【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、損傷評価方法及びそのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、本開
示のシステムは、標的組織にアブレーション治療を行う治療機能及び損傷にアクセスする
ためにカテーテルと組織との接触点からシグネチャスペクトルを収集する診断機能という
2つの機能を果たすように構成されたカテーテルを備える。いくつかの実施形態では、還
元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(Nicotinamide Adenine Dinucleotide Hydr
ogen: NADH)蛍光(fluorescence NADH: fNADH)を使用して組織を撮像するた
めに本開示のシステム及び方法を用いてもよい。一般に、本システムは、組織とカテーテ
ルとの間で光を交換するための光学システムを備えたカテーテルを備えてもよい。いくつ
かの実施形態では、本システムは、紫外線(ultraviolet: UV)励起によって誘発され
る組織のNADH蛍光又はその欠如を直接視覚化するようにする。組織から戻ったNAD
H蛍光シグネチャは、組織とカテーテルシステムとの間の接触の質を判断するために使用
することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、カテーテルはその遠位端にアブレーション治療システムを備
え、レーザのような光源とスペクトロメータとを備える診断ユニットに接続される。カテ
ーテルは、光源及びスペクトロメータからカテーテルの遠位端まで延び、カテーテルと組
織との間の接触箇所へ照明光を供給し、接触箇所からシグネチャNADHスペクトルを受
け取ってスペクトロメータに送る、1つ以上のファイバを備えてもよい。標的組織の損傷
を評価するためにシグネチャNADHスペクトルを用いてもよい。いくつかの実施形態に
おいて、本開示の方法は、損傷のある組織を照明し、組織のシグネチャスペクトルを受信
し、組織からのシグネチャスペクトルに基づいた損傷の定性的評価を実施することを含む
。この分析は、アブレーション損傷の形成前、形成中、及び形成後にリアルタイムで実施
することができる。本開示のシステム及び方法は、心臓組織及びNADHスペクトルに関
連付けて記載されているが、本開示のシステム及び方法は、他のタイプの組織及び他のタ
イプの蛍光に関連付けて用いてもよいことに留意されたい。
【0015】
システム:診断ユニット
図1Aに示すように、アブレーション治療を行うためのシステム100は、アブレーシ
ョン治療システム110と、視覚化システム120と、カテーテル140とを備える。い
くつかの実施形態では、システム100は、1つ以上のイリゲーションシステム(irriga
tion system)170、超音波システム190,及びナビゲーションシステム200を備
えてもよい。このシステムは、以下に記載されるように、別個のディスプレイとすること
もできるし、視覚化システム120の一部とすることもできるディスプレイ180を備え
てよい。いくつかの実施形態では、このシステムは、RF発生器、イリゲーションシステ
ム170、先端イリゲーション型アブレーションカテーテル140、及び視覚化システム
120を備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、アブレーション治療システム110は、カテーテル140に
アブレーションエネルギーを供給するように設計されている。アブレーション治療システ
ム110は、高周波(Radio Frequency: RF)エネルギー、マイクロ波エネルギー、電
気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー(cryoenergy)、レーザエネルギー、超
音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー、又は組織を焼灼する
のに使用可能ないずれかのタイプのエネルギーを発生できる1つ以上のエネルギー源を備
えてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140はアブレーションエネルギーに
適したものとし、アブレーションエネルギーは、RFエネルギー、冷凍エネルギー、レー
ザ、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、高密度焦点式超音波又は超音波、及びマイ
クロ波のうちの1以上である。
【0017】
図1Bに示すように、視覚化システム120は、光源122、光測定器124、及びコ
ンピュータシステム126を備えてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、光源122は、健康な心筋細胞に蛍光を誘導するために、標
的蛍光体(fluorophore)(いくつかの実施形態では、NADH)の吸収範囲内の出力波
長とすることもできる。いくつかの実施形態では、光源122は、NADH蛍光を励起す
るためのUV光を生成できる固体レーザである。いくつかの実施形態では、波長は約35
5nm又は355nm±30nmであってもよい。いくつかの実施形態では、光源122
はUVレーザとすることができる。レーザ生成UV光は、照明のためにはるかに多くの出
力を提供してもよく、カテーテル140のいくつかの実施形態で使用されるように、ファ
イバベースの照明システムに更に効率的に組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では
、本システムは、出力を150mWまで調整できるレーザを使用することができる。
【0019】
光源122の波長範囲は、対象の解剖学的構造によって限定されてもよいし、わずかに
短い波長でのみ吸収ピークを示すコラーゲンの過剰蛍光を励起させることなく最大NAD
H蛍光を生じさせる波長をユーザが具体的に選択してもよい。いくつかの実施形態では、
光源122の波長は、300nm〜400nmである。いくつかの実施形態では、光源1
22の波長は、330nm〜370nmである。いくつかの実施形態では、光源122の
波長は、330nm〜355nmである。いくつかの実施形態では、狭帯域355nmの
光源が使用されてもよい。光源122の出力パワーは、回復可能な組織蛍光シグネチャを
生成するのに十分な高さであるが、細胞損傷を誘発するほど高くないものであってもよい
。以下に説明するように、カテーテル140に光を供給するために光源122が光ファイ
バに接続されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示のシステムでは、光測定器124としてスペクト
ロメータが利用されてもよい。いくつかの実施形態では、光測定器124は、組織の蛍光
を分析及び観察するためにコンピュータシステム126に接続されたカメラを備えてもよ
い。いくつかの実施形態では、カメラは、NADH蛍光に対応する波長に対して高量子効
率を備えていてもよい。そのようなカメラの1つはAndoriXon DV860であ
る。スペクトロメータ124は、組織を視覚化するためにカテーテル140内に延ばすこ
とができる撮像バンドルに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、分光のための撮
像バンドルと照明のための光ファイバとを組み合わせてもよい。NADH蛍光発光周波数
帯の外側の光を遮断するために、撮像バンドルとカメラとの間に435nm〜485nm
の光バンドパスフィルタ、いくつかの実施形態では460nmの光バンドパスフィルタを
挿入してもよい。即ち、中心波長460nm、帯域幅50nmのフィルタを利用してもよ
い。いくつかの実施形態では、撮像される組織のピーク蛍光に従って選択されるNADH
蛍光発光周波数帯の外側の光を遮断するために、撮像バンドルとカメラとの間に他の光バ
ンドパスフィルタを挿入してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、光測定装置124は、電荷結合素子(Charge-Coupled Devic
e: CCD)カメラであってもよい。いくつかの実施形態では、スペクトロメータ124
は、できるだけ多くの光子を収集することができ、且つ画像のノイズを最小限にするよう
に選択されてもよい。通常、生細胞の蛍光撮像では、CCDカメラの量子効率は約460
nmで少なくとも50〜70%であり、光子の30〜50%が無視されることを示してい
る。いくつかの実施形態では、カメラの量子効率は460nmで約90%である。カメラ
は80KHzのサンプルレートを有するとよい。いくつかの実施形態では、スペクトロメ
ータ124の読み出しノイズは8e
−(電子)以下とすることができる。いくつかの実施
形態では、スペクトロメータ124の最小読み出しノイズは3e
−である。本開示のシス
テム及び方法に他の光測定器を使用することもできる。
【0022】
光ファイバは集められた光を、355nmの反射励起波長を遮断するが、フィルタのカ
ットオフより上の波長で組織から放出された蛍光を通過させるロングパスフィルタに供給
できる。組織からのフィルタ処理された光は、次に、光測定器124に取り込まれて分析
することができる。コンピュータシステム126は、光測定器124から情報を取得し、
それを医師に表示する。
【0023】
いくつかの実施形態では、光データを分析することによって生成されたデジタル画像は
、損傷の2D及び3D再構成を行うために使用され、大きさ、形状及び分析に必要な他の
特性を示す。いくつかの実施形態では、撮像バンドルは、ディスプレイ180に表示でき
るNADH蛍光(fNADH)から検査される損傷のデジタル画像を生成できる光測定器
124に接続することができる。いくつかの実施形態では、これらの画像をリアルタイム
でユーザに表示することができる。更なる介入が必要か又は望ましいかをユーザが判断す
るのを助けるリアルタイムの詳細(例えば、画像の特定部位における強度又は放射エネル
ギー)を得るためにソフトウェアを用いて画像を分析することができる。いくつかの実施
形態では、NADH蛍光をコンピュータシステム126に直接伝達することもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、光測定器124によって得られた光学データを分析して、特
に限定されるものではないが、損傷の深さ及び損傷の大きさなど、アブレーション中及び
アブレーション後の損傷に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では
、光測定器からのデータを分析して、カテーテル140が心筋表面と接触しているかどう
か、及び、カテーテルの先端によって心筋表面にどれだけの圧力が加えられているかを判
断することができる。いくつかの実施形態では、光測定器具124からのデータを分析し
て、組織中のコラーゲン又はエラスチンの存在を判断することができる。いくつかの実施
形態では、光測定器からのデータが分析され、損傷の進行、損傷の質、心筋との接触、組
織のコラーゲン含有量、組織のエラスチン含有量に関して、リアルタイムフィードバック
でユーザに提供するようにグラフィカルユーザインタフェースを介してユーザに視覚的に
示される。
【0025】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、本開示のシステム100は、超音波シ
ステム190を更に備えてもよい。この場合、カテーテル140は、超音波システム19
0と通信する超音波トランスデューサを備えるとよい。いくつかの実施形態では、超音波
は、代謝活性又は損傷の深さと組み合わせて、損傷が貫壁性であるか否かの判断に使用で
きる組織深さを示すこともできる。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは
、カテーテル140の遠位端、場合によっては遠位の電極の先端に配置されてもよい。超
音波トランスデューサは、カテーテル先端の下又は近傍の組織の厚さを評価するように構
成されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、カテーテルの先端が心
筋に対して比較的垂直であるか又は心筋と比較的平行である状況をカバーする深さ情報を
提供するように適合された複数のトランスデューサを備えてもよい。
【0026】
図1Aに示すように、システム100はイリゲーションシステム170も備えることが
できる。いくつかの実施形態では、イリゲーションシステム170は、アブレーション治
療中にカテーテル140内に生理食塩水をポンプ輸送して先端電極を冷却する。これによ
り、スチームポップ及び炭化(即ち、先端に付着し、脱落して血栓溶解事象を引き起こす
可能性のある凝塊)の形成を防止するのを助けることができる。いくつかの実施形態では
、イリゲーション流体は、1つ以上の開口部154を連続的に洗浄するために、カテーテ
ル140の外側の圧力に対して正の圧力に維持される。
【0027】
図1Aに示すように、システム100は、カテーテル140の位置を特定してナビゲー
トするためのナビゲーションシステム200を備えてもよい。いくつかの実施形態では、
カテーテル140は、ナビゲーションシステム200と通信する1つ以上の電磁位置特定
センサを備えてもよい。いくつかの実施形態では、電磁位置特定センサを用いてナビゲー
ションシステム200内でカテーテルの先端部の位置を特定してもよい。センサは、波源
位置からの電磁エネルギーを受信し、三角測量又は他の手段によって位置を計算する。い
くつかの実施形態では、カテーテル140は、ナビゲーションシステムのディスプレイ上
にカテーテル本体142の位置及びカテーテル本体の湾曲を表現するようになっている2
つ以上のトランスデューサを含む。いくつかの実施形態では、ナビゲーションシステム2
00は1つ以上の磁石を備えても良く、電磁センサ上の磁石によって生成された磁場の変
化によってカテーテルの先端を所望の方向に偏向させることができる。手動ナビゲーショ
ンを含む他のナビゲーションシステムが採用されてもよい。
【0028】
コンピュータシステム126は、例えば、光源122の制御、光測定器124の制御、
特定用途向けソフトウェアの実行、超音波システム、ナビゲーションシステム、及びイリ
ゲーションシステムの制御、並びに同様の操作を含む、システム100の種々のモジュー
ルを制御するようにプログラムすることができる。
【0029】
図1Cは、一例として、本開示の方法及びシステムに関連して使用できる典型的な処理
アーキテクチャ308の図を示す。コンピュータ処理装置340は、グラフィック出力の
ためにディスプレイ340AAに接続することができる。プロセッサ342は、ソフトウ
ェアを実行できるコンピュータプロセッサ342とすることができる。典型的な例は、コ
ンピュータプロセッサ(インテル(登録商標)プロセッサ又はAMD(登録商標)プロセ
ッサなど)、ASIC、マイクロプロセッサ等である。プロセッサ342は、プロセッサ
342が動作しているときに命令及びデータを記憶するための、一般的には揮発性RAM
メモリとすることが可能なメモリ346に接続することができる。プロセッサ342は、
ハードドライブ、FLASHドライブ、テープドライブ、DVDROM、又は同様のデバ
イスなどの不揮発性記憶媒体とすることができる記憶装置348に接続することもできる
。図示されていないが、コンピュータ処理装置340は、一般に種々の形態の入力及び出
力を含む。I/Oは、ネットワークアダプタ、USBアダプタ、ブルートゥース(登録商
標)無線、マウス、キーボード、タッチパッド、ディスプレイ、タッチスクリーン、LE
D、振動デバイス、スピーカ、マイクロフォン、センサ、又はコンピュータ処理装置34
0と一緒に使用する入力又は出力装置であればどのようなものでも含むことができる。プ
ロセッサ342は、特に限定されるものではないが、プロセッサ342などのプロセッサ
にコンピュータ可読命令を提供できる、電子的、光学的、磁気的、又は他の記憶装置又は
送信装置を含むが、これに限定されない他のタイプのコンピュータ可読媒体に接続するこ
ともできる。有線式及び無線式両方の、ルータ、プライベート又はパブリックネットワー
ク、又は他の送信装置又はチャネルを含む、様々な他の形態のコンピュータ可読媒体が、
コンピュータに命令を送信又は搬送できる。命令は、例えば、C、C++、C#、Vis
ualBasic、Java(登録商標)、Python、Perl、及びJavaSc
ript(登録商標)を含む任意のコンピュータプログラミング言語のコードを含むこと
ができる。
【0030】
プログラム349は、命令及びデータのうちの少なくとも一方を含むコンピュータプロ
グラム又はコンピュータ可読コードとすることができ、記憶装置348に記憶可能である
。命令は、例えば、C、C++、C#、VisualBasic、Java(登録商標)
、Python、Perl、及びJavaScript(登録商標)を含む任意のコンピ
ュータプログラミング言語のコードを含むことができる。一般的なシナリオでは、プロセ
ッサ204は、実行するためにプログラム349の命令及びデータのうちの少なくとも一
方の一部又は全部をメモリ346にロードすることができる。プログラム349は、特に
限定されるものではないが、ウェブブラウザ、ブラウザアプリケーション、アドレス登録
プロセス、アプリケーション、又は他の任意のコンピュータアプリケーション又はプロセ
スなどを含むが、これに限定されない任意のコンピュータプログラム又はプロセスとする
ことができる。プログラム349は、メモリ346にロードされてプロセッサ342によ
って実行されるときに、プロセッサ342に様々な動作を実行させる種々の命令及びサブ
ルーチンを含むことができ、それらの命令及びサブルーチンの一部又は全部がここに開示
された医療管理方法を実施してもよい。プログラム349は、ハードドライブ、リムーバ
ブルドライブ、CD、DVD、又は任意の他タイプのコンピュータ可読媒体などに限定さ
れず、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体に格納することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の方法のステップを実行し、本システムの様々な部分
を制御して、本開示の方法を達成するために必要な動作を実行するようにコンピュータシ
ステムをプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、組織に
アブレーションエネルギーを印加して組織に損傷を形成しながら、組織のNADHを励起
するためにUV光で照明された組織から反射される光を収集し、NADH蛍光のレベルが
、アブレーションの開始時の基準レベルから所定のより低いレベルに低下したか否か判断
するために、照明された組織のNADH蛍光のレベルを監視し、NADH蛍光のレベルが
所定のより低いレベルに達したときに、(自動的に又はユーザに促すことによって)組織
のアブレーションを停止させるようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態では
、照射された組織から反射される蛍光光線(特に限定されるものではないが、NADH蛍
光を含む)のスペクトルが収集されて、組織タイプを識別することができる。いくつかの
実施形態では、組織は、波長が約300nm〜約400nmの光で照明される。いくつか
の実施形態では、約450nm〜470nm波長の反射光のレベルが監視される。いくつ
かの実施形態では、監視されるスペクトルを410nm〜520nmとしてもよい。これ
に加え、又は別の選択肢として、非限定的な例として、375nm〜575nmなど、よ
り広いスペクトルを監視してもよい。いくつかの実施形態では、NADH蛍光スペクトル
及びより広いスペクトルを同時にユーザに表示することができる。いくつかの実施形態で
は、損傷は、高周波(RF)エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁
エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、
化学エネルギー、熱エネルギー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれるアブレ
ーションエネルギーによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサは
、NADH蛍光ピークが検出されたときに(自動的に又はユーザに促すことによって)処
置を開始して、処置の間ずっと監視できるようにしてもよい。上記のように、これらの方
法は、超音波モニタリングなど他の診断方法と組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
システム:カテーテル
上述したように、カテーテル140は、上述したように、照明及び分光のための光ファ
イバの収容部(accommodation)を備えた標準的なアブレーションカテーテルに基づくも
のであってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、標準的な経中隔処置
と一般的なアクセスツールにより、シースを通して心内腔に送達できる誘導可能なイリゲ
ーション式RFアブレーションカテーテルである。カテーテルのハンドル147上には、
治療のための標準的なRF発生器及びイリゲーションシステム170の接続部があっても
よい。また、カテーテルハンドル147には、光ファイバも通され、次いで、光ファイバ
は、組織測定値を得るための診断ユニットに接続される。
【0033】
図1Aに示すように、カテーテル140は、近位端144及び遠位端146を有するカ
テーテル本体142を含む。カテーテル本体142は、生体適合性材料から作製されても
よく、アブレーション部位へカテーテル140を誘導及び前進させることができるように
十分な可撓性を備えるものであってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル本体1
42は、様々な剛性のゾーンを有することもできる。例えば、近位端144から遠位端1
46に向かってカテーテル140の剛性が増加してもよい。いくつかの実施形態では、カ
テーテル本体142の剛性は、所望の心臓位置へカテーテル140を送達できるように選
択される。いくつかの実施形態では、カテーテル140はシースを通し、心臓の左側の場
合には、一般的なアクセスツールを用いた標準的な経中隔処置により、心内腔に送達でき
る誘導可能なイリゲーション式高周波(RF)アブレーションカテーテルとすることがで
きる。カテーテル140は、近位端144にハンドル147を備えることができる。装置
又は材料をカテーテル140に通せるように、ハンドル147はカテーテルの1つ以上の
管腔(lumen)と連通してもよい。いくつかの実施形態では、ハンドル147は、治療用
の標準的なRF発生器及びイリゲーションシステム170の接続部を備えることができる
。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、照明及び分光のための光ファイバを収
容するように構成された1つ以上のアダプタも備えることができる。
【0034】
図1Aに示すカテーテル140は、
図2Aに示すように、側壁156と前壁158とを
有する遠位先端148を遠位端146に備えることができる。前壁158は、例えば、平
坦状、円錐状又はドーム状とすることもできる。いくつかの実施形態では、遠位先端14
8は、電気記録感知のような診断用、アブレーションエネルギーを放出するためなどの治
療用、又はその両方のために、電極として作用するように構成することができる。アブレ
ーションエネルギーが必要とされるいくつかの実施形態では、カテーテル140の遠位先
端148は、アブレーション電極又はアブレーション要素として機能することができる。
【0035】
RFエネルギーが提供される実施形態では、遠位先端148をRFエネルギー源(カテ
ーテルの外部)に接続するための配線をカテーテルの管腔に通すことができる。遠位先端
148は、カテーテルの1つ以上の管腔と連通するポートを備えることができる。遠位先
端148は任意の生体適合性材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、
遠位先端148が電極として機能するように構成される場合、遠位先端148は、特に限
定されるものではないが、プラチナ、プラチナ−イリジウム、ステンレス鋼、チタン、又
は類似の材料などの金属で作製することができる。
【0036】
図2Aに示すように、光ファイバ又は撮像バンドル150は、視覚化システム120か
ら、カテーテル本体142を通って、遠位先端148によって画定される照明キャビティ
152又は照明区画に通すこともできる。遠位先端148には、照明キャビティ152と
組織との間で光エネルギーを交換するための1つ以上の開口部154が設けられてもよい
。いくつかの実施形態では、複数の開口部154があっても、アブレーション電極として
の遠位先端148の機能は損なわれない。開口部は、前壁158、側壁156、又はその
両方に配置できる。開口部154は、イリゲーションポートとして使用することもできる
。光は、光ファイバ150によって遠位先端148に届けられ、遠位先端148の近傍の
組織を照明する。この照明光は、反射されるか、又は組織を蛍光発光させる。組織によっ
て反射された光及び組織から蛍光発光された光は、遠位先端148内の光ファイバ150
によって集められ、視覚化システム120に戻される。いくつかの実施形態では、遠位先
端の外側に光を誘導してカテーテル140の外側の組織を照明し、且つ組織から光を収集
するために同じ光ファイバ150又はファイババンドルを使用することができる。
【0037】
図2Aに示すように、いくつかの実施形態では、カテーテル140は、光ファイバ15
0がカテーテル本体142を通って前進することができる視覚化管腔161を有すること
ができる。光ファイバ150は、視覚化管腔161を通って照明キャビティ152内に進
められ、組織を照明し、開口部154を通して反射光を受け取ることもできる。光ファイ
バ150は、必要に応じて、開口部154を通って照明キャビティ152を越えて前進さ
せてもよい。
【0038】
図2A及び
図2Bに示されているように、視覚化管腔161の他に、カテーテル140
は、イリゲーション液をイリゲーションシステム170から遠位先端148の開口部15
4(イリゲーションポート)に通すためのイリゲーション管腔163と、例えばRFアブ
レーションエネルギー用のアブレーション管腔164にワイヤーを通すことなどによって
、アブレーション治療システム110から遠位先端148へアブレーションエネルギーを
渡すためのアブレーション管腔164とを更に備えることもできる。カテーテルの管腔は
複数の目的のために使用されてもよいし、複数の管腔が同じ目的のために使用されてもよ
いことに留意されたい。また、
図2A及び
図2Bでは、管腔を同心に示しているが、管腔
は他の構成を採用することもできる。
【0039】
図2A及び
図2Bに示されているように、いくつかの実施形態では、カテーテルの中央
管腔を視覚化管腔161として利用することもできる。いくつかの実施形態では、
図2C
に示されているように、視覚化管腔161は、カテーテル140の中心アクセスからずら
すこともできる。
【0040】
いくつかの実施形態では、光は、側壁156の開口部154から径方向に誘導されても
よいし、これとは別に、又はこれに追加して、前壁158の開口部を通って誘導されても
よい。このようにして、照明キャビティ152と組織との間の光エネルギーの交換は、図
2Eに示されているように、複数の経路でカテーテルの長軸方向に対して、軸方向、径方
向、又はその両方向で行われる。これは、解剖学的構造によってカテーテルの先端部が標
的部位と直交できない場合に有用である。照明を増加させる必要がある場合にも有用であ
る。いくつかの実施形態では、追加の光ファイバ150を使用することもでき、カテーテ
ルの長さに沿って照明光及び戻り光が出入りできるように、これらをカテーテル140に
対して径方向に偏向させてもよい。
【0041】
図2Dに示すように、複数の経路にわたって(カテーテルの長軸方向に対して軸方向及
び半径方向に)照明キャビティ152と組織との間で光エネルギーの交換を可能にするた
めに、照明キャビティ152に光誘導部材160を設けてもよい。光誘導部材160は、
照明光を組織に誘導することができ、遠位先端148内の1つ以上の開口部154を通っ
て戻された光を光ファイバ150に誘導してもよい。また、光誘導部材160は、例えば
、ステンレス鋼、プラチナ、プラチナ合金、石英、サファイア、溶融シリカ、金属化プラ
スチック、又は他の同様な材料など、光を反射するか又は光を反射するように改質できる
表面を有する任意の生体適合性材料から作製されてもよい。光誘導部材160は、円錐状
(即ち、滑らか)であってもよいし、任意の数の側面を有する多面状であってもよい。光
誘導部材160は、任意の所望の角度で光を曲げる形状にしてもよい。いくつかの実施形
態では、光誘導部材160は、1つ以上の開口部を介してのみ光を反射する形状にしても
よい。いくつかの実施形態では、光誘導部材160の材料は、310nm〜370nmの
照明にさらされたときに蛍光発光しない材料から選ばれる。いくつかの実施形態では、図
2Dに示されているように、光誘導部材160は、ミラーの中心線を通る1つ以上の孔1
62を含むことができ、照明及び反射光が、カテーテル140と一直線上に軸方向に両方
向に通過する。このような軸方向経路は、遠位先端148の最も末端の表面が生体構造と
接触しているときに有効であってもよい。代わりとなる径方向経路は、
図2Eに示されて
いるように、心房細動の治療で一般的な肺静脈隔離処置の間の患者の左心房に時々あるよ
うに、解剖学的構造によって遠位先端148の最末端表面が標的部位に接触できない場合
に有用である。いくつかの実施形態では、多くの場合に生理食塩水である冷却流体を光が
通過するので、すべての経路で、レンズ効果を必要とせず、光学システムがイリゲーショ
ンシステム170と互換性がある。イリゲーションシステム170は、孔162から血液
を流す役割も果たし、それによって光学部品を清潔に維持してもよい。
【0042】
使用方法
いくつかの実施形態では、組織アブレーションを監視するための方法が提供される。そ
のような方法は、以下に記載されるように、NADH蛍光のレベルを表示することによっ
て損傷形成に影響を及ぼす可能性のある種々の因子に関するリアルタイムの視覚フィード
バックを提供してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、この方法は、組織に損傷を形成するために組織にアブレーシ
ョンエネルギーを印加し、前記組織のNADHを励起するために前記組織をUV光で径方
向、軸方向、又はその両方向に照明し、NADH蛍光のレベルが、アブレーションの開始
時の基準レベルから所定のより低いレベルに低下したか否かを判断するために、照明され
た組織のNADH蛍光のレベルを監視し、NADH蛍光のレベルが所定のより低いレベル
に達したときに、組織のアブレーションを停止することを含む。いくつかの実施形態では
、照明された組織から反射される蛍光光線(特に限定されるものではないが、NADH蛍
光を含む)のスペクトルを収集して、組織タイプを識別することができる。いくつかの実
施形態では、組織は波長が約300nm〜約400nmの光で照明される。いくつかの実
施形態では、波長が約450nm〜470nmの反射光のレベルが監視される。いくつか
の実施形態では、監視されるスペクトルを410nm〜520nmとしてもよい。これに
加え、又は別の選択肢として、非限定的な例として、375nm〜575nmなど、より
広いスペクトルを監視してもよい。いくつかの実施形態では、損傷は、高周波(RF)エ
ネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、
レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー
、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれるアブレーションエネルギーによって形
成されてもよい。いくつかの実施形態では、処置の間ずっと監視できるように、この方法
はNADH蛍光ピークが検出されたときに開始されてもよい。上記のように、これらの方
法は、超音波モニタリングなど他の診断方法と組み合わせて使用されてもよい。
【0044】
損傷前の解剖学的評価
波長約350〜約360nmで心臓組織を照明することにより、心筋細胞のミトコンド
リアに存在するNADHから自家蛍光応答を引き出すことができる。心筋fNADH応答
の変動は、カテーテルが組織に接して配置されていることを示すことができる。いくつか
の実施形態では、350nm〜850nmの範囲、又は
図3に示されるように、NADH
のピーク蛍光が約460nmで起きる400〜700nmでスペクトルシグネチャ全体を
捕らえることができる。循環系の血液は光を吸収することができ、したがって、カテーテ
ルが血液プールにある間は蛍光は検出されず、カテーテルと組織との接触がないことを示
す。カテーテルが心筋に接すると、良好な接触応答を示す特徴的な組織蛍光スペクトルシ
グネチャが誘発される。一方、カテーテルが過度の力で押されてテント状(テンティング
)となると、一時的な虚血によって蛍光が上昇し、スペクトルシグネチャが基準ラインを
超えてシフトする可能性がある。このようなフィードバックの使用は、カテーテルアブレ
ーション中及び操作中の穿孔の危険を低減するのに役立ち、最適でない組織接触部位での
アブレーションを回避し、ひいてはRFアブレーション時間を減少させるのに役立つ。
【0045】
損傷形成評価
返されたスペクトルの情報内容が、損傷形成中にリアルタイムで取得されてもよい。ス
ペクトルの分析及び表示は、リアルタイムで形成される損傷の定性的評価を追加すること
ができる。
図4は、損傷形成中の355nmの照明光源からの戻りスペクトルを示す。f
NADHピークは、約450nm〜550nmである。アブレーション中、約450nm
〜550nmの戻りスペクトルの大きさは、損傷がうまく形成されると時間の経過に伴っ
て著しく減少する。この効果は、細胞がアブレーションされるときの代謝活性の低下、ひ
いてはfNADHの減少によるものである。この低下は、アブレーションをいつ止めるか
の目安として使われても良い。いくつかの実施形態では、fNADH信号が80%以上減
少した時点でアブレーションを停止してもよい。いくつかの実施形態では、50%超のf
NADH信号の減少及び5秒又は10秒といった特定期間より長い定常状態fNADH信
号の結果的な達成を停止点として用いてもよい。いくつかの実施形態では、10秒までな
どの特定期間にわたる60%以上のfNADH信号減少及び結果として得られた5秒超の
定常状態fNADH信号を用いてもよい。
【0046】
図4に示すように、いくつかの実施形態では、より広いスペクトルにわたってスペクト
ルシグネチャが収集されてもよい。例えば、コラーゲン組織のスペクトルパターンは、健
康な心筋で見られるものとは異なっている。コラーゲン組織を撮像すると、スペクトルの
ピークが左にシフトする。これは、大部分が心筋であるか、又はアブレーションするのが
難しいコラーゲンで覆われていると見なされる領域を特定するために、ユーザが使用する
ことができる。
【0047】
また、
図5及び
図6は、心内膜及び心外膜表面における成功したRF損傷形成中の上記
現象をそれぞれ示す。両方のプロットセットで、fNADH(450nm〜470nm)
に相関する波長のピーク振幅は、アブレーション時間に対して正規化されプロットされて
いる。
図5に示されているように、最初の10秒以内でピーク振幅が急激に低下し、心内
膜へのエネルギー印加の持続時間を通じて継続的に低レベルとなっている。
図6は同じプ
ロットを示すが、心外膜にRFエネルギーが印加されている。この効果は両図において同
様であり、本システム及び方法が、心臓のいずれかの表面からも不整脈を除去する技術に
有益となり得ることを示すものである。これは、最初に考えられていたより短時間で良好
に損傷を形成できるという点、及び、エネルギーの持続適用が過剰である可能性があると
いう点で、重要である(インピーダンスについては以下の説明を参照)。文献には、血液
プール又は組織若しくはその両方への過度のアブレーションエネルギーが、心臓内蒸気ポ
ップ、心内膜クレータ形成(endocardial crater formation)(心臓の内層の心内膜露出
)、血栓(凝塊)形成、塞栓(凝血塊の移動)、脳卒中、死亡さえもある、劇的な悪い結
果及び処置上の合併症につながる可能性があることが詳記されている。このように、最適
又は更に適切な損傷を保証しながらエネルギー供給を制限する機能は心臓アブレーション
において有益である。
【0048】
図7A、
図7B及び
図7Cに示すように、いくつかの実施形態では、損傷形成中のカテ
ーテルの安定性を判断するためにスペクトルシグネチャが監視されてもよい。例えば、図
7Aに示されているように、fNADH強度の緩やかな低下が経時的なアブレーション損
傷の形成を示すので、滑らかな応答は安定したカテーテルに対応している。
図7Bは、組
織に対する間欠的又はシフトするカテーテル先端部に対応する、より急峻で、よりノイズ
の多い応答を示す。
図7Cは、fNADHに基づくアブレーション中のカテーテルの動き
をピックアップできることを示すものであり、カテーテルが異なる位置にジャンプしたと
きにfNADHの一時的なシフトが見られる。
【0049】
損傷後の解剖学的評価
最後に、組織を詮索(interrogate)して、不十分なアブレーション又は不適切な損傷
形成の領域、即ち残留ギャップ及び導電ゾーンを特定する機能は、今日のアブレーション
領域における課題である。これは、複数のカテーテルを用いて電気的にしか実行すること
ができず、時間がかかり、面倒で、かなりの蛍光透視(X線照射)を利用する。本システ
ムでは、電気的詮索なしで光学的及び視覚的にギャップを確認することができ、これまで
のアブレーションで見逃されていた領域を、より迅速、安全、良好に特定することできる
。これは、急性処置及び反復アブレーションの両方、又は以前に失敗したアブレーション
処置のケースにおいて重要な意味を有する。
【0050】
図8A及び
図8Bは、損傷が慢性のものであるか新たに作られたものであるかに関わら
ず、以前に形成された損傷を評価するために本開示のシステム及び方法をどのように使用
することができるか、ということを示すものである。
図8Aは、健康な心筋から既存の損
傷の周辺まで移動し、次いで既存の損傷の中心上まで移動するカテーテル先端部の連続的
な概略図を示す。
図8Bは、355nmの照明の下で戻された光学スペクトルの正規化ピ
ーク強度を合成したものを示す。fNADHの中心をなす波長は、カテーテル先端部と接
触している心筋の状態と完全に相関する信号振幅の有意差を有する。
【0051】
インピーダンスとの比較
非限定的な例として、
図9は、損傷形成期間にわたってfNADH応答と治療インピー
ダンスを対比させたものである。インピーダンスは、世界中でアブレーション処置中に使
用される標準的な指標である。通常、インピーダンスは、カテーテルの先端部から患者胴
部に付着させたアブレーション接地パッドまで測定される。医師は、アブレーションエネ
ルギー開始後の最初の2〜3秒で約10〜15オームの低下が認められると予想する。イ
ンピーダンスが低下しない場合、これが心筋とカテーテルとの接触不良によるものらしい
ことが医師に分かり、損傷の試みが中止され、カテーテルが再配置される。上述の方法は
、カテーテルと組織のより良好な接触を保証するために使用することもできる。インピー
ダンスが低下して新たなレベルを維持する場合、通常、医師は一定時間(30〜60秒又
はそれ以上)にわたって損傷形成エネルギーを印加し続ける。インピーダンスが経時的に
上昇する場合、これはカテーテル先端部の過熱の可能性を示す指標となり、下降しない場
合は、心臓壁断裂をもたらす蒸気発生や脱落して塞栓体となり得るカテーテル先端部にお
ける炭化形成といった危険な状態を招くことがある。
【0052】
図9に示されているように、治療インピーダンスと比較したfNADH光学応答の信号
対ノイズ比SNRは、fNADHが損傷形成品質の良好な指標であることを示唆するもの
である。fNADHの大きさの振幅の変化は約80%であり、正規化されたインピーダン
スの同じ低下は10%未満である。また、インピーダンスに対する光学シグネチャのこの
比較は、インピーダンスに対する組織内の活性のより直接的な反映を示すものである。な
ぜなら、インピーダンスは、しばしば、電極から血液プールを通って接地パッドへ至る電
気経路のはるかに大きな反射であるからである。光学的アプローチを用いる場合、あらゆ
る光シグネチャは組織からのものであり、良好な接触が維持されれば、血液プールに由来
するものは皆無である。このように、光学的サインは、インピーダンスシグネチャよりも
組織の活性をはるかに高度に反映している。
【0053】
上記の開示は、本開示の様々な非限定的な実施形態を単に例示するために記載されたも
のであり、限定を意図するものではない。当業者には、本開示の精神及び趣旨を組み込ん
だ開示実施形態の改変を想起できるので、ここに開示される実施形態は、添付の特許請求
の範囲及びその等価物の範囲内のすべてを含むと解釈されるべきである。本願に引用され
る全ての参照文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれているものとする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、損傷評価方法及びそのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、本開示のシステムは、標的組織にアブレーション治療を行う治療機能及び損傷にアクセスするためにカテーテルと組織との接触点からシグネチャスペクトルを収集する診断機能という2つの機能を果たすように構成されたカテーテルを備える。いくつかの実施形態では、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(Nicotinamide Adenine Dinucleotide Hydrogen: NADH)蛍光(fluorescence NADH: fNADH)を使用して組織を撮像するために本開示のシステム及び方法を用いてもよい。一般に、本システムは、組織とカテーテルとの間で光を交換するための光学システムを備えたカテーテルを備えてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、紫外線(ultraviolet: UV)励起によって誘発される組織のNADH蛍光又はその欠如を直接視覚化するようにする。組織から戻ったNADH蛍光シグネチャは、組織とカテーテルシステムとの間の接触の質を判断するために使用することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、カテーテルはその遠位端にアブレーション治療システムを備え、レーザのような光源とスペクトロメータとを備える診断ユニットに接続される。カテーテルは、光源及びスペクトロメータからカテーテルの遠位端まで延び、カテーテルと組織との間の接触箇所へ照明光を供給し、接触箇所からシグネチャNADHスペクトルを受け取ってスペクトロメータに送る、1つ以上のファイバを備えてもよい。標的組織の損傷を評価するためにシグネチャNADHスペクトルを用いてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、損傷のある組織を照明し、組織のシグネチャスペクトルを受信し、組織からのシグネチャスペクトルに基づいた損傷の定性的評価を実施することを含む。この分析は、アブレーション損傷の形成前、形成中、及び形成後にリアルタイムで実施することができる。本開示のシステム及び方法は、心臓組織及びNADHスペクトルに関連付けて記載されているが、本開示のシステム及び方法は、他のタイプの組織及び他のタイプの蛍光に関連付けて用いてもよいことに留意されたい。
【0017】
システム:診断ユニット
図1Aに示すように、アブレーション治療を行うためのシステム100は、アブレーション治療システム110と、視覚化システム120と、カテーテル140とを備える。いくつかの実施形態では、システム100は、1つ以上のイリゲーションシステム(irrigation system)170、超音波システム190,及びナビゲーションシステム200を備えてもよい。このシステムは、以下に記載されるように、別個のディスプレイとすることもできるし、視覚化システム120の一部とすることもできるディスプレイ180を備えてよい。いくつかの実施形態では、このシステムは、RF発生器、イリゲーションシステム170、先端イリゲーション型アブレーションカテーテル140、及び視覚化システム120を備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、アブレーション治療システム110は、カテーテル140にアブレーションエネルギーを供給するように設計されている。アブレーション治療システム110は、高周波(Radio Frequency: RF)エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー(cryoenergy)、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー、又は組織を焼灼するのに使用可能ないずれかのタイプのエネルギーを発生できる1つ以上のエネルギー源を備えてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140はアブレーションエネルギーに適したものとし、アブレーションエネルギーは、RFエネルギー、冷凍エネルギー、レーザ、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、高密度焦点式超音波又は超音波、及びマイクロ波のうちの1以上である。
【0019】
図1Bに示すように、視覚化システム120は、光源122、光測定器124、及びコンピュータシステム126を備えてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、光源122は、健康な心筋細胞に蛍光を誘導するために、標的蛍光体(fluorophore)(いくつかの実施形態では、NADH)の吸収範囲内の出力波長とすることもできる。いくつかの実施形態では、光源122は、NADH蛍光を励起するためのUV光を生成できる固体レーザである。いくつかの実施形態では、波長は約355nm又は355nm±30nmであってもよい。いくつかの実施形態では、光源122はUVレーザとすることができる。レーザ生成UV光は、照明のためにはるかに多くの出力を提供してもよく、カテーテル140のいくつかの実施形態で使用されるように、ファイバベースの照明システムに更に効率的に組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、出力を150mWまで調整できるレーザを使用することができる。
【0021】
光源122の波長範囲は、対象の解剖学的構造によって限定されてもよいし、わずかに短い波長でのみ吸収ピークを示すコラーゲンの過剰蛍光を励起させることなく最大NADH蛍光を生じさせる波長をユーザが具体的に選択してもよい。いくつかの実施形態では、光源122の波長は、300nm〜400nmである。いくつかの実施形態では、光源122の波長は、330nm〜370nmである。いくつかの実施形態では、光源122の波長は、330nm〜355nmである。いくつかの実施形態では、狭帯域355nmの光源が使用されてもよい。光源122の出力パワーは、回復可能な組織蛍光シグネチャを生成するのに十分な高さであるが、細胞損傷を誘発するほど高くないものであってもよい。以下に説明するように、カテーテル140に光を供給するために光源122が光ファイバに接続されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示のシステムでは、光測定器124としてスペクトロメータが利用されてもよい。いくつかの実施形態では、光測定器124は、組織の蛍光を分析及び観察するためにコンピュータシステム126に接続されたカメラを備えてもよい。いくつかの実施形態では、カメラは、NADH蛍光に対応する波長に対して高量子効率を備えていてもよい。そのようなカメラの1つはAndor iXon DV860である。スペクトロメータ124は、組織を視覚化するためにカテーテル140内に延ばすことができる撮像バンドルに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、分光のための撮像バンドルと照明のための光ファイバとを組み合わせてもよい。NADH蛍光発光周波数帯の外側の光を遮断するために、撮像バンドルとカメラとの間に435nm〜485nmの光バンドパスフィルタ、いくつかの実施形態では460nmの光バンドパスフィルタを挿入してもよい。即ち、中心波長460nm、帯域幅50nmのフィルタを利用してもよい。いくつかの実施形態では、撮像される組織のピーク蛍光に従って選択されるNADH蛍光発光周波数帯の外側の光を遮断するために、撮像バンドルとカメラとの間に他の光バンドパスフィルタを挿入してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、光測定装置124は、電荷結合素子(Charge-Coupled Device: CCD)カメラであってもよい。いくつかの実施形態では、スペクトロメータ124は、できるだけ多くの光子を収集することができ、且つ画像のノイズを最小限にするように選択されてもよい。通常、生細胞の蛍光撮像では、CCDカメラの量子効率は約460nmで少なくとも50〜70%であり、光子の30〜50%が無視されることを示している。いくつかの実施形態では、カメラの量子効率は460nmで約90%である。カメラは80KHzのサンプルレートを有するとよい。いくつかの実施形態では、スペクトロメータ124の読み出しノイズは8e
−(電子)以下とすることができる。いくつかの実施形態では、スペクトロメータ124の最小読み出しノイズは3e
−である。本開示のシステム及び方法に他の光測定器を使用することもできる。
【0024】
光ファイバは集められた光を、355nmの反射励起波長を遮断するが、フィルタのカットオフより上の波長で組織から放出された蛍光を通過させるロングパスフィルタに供給できる。組織からのフィルタ処理された光は、次に、光測定器124に取り込まれて分析することができる。コンピュータシステム126は、光測定器124から情報を取得し、それを医師に表示する。
【0025】
いくつかの実施形態では、光データを分析することによって生成されたデジタル画像は、損傷の2D及び3D再構成を行うために使用され、大きさ、形状及び分析に必要な他の特性を示す。いくつかの実施形態では、撮像バンドルは、ディスプレイ180に表示できるNADH蛍光(fNADH)から検査される損傷のデジタル画像を生成できる光測定器124に接続することができる。いくつかの実施形態では、これらの画像をリアルタイムでユーザに表示することができる。更なる介入が必要か又は望ましいかをユーザが判断するのを助けるリアルタイムの詳細(例えば、画像の特定部位における強度又は放射エネルギー)を得るためにソフトウェアを用いて画像を分析することができる。いくつかの実施形態では、NADH蛍光をコンピュータシステム126に直接伝達することもできる。
【0026】
いくつかの実施形態では、光測定器124によって得られた光学データを分析して、特に限定されるものではないが、損傷の深さ及び損傷の大きさなど、アブレーション中及びアブレーション後の損傷に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、光測定器からのデータを分析して、カテーテル140が心筋表面と接触しているかどうか、及び、カテーテルの先端によって心筋表面にどれだけの圧力が加えられているかを判断することができる。いくつかの実施形態では、光測定器具124からのデータを分析して、組織中のコラーゲン又はエラスチンの存在を判断することができる。いくつかの実施形態では、光測定器からのデータが分析され、損傷の進行、損傷の質、心筋との接触、組織のコラーゲン含有量、組織のエラスチン含有量に関して、リアルタイムフィードバックでユーザに提供するようにグラフィカルユーザインタフェースを介してユーザに視覚的に示される。
【0027】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、本開示のシステム100は、超音波システム190を更に備えてもよい。この場合、カテーテル140は、超音波システム190と通信する超音波トランスデューサを備えるとよい。いくつかの実施形態では、超音波は、代謝活性又は損傷の深さと組み合わせて、損傷が貫壁性であるか否かの判断に使用できる組織深さを示すこともできる。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、カテーテル140の遠位端、場合によっては遠位の電極の先端に配置されてもよい。超音波トランスデューサは、カテーテル先端の下又は近傍の組織の厚さを評価するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、カテーテルの先端が心筋に対して比較的垂直であるか又は心筋と比較的平行である状況をカバーする深さ情報を提供するように適合された複数のトランスデューサを備えてもよい。
【0028】
図1Aに示すように、システム100はイリゲーションシステム170も備えることができる。いくつかの実施形態では、イリゲーションシステム170は、アブレーション治療中にカテーテル140内に生理食塩水をポンプ輸送して先端電極を冷却する。これにより、スチームポップ及び炭化(即ち、先端に付着し、脱落して血栓溶解事象を引き起こす可能性のある凝塊)の形成を防止するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、イリゲーション流体は、1つ以上の開口部154を連続的に洗浄するために、カテーテル140の外側の圧力に対して正の圧力に維持される。
【0029】
図1Aに示すように、システム100は、カテーテル140の位置を特定してナビゲートするためのナビゲーションシステム200を備えてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、ナビゲーションシステム200と通信する1つ以上の電磁位置特定センサを備えてもよい。いくつかの実施形態では、電磁位置特定センサを用いてナビゲーションシステム200内でカテーテルの先端部の位置を特定してもよい。センサは、波源位置からの電磁エネルギーを受信し、三角測量又は他の手段によって位置を計算する。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、ナビゲーションシステムのディスプレイ上にカテーテル本体142の位置及びカテーテル本体の湾曲を表現するようになっている2つ以上のトランスデューサを含む。いくつかの実施形態では、ナビゲーションシステム200は1つ以上の磁石を備えても良く、電磁センサ上の磁石によって生成された磁場の変化によってカテーテルの先端を所望の方向に偏向させることができる。手動ナビゲーションを含む他のナビゲーションシステムが採用されてもよい。
【0030】
コンピュータシステム126は、例えば、光源122の制御、光測定器124の制御、特定用途向けソフトウェアの実行、超音波システム、ナビゲーションシステム、及びイリゲーションシステムの制御、並びに同様の操作を含む、システム100の種々のモジュールを制御するようにプログラムすることができる。
【0031】
図1Cは、一例として、本開示の方法及びシステムに関連して使用できる典型的な処理アーキテクチャ308の図を示す。コンピュータ処理装置340は、グラフィック出力のためにディスプレイ340AAに接続することができる。プロセッサ342は、ソフトウェアを実行できるコンピュータプロセッサ342とすることができる。典型的な例は、コンピュータプロセッサ(インテル(登録商標)プロセッサ又はAMD(登録商標)プロセッサなど)、ASIC、マイクロプロセッサ等である。プロセッサ342は、プロセッサ342が動作しているときに命令及びデータを記憶するための、一般的には揮発性RAMメモリとすることが可能なメモリ346に接続することができる。プロセッサ342は、ハードドライブ、FLASHドライブ、テープドライブ、DVDROM、又は同様のデバイスなどの不揮発性記憶媒体とすることができる記憶装置348に接続することもできる。図示されていないが、コンピュータ処理装置340は、一般に種々の形態の入力及び出力を含む。I/Oは、ネットワークアダプタ、USBアダプタ、ブルートゥース(登録商標)無線、マウス、キーボード、タッチパッド、ディスプレイ、タッチスクリーン、LED、振動デバイス、スピーカ、マイクロフォン、センサ、又はコンピュータ処理装置340と一緒に使用する入力又は出力装置であればどのようなものでも含むことができる。プロセッサ342は、特に限定されるものではないが、プロセッサ342などのプロセッサにコンピュータ可読命令を提供できる、電子的、光学的、磁気的、又は他の記憶装置又は送信装置を含むが、これに限定されない他のタイプのコンピュータ可読媒体に接続することもできる。有線式及び無線式両方の、ルータ、プライベート又はパブリックネットワーク、又は他の送信装置又はチャネルを含む、様々な他の形態のコンピュータ可読媒体が、コンピュータに命令を送信又は搬送できる。命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、及びJavaScript(登録商標)を含む任意のコンピュータプログラミング言語のコードを含むことができる。
【0032】
プログラム349は、命令及びデータのうちの少なくとも一方を含むコンピュータプログラム又はコンピュータ可読コードとすることができ、記憶装置348に記憶可能である。命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、及びJavaScript(登録商標)を含む任意のコンピュータプログラミング言語のコードを含むことができる。一般的なシナリオでは、プロセッサ204は、実行するためにプログラム349の命令及びデータのうちの少なくとも一方の一部又は全部をメモリ346にロードすることができる。プログラム349は、特に限定されるものではないが、ウェブブラウザ、ブラウザアプリケーション、アドレス登録プロセス、アプリケーション、又は他の任意のコンピュータアプリケーション又はプロセスなどを含むが、これに限定されない任意のコンピュータプログラム又はプロセスとすることができる。プログラム349は、メモリ346にロードされてプロセッサ342によって実行されるときに、プロセッサ342に様々な動作を実行させる種々の命令及びサブルーチンを含むことができ、それらの命令及びサブルーチンの一部又は全部がここに開示された医療管理方法を実施してもよい。プログラム349は、ハードドライブ、リムーバブルドライブ、CD、DVD、又は任意の他タイプのコンピュータ可読媒体などに限定されず、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体に格納することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示の方法のステップを実行し、本システムの様々な部分を制御して、本開示の方法を達成するために必要な動作を実行するようにコンピュータシステムをプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、組織にアブレーションエネルギーを印加して組織に損傷を形成しながら、組織のNADHを励起するためにUV光で照明された組織から反射される光を収集し、NADH蛍光のレベルが、アブレーションの開始時の基準レベルから所定のより低いレベルに低下したか否か判断するために、照明された組織のNADH蛍光のレベルを監視し、NADH蛍光のレベルが所定のより低いレベルに達したときに、(自動的に又はユーザに促すことによって)組織のアブレーションを停止させるようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態では、照射された組織から反射される蛍光光線(特に限定されるものではないが、NADH蛍光を含む)のスペクトルが収集されて、組織タイプを識別することができる。いくつかの実施形態では、組織は、波長が約300nm〜約400nmの光で照明される。いくつかの実施形態では、約450nm〜470nm波長の反射光のレベルが監視される。いくつかの実施形態では、監視されるスペクトルを410nm〜520nmとしてもよい。これに加え、又は別の選択肢として、非限定的な例として、375nm〜575nmなど、より広いスペクトルを監視してもよい。いくつかの実施形態では、NADH蛍光スペクトル及びより広いスペクトルを同時にユーザに表示することができる。いくつかの実施形態では、損傷は、高周波(RF)エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれるアブレーションエネルギーによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサは、NADH蛍光ピークが検出されたときに(自動的に又はユーザに促すことによって)処置を開始して、処置の間ずっと監視できるようにしてもよい。上記のように、これらの方法は、超音波モニタリングなど他の診断方法と組み合わせて使用されてもよい。
【0034】
システム:カテーテル
上述したように、カテーテル140は、上述したように、照明及び分光のための光ファイバの収容部(accommodation)を備えた標準的なアブレーションカテーテルに基づくものであってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、標準的な経中隔処置と一般的なアクセスツールにより、シースを通して心内腔に送達できる誘導可能なイリゲーション式RFアブレーションカテーテルである。カテーテルのハンドル147上には、治療のための標準的なRF発生器及びイリゲーションシステム170の接続部があってもよい。また、カテーテルハンドル147には、光ファイバも通され、次いで、光ファイバは、組織測定値を得るための診断ユニットに接続される。
【0035】
図1Aに示すように、カテーテル140は、近位端144及び遠位端146を有するカテーテル本体142を含む。カテーテル本体142は、生体適合性材料から作製されてもよく、アブレーション部位へカテーテル140を誘導及び前進させることができるように十分な可撓性を備えるものであってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル本体142は、様々な剛性のゾーンを有することもできる。例えば、近位端144から遠位端146に向かってカテーテル140の剛性が増加してもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル本体142の剛性は、所望の心臓位置へカテーテル140を送達できるように選択される。いくつかの実施形態では、カテーテル140はシースを通し、心臓の左側の場合には、一般的なアクセスツールを用いた標準的な経中隔処置により、心内腔に送達できる誘導可能なイリゲーション式高周波(RF)アブレーションカテーテルとすることができる。カテーテル140は、近位端144にハンドル147を備えることができる。装置又は材料をカテーテル140に通せるように、ハンドル147はカテーテルの1つ以上の管腔(lumen)と連通してもよい。いくつかの実施形態では、ハンドル147は、治療用の標準的なRF発生器及びイリゲーションシステム170の接続部を備えることができる。いくつかの実施形態では、カテーテル140は、照明及び分光のための光ファイバを収容するように構成された1つ以上のアダプタも備えることができる。
【0036】
図1Aに示すカテーテル140は、
図2Aに示すように、側壁156と前壁158とを有する遠位先端148を遠位端146に備えることができる。前壁158は、例えば、平坦状、円錐状又はドーム状とすることもできる。いくつかの実施形態では、遠位先端148は、電気記録感知のような診断用、アブレーションエネルギーを放出するためなどの治療用、又はその両方のために、電極として作用するように構成することができる。アブレーションエネルギーが必要とされるいくつかの実施形態では、カテーテル140の遠位先端148は、アブレーション電極又はアブレーション要素として機能することができる。
【0037】
RFエネルギーが提供される実施形態では、遠位先端148をRFエネルギー源(カテーテルの外部)に接続するための配線をカテーテルの管腔に通すことができる。遠位先端148は、カテーテルの1つ以上の管腔と連通するポートを備えることができる。遠位先端148は任意の生体適合性材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、遠位先端148が電極として機能するように構成される場合、遠位先端148は、特に限定されるものではないが、プラチナ、プラチナ−イリジウム、ステンレス鋼、チタン、又は類似の材料などの金属で作製することができる。
【0038】
図2Aに示すように、光ファイバ又は撮像バンドル150は、視覚化システム120から、カテーテル本体142を通って、遠位先端148によって画定される照明キャビティ152又は照明区画に通すこともできる。遠位先端148には、照明キャビティ152と組織との間で光エネルギーを交換するための1つ以上の開口部154が設けられてもよい。いくつかの実施形態では、複数の開口部154があっても、アブレーション電極としての遠位先端148の機能は損なわれない。開口部は、前壁158、側壁156、又はその両方に配置できる。開口部154は、イリゲーションポートとして使用することもできる。光は、光ファイバ150によって遠位先端148に届けられ、遠位先端148の近傍の組織を照明する。この照明光は、反射されるか、又は組織を蛍光発光させる。組織によって反射された光及び組織から蛍光発光された光は、遠位先端148内の光ファイバ150によって集められ、視覚化システム120に戻される。いくつかの実施形態では、遠位先端の外側に光を誘導してカテーテル140の外側の組織を照明し、且つ組織から光を収集するために同じ光ファイバ150又はファイババンドルを使用することができる。
【0039】
図2Aに示すように、いくつかの実施形態では、カテーテル140は、光ファイバ150がカテーテル本体142を通って前進することができる視覚化管腔161を有することができる。光ファイバ150は、視覚化管腔161を通って照明キャビティ152内に進められ、組織を照明し、開口部154を通して反射光を受け取ることもできる。光ファイバ150は、必要に応じて、開口部154を通って照明キャビティ152を越えて前進させてもよい。
【0040】
図2A及び
図2Bに示されているように、視覚化管腔161の他に、カテーテル140は、イリゲーション液をイリゲーションシステム170から遠位先端148の開口部154(イリゲーションポート)に通すためのイリゲーション管腔163と、例えばRFアブレーションエネルギー用のアブレーション管腔164にワイヤーを通すことなどによって、アブレーション治療システム110から遠位先端148へアブレーションエネルギーを渡すためのアブレーション管腔164とを更に備えることもできる。カテーテルの管腔は複数の目的のために使用されてもよいし、複数の管腔が同じ目的のために使用されてもよいことに留意されたい。また、
図2A及び
図2Bでは、管腔を同心に示しているが、管腔は他の構成を採用することもできる。
【0041】
図2A及び
図2Bに示されているように、いくつかの実施形態では、カテーテルの中央管腔を視覚化管腔161として利用することもできる。いくつかの実施形態では、
図2Cに示されているように、視覚化管腔161は、カテーテル140の中心アクセスからずらすこともできる。
【0042】
いくつかの実施形態では、光は、側壁156の開口部154から径方向に誘導されてもよいし、これとは別に、又はこれに追加して、前壁158の開口部を通って誘導されてもよい。このようにして、照明キャビティ152と組織との間の光エネルギーの交換は、
図2Eに示されているように、複数の経路でカテーテルの長軸方向に対して、軸方向、径方向、又はその両方向で行われる。これは、解剖学的構造によってカテーテルの先端部が標的部位と直交できない場合に有用である。照明を増加させる必要がある場合にも有用である。いくつかの実施形態では、追加の光ファイバ150を使用することもでき、カテーテルの長さに沿って照明光及び戻り光が出入りできるように、これらをカテーテル140に対して径方向に偏向させてもよい。
【0043】
図2Dに示すように、複数の経路にわたって(カテーテルの長軸方向に対して軸方向及び半径方向に)照明キャビティ152と組織との間で光エネルギーの交換を可能にするために、照明キャビティ152に光誘導部材160を設けてもよい。光誘導部材160は、照明光を組織に誘導することができ、遠位先端148内の1つ以上の開口部154を通って戻された光を光ファイバ150に誘導してもよい。また、光誘導部材160は、例えば、ステンレス鋼、プラチナ、プラチナ合金、石英、サファイア、溶融シリカ、金属化プラスチック、又は他の同様な材料など、光を反射するか又は光を反射するように改質できる表面を有する任意の生体適合性材料から作製されてもよい。光誘導部材160は、円錐状(即ち、滑らか)であってもよいし、任意の数の側面を有する多面状であってもよい。光誘導部材160は、任意の所望の角度で光を曲げる形状にしてもよい。いくつかの実施形態では、光誘導部材160は、1つ以上の開口部を介してのみ光を反射する形状にしてもよい。いくつかの実施形態では、光誘導部材160の材料は、310nm〜370nmの照明にさらされたときに蛍光発光しない材料から選ばれる。いくつかの実施形態では、
図2Dに示されているように、光誘導部材160は、ミラーの中心線を通る1つ以上の孔162を含むことができ、照明及び反射光が、カテーテル140と一直線上に軸方向に両方向に通過する。このような軸方向経路は、遠位先端148の最も末端の表面が生体構造と接触しているときに有効であってもよい。代わりとなる径方向経路は、
図2Eに示されているように、心房細動の治療で一般的な肺静脈隔離処置の間の患者の左心房に時々あるように、解剖学的構造によって遠位先端148の最末端表面が標的部位に接触できない場合に有用である。いくつかの実施形態では、多くの場合に生理食塩水である冷却流体を光が通過するので、すべての経路で、レンズ効果を必要とせず、光学システムがイリゲーションシステム170と互換性がある。イリゲーションシステム170は、孔162から血液を流す役割も果たし、それによって光学部品を清潔に維持してもよい。
【0044】
使用方法
いくつかの実施形態では、組織アブレーションを監視するための方法が提供される。そのような方法は、以下に記載されるように、NADH蛍光のレベルを表示することによって損傷形成に影響を及ぼす可能性のある種々の因子に関するリアルタイムの視覚フィードバックを提供してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、この方法は、組織に損傷を形成するために組織にアブレーションエネルギーを印加し、前記組織のNADHを励起するために前記組織をUV光で径方向、軸方向、又はその両方向に照明し、NADH蛍光のレベルが、アブレーションの開始時の基準レベルから所定のより低いレベルに低下したか否かを判断するために、照明された組織のNADH蛍光のレベルを監視し、NADH蛍光のレベルが所定のより低いレベルに達したときに、組織のアブレーションを停止することを含む。いくつかの実施形態では、照明された組織から反射される蛍光光線(特に限定されるものではないが、NADH蛍光を含む)のスペクトルを収集して、組織タイプを識別することができる。いくつかの実施形態では、組織は波長が約300nm〜約400nmの光で照明される。いくつかの実施形態では、波長が約450nm〜470nmの反射光のレベルが監視される。いくつかの実施形態では、監視されるスペクトルを410nm〜520nmとしてもよい。これに加え、又は別の選択肢として、非限定的な例として、375nm〜575nmなど、より広いスペクトルを監視してもよい。いくつかの実施形態では、損傷は、高周波(RF)エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれるアブレーションエネルギーによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、処置の間ずっと監視できるように、この方法はNADH蛍光ピークが検出されたときに開始されてもよい。上記のように、これらの方法は、超音波モニタリングなど他の診断方法と組み合わせて使用されてもよい。
【0046】
損傷前の解剖学的評価
波長約350〜約360nmで心臓組織を照明することにより、心筋細胞のミトコンドリアに存在するNADHから自家蛍光応答を引き出すことができる。心筋fNADH応答の変動は、カテーテルが組織に接して配置されていることを示すことができる。いくつかの実施形態では、350nm〜850nmの範囲、又は
図3に示されるように、NADHのピーク蛍光が約460nmで起きる400〜700nmでスペクトルシグネチャ全体を捕らえることができる。循環系の血液は光を吸収することができ、したがって、カテーテルが血液プールにある間は蛍光は検出されず、カテーテルと組織との接触がないことを示す。カテーテルが心筋に接すると、良好な接触応答を示す特徴的な組織蛍光スペクトルシグネチャが誘発される。一方、カテーテルが過度の力で押されてテント状(テンティング)となると、一時的な虚血によって蛍光が上昇し、スペクトルシグネチャが基準ラインを超えてシフトする可能性がある。このようなフィードバックの使用は、カテーテルアブレーション中及び操作中の穿孔の危険を低減するのに役立ち、最適でない組織接触部位でのアブレーションを回避し、ひいてはRFアブレーション時間を減少させるのに役立つ。
【0047】
損傷形成評価
返されたスペクトルの情報内容が、損傷形成中にリアルタイムで取得されてもよい。スペクトルの分析及び表示は、リアルタイムで形成される損傷の定性的評価を追加することができる。
図4は、損傷形成中の355nmの照明光源からの戻りスペクトルを示す。fNADHピークは、約450nm〜550nmである。アブレーション中、約450nm〜550nmの戻りスペクトルの大きさは、損傷がうまく形成されると時間の経過に伴って著しく減少する。この効果は、細胞がアブレーションされるときの代謝活性の低下、ひいてはfNADHの減少によるものである。この低下は、アブレーションをいつ止めるかの目安として使われても良い。いくつかの実施形態では、fNADH信号が80%以上減少した時点でアブレーションを停止してもよい。いくつかの実施形態では、50%超のfNADH信号の減少及び5秒又は10秒といった特定期間より長い定常状態fNADH信号の結果的な達成を停止点として用いてもよい。いくつかの実施形態では、10秒までなどの特定期間にわたる60%以上のfNADH信号減少及び結果として得られた5秒超の定常状態fNADH信号を用いてもよい。
【0048】
図4に示すように、いくつかの実施形態では、より広いスペクトルにわたってスペクトルシグネチャが収集されてもよい。例えば、コラーゲン組織のスペクトルパターンは、健康な心筋で見られるものとは異なっている。コラーゲン組織を撮像すると、スペクトルのピークが左にシフトする。これは、大部分が心筋であるか、又はアブレーションするのが難しいコラーゲンで覆われていると見なされる領域を特定するために、ユーザが使用することができる。
【0049】
また、
図5及び
図6は、心内膜及び心外膜表面における成功したRF損傷形成中の上記現象をそれぞれ示す。両方のプロットセットで、fNADH(450nm〜470nm)に相関する波長のピーク振幅は、アブレーション時間に対して正規化されプロットされている。
図5に示されているように、最初の10秒以内でピーク振幅が急激に低下し、心内膜へのエネルギー印加の持続時間を通じて継続的に低レベルとなっている。
図6は同じプロットを示すが、心外膜にRFエネルギーが印加されている。この効果は両図において同様であり、本システム及び方法が、心臓のいずれかの表面からも不整脈を除去する技術に有益となり得ることを示すものである。これは、最初に考えられていたより短時間で良好に損傷を形成できるという点、及び、エネルギーの持続適用が過剰である可能性があるという点で、重要である(インピーダンスについては以下の説明を参照)。文献には、血液プール又は組織若しくはその両方への過度のアブレーションエネルギーが、心臓内蒸気ポップ、心内膜クレータ形成(endocardial crater formation)(心臓の内層の心内膜露出)、血栓(凝塊)形成、塞栓(凝血塊の移動)、脳卒中、死亡さえもある、劇的な悪い結果及び処置上の合併症につながる可能性があることが詳記されている。このように、最適又は更に適切な損傷を保証しながらエネルギー供給を制限する機能は心臓アブレーションにおいて有益である。
【0050】
図7A、
図7B及び
図7Cに示すように、いくつかの実施形態では、損傷形成中のカテーテルの安定性を判断するためにスペクトルシグネチャが監視されてもよい。例えば、
図7Aに示されているように、fNADH強度の緩やかな低下が経時的なアブレーション損傷の形成を示すので、滑らかな応答は安定したカテーテルに対応している。
図7Bは、組織に対する間欠的又はシフトするカテーテル先端部に対応する、より急峻で、よりノイズの多い応答を示す。
図7Cは、fNADHに基づくアブレーション中のカテーテルの動きをピックアップできることを示すものであり、カテーテルが異なる位置にジャンプしたときにfNADHの一時的なシフトが見られる。
【0051】
損傷後の解剖学的評価
最後に、組織を詮索(interrogate)して、不十分なアブレーション又は不適切な損傷形成の領域、即ち残留ギャップ及び導電ゾーンを特定する機能は、今日のアブレーション領域における課題である。これは、複数のカテーテルを用いて電気的にしか実行することができず、時間がかかり、面倒で、かなりの蛍光透視(X線照射)を利用する。本システムでは、電気的詮索なしで光学的及び視覚的にギャップを確認することができ、これまでのアブレーションで見逃されていた領域を、より迅速、安全、良好に特定することできる。これは、急性処置及び反復アブレーションの両方、又は以前に失敗したアブレーション処置のケースにおいて重要な意味を有する。
【0052】
図8A及び
図8Bは、損傷が慢性のものであるか新たに作られたものであるかに関わらず、以前に形成された損傷を評価するために本開示のシステム及び方法をどのように使用することができるか、ということを示すものである。
図8Aは、健康な心筋から既存の損傷の周辺まで移動し、次いで既存の損傷の中心上まで移動するカテーテル先端部の連続的な概略図を示す。
図8Bは、355nmの照明の下で戻された光学スペクトルの正規化ピーク強度を合成したものを示す。fNADHの中心をなす波長は、カテーテル先端部と接触している心筋の状態と完全に相関する信号振幅の有意差を有する。
【0053】
インピーダンスとの比較
非限定的な例として、
図9は、損傷形成期間にわたってfNADH応答と治療インピーダンスを対比させたものである。インピーダンスは、世界中でアブレーション処置中に使用される標準的な指標である。通常、インピーダンスは、カテーテルの先端部から患者胴部に付着させたアブレーション接地パッドまで測定される。医師は、アブレーションエネルギー開始後の最初の2〜3秒で約10〜15オームの低下が認められると予想する。インピーダンスが低下しない場合、これが心筋とカテーテルとの接触不良によるものらしいことが医師に分かり、損傷の試みが中止され、カテーテルが再配置される。上述の方法は、カテーテルと組織のより良好な接触を保証するために使用することもできる。インピーダンスが低下して新たなレベルを維持する場合、通常、医師は一定時間(30〜60秒又はそれ以上)にわたって損傷形成エネルギーを印加し続ける。インピーダンスが経時的に上昇する場合、これはカテーテル先端部の過熱の可能性を示す指標となり、下降しない場合は、心臓壁断裂をもたらす蒸気発生や脱落して塞栓体となり得るカテーテル先端部における炭化形成といった危険な状態を招くことがある。
【0054】
図9に示されているように、治療インピーダンスと比較したfNADH光学応答の信号対ノイズ比SNRは、fNADHが損傷形成品質の良好な指標であることを示唆するものである。fNADHの大きさの振幅の変化は約80%であり、正規化されたインピーダンスの同じ低下は10%未満である。また、インピーダンスに対する光学シグネチャのこの比較は、インピーダンスに対する組織内の活性のより直接的な反映を示すものである。なぜなら、インピーダンスは、しばしば、電極から血液プールを通って接地パッドへ至る電気経路のはるかに大きな反射であるからである。光学的アプローチを用いる場合、あらゆる光シグネチャは組織からのものであり、良好な接触が維持されれば、血液プールに由来するものは皆無である。このように、光学的サインは、インピーダンスシグネチャよりも組織の活性をはるかに高度に反映している。
【0055】
上記の開示は、本開示の様々な非限定的な実施形態を単に例示するために記載されたものであり、限定を意図するものではない。当業者には、本開示の精神及び趣旨を組み込んだ開示実施形態の改変を想起できるので、ここに開示される実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内のすべてを含むと解釈されるべきである。本願に引用される全ての参照文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれているものとする。