含有していることによって、湿気硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0031】
脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0032】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0033】
脂肪酸金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、ラウリン酸のナトリウム塩、ミリスチン酸のナトリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩又はオレイン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0034】
表面処理された重質炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がより好ましい。表面処理された重質炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.8μm以上がより好ましい。一次粒子の平均粒子径が10μm以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上する。一次粒子の平均粒子径が0.05μm以上であると、湿気硬化性組成物の粘度が高くなるのを抑制して塗工性を向上させることができる。
【0035】
なお、表面処理された重質炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、表面処理される前の重質炭酸カルシウム1g当たりの比表面積値を用いて下記式に基づいて算出された値をいう。表面処理される前の重質炭酸カルシウム1g当たりの比表面積値は、例えば、島津製作所社から商品名「SS−100型」にて市販されている粉体比表面積測定装置を用いることができる。
表面処理された重質炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径(μm)
=6×10000/(比重×比表面積)
【0036】
湿気硬化性組成物において、表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましく、130質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物において、表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して400質量部以下が好ましく、350質量部以下がより好ましく、300質量部以下がより好ましく、250質量部以下がより好ましい。表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量が50質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上する。表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量が400質量部以下であると、湿気硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0037】
湿気硬化性組成物は、表面処理された沈降性炭酸カルシウムを含有していることが好ましい。湿気硬化性組成物が沈降性炭酸カルシウムを含有していると、湿気硬化性組成物の粘度を抑制して塗工性を向上させつつ、貯蔵時における有機成分と無機成分との分離を抑制して湿気硬化性組成物に優れた貯蔵安定性を付与することができる。更に、湿気硬化性組成物の硬化物に優れた弾性及び強靱性を付与することができる。
【0038】
沈降性炭酸カルシウムの表面処理は、特に限定されないが、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩によって処理されていることが好ましく、脂肪酸によって処理されていることがより好ましい。表面処理された重質炭酸カルシウムを含有していることによって、湿気硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。なお、脂肪酸、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩は、重質炭酸カルシウムを表面処理する場合と同様であるので省略する。
【0039】
表面処理された沈降性炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がより好ましい。表面処理された沈降性炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、0.01μm以上がより好ましく、0.03μm以上がより好ましい。平均粒子径が5μm以下であると、湿気硬化性組成物は高チクソ性を有し、優れた塗工性を有する。平均粒子径が0.01μm以上であると、湿気硬化性組成物の粘度が高くなるのを抑制して塗工性を向上させることができる。なお、沈降性炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、表面処理された重質炭酸カルシウムの測定方法と同様であるから説明を省略する。
【0040】
湿気硬化性組成物中において、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中において、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましい。沈降性炭酸カルシウムの含有量が5質量部以上であると、湿気硬化性組成物に優れたチクソトロピー性を付与することができる。沈降性炭酸カルシウムの含有量が200質量部以下であると、湿気硬化性組成物の粘度が高くなるのを抑制して塗工性を向上させることができる。
【0041】
湿気硬化性組成物において、表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量と、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量の比(表面処理された重質炭酸カルシウムの質量/表面処理された沈降性炭酸カルシウムの質量)は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.8以上がより好ましく、2以上がより好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましい。湿気硬化性組成物において、表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量と、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量の比(表面処理された重質炭酸カルシウムの質量/表面処理された沈降性炭酸カルシウムの質量)は、30以下がより好ましく、28以下がより好ましく、25以下がより好ましく、20以下がより好ましく、15以下がより好ましい。表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量と、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量の比が1.5以上であると、湿気硬化性組成物にチクソトロピー性を付与することができ、塗工性が向上する。表面処理された重質炭酸カルシウムの含有量と、表面処理された沈降性炭酸カルシウムの含有量の比が30以下であると、湿気硬化性組成物の粘度を低く抑えることができ、湿気硬化性組成物の塗工性が向上し、更に、湿気硬化性組成物の容器からの取り出しが容易に行えるので好ましい。
【0042】
[シランカップリング剤]
湿気硬化性組成物は、シランカップリング剤を更に含有していてもよい。湿気硬化性組成物がシランカップリング剤を含有していることによって、湿気硬化性組成物は、低粘度であっても、優れた硬化性及び接着強度を有する。
【0043】
シランカップリング剤は、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上するので、アミノ基含有シランカップリング剤、又は、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有していることが好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤を含有していることがより好ましい。
【0044】
シランカップリング剤は、アミノ基含有シランカップリング剤、及び、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有していることがより好ましい。シランカップリング剤が、アミノ基含有シランカップリング剤、及び、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有していると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。
【0045】
アミノ基含有シランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含む化合物を意味する。アミノ基含有シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられ,N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0046】
エポキシ基含有シランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、エポキシ基を含有する官能基とを含む化合物を意味する。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0047】
湿気硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、分子中にポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、分子中にポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下が特に好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。シランカップリング剤の含有量が10質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物が脆くなることを防止し、硬化物に優れた接着強度を付与することができると共に、湿気硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0048】
湿気硬化性組成物中にアミノ基含有シランカップリング剤が含有されている場合、湿気硬化性組成物中におけるアミノ基含有シランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中にアミノ基含有シランカップリング剤が含有されている場合、湿気硬化性組成物中におけるアミノ基含有シランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、6質量部以下が特に好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤の含有量が0.5質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。アミノ基含有シランカップリング剤の含有量が20質量部以下であると、湿気硬化性組成物はその硬化性に優れている。
【0049】
湿気硬化性組成物中にエポキシ基含有シランカップリング剤が含有されている場合、湿気硬化性組成物中におけるエポキシ基含有シランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以上が好ましく、0.4質量部以上がより好ましく、0.45質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中にエポキシ基含有シランカップリング剤が含有されている場合、湿気硬化性組成物中におけるエポキシ基含有シランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量が0.3質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量が20質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。
【0050】
[可塑剤]
湿気硬化性組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などが挙げられる。なお、可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0051】
湿気硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。可塑剤の含有量が20質量部以上であると、湿気硬化性組成物の塗工性が向上する。可塑剤の含有量が100質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上する。
【0052】
[シラノール縮合触媒]
湿気硬化性組成物はシラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)が含有する加水分解性シリル基が加水分解することなどにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。
【0053】
シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5−エンなどのシクロアミジン系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエートなどが挙げられる。また、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。なお、シラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。シラノール縮合触媒としては、湿気硬化性組成物の硬化性を向上させることができるので、有機錫系化合物が好ましい。
【0054】
湿気硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化性が向上する。シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。
【0055】
[脱水剤]
湿気硬化性組成物は、脱水剤を含有していてもよい。脱水剤によれば、湿気硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって湿気硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0056】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。脱水剤としては、ニビルトリメトキシシランが好ましい。なお、脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
湿気硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.1質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。脱水剤の含有量が上記範囲であると、湿気硬化性組成物が貯蔵中に不測に硬化反応を生じることを低減することができる。
【0058】
[他の添加剤]
湿気硬化性組成物は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、顔料、染料、沈降防止剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、酸化防止剤が好ましく挙げられる。湿気硬化性組成物は、溶剤を含有していないことが好ましい。
【0059】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。湿気硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0060】
湿気硬化性組成物の23℃における粘度は、1.5万mPa・s以上が好ましく、2万mPa・s以上がより好ましく、3万mPa・s以上がより好ましい。湿気硬化性組成物の23℃における粘度は、20万mPa・s以下が好ましく、15万mPa・s以下がより好ましく、13万mPa・s以下がより好ましい。なお、湿気硬化性組成物の23℃における粘度は、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された値をいう。
【0061】
湿気硬化性組成物について、23℃における10rpm時の粘度と、23℃における1rpm時の粘度との比率(1rpm時の粘度/10rpm時の粘度)は、3以上が好ましく、4以上が好ましく、4.1以上がより好ましく、4.5以上がより好ましい。湿気硬化性組成物について、23℃における10rpm時の粘度と、23℃における1rpm時の粘度との比率(1rpm時の粘度/10rpm時の粘度)は、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8.5以下がより好ましく、8以下がより好ましい。23℃における10rpm時の粘度と、23℃における1rpm時の粘度との比率が上記範囲内であると、湿気硬化性組成物は、低い粘度でありながら高いチクソ性を有している。従って、湿気硬化性組成物はより優れた塗工性を有する。
【0062】
湿気硬化性組成物について、23℃における10rpm及び1rpm時の粘度は、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpm又は1rpmの条件にて測定された値をいう。
【0063】
湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び表面処理された重質炭酸カルシウム、並びに必要に応じて他の添加剤を混合することによって製造することができる。なお、混合は、減圧下で行うことが好ましい。
【0064】
湿気硬化性組成物は接着剤として、例えば、床構造の構築に好適に用いられる。床構造は、例えば、床基盤上に敷設された床下地材上に、湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物層を介して床仕上げ材が接着一体化されることによって構築される。床構造は、床基盤と、上記床基盤上に敷設されている床下地材と、上記床下地材上に形成され且つ上記床下地材と接着一体化している、湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物層と、上記硬化物層上に敷設され且つ上記硬化物層と接着一体化している床仕上げ材とを含んでいる。
【0065】
床仕上げ材を構成する部材としては、例えば、合板及びミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)などの木質系材料、タイル、塩化ビニルシート、及び石材などが挙げられ、中でも、塩化ビニルシートのように薄く、柔らかい素材の使用が好ましい。
【0066】
床下地材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。