【解決手段】異方性導電フィルムは、フッ素樹脂と、フッ素樹脂に分散された半田粒子11とを有する。また、異方性導電フィルムには、必要に応じて、第1の面に第1のフィルム13が貼付され、第2の面に第2のフィルム14が貼付される。熱によりフッ素樹脂が溶融するとともに半田粒子11が電極間に挟持された状態で溶融し、接合される。これにより、高い光エネルギーに対して、優れた耐性が得られる。
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド共重合体である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
フッ素樹脂と、前記フッ素樹脂に分散された半田粒子とを有する異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、熱圧着により前記第1の電子部品の電極と前記第2の電子部品の電極とを接続させる接続構造体の製造方法。
フッ素樹脂と、前記フッ素樹脂に分散された半田粒子とを有する異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、リフロー炉により前記第1の電子部品の電極と前記第2の電子部品の電極とを接続させる接続構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電フィルム
2.接続構造体
3.接続構造体の製造方法
4.実施例
【0016】
<1.異方性導電フィルム>
図1は、本技術を適用させた異方性導電フィルムの一部を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、異方性導電フィルム10は、フッ素樹脂と、フッ素樹脂に分散された半田粒子11とを有する。また、異方性導電フィルム10には、必要に応じて、第1の面に第1のフィルム12が貼付され、第2の面に第2のフィルム13が貼付される。
【0017】
異方性導電フィルム10の厚さは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下、さらに好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0018】
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂は、異方性導電フィルムのバインダーの主成分であり、バインダー中に好ましくは80wt%以上含有し、より好ましくは90wt%以上含有し、さらに好ましくは95wt%以上含有する。フッ素樹脂は、熱可塑性であり、フッ素樹脂自体の接着力は小さいため、異方性導電フィルムの接着強度は半田粒子による金属接合により発現される。
【0019】
表1に、主な化学結合の結合エネルギーを光エネルギーに換算した値を示す。結合エネルギーE(kcal/mol)は、下記式を用いて光エネルギーλ(nm)に換算した。
E=1/4.2・N・h・c/λ
h:プランク定数(6.626×10
−27erg・sec)、c:光速度(2.998×10
10cm/sec)、λ:波長(nm)、N:アボガドロ定数(6.02×10
23/mol)
【0021】
上記光エネルギー式:E=hc/λによる計算では、青色LED(波長λ=460mm)=2.8eV、紫外線LED(波長λ=200〜300nm)=4.1〜6.2eVとなり、紫外線LEDの光エネルギーは、青色LEDに比べ約2〜3倍の強さとなる。
【0022】
これに対し、表1に示すように、フッ素樹脂が有するC−F結合は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が有するC−H結合、シリコーン樹脂が有するSi−O結合よりも、結合エネルギーが高く、理論的には248nmの紫外光まで耐えることができる。
【0023】
フッ素樹脂の溶融温度(融点)は、半田粒子の溶融温度(融点)よりも低いことが好ましい。これにより、フッ素樹脂が溶融し、半田粒子が第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に挟持された状態で接合することができるため、高い接合強度を得ることができる。
【0024】
フッ素樹脂の具体的な溶融温度は、好ましくは80℃以上220℃以下、より好ましくは90℃以上180℃以下、さらに好ましくは100℃以上140℃以下である。これにより、接合時の電子部品への熱影響を低減させることができる。また、例えば、使用時のLEDの熱によるフッ素樹脂の溶融を防ぐことができる。
【0025】
また、フッ素樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準じ、温度265℃、荷重5kgの条件で測定された値が、好ましくは1g/10min以上50g/10min以下、より好ましくは5g/10min以上40g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以上30g/10min以下である。これにより、フッ素樹脂を溶融させ、半田粒子を第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に挟持させることが可能となる。
【0026】
フッ素樹脂としては、フルオロオレフィンに基づく単位を有するフルオロオレフィン共重合体であることが好ましい。フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニル(VDF)、フッ化ビニリデン(ビニリデンフルオライド、VdF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等が挙げられる。フルオロオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0027】
フルオロオレフィン共重合体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド共重合体(THV)等が挙げられる。フルオロオレフィン共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
これらのフルオロオレフィン共重合体の中でも、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド共重合体(THV)を用いることが好ましい。THVは、フルオロオレフィン共重合体の中でも比較的溶融温度が低く、優れた柔軟性を有するため、異方性導電フィルムのバインダーとして最適である。また、THVは、透明性の高い樹脂であるため、光学的透明性に優れ、可視光域だけでなく、赤外域、紫外域までの範囲の光を透過させることができるため、LED素子の実装に最適である。また、THVは、低級ケトン系溶剤、エステル系溶剤などに溶解させることが可能であるため、異方性導電フィルムの製造が容易である。市場で入手可能なTHVの具体例としては、3Mジャパン(株)の商品名「THV221GZ」などを挙げることができる。
【0029】
[半田粒子]
半田粒子は、フッ素樹脂に分散されており、異方性導電フィルムの平面視における半田粒子全体の配置は、規則的配置でもランダム配置でもよい。規則的配置の態様としては、正方格子、六方格子、斜方格子、長方格子等の格子配列を挙げることができる。また、ランダム配置の態様としては、フィルムの平面視にて各半田粒子が互いに接触することなく存在し、フィルム厚方向にも半田粒子が互いに重なることなく存在していることが好ましい。
【0030】
半田粒子の平均粒径は、好ましくはフィルム厚みの10%以上100%以下であり、好ましくはフィルム厚みの30%以上100%以下であり、好ましくはフィルム厚みの80%以上100%以下である。半田粒子の平均粒径のフィルム厚みに対する割合が大きくなると、高い接合強度が得られる傾向にある。また、リフロー実装する場合は、半田粒子の平均粒径のフィルム厚みに対する割合が大きいことが好ましい。半田粒子の平均粒径がフィルム厚みよりも大きい場合は導通信頼性が低下する傾向にある。
【0031】
本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味する。また、画像型粒度分布測定装置(例として、FPIA−3000(マルバーン社))によりN=1000以上で測定して求めたものであってもよい。
【0032】
半田粒子は、例えばJIS Z 3282−1999に規定されている、Sn−Pb系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Bi−Sn系、Sn−Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系、Sn−Pb−Ag系、Pb−Ag系などから、電極材料や接続条件などに応じて適宜選択することができる。
【0033】
半田粒子の溶融温度は、フッ素樹脂の溶融温度よりも高く、その差は好ましくは10℃以上120℃以下、より好ましくは40℃以上120℃以下、さらに好ましくは80℃以上120℃以下である。半田粒子の溶融温度のフッ素樹脂の溶融温度との差が小さいと、高い接合強度が得られない傾向にある。
【0034】
半田粒子の配合量は、フッ素樹脂100質量部に対して1質量部以上150質量部以下であることが好ましい。半田粒子の配合量が少なすぎると優れた導通性、放熱性、及び接着性が得られなくなり、配合量が多すぎると異方性が損なわれ、優れた導通信頼性が得られなくなる。
【0035】
[添加剤]
異方性導電フィルムには、上述したフッ素樹脂及び半田粒子に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば、仮貼り性の向上のため、異方性導電フィルムは、粘着付与剤(タッキファイア)をさらに有することが好ましい。
【0036】
粘着付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の石油樹脂などを使用することができる。これらの中でも、異方性導電フィルム表面のタック性を向上させるとともに、半田のフラックスとして機能するロジン樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能なロジン樹脂の具体例としては、荒川化学工業(株)の商品名「KE311」などを挙げることができる。
【0037】
粘着付与剤の配合量は、フッ素樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。粘着付与剤の配合量が少なすぎると優れたタック性が得られなくなり、配合量が多すぎるとフッ素樹脂の流動性が損なわれ、優れた導通信頼性が得られなくなる。
【0038】
このような構成の異方性導電フィルムは、フッ素樹脂に半田粒子が分散された異方性導電フィルムを用いているため、高い光エネルギーに対して、優れた耐性を得ることができる。また、異方性導電フィルムは、熱硬化、光硬化、湿度硬化などの反応性がないため、長期の保存安定性を有する。
【0039】
また、上述の異方性導電フィルムは、例えば、フッ素樹脂、半田粒子、及び粘着付与剤を溶剤中で混合し、この混合物を、バーコーターにより、剥離処理フィルム上に塗布した後、乾燥させて溶媒を揮発させることにより得ることができる。
【0040】
<2.接続構造体>
次に、前述した異方性導電フィルムを用いた接続構造体について説明する。本実施の形態における接続構造体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、フッ素樹脂と半田粒子とを有し、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極とを接続してなる異方性導電膜とを備え、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極とが、半田粒子によって接合されてなり、フッ素樹脂が、第1の電子部品と第2の電子部品との間に充填されてなるものである。このような接続構造体によれば、例えば太陽光のように高い光エネルギーの照射に対して、優れた耐性を得ることができる
【0041】
本実施の形態における第1の電子部品としては、LED(Light Emitting Diode)、IC(Integrated Circuit)等のチップ(素子)が好適であり、第2の電子部品としては、チップを搭載する基板が好適である。
【0042】
図2は、LED実装体の構成例を示す断面図である。このLED実装体は、LED素子20と基板30とを、前述したフッ素樹脂に半田粒子が分散された異方性導電フィルムを用いて接続されたものである。すなわち、LED実装体は、LED素子20と、基板30と、フッ素樹脂と半田粒子41とを有し、LED素子20の電極21,22と基板30の電極31,32とを接続してなる異方性導電膜40とを備え、LED素子20の電極21,22と基板30の電極31,32とが、半田粒子41によって接合されてなり、フッ素樹脂が、LED素子20と基板30との間に充填されてなるものである。
【0043】
LED素子20は、第1導電型電極21及び第2導電型電極22を備え、第1導電型電極21と第2導電型電極22との間に電圧を印加すると、素子内の活性層にキャリアが集中し、再結合することにより発光が生じる。LED素子20としては、特に限定されないが、例えば、光エネルギーが高い400nm−500nmのピーク波長を有する青色LED、200nm−400nmのピーク波長を有する紫外線LEDなどを好適に用いることができる。
【0044】
基板30は、基材上にLED素子20の第1導電型電極21及び第2導電型電極22に対応する位置にそれぞれ第1の電極31及び第2の電極32を有する。
【0045】
図2に示すように、LED実装体は、LED素子20の端子(電極21,22)と、基板30の端子(電極31,32)とが半田粒子41によるはんだ接合により金属結合しており、LED素子20と基板30との間にフッ素樹脂が充填されてなる。これにより、LED素子20と基板30との接合強度を増大させることができるとともに、フッ素樹脂により水分などの侵入を防止することができる。また、フッ素樹脂の光エネルギーに対する優れた耐性により優れた導通信頼性を得ることができる。
<3.接続構造体の製造方法>
【0046】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における接続構造体の製造方法は、フッ素樹脂と、フッ素樹脂に分散された半田粒子とを有する異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、熱圧着により第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極とを接続させるものである。異方性導電フィルムは、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0047】
以下、接続構造体の製造方法の具体例として、LED実装体の製造方法について説明する。LED実装体の製造方法は、異方性導電フィルムを基板上に仮貼りする仮貼工程と、LED素子を異方性導電フィルム上に搭載する搭載工程と、異方性導電フィルムを介してLED素子と基板とを加熱圧着する加熱圧着工程とを有する。
【0048】
図3は、第1の実施の形態における仮貼工程の一部を示す断面図であり、
図4は、第1の実施の形態における搭載工程の一部を示す断面図である。LED素子20及び基板30は、前述と同様のため、同一符号を付し、ここでは説明を省略する。また、異方性導電フィルム50は、フッ素樹脂に半田粒子51が分散されてなり、加熱圧着条件に最適に構成される。
【0049】
仮貼工程では、
図3に示すように、第1のフィルムが剥がされた異方性導電フィルム50の第1の面を基板側にして仮貼りし、第2のフィルム54を異方性導電フィルム50から引き剥がす。搭載工程では、
図4に示すように、第2のフィルム53が引き剥がされた異方性導電フィルム50の第2の面上にLED素子20を配置し、搭載する。
【0050】
加熱圧着工程では、熱圧着ツールによりLED素子20を基板30に熱圧着させる。加熱圧着工程では、一例として好ましくは1MPa以上40MPa以下の圧力、より好ましくは1MPa以上30MPa以下の圧力、さらに好ましくは1MPa以上20MPa以下の圧力で押圧する。また、加熱圧着工程では、一例として好ましくは150℃以上260℃以下の温度、より好ましくは150℃以上230℃以下の温度、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度で押圧する。これにより、熱圧着ツールの熱によりフッ素樹脂が溶融するとともに半田粒子51が電極間に挟持された状態で溶融し、接合されるため、優れた導通性、放熱性、及び接着性を得ることができる。
【0051】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における接続構造体の製造方法は、フッ素樹脂と、前記フッ素樹脂に分散された半田粒子とを有する異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、リフロー炉により第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極とを接続させるものである。
【0052】
以下、接続構造体の製造方法の具体例として、LED実装体の製造方法について説明する。LED実装体の製造方法は、異方性導電フィルムを基板上に仮貼りする仮貼工程と、LED素子を異方性導電フィルム上に搭載する搭載工程と、リフロー炉によりLED素子の電極と基板の電極とを接続させるリフロー工程とを有する。
【0053】
図5は、第2の実施の形態におけるリフロー工程の一部を示す断面図である。LED素子20及び基板30は、前述と同様のため、同一符号を付し、ここでは説明を省略する。また、異方性導電フィルム60は、フッ素樹脂に半田粒子61が分散されてなり、リフロー条件に最適に構成される。
【0054】
仮貼工程では、第1のフィルムが剥がされた異方性導電フィルム60の第1の面を基板側にして仮貼りし、第2のフィルムを異方性導電フィルム60から引き剥がす。搭載工程では、第2のフィルムが引き剥がされた異方性導電フィルム60の第2の面上にLED素子20を配置し、搭載する。
【0055】
リフロー工程では、リフロー炉によりLED素子20の電極と基板30の電極とを接続させる。リフロー炉の温度上昇によりフッ素樹脂が溶融し、LED素子20の自重により半田粒子61が電極間に挟持され、リフロー炉の温度が半田粒子61の半田溶融温度以上であり本加熱により半田粒子61が溶融し、冷却によりLED素子20の電極と基板30の電極とが接合される。リフロー工程では、一例として好ましくは200℃以上280℃以下の温度、より好ましくは210℃以上260℃以下の温度、さらに好ましくは220℃以上250℃以下の温度で本加熱する。これにより、LED素子20の電極と基板30の電極とが接合されるため、優れた導通性、放熱性、及び接着性を得ることができる。
【実施例】
【0056】
<4.実施例>
以下、本技術の実施例について詳細に説明する。本実施例では、下記接続材料A−Iを用いてLED実装体を作製し、接合強度、導通信頼性、及び耐劣化性ついて評価した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、接続材料に用いられる半田粒子の溶融温度(融点)は、カタログ値を用いても、DSC測定(昇温スピード、10℃/min)による測定値を用いてもよい。
【0057】
[異方性導電フィルムA]
フッ素樹脂(品名:ダイニオンTHV221GZ、スリーエムジャパン株式会社製、溶融温度120℃)100質量部、平均粒子径が10μm、溶融温度が140℃の半田粒子(品名:L23、千住金属工業株式会社)50質量部、及びロジン(品名:KE311、荒川化学工業株式会社)5質量部をメチルエチルケトン(MEK)中で混合した。この混合物を、バーコーターにより、剥離処理を施したPETフィルム上に塗布した後、80℃のオーブンで5分間乾燥させてMEKを揮発させ、厚み30μmの異方性導電フィルムAを作製した。
【0058】
[異方性導電フィルムB]
半田粒子として、平均粒子径が5μm、溶融温度が180℃の半田粒子(品名:MP6076、千住金属株式会社)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムBを作製した。
【0059】
[異方性導電フィルムC]
半田粒子として、平均粒子径が10μm、溶融温度が180℃の半田粒子(品名:MP6076、千住金属株式会社)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムCを作製した。
【0060】
[異方性導電フィルムD]
半田粒子として、平均粒子径が25μm、溶融温度が180℃の半田粒子(品名:MP6076、千住金属株式会社)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムDを作製した。
【0061】
[異方性導電フィルムE]
半田粒子として、平均粒子径が10μm、溶融温度が219℃の半田粒子(品名:M705、千住金属工業株式会社)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムEを作製した。
【0062】
[フィルムF]
半田粒子及びロジンを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、フィルムFを製造した。
[異方性導電フィルムG]
エポキシ樹脂中に樹脂コア導電粒子が分散された異方性導電フィルム(品名:CP369、デクセリアルズ株式会社)
[異方性導電ペーストH]
エポキシ樹脂中にニッケル粒子が分散された異方性導電ペースト(品名:BP513、デクセリアルズ株式会社)
[半田ペーストI]
半田ペースト(品名:M705−GRN360−K2V、千住金属株式会社)
【0063】
<4.1 接合強度について>
接続材料A−Iを用いて青色LED実装体を作製し、ダイシェア強度を測定した。
【0064】
[ダイシェア強度の測定]
図6は、ダイシェア強度試験の概要を示す断面図である。
図6に示すように、LED素子71と基板72とが接続材料73で接合されたLED実装サンプルについて、ダイシェアテスターを用いてダイシェア強度を測定した。各LED実装サンプルについて、ツール74のせん断速度20μm/sec、温度25℃の条件で初期、及び高温高湿連続点灯試験後のダイシェア強度を測定した。高温高湿連続点灯試験は、温度85℃−湿度90%−1000時間の条件で連続点灯させた。
【0065】
<実施例1>
異方性導電フィルムAを用いて、金配線−セラミック基板に、青色LED(IF=350mA、サイズ45mm角、ピーク波長460nm)を実装した。具体的には、異方性導電フィルムAを金配線−セラミック基板に仮貼り後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、180℃−60秒の条件で加熱圧着を行い、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が28N/chip、高温高湿連続点灯試験後が30N/chipであった。
【0066】
<実施例2>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムBを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が36N/chip、高温高湿連続点灯試験が33N/chipであった。
【0067】
<実施例3>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムCを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が39N/chip、高温高湿連続点灯試験後が41N/chipであった。
【0068】
<実施例4>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムDを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が46N/chip、高温高湿連続点灯試験後が42N/chipであった。
【0069】
<実施例5>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムEを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が38N/chip、高温高湿連続点灯試験後が37N/chipであった。
【0070】
<比較例1>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムFを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が0.5N/chipであった。高温高湿連続点灯試験は、LEDの電極と基板の電極とが接続されていないため行わなかった。
【0071】
<比較例2>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムGを用いた以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が8N/chipであった。また、高温高湿連続点灯試験では、試験中に自然にLEDが剥がれ落ちた。
【0072】
<比較例3>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電ペーストHを用いた。異方性導電ペーストHを金配線−セラミック基板に塗布後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、180℃−60秒の条件で加熱圧着を行い、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が11N/chipであった。また、高温高湿連続点灯試験では、試験中に自然にLEDが剥がれ落ちた。
【0073】
<参考例>
異方性導電フィルムAの代わりに半田ペーストIを用いた。半田ペーストIを金配線−セラミック基板に塗布後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、260℃−30秒の条件でリフローを行い、LED実装サンプルを作製した。表2に示すように、ダイシェア強度は、初期が45N/chip、高温高湿連続点灯試験後が46N/chipであった。
【0074】
【表2】
【0075】
比較例1のようにフッ素樹脂だけではLEDチップと基板との間で接着力が得られない。また、比較例2、3のように接着剤成分によりLEDチップと基板とを接着させた場合、接着強度が初期段階から小さく、また、高温高湿連続点灯試験中に接着剤成分の光劣化により自然にLEDチップが剥がれ落ちた。
【0076】
一方、実施例1−5のようにフッ素樹脂にハンダ粒子が分散された異方性導電フィルムA−Eを用いることにより、高い接合強度が得られた。また、実施例1と実施例5とを比較すると分かるように、フッ素樹脂の溶融温度と半田粒子の溶融温度との差が大きい方が高い接合強度が得られた。また、実施例3−4を比較すると分かるように、半田粒子の平均粒径のフィルム厚みに対する割合が大きい方が高い接合強度が得られた。
【0077】
<4.2.1 紫外線LED実装体の導通信頼性について>
接続材料A−E、G、Hを用いて紫外線LED実装体を作製し、順電圧を測定した。
【0078】
[順電圧の測定]
各LED実装サンプルの初期、及び温度サイクル試験(TCT:Temperature Cycling Test)後の順電圧を測定した。温度サイクル試験は、LED実装サンプルを、−40℃および100℃の雰囲気に各30分間曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを1000サイクル行い、LED実装サンプルのIf=20mA時のVf値を測定した。
【0079】
また、各LED実装サンプルの初期、及び高温高湿連続点灯試験後の順電圧を測定した。高温高湿連続点灯試験は、温度85℃−湿度90%−1000時間の条件で連続点灯させ、LED実装サンプルのIf=20mA時のVf値を測定した。一般的なLEDメーカーの評価基準から、初期Vf値からの変動は0.1V未満であることが望ましい。
【0080】
<実施例6>
異方性導電フィルムAを用いて、金配線−セラミック基板に、紫外線LEDチップ(商品名:NS355C−2SAA、ナイトライドセミコンダクター社製、IF=20mA、ピーク波長355nm)を搭載した。具体的には、異方性導電フィルムAを金配線−セラミック基板に仮貼り後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、180℃−60秒の条件で加熱圧着を行い、LED実装サンプルを作製した。表3に示すように、Vf値は、初期が3.59V、温度サイクル試験後が3.58V、高温高湿連続点灯試験後が3.61Vであった。
【0081】
<実施例7>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムBを用いた以外は、実施例6と同様に、LED実装サンプルを作製した。表3に示すように、Vf値は、初期が3.61V、温度サイクル試験後が3.61V、高温高湿連続点灯試験後が3.59Vであった。
【0082】
<実施例8>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムCを用いた以外は、実施例6と同様に、LED実装サンプルを作製した。表3に示すように、Vf値は、初期が3.60V、温度サイクル試験後が3.59V、高温高湿連続点灯試験後が3.62Vであった。
【0083】
<実施例9>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムDを用いた以外は、実施例6と同様に、LED実装サンプルを作製した。Vf値は、初期が3.58V、温度サイクル試験後が3.63V、高温高湿連続点灯試験後が3.62Vであった。
【0084】
<実施例10>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムEを用いた以外は、実施例6と同様に、LED実装サンプルを作製した。Vf値は、初期が3.59V、温度サイクル試験後が3.61V、高温高湿連続点灯試験後が3.58Vであった。
【0085】
<比較例4>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムGを用いた以外は、実施例6と同様に、LED実装サンプルを作製した。Vf値は、初期が3.61Vであった。温度サイクル試験では500時間で不点灯となった。また、高温高湿連続点灯試験では、試験中に自然にLEDが剥がれ落ちた。
【0086】
<比較例5>
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電ペーストHを用いた。異方性導電ペーストHを金配線−セラミック基板に塗布後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、180℃−60秒の条件で加熱圧着を行い、LED実装サンプルを作製した。Vf値は、初期が3.61V、温度サイクル試験後が4.63Vであった。また、高温高湿連続点灯試験では、試験中に自然にLEDが剥がれ落ちた。
【0087】
【表3】
【0088】
比較例4のようにエポキシ樹脂系の異方性導電フィルムGを用いて紫外線LEDチップと基板とを接着させた場合、樹脂の光劣化により温度サイクル試験において500時間で不点灯となった。また、高温高湿連続点灯試験では、自然に紫外線LEDチップが剥がれ落ちた。また、比較例5のようにエポキシ樹脂系の異方性導電ペーストHを用いて紫外線LEDチップと基板とを接着させた場合、温度サイクル試験後の初期Vf値からの変動が大きかった。また、高温高湿連続点灯試験では、自然に紫外線LEDチップが剥がれ落ちた。
【0089】
一方、実施例6−10のようにフッ素樹脂にハンダ粒子が分散された異方性導電フィルムA−Eを用いて紫外線LEDチップと基板とを接合させた場合、優れた導通信頼性が得られた。
【0090】
<4.2.2 UV−CLED実装体の導通信頼性について>
接続材料Cを用いてUV−CLED実装体を作製し、順電圧を測定した。
【0091】
[順電圧の測定]
各LED実装サンプルの初期、及び高温高湿連続点灯試験後の順電圧を測定した。高温高湿連続点灯試験は、温度85℃−湿度90%−750時間の条件で連続点灯させ、LED実装サンプルのIf=20mA時のVf値を測定した。一般的なLEDメーカーの評価基準から、初期Vf値からの変動は0.1V未満であることが望ましい。
【0092】
<実施例11>
異方性導電フィルムCを用いて、金配線−セラミック基板に、UV−CLEDチップ(DOWA社製、IF=20mA、ピーク波長265nm)を搭載した。具体的には、異方性導電フィルムCを金配線−セラミック基板に仮貼り後、LEDチップをアライメン卜して搭載し、180℃−60秒の条件で加熱圧着を行い、LED実装サンプルを作製した。表4に示すように、Vf値は、初期が5.92V、高温高湿連続点灯試験後が5.97Vであった。
【0093】
【表4】
【0094】
実施例11のようにフッ素樹脂にハンダ粒子が分散された異方性導電フィルムを用いて紫外線LEDチップと基板とを接合させた場合、UV−Cと呼ばれる短波長の紫外線に対しても、優れた導通信頼性が得られた。
【0095】
<4.3 耐劣化性について>
高温高湿連続点灯試験後のLED実装サンプルを基板に対して垂直に切断し、断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察し、樹脂状態を評価した。
【0096】
図7は、比較例2の実装初期のLED実装サンプルの接続部の断面写真であり、
図8は、比較例2の高温高湿連続点灯試験後のLED実装サンプルの接続部の断面写真である。また、
図9は、実施例11の高温高湿連続点灯試験後のLED実装サンプルの接続部の断面写真である。
【0097】
図7−
図9に示す断面写真において、下部分が基板の電極であり、右部分がLEDの電極であり、左部分が接続材料である。
図7と
図8とを比較すると分かるように、エポキシ系の異方性導電フィルムを用いた比較例2では、460nmの青色光によって樹脂劣化が生じた。
【0098】
一方、
図9に示す断面写真のように、フッ素樹脂にハンダ粒子が分散された異方性導電フィルムを用いた実施例11では、265nmのUV−Cによっても樹脂劣化が生じておらず、優れた耐劣化性が得られた。