(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-104544(P2021-104544A)
(43)【公開日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】鋳型および中子の造型方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/18 20060101AFI20210625BHJP
B22C 1/10 20060101ALI20210625BHJP
【FI】
B22C1/18 B
B22C1/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【公開請求】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-184694(P2020-184694)
(22)【出願日】2020年10月19日
(71)【出願人】
【識別番号】520432129
【氏名又は名称】大阪硅曹株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 義明
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092BA09
4E092BA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便であって且つ崩壊性の高い鋳型および中子の造型方法を提供する。
【解決手段】本発明の鋳型および中子の造型方法は、鋳物砂と、鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の粘結剤としての水ガラスと、鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下の添加剤としての層状ケイ酸アルミニウムと、を混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる鋳型および中子の造型方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂と、鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の粘結剤としての水ガラスと、鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下の添加剤としての層状ケイ酸アルミニウムと、を混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる鋳型および中子の造型方法。
【請求項2】
上記粘結剤の水ガラスがケイ酸ナトリウムであり、そのSiO2/Na2Oのモル比が1.6以上4.2以下である請求項1に記載の鋳型および中子の造型方法。
【請求項3】
上記硬化が、造型用型の加熱による硬化法、造型用型内への熱風吹込みによる硬化法およびCO2ガス吹込みによる硬化法である請求項1または請求項2に記載の鋳型および中子の造型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型および中子の造型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳型および中子の造型には無機粘結剤としての水ガラスと併せて様々な添加剤が用いられている。
例えば、鋳型用の材料として、鋳物砂と、粘結剤としての水ガラスと、添加剤としての微粒子状非晶質二酸化ケイ素および層状シリケートを用いる鋳型の造型方法が開示されている。(例えば、特表2020−516460号参照)。
【0003】
また、鋳型用の材料として、鋳物砂と、水ガラスを含む粘結剤と、溶湯の熱により気体を発生する無機化合物粒子と、を用いて発泡砂の製造および鋳型の造型方法が開示されている。(例えば、特許第5972393号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020−516460号
【特許文献2】特許第5972393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェノール樹脂やフラン樹脂を粘結剤とした有機粘結剤鋳型は鋳造後の鋳型の崩壊が良好ではあるが、注湯時に有機粘結剤が高温の熱により分解され、鋳型から多量のガスが発生するため、ガス欠陥を発生する可能性が高くなる問題がある。
【0006】
一方、水ガラスを粘結剤とした無機粘結剤鋳型は注湯時に鋳型からのガス発生量が比較的少ないため、有機粘結剤鋳型に比べガス欠陥が少ない。しかし、水ガラスを用いた鋳型および中子は注湯後の崩壊性が悪く改善が求められている。特に鋳型および中子造型時に固化していた水ガラスの成分がおおよそ700℃を超える温度域になると液状のガラスに変化し、常温に戻る際そのガラス成分のまま固化が起こり鋳型強度が高くなるため、崩壊性が悪く鋳物砂の再生が難しいという欠点があり、この問題に対してより簡便な方法での対策が強く求められている。
【0007】
即ち本発明は、上記問題に鑑み、水ガラスを粘結剤とした無機粘結剤鋳型の温度が700℃を超える温度域においてより簡便な方法で鋳型および中子の崩壊性が高く、且つ、鋳物砂の再生が容易な鋳型および中子の造型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、鋳物砂と、鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の粘結剤としての水ガラスと、鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下の添加剤としての層状ケイ酸アルミニウムと、を混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる鋳型および中子の造型方法によって達成される。
【0009】
粘結剤としての水ガラスはケイ酸ナトリウムであり、配合量は鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下が好ましい。3.0質量%未満の場合は鋳型および中子としての強度が不十分となり、15.0質量%を超えて配合した場合は鋳型および中子の強度が必要以上に大きくなりすぎてしまう。またケイ酸ナトリウムのSiO
2/Na
2Oのモル比は1.6以上4.2以下の範囲で使用でき、特に3.0以上4.2以下の範囲で有することが鋳型および中子の崩壊性の点から好ましい。
【0010】
添加剤の層状ケイ酸アルミニウムは、カオリン、焼成カオリン、スメクタイトまたはマイカが使用できる。特に焼成カオリンが好ましい。配合量は鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下が好ましい。3.0質量%未満の場合は鋳型および中子の崩壊性が低くなり、10.0質量%を超える場合は鋳型および中子としての強度が不十分になる。
【0011】
鋳型および中子の造型方法は、造型用型の加熱による硬化法、造型型内への熱風吹込みによる硬化法およびCO
2ガス吹込みによる硬化法が使用できる。また造型用型の加熱温度は100℃以上300℃以下で特に150℃以上200℃以下が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋳型および中子の崩壊性が極めて良好で、崩壊後の鋳物砂の再生が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1における焼成温度と抗折強度の関係図表。
【
図2】比較例1における焼成温度と抗折強度の関係図表。
【
図3】比較例2における焼成温度と抗折強度の関係図表。
【
図4】比較例3における焼成温度と抗折強度の関係図表。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
(実施形態)
本実施形態では、鋳物砂に粘結剤として水ガラスを配合し、添加物として層状ケイ酸アルミニウムを配合した混合物を用いて鋳型および中子を造型する。
【0016】
鋳物砂としては、従来より使用されている鋳物砂を使用することができ、例えば珪砂またはオリビン砂を使用することができる。他の適切な鋳物砂としては、例えばジルコン砂やクロマイト砂がある。
【0017】
粘結剤としての水ガラスはケイ酸ナトリウムを使用することができ、そのSiO
2/Na
2Oのモル比は1.6以上4.2以下、特に3.0以上4.2以下の範囲で有することが好ましい。
【0018】
上記混合物の造型としては、造型用型の加熱による硬化法、造型型内への熱風吹込みによる硬化法およびCO
2ガス吹込みによる硬化法が使用することができる。
【実施例】
【0019】
本実施例では、鋳物砂として珪砂を使用し水ガラスとしてモル比3.2のケイ酸ナトリウムを配合し、添加物として層状ケイ酸アルミニウムの焼成カオリンを配合した混合物を用いて直径60mm厚さ5mmの円形金型に充填し、金型を200℃にて5分間加熱して造型した試験片について、焼成炉にて300℃から1100℃まで100℃毎の温度にて各試験片を1時間焼成を行い、常温に戻したのち振動を与えて試験片を崩壊し、355μmの網目の篩にかけて通過率の測定を行った。同様に長さ60mm縦横10mmの角柱試験片を作成し、焼成炉にて300℃から1100℃まで100℃毎の温度にて各試験片を1時間焼成を行い、常温に戻したのち抗折強度の測定を行った。なお、珪砂はあらかじめ355μmの網目の篩にかけ、355μm以上の珪砂を取り除いたものを使用した。
【実施例1】
【0020】
珪砂にケイ酸ナトリウムを8.5%および層状ケイ酸アルミニウムとして焼成カオリンを5.0%添加し混合したのち直径60mm厚さ5mmの円形金型に充填し、金型を200℃にて5分間加熱し試験片を9個作成し、焼成炉にて300℃から1100℃まで100℃毎の温度にて各試験片を1時間焼成を行い、常温に戻したのち崩壊性の測定を行った。同様に長さ60mm縦横10mmの角柱試験片を作成し、焼成を行ったのち抗折強度の測定を行った。
【0021】
(比較例1)珪砂にケイ酸ナトリウム8.5%添加し、添加剤の配合は行わずに実施例1と同様な測定を行った。
【0022】
(比較例2)珪砂にケイ酸ナトリウムを8.5%および非層状ケイ酸アルミニウムとしてムライトを5.0%添加して、実施例1と同様な測定を行った。
【0023】
(比較例3)珪砂にケイ酸ナトリウムを8.5%および層状ケイ酸アルミニウムとして焼成カオリンを2.5%添加して、実施例1と同様な測定を行った。
【0024】
(評価方法)
1.崩壊性
実施例1、比較例1、比較例2および比較例3にて作成した円形試験片を振動にて崩壊後355μmの網目の篩にかけ通過率の測定を行い、崩壊した珪砂の通過率が95%以上の場合は○、通過率95%未満の場合を×とし、評価を行った。
【0025】
2.抗折強度
実施例1、比較例1、比較例2および比較例3にて作成した角柱試験片を用いて抗折強度測定を行った。試験方法は、3点曲げ試験法を用いて測定を行った。
【0026】
(評価)
崩壊性について実施例1、比較例1、比較例2および比較例3の結果を表1に示す。
【表1】
【0027】
本発明である実施例1は添加剤として層状ケイ酸アルミニウムの焼成カオリンを5.0%添加した例である。700℃以上1100℃以下において、極めて良好な崩壊性を示し鋳物砂の再生が容易であった。
【0028】
比較例1は、添加剤を配合していない例である。300℃から1100℃までの全ての温度域で通過率が95%未満であり、篩の上に多くの試験片の塊が残り、鋳物砂の再生は容易ではなかった。
【0029】
比較例2は、添加剤として非層状のケイ酸アルミニウムのムライトを5.0%添加した例である。300℃から1100℃までの全ての温度域で通過率が95%未満であり、篩の上に多くの試験片の塊が残り、鋳物砂の再生は容易ではなかった。
【0030】
比較例3は、添加剤として層状のケイ酸アルミニウムの焼成カオリンを2.5%添加した例である。300℃から1100℃までの全ての温度域で通過率が95%未満であり、篩の上に多くの試験片の塊が残り、鋳物砂の再生は容易ではなかった。
【0031】
抗折強度について実施例1、比較例1、比較例2および比較例3についてそれぞれ
図1、
図2、
図3および
図4に示す。
【0032】
本発明である実施例1は700℃から1100℃の間で抗折強度が0kgf/cm
2付近を示した。
【0033】
比較例1は、抗折強度がすべての温度域で20kgf/cm
2以上あり0kgf/cm
2付近を示すことはなかった。
【0034】
比較例2は、抗折強度がすべての温度域で10kgf/cm
2以上あり0kgf/cm
2付近を示すことはなかった。
【0035】
比較例3は、抗折強度がすべての温度域で10kgf/cm
2以上あり0kgf/cm
2付近を示すことはなかった。
【0036】
(総合評価)
本発明の実施例1は、700℃以上において崩壊性および抗折強度ともに良好な結果となり、容易に鋳物砂の再生ができた。
一方、比較例1、比較例2および比較例3は、700℃以上において崩壊性及および抗折強度ともに良好な結果を得ることができなかった。
【手続補正書】
【提出日】2021年3月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
水ガラスを粘結剤とした無機粘結剤鋳型の温度が700℃を超える温度域においてより簡便な方法で鋳型および中子の崩壊性が高く、且つ、鋳物砂の再生が容易な鋳型および中子の造型方法であって、鋳物砂と、鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の粘結剤としての水ガラスと、鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下の添加剤としての層状ケイ酸アルミニウムと、を混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる鋳型および中子の造型方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上述の目的は、
水ガラスを粘結剤とした無機粘結剤鋳型の温度が700℃を超える温度域においてより簡便な方法で鋳型および中子の崩壊性が高く、且つ、鋳物砂の再生が容易な鋳型および中子の造型方法であって、鋳物砂と、鋳物砂に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の粘結剤としての水ガラスと、鋳物砂に対して3.0質量%以上10.0質量%以下の添加剤としての層状ケイ酸アルミニウムと、を混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる鋳型および中子の造型方法によって達成される。