(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-103158(P2021-103158A)
(43)【公開日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】車速パルス検出装置および車速パルス検出方法
(51)【国際特許分類】
G01P 3/481 20060101AFI20210618BHJP
【FI】
G01P3/481 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-235486(P2019-235486)
(22)【出願日】2019年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 学
(72)【発明者】
【氏名】東井 秀徳
(57)【要約】
【課題】複数の車種に対応して車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを適切に判別するできる車速パルス検出装置を提供する。
【解決手段】車速パルス検出装置は、車両の車速パルス信号に含まれる電圧値を複数取得する取得部と、取得された複数の電圧値に基づいて閾値を設定または変更する閾値設定部と、電圧値がハイレベルまたはローレベルの何れであるかを判定する電圧レベル判定部と、を備え、電圧レベル判定部は、閾値が設定または変更された後、設定または変更された閾値と電圧値とを比較し、電圧値が閾値よりも高い場合に電圧値がハイレベルであると判定し、電圧値が閾値よりも低い場合に電圧値がローレベルであると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速パルス信号に含まれる電圧値を複数取得する取得部と、
前記取得部によって取得された複数の前記電圧値に基づいて閾値を設定または変更する閾値設定部と、
前記電圧値がハイレベルまたはローレベルの何れであるかを判定する電圧レベル判定部と、を備え、
前記電圧レベル判定部は、前記閾値が設定または変更された後、前記閾値と前記電圧値とを比較し、前記電圧値が前記閾値よりも高い場合に前記電圧値がハイレベルであると判定し、前記電圧値が前記閾値よりも低い場合に前記電圧値がローレベルであると判定する、
ことを特徴とする車速パルス検出装置。
【請求項2】
前記取得部によって取得された複数の前記電圧値の平均値を算出する演算部を備え、
前記閾値設定部は、前記電圧値において、前記平均値より高い電圧値のなかで検出回数の最多の電圧値と、前記平均値より低い電圧値のなかで検出回数が最多の電圧値との間の値を前記閾値として設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車速パルス検出装置。
【請求項3】
前記値は、前記平均値より高い電圧値のなかで検出回数の最多の電圧値と、前記平均値より低い電圧値のなかで検出回数が最多の電圧値との中間値である、
ことを特徴とする請求項2に記載の車速パルス検出装置。
【請求項4】
前記演算部は、所定期間に取得された複数の前記電圧値の平均値を算出する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車速パルス検出装置。
【請求項5】
前記演算部は、所定数だけ取得された複数の前記電圧値の平均値を算出する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車速パルス検出装置。
【請求項6】
前記閾値設定部は、所定条件に応じて、前記取得部によって新たに取得された複数の前記電圧値に基づく新たな閾値で前記閾値を変更する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車速パルス検出装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記車両の走行中に前記電圧値を取得し、前記車両の停車中には前記電圧値を取得しない、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車速パルス検出装置。
【請求項8】
車速パルス検出装置が行う車速パルス検出方法であって、
車速パルス検出装置が、
車両の車速パルス信号に含まれる電圧値を複数取得し、
取得された複数の前記電圧値に基づいて閾値を設定または変更し、
前記閾値が設定または変更された後、前記閾値と前記電圧値とを比較し、前記電圧値が前記閾値よりも高い場合に前記電圧値がハイレベルであると判定し、前記電圧値が前記閾値よりも低い場合に前記電圧値がローレベルであると判定する、
ことを特徴とする車速パルス検出方法。
【請求項9】
車速パルス検出装置が、
取得された複数の前記電圧値の平均値を算出し、
前記電圧値において、前記平均値より高い電圧値のなかで検出回数の最多の電圧値と、前記平均値より低い電圧値のなかで検出回数が最多の電圧値との間の値を前記閾値として設定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の車速パルス検出方法。
【請求項10】
前記値は、前記平均値より高い電圧値のなかで検出回数の最多の電圧値と、前記平均値より低い電圧値のなかで検出回数が最多の電圧値との中間値である、
ことを特徴とする請求項9に記載の車速パルス検出方法。
【請求項11】
車速パルス検出装置が、
所定期間に取得された複数の前記電圧値の平均値を算出する、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の車速パルス検出方法。
【請求項12】
車速パルス検出装置が、
所定数だけ取得された複数の前記電圧値の平均値を算出する、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の車速パルス検出方法。
【請求項13】
車速パルス検出装置が、
所定条件に応じて、新たに取得された複数の前記電圧値に基づく新たな閾値で前記閾値を変更する、
ことを特徴とする請求項8〜12の何れか1項に記載の車速パルス検出方法。
【請求項14】
車速パルス検出装置が、
前記車両の走行中に前記電圧値を取得し、前記車両の停車中には前記電圧値を取得しない、
ことを特徴とする請求項8〜13の何れか1項に記載の車速パルス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速パルス検出装置および車速パルス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用ナビゲーション装置などの車載機器には、車速や移動距離を検出するための車速パルス検出装置が組み込まれている。例えば特許文献1には、車両の車速センサから出力された車速信号が示す電圧値が閾値と比較され、電圧値と閾値の大小関係に基づいて車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルが判別されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−094029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルは、車種によってさまざまである。よって、車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを適切に判別するために、車種に応じた閾値を、車速パルス検出装置に予め設定しておくことになる。
【0005】
しかし、搭載される車種が前もって判明している専用の車速パルス検出装置の場合には車種に応じた適切な閾値を予め設定しておくことができるが、搭載される車種が前もって判明していない汎用の車速パルス検出装置の場合には、車種によっては予め設定した閾値が適切でなく、車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを判別できないことがある。このように、1つの車速パルス検出装置で、複数の車種に対応して車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを適切に判別することは困難である。
【0006】
なお、汎用の車速パルス検出装置の場合、車速パルス検出のための回路を複数用意し、適切な閾値が設定されている回路を選択し切り替えて用いる機種も実際に存在しているが、コストと利便性の面で不利である。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、複数の車種に対応して車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを適切に判別できる車速パルス検出装置および車速パルス検出方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明においては、一態様において、車速パルス検出装置は、車両の車速パルス信号に含まれる電圧値を複数取得する取得部と、前記取得部によって取得された複数の前記電圧値に基づいて閾値を設定または変更する閾値設定部と、前記電圧値がハイレベルまたはローレベルの何れであるかを判定する電圧レベル判定部と、を備え、前記電圧レベル判定部は、前記閾値が設定または変更された後、前記閾値と前記電圧値とを比較し、前記電圧値が前記閾値よりも高い場合に前記電圧値がハイレベルであると判定し、前記電圧値が前記閾値よりも低い場合に前記電圧値がローレベルであると判定するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、複数の車種に対応して車速信号のパルスのハイレベルおよびローレベルを適切に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る車速パルス検出装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る車速パルス検出装置における各矩形波を説明するための図である。
【
図3】実施形態に係る車速パルス検出閾値変更処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】車速パルス検出閾値算出の処理例1を説明するための図である。
【
図5】車速パルス検出閾値算出の処理例2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、各実施形態もしくは変形例の一部または全部を矛盾なく組合せた形態も、本発明の開示に含まれる。以下では、本発明に関連する構成および処理のみを説明し、その他の構成および処理の説明を省略する場合がある。また、以下では、同一もしくは類似の構成および処理には同一符号を付与して重複説明を省略し、また、後出の実施形態において既出の実施形態と同一もしくは類似の構成および処理の重複説明を省略する場合がある。
【0012】
[実施形態]
<車速パルス検出装置1の構成>
先ず
図1を参照して、実施形態に係る車速パルス検出装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る車速パルス検出装置1の構成の一例を示す図である。本実施形態では、車速パルス検出装置1は、カーナビゲーション装置をはじめとする車載システムに搭載されるとするが、これに限らず、車両の車速センサから取得した車速パルス信号に基づいて車速等を検出する車載システムであれば、何れでもよい。
【0013】
図1に示すように、車速パルス検出装置1は、マイクロコンピュータ10、レベル変換器20、コンパレータ・波形整形器30、およびGPS(Global Positioning System)受信機40を有する。
【0014】
レベル変換器20は、車両に取付けられた車速センサ(不図示)から入力された車速パルス信号の矩形波V(SPH)-V(SPL)を、回路保護のためにレベルシフトする。レベル変換器20によってレベルシフトされた後の矩形波V(LSH)-V(LSL)は、マイクロコンピュータ10およびコンパレータ・波形整形器30へ入力される。
【0015】
コンパレータ・波形整形器30は、レベル変換器20から入力された矩形波V(LSH)-V(LSL)を、マイクロコンピュータ10から設定された閾値Vrefとの比較により、矩形波VDD-GNDへ変換する。コンパレータ・波形整形器30による変換後の矩形波VDD-GNDは、マイクロコンピュータ10のパルス入力部(不図示)へ入力される。コンパレータ・波形整形器30は、電圧レベル判定部の一例である。コンパレータ・波形整形器30は、マイクロコンピュータ10が有する機能部として構成されてもよく、この場合、AD変換部11によってアナログ信号からデジタル信号へ変換され取得された矩形波V(LSH)-V(LSL)のハイレベルおよびローレベルが判定される。
【0016】
マイクロコンピュータ10は、AD(Analog to Digital)変換部11、取得部12、演算部13、閾値設定部14、およびDA(Digital to Analog)変換部15を有する。マイクロコンピュータ10は、プログラムが実行されることで各機能部が実現されるが、マイクロコンピュータに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路や、FPGA(Field Programmable Gate Array)をはじめとするPLD(Programmable Logic Device)であってもよい。
【0017】
AD変換部11は、例えば学習走行モード中において、レベル変換器20から出力された監視対象の矩形波V(LSH)-V(LSL)を、アナログ信号からデジタル信号へ変換する。取得部12は、サンプリングタイミングごとに、GPS受信機40からの位置情報に基づいて車両が走行中か否かを判定し、走行中である場合にAD変換部11から出力された矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値を取得し、サンプリングタイミングに対応付けて蓄積する。取得部12は、車両が停車中である場合には、AD変換部11から出力された矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値の取得を行わない。
【0018】
なお、AD変換部11と取得部12は、統合されていてもよい。また、車両が走行中か否かを判定するための情報は、GPS受信機40からの位置情報に限らず、車速パルス検出装置1が検出する車速パルスに依存せず車速や車両移動を検出できる情報であれば、何れの情報であってもよい。
【0019】
演算部13は、取得部12によって所定のサンプリングタイミングで矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値が所定のサンプリング回数だけサンプリングされた場合に、取得および蓄積された複数の電圧値の平均値を算出する。複数の電圧値の平均値が算出されると、電圧値の蓄積はリセットされる。なお、演算部13は、サンプリング回数に限らず、矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値が所定期間にわたってサンプリングされた場合に、1回のサンプリング期間においてサンプリングされた複数の電圧値の平均を算出するとしてもよい。
【0020】
閾値設定部14は、取得部12によって蓄積された各電圧値の検出回数をそれぞれ集計する。そして、閾値設定部14は、演算部13によって算出された電圧値の平均値と比較して、平均値以上の電圧値のうちで最も検出回数が多い電圧値をハイレベル(以下Hレベル)とし、平均値未満の電圧値のうちで最も検出回数が多い電圧値をローレベル(以下Lレベル)とし、HレベルとLレベルの間の値を算出する。
【0021】
このHレベルとLレベルの間の値は、例えば、矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値のレベル変動があったとしてもそのHレベルおよびLレベルが検出できるように、HレベルおよびLレベルに対して十分なマージンを持った範囲内の値である。また、閾値設定部14は、HレベルとLレベルの間の値として、HレベルとLレベルの中間値を算出することで、最適な閾値Vrefを設定できる。閾値設定部14は、算出したHレベルとLレベルの間の値を、コンパレータ・波形整形器30に設定する閾値Vrefに設定する。
【0022】
DA変換部15は、閾値設定部14によって設定された閾値Vrefを、DA変換してコンパレータ・波形整形器30へ設定する。コンパレータ・波形整形器30は、DA変換部15からの入力によって閾値Vrefが初期値から変更された後、レベル変換器20から入力された矩形波V(LSH)-V(LSL)の閾値Vref以上の電圧値をHレベルと判定し、閾値Vref未満の電圧値をLレベルと判定し、HレベルおよびLレベルの矩形波VDD-GDDを出力する。
【0023】
なお、本実施形態では、コンパレータ・波形整形器30には閾値Vrefの初期値が設定されており、DA変換部15からの入力によって閾値Vrefが初期値から変更されるとするが、これに限らず、コンパレータ・波形整形器30には閾値Vrefの初期値が設定されておらず、DA変換部15からの入力によってはじめて閾値Vrefが設定されるとしてもよい。
【0024】
<車速パルス検出装置1における各矩形波>
次に
図2を参照して、実施形態に係る車速パルス検出装置1における各矩形波について説明する。
図2は、実施形態に係る車速パルス検出装置1における各矩形波を説明するための図である。矩形波V(SPH)-V(SPL)(
図2の(a)参照)がレベル変換器20によってレベルシフトされた後の矩形波V(LSH)-V(LSL)(
図2の(b)参照)は、車種によっては、矩形波V(LSH)-V(LSL)のHレベルおよびLレベルを判別するために設定されている閾値Vref0(
図2(b)の破線参照)を跨がないケースがある。例えば、
図1(b)の破線の直線で示す閾値Vref0のように、矩形波V(LSH)-V(LSL)が閾値Vref0に対して常に高い電圧値を取るケースである。
【0025】
このように、従来技術では、閾値がVref0で固定値であり、矩形波V(LSH)-V(LSL)が閾値Vref0よりも常に高いレベルであると、コンパレータ・波形整形器30は、矩形波V(LSH)-V(LSL)の全てのパルスをHレベルと検出してしまう。このため、コンパレータ・波形整形器30は、マイクロコンピュータ10の電源電圧VDDで電圧レベル一定の信号を出力してしまい、正常に車速が検出されない。
【0026】
そこで本実施形態では、マイクロコンピュータ10は、入力された矩形波V(LSH)-V(LSL)を所定回数または所定期間だけサンプリングした電圧値に基づいて算出した閾値Vrefを、コンパレータ・波形整形器30へ設定する。コンパレータ・波形整形器30へ閾値Vref1を設定し、
図2(b)に示すように、閾値Vref0から、電圧レベルV(LSH)とV(LSL)の間の値である閾値Vref1(
図2(b)の実線の直線)へ閾値Vrefをシフトさせる。
【0027】
これにより、
図2(c)に示すように、コンパレータ・波形整形器30は、閾値Vref1に基づいて、矩形波V(LSH)-V(LSL)を、正常に車速が検出されるような矩形波VDD-GNDへ変換できる。
【0028】
なお、
図2(b)に示すように矩形波V(LSH)-V(LSL)が閾値Vref0を全く跨がない場合のほか、矩形波V(LSH)-V(LSL)が閾値Vref0を跨いでいたとしても閾値Vref0が電圧値V(LSH)またはV(LSL)の何れか一方へ偏っている場合も、閾値Vref0を適切な閾値Vref1へシフトできる。
【0029】
<車速パルス検出閾値変更処理>
次に
図3を参照して、実施形態に係る車速パルス検出閾値変更処理について説明する。
図3は、実施形態に係る車速パルス検出閾値変更処理の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る車速パルス検出閾値変更処理は、カーナビゲーション装置の学習走行モード中においてマイクロコンピュータ10によって実行される。なお、車速パルス検出閾値変更処理の開始は、カーナビゲーション装置の取り付け時の学習走行モード開始を契機とすることに限らず、カーナビゲーション装置が搭載される車両あるいは車種の変更時や、車両のシステム変更時、ユーザによる車速パルス検出閾値のリセット指示受け付け時などであってもよい。あるいは、車速パルス検出閾値変更処理は、車両のイグニションオンや一定時刻を契機として実行されてもよい。実施形態に係る車速パルス検出閾値変更処理では、所定条件に応じて、以下のように、新たに複数の電圧値を取得し、これらの複数の電圧値に基づいて新たに閾値を設定または変更する。
【0030】
図3に示すように、先ずステップS11では、取得部12は、GPS受信機40からの位置情報に基づいて、当該車両が走行中か否かを判定する。取得部12は、当該車両が走行中の場合(ステップS11:YES)にステップS12へ処理を移し、当該車両が停車中の場合(ステップS11:NO)にステップS11を繰り返す。
【0031】
次にステップS12では、取得部12は、所定のサンプリング周期で算出用データ(矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値)を取得開始または取得継続する。取得部12は、ステップS12の判定処理時に、取得停止中の場合には取得開始し、取得中の場合には取得継続する。
【0032】
次にステップS13では、取得部12は、GPS受信機40からの位置情報に基づいて、当該車両が走行中か否かを判定する。取得部12は、当該車両が走行中の場合(ステップS13:YES)にステップS14へ処理を移し、当該車両が停車中の場合(ステップS13:NO)にステップS15へ処理を移す。
【0033】
ステップS14では、取得部12は、算出用データ(矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値)の取得を一時停止する。次にステップS15では、取得部12は、算出用データが十分に取得されたか否かを判定する。算出用データが十分に取得されたとは、例えば、所定のサンプリングタイミングで矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値が所定回数だけまたは所定期間にわたってサンプリングされたことをいう。一定数の電圧値をサンプリングすることで、電圧値のノイズを排除できる。取得部12は、算出用データが十分に取得された場合(ステップS15:YES)にステップS16へ処理を移し、算出用データが十分に取得されていない場合(ステップS15:NO)にステップS11へ処理を戻す。
【0034】
次にステップS16では、演算部13は、ステップS12で取得された複数の算出用データ(矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値)の平均値を算出する。
【0035】
次にステップS17では、閾値設定部14は、Hレベルを算出する。具体的には、閾値設定部14は、ステップS12で取得された複数の電圧値のうちステップS16で算出された平均値以上の電圧値の中で、検出回数が最多の電圧値を「Hレベル」とする。
【0036】
次にステップS18では、閾値設定部14は、Lレベルを算出する。具体的には、閾値設定部14は、ステップS12で取得された複数の電圧値のうちステップS16で算出された平均値未満の電圧値の中で、検出回数が最多の電圧値を「Lレベル」とする。
【0037】
次にステップS19では、閾値設定部14は、ステップS17で算出された「Hレベル」およびステップS18で算出された「Lレベル」の中間値を、閾値Vrefとして算出する。このように算出された閾値Vrefは、DA変換部15にてアナログ変換されてコンパレータ・波形整形器30へ設定される。なお、ステップS19では、算出した中間値と、既にコンパレータ・波形整形器30に設定されている閾値Vrefとの差分が所定範囲内である場合には、コンパレータ・波形整形器30に対する閾値Vrefの変更を行わないとしてもよい。
【0038】
<車速パルス検出処理例>
次に
図4および
図5を参照して、車速パルス検出閾値算出の処理例を説明する。
図4は、車速パルス検出閾値算出の処理例1を説明するための図であり、
図5は、車速パルス検出閾値算出の処理例2を説明するための図である。
図4および
図5のグラフにおいて、横軸はサンプリングタイミングを示し、縦軸は矩形波V(LSH)-V(LSL)の電圧値を表す。
図4および
図5に示すサンプルは、1回の中間値算出のために取得された全ての算出用データを表す。
【0039】
図4は、ノイズがある矩形波V(LSH)-V(LSL)から中間値を算出する処理例1を示す。
図4に示す破線は、全サンプルの電圧値の平均値V10を表す。電圧値ごとにサンプリングタイミングにおける検出回数を集計すると、平均値V10以上では電圧値V11が13回で最多検出回数であり、平均値V10未満では電圧値V12が11回で最多検出回数である。よって、電圧値V11が「Hレベル」とされ、電圧値V12が「Lレベル」とされる。そして、「Hレベル」の電圧値V11と「Lレベル」の電圧値V12の中間値V13が、コンパレータ・波形整形器30に設定される閾値VrefとしてDA変換部15から出力される。
【0040】
図4に示す例では、平均値V10以上と平均値V10未満のそれぞれの領域で最多検出回数を算出することで、適切にHレベルおよびLレベルを算出できると共に、矩形波V(LSH)-V(LSL)に含まれるノイズを除外して、精度よく中間値を算出できる。
【0041】
図5は、HレベルとLレベルのデューティ比が1:1でない矩形波V(LSH)-V(LSL)から中間値を算出する処理例2を示す。
図5に示す破線は、全サンプルの電圧値の平均値V20を表す。電圧値ごとにサンプリングタイミングにおける検出回数を集計すると、平均値V20以上では電圧値V21が28回で最多検出回数であり、平均値V20未満では電圧値V22が12回で最多検出回数である。よって、電圧値V21が「Hレベル」とされ、電圧値V22が「Lレベル」とされる。そして、「Hレベル」の電圧値V21と「Lレベル」の電圧値V22の中間値V23が、コンパレータ・波形整形器30に設定される閾値VrefとしてDA変換部15から出力される。
【0042】
図5に示す例では、HレベルとLレベルのデューティ比が1:1でない矩形波V(LSH)-V(LSL)であっても、平均値V20以上と平均値V20未満のそれぞれの領域で最多検出回数を算出することで、適切にHレベルおよびLレベルを算出し、精度よく中間値を算出できる。
【0043】
以上の実施形態によれば、学習走行モード期間中や、車両変更時、車両のシステム変更時、車載システムのリセット時、常時監視などの所定条件を契機として、サンプリングにより新たに取得された車速パルス信号の複数の電圧値に基づいて、車両の車種の違いや個体差、車両の状態変化などを反映した閾値Vrefを自動的に設定できる。よって、車種が異なっても、車速パルス検出装置1を共通化でき、コストダウンを図ることができる。
【0044】
また、サンプリングにより取得された車速パルス信号の複数の電圧値において、これらの平均値より高い電圧値のなかで検出回数の最多の電圧値と、平均値より低い電圧値のなかで検出回数が最多の電圧値との間の値を閾値Vrefとして設定する。これにより、サンプリングされた電圧値のノイズ(異常値)を閾値の算出から除外でき、精度よく閾値Vrefを算出できる。また、電圧値のノイズ(異常値)を除外して閾値Vrefを算出することで、車両の実際のノイズ条件に沿った閾値Vrefに基づいて、ノイズの影響による車速パルス検出の誤作動を防止し車速検知の確実性をより高めることができる。
【0045】
また、車速パルス信号の複数の電圧値は、車両の走行中のみ取得され、車両の停車中には取得されないので、サンプリングされた電圧値の平均値の精度低下を低減し、より精度よく中間値および閾値Vrefを算出することができる。
【0046】
[他の実施形態]
なお、上述の実施形態では、
図3に示したように、全算出用データの平均値以上の最多検出回数の電圧値をHレベルとし、平均値未満の最多検出回数の電圧値をLレベルとしている。しかし、これに限らず、例えば、全算出用データのうちの最多検出回数の電圧値を第1の電圧レベルとし、この第1の電圧レベルに対して所定値以上の差がある算出用データのうちの最多検出回数の電圧値を第2の電圧レベルとし、第1の電圧レベルと第2の電圧レベルの間の値を閾値Vrefとして設定してもよい。このような他手法でも、全算出用データに基づいて閾値Vrefを算出することができる。
【0047】
なお、上記実施形態で説明した各構成要素は、各装置の構成の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて機能別に区分したものである。そのため、構成要素の区分方法やその名称によって、本願発明が限定されることはない。上記実施形態に係る各装置や機能部の構成および処理は、処理内容に応じて細分化したり統合したりすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1:車速パルス検出装置、10:マイクロコンピュータ、12:取得部、13:演算部、14:閾値設定部、30:コンパレータ・波形整形器