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特開2021-102778低構造カーボンブラックコアを有する被覆凝集体を有する複合粒子、高い抵抗率と光学密度とを有するコーティングとインク、これらを用いて作製された装置、及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-102778(P2021-102778A)
(43)【公開日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】低構造カーボンブラックコアを有する被覆凝集体を有する複合粒子、高い抵抗率と光学密度とを有するコーティングとインク、これらを用いて作製された装置、及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/56 20060101AFI20210618BHJP
【FI】
   C09C1/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2021-57536(P2021-57536)
(22)【出願日】2021年3月30日
(62)【分割の表示】特願2018-568333(P2018-568333)の分割
【原出願日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】62/357,734
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/452,084
(32)【優先日】2017年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】アンドリー コルチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディー.モーザー
(72)【発明者】
【氏名】ダニー ピーア
(72)【発明者】
【氏名】チエン ニー
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ ビラルパンド−パエス
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037CA09
4J037DD07
4J037EE03
4J037FF02
4J037FF11
4J037FF13
(57)【要約】
【課題】
低構造カーボンブラックコアと金属/メタロイド酸化物マントルとを有する被覆凝集体の超凝集体である複合粒子を提供する。
【解決手段】
充填剤として複合粒子を有する充填剤−ポリマー組成物を含むコーティング、例えば、高抵抗率、良好な光学密度特性、良好な熱安定性、高い誘電率、及び良好な加工性の組合せを有する充填剤−ポリマー組成物を含む硬化性コーティング及び硬化コーティング又はこれらから形成されたフィルムが、LCD及び他のディスプレイ装置中のブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、遮光要素におけるこれらの用途と共に記載される。複合粒子を含有するインクが記載される。これらの組成物、成分、及び/又は要素を有する装置、ならびにこれらの様々な材料及び形成物を調製及び作製する方法が記載される。
【選択図】 図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンブラック凝集体を含むカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子であって、各カーボンブラック凝集体は、少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に被覆されて被覆凝集体を提供し、前記被覆凝集体は互いに融着して、露出した外表面積を有する個々の複合粒子を形成し、ここで前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物は、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である、上記複合粒子。
【請求項2】
前記カーボンブラック凝集体が、前記カーボンブラック凝集体の試料の電子顕微鏡画像に基づいて少なくとも0.8の円形度を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記被覆凝集体が、金属/メタロイド酸化物マントルを有し、前記被覆凝集体の灰化試料の電子顕微鏡画像に基づいて少なくとも0.8の円形度を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記カーボンブラック凝集体が、前記複合粒子のフッ化水素酸処理により1質量%未満の残留金属酸化物又はメタロイド酸化物コーティングを残した後に測定して、30〜50cc/100gのOANを有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項5】
60〜130cc/100g複合粒子のOANを有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項6】
2〜5のBET(m/g)/ヨウ素価(mg/g)の比率を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記被覆凝集体が、炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを含む、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項8】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の質量に基づいて10〜30質量%である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項9】
前記カーボンブラック凝集体が、前記カーボンブラック凝集体の質量に基づいて、前記コーティングの金属酸化物又はメタロイド酸化物の0.1質量%未満を含む、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項10】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の露出した外表面積の50〜99表面積%である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項11】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の露出した外表面積の60〜80表面積%である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項12】
前記複合粒子の前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの全含有量の50〜99質量%がシェル物質である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項13】
50〜90m/gのBETを有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項14】
1g/ccの粉末密度で20Ω・cmより大きい体積抵抗率を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項15】
1g/ccの粉末密度で10Ω・cmまたはそれ以上の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項16】
前記被覆凝集体が1〜100nmの平均サイズを有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項17】
5〜500nmの平均サイズを有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項18】
75〜100の着色強度を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項19】
空気中で5℃/分の温度勾配で110℃から450℃の温度の加熱に付されたとき、1質量%未満の加熱減量を有する、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項20】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせがメタロイド酸化物であり、前記メタロイドがケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項21】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせがシリカである、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項22】
前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが金属酸化物であり、前記金属がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項23】
カーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を作製する方法であって、
予備加熱した空気流と燃料とを反応させることにより燃焼ガスの流れを形成する工程と、
第1の原料を、燃焼ガス流の周りに画定される第1のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入して反応流を形成し、前記反応流中の第1の原料の熱分解を開始させる工程であって、前記第1の原料はカーボンブラック生成原料を含む工程と、
補助炭化水素を、燃焼ガス流の周りに画定される第2のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入する工程であって、前記第1及び第2のリングパターンは同じ位置又は異なる位置に存在してもよい工程と、
燃焼ガス流又は反応流又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つに、少なくとも1つのIA族元素又はIIA族元素又はこれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの物質を追加的に導入する工程と、
前記反応流中でカーボンブラック凝集体を形成させ、こうして反応流中に懸濁されたカーボンブラック凝集体を形成する工程であって、前記カーボンブラック凝集体は外表面を有する工程と、
金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む第2の原料を、前記カーボンブラック凝集体が懸濁された反応流中に導入する工程であって、前記反応流は、前記少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せを分解するのに充分な温度を有し、前記分解された少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せは、前記カーボンブラック凝集体の外表面の少なくとも一部の周りで、金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せを含むシェルを形成して、少なくとも部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を形成する工程と、
前記少なくとも1つの部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を互いに融着させて複合粒子を形成した後、熱分解を急冷停止させる工程であって、前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せは、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である上記工程と、を含む上記方法。
【請求項24】
燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了する第1の注入位置から下流に充分な距離である前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、請求項23に記載の方法であって、前記反応流は、第2の注入位置の第2の平均反応温度より高い第1の注入位置の第1の平均反応温度を有し、前記第2の平均反応温度は、前記少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組み合わせの分解に充分である上記方法。
【請求項25】
燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了する第1の注入位置から下流に150cm又はそれ以上である前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第1の注入位置で燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了した後の少なくとも30ミリ秒後に起きる、前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、請求項23に記載の方法であって、この滞留時間は、第1の注入位置後の流れの総ガス体積と第1の注入位置と第2の注入位置の間の反応器の体積とにより画定される上記方法。
【請求項27】
前記第2の原料は少なくとも一種のケイ素含有化合物から本質的になる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の原料は1種のケイ素含有化合物又は複数のケイ素含有化合物からなる、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記被覆凝集体をフッ化水素酸処理して1質量%未満の残留金属酸化物又はメタロイド酸化物コーティングを残した後に測定すると、反応流中に懸濁された前記カーボンブラック凝集体は30〜50cc / 100gのOANを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体は炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の充填剤とを含むポリマー組成物を含むコーティングであって、前記少なくとも1種の充填剤は、請求項1〜22のいずれか1項に記載のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含む上記コーティング。
【請求項32】
前記コーティングは約1ミクロンの厚さで測定すると1又はそれ以上の光学密度を有する、請求項31に記載のコーティング。
【請求項33】
前記コーティングは、10〜1016オーム/平方の表面抵抗率を有する、請求項31に記載のコーティング。
【請求項34】
前記充填剤は、空気中で5℃/分の温度勾配で、110℃から450℃の温度に付されたとき、1質量%未満の減量を有する、請求項31に記載のコーティング。
【請求項35】
金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つが、前記複合粒子の質量に基づいて10〜30質量%である、請求項31に記載のコーティング。
【請求項36】
前記被覆凝集体が炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを含む、請求項31に記載のコーティング。
【請求項37】
前記金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つが、前記複合粒子の露出した外表面積の50〜99表面積%である、請求項31に記載のコーティング。
【請求項38】
前記金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つが、前記複合粒子の露出した外表面積の60〜80表面積%である、請求項31に記載のコーティング。
【請求項39】
前記複合粒子が60〜130cc/100g複合粒子のOANを有する、請求項31に記載のコーティング。
【請求項40】
前記コーティングの総質量に基づいて1質量%の充填剤装填〜65質量%の充填剤装填を含む、請求項31に記載のコーティング。
【請求項41】
前記充填剤が、単相カーボンブラック、有機ブラック、チタンブラックをさらに含む、請求項31に記載コーティング。
【請求項42】
前記充填剤が、ペリレンブラック、アニリンブラック、又はチタンブラックをさらに含む、請求項31に記載コーティング。
【請求項43】
前記少なくとも1種のポリマーが硬化性ポリマーを含む、請求項31に記載のコーティング。
【請求項44】
硬化された請求項31〜43のいずれか1項に記載のコーティングを含むブラックマトリックス。
【請求項45】
硬化された請求項31〜43のいずれか1項に記載のコーティングを含むブラックカラムスペーサー。
【請求項46】
硬化された請求項31〜43のいずれか1項に記載のコーティングを含む、LCD中の遮光要素。
【請求項47】
硬化された請求項31〜43のいずれか1項に記載のコーティングを含む液晶ディスプレイ。
【請求項48】
少なくとも1種の水性又は非水性担体、少なくとも1種のポリマー又は樹脂、及び請求項1〜22のいずれか1項に記載のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含むインク。
【請求項49】
硬化コーティングの作製方法であって:
(i)少なくとも1種のポリマーを少なくとも1種の液体充填剤及び場合によりビヒクルと組合せて、硬化性充填剤−ポリマー組成物を提供する工程であって、前記充填剤が請求項1〜22のいずれか1項に記載のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含む工程と、
(ii)前記硬化性充填剤−ポリマー組成物を基板上に塗布して硬化性コーティングを形成する工程と、
(iii)コーティングを像様に硬化させて硬化コーティングを形成する工程と、
(iv)硬化したコーティングを現像し乾燥する工程とを、含む上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年7月1日に出願されたUS62/357,734及び2017年1月30日に出願されたUS62/452,084からの優先権を主張し、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は複合粒子に関する。本発明はさらに、高い抵抗率、良好な光学密度特性、良好な熱安定性、低い誘電率、及び/又は良好な加工性の組合せを有する、充填剤として複合粒子を有する充填剤−ポリマー組成物を含むコーティング、及び充填剤−ポリマー組成物を含む硬化性コーティング及び硬化コーティング又はフィルムに関する。本発明はさらに、LCD装置及び他のディスプレイ用のブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、遮光要素、及び上記コーティングを組み込んだ他の成分に関する。本発明はさらに、複合粒子を有するインクに関する。本発明はさらに、これらの様々な材料及び形成物を調製及び作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、例えばインクジェットインク、インクジェット可能な及びフォトリソグラフィ用カラーフィルター、ならびにトナーを含む多種多様な媒体中の顔料として使用されている。これらのブラックの構造及び表面積は、マトリックス中のカーボンブラックの特定の装填レベルを可能にし、媒体中の導電性と電荷の蓄積を減らすように選択される。装填レベルが上がるとコーティング材料の不透明度の尺度である光学密度(OD)が上がるが、媒体を作製するために使用されるコーティング組成物の粘度も上がる。これは、カーボンブラックにより付加的に得られる性能の向上に対する制限として機能する可能性がある。カーボンブラックの構造はまた、加工性、性能、又はその両方に影響を及ぼす可能性がある。高構造のカーボンブラック凝集体は一般に分散し易いが、これらは分散液又はインク中で顕著な粘度蓄積を引き起こす可能性がある。高構造はまた導電性を高める可能性もある。
【0003】
低構造及び中〜高表面積のカーボンブラックは、コーティング、ブラックマトリックス、及び他の用途に使用するために開示されており、特に補助炭化水素の添加を含む特定の条件下で運転されたカーボンブラック炉の原料に、アルカリ及び/又はアルカリ土類塩の添加の組み合わせによって得ることができる。低構造及び中〜高表面積を有するこれらのカーボンブラック及びこれらを作製する方法は、米国特許第8,574,537B2号、第8,501,148B2号、及び第9,217,944B2号明細書に開示されており、これらの参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
カーボンブラックは、抵抗性ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は液晶ディスプレイ(LCD)などの電子ディスプレイにおける他の遮光要素を作製するために使用されるコーティング可能なポリマー組成物中の充填剤として使用されている。そのような用途のためには、高い電気抵抗率と良好な光学特性の両方を有する充填剤−ポリマー組成物が望ましい。電気体積(又は表面)抵抗率の所望の範囲は、充填剤入りポリマー組成物の特定の用途に依存し、例えば、10〜1018オーム・cmの範囲であり得る。いくつかの市販のポリマーの一般的な体積抵抗率値は1012〜1018オーム・cmの範囲にある。しかしながら一般的なシステムは、例えば所望の遮光能力(例えば、1ミクロンの厚さで2を超える光学密度(OD))及び高い抵抗率に関して、全体特性の所望のバランスを提供することができない場合がある。一般的に充填剤−ポリマー組成物中の光学密度は、増加するカーボンブラックの装填レベルの正の関数として増加し得るが、ポリマー組成物中のカーボンブラック粒子の濃度が、組成物中に連続した導電性経路が形成される臨界値に達すると、複合物の抵抗率の急激な変化(低下)が起き、これは「パーコレーション」と呼ばれる。これは、ポリマー組成物における光学密度調整の範囲を制限し得るが、調整はカーボンブラック充填剤の装填レベルを単に変えることによって行うことができる。
【0005】
粒子装填、粒子の形態、及びシリカ表面被覆の程度を調整することにより、シリカ−カーボンブラック2層粒子を含むコーティング及び組成物の電気特性の制御を改善するために、2相のシリカ−カーボンブラック充填剤を含有する充填剤−ポリマー組成物、及びその使用方法、例えば米国特許第9,267,048B2号明細書(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のような方法が開発されている。
【0006】
充填剤−ポリマー組成物に使用することができる炭素相とシリカ相とを有する様々な種類の2相充填剤を作製する方法及び制御方法は、米国特許第6,709,506号、6,686,409号、6,364,944号、6,057,387号、及び5,904,762号明細書に記載されており、これらのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの組み込まれた’506特許、’409特許、’944特許、’387特許、及び’762特許は、多段反応器の第1段に原料を導入し、第1段階の下流のポイントで反応器に第2の原料を導入することを含む2層充填剤を作製する方法であって、第1及び第2の原料の少なくとも一方はカーボンブラック生成原料を含み、原料の少なくとも一方は、カーボンブラック反応器条件で揮発性/分解可能なケイ素含有及び/又は金属含有化合物を含む上記方法を開示している。組み込まれた’506、’409、’944、’387、及び’762特許は、短い距離にわたって隔てられた第1及び第2原料入口力ポイントとして配置された原料注入ゾーン上に異なる原料入口ポイントを有する多相凝集体の作製を開示している。
【0007】
これらの進歩にもかかわらず、LCD成分及び他のディスプレイに使用するためのさらに高性能でより用途の広い充填剤に対する継続的な需要がある。高い電気抵抗用途(例えば、ブラックマトリックス、非導電性ブラックインク及びコーティングなど)のために、2相粒子はより高度のシリカ表面被覆率を有することが好ましい。これを達成するためには、2相粒子の組成物中にかなりの濃度のシリカが必要とされ得る。そのような高濃度のシリカは、所望の光学密度を達成するのに必要な充填剤装填を増加させる;しかし、これらの高構造充填剤の高装填はまた、粘度を上昇させ、コーティング組成物の加工性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、媒体の、例えばLCD及び他のディスプレイの成分(例えばブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、ベゼル、遮光要素、又はポリマー充填組成物で作製された他の成分)、ならびにインク及び分散液、又は他の組成物及び材料における、抵抗率、光学密度、熱安定性、誘電率、加工性、又は他の特性の改善された組合せ及びバランスを提供することができる、低構造ハイブリッド粒子などの新しい充填剤及び顔料粒子材料に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、コーティング、フィルム、インク、及び/又は媒体における電気的、光学的、熱的、及び/又は加工特性の改良された組み合わせを提供するために使用することができるハイブリッド複合粒子を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる特徴は、ハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有し、高抵抗率、良好な光学密度特性、低誘電率、高粒子装填での加工可能粘度、及び/又は良好な熱安定性の組み合わせを有する充填剤−ポリマー組成物を含む、コーティングを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、ハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有し、高抵抗率、良好な光学密度特性、低誘電率、高粒子装填での加工可能粘度、及び/又は良好な熱安定性の組み合わせを有する充填剤−ポリマー組成物を含む、硬化コーティング又はフィルムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる特徴は、ハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有し、高抵抗率、良好な光学密度特性、低誘電率、高粒子装填での加工可能粘度、及び/又は良好な熱安定性の組み合わせを有する充填剤−ポリマー組成物を含む、ブラックマトリックスを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる特徴は、ハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有し、高抵抗率、良好な光学密度特性、低誘電率、高粒子装填での加工可能粘度、及び/又は良好な熱安定性の組み合わせを有する充填剤−ポリマー組成物を含む、ブラックカラムスペーサーを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる特徴は、ハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有し、高抵抗率、良好な光学密度特性、低誘電率、高粒子装填での加工可能粘度、及び/又は良好な熱安定性の組み合わせを有する充填剤−ポリマー組成物を含む、LCD又は他のディスプレイにおける遮光要素を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる特徴は、コーティング、フィルム、インク、及び/又は媒体に使用することができるハイブリッド複合粒子の作製方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる特徴は、調製又は後処理のために放射線及び/又は高温に曝されたとき、充填剤−ポリマー組成物において良好な熱安定性、制御された電気抵抗率、光学密度、及び/又は誘電率を維持することができるハイブリッド複合粒子を含む充填剤を有する充填剤−ポリマー組成物を含む、LCD又は他のディスプレイにおける硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び/又は他の遮光要素の作製方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の特徴は、ディスプレイの硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、ベゼル、及び/又は他の遮光要素の1つ又は2つ以上を取り込んだLCDなどの装置を提供することである。
【0018】
本発明の追加の特徴は、ハイブリッド複合粒子、水性又は非水性担体、及びポリマー又は樹脂を有するインク及び分散液を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる特徴及び利点は、一部は以下の説明で記載されており、一部はその説明から明らかであるか、又は本発明の実施によって理解することができる。本発明の目的及び他の利点は、本発明の目的と利点は、説明及び添付の特許請求の範囲で具体的に指摘されている要素と組合せにより、理解され達成されるであろう。
【0020】
これらの及び他の利点を達成するために、そして本明細書で具体化されそして広く記載されるように、本発明の目的に従って、本発明は、複数のカーボンブラック凝集体を含むカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子に関し、ここで各カーボンブラック凝集体は、少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせにより少なくとも部分的に被覆されて被覆凝集体を提供する。被覆凝集体は互いに融着されて、露出した外表面積を有する個々の複合粒子を形成する。この少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物は、複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30%である。
【0021】
本発明はさらに、本発明のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を作製する方法であって、
予備加熱した空気流に燃料を反応させることにより燃焼ガスの流れを生成する工程と、
第1の原料を、燃焼ガス流の周りに画定される第1のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入して反応流を形成し、前記反応流中の第1の原料の熱分解を開始させる工程であって、前記第1の原料はカーボンブラック生成原料を含む工程と、
補助炭化水素を、燃焼ガス流の周りに画定される第2のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入する工程であって、前記第1及び第2のリングパターンは同じ位置又は異なる位置に存在してもよい工程と、
燃焼ガス流又は反応流又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つに、少なくとも1つのIA族元素又はIIA族元素又はこれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの物質を追加的に導入する工程と、
前記反応流中でカーボンブラック凝集体を形成させ、こうして反応流中に懸濁されたカーボンブラック凝集体を形成する工程であって、前記カーボンブラック凝集体は外表面を有する工程と、
金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む第2の原料を、前記カーボンブラック凝集体が懸濁された反応流中に導入する工程であって、前記反応流は、前記少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せを分解するのに充分な温度を有し、前記分解された少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せは、前記カーボンブラック凝集体の外表面の少なくとも一部の周りで、金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せを含むシェルを形成して、少なくとも部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を形成する工程と、
前記少なくとも1つの部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を互いに融着させて複合粒子を形成した後、熱分解を急冷停止させる工程であって、前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せは、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である上記工程と、
を含む上記方法に関する。
【0022】
さらに本発明は、その充填剤が本発明の複合粒子を含む充填剤−ポリマー組成物を含む、LCD又は他のディスプレイ中の、コーティング、硬化性コーティング、例えば放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び/又は他の遮光要素に関する。LCD又は他のディスプレイ中の、硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の充填剤との組合せを含むことができる。
【0023】
また本発明は、本発明の複合粒子を含む充填剤−ポリマー組成物を含む、LCD又は他のディスプレイ中の、コーティング、硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び他の遮光要素の1つ又は2つ以上を含む形成物又は物品に関する。この形成物又は物品は、液晶ディスプレイなどであり得るか又はこれを含むことができる。
【0024】
本発明はさらに、硬化コーティングの作製方法であって、(i)少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の充填剤と、そして場合により揮発性液体などのビヒクルとを組合せて、例えば放射線又は熱により硬化可能な充填剤−ポリマー組成物を提供する工程であって、充填剤は本発明のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含む工程と、(ii)前記硬化性充填剤−ポリマー組成物を基材上に塗布して硬化性コーティングを形成する工程と、(iii)前記コーティングを像様に硬化させて硬化コーティングを形成する工程と、(iv)前記硬化コーティングを現像し乾燥する工程と、を含む上記方法に関する。
【0025】
上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明のいずれも例示的であり、かつ例示的なものに過ぎず、本発明のさらなる説明は、特許請求されている本発明のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0026】
本出願に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本発明の特徴のいくつかを例示し、その説明と共に本発明の原理を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本出願の一例の複合粒子(B)、及び比較の2相シリカ−カーボンブラックを表す凝集体粒子(A)の概略図である。
図2図2は、本出願の一例の複合粒子を作製するために使用され得る1種のファーネスカーボンブラック反応器の一部の概略図である。
図3図3A〜3Dは、本出願の一例の80%シリカ表面被覆率を有する複合粒子のTEM画像であり、複合粒子は低構造カーボンブラックである凝集体コアとシリカマントルとを有する被覆凝集体の超凝集体であり、図3Aは作製されたままの材料(スケールバー= 100nm)を示し、図3B〜3Dは 様々な倍率の灰化した試料を示す(スケールバー=それぞれ500nm、100nm、及び20nm)。
図4図4A〜Cは、灰化後の様々なレベル(図4A:60%、図4B:80%、及び図4C:90%)のシリカ被覆率を有する本発明による複合粒子のTEM画像である(スケールバー=100nm)。
図5A図5Aは、灰化試料についてのTEM画像の比較を示し、図5A中の灰化試料は、90%シリカ被覆率を有する高構造カーボンブラックコアから得られる比較2相充填剤である(スケールバー=100nm)。
図5B図5Bは、灰化試料についてのTEM画像の比較を示し、図5B中の灰化試料は、本出願の一例の低構造カーボンブラックである凝集体コアと87%シリカ被覆率を与えるシリカマントルとを有する被覆凝集体の超凝集体である複合粒子から得られる(スケールバー=100nm)。
図6図6A〜Bは、それぞれ図5A〜Bの灰化試料のより高倍率のTEM画像を示す(拡大、スケールバー=100nm)。
図7図7A〜Bは、粒子をHF処理してシリカを除去した後に、比較方法によって作製された幾つかの異なる2相シリカ−カーボンハイブリッド粒子の代表的なTEM画像を示す(スケールバー=100nm)。
図8図8A〜Bは、HF処理前の図7A〜Bに示される試料のTEM画像である(スケールバー=500nm)。
図9図9A〜Fは、HF処理してシリカを除去した後の本出願の一例の複合粒子の、低倍率及び高倍率の代表的なTEM画像である(スケールバー=100nm)。図9A及び9Dの粒子は30%シリカ被覆率を有する粒子から得られ、図9B及び図9Eの粒子は60%シリカ被覆率を有する粒子から得られ、図9C及び9Fの粒子は80%シリカ被覆率を有する粒子から得られた。
図10図10A〜Cにおいて、図10Aは、本出願の一例の、超低構造カーボンブラックである凝集体コアと金属/メタロイド酸化物マントルとを有する被覆凝集体の「超凝集体」である複合粒子を示し、図10Bは、水中のHFに曝されたときの「超凝集体」構造の崩壊を示し、図10Cは、空気中550℃で超凝集体を灰化することによって炭素を除去したときの残留灰分の「超凝集体」構造の保存を示す。
図11図11は、本出願の一例の、充填剤−ポリマー組成物を作製及び使用する方法を示すフローチャートである。
図12A図12Aは、本出願の一例のブラックマトリックス層を含む液晶ディスプレイの概略図である。
図12B図12Bは、本出願の一例のブラックカラムスペーサー及びブラックマトリックス層を含む液晶ディスプレイの概略図である。
図13図13は、本出願の例1に従って作製された複合粒子(◆)のシリカ用量に対するシリカ被覆率(%)を示すプロットである。データ点(▲)は、比較例1に従って作製された複合粒子のシリカ被覆率を示す。
図14図14は、シリカ用量に対する本出願の例の複合粒子形成物のOANを示すプロットである。
図15図15は、本出願の例の複合粒子形成物(▲)と、シリカを含まない対照例(C1:黒塗り□)と、市販のシリカ−カーボンブラック2相粒子(◆)の粉末抵抗率(1g/cm)との比較を示すグラフである。
図16図16は、空気中のTGA測定値に基づく試料の熱安定性の比較を示すグラフであり、「a」は比較のための酸化カーボンブラックであり、「b」は超低構造カーボンブラック(2相ではない)であり、「c」は本出願の一例の複合粒子である。保持された質量(質量%)は温度(℃)に対してプロットされている。
図17図17は、本出願の例の複合粒子を含有する4つの分散液B1(◆)、B2(黒塗り□)、B3(▲)、及びB4(×)についてのブルックフィールド(Brookfield)粘度(cP)のプロットを示す。
図18図18は、本出願の例の複合粒子の粒径分布(平均体積及び95パーセンタイル(%))の棒グラフを示す。
図19図19は、本出願の例の2つの異なる複合粒子を含有するフィルムの光学密度(1ミクロン(μm)に標準化)対表面抵抗率(オーム/平方)のプロットである(試料2:◆、試料6:横向きの黒塗り三角)。
図20図20は、220℃(黒塗り□、▲)及び280℃(□、Δ)で1時間曝露後の、粒子装填(質量%、乾燥基準)に対する本出願の例の複合粒子の非常に高い装填量を含むコーティングの表面抵抗率(オーム/平方)のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、超低構造カーボンブラックであり得る凝集体コアと金属/メタロイド酸化物マントル(シェル)とを有する個々の被覆凝集体の超凝集体を個々に含む複合粒子に関する。本発明の複合粒子は、これらを取り込む物質の種々の特性に有益な影響を与え得る。被覆凝集体は、一緒に融着されて超凝集体と呼ばれる全体的な凝集体になり、これは個別の複合粒子である。本発明の複合粒子及びその被覆凝集体成分はコア−シェル構造を有し、そのコアは低構造カーボンブラックであるか、これを含むか、又はこれからなり、そのシェルはシリカなどの金属酸化物又はメタロイド酸化物であるか、これを含むか、又はこれからなる。本発明の複合粒子は、互いに混合された2相(炭素相と金属酸化物相)とは見なされない(例えば、各粒子の体積中にランダムに分布しているが、異なる材料のコアとシェルの明確な形成は見られない)。複合粒子はコーティング及びインク中によく分散することができ、粘度が増大する問題はない。複合粒子は媒体中の充填剤又は顔料材料として有用である。複合粒子で改質されたコーティング、インク、又は他の媒体において、電気的、光学的、熱的、及び/又は加工特性又は他の特性の複合的な改善を得ることができる。
【0029】
本発明の複合粒子の1つの複合粒子の構造において、被覆凝集体は一緒に融着して露出した外表面積を有する1つの複合粒子を形成し、ここで金属酸化物又はメタロイド酸化物、又はこれらの任意の組合せは、複合粒子の露出した外表面積(例えば粒子(BET)表面領域)の表面積の、少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%、又は30%〜100%、又は30%〜99%、又は30%〜70%、又は30%〜60%、又は35%〜95%、又は40%〜90%、又は50%〜80%、又は60%〜80%、又は他の量である。金属/メタロイド酸化物は複合粒子として一緒に合体される前に、同様の値(例えば、30%〜100%、又は30%〜99%などの表面被覆率)で個々の被覆凝集体の露出した外表面積を部分的に又は完全に被覆することができる。メタロイド酸化物のメタロイドは、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、又はこれらの任意の組み合わせであり得るか又はこれらを含み得る。メタロイド酸化物のメタロイドは、ケイ素であり得るか又はこれを含み得る。選択肢としてメタロイド酸化物はシリカでもよく、上記表面積量は、シリカからの表面領域被覆率を指すことができる。金属酸化物の金属は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、又はこれらの任意の組み合わせであるか、これらを含み得る。
【0030】
本発明の複合粒子は高い抵抗率を有することができ、これらで改質されたコーティング及びインクに良好な光学密度を付与する。複合粒子は、20Ω・cm超、又は50Ω・cm超、又は100Ω・cm超、又は500Ω・cm超、又は1000Ω・cm超、又は2500Ω・cm超、又は10Ω・cm超、又は10Ω・cm超、又は10Ω・cm超、又は10Ω・cm超、又は20Ω・cm〜又は10Ω・cm、又は1000Ω・cm〜10Ω・cm、又は10Ω・cm〜10Ω・cmの粉末抵抗率、又は他の抵抗値を、すべて1g/ccの粉末密度で有することができる。これらの高い抵抗値は、複合粒子中に1質量%〜90質量%、2質量%〜70質量%、3質量%〜70質量%、又は4質量%〜60質量%、又は5質量%〜50質量%、又は7.5質量%〜40質量%、又は10質量%〜30質量%、又は他の量の金属/メタロイド酸化物含有量を有する複合粒子で好適に提供することができる。本発明の複合粒子では、標的抵抗率を得るために高い又は優勢な金属/メタロイド含有量は、必須ではない。これは、複合粒子で改質された組成物又は形成物について抵抗率特性を標的とするとき、光学密度又は他の特性が犠牲になることを防止又は緩和することができる。
【0031】
本発明の複合粒子の高い電気抵抗率はその固有の構造の結果であると考えられ、その構造は、低構造カーボンブラックを含む凝集体コアと金属酸化物、メタロイド酸化物又はこれらの組合せを含むマントル(シェル)とを含む、被覆凝集体の「超凝集体」を含む。これを説明するために、図1は本出願の「超凝集」複合粒子(B)と、市販品に基づく比較2相シリカ−カーボンブラック粒子である凝集体粒子(A)との比較を模式的に示す。この説明のために、複合粒子(B)はシリカマントル−カーボンブラックコア構造を有する複数の被覆凝集体を含み、これらは一緒に融着されて単一の「超凝集体」を形成する。図1においてシリカ被覆領域は斜線をつけた表面部分で、炭素コア領域は黒い影で識別される。比較凝集体粒子(A)は互いに融着して非常に不規則な外面を有する高度に凝集したランダムな形状の凝集体を形成する炭素1次粒子からなり、複合粒子の凝集体の高度に不規則な表面構造上にシリカがランダムに沈着される。図1は、ほぼ完全な表面シリカ被覆率を有する比較凝集体粒子(A)を示すが、これは必須でも一般的でもない。複合粒子(B)は、シリカコーティングによって互いに融着され被覆凝集体によって形成された超凝集体である。被覆凝集体は、コアの良好に形成された低構造を再現するシリカマントル(又は他の金属/メタロイド酸化物マントル)で被覆された凝集性が低く明確な良好に画定された形及び形状(例えば、高い球形度及び円形度)を有する低構造カーボンブラックコアを有し、このシェル/コア構造は集合体全体でよく保存されている。本発明の複合粒子の異なる構造は、性能の利点、特に高い電気抵抗率、及び以前の2相充填剤を超える加工能力を提供することができる。
【0032】
本発明の複合粒子は、低構造カーボンブラック凝集体である凝集体コアを用いて調製することができる。吸油価(OAN)は粒子構造の尺度である。本発明の複合粒子の被覆凝集体の形成のための凝集体コアとして使用できるカーボンブラック凝集体は、低構造を有し得る。OAN値は一般的には、粒子の構造レベルの凝集度に比例する。本発明の複合粒子のカーボンブラック凝集体は、30〜50cc/100g、又は35〜50cc/100g、又は35〜45cc/100g、又は他の値のOANを有することができる。
【0033】
凝集体コアのために使用可能なカーボンブラック凝集体は、高い球形度及び円形度を有することができ、本質的に全体に球形の形状に近づくことができる。カーボンブラック凝集体は、2000個のカーボンブラック凝集体のASTM D−3849下でのTEM観察に推奨される倍率での電子顕微鏡画像に基づくと、丸みを帯びることができ、すなわち外周に対する凸状外周の比は少なくとも0.8、少なくとも0.85、又は少なくとも0.9である。シリカ又は他の金属/メタロイド酸化物で被覆する前の、凝集体コアのために使用される低構造カーボンブラック凝集体は、総金属酸化物及びメタロイド酸化物の1質量%未満、又は0.5質量%未満、又は0.1質量%未満、又はカーボンブラック凝集体の質量に基づいて、0.05質量%未満、又は0.01質量%未満、又は他の量を有するカーボンブラック凝集体などの、高純度の単相材料であり得る。本発明の複合粒子を提供する際に、その超凝集体に形成又はクラスター化する被覆凝集体を形成するための基礎粒子として、その凝集体コアに使用される良好に形成された低構造カーボンブラック凝集体は、これらの出発構造から形成される複合粒子中の特性の構築と制御を容易にする。
【0034】
本明細書に記載の図に示される電子顕微鏡で観察できるように、本発明の複合粒子の各炭素粒子コアは、シリカ又は他の金属/メタロイド酸化物の薄い誘電体層を有し、これは、シリカ又は他の金属/メタロイド酸化物の被覆率のレベルに依存して、超凝集体複合粒子中の凝集体間の電子輸送に大きな影響を与え得る(低下させる)。これにより、複合粒子全体の抵抗率を高めることができる。さらに、ほぼ球状のシリカ又は他の金属/メタロイド酸化物の間の明確な境界は、例えば本明細書に記載の図に示されるように、本発明の複合粒子の灰化された試料において電子顕微鏡によって観察することができるが、より高構造のシリカ−カーボンブラック2相粒子中には同様に観察されるとき明確な境界は存在しない。これは、その表面上の凝集体コアの分布及び顕著には凝集体コアのバルク体積中を通過するか及び/又はその中に侵入する分布と比較して、被覆凝集体のシェル又は表面積の金属/メタロイド酸化物材料の高濃度を示している。さらにシリカのような金属/メタロイド酸化物材料の薄層は可視スペクトルにおいて光学的に透明であることができ、これは、上記薄層で被覆されたコア材料の光学密度特性が、本発明の被覆凝集体及び複合粒子形成物中の金属/メタロイド酸化物材料の薄層で部分的又は全体に被覆されたときでさえ、継続して達成可能であることを可能にする。
【0035】
本発明の複合粒子は、低構造炭素コアである凝集体コアが欠如した2相シリカ−カーボンブラック粒子と比較して、同じ粒子構造でより電気抵抗性であり得る。実際にはこれは、形成物粒子中のより高い充填剤装填及び/又はより少ない全シリカ若しくは他の金属/メタロイド含有量で、より高い電気抵抗性が達成できることを意味する。本発明の複合粒子において、超低構造カーボンブラックシードで開始する場合、シリカ又は他の金属/メタロイド酸化物は凝集体コア上の構造促進物質として機能して、より高い構造凝集体を構築することができる。特定の理論に拘束されるつもりはないが、低構造カーボンブラックコアは、1つのコアから別のコアへの電子の伝達を防ぐシリカジャンクションにより一緒に連結され、これは複合粒子の一端から別の端への導電性経路から電子を奪う。対照的に、より高構造のコアを有する先行技術の2相シリカ−カーボンブラック粒子(図1A参照)は、粒子の一端から他端への導電性経路を有し、シリカ被覆におけるいかなるギャップも1つの2相粒子から別の粒子への伝達を可能にする。これは、低構造炭素コア又は低構造単相カーボンブラックである凝集体コアが欠如した2相粒子である同様の構造を持つ異なる粒子と比較してさえ、なぜ本発明の複合粒子がはるかに優れた抵抗性を示すことができるかを、少なくとも部分的には説明していると考えられる。さらに、低構造炭素コアである凝集体コアが欠如した2相シリカ−カーボンブラック粒子と比較して、本発明の複合粒子の粉末は、同じシリカ被覆率でより電気抵抗性であり得る。本発明の複合粒子は、比較的低い表面被覆率(例えば、35〜60%)でさえも、増加した電気抵抗率を提供することができる。したがって、炭素によってもたらされる特性、例えば光学密度は、本発明の複合粒子を使用して増強することができ、抵抗率の改善と密接に関連することができる。
【0036】
複合粒子中のシリカ又は金属/メタロイド酸化物含有量がより少ないことの別の直接的な利点は、配合物中の粒子装填がより高い所望の性能レベルの性能を達成する能力及び選択肢であり、これはより多くの柔軟性をユーザーに与える。本発明の複合粒子で改質されたコーティングは、同様の装填レベルで低構造炭素コアである凝集体コアが欠如した(すなわち、より高い構造を有する)2相シリカ−カーボンブラック粒子で改質されたコーティングと比較して、より小さい粘度を有することができ、これは、被覆フィルム中の複合粒子充填剤の固形分%を増加させることを可能にし、従ってより高い光学密度を達成することができる。
【0037】
さらに、このような「シェル(マントル)/コア」構造を有する複合粒子は、ミルベース及びインクの調製における一般的な工程である湿潤プロセス及び分散プロセスに有利であり得る。低構造カーボンブラックコアを有するコア−シェル粒子を含む本発明の複合粒子の特別な特徴は、例えばビーズミル粉砕時の非常に強い剪断力によって誘導される凝集体の破壊を含むことができる。その結果、粒径を大幅に小さくすることができるが、これらの高い電気抵抗性能は変化しないと予想される。
【0038】
例えば酸化又はジアゾニウム処理によるカーボンブラックの表面化学の改質は、炭素粒子の電気抵抗率を増大させ得ることが知られている。しかしながら、表面処理された炭素は一般に、処理薬品及び/又は副産物の性質に依存性して、高温に対して明確な感受性を示す。これは、高温に曝される必要がある用途における使用を制限する。本発明の複合粒子を含む組成物は、本明細書に記載の試験で確認されるように優れた熱安定性を示す。複合粒子は、毎分5℃の温度勾配で、空気中で110℃から450℃の温度に曝されたとき、加熱時により1質量%未満の損失、又は0.75質量%未満の損失、又は0.50質量%未満の損失、又は0.1質量%未満の損失などの損失を有することができる。これは、高温に曝された後の、熱安定性(空気中)を必要とする用途、又は材料の性能が(例えば電気抵抗性)が変化しないことを必要とする用途において、複合粒子を良好な候補にしている。さらに複合粒子は、破壊電圧を増加させることによって及び/又は誘電率を上昇させることによって、ブラックマトリックス及びブラックカラムスペーサーなどのコーティングの誘電性能を改善することができる。
【0039】
本発明の複合粒子は、1つ又は2つ以上の特性によって、例えば60〜130cc/100g、又は70〜120cc/100g、又は80〜110cc/100g複合粒子、又は他のOAN値などのOAN、及び/又は50〜90m/g、又は55〜80m/g、又は60〜80m/g、又は70〜90m/gなどのBET、及び/又は2〜5、又は3〜4、又は他の値などのBET(m/g)/ヨウ素価(mg/g)の比、によって特徴付けることができる。OANはASTM 2414に従って測定され、窒素表面積(BET)及びSTSA表面積はASTM D6556−10に従って測定される。複合粒子は、最大500nmの平均サイズ、例えば35〜500nm、又は50〜400nm、又は75〜250nm、又は他の値の平均サイズを有することができる。複合粒子は、200mg/g以下、例えば5〜200mg/g、又は他の値のヨウ素価を有することができる。カーボンブラックの円形度及びOANは、残留シリカが1質量%未満になるまで被覆凝集体をフッ化水素酸処理した後に測定することができる。円形度は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察された少なくとも2000個の粒子の凸状外周/外周の比の算術平均である。カーボンブラックのヨウ素吸着量(I No.)は、ASTM試験法D−1510−08に従って測定される。複合粒子などの凝集体の平均粒径は、例えばASTM試験D−3849によって測定することができる。
【0040】
本発明はさらに、LCD、他のディスプレイ、インク(例えば、インクジェット用インク)、及び本発明の複合粒子を少なくとも1つ含む他の形成物及び組成物における硬化性コーティング、放射線及び熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、ベゼル、他の遮光要素に関する。本明細書においてポリマーを「硬化する」ことは、架橋又は分子量を増加させる他の方法によってそれを硬化することを意味する。複合粒子は、これを用いて調製したコーティング組成物又はインクの電気的、光学的、熱的、加工特性、又は他の特性の組み合わせの制御のために使用することができる。本発明において電気抵抗は、複合粒子を充填剤として含有する充填剤−ポリマー組成物から形成されるLCD又は他のディスプレイ中の硬化コーティング、硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング若しくはこれを用いて形成されるフィルム、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び他の遮光要素の表面電気抵抗率が、1平方当たり10〜1016オーム(オーム/平方又はΩ/平方)又はそれ以上、例えば10〜1016オーム/平方、又は1010〜1016オーム/平方、又は1010〜1015オーム/平方、又は1010〜1014オーム/平方、又は1011〜1016オーム/平方、又は1011〜1015オーム/平方、又は1011〜1014オーム/平方、又は1012〜1016オーム/平方、又は1012〜1015オーム/平方、又は1012〜1014オーム/平方、又は1014〜1016オーム/平方、又は他の制御された量であり得るように制御することができる。電気抵抗率は、本手術とのLCD又は他のディスプレイ中の、硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング又はフィルム、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー及び他の遮光要素を形成するのに使用できる、充填剤及びポリマーを含む組成物に関する。本明細書で提供される例により示されるように、低構造炭素コアが欠如した2相シリカ−カーボンブラック粒子と同じシリカ表面被覆率で、本発明の複合粒子を有する充填剤−ポリマー組成物を用いて、より高い抵抗率及び光学密度を達成することができる。さらに、複合粒子を充填されたポリマー組成物の粘度は、同じ装填レベルで低構造炭素コアが欠如した2相シリカ−カーボンブラック粒子よりも低くなり得るため、複合粒子をポリマー組成物より高いレベルで装填できるため、より高い光学密度を得ることができる。これらの複合粒子を含むLCD又は他のディスプレイにおける硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング若しくはフィルム、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び他の遮光要素は、適切な色特性(例えば光学密度、着色強度)をさらに提供することができる。
【0041】
複合粒子を充填剤−ポリマー組成物に使用して、1ミクロン(μm)厚当たり1以上、又は1ミクロン厚当たり1.25以上、又は1ミクロン厚あたり1.5以上、又は1ミクロン厚あたり1.75以上、又は1ミクロン厚あたり2.0以上、又は1ミクロン厚あたり2.5以上、又はそれ以上の値、又は1ミクロン厚あたり3超、又はそれ以上の値、又は1ミクロン厚あたり1〜4、又は1ミクロン厚あたり1.5〜2.5、又は1ミクロン厚あたり2〜3、又はそれ以上の値の光学密度を有するコーティングを提供することができる。提供される光学密度値は、1ミクロンの厚さを有するコーティングの、又はコーティング中の1ミクロンの増分ごとのコーティングの測定に基づく。これらの光学密度値は、硬化性コーティング、硬化コーティング、又はこれら両方の形態のコーティングに適用することができる。複合粒子は、75〜100、又は80〜99、又は75〜95、又は他の値の着色強度を有することができる。複合粒子の着色強度(Tint)は、ASTM試験法D3265−07に従って測定することができる。複合粒子は充填剤−ポリマー組成物中で使用して、例えば20未満、又は15未満、又は10未満、又は1〜20未満、又は5〜20未満、又は10〜20未満、又は他の値を有するフィルムなどの低誘電率層を提供することができる。本発明の目的において、及び特に別の指定がなければ、誘電率のすべての値は1MHzで測定される。
【0042】
粒子の構造を構築し制御するために使用されるモジュール式炉又は「段階式」炉において、単一の連続プロセスフローで複合粒子を形成することができる本発明の方法が開発された。異なる原料が、低構造カーボンブラック「コア」又は「シード」粒子が良好に形成されたことを可能にするのに充分に反応器内で離れている異なる導入ポイントで導入された後、分解性及び/又は揮発性の金属/メタロイド含有化合物の別々の下流への原料導入により、これらの凝集体コア又はシード粒子は下流方向に金属/メタロイド酸化物被覆凝集体に変換される。こうして処理されたカーボンブラックコア又はシード粒子は、単相の炭素粒子から、カーボンブラックコアの周りの金属/メタロイド酸化物マントルを有するコア/シェル構造に変換され得る。得られる被覆凝集体粒子は中間形成物として、反応器中で同様の被覆凝集体と融着した後急冷停止されて、全体的な凝集体又は「超凝集体」を形成して、本発明の複合粒子として回収される。複数のそのような複合粒子がカーボンブラック反応器内で同時に形成され、同じ生産工程で回収されることができる。
【0043】
図2に示されるモジュラー式又は多段式炉のカーボンブラック反応器は、選択肢として、本発明の複合粒子を作製するために使用することができる。この炉又は反応器は、特定の順序及び構成でカーボンブラック生成原料と金属/メタロイド酸化物生成原料を別々に導入して複合粒子を構築するための2つ以上の段若しくは入口ポイントを有する。複合粒子は、例えば図2に記載のようなモジュラーファーネスカーボンブラック反応器2で作製することができ、この反応器は、収束直径11のゾーンを有する燃焼ゾーン10、第1の移行ゾーン12、第2の移行ゾーン13、入口セクション18、及び反応ゾーン19を有する。集束直径11のゾーンが始まるポイントまでの燃焼ゾーン10の直径はD−1として示され;ゾーン12の直径はD−2(これは、ゾーン13のD−9と同じか又は実質的に同じであり得る)として示され;拡大直径D−8のゾーン14はD−2とD−9との間に位置し、段付き入口セクション18の直径はD−4、D−5、D−6、及びD−7として示され;ゾーン19の直径はD−3として示されている。集束直径11のゾーンが始まるポイントまでの燃焼ゾーン10の長さはL−1として示され;収束直径のゾーンの長さはL−2として示され;移行ゾーンの長さはL−3として示され;反応器入口セクション18のステップの長さはL−4、L−5、L−6、及びL−7として示されている。D2とD9は互いに直径の大きさが近くてもよいが、全く同じである必要はない(例えば、D2とD9は互いの±25%以内である直径を有し得る)。選択肢として、D2及びD9は、D−1及びD−4〜D−3に対して比較的直径が小さく、それは、小さい直径は、ガスがこれらのゾーン中を高速で流れて、注入された液体の有効な混合を達成するためである。
【0044】
カーボンブラック凝集体を作製するために、液体又は気体燃料を空気、酸素、及び空気と酸素の混合物などの適切な酸化剤流と接触させて、高温の燃焼ガスが燃焼ゾーン10で生成される。高温の燃焼ガスを生成するために燃焼ゾーン10中で酸化剤流に接触するのに適した燃料には、容易に燃焼可能なガス、蒸気、又は液体流(例えば、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコール、灯油)の任意のものである。しかしながら高含有量の炭素含有成分を有する燃料、特に炭化水素を使用することが一般的に好ましい。本発明の粒子のカーボンブラックコアを作製するために天然ガスが使用される場合、空気と天然ガスとの体積比は、約10:1〜約1000:1、又は10:1〜100:1であり得る。高温燃焼ガスの形成を促進するために、酸化剤流を予熱することができる。高温燃焼ガスは、ゾーン10及び11から下流にゾーン12、13、18、及び19にこの順序で流れる。反応器中でゾーン13の後に、より少ないか又はより多い反応ゾーンを含めることができる。高温燃焼ガスの流れの方向は、図2に矢印で示される。反応器内の化学反応を停止させるために急冷停止部60を使用することができ、原料入口及び反応ゾーンの下流に配置される。
【0045】
カーボンブラック生成原料30は、ポイント32、35、及び36(ゾーン12に存在する)及び/又はポイント70(ゾーン11に存在する)として示される1つ又は2つ以上のポイントに導入される。反応器の反応ゾーン部分12では、カーボンブラック生成原料は熱分解されてカーボンブラックになる。本明細書において反応条件下で容易に揮発性のカーボンブラック生成炭化水素原料として使用するのに適しているのは、不飽和炭化水素、例えばアセチレン;エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;いくつかの飽和炭化水素;及び他の炭化水素、例えば灯油、ナフタレン、テルペン、エチレンタール、芳香族環原料などである。
【0046】
収束直径11のゾーンの端部15からポイント32、35、及び36までの距離(流れ方向に)はF−1として示されている。一般にカーボンブラック生成原料30は、高温燃焼ガス流の内部に入り込む複数の流れの形態で注入され、高温燃焼ガスによるカーボンブラック生成原料の高速の混合と剪断を確実にして、原料を迅速かつ完全に分解してカーボンブラックとする。
【0047】
補助炭化水素通は、ポイント70でプローブ72を介して、及び/又はカーボンブラック生成プロセスのゾーン12の境界を形成する壁内の補助炭化水素通路75及び79を介して導入される。図2において導入ポイント75、36、及び79は、その内壁で反応器ゾーン12へのこれらの導入ポイントの入口であり得る。本明細書で使用される用語「補助炭化水素」は、水素、又は原料の水素対炭素モル比より大きい水素対炭素モル比を有する任意の炭化水素を指し、気体でも液体でもよい。例示的な炭化水素としては、特に限定されるものではないが、燃料及び/又は原料としての使用に適していると本明細書に記載されている材料が挙げられる。選択肢として、補助炭化水素は天然ガスである。補助炭化水素は、第1段燃料の最初の燃焼反応直後のポイントとカーボンブラック生成の終了直前のポイントの間の任意の位置で導入することができるが、未反応の補助炭化水素は基本的に反応ゾーンに入る。カーボンブラック生成原料30は、ポイント32、35、及び36などの複数のポイントで導入することができ、図2に示されるような燃焼ガス流のまわりで定義されるリングパターンで配列することができる。示された導入ポイントの数は例示のためのみであり、より多くのカーボンブラック生成原料を使用してリングパターンを定義することができる。補助炭化水素は、図2に示すようなカーボンブラック生成原料導入ポイントのリングパターンに一致し得るリングパターンで配置されたポイント75や79、及び/又は他のポイントなどの所定数のポイントで燃焼ガス流中に導入することができるか、又はカーボンブラック生成原料導入ポイントのリングパターン(図示していない)からゾーン12中の異なる位置に存在するリングパターンを画定することができる。補助炭化水素の導入ポイントの数は例示のためにのみ示されており、より大きな数の導入ポイントを使用することができる。カーボンブラック生成原料の導入ポイントは、及び補助炭化水素の導入ポイントはそれぞれ、リングパターンに沿って間隔を置いた位置に断続的に配置することができる。カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素の導入ポイントのリングパターンは一致しかつ単一のリングパターンに形成するとき、反応器中で充分な混合が得られる限り、異なる種類の導入ポイントは規則的又は不規則にリングパターン中で交互に現れる。例えば、カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素導入ポイントはリングパターンの周りに個々に交互に現れるか、又は2つ又はそれ以上がリングパターンの周りに互いに連続して交互に現れるか、又は1つの種類又は2つ以上の種類でリングパターンの周りに個々に互いに連続して交互に現れるか、又は種類の交代がリングパターンの周りでよりランダムとなり得る。カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素の導入ポイントのリングパターンがゾーン12中で別々に存在するとき、異なるリングパターンは、反応器の流れ方向(すなわち、図2の透視図において左から右の方向)に約12インチ(約30cm)以下の間隔で配置されてもよい。下記の例では、補助炭化水素はカーボンブラック生成原料流と同じリングパターンで3つのオリフィスを通して導入された。オリフィスは、好ましくは交互パターンで配置され、1つの原料、次の補助炭化水素などが区画12の外周の周りに均等に間隔をあけて配置されている。反応器に加えられる補助炭化水素の量は、補助炭化水素の炭素含量が、反応器に注入されるすべての燃料流の総炭素含量の多くても約20質量%、例えば約1〜約5%、約5%〜約10%、約10%〜約15%、約15%〜約20%、又はこれらの終点のいずれかによって境界が定められる任意の範囲であるように調整される。補助炭化水素の炭素含量は、反応器に注入される全燃料流の総炭素含量の約3質量%〜約6質量%であり得る。理論に拘束されるつもりはないが、補助炭化水素の使用は、炭素粒子の構造を極めて低いレベルにするように作用し得る。
【0048】
反応器へのカーボンブラック生成原料の導入の実質的に全て又は基本的に全て又は完全に全て、例えばカーボンブラック生成原料の全量の少なくとも95質量%、又は少なくとも98質量%、又は少なくとも99質量%、又は100質量%を、導入ポイント32以内に完了することができる。カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素に加えて、第1の原料は、従来のカーボンブラックを作製するのに一般的に使用される追加の材料又は組成物をさらに含むことができるが、金属/メタロイド酸化物生成化合物は好ましくは、ゾーン11及び12中に導入される原料から実質的に、本質的に、又は完全に除外され、従って1相の又は基本的に1相の炭素質粒子である低構造カーボンブラックコアを形成することができる。選択肢として、カーボンブラック生成原料は、カーボンブラック凝集体中に金属/メタロイド酸化物生成含有物(例えばシリカなど)を実質的に含まない組成物を有する。選択肢として、形成されるカーボンブラック凝集体は、カーボンブラック凝集体の質量に基づいて、1質量%未満、又は0〜0.1質量%、又は0〜0.5質量%、又は0〜0.05質量%、又は0〜0.01質量%の総金属酸化物及びメタロイド酸化物を有することができる。この金属酸化物又はメタロイド酸化物はマントルを形成する金属酸化物又はメタロイド酸化物のみを指し、例えばカーボンブラック生成原料中に注入される構造制御塩溶液からの酸化カリウム由来の灰として存在する金属酸化物は含まない。反応器条件下で粒子中にそのような金属/メタロイド酸化物を形成し得る化合物の例は、下流の導入位置33で導入される原料について本明細書に記載される。
【0049】
選択肢として、特定のアルカリ又はアルカリ土類材料はカーボンブラックコアの構造調整剤として複合粒子に、得られるカーボンブラック中のアルカリ又はアルカリ土類材料の総濃度が低くなるような量で加えることができる。好ましくは、前記物質は、少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する。IA及びIIA族元素の合計濃度を低く維持したまま、カリウムイオンを原料に加え、最終的にカーボンブラック中に取り込むことができる。使用可能なIA族及びIIA族元素の他の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、バリウム、若しくはストロンチウム、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせが含まれる。前記物質は、固体、溶液、分散液、気体、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。同じか又は異なるIA族又はIIA族元素を有する2種以上の物質を使用することができる。複数の物質が使用される場合、これらの物質は一緒に、別々に、順次、又は異なる反応位置で加えることができる。本発明の目的において、前記物質は金属(又は金属イオン)自体、これらの元素のうちの1種又は2種以上を含む化合物(これらの元素のうちの1種又は2種以上を含む塩などを含む)でもよい。例示的な塩としては、有機塩及び無機塩の両方、例えば、ナトリウム及び/又はカリウムと、塩化物、酢酸塩、又はギ酸塩のいずれかとの塩、又はそのような塩の2つ以上の組み合わせが挙げられる。好ましくは、前記物質は、カーボンブラックコアを形成するために進行している反応中に金属又は金属イオンを導入することができる。
【0050】
IA族又はIIA族元素を有する前記物質は、第2の(金属/メタロイド含有化合物)原料の導入前の任意のポイントで加えることができる。IA族又はIIA族元素を有する物質。は、第1段階でカーボンブラック生成原料の導入前に;第1段階でカーボンブラック生成原料の導入中に;又は、第1段階でカーボンブラック生成原料の導入後でかつ第2(金属/メタロイド含有化合物)原料の導入前に、加えることができる。前記物質の導入の複数のポイントを使用することができる。前記物質は1つのポイントで又は複数のポイントで加えることができ、1つの流れ又は複数の流れとして加えることができる。前記物質は、任意の従来の手段を含む任意の様式で加えることができる。言い換えれば前記物質は、カーボンブラック生成原料を導入するのと同じ方法で加えることができる。前記物質は、気体、液体、又は固体、あるいはこれらの任意の組み合わせとして加えることができる。前記物質は、導入前及び/又は導入中に第1の原料、燃料、及び/又は酸化剤と混合することができる。少なくとも1種のIA族又はIIA族元素を含有する前記物質は、選択肢として、塩溶液をカーボンブラック生成原料に取り込むことによって導入することができる。燃焼すると、前記物質の金属イオンはカーボンブラックコアに取り込まれることができる。前記属含有物質の量は、カーボンブラックコア形成物が生成できる限り、任意の量であり得る。選択肢として、塩溶液をカーボンブラック生成原料と混合して、すべてのアルカリ金属及び/又はアルカリ金属イオンの濃度が、0〜約1質量パーセントの間になるようにすることができる。選択肢として、前記物質はIA族元素を導入する;例えば、前記物質はカリウム又はカリウムイオンを導入することができる。
【0051】
カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素を含む第1の原料の導入により、カーボンブラック凝集体が形成され、これは移行ゾーン12の反応流中に懸濁される。懸濁されたカーボンブラック凝集体と任意の残留するカーボンブラック生成原料と高温燃焼ガスの混合液であり得る反応流は、移行ゾーン12中を下流に流れ、次にゾーン14を通過して、移行ゾーン13中に入る。カーボンブラック生成原料と補助炭化水素とを含む第1の原料が反応器の原料注入ゾーン12中に導入される遅延の下流にポイントして、金属/メタロイド含有化合物を含む第2の原料31は、例えば第2の原料注入ゾーン13中に位置33で導入される。第2の原料は、等距離離れた位置又は特に反応流の周りのリングパターンで配置された、例えば入口ポイント77、又は77と78などの複数の入口ポイント、又はそれ以上の入口ポイントで、原料注入ゾーンに入ることができる。選択肢として、希釈剤導入オリフィス又は注入装置34を位置33又はその近傍に含めることができる。第2の及び任意の以後の原料は、好ましくは第1の原料の実質的な反応のゾーンの後に加えられ、これは、先の原料が既に主に反応して、良好に形成されたカーボンブラック凝集体を提供するゾーンである。
【0052】
選択肢として、カーボンブラック生成原料及び補助炭化水素が第1の原料として第1の導入ポイントで燃焼ガス流に導入されて、ゾーン12(ここで、追加的に加えられたIA/IIA族元素の存在下でカーボンブラック凝集体形成される)で反応流が形成された後に、この時にのみ、金属含有化合物及び/又はメタロイド含有化合物が第2の原料として第2の下流導入ポイント33で反応流中に導入されて、反応器の別の移行ゾーン13を提供する。選択肢としてカーボンブラック反応器は、ポイント32における第1の原料の導入の完了とポイント33における第2の原料の最初の導入との間の反応器中の分離距離G−1は、被覆凝集体の反応流へ金属含有化合物及び/又はメタロイド含有化合物が導入され、次に複合粒子が形成される前に、低構造(例えば、30〜50cc/100gの油吸収数(OAN))、低表面積(50〜90m/g)、及び良好に形成された粒子形状(例えば0.8超、又はそれ以上の値の円形度により規定し得る)を有するカーボンブラック凝集体aが形成されるように延長されるように、構成される。
【0053】
本出願の例に示されるように、カーボンブラック生成原料と金属/メタロイド含有化合物原料の注入点間の滞留時間は、最初に形成されたカーボンブラックの粒子の構造及び形態に大きな影響を及ぼし、これは次に、最終的な粒子形成物に大きな影響を与え得る。選択肢として、本発明において滞留時間は、空間距離G−1を増加させ、直径D−8を増加させ、又はこの両方により制御されて、より長い滞留時間を提供することができる。選択肢として、第1及び第2の原料のための反応器中の導入ポイント32及び33は距離G−1によって分離され、この距離は、分離距離が長すぎてその導入時に第2の原料の分解を支持するのに必要な値以下に反応流温度が低下すること無く、第2の原料の導入ポイント33に達する前に、第1の原料の導入後に反応流中でカーボンブラック凝集体が形成されて、良好に形成された低構造粒子又は凝集体に冷却されるのに充分である。これを考慮すると、第1の原料30の導入ポイント32を超えてゾーン12を画定する反応器の移行セクション上で外部加熱手段を使用することは好ましくない。第1の原料導入ポイントと第2の原料導入ポイントとの間の反応器中の分離距離G−1は、少なくとも150cm、又は少なくとも200cm、又は少なくとも250cm、又は少なくとも300cm、又は少なくとも350cm、又は少なくとも400cm、又は少なくとも450cm、又は少なくとも500cm、又は少なくとも600cm、又は150〜600cm、又は200〜575cm、又は250〜550cm、又は300〜525cm、又は350〜525cm、又は400cm〜525cm、又は450〜500cm、又はその他の値であり得る。異なる原料導入ポイント間のこれらの分離距離は、多相シリカ−カーボンブラック粒子又は凝集体を作製するために使用される反応器デザインについて以前に示されたものと比較して、はるかに長く、例えば少なくとも2倍(2×)、3倍(3×)、またはそれ以上である。本出願の例に示されているように、カーボンブラック生成原料と金属/メタロイド含有化合物原料の導入ポイントの間の長い分離距離の欠如は、結果の失敗を与える場合がある。カーボンブラック反応器中の高速の反応流でさえ、第1の原料と第2の原料の導入ポイント間の反応器の移行ゾーンを拡張して第2(金属/メタロイド含有化合物)原料の導入を遅らせることは、最初に形成されたカーボンブラック粒子の構造と形態に大きな影響を与え得ることが、驚くべきことに見出された。次にこの影響は、カーボンブラックコア又はシード粒子を用いて形成される被覆凝集体及びこれらから作製される超凝集体の構造及び/又は形態に大きな影響を及ぼす可能性がある。選択肢として、金属/メタロイド含有化合物原料は反応器中の第2の注入位置において反応流中に導入することができ、この位置は、第1の注入位置において燃焼ガス流へのカーボンブラック生成原料の導入が完了した少なくとも30秒後に存在し、ここで、この滞留時間は、第1の注入位置後の流れの総ガス体積と第1の注入位置と第2の注入位置間の反応器の体積とにより規定することができる。示された第1の注入位置と第2の注入位置の間のこの滞留時間は、30〜400ミリ秒、又は50〜350ミリ秒、又は75〜300ミリ秒、又は100〜250ミリ秒、又は150〜225ミリ秒、又は他の値であり得る。理論に拘束されるつもりはないが、第1の注入位置と第2の注入位置間の延長された滞留時間は、カーボンブラック1次粒子が融着を完成して低構造凝集体を形成するのに充分な時間を提供すると考えられる。以下に記載されるように、金属/メタロイド含有化合物の注入後、酸化物シェルが凝集体の外部が形成され、酸化物シェルの融着によりクラスターを形成する。
【0054】
金属/メタロイド含有化合物を含有する第2の原料部分は揮発化及び分解を受け、好ましくは反応ゾーン内で他の種と反応し、金属/メタロイド酸化物マントルなどの金属/メタロイド含有種マントルを形成する。反応器の第2移行ゾーン13における金属/メタロイド含有化合物の存在は、炭素相コアと金属/メタロイド含有種マントル(例えば金属/メタロイド酸化物マントル)を含む被覆凝集体をもたらす。金属/メタロイド含有種は、被覆凝集体のマントルの固有部分であり、超凝集体構造の一部である。
【0055】
反応器内、例えばゾーン13内又は以降の反応ゾーン内で形成される被覆凝集体は、反応流中に懸濁され、反応器ゾーン18及び19を通って下流に運ばれる。これらの反応器ゾーンは、反応流が急冷停止部60に達するのに充分な長さを有して、複数の被覆凝集体がクラスター形成して、反応器条件下で熱融着及び/又は縮合によって別々のより大きな複合凝集体粒子を形成して本発明の複合粒子を形成する。個々の被覆凝集体は、12〜250nm、又は17〜200nm、又は25〜125nm、又は他の値の平均サイズを有することができる。示されるように複合粒子は、35〜500nm、又は50〜400nm、又は75〜250nm、又は他の値の平均サイズを有することができる。
【0056】
第2の原料は、分解性及び/又は揮発性の金属/メタロイド含有化合物を含む。第2の原料は、好ましくはカーボンブラック生成原料を非常に限られた量しか含まないか、全く含まない。第2の原料は好ましくは、全カーボンブラック生成原料の1質量%未満、又は0〜0.1質量%、又は0〜0.5質量%、又は0〜0.05質量%。又は0〜0.01質量%を有する組成を有する。反応の第2段階におけるカーボンブラック生成原料の存在は、粒子上の所望の金属/メタロイド酸化物マントル形成を破壊又は妨害するか、又は他の望ましくない作用を有することがある。
【0057】
選択肢として、低構造炭素コアである凝集体コアとメタロイド含有種マントルとを含む本発明の複合粒子の被覆凝集体の部分は、多段反応器を使用して作製することができ、ここで反応器は、反応器中に異なる第1の原料及び第2の原料を導入するための2つの遠く離間したステージを含む。メタロイド含有種は、シリカ又は他のメタロイド酸化物であることができる。メタロイド含有種は、完全に又は基本的に完全に(>99質量%)メタロイド酸化物、例えばすべてシリカであることができる。
【0058】
第2の原料(例えば、位置33に導入することができる)中で使用できるメタロイド含有化合物は、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、又はこれらの任意の組み合わせの揮発性又は分解性化合物を含むことができる。有用なケイ素含有化合物は、カーボンブラック反応器温度で揮発又は分解可能な任意の化合物を含む。好適なケイ素含有化合物の非限定的な例としては、テトラエトキシオルトシリケート(TEOS)、シラン(例えば
アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、アリールアルキルアルコキシシラン)、シリコーン油、ポリシロキサン、環状ポリシロキサン(例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、及びヘキサメチルシクロトリシロキサン)、及びシラザン(例えばヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。 適切なシランの例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジエチルプロピルエトキシシラン、及びハロゲン−オルガノシラン、例えばテトラクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、 メチルエチルジクロロシラン、ジメチルエチルクロロシラン、及びジメチルエチルブロモシランが挙げられる。選択肢として、必ずしも揮発性ではない分解性ケイ素含有化合物を用いることができる。シリカ処理カーボンブラックを生成るために使用することができる他の好適なケイ素含有化合物には、タイプD3、D4、及びD5の環状ポリシロキサン、及びポリシロキサン又はシリコーン油が挙げられ、その多くは当該分野で公知である。これらの化合物の有用性は、これらの揮発性と分解性によって容易に決定することができる。低分子量のケイ素含有化合物が好ましい。有用なホウ素及びゲルマニウム含有化合物は、アルキルホウ酸塩、例えばホウ酸トリメチル又はホウ酸トリエチル;ボラン、例えばジボラン(B):及びゲルマン、例えばGeHであり得る。これらの化合物の有用性は、これらの揮発性と分解性によって容易に決定することができる。低分子量のケイ素含有化合物が好ましい。揮発性/分解性メタロイド含有化合物の流速は、被覆凝集体(及び複合粒子)中のメタロイド化合物の質量%を決定するであろう。被覆凝集体(及び複合粒子)中のケイ素又は他のメタロイドの質量パーセントは、被覆凝集体(及び複合粒子)の好ましくは約1%〜約30%、より好ましくは約2.5%〜約20%、最も好ましくは約4%〜約15質量%、又は約8%〜約12質量%の範囲である。経済的な観点から、許容される性能特性が達成されるなら、より少ないケイ素又は他のメタロイドの使用は、凝集体を作製するためのコストを低減できる程度に好ましい。
【0059】
一般的にメタロイド含有化合物は、カーボンブラック生成が充分進行した後、しかし反応流がメタロイド含有化合物の分解/揮発温度以下に冷却される前、又は急冷停止部に曝される前の時点で反応ゾーンに導入されるため、メタロイド含有種材料は、被覆凝集体の表面若しくはその近傍に主に存在するが、それでも炭素コアとして同じ凝集体の一部である。メタロイド含有種は、被覆凝集体上で高度に制御可能な表面被覆率で提供されることができ、従って本発明の複合粒子である。
【0060】
選択肢として第2の原料は、アルコールのような希釈剤を含むことができる。希釈剤は、好ましくは金属/メタロイド含有化合物と共に反応器中に注入されるため、揮発性及び/又は分解性であるべきである。希釈剤は使用される場合、反応器への注入の前に分解性及び/又は揮発性メタロイド含有化合物と予備混合され得るか、又はこれらの成分は別々に反応器中に同じ反応器位置で注入することができる。希釈剤は低級アルコール又はその混合物、例えばC2〜C4アルコール(例えば、イソプロパノール)などを含むことができる。希釈剤は液体及び/又は気体を含むことができ、好ましくはメタロイド含有化合物と混和性であるが、これは必要ではない。希釈剤のさらなる例は、水及び水性溶液である。希釈剤は任意の量で存在することができ、好ましくは第2の原料の質量流速を増加させる量、及び/又は第2の原料のほぼ導入ポイントで反応器の温度を下げる量で存在することができる。希釈剤はまた、メタロイド含有化合物を全く含有しない原料に含まれることもでき、あるいは別の段階で導入することができる。
【0061】
選択肢として低炭素コアである凝集体コアと金属含有種マントルとを含む複合粒子の被覆凝集体部分は、図2の多段反応器を使用して作製することができ、ここで反応器は、異なる第1及び第2の原料を反応器に導入するための2つの遠く離れたステージを含む。選択肢として金属含有種は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、又はこれらの任意の組合せを含む化合物を含む。金属含有種は、特に限定されるものではないが、金属酸化物を含む。金属含有種は、完全に又は基本的に完全に(>99質量%)金属酸化物であり得る。
【0062】
有用な金属含有化合物には、カーボンブラック反応器温度で揮発性又は分解性である任意の金属含有化合物が含まれる。例としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、及びモリブデンを含む揮発性又は分解性化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定されるものではないが、アルミニウムIII n−ブトキシド及びアルミニウムIII s−ブトキシドなどのブトキシド、ならびにAl IIIイソプロポキシドなどのプロポキシドが挙げられる。適切な亜鉛含有化合物の例としては、特に限定されるものではないが、ナフテン酸亜鉛及びオクタン酸亜鉛が挙げられる。他の例としては、特に限定されるものではないが、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、カルシウムプロポキシド、チタンイソプロポキシド、ナフテン酸コバルト、酸化スズジエチル、シュウ酸ネオジムなどが挙げられる。揮発性化合物の流速は、被覆凝集体(及び複合粒子)中の金属の質量パーセントを決定するであろう。被覆凝集体及び複合粒子中の元素金属(例えば、元素アルミニウム又は亜鉛)の質量パーセントは、一般に被覆凝集体又は複合粒子の約0.1%〜25質量%の範囲であるが、例えば、被覆凝集体又は複合粒子の最大50質量%、50質量%超、又は最大99質量%の所望のレベルに調整することができる。
【0063】
選択肢として、第2の原料のための第2の入口ポイントの上流及び/又は下流に配置し得る追加の入口ポイントにより、例えば複合粒子形成プロセスのゾーン18及び/又は19の境界を形成する壁の通路76を介して、又は反応器中の他の位置を介して、追加の原料を反応器に導入することができるが、追加の原料は、ゾーン12中の低構造カーボンブラックコア形成を、又はゾーン13、18、及び19中の下流被覆凝集体及び複合粒子形成を妨害も破壊もしてはならない。第1の原料と同様に、第2の原料の上流に導入される任意の追加の原料は、好ましくは金属/メタロイド酸化物形成化合物を全く又はほとんど含まない。第2の原料と同様に、第2の原料から下流に導入される任意の追加の原料は、カーボンブラック生成原料を全く又はほとんど含まず、例えば総カーボンブラック生成原料の1質量%未満、又は0〜0.1質量%、又は0〜0.5質量%、又は0〜0.05質量%、又は0〜0.01質量%、又は0質量%である。
【0064】
反応器のポイント62に位置する急冷停止部60において、水であってもよい急冷停止流体50の注入は、反応器内で複合粒子が形成された後の化学反応を停止させるために使用することができる。急冷停止ポイント62は、熱分解を停止させるための急冷停止位置を選択するための当該分野で公知の任意の方法により決定することができる。熱分解を停止させるための急冷停止位置を決定する1つの方法は、どの点でカーボンブラックの許容し得るスペクトロニック20値に達するかを決定することによる。Qはゾーン18の開示部分から急冷停止ポイント62までの距離であり、急冷停止部60の位置に従って変化する。
【0065】
複合粒子は反応器内で急冷停止された後、冷却されたガスと複合粒子は下流の任意の従来の冷却及び分離手段中に入り、こうして複合粒子と任意のカーボンブラック及び/又はシリカ(又は他の副産物)が回収される。ガス流からの複合粒子の分離は、沈殿器、サイクロン分離器、バグフィルターなどの従来の手段、又は当業者に公知の他の手段によって容易に達成することができる。複合粒子がガス流から分離された後、これらは場合によりペレット化工程に付される。一般に本発明の複合粒子は、非凝集形態、すなわちふわふわした形態、又は凝集形態のいずれでも使用することができる。複合粒子はペレットとして形成されてもよく、ここでペレットは、本明細書に記載されるようなコーティング及び装置に使用することができる。カーボンブラックをペレット化するための一般に知られている技法又は他の技術などを適用してペレットを作製することができる。
【0066】
選択肢として、複合粒子は選択肢としてペレット化の前又は後に改質されて、カップリング剤及び/又は有機基が表面に付着、又は表面が酸化され得る。複合粒子のカーボンブラック部分に向けられた改質は、低レベルのシリカ被覆率(例えば最大50〜60%の被覆率)を有する複合粒子にとってより効率的であろう。適切な酸化剤としては、特に限定されるものではないが、硝酸及びオゾンが挙げられる。酸化されたカーボンブラックと共に使用可能なカップリング剤は、本明細書に組み込まれた米国特許第6,057,387号明細書に記載されているようなカプリング剤を含む。本発明の複合粒子には有機基が結合していてもよい。有機基を複合粒子に結合させるための1つの方法は、少なくとも1種のジアゾニウム塩と複合粒子との反応を含み得る。1つ又は複数の有機基を複合粒子に結合させるために使用可能なジアゾニウム化学を使用する方法には、本明細書に組み込まれた米国特許第6,057,387号及び第9,267,048B2号明細書の、凝集体に有機基を結合させるために示された方法が挙げられる。
【0067】
あるいは又はさらに、複合粒子はシリカカップリング剤又は他のシリカ改質剤又は疎水化剤で処理してもよい。このような物質は複合粒子に共有結合又は非共有結合することができる。この物質は、気相又は液相で複合粒子に塗布することができる。例示的な親水化剤はシリコーン流体を含む。有用なシリコーン流体の非限定的な例には、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン共重合体、フルオロアルキルシロキサン共重合体、ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、フェニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、フェニルメチルシロキサン−ジフェニルするゾーン共重合体、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ポリアルキレンオキシド改質シリコーン、D3、D4、及びD5タイプの環状ポリシロキサンなどが含まれる。ヒドロキシル末端シロキサンなどの改質シリコーン流体も同様に使用することができる。
【0068】
あるいは又はさらに、シリカ改質剤は疎水化シランを含む。例えば疎水化シランは、式R4−nSiXの化合物であり得、ここでnは1〜3であり、各Rは独立して、水素、C〜C18アルキル基、C〜C18ハロアルキル基、及びC〜C14芳香族基からなる群から選択され、各Xは独立してC〜C18アルコキシ基又はハロである。
【0069】
あるいは又はさらに、シリカ改質剤はシラザンを含む。例えば疎水化剤は、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、環状シラザンなどであり得る。特定の実施態様においてシリカ改質剤は、米国特許出願公開第2010/0009280号明細書(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているもののうちの1つ又は2つ以上などの電荷改質剤を含む。あるいは又はさらに、米国特許出願公開第2011/0244382A1号明細書(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているジメチルシロキサン共重合体を使用して。複合粒子を処理してもよい。
【0070】
あるいは又はさらに、シリカカップリング剤を使用することができる。カップリング剤は、1つ又は2つ以上のシランカップリング剤、1つ又は2つ以上のジルコン酸塩カプリング剤、1つ又は2つ以上のチタン酸塩カップリング剤、1つ又は2つ以上のニトロカップリング剤、又はこれらの任意の組み合わせであり得るか又はこれらを含み得る。カップリング剤は、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(例えば、Evonik IndustriesからのSi 69、Struktol Companyからの Struktol SCA98)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(例えば、Evonik IndustriesからのSi 75及びSi 266、Struktol CompanyからのStruktol SCA985)、3−チオシアナトプロピル−トリエトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのSi 264)、ガンマ−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのVP Si 163、Struktol CompanyからのSCA989)、ガンマ−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのVP Si 263)、ジルコニウムジネオアルカノラトジ(3−メルカプト)プロピオナト−O、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ジアミノヘキサン、S−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンテイオエート(例えば、Momentive, Friendly, WVからのNXTカプセル剤)、及び/又は当業者に公知の他のシリカカップリング剤であり得るか又はこれらを含み得る。適切なカップリング剤は、複合粒子とポリマーマトリックスとの適合性を高め、基材へのコーティング接着性を向上させ、そしてフォトレジストの現像特性を改善することができる。あるいは又はさらに、ポリマーマトリックス中にカップリング剤を含めることは、フォトレジストと複合粒子及びガラス基板の両方との適合性を改善することができる。
【0071】
示されるように、本発明の複合粒子の異なる構造は、電子顕微鏡による試験によって観察及び確認することができる。図3A〜3D及び図4A〜4Cは、図2及び本明細書に記載の例に記載の方法と反応器構成を使用して作製された、作製され灰化されたままの異なるシリカ表面被覆率パーセントの本発明の複合粒子を示す。本発明の複合粒子は、炭素コアとシリカマントルとを有する被覆凝集体の超凝集体であった。具体的には図3A〜3Dは、80%シリカ表面被覆率を有する複合粒子のTEM画像であり、図3Aは作製されたままの物質を示し、図3B〜3Dは灰化された試料を様々な倍率で示す。図4A〜4Cは、様々なレベルのシリカ被覆率を有する灰化された複合粒子のTEM画像であり、図4Aは60%を示し、図4Bは80%を示し、図4Cは90%を示す。これらの画像に示されているように、粒子全体は、良好に形成された規則的な形をしている構成被覆凝集体の個別の凝集体である。
【0072】
図5A〜5B及び図6A〜6Bは 国際公開第2012/082484号に従って作製された、図5A(90%被覆率を有する試料Hから得られる)及び図6A図5Aのより高い倍率)の90%シリカ被覆率を有する高構造2相充填剤と、例A7について記載された本発明の方法を使用して作製された87%シリカ被覆率を有する超低炭素構造コア−シェル複合粒子と、本明細書の実施例セクションの表4に記載されたその形成物試料7との灰化試料を、ならべて比較したものである。図5B及び図6B図5Aのより高い倍率)に示された本発明の試料のほとんど球形マントル間で明瞭境界を観察することができ、図5A及び6Aに示された比較試料では、いずれも同じシリカ表面被覆率を有する試料から得られた灰化物質であるが、そのような明確な境界は欠如している。
【0073】
図7A〜7B及び図8A〜8Bは、比較の2重シリカ−炭素粒子のTEM画像を示し、ここで図7A及び8Aは、Cabot Corporationから入手可能なCRX4210シリカ−カーボンブラック2相充填剤から得られ、図7B及び8Bは、炭素領域を残したまま充填剤からシリカを除去した後(図7B及び図7B)でかつ充填剤からシリカを除去する前(図8A及び8B)の、国際公開第2014/0165151号に開示されている最も低構造の2相粒子(「試料P」)(OAN=70mL/g)から得られる。シリカは、TEMイメージングの前にHFで処理し徹底的に洗浄することによって、2相粒子から除去された。これらの比較凝集体の高度に凝集した構造及び形態の高度の不規則性が、これらの図において観察され得る。
【0074】
図9A〜9Dは、本発明の方法に従って作製された幾つかの異なるシリカ被覆率の複合粒子の炭素コアの、HF処理によりシリカを除去した後の低倍率及び高倍率のTEM画像を示す。図9A及び図9Dに示される試料は30%シリカ被覆率複合粒子から得られ、図9B及び9Eの試料は60%表面シリカ被覆率を有する複合粒子から得られ、図9C及び9Fの試料は80%の表面シリカ被覆率を有する複合粒子から得られた。これらの画像で観察され得るように、本発明の複合粒子中の炭素コアは、良好に形成された規則的な形状を保持していた。これは、カーボンブラックコアの元々の低構造がよく保存されていることを示している。
【0075】
図10Aは、超低構造炭素コアである凝集体コアと金属/メタロイド酸化物マントルとを有する被覆凝集体の「超凝集体」としての本発明の複合粒子を示し、図10Bは、HFに曝されたときの「超凝集体」構造の崩壊を示す。図10Cは、550℃で灰化することによって炭素を除去した際の、残留灰分の「超凝集体」構造の保存を示す。これらのTEM画像は、他の方法及び反応構成により作製された幾つかの比較2相充填剤物質と比較した、本発明の複合粒子の非常に異なる構造及び特性を示している。複合粒子の独特の構造は樹脂配合物の粘度を低下させ、表面平滑性が向上したコーティングの作製を可能にする。これにより、ピンホールや他の欠陥を招くことなく、コーティングを薄くすることができる。フォトレジストに使用されると、複合粒子はまた、フォトリソグラフィプロセス中に、より高い解像度の特徴又はより薄い壁の形成も可能にし得る。
【0076】
本発明はさらに、複合粒子、又はこれから形成されるペレット又は他の粒子を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる集団又は集合(例えば、組成物)を提供する。集団又は集合又は組成物は、任意の数の複合粒子を含み得る。この集団又は集合又は組成物は、約2000以上、又は約5000以上、又は約10,000以上、またはそれ以上、又は他の数の複合粒子を含み得る。集団又は集合又は組成物はまた、約1g以上、又は約10g以上、又は約100g以上、又は約1kg以上、又は他の量の複合粒子を含み得る。集団又は集合又は組成物は、それ自体で又は他の物質との組合せで、乾燥、湿潤、又は分散した形態であり得る。選択肢として集団又は集合又は組成物は、流動性の乾燥粒子形態であり得る。
【0077】
本発明の方法に従って作製された複合粒子は、充填剤−ポリマー組成物、インク、分散液、及びエラストマー化合物、ならびに他の組成物及び形成物に組み込むことができる。例えば、複合粒子は静電印刷又は他のインクジェット印刷方法用のインクに組み込むこともできる。一般にインクジェット印刷では、インクは、圧電素子やヒーターなどの影響を受けてノズルからインクが射出される。静電印刷では、電界が形成されて、プリントヘッドから記録基板に向かうインクの射出が引き起こされる。
【0078】
示されるように複合粒子は、LCD及び他のディスプレイにおける硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング又はフィルム、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び他の遮光要素において、又はインク、及び/又は、良好な光学的、誘電性、加工性、及び/又は他の特性と組み合わせた高い抵抗率が望まれる他の用途において、使用されるポリマー組成物中で充填剤として使用することができる。
【0079】
複合粒子充填剤−ポリマー組成物は、LCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素を作製するのに使用される高い電気抵抗率を有する、層、コーティング、又はフィルムの形態などの組成物を作製するのに使用することができる。ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素は、例えば複合粒子及びポリマーを含有するコーティングフィルムを用いて調製することができ、ここで複合粒子は、高温(例えば焼成工程)に曝されたとき良好な熱安定性を有する。複合粒子の良好な熱安定性(これは、LCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素の電気的及び色機能を提供する)は、特により攻撃的な焼成条件又は複数の温度サイクルが使用されるとき、より有用である。ブラックマトリックス層、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティング要素には粒子が装填されているため、焼成工程中のこれらの表面組成のわずかな変化でさえも抵抗性能の変動をもたらし得る。本出願の複合粒子を含有する充填剤−ポリマー組成物を使用することにより、LCD又は他のディスプレイにおける硬化性又は放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング若しくはフィルム、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素が提供される。本発明はまた、これらのブラックマトリックスを有するカラーフィルター若しくはアレイ、及びアレイ上にこれらのカラーフィルターを含む液晶ディスプレイに関する。LCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素を追加の加熱に曝すこれらの装置に他の成分を提供するのに使用される加工工程は、フォトレジスト中の複合粒子の結果としてより良く許容され得る。
【0080】
本出願のLCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は遮光要素は、液晶又は他のカラーディスプレイ装置の基板上の充填剤−ポリマー組成物のパターン化薄膜として提供され得る。LCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は遮光要素中に存在する充填剤−ポリマー組成物のパターン化薄膜は、例えば被覆性及び硬化性分散物の形態の充填剤−ポリマー組成物から形成することができる。組成物の被覆性及び硬化性分散物形態は、充填剤及びポリマーに加えて、揮発性液体溶媒などのビヒクルをさらに含むことができる。場合により、配合物中への充填剤の分散を容易にするために分散助剤が存在することができる。ポリマーは、熱、放射線、及び/又は触媒硬化性ポリマー、例えば硬化性アクリル系樹脂又は他の硬化性樹脂であり得る。
【0081】
本発明はさらに、ブラックマトリックスを含むアレイ上のカラーフィルター(COA)に関する。COAは、より良好な口径比及びより高いエネルギー効率を有するLCD又は他のディスプレイを作製するために使用することができる。COA設計は、薄膜トランジスター(TFT)上に直接コーティングすることができるブラックマトリックスを含む。COA−TFT構成では、LCDや他のディスプレイの容量性干渉及び信号遅延を防ぐため低誘電率と高電気抵抗率とを示すブラックマトリックス用の材料を必要とする。これらを考慮すると、ブラックマトリックスで使用するための良好な光学密度を与える低誘電率と高電気抵抗率粒子が必要であり、これは、充填剤−ポリマー組成物で使用される本発明の複合粒子により提供され得る。
【0082】
本発明はさらに、複合粒子充填剤、硬化性ポリマー、及びビヒクルを含有する硬化性コーティング組成物を基板上に塗布して、硬化性コーティングを形成し、硬化性コーティングを像様に硬化させて硬化コーティングを形成し、硬化されたコーティングを現像及び乾燥することにより、LCD又は他のディスプレイにおける硬化又は放射線若しくは熱硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素を作製する方法に関する。
【0083】
ブラックマトリックスを形成するために使用される記載の充填剤−ポリマー組成物の硬化性コーティング形態は、例えば揮発性ビヒクル、硬化性ポリマー、及び複合粒子を含むことができる。ビヒクルは水性ビヒクル又は非水性ビヒクルのいずれかであり得る。水性及び非水性液体ビヒクルの両方を使用することができるが、液体ビヒクルは好ましくはいくつかの用途のための非水性ビヒクルであり得る。例としては、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、酢酸エチルカルビトール、ジエチレングリコール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エステル、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、及びこれらの混合物を含む非水性ビヒクルが挙げられる。例えば水及び水溶性アルコールを含む水性溶媒も加えることができる。ビヒクルは室温で流体であり得、これは、コーティングされた組成物を高温で焼成することなどによって、コーティング後に充填剤−ポリマー組成物から除去するために選択的に揮発させることができる。
【0084】
硬化性ポリマーは、当該分野で公知の任意の樹脂であり得る。例えば樹脂は、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂であり得る。例えば樹脂は、エポキシビスフェノールA樹脂又はエポキシノボラック樹脂であり得る。樹脂は、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、又はゼラチンであり得る。これらの樹脂の組み合わせを使用してもよい。樹脂のさらなる例は本明細書で後述される。樹脂は、例えば赤外線又は紫外線などの任意の放射線源を含むか、又は熱硬化との組み合わせを含む、様々な公知の方法によって硬化することができるものである。硬化性コーティング組成物は感光性であり得る(すなわち、化学線への曝露及びその吸収などの放射線によって硬化され得る)。樹脂が放射線によって硬化可能であるとき、硬化性コーティング組成物はさらに光開始剤を含むことができ、これはそれぞれの顔料で光を吸収するとラジカルを発生する。この点に関して任意の有効量で感光性樹脂用の従来の光開始剤を使用することができる。またアクリレート、メタクリレート、エポキシド、又はスチレンなどのモノマーを含めることもできる。硬化性コーティング組成物は、最小限の追加の成分(添加剤及び/又は共溶媒)及び加工工程で形成することができる。しかしながら、分散助剤、界面活性剤、及び共溶媒のような添加剤が含まれていてもよい。例えば、エポキシビスフェノールA又はエポキシノボラックのような感光性樹脂を使用する場合、光開始剤も加えることができる。モノマー及び/又はオリゴマーを加えてもよい。
【0085】
硬化性コーティング組成物は、例えば高剪断混合を用いることを含む当業者に公知の任意の方法を用いて生成することができる。さらに組成物は、ミルベースなどの複合粒子充填剤の分散液を使用して調製することができる。本発明の硬化性コーティング組成物(又は分散液)を配合する際に、例えば充填剤としての複合粒子の総量は、硬化性コーティング組成物の総質量(すなわち、充填剤以外に溶媒及び任意の他の成分を含む)の、約1質量%〜約20質量%、又は約2質量%〜約18質量%、又は約3質量%〜約18質量%、又は約4質量%〜約15質量%、又は約5質量%〜約10質量%、又は他の装填量であり得る。乾燥基準(溶媒を含まない)では、複合粒子充填剤の総質量は、コーティング組成物又は分散液が硬化性コーティングを形成するために使用され、従って硬化され乾燥されるとき、得られる硬化/乾燥コーティング組成物が、硬化/乾燥コーティングの総質量を基準にして総複合粒子充填剤の約1質量%〜約65質量%、又は約2質量%〜約60質量%、又は約3質量%〜約55質量%、又は約4質量%〜約50質量%、又は約5質量%〜約45質量%、又は6質量%〜約40質量%、又は7質量%〜約35質量%、又は8質量%〜約30質量%、又は約9質量%〜約25質量%、又は約10質量%〜約20質量%、又は他の量であるようなものであり得る。硬化性コーティングを調製するために使用される充填剤とビヒクルとを有する混合液中のポリマー含量は、例えばポリマーのタイプに依存して変動し、例えば約5質量%〜約95質量%、又は10質量%〜約90質量%又は15質量%〜約80質量%、又は約20質量%〜約70質量%、又は約25質量%〜約60質量%、又は他の値で変動し得る。充填剤とポリマーとを有する混合物中のビヒクル(例えば溶媒)含量は、約0質量%〜約90質量%、又は約1質量%〜約95質量%、又は約5質量%〜約75質量%、又は約10質量%〜約50質量%、又は他の値で変動し得る。充填剤とポリマーとを含む硬化コーティング又はフィルム中のポリマー含量は、硬化コーティングの総質量に基づいて、例えば約99質量%〜約20質量%、又は約50質量%〜約20質量%、又は約95質量%〜約50質量%、又は約95質量%〜約60質量%、又は約95質量%〜約65質量%、又は約90質量%〜約70質量%、又は約85質量%〜約65質量%、又は約80質量%〜約60質量%のポリマー、又は他の量を含むことができる。
【0086】
充填剤−ポリマー組成物のための追加の成分には、米国特許出願第2011/0009551号及び第2012/0092598号明細書(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなものが含まれる。カーボンブラック及び/又は他の種類の黒色顔料又は黒色顔料とは異なる色の顔料さえも、ポリマー組成物中の複合粒子と組み合わせて使用することができる。黒色顔料及び着色顔料の代表例は、例えば上記の特許出願公開に提供されており、参照することができる。適切な黒色顔料には、アニリンブラック、ペリレンブラック、及びチタンブラックが含まれる。このようなカーボンブラック及び顔料は、例えばCabot Corporation、BASF Corporation、Engelhard Corporation 及び Sun Chemical Corporationなどを含む多くの供給業者から、粉末又はプレスケーキの形態で市販されている。選択肢として、低構造カーボンブラックを充填剤中の複合粒子と組み合わせて使用することができる。低構造カーボンブラックは、好ましくは30〜50cc/100gのOANを有することができる。有機ブラック又はチタンブラックと種々の実施態様に係る複合粒子との組み合わせでは、紫外線又は赤外線を透過するフィルムの能力を高めながら、有機ブラック又はチタンブラックよりも高い光学密度(可視光線について)を有するポリマーフィルムを提供すること可能にする。紫外線の吸収は、紫外線硬化性フィルムの重合又は架橋を妨げる可能性があるが、赤外線は多成分構造の異なる層を整列させるためにしばしば使用される。あるいは又はさらに、様々な実施態様による複合粒子と有機ブラック及び/又はチタンブラックなどのより低誘電率顔料との混合物はまた、ポリマーフィルムの誘電率を制御する際により大きな柔軟性を提供することができる。
【0087】
複合粒子と少なくとも1種のカーボンブラック(例えば、低構造カーボンブラック)及び/又は着色剤若しくは顔料混合物とをさらに組み合わせた充填剤−ポリマー組成物において、本発明の複合粒子は、充填剤−ポリマー組成物中に、約1質量%以上、約5質量%以上、約10質量%以上、約20質量%以上、約30質量%以上、約40質量%以上、約50質量%以上、約60質量%以上、約70質量%以上、約80質量%以上、約90質量%以上、約95質量%以上、又は100質量%以上、又は約1質量%〜約100質量%、又は約5質量%〜約95%、約10質量%〜約90質量%、約20質量%〜約80質量%、約30質量%〜約70質量%、約50質量%〜約100質量%の充填剤(存在する充填剤の質量%)を含むことができる。示されるように複合粒子は、充填剤−ポリマー組成物に使用される優勢な(≧50%)タイプ又は唯一のタイプであり得る。
【0088】
充填剤、ポリマー、ビヒクル、及び任意の他の添加剤の混合物を生成することができる高剪断混合装置は、当技術分野において公知であり、例えば、粉砕、衝撃、又は同様の衝突作用を提供することができる装置、例えば水平媒体ミル、アトライターなどの垂直媒体ミル、ボールミル、ハンマーミル、ピンディスクミル、流体エネルギーミル、ジェットミル、衝突ジェットミル、衝突ジェットミル、ローターステーター、ペレタイザー、ホモジナイザー、音波処理器、キャビテータなどが挙げられる。
【0089】
さらに充填剤−ポリマー組成物の形成に使用することができるポリマーに関して、ポリマーは、上記のもの以外の任意の1つ又は2つ以上の他のポリマーであり得る。例えば、さらに上記ポリマーについて、ポリマーは、代替的に又はさらに、充填剤と組み合わせて使用して、LCD又は他のディスプレイにおいて硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサーコーティング、又は他の遮光要素を形成することができる任意の他の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであり得る。好ましくは、ポリマーは、アクリルポリマー又はメタクリルポリマーであるが、ブラックマトリックスにおける意図された用途に大きく依存するであろう。
【0090】
充填剤−ポリマー組成物を形成するポリマーは予備形成された後、1つまたは2つ以上の充填剤と組合わされるか、又は1つ又は2つ以上の充填剤の存在下で1つ又は2つ以上のポリマーがインサイチュで形成され得る。乳化重合、懸濁重合、フリーラジカル重合などの任意の重合技術を使用して、1つ又は2つ以上のポリマーを形成することができる。
【0091】
一般に、物品を形成するために特に使用される任意の既知のポリマー又はポリマー組み合わせは、電気抵抗率、誘電率の制御に関して、及び制御された抵抗率及び誘電率を有する形成物の形成に関して、本発明から利益を得ることができる。
【0092】
充填剤及びポリマーは、ブレンド、混合、押し出しなどの従来の技術を使用して組み合わせることができる。
【0093】
充填剤に関して、使用される充填剤の少なくとも1つは本発明の複合粒子である。示されるように、複合粒子を形成するために一緒に融着される被覆凝集体は、低構造炭素コアであり得る凝集体コアと金属/メタロイド酸化物マントルとを有することができる。被覆凝集体のこれらの異なる凝集体コアとマントル材料は、充填剤として使用される複合粒子に、少なくとも一部は、大部分は、又は完全に持ち越され保持される(例えば、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%保持される)。
【0094】
選択肢として、本発明の複合粒子である充填剤は、上述したものと同じ金属/メタロイド酸化物被覆率と含量とを有し得る。充填剤中の金属/メタロイド酸化物の質量%は、600℃で空気の存在下で行われる熱重量分析によって見つけることができる。示されるように、充填剤の漏出した表面領域上に存在する金属/メタロイド酸化物の量は、表面積又は部分被覆率で最大100%であり得る。ブラックマトリックスに適した高抵抗率と光学密度は、示された範囲のシリカ又は他の金属/メタロイド酸化物被覆率(例えば、30%〜100%、又は30%〜70%、又はその他の表示範囲)を有する複合粒子を用いて達成することができる。酸化物表面被覆率の量を測定するために使用される試験は、“New Generation Carbon-Silica Dual Phase Filler Part I. Characterization And Application To Passenger Tire” と題する論文(Rubber Chemistry And Technology, Vol 75(2), p.247-263(2002))(これは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。選択肢として、金属/メタロイド酸化物ではなくても、充填剤の残量は一般的に炭素である。カーボンブラック原料及び/又はシリカ若しくは他の金属/メタロイド酸化物原料中に一般的に見られる微量の他の成分及び/又は不純物が、充填剤中に存在し得る。
【0095】
炭素コアである凝集体コアと凝集体コア上の表面被覆率を与えるシリカマントルとを有する被覆凝集体からなる複合粒子は、本明細書においてときに例示のために使用され、従って、複合粒子がシリカ及び/又は金属酸化物マントル材料に加えて又はその代わりに、他の金属酸化物又はメタロイド酸化物含有マントル材料を含み得ることは理解されるであろう。
【0096】
複合粒子は、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティング、例えばこれらの充填剤の粒子を装填されたポリマー材料及びそれから作製されたコーティングを用いて作製されたもので使用するための、高い表面電気抵抗率、低い誘電率、及び高い又は少なくとも充分な着色力を有することができる。
【0097】
本発明では、LCD又は他のディスプレイにおけるブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素中の、硬化性及び放射線若しくは熱硬化性フィルム及び硬化フィルムを形成するための充填剤−ポリマー組成物に使用される従来の又は任意の追加成分の任意の1つ又は2つ以上を、本明細書において、例えば通常使用される量で使用することができる。
【0098】
本発明のブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素を形成するために使用される硬化性コーティング組成物は、例えば上述した複合粒子充填剤、ポリマー、及びビヒクルを用いて調製して、硬化性フィルムを形成するコーティング中で使用することができる安定な分散液を提供することができる。場合により、複合粒子充填剤の凝集体レベルへの分散を促進するために、少なくとも1種の適切な分散助剤を配合物に加えることができる。これは、高い表面抵抗率及び/又は低い誘電率などの電気的特性、及び/又は高い光学密度、又はこれらの任意の組合せの改善されたバランスを含む、改善された全体的特性及び性能を有する、硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素の調製を可能にする。
【0099】
これらの形成物を含むLCD又は他のディスプレイにおける硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び他の遮光要素は、上記のような表面抵抗率、光学密度、及び/又は誘電率を有することができる。表面抵抗率は、絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗の尺度であり、当該分野で公知の種々の方法、例えばASTM試験法D257−93に定義された方法を使用して測定することができる。体積抵抗率はASTM D−257を用いて測定することができる。例えば、Keithley Application Note Number 314 “Volume and Surface Resistivity Measurements of Insulating Materials Using the Model 6517A Electrometer/High Resistivity Meter” は、表面抵抗率及び体積抵抗率の測定を詳細に記載している。光学密度(OD)は材料の不透明度の尺度であり、一般的には濃度計を用いて測定される。ODは、フィルムの厚さなどを含むいくつかの要因によって異なる。光学密度は、X-RITE 361T濃度計(X-RITE, Grand Rapids, MI, U.S.A.)を用いて測定することができる。本発明のコーティングは上記の電気抵抗率を有することができ、これは本発明の硬化性コーティング、硬化コーティング、又はこれらの両方の形態のコーティングに適用することができる。本発明のコーティングは、例えば表面抵抗率について示された範囲と同じ値又は他の値(例えば、1ミクロンのコーティング厚さ当たり)である体積抵抗率を有することができる。本発明のコーティングは、コーティングの用途に応じて、例えば1〜250ミクロン(μm)の厚さ、又は10〜100ミクロンの厚さ、又は20〜50ミクロンの厚さ、又は1〜4ミクロンの厚さ、又は他の厚さを含む、より大きなフィルム厚さで同様の電気特性(例えば抵抗率)を有し得る。誘電率は、1260A誘電体インターフェース(Solartron Analytical)を補完されたSolartron 1260Aインターフェース/ゲインフェーズアナライザ(FRA)を用いて測定することができる。ブラックマトリックス用途のためのコーティングの誘電率を測定するために容量計測が行われる目的の周波数は、100Hz〜1MHzの範囲であり得る。20未満のより特異的な誘電率値の選択は、トランジスタータイプLCD又は他のディスプレイ装置上のカラーフィルターで使用される場合、有機層がブラックマトリックス上に形成されるかどうかなどの要因を考慮し得る。例えば、そのような装置においてブラックマトリックス上に有機層が形成されていない場合には20未満の誘電率を使用することができ、一方ブラックマトリックス上に有機層が形成されている場合には、例えば装置の信号遅延やその他の問題を最小限に抑えるために、10未満になるように誘電率を選択することができる。これらの誘電率値は、本発明の硬化性コーティング、硬化コーティング、又は両方の形態のコーティングに適用することができる。 複合粒子の着色力(Tint)は、ASTM試験法D3265−07に従って測定することができる。灰分は、ASTM D1506に従って測定することができる。
【0100】
本発明はさらに、放射線又は熱被覆コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光要素の作製方法に関する。例えば及び図11に示すように、この方法は、UV硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングを作製するために使用することができるプロセスフロー(600)によって一般的に示される。このプロセスは、複合粒子、ポリマー、及びビヒクルをブレンドして硬化性充填剤−ポリマーコーティング組成物を形成する工程(601)と、次に硬化性充填剤−ポリマーコーティング組成物を基材に塗布してその上に硬化性コーティングを形成する工程(602)と、得られた硬化性コーティングを像様に硬化する工程(603)と、硬化したコーティングを現像及び乾燥して、UV硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングを形成する工程(604)とを含むことができる。工程601の代わりに、ビヒクル及び場合により分散助剤を含む複合粒子充填剤の分散液を最初に作製し、次に硬化性ポリマー及び他の添加剤と混合することができる。分散助剤は、溶媒又は水性媒体中での顔料/粒子の分散性を高めることができる添加剤である。ポリマーベースの分散助剤は通常有機溶媒中で使用される。これらの高分子分散助剤は一般的には、顔料表面と相互作用する顔料親和性基を有する。これらはまた、溶媒に可溶であり従って顔料粒子の立体安定化をもたらす調査ポリマーを含むこともできる。一般的に使用される分散助剤には、例えばBYK ChemieからのBYKJET 9131、Disperbyk(登録商標)-161、LPN21324、及びDisperbyk(登録商標)-163、Lubrizol LtdからのSolsperse(登録商標) 24000、 Solsperse(登録商標) 37500、及びSolsperse(登録商標) 35100、及びBASFからのEfka 4310分散剤が含まれる。硬化コーティング、放射線若しくは熱硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングは、上記及び例でさらに詳細に記載されている硬化性コーティング組成物又は他の充填剤−ポリマー組成物から調製することができる。例えば表面抵抗率及び光学密度は、ブラックマトリックス材料にとって重要な特性であり得る。本発明の硬化コーティング、放射線若しくは熱硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングは、例えば本発明の硬化性充填剤−ポリマーコーティング組成物から形成することができ、これは本発明の硬化コーティングを形成するために使用することができるため、硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングは、コーティングに関して上述した性能特性(表面抵抗率及び光学密度)を有することができる。記載した本発明のコーティング中の複合粒子の総量は、上述した値を含むことができる。1つ又は2つ以上のタイプの複合粒子充填剤は、硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングで使用される任意のポリマー組成物で使用し得る。
【0101】
本発明はさらに、本明細書に記載した硬化性コーティング、放射線若しくは熱硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、又は他の遮光コーティングを含む液晶ディスプレイ又は他のディスプレイに関する。本発明はさらに、本明細書に記載したブラックマトリックスと組み合わせて使用することができるカラーフィルターに関する。カラーフィルターは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、特に上述したようなブラックマトリックス成分の形成を組み込む方法を用いて形成することができる。この用途のために、ディスプレイ装置の画素に必要な色に対応する顔料を使用することができる。本発明はまた、基板上に形成された少なくとも1種の薄膜トランジスター(TFT)アレイと、そのアレイ上に直接配置された赤外線又は近赤外線放射透過層とを含むアレイ上のカラーフィルター(COA)に関し、前記放射線透過層は上記のようなブラックマトリックスを含むことができる。本発明はまた、本明細書に記載のようなアレイ上のカラーフィルターを含む液晶ディスプレイ又は他のディスプレイに関する。
【0102】
例えば図12Aを参照すると、ブラックマトリックス成分を組み込むアレイ上のカラーフィルター(COA)方法を用いて作製できる本発明による液晶ディスプレイ700が示されている。カラーフィルター721は、アクティブデバイスアレイ基板710(例えばTFTアレイ基板)上に形成される。カラーフィルター721は、ブラックマトリックス724とカラーフィルター薄膜726とを含む。一般的に言えば、カラーフィルター薄膜領域726の材料は、赤、青、又は緑色の樹脂とすることができる。カラーフィルター721と対向する透明絶縁基板720との間に液晶層730が配置される。層730に面する対向基板720の側に、パターン化電極715を設けることができる。例えば、当技術分野で公知のフォトリソグラフィ法、インクジェット印刷、又はこれらの技法の組み合わせを使用して、アクティブデバイス基板710の上にカラーフィルター721を形成することができる。例えば、ブラックマトリックス724は、パターン化ネガ型感光性裏樹脂層として形成することができ、カラーフィルター領域726は、パターン化感光性カラーフィルター層領域として及び/又はインクジェット印刷によって形成することができる。複合粒子の使用は、より高い分解特性を有するパターンを可能にし、LCDなどの装置の作製中のフォトリソグラフィ中の溶解時間を短縮することができる。アクティブデバイスアレイ基板710(例えば、TFTアレイ基板)の設計及び作製は、従来のもの、又は本明細書に開示のブラックマトリックス組成物を用いて作製したカラーフィルターと組み合わせて使用するのに適した任意の構成とすることができる。図示していない他の成分を、そのような装置内で及びそれと共に従来使用している液晶ディスプレイに含めることができる。TFTアレイ上に表面改質された有機黒色顔料と任意のカーボンブラックとを含有するブラックマトリックスを含むカラーフィルターの形成は、例えば米国特許第7,773,177B2号、7,439,090B2号、7,436,462B2号、及び6,692,983B1号明細書、及び米国特許出願第2007/0262312A1号及び2011/0005063A1号明細書(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されているようなプロセス工程及び配置を使用して提供され得る。
【0103】
例えば図12Bを参照すると、ブラックカラムスペーサー及びブラックマトリックスを用いて作製できる本発明による液晶ディスプレイ701が示されている。スペーサー740が各画素領域に形成され、各薄膜トランジスター750上に配置される。スペーサー740は、ブラックマトリックス760と同じ材料を含んでもよく、ブラックマトリックス760と同じプロセスを介して形成され得る。カラムスペーサーが黒色であるとき、これらはまたブラックカラムスペーサーとも呼ばれる。各スペーサー750及びブラックマトリックス760は同じ材料を含むことができるため、対抗する基板770は、薄膜トランジスター750が外部から認識されるのを防ぐための別個のブラックマトリックスを必要としないことがある。その結果、製造工程の数を減らすことができ、アレイ基板780と対向基板770との間の位置ずれを防止することができる。層790は液晶層を示し、795はカラーフィルター(例えば、赤(R)、青(B)、又は緑のカラーフィルター)、CHはコンタクトホール、PAは画素領域である。LCD701の他の成分には、米国特許出願第2011/0005063A1号明細書に示されているようなものを含み得る。
【0104】
本明細書に開示された様々な実施態様の複合粒子はまた、ブラックカラー及び高抵抗率を必要とする他の最終用途においても利益を与え得る。例えば複合粒子は電気絶縁材料に紫外線防御特性を与えることができる。ここれらはまた、インクジェット印刷、グラビア印刷、及び他の印刷方法用の非導電性ブラックインク用の顔料としても使用することができる。複合粒子は噴霧コーティングに使用することができ、そこでこれらはコーティングに対して化学的及び電気的抵抗性を付与することができる。これらはまた、エネルギー消費及び電気的ストレスグレーディング材料にも使用することができ、ここで金属/メタロイド酸化物被覆率の量は、最終形成物の誘電率を制御するように選択することができる。複合粒子はまた、電子写真プロセスへの干渉を減らすために高い抵抗率が望まれる電子写真装置のロール、ベルト、及びドラムのような成分にも使用し得る。シリカマントルを有する複合粒子は、特に電子機器及びディスプレイ用途において、伝統的なヒュームドシリカ充填剤の代わりに又はそれと組み合わせて、接着剤及びシーラントに使用し得る。シリカマントルを有する複合粒子はまた、ガスケット及びベルトのようなシリコーン及びフルオロポリマーベースの物品に使用し得る。
【実施例】
【0105】
本発明は、本発明の例示であることを意図する以下の例によってさらに明らかになるであろう。
【0106】
例1
複合粒子は、上述した及び図2に示した反応器において、表2に記載の反応器形状及び表3に記載のプロセス条件を使用して調製した。天然ガスをバーナー燃料及び補助炭化水素の両方として使用した。酢酸カリウムの水溶液をアルカリ金属含有材料として使用し、カーボンブラックを生成原料と混合した後に反応器へ注入した。例A1〜A8において、シリコーン含有化合物(OMTS、オクタメチル−シクロテトラシロキサン、すなわちDow Corning Corporationにより「D4」として販売されている化合物)及びイソプロパノール希釈剤(いくつかの例において)が、カーボンブラック生成油原料の導入位置から5.0メートル下流の位置で反応器に導入し、補助炭化水素ガスとして使用した。表3に示される比較例C1では、D4を導入しなかった。逆浸透により精製した水で反応を急冷停止させた。液体(油)原料は、以下の表1に示す特性を有していた。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
表3中の略語及び見出しの説明:
* 原料及び補助炭化水素オリフィスは、図2に示すように、ポイント30の位置で反応器の周囲に、同じリングパターン(軸方向平面)で交互の順序で配置された。
** nmは標準立方メートルを表し、「標準」は、0℃で1気圧の圧力に補正されたガスの体積として定義される。
D4率:Dow Corning Corporation「D4」として販売されている化合物であるOMTS(すなわちオクタメチルシクロテトラシロキサン)の割合。
IPA率:イソプロパノールアルコールの導入割合。
【0111】
複合粒子及び比較カーボンブラックの特性決定
【0112】
例1で作製した複合粒子及びカーボンブラックの種々の特性を、本明細書の他の箇所に記載のように測定した。スペクトロニック20は、ASTM D1618−99に従って測定される。表4は、それぞれ例A1〜A8の形成物に対応する形成物試料1〜8番と低構造カーボンブラック(C1)の特性を示す。表4において、測定された灰分含有量は、質量基準で複合粒子に取り込まれるSiOの質量基準の量の測定値である。表4は、D4が注入されない参照条件(C1)と比較して、D4が注入されたとき(例A1〜A8)、総BET表面積(NSA)が比較的同様であるか又はわずかに低下することを示すが、ヨウ素は、SiOで覆われている粒子の外面で吸収されないため、ヨウ素価(I)ははるかに顕著に減少する。上記引用文献“New Generation Carbon-Silica Dual Phase Filler Part I. Characterization And Application To Passenger Tire”, Rubber Chemistry And Technology, Vol 75(2), p.247-263(2002))に説明されているように、SiO被覆率は、ヨウ素価とBET表面積の差から計算される。表4が示すように、この独特の反応器構成とプロセス条件を使用することにより、小さい表面積及び大きいシリカ被覆率を有する複合粒子が作製された。
【0113】
【表4】
【0114】
表5は、それぞれ例A1、A2、及びA6の試料1、2、及び6のHF処理後に回収された炭素相についてのTEM分析による「構造」を示す。参考として、HF処理前の試料6のTEM構造は0.70であった。HF処理後に回収された炭素相のシリカ含有量は<1%であった。
【0115】
【表5】
【0116】
例A2に従って作製した複合粒子のHF処理後に回収された炭素相のOAN分析は30mL/100gであった。HF処理後に回収された炭素相のケイ素含有量は113質量ppmであった。OAN値は、例1に記載したように作製された比較カーボンブラックC1のそれに匹敵する。
【0117】
図13は、例1〜8に従って作製された複合粒子形成物(◆)のシリカ量●に関するシリカ被覆率(%)を示す。データ点(▲)は、下記の比較例1からのCE2、CE3、CE4、及びCE5についてのシリカ被覆率を示す。
【0118】
図14は、シリカ量に関する例A1〜A8の最終形成物(試料1〜8)のOANを示す。ケイ素含有原料の量を有する「超凝集体」の構造の制御は、カーボンブラックのBET表面積当たりのSiO質量として示される。
【0119】
図15は、例A1及びA2の試料1及び2(▲)と、シリカを含まない(OAN=36)対照例C1(黒塗り□)と、市販のシリカ−カーボンブラック2相充填剤(Cabot Corporationから入手可能なCRX 4210充填剤)(◆)との粉末抵抗率(1g/cmでのオーム・cm)の比較を示す。本発明の複合粒子は、対照例及び市販の2相充填剤よりもシリカ被覆率当たりの粉末抵抗率が大きかった。さらに、複合粒子の100%未満のシリカ被覆率で、改良された抵抗率が達成された。
【0120】
図16は、空気中のTGA測定値(毎分5℃の温度勾配)に基づく試料の熱安定性の比較を示し、ここで「a」は、比較のための酸化カーボンブラック(Cabot Corporationから入手可能なRegal400カーボンブラック)、「b」はカーボンブラックC1、「c」は試料6の複合粒子である。本発明の複合粒子は、より高い温度に対して同様の質量を保持する能力により証明されるように、使用した条件パラメータ下ですべての比較形成物よりも良好な熱安定性を有していた。
【0121】
比較例1
図2に関しても記載され得る反応器で比較実験を行ったが、例A1〜A8の作製について例1で使用した反応器との主要な違いは、原料導入位置とD4の導入位置との間隔、すなわち距離G−1が、比較例でははるかに短いことであった。また、原料導入位置とD4導入位置の間のトンネルの直径(D−8)ははるかに小さかった。その結果、原料とD4注入の間の時間が大幅に短縮される。比較例で使用した詳細な反応器形状を表6に示す。液体(油)原料は例1で使用したものと同一であり、表1に示される。比較例の操作条件は表7に示される。
【0122】
【表6】
【0123】
2つの参照カーボンブラック(CE1及びCE2)をD4注入なしで作製し、シリカ−炭素複合粒子(CE3〜CE6)であることを意図した4つの材料を作製した。形成物CE1は初期反応器構成で調製し、形成物CE2及びCE3〜CE6は、水冷フェースプレートを含む最終構成を使用して作製した。比較例の運転条件は表7に要約される。
【0124】
【表7】
【0125】
比較例1で作製された複合粒子及びカーボンブラックの種々の特性を、本明細書の他の位置に記載されているように測定し、表8に要約した。
【表8】
【0126】
比較例1の反応器構成(表6)を使用すると、D4注入なしのカーボンブラック(CE1及びCE2)の特性は、例1のD4注入なしのカーボンブラック(C1)の特性と非常に類似していた。しかしながら、比較例1(CE3〜CE6)におけるSiOを生成するためのD4の添加効果は、例1(A1〜A8)とは大きく異なっていた。CE3〜CE6はA1〜A8よりも著しく小さい表面積を有していた。さらにCE3〜CE6の算出されたSiO被覆率は極めて低く、一方、A1〜A8の算出されたSiO被覆率は高かった。この傾向は図13においてより明確に示される。実際に、CE3〜CE6の算出されたSiO被覆率は、これらの粒子がSiOで被覆されておらず、その代わり粒子中にSiOが埋め込まれて含まれている可能性を示している。驚くべきことにこれは、高いSiO被覆率を有する低表面積シリカ−炭素複合粒子を得るには、例1に記載されているように第1と第2の注入位置の間に、より長い滞留時間、例えば30〜400msを必要とすることを示す。米国特許第6057387号明細書に開示されているものと同様の構成で(比較例1と同様に)D4を下流に添加しても、SiO 被覆複合粒子は得られない。特定の理論に拘束されるつもりはないが、低表面積及び低構造SiO 被覆複合粒子を作製するためには、カーボンブラックを生成する第1段階の温度は十分に低くなければならいが、先に開示した反応器構成は、SiO 生成材料(D4)が導入される前に、カーボンブラック生成反応が進行して所要の完了レベルに達するまでの充分な滞留時間を提供しないようである。低表面積カーボンブラックコアを作製するのに必要とされる低い反応器温度では、カーボンブラック反応の速度は著しく遅くなる。その結果、D4導入は反応中の混合液をさらに冷却し、表面積をさらに減少させ、SiOは表面を被覆するのではなく、粒子中に取り込まれてしまう。
【0127】
例2
本例は、例1の例A2に従って作製された複合粒子を含む分散液の調製を記載する。BYK-Chemieから入手可能なBYK LPN 21324(40%活性)及びBASFから入手可能なEfka(登録商標)4310 PX(50%活性)の2つの異なる分散剤を使用した。表9は、例A2による複合粒子を含む4つのミルベースの組成を要約する。特定量の分散剤をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、これを0.5mmガラスビーズ100gと共に20gの複合粒子と注意深く混合した。活性分散剤と複合粒子の質量比は、0.2(例B1及びB3)又は0.25(例B2及びB4)のいずれかであった。各ミルベース配合物をLAU分散機(モデルDAS200)中に4時間分散させた。得られた分散液をガラス媒体から濾過した。Brookfield DV-1+粘度計を10、20、50、及び100rpmで使用してCPE−40スピンドルを用いて粘度を測定し、粒径分布を、MicrotracのNanotrac NPA252機器を用いて評価した。
【0128】
【表9】
【0129】
図17及び図18は、4つすべての分散液についてのブルックフィールド粘度及び粒径分布を示す。結果は、ほぼニュートン分散が得られ、ブラックマトリックス用途のためのインク、コーティング、又はカーボンミルベースにおいて使用するための許容し得る粘度が確立されたことを示している。平均体積及びD95(累積分布における95%での粒子直径の値)として示される粒径データは、複合粒子が約150nmの平均体積及び約300nmのD95で適切に分散されたことを証明し、これはブラックマトリックスミルベースの一般的な要件に一致する。1週間の貯蔵期間後に、粘度及び粒径の測定を同じミルベース上で繰り返したが、有意な変化を示されず、従って適切な分散が確認された。
【0130】
例3
この例では、本出願の複合粒子の評価は、ミルベースの調製、レットダウン(let-down)、及びコーティング形成工程を含む標準的な方法を使用して行った。
【0131】
例1の例A2及びA6に従って作製された試料番号2及び6の複合粒子を試験のために選択した。
【0132】
試料番号2及び6の比較粒子を有するミルベースを、例B1の配合物及び上記例2の方法を使用して調製した。複合粒子のミルベース、フォトポリマー(MiWon Chemical, Koreaから入手可能なMiphoto MB2000)、光開始剤(BASFから入手可能なIrgacure(登録商標)Oxe02)、架橋剤(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、Aldrich)、及びPGMEA溶媒を用いて、黒色フォトレジスト配合物を調製した。黒色フォトレジストを作製するために、成分をまずPGMEA中に溶解して、PGMEA中30質量%のMiphoto MB2000フォトポリマー、PGMEA中10質量%のIrgacure(登録商標)Oxe02、及びPGMEA中20質量%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを作製した。複合粒子のミルベースをフォトポリマー、光開始剤、架橋剤、及びPGMEAの溶液と混合して、総%固形分約18質量%の黒色フォトレジスト100gを作製した。複合粒子ミルベースフォトポリマー溶液の質量比を変化させて、乾燥基準で60質量%、65質量%、70質量%、及び75質量%の複合粒子を有する配合物を作製した。例えば、54gの複合粒子ミルベースを、7gの30質量% Miphoto MB2000フォトポリマー溶液、9gの10質量%Oxe02溶液、9gの20質量%ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液、及び21gの追加のPGMEAと混合して、PGMEA中で60質量%のカーボン−シリカ複合粒子(乾燥基準)及び総固形分約18質量%を有する黒色フォトレジスト100gを作製した。超低構造カーボンブラックコアを有する複合粒子は、乾燥基準で最大70〜75質量%の粒子と配合することができ、こうして光学密度のような特性を劇的に高めることができる。
【0133】
すべての配合物を1分間超音波処理し、さらに30秒間ボルテックス混合した。2つの別々のフィルターを使用して0.7ミクロンのガラスフィルターを通して、10gアリコートをシリンジ濾過し、1ミクロン厚(乾燥)のコーティングを標的としてガラスウエハー上にスピンコートした、コーティングを5分間風乾し、90℃で2分間ソフトベークした。各ブラックマトリックスを、Newport UV露光装置(モデル97436)中で350ワットHgランプを使用して13.5秒間UV硬化させた。次に、特に明記しない限り、コーティングを220℃で1時間ハードベークした。 X-Rite 361T透過濃度計を使用して光学濃度を測定し、そしてKLA Tencor Alpha Step 500表面形状計を使用してフィルム厚を測定した。コーティングの表面抵抗率は、Keithley Model 6517 電位計/高抵抗率計を使用して測定した。
【0134】
この試験の結果は図19に示されており、低構造カーボンブラックコアを有する複合粒子が高い光学密度を提供することを証明している。試料2(◆)よりも高いレベルのシリカ表面被覆率を有する試料6(横向きの黒塗り三角)による粒子を有するコーティングはまた、約1016オーム/平方の優れた表面抵抗率を示した。図19のデータは、本発明の複合粒子が、コーティングが高性能の目標(ODと電気抵抗の両方)を達成することを可能にすることを示している。
【0135】
上述したように試料2及び6による複合粒子を用いて調製したブラックマトリックスコーティングの一部を280℃で1時間ハードベークし、これらの電気的性能を調べた。図20は、非常に高装填の複合粒子(四角:試料2、三角:試料6、塗りつぶし:220℃、中空:280℃)について、220℃及び280℃でハードベークしたコーティングの電気表面抵抗率を示す。図20は乾燥基準の複合粒子の装填率を示し、コーティングの残留固形分はポリマー固体により構成された。一般にポリマーマトリックス(例えば収縮)又は粒子(表面基の喪失、粒子移動度及び再配列の増加)中のわずかな温度誘発変化さえも、パーコレーション(粒子の結合性の増加)による電気的特性の劇的な変化を生じ得るため、炭素質粒子の高い装填量を有するコーティングにおける電気抵抗率の維持は非常に困難である。従って図20の結果はまた特に印象的であり、非常に高い複合粒子装填においてさえ、コーティングの電気的特性に著しい変化を示さなかった。したがって、本発明による複合粒子は、高温への曝露下でも高い光学密度、高い電気抵抗率、及び安定した電気抵抗性能を有するコーティングを可能にすることができる。
【0136】
例4
制御された雰囲気から各試料が水を吸着するときの各試料の質量増加を観察することによって、酸化カーボンブラック(Cabot CorporationからのRegal 400Rカーボンブラック)及び例C2及びC6に従って作製された複合粒子の水拡散圧力を測定した。試験において、試料の周りの雰囲気の相対湿度(RH)は0%(純粋な窒素)から約100%(水で飽和した窒素)に増加する。試料と大気が常に平衡状態にある場合、試料の水拡散圧力(ee)は次のように定義される:
【0137】
【数1】
【0138】
ここで、Rはガス定数、Tは温度、Aは試料の窒素表面積、Aは試料上の吸着された水の量(mol/gmに換算)、Pは大気中の水の分圧、そしてPは大気中の飽和蒸気圧である。実際には、表面上の水の平衡吸着は1つ又は(好ましくは)いくつかの別々の分圧で測定され、その積分値は曲線の下の面積によって推定される。
【0139】
分析前に、分析すべき100mgの材料を125℃のオーブン中で30分間乾燥させた。Surface Measurement Systems DVS1装置(SMS Instruments, Monarch Beach, Californiaにより供給される)中のインキュベーターが25℃で2時間安定であることを確認した後、試料カップを試料チャンバー及び参照チャンバーの両方に入れた。目標RHを0%に10分間設定してカップを乾燥させ、安定した質量ベースラインを確立した。静電気を放電させ、天びんを風袋引きした後、約8mgの試料を試料チャンバーのカップに加えた。試料チャンバーを密封した後、試料を0%RHに平衡化させた。平衡化後、試料の初期質量を記録した。次に窒素雰囲気の相対湿度を順次、約5、10、20、30、40、50、60、70、78、87、及び92%RHのレベルに上昇させ、系を各RHレベルで20分間平衡化させた。各湿度レベルで吸着された水の質量が記録され、そこから水拡散圧力を上記式によって計算した。
【0140】
酸化カーボンブラックの水拡散圧力は45〜50mJ/mで、一方複合粒子のそれはわずか26mJ/mであり、複合粒子がより低い水分吸着を示すことを示していた。閉じ込められた水は、ブラックマトリックス及びブラックカラムスペーサー材料の電気抵抗率及び誘電性能に影響を与え、また水分感受性ポリマー系の硬化を阻害し得る。すなわち酸化されたか又は酸性基及び他の親水性基を導入するために表面処理されたカーボンブラックとは異なり、複合粒子の使用は、遮光組成物において改善された製造性及び電気的性能を提供することができる。
【0141】
例5
本例において本出願の複合粒子の評価は、ミルベースの調製、レットダウン、及びコーティング形成工程を含む標準的な方法を用いて行った。複合粒子の性能を代替顔料と比較し、また代替顔料と組み合わせて評価した。
【0142】
例1の例A6に従って作製した複合粒子を試験のために選択した。またLumogen FK4280ペリレンブラック及びPaliotol Black L 0080アニリンブラック(いずれもBASF SEから)、ならびにAko-Kasei Co. Ltd.からのTi-lack D TM-Bチタンブラックも含まれた。
【0143】
アニリンブラック又はチタンブラックのいずれかを含むミルベースを、20gの顔料、12.5gのBYKJET 9131分散剤溶液(溶液中40%の活性物質)、及び67.5gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて調製した。ペリレンブラックを含むミルベースを、20gの顔料、20gのSolsperse 37500分散剤(溶液中40%の活性物質)、2gのSolsperse 12000S(100%の活性物質)、及び58gのPGMEAを用いて調製した。例A6に従って作製したシリカカーボン複合粒子を含むミルベースは、20gの複合粒子(14.6gのカーボンブラック及び5.4gのシリカを含有する)、5gのBYKJET 9131分散剤、及び75gのPGMEAを含んでいた。全ての成分を、等質量部の0.5mmガラスビーズとともに適切な大きさの金属塗料缶に入れた。LAU分散液を用いてミルベースを4時間分散させた。分散したミルベースを、ペイントストレーナーを用いて濾過してビーズの破片を除去した。
【0144】
フォトレジストインクを、以下の表10及び11の処方に従って調製し(全ての量は質量パーセントであるが、目標フィルム厚はミクロン単位で与えられる)、指定されるようにコーティング配合物において使用した。材料をガラスバイアルに量り入れ、均質性を確保するために30秒間ボルテックスし混合した。表10は代替顔料用のフォトレジスト配合物を示す:アニリン及びチタン黒色顔料を同じインク配合物を用いて配合した。表11は、例A6に従って作製された複合粒子及びBYKJET 9131分散剤を有するフォトレジストインク配合物を列挙する。明記したものを除いて、フォトポリマー溶液はMiwon Commercial Co., Ltd.からのMiphoto MB2000であった(製造業者から受け取ったままの状態で使用、PGMEA中31%固形分)。光開始剤は、BASF SEからのIrgacure Oxe02であり、PGMEA中の10質量%溶液として使用した。モノマーはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、Aldrich)であり、1ミクロンフィルムの調製にはPGMEA中の20質量%溶液として、そして3ミクロンフィルムにはPGMEA中の25%溶液として使用した。表10において、「乾燥フィルム中の顔料%」欄は、得られたフィルム中の顔料の目標量を示す。複合粒子の場合、これは粒子のカーボンブラック成分を含むがシリカは含まない。
【0145】
【表10】
【0146】
【表11】
【0147】
顔料ブレンドを有するフィルムを、適切な割合のフォトレジストインクを組み合わせることによって作製した。例えば代替顔料と例A6に従って作製された粒子の27%/3%ブレンドは、適切な顔料を有するインク#1又は5の90質量%と10質量%のインク#9とをブレンドすることにより得られた。試料6と代替顔料との15%/5%ブレンドは、75質量%のインク#10を適切な顔料を含有する25質量%のインク#2又は6とブレンドすることによって得られた。フォトレジストを作製するために、CEE200Xスピンコーターを用いて、直径4インチのEagle XGガラス又は1.5インチ×2インチのITOガラス上にフィルムを調製した。1μm及び3μmのフィルムを生じるように条件を選択した。次に、被覆されたガラスを90℃で2分間のソフトベーク(1ミクロンのフィルムの場合)又は100℃で5分間のソフトベーク(3ミクロンのフィルムの場合)に付して溶媒を除去し、次に必要ならばフィルムをUV硬化し、その後、特に別の指定がなければ、220℃で30分間焼成した。次に、表に記載されているようにフィルムを表12に列挙された特性について分析した。測定された光学密度は1ミクロンに標準化した。10Vでの電流は、フィルムが10V未満の電圧で絶縁破壊を受けているかどうかの指標であり、以下の表で、対数で報告されている。
【0148】
【表12】
【0149】
以下の表13に示した時間と温度でフィルムを焼成して安定性を評価した(すべてのフィルムは、Eagle XGガラスプレート上にMiphoto MB2000フォトレジストを用いて作製した)。「フィルム中の顔料装填量」の欄は、シリカ含有量ではなく、例A6に従って作製された粒子の炭素含有量のみを説明する。結果は、例A6に従って作製した複合粒子を用いて作製したフィルムが、高温(280℃)に長時間曝露した後でさえ、10V未満の電圧でその抵抗特性を保持し、絶縁破壊を避けていることを示す。
【0150】
【表13】
【0151】
例A6に従って作製された複合粒子を用いて作製されたフィルムの特性を、代替顔料を用いて作製されたフィルムの特性と比較した。「フィルム中の顔料装填量」の欄は、シリカ含有量ではなく、例A6に従って作製された粒子の炭素含有量のみを説明する。表14の結果(ITO上の3ミクロンの目標厚さを有するすべてのフィルムについて:空のスペースはデータが収集されなかったことを示す)は、本発明の実施態様による複合粒子を用いて調製したフィルムの光学密度及び誘電率が、代替顔料を用いて調製したフィルムのものより高いことを示す。
【0152】
【表14】
【0153】
例A6に従って作製された複合粒子と他の顔料とのブレンドを用いて作製したフィルム(全てMB2000フォトレジストを有する、ITO上3μm厚)の特性も評価した。「フィルム中の例A6顔料」の欄は、例A6粒子自体(これは粒子中にシリカの質量を含むであろう)の装填量ではなく、フィルム中の例A6粒子からの顔料の量を与える。表15の結果(空白のスペースはデータが収集されなかったことを示す)は、複合粒子を代替顔料と混合することは、代替顔料のみを含有するフィルム(すべてMB2000フォトレジストを有する、ITO上3μm厚)と比較して、フィルムの光学密度を増大させ、複合粒子のみを含むフィルムと比較して、フィルムの近赤外透過性を増大させることを示している。複合粒子を代替顔料と混合することはまた、複合粒子を含むフィルムと各代替粒子を含むフィルムの誘電率の中間の誘電率を有するフィルムを与えた。
【0154】
【表15】
【0155】
例6
本例では、本出願の複合粒子の評価は、ミルベースの調製、レットダウン、及びコーティング形成工程を含む標準的な方法を用いて行った。ミルベースは、例5のプロセスと配合物に従って例A2とA6に従って作製された粒子とを用いて調製した。さらにミルベースは、例5の方法を用いて、20gの複合粒子、15gのSolsperse 37500分散剤、及び65gのPGMEAを用いて調製した、フォトレジストと配合物は、例5に記載されたようにMiphoto MB2000 フォトレジストを用いて、表16の配合物を用いて調製した。例5の方法は、ITO上に3ミクロンの目標厚さを有するフィルムを調製するために使用した。誘電率と光学密度は表17に列記されている。このデータは、本発明の実施態様に従って作製された粒子が、種々の配合物中でその性能を保持していることを示す。
【0156】
【表16】
【0157】
【表17】
【0158】
例7
20質量%の粒子を有するミルベースを、例5に記載のように、BYKJET 9131分散剤と、1)例A2に従って作製された粒子と、2)例A6に従って作製された粒子と、3)国際公開第2012/082484号パンフレットに従って作製された粒子(45.1%のシリカ、BET=148.8m/g、OAN=123.6cc/100g、及び54%のシリカ被覆率を有する試料Dから得られる)とを使用して作製した。粘度は、Brookfield DV-IIIウルトラプログラマブルレオメーターを用いてCPE-40スピンドルを40rpmで使用して測定した。例A2及び例A6に従って作製された複合粒子を用いたミルベースの粘度は、それぞれ4.36及び4.57cPであった。より高度な構造のシリカ−カーボンハイブリッド粒子を有するミルベースは粘性が高過ぎて、これらの条件下で測定できなかった。
【0159】
本発明は、以下の態様/実施態様/特徴を任意の順序で及び/又は任意の組み合わせで含む。
1.複数のカーボンブラック凝集体を含むカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子であって、各カーボンブラック凝集体は、少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に被覆されて被覆凝集体を提供し、前記凝集体は互いに融着して、露出した外表面積を有する個々の複合粒子を形成し、ここで前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物は、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である、上記複合粒子。
2.前記カーボンブラック凝集体が、前記カーボンブラック凝集体の試料の電子顕微鏡画像に基づいて少なくとも0.8の円形度を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
3.前記被覆凝集体が、金属/メタロイド酸化物マントルを有し、前記被覆凝集体の灰化試料の電子顕微鏡画像に基づいて少なくとも0.8の円形度を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
4.前記カーボンブラック凝集体が、前記複合粒子のフッ化水素酸処理により1質量%未満の残留金属酸化物又はメタロイド酸化物コーティングを残した後に測定して、30〜50cc/100gのOANを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
5.60〜130cc/100g複合粒子のOANを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
6.2〜5のBET(m/g)/ヨウ素価(mg/g)の比率を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
7.前記被覆凝集体が、炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
8.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の質量に基づいて10〜30質量%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
9.前記カーボンブラック凝集体が、前記カーボンブラック凝集体の質量に基づいて、前記コーティングの金属酸化物又はメタロイド酸化物の0.1質量%未満を含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
10.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の露出した外表面積の50〜99表面積%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
11.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが、前記複合粒子の露出した外表面積の60〜80表面積%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
12.前記複合粒子の前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの全含有量の50〜99質量%がシェル物質である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
13.50〜90m/gのBETを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
14.1g/ccの粉末密度で2Ω・cmより大きい体積抵抗率を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
15.1g/ccの粉末密度で10Ω・cmまたはそれ以上の体積抵抗率を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
16.前記被覆凝集体が1〜100nmの平均サイズを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
17.5〜500nmの平均サイズを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
18.75〜100の着色強度を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
19.空気中で5℃/分の温度勾配で110℃から450℃の温度に付されたとき、1質量%未満の加熱減量を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
20.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせがメタロイド酸化物であり、前記メタロイドがケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、又はこれらの任意の組み合わせである、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
21.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせがシリカである、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
22.前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせが金属酸化物であり、前記金属がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、又はこれらの任意の組み合わせである、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の前記複合粒子。
23.例えば、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を作製する方法であって、
予備加熱した空気流に燃料を反応させることにより燃焼ガスの流れを形成する工程と、
第1の原料を、燃焼ガス流の周りに画定される第1のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入して反応流を形成し、前記反応流中の第1の原料の熱分解を開始させる工程であって、前記第1の原料はカーボンブラック生成原料を含む工程と、
補助炭化水素を、燃焼ガス流の周りに画定される第2のリングパターンで配置された所定数のポイントで燃焼ガス流中へ導入する工程であって、前記第1及び第2のリングパターンは同じ位置又は異なる位置に存在してもよい工程と、
燃焼ガス流又は反応流又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つに、少なくとも1つのIA族元素又はIIA族元素又はこれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの物質を追加的に導入する工程と、
前記反応流中でカーボンブラック凝集体を形成させ、こうして反応流中に懸濁されたカーボンブラック凝集体を形成する工程であって、前記カーボンブラック凝集体は外表面を有する工程と、
金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む第2の原料を、前記カーボンブラック凝集体が懸濁された反応流中に導入する工程であって、前記反応流は、前記少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せを分解するのに充分な温度を有し、前記分解された少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組合せは、前記カーボンブラック凝集体の外表面の少なくとも一部の周りで、金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せを含むシェルを形成して、少なくとも部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を形成する工程と、
前記少なくとも1つの部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体を互いに融着させて複合粒子を形成した後、熱分解を急冷停止させる工程であって、前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せは、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である上記工程と、を含む上記方法。
24.燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了する第1の注入位置から下流に充分な距離である前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法であって、前記反応流は、第2の注入位置の第2の平均反応温度より高い第1の注入位置の第1の平均反応温度を有し、前記第2の平均反応温度は、前記少なくとも1種の金属含有化合物又はメタロイド含有化合物又はこれらの任意の組み合わせの分解に充分である方法。
25.燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了する第1の注入位置から下流に150cm又はそれ以上である前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法。
26.第1の注入位置で燃焼ガス流への第1の原料の導入が完了した後の少なくとも30ミリ秒後に起きる、前記反応器中の第2の注入位置での前記第2の原料の前記反応流中への導入をさらに含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法であって、この滞留時間は、第1の注入位置後の流れの総ガス体積と第1の注入位置と第2の注入位置の間の反応器の体積とにより画定される方法。
27.第2の原料は少なくとも一種のケイ素含有化合物から本質的になる、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法。
28.第2の原料は1種のケイ素含有化合物又は複数のケイ素含有化合物からなる、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法。
29.前記被覆凝集体をフッ化水素酸処理して1質量%未満の残留金属酸化物又はメタロイド酸化物コーティングを残した後に測定すると、反応流中に懸濁された前記カーボンブラック凝集体は30〜50cc/100gのOANを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法。
30.前記少なくとも部分的に被覆されたカーボンブラック凝集体は炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様の方法。
31.少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の充填剤とを含むポリマー組成物を含むコーティングであって、前記少なくとも1種の充填剤は、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含む上記コーティング。
32.前記コーティングは約1ミクロンの厚さで測定すると1又はそれ以上の光学密度を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
33.前記コーティングは、10〜1016オーム/平方の表面抵抗率を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
34.前記充填剤は、空気中で1分当たり5℃の温度勾配で110℃から450℃の温度に付されたとき、1質量%未満の減量を有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
35.金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つが、前記複合粒子の質量に基づいて10〜30質量%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
36.前記被覆凝集体が炭素コアと金属/メタロイド酸化物含有シェルとを含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
37.前記金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つが、前記複合粒子の露出した外表面積の50〜99表面積%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
38.前記金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つが、前記複合粒子の露出した外表面積の60〜80表面積%である、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
39.前記複合粒子が60〜130cc/100g複合粒子のOANを有する、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
40.前記コーティングの総質量に基づいて1質量%の充填剤装填〜65質量%の充填剤装填を含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
41.前記充填剤が、単相カーボンブラック、チタンブラック、又は有機ブラック、例えばアニリンブラック又はペリレンブラックをさらに含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
42.前記少なくとも1種のポリマーが硬化性ポリマーを含む、任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のコーティング。
43.任意の上記又は下記の態様/特徴/態様の硬化コーティングを含むブラックマトリックス。
44.任意の上記又は下記の態様/特徴/態様の硬化コーティングを含むブラックカラムスペーサー。
45.任意の上記又は下記の態様/特徴/態様の硬化コーティングを含むLCD装置中の遮光コーティング要素。
46.任意の上記又は下記の態様/特徴/態様の充填剤−ポリマー組成物を含む、LCD中のコーティング、硬化性コーティング、硬化コーティング、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、及び遮光要素の1つ又は2つ以上を含む形成物。
47.任意の上記又は下記の態様/特徴/態様の硬化コーティングを含む液晶ディスプレイ。
48.少なくとも1種の水性又は非水性担体、少なくとも1種のポリマー又は樹脂、及び任意の上記又は下記の実施態様/特徴/態様のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含むインク。
49.硬化コーティングの作製方法であって:
(i)少なくとも1種のポリマーを少なくとも1種の液体充填剤及び場合によりビヒクルと組合せて、硬化性充填剤−ポリマー組成物を提供する工程であって、前記充填剤が任意の上記又は下記の態様/特徴/態様のカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子を含む工程と、
(ii)前記硬化性充填剤−ポリマー組成物を基板上に塗布して硬化性コーティングを形成する工程と、
(iii)コーティングを像様に硬化させて硬化コーティングを形成する工程と、
(iv)硬化したコーティングを現像し乾燥する工程とを、含む上記方法。
【0160】
本発明は、文章及び/又は段落に記載されているように、上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施態様の任意の組合せを含むことができる。本明細書中に開示された特徴の任意の組み合わせは本発明の一部と考えられ、そして組み合わせ可能な特徴に関して限定は意図されない。
【0161】
本出願人は、本開示において全ての引用文献の内容全体を具体的に取り込む。さらに、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好適な範囲、又は好適な上限値及び好適な下限値として与えられるとき、それは、範囲が別に開示されているかどうかに拘わらず、任意の上限又は好適な値、任意の下限又は好適な値の任意の対から生成されるすべての範囲を具体的に開示しているものと理解すべきである。ある範囲の数値が本明細書に記載されている場合、特に別の指定がなければ、その範囲は、それらの端点、ならびにその範囲内のすべての整数及び分数を含むことが意図されている。本発明の範囲が、範囲を定義するときに記載された具体的な値に限定されることは意図されていない。
【0162】
本発明の考慮と本明細書に開示された本発明の実施から、本発明の他の実施態様が当業者には明らかであろう。本明細書及び例は例示のみであって、本発明の真の範囲と精神は、以下の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2021年4月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンブラック凝集体を含むカーボンブラック−金属/メタロイド酸化物複合粒子であって、各カーボンブラック凝集体は、少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物又はこれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に被覆されて被覆凝集体を提供し、前記被覆凝集体は互いに融着して、露出した外表面積を有する個々の複合粒子を形成し、ここで前記少なくとも1種の金属酸化物又はメタロイド酸化物は、前記複合粒子の露出した外表面積の少なくとも30表面積%である、上記複合粒子。
【外国語明細書】
2021102778000001.pdf