【課題】肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖体およびそれらのコンジュゲート、ならびにそれらを調製するためのプロセスを提供する。
【解決手段】担体タンパク質に共有結合的に連結された単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性組成物であって、ヒト対象に投与した場合、オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)において肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15Bおよび15Cを死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する、免疫原性組成物である。
担体タンパク質に共有結合的に連結された単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性組成物であって、ヒト対象に投与した場合、オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)において肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15Bおよび15Cを死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する、免疫原性組成物。
オプソニン化貪食作用死滅アッセイ(OPA)により決定する場合、対象の少なくとも50%において、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bおよび15Cに対して少なくとも1:8のタイターを惹起することが可能である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
ヒト対象に投与した場合、ELISAアッセイにより決定する場合、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4または0.5μg/mlの濃度で、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bおよび15Cの多糖体に結合することが可能であるIgG抗体を惹起することができる、請求項2に記載の免疫原性組成物。
活性型多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比が、少なくとも0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9または0.95である、請求項1または3に記載の免疫原性組成物。
ヒト対象において、血清型15Bおよび15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)と関連がある肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染、疾患または状態を治療または予防するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、本明細書に含まれる本発明の好ましい実施形態および実施例の以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、本発明に関わる当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本発明の実行または試験において、本明細書に記載するものに類似するまたはそれらと同等である任意の方法および材料を使用することができるが、特定の好ましい方法および材料を本明細書に記載する。実施形態の記載および本発明の請求において、特定の用語を下記に記載する定義に従って使用する。
【0018】
定義
本明細書で使用する場合、多糖体または多糖体−担体タンパク質のコンジュゲートの「分子量」は、多角レーザー光散乱検出器(MALLS)と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により計算する分子量を指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「遊離の多糖体」は、担体タンパク質に共有結合的にコンジュゲートしていないが、にもかかわらず、血清型15B莢膜多糖体−担体タンパク質のコンジュゲート組成物中に存在する血清型15B莢膜多糖体を意味する。遊離の多糖体は、多糖体−担体タンパク質のコンジュゲートと非共有結合的に関わることができる(すなわち、コンジュゲートに非共有結合的に結合し得、それに吸着し得、またはその中にもしくはそれと共に捕捉され得る)。
【0020】
遊離の多糖体のパーセントを、血清型15B莢膜多糖体−担体タンパク質のコンジュゲートの最終的な精製の後に測定する。好ましくは、遊離の多糖体のパーセントは、最終的な精製から4週間以内に測定する。遊離の多糖体のパーセントは、試料中の全多糖体のパーセントとして表現する。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「血清型15B多糖体」または「血清型15B莢膜多糖体」は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「血清型15B糖コンジュゲート」または「血清型15Bコンジュゲート」は、担体タンパク質に共有結合的にコンジュゲートさせた単離血清型15B多糖体を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「酸化の程度」(DO)は、単離多糖体を酸化剤で活性化する場合に生ずるアルデヒド基1つ当たりの糖反復単位の数を指す。多糖体の酸化の程度は、当業者に公知の日常的な方法を使用して決定することができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、ヒトを含めた哺乳動物、または鳥、魚、爬虫類、両生類もしくは任意のその他の動物を指す。用語「対象」はまた、家庭用ペットまたは研究動物も含む。家庭用ペットおよび研究動物の非限定的な例として、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ケナガイタチ、サル、鳥、ヘビ、トカゲ、魚、カメおよびカエルが挙げられる。用語「対象」はまた、家畜動物も含む。家畜動物の非限定的な例として、アルパカ、バイソン、ラクダ、ウシ、シカ、ブタ、ウマ、ラマ、ラバ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、トナカイ、ヤク、ニワトリ、ガチョウおよびシチメンチョウが挙げられる。
【0025】
単離血清型15B莢膜多糖体
図1に示すように、血清型15Bの多糖体の反復単位は、分枝三糖骨格(1つのN−アセチルグルコサミン(Glc
pNAc)、1つのガラクトピラノース(Gal
p)および1つのグルコピラノース(Glc
p))と、Glc
pNAcのC4ヒドロキシル基に連結するαGal
p−βGal
pの二糖分枝とからなる。ホスホグリセロールは、二糖分枝中のβGal
p残基のC3ヒドロキシル基に連結する。血清型15B莢膜多糖体はO−アセチル化されており、O−アセチル化の総量は、多糖体の反復単位1つ当たりおよそ0.8〜0.9個のO−アセチル基である(例えば、C.Jonesら、Carbohydrate Research、340(2005)403〜409を参照されたい)。血清型15C血清型の莢膜多糖体は、血清型15Bと同一の骨格構造を有するが、O−アセチル化を欠く。
【0026】
本発明の単離血清型15B多糖体は、
(a)血清型15B肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、
(b)前記発酵培養物中の細菌細胞を溶解するステップと、
(c)発酵培養物から血清型15B多糖体を精製するステップと、
(d)精製した血清型15B多糖体を高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節するステップと
を含むプロセスにより得ることができる。
【0027】
血清型15B多糖体は、当業者に公知の単離の手順を使用して細菌から直接得ることができる(例えば、米国特許出願公開第20060228380号、第20060228381号、第20070184071号、第20070184072号、第20070231340号および第20080102498号、またはWO2008118752号に開示されている方法を参照されたい)。さらに、それらの多糖体は、合成のプロトコールを使用して生成することもできる。
【0028】
血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の菌株は、樹立された培養収集物(例えば、ATCC寄託菌株番号:ATCC10354もしくはStreptococcal Reference Laboratory、Center for Disease Control and Prevention、Atlanta、GAから入手可能な菌株等)または臨床検体から得ることができる。
【0029】
細菌細胞は、好ましくは、大豆ベースの培地中で増殖させる。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を生成する細菌細胞の発酵に続き、細菌細胞を溶解して、細胞可溶化液を生成する。細菌細胞は、任意の溶解剤を使用して溶解することができる。「溶解剤」は、細胞壁の崩壊および自己溶菌酵素の放出を助け、それにより、細胞の溶解を引き起こす任意の薬剤であり、例えば、洗剤が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「洗剤」は、細菌細胞の溶解を誘発することが可能な任意のアニオン性またはカチオン性の洗剤を指す。本発明の方法の範囲内で使用するためのそのような洗剤の代表的な例として、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウロイルサルコシン、ケノデオキシコール酸ナトリウムおよびサポニンが挙げられる。
【0030】
本発明の一実施形態では、細菌細胞を溶解するために使用する溶解剤はDOCである。DOCは、胆汁酸であるデオキシコール酸のナトリウム塩であり、デオキシコール酸は通常、ウシまたは雄ウシ等の生物学的供給源から誘導される。DOCは、LytAタンパク質を活性化し、このタンパク質は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)中で細胞壁の成長および分裂に関わる自己溶菌酵素である。LytAタンパク質は、C末端部分にコリン結合ドメインを有し、lytA遺伝子の突然変異により、DOCを用いる溶解に対して抵抗性を示すLytA突然変異体が生成することが公知である。
【0031】
本発明の一実施形態では、細菌細胞を溶解するために使用する溶解剤は、動物から誘導されない溶解剤である。本発明の方法の範囲内で使用するための、動物から誘導されない溶解剤には、DOCの作用様式に類似する作用様式(すなわち、LytAの機能に影響を及ぼし、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細胞の溶解をもたらす作用様式)を有する、動物以外の供給源から得られる薬剤が含まれる。そのような動物から誘導されない溶解剤として、これらに限定されないが、DOC類似体、界面活性剤、洗剤、およびコリンの構造的類似体が挙げられる。一実施形態では、動物から誘導されない溶解剤は、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール(例えば、Igepal(登録商標)CA−630、CAS番号:9002−93−1、Sigma Aldrich、St.Louis、MOから入手可能)、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物(例えば、Triton(登録商標)X−100、Sigma Aldrich、St.Louis、MOから入手可能)、N−ラウロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウリルイミノジプロピオン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩およびコール酸塩からなる群から選択される。別の実施形態では、動物から誘導されない溶解剤は、N−ラウロイルサルコシンである。別の実施形態では、溶解剤は、N−ラウロイルサルコシンナトリウムである。
【0032】
次いで、血清型15B多糖体を、細胞可溶化液から、遠心分離、深ろ過、沈殿、限外ろ過、活性炭を用いる処理、透析ろ過および/またはカラムクロマトグラフィーの使用を含めた、当技術分野で公知の精製の技法を使用して単離することができる(例えば、米国特許出願公開第20060228380号、第20060228381号、第20070184071号、第20070184072号、第20070231340号および第20080102498号、またはWO2008118752を参照されたい)。次いで、精製した血清型15B莢膜多糖体を、免疫原性コンジュゲートを調製するために使用することができる。
【0033】
好ましくは、ろ過特性および/または収率が有利なコンジュゲートを作製するために、多糖体をサイズ調節して、より低い分子量(MW)の範囲を得てから、担体タンパク質へのコンジュゲーションを行う。好都合なことに、精製した血清型15B多糖体のサイズは、多糖体の構造の決定的に重要な特徴、例えば、O−アセチル基の存在等を維持しながら低下する。好ましくは、精製した血清型15B多糖体のサイズは、機械的ホモジナイゼーションにより低下させる。
【0034】
好ましい実施形態では、精製した血清型15B多糖体のサイズは、高圧ホモジナイゼーションにより低下させる。プロセスストリームを十分に小さな寸法の流路にポンプで送ることによって、高圧ホモジナイゼーションはより高いせん断率を達成する。より大きなホモジナイゼーションの圧力を適用することによって、せん断率は増加し、ホモジナイザー中にフィードストリームを再循環させることによって、暴露時間を増加させることができる。
【0035】
高圧ホモジナイゼーションのプロセスは、O−アセチル基の存在等の多糖体の構造的な特徴を維持しながら、精製した血清型15B多糖体のサイズを低下させるのに特に適切である。
【0036】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の可溶化液から血清型15B多糖体を精製し、精製した多糖体を任意選択によりサイズ調節することによって得た単離血清型15B莢膜多糖体を、例えば、分子量、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのグリセロールのmMの値、または前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmMの値を含めた、異なるパラメータにより特徴付けることができる。
【0037】
多糖体のO−アセチル化の程度を、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、プロトンNMRにより決定することができる(例えば、LemercinierおよびJones(1996)Carbohydrate Research、296;83〜96、JonesおよびLemercinier(2002)J.Pharmaceutical and Biomedical Analysis、30;1233〜1247、WO05/033148またはWO00/56357を参照されたい)。別の一般に使用されている方法が、Hestrin(1949)J.Biol.Chem.、180;249〜261に記載されている。好ましくは、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0038】
精製した、単離した、もしくは活性型の血清型15B莢膜多糖体中または血清型15B多糖体−担体タンパク質のコンジュゲート中のO−アセチルの存在を、前記多糖体1mM当たりのアセテートのmM数または多糖体の反復単位1つ当たりのO−アセチル基の数として表現する。
【0039】
グリセロールリン酸側鎖の存在は、フッ化水素酸(HF)を用いて多糖体を処理することによってグリセロールを放出させた後に、パルスアンペロメトリー検出(HPAEC−PAD)を行う高速陰イオン交換クロマトグラフィーを使用してグリセロールを測定することによって決定することができる。精製した、単離した、もしくは活性型の血清型15B多糖体中または血清型15B多糖体−担体タンパク質のコンジュゲート中のグリセロールの存在を、血清型15B多糖体1mM当たりのグリセロールのmM数として表現する。
【0040】
また、単離血清型15B莢膜多糖体は、当業者に公知の方法を使用して合成により生成することもできる。
【0041】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、5〜500kDa、50〜500kDa、50〜450kDa、100〜400kDa、100〜350kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、100〜350kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、100〜300kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、150〜300kDaの間の分子量を有する。
【0042】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0043】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのグリセロールを含む。
【0044】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、100〜350kDaの間、好ましくは、150〜350kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含む。
【0045】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、100〜350kDaの間、好ましくは、150〜350kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0046】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートおよび前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0047】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体は、100〜350kDa、好ましくは、150〜350kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートおよび前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0048】
血清型15B莢膜多糖体−担体タンパク質のコンジュゲート
単離血清型15B莢膜多糖体を担体タンパク質にコンジュゲートさせて、免疫原性コンジュゲートを得ることができる。単離多糖体を、当業者に公知の方法により担体タンパク質にコンジュゲートさせることができる(例えば、米国特許出願公開第20060228380号、第20070184071号、第20070184072号、第20070231340号、またはWO2011/100151を参照されたい)。
【0049】
ある実施形態では、多糖体を、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いて活性化させて、シアン酸エステルを形成させることができる。活性型多糖体を、担体タンパク質上のアミノ基に、直接またはスペーサー(リンカー)基を介してカップリングさせることができる。例えば、スペーサーがシスタミンまたはシステアミンであれば、チオール化多糖体を得ることができ、これを、マレイミド活性化担体タンパク質(例えば、GMBSを使用)またはハロアセチル化担体タンパク質(例えば、ヨードアセトアミドもしくはN−スクシンイミジルブロモアセテートもしくはSIABもしくはSIAもしくはSBAPを使用)と反応させて得られるチオエーテル連結を介して、担体にカップリングさせることができるであろう。好ましくは、(CDAPの化学反応によって生じたものであってもよい)シアン酸エステルを、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(ADH)とカップリングさせ、アミノ誘導体化糖を、カルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)の化学反応を使用して、タンパク質担体上のカルボキシル基を介して担体タンパク質にコンジュゲートさせる。そのようなコンジュゲートが、例えば、WO93/15760、WO95/08348およびWO96129094に記載されている。
【0050】
その他の適切な技法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−−NHS、EDC、TSTUを使用する。多くが、国際特許出願公開第WO98/42721号に記載されている。コンジュゲーションに、糖の遊離ヒドロキシル基をCDIと反応させることによって形成することができるカルボニルリンカー(Bethellら、1979、J.Biol.Chem.、254:2572〜4;Hearnら、1981、J.Chromatogr.、218:509〜18を参照されたい)を関与させ、続いて、このリンカーをタンパク質と反応させて、カルバミン酸エステル連結を形成する場合がある。この場合、アノマー末端を還元して第一級ヒドロキシル基を得、第一級ヒドロキシル基の保護/脱保護を行ってもよく、第一級ヒドロキシル基をCDIと反応させて、CDIカルバミン酸エステル中間体を形成し、CDIカルバミン酸エステル中間体をタンパク質上のアミノ基とカップリングさせることができる。
【0051】
好ましい実施形態では、単離血清型15B莢膜多糖体を、還元的アミノ化により担体タンパク質にコンジュゲートさせる。還元的アミノ化では、酸化による多糖体の活性化、および還元による、活性型多糖体のタンパク質担体へのコンジュゲーションが関与する。
【0052】
血清型15B莢膜多糖体の活性化
活性型の血清型15B莢膜多糖体を、単離血清型15B莢膜多糖体を酸化剤と反応させることによって得る。例えば、前記活性型の血清型15B莢膜多糖体を、
(a)血清型15B肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、
(b)前記発酵培養物中の細菌細胞を溶解するステップと、
(c)発酵培養物から血清型15B多糖体を精製するステップと、
(d)精製した血清型15B多糖体を高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節するステップと、
(e)サイズ調節した血清型15B多糖体を酸化剤と反応させるステップと
を含むプロセスにより得ることができる。
【0053】
好ましい実施形態では、酸化剤と反応させる単離血清型15B莢膜多糖体の濃度は、0.1〜10mg/mL、0.5〜5mg/mL、1〜3mg/mLの間、または約2mg/mLである。
【0054】
好ましい実施形態では、酸化剤は過ヨウ素酸である。過ヨウ素酸は、近接するヒドロキシル基を酸化して、カルボニル基またはアルデヒド基を形成し、C−C結合の切断を引き起こす。用語「過ヨウ素酸」は、過ヨウ素酸塩および過ヨウ素酸の両方を含む。この用語はまた、メタ過ヨウ素酸(IO
4−)およびオルト過ヨウ素酸(IO
65−)の両方も含む。用語「過ヨウ素酸」はまた、過ヨウ素酸ナトリウムおよび過ヨウ素酸カリウムを含めた、過ヨウ素酸の種々の塩も含む。好ましい実施形態では、酸化剤は過ヨウ素酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、血清型15B莢膜多糖体を酸化するために使用する過ヨウ素酸は、メタ過ヨウ素酸である。好ましい実施形態では、血清型15B莢膜多糖体を酸化するために使用する過ヨウ素酸は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムである。
【0055】
好ましい実施形態では、多糖体を、0.01〜10、0.05〜5、0.1〜1、0.5〜1、0.7〜0.8、0.05〜0.5、0.1〜0.3モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.15モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.25モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.5モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.6モル当量の酸化剤と反応させる。好ましい実施形態では、多糖体を、約0.7モル当量の酸化剤と反応させる。
【0056】
好ましい実施形態では、反応の持続時間は、1〜50、10〜30、15〜20、15〜17時間の間、または約16時間である。
【0057】
好ましい実施形態では、反応温度を、15〜45℃、15〜30℃、20〜25℃の間に保つ。好ましい実施形態では、反応温度を約23℃に保つ。
【0058】
好ましい実施形態では、酸化反応を、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、またはBis−Trisから選択される緩衝液中で実施する。好ましい実施形態では、緩衝液はリン酸カリウムである。
【0059】
好ましい実施形態では、緩衝液は、1〜500mM、1〜300mM、50〜200mMの間の濃度を有する。好ましい実施形態では、緩衝液は約100mMの濃度を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、酸化反応を、4〜8、5〜7、5.5〜6.5の間のpHで実施する。好ましい実施形態では、pHは約6である。
【0061】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、0.5〜5mg/mLの単離血清型15B莢膜多糖体を0.2〜0.3モル当量の過ヨウ素酸と20〜25℃の間の温度で反応させることによって得る。
【0062】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を精製する。活性型の血清型15B莢膜多糖体を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、透析または限外ろ過/透析ろ過等の当業者に公知の方法に従って精製する。例えば、活性型莢膜多糖体を、限外ろ過デバイスを使用する濃縮および透析ろ過により精製する。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明は、上記に開示したプロセスにより得られるまたは得ることができる活性型の血清型15B莢膜多糖体に関する。
【0064】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体の酸化の程度は、2〜20、2〜15、2〜10、2〜5、5〜20、5〜15、5〜10、10〜20、10〜15、15〜20の間である。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体の酸化の程度は、2〜10、4〜8、4〜6、6〜8、6〜12、8〜12、9〜11、10〜16、12〜16、14〜18、16〜20、16〜18または18〜20の間である。
【0065】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、5〜500kDa、50〜500kDa、50〜450kDa、100〜400kDa、100〜350kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜350kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜300kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、150〜300kDaの間の分子量を有する。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜250kDaの間の分子量を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0067】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのグリセロールを含む。
【0068】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜250kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含む。
【0069】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜250kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0070】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテート、および前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0071】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体は、100〜250kDaの間の分子量を有し、前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートおよび前記血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。
【0072】
ある実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、凍結保護剤/凍結乾燥保護剤の存在下で、凍結乾燥してもよい。ある実施形態では、前記凍結保護剤/凍結乾燥保護剤は、糖である。好ましい実施形態では、糖は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトース、デキストラン、マンニトール、ラクチトールおよびパラチニットから選択される。好ましい実施形態では、糖はスクロースである。次いで、凍結乾燥した活性型莢膜多糖体を、担体タンパク質を含む溶液と混ぜ合わせることができる。
【0073】
別の実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、担体タンパク質と混ぜ合わせ、凍結保護剤/凍結乾燥保護剤の存在下で、凍結乾燥してもよい。ある実施形態では、前記凍結保護剤/凍結乾燥保護剤は、糖である。好ましい実施形態では、糖は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトース、デキストラン、マンニトール、ラクチトールおよびパラチニットから選択される。好ましい実施形態では、糖はスクロースである。次いで、同時凍結乾燥した多糖体および担体タンパク質を、溶液中に再懸濁させ、還元剤と反応させることができる。
【0074】
ある実施形態では、本発明は、凍結乾燥した活性型の血清型15B莢膜多糖体に関する。
【0075】
ある実施形態では、本発明は、同時凍結乾燥した活性型の血清型15B莢膜多糖体とタンパク質担体に関する。好ましい実施形態では、タンパク質担体はCRM
197である。
【0076】
活性型の血清型15B莢膜多糖体の担体タンパク質とのコンジュゲーション
活性型の血清型15B莢膜多糖体を、
(a)活性型の血清型15B莢膜多糖体を担体タンパク質と混ぜ合わせるステップと、
(b)混ぜ合わせた活性型の血清型15B莢膜多糖体および担体タンパク質を還元剤と反応させて、血清型15B莢膜多糖体−担体タンパク質のコンジュゲートを形成するステップと
を含むプロセスにより、担体タンパク質にコンジュゲートさせることができる。
【0077】
ジメチルスルホキシド(DMSO)中における還元的アミノ化による活性型の血清型15B莢膜多糖体のタンパク質担体とのコンジュゲーションは、例えば、水溶液中における還元的アミノ化と比較して、多糖体のO−アセチル含有量を維持するのに適切であり、後者は、多糖体のO−アセチル化レベルを顕著に低下させる。好ましい実施形態では、ステップ(a)およびステップ(b)が、DMSO中で実施される。
【0078】
好ましい実施形態では、ステップ(a)は、凍結乾燥した血清型15B莢膜多糖体を担体タンパク質およびDMSOを含む溶液中に溶かすことを含む。好ましい実施形態では、ステップ(a)は、同時凍結乾燥した血清型15B莢膜多糖体および担体タンパク質をDMSO中に溶かすことを含む。
【0079】
ステップ(a)および(b)を水溶液中で実施する場合、ステップ(a)および(b)は、緩衝液、好ましくは、PBS、MES、HEPES、Bis−tris、ADA、PIPES、MOPSO、BES、MOPS、DIPSO、MOBS、HEPPSO、POPSO、TEA、EPPS、ビシンまたはHEPBから選択される緩衝液中、6.0〜8.5、7〜8または7〜7.5の間のpHで実施する。好ましい実施形態では、緩衝液はPBSである。好ましい実施形態では、pHは約7.3である。
【0080】
好ましい実施形態では、ステップ(b)の活性型の血清型15B莢膜多糖体の濃度は、0.1〜10mg/mL、0.5〜5mg/mL、0.5〜2mg/mLの間である。好ましい実施形態では、ステップ(b)の活性型の血清型15B莢膜多糖体の濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3mg/mLである。
【0081】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体対担体タンパク質の初期投入量の比(重量比)が、5:1〜0.1:1、2:1〜0.1:1、2:1〜1:1、1.5:1〜1:1、0.1:1〜1:1、0.3:1〜1:1、0.6:1〜1:1の間である。
【0082】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体対担体タンパク質の初期投入量の比が、約0.6:1〜1.5:1、好ましくは、0.6:1〜1:1である。そのような初期投入量の比は、遊離の多糖体の低いレベルを免疫原性コンジュゲート中で得るのに特に適切である。
【0083】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体対担体タンパク質の初期投入量の比は、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1または約2:1である。
【0084】
ある実施形態では、還元剤は、ブレンステッド酸またはルイス酸の存在下のシアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素亜鉛;ピリジンボラン、2−ピコリンボラン、2,6−ジボラン−メタノール、ジメチルアミン−ボラン、t−BuMe
iPrN−BH
3、ベンジルアミン−BH
3または5−エチル−2−メチルピリジンボラン(PEMB)等のアミンボランである。好ましい実施形態では、還元剤は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムである。好ましい実施形態では、還元剤は、ナトリウム2−ピコリンボランである。
【0085】
好ましい実施形態では、ステップ(b)で使用する還元剤の分量は、約0.1〜10モル当量、0.5〜5モル当量、1〜2モル当量である。好ましい実施形態では、ステップ(b)で使用する還元剤の分量は、約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2モル当量である。
【0086】
好ましい実施形態では、ステップ(b)の持続時間は、1〜60時間、10〜50時間、40〜50時間;42〜46時間の間である。好ましい実施形態では、ステップ(b)の持続時間は、約44時間である。
【0087】
好ましい実施形態では、ステップ(b)における反応温度を、10〜40℃、15〜30℃または20〜26℃の間に保つ。好ましい実施形態では、ステップ(b)における反応温度を、約23℃に保つ。
【0088】
好ましい実施形態では、担体タンパク質に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートを調製するためのプロセスは、未反応のアルデヒドをNaBH
4の添加によりキャップ(クエンチング)するステップ(ステップ(c))をさらに含む。
【0089】
好ましい実施形態では、ステップ(c)において使用するNaBH
4の分量は、0.1〜10モル当量、0.5〜5モル当量、1〜3モル当量の間である。好ましい実施形態では、ステップ(c)において使用するNaBH
4の分量は、約2モル当量である。
【0090】
好ましい実施形態では、ステップ(c)の持続時間は、0.1〜10時間、0.5〜5時間、2〜4時間の間である。好ましい実施形態では、ステップ(c)の持続時間は、約3時間である。
【0091】
好ましい実施形態では、ステップ(c)における反応温度を、15〜45℃、15〜30℃または20〜26℃の間に保つ。好ましい実施形態では、ステップ(c)における反応温度を、約23℃に保つ。
【0092】
好ましい実施形態では、コンジュゲーションのステップ(ステップb)の収率は、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超または90%超である。好ましい実施形態では、コンジュゲーションのステップ(ステップb)の収率は、60%超である。好ましい実施形態では、コンジュゲーションのステップ(ステップb)の収率は、70%超である。収率は、コンジュゲート中の血清型15B多糖体の量×100/コンジュゲーションのステップにおいて使用した活性型多糖体の量である。
【0093】
好ましい実施形態では、担体タンパク質に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートを調製するためのプロセスは、
(a)血清型15B肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、
(b)前記発酵培養物中の細菌細胞を溶解するステップと、
(c)発酵培養物から血清型15B多糖体を精製するステップと、
(d)精製した血清型15B多糖体を高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節するステップと、
(e)サイズ調節した血清型15B多糖体を酸化剤と反応させるステップと、
(f)活性型の血清型15B多糖体を担体タンパク質と混ぜ合わせるステップと、
(g)混ぜ合わせた活性型の血清型15B多糖体および担体タンパク質を還元剤と反応させて、血清型15B多糖体−担体タンパク質のコンジュゲートを形成するステップと、
(h)未反応のアルデヒドをNaBH
4の添加によりキャップ(クエンチング)するステップと
を含む。
【0094】
好ましい実施形態では、上記のプロセスのコンジュゲーションのステップ(ステップg)の収率は、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超または90%超である。好ましい実施形態では、コンジュゲーションのステップ(ステップg)の収率は、60%超である。好ましい実施形態では、コンジュゲーションのステップ(ステップg)の収率は、70%超である。収率は、コンジュゲート中の血清型15B多糖体の量×100/コンジュゲーションのステップにおいて使用した活性型多糖体の量である。
【0095】
血清型15B莢膜多糖体の担体タンパク質へのコンジュゲーションの後、多糖体−タンパク質のコンジュゲートを、当業者に公知の多様な技法により精製する(多糖体−タンパク質のコンジュゲートの量に関して濃縮する)ことができる。これらの技法として、透析、濃縮/透析ろ過の操作、タンジェンシャルフローろ過、沈殿/溶出、カラムクロマトグラフィー(DEAEまたは疎水性相互作用クロマトグラフィー)、および深ろ過が挙げられる。
【0096】
好ましい実施形態では、担体タンパク質は、無毒性かつ非反応源性であり、十分な量および純度で得ることができる。担体タンパク質は、標準的なコンジュゲーションの手順に適していなければならない。
【0097】
好ましい実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、DT(ジフテリア毒素)、TT(破傷風トキソイド)またはTTの断片C、CRM
197(無毒性であるが、ジフテリア毒素の、抗原性が同一のバリアント)、その他のDTの点突然変異体、例として、CRM176、CRM228、CRM45(Uchidaら、J.Biol.Chem.、218;3838〜3844、1973);Genetically Engineered Toxins、Frankel編、Maecel Dekker Inc、1992中、NichollsおよびYouleにより記載されている、CRM9、CRM102、CRM103およびCRM107ならびにその他の突然変異;US4709017やUS4950740に開示されている、欠失や、Glu−148のAsp、GlnもしくはSerへの突然変異および/またはAla158のGlyへの突然変異ならびにその他の突然変異;US5917017またはUS6455673に開示されている、少なくとも1つまたは複数の残基Lys516、Lys526、Phe530および/またはLys534の突然変異ならびにその他の突然変異;それとも、US5843711に開示されている断片;肺炎球菌のニューモリシン(Kuoら(1995)Infect Immun、63;2706〜13)、例として、何らかの様式で解毒したply、例えば、dPLY−GMBS(WO04081515、PCT/EP2005/010258)またはdPLY−formol、PhtA、PhtB、PhtD、PhtEを含めたPhtX(PhtA、PhtB、PhtDもしくはPhtEの配列は、WO00/37105またはWO00/39299に開示されている)、およびPhtタンパク質の融合体、例えば、PhtDE融合体、PhtBE融合体、PhtA−E(WO01/98334、WO03/54007、W02009/000826);OMPC(髄膜炎菌(N.meningitidis)血清群Bから通常抽出される髄膜炎菌外膜タンパク質、EP0372501)、PorB(髄膜炎菌(N.meningitidis)由来)、PD(インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenza)プロテインD、例えば、EP0594610Bを参照されたい)またはそれらの免疫学的機能性均等物;合成ペプチド(EP0378881、EP0427347);熱ショックタンパク質(WO93/17712、WO94/03208);百日咳タンパク質(WO98/58668、EP0471177)、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子またはホルモン(WO10 91/01146);N19タンパク質(Baraldoiら(2004)Infect Immun、72;4884〜7)、肺炎球菌表面タンパク質PspA(WO02/091998)、鉄取込みタンパク質(WO01/72337)、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の毒素AまたはB(WO00/61761)等の種々の病原体に由来する抗原から得られた複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質(Falugiら(2001)Eur J Immunol、31;3816〜3824)からなる群中から選択される担体タンパク質にコンジュゲートさせる。ある実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、DT(ジフテリアトキソイド)にコンジュゲートさせる。別の実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、TT(破傷風トキソイド)にコンジュゲートさせる。別の実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、TTの断片Cにコンジュゲートさせる。別の実施形態では、活性型の血清型15B莢膜多糖体を、PD(インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenza)プロテインD、例えば、EP0594610Bを参照されたい)にコンジュゲートさせる。
【0098】
好ましい実施形態では、本発明の活性型の血清型15B莢膜多糖体を、CRM
197タンパク質にコンジュゲートさせる。CRM
197タンパク質は、ジフテリア毒素の無毒性の形態であるが、ジフテリア毒素と免疫学的に区別できない。CRM
197は、毒素産生性コリネファージベータのニトロソグアニジン突然変異誘発により作り出された非毒素産生性ファージβ197
tox−に感染させたジフテリア菌(C.diphtheriae)により生成される(Uchida,T.ら、1971、Nature New Biology、233:8〜11)。CRM
197は、限外ろ過、硫酸アンモニウム沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーにより精製される。CRM
197タンパク質は、ジフテリア毒素と同じ分子量を有するが、ジフテリア毒素とは、構造遺伝子中に(グアニンからアデニンへの)単一塩基の変化がある点で異なる。この単一塩基の変化により、成熟タンパク質中のグリシンからグルタミン酸へのアミノ酸の置換が引き起こされ、ジフテリア毒素の毒性が排除される。CRM
197タンパク質は、糖のための安全かつ有効なT細胞依存性担体である。CRM
197およびその生成についてのさらなる詳細を、例えば、US5,614,382に見出すことができる。
【0099】
ある実施形態では、本発明は、担体タンパク質に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートに関する。ある実施形態では、本発明は、還元的アミノ化により担体タンパク質に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートに関する。ある実施形態では、本発明は、DMSO中で還元的アミノ化により担体タンパク質に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートに関する。好ましい実施形態では、担体タンパク質はCRM
197である。好ましい実施形態では、多糖体は、本明細書の定義に従う単離血清型15B莢膜多糖体である。好ましい実施形態では、多糖体は、本明細書の定義に従う単離血清型15B莢膜多糖体であり、高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節されている。
【0100】
好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体の総量と比較して、遊離の血清型15B莢膜多糖体を約50、45、40、35、30、25、20または15%未満を含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体の総量と比較して、遊離の血清型15B莢膜多糖体を約25%未満含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体の総量と比較して、遊離の血清型15B莢膜多糖体を約20%未満含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体の総量と比較して、遊離の血清型15B莢膜多糖体を約15%未満含む。
【0101】
好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、3000〜20000kDa;5000〜10000kDa;5000〜20000kDa;8000〜20000kDa;8000〜16000kDa;または10000〜16000kDaの分子量を有する。免疫原性コンジュゲートの分子量は、SEC−MALLSにより測定する。
【0102】
好ましい実施形態では、コンジュゲート中の担体タンパク質に対する血清型15B莢膜多糖体対の比(重量比)は、0.5〜3の間である。好ましい実施形態では、コンジュゲート中の担体タンパク質に対する血清型15B莢膜多糖体の比は、0.4〜2、0.5〜2、0.5〜1.5、0.5〜1、1〜1.5、1〜2の間である。好ましい実施形態では、コンジュゲート中の担体タンパク質に対する血清型15B莢膜多糖体の比は、0.7〜0.9の間である。
【0103】
サイズ排除クロマトグラフィー媒体(CL−4B)を使用して、コンジュゲートの相対的な分子のサイズ分布を決定することができる。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を自然落下式カラム中で使用して、コンジュゲートの分子のサイズ分布のプロファイルを得る。媒体中のポアから除外される大きな分子は、小さな分子よりも迅速に溶出する。自動分取装置を使用して、カラムの溶出液を収集する。画分を、糖アッセイによる比色分析により試験する。Kdを決定するために、カラムを較正して、分子が完全に除外される(V
0)画分(Kd=0)および最大の保持を示す(V
i)画分(Kd=1)を確立する。試料の特定の属性に到達する画分(V
e)とKdの関係は、式Kd=(V
e−V
0)/(V
i−V
0)で示される。
【0104】
好ましい実施形態では、少なくとも20%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、少なくとも30%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、少なくとも40%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、少なくとも60%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、少なくとも70%の免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。
【0105】
好ましい実施形態では、40%〜90%の間の血清型15B免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、50%〜90%の間の血清型15B免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。好ましい実施形態では、65%〜80%の間の血清型15B免疫原性コンジュゲートが、CL−4Bカラム中で0.3以下のKdを有する。
【0106】
好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのアセテートを含む。好ましい実施形態では、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0107】
好ましい実施形態では、単離多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比が、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9または少なくとも0.95である。好ましい実施形態では、単離多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比は、少なくとも0.7である。好ましい実施形態では、単離多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比は、少なくとも0.9である。好ましい実施形態では、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0108】
好ましい実施形態では、活性型多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比が、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9または少なくとも0.95である。好ましい実施形態では、活性型多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比は、少なくとも0.7である。好ましい実施形態では、活性型多糖体中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値に対する、免疫原性コンジュゲート中の血清型15B莢膜多糖体1mM当たりのアセテートのmM値の比は、少なくとも0.9である。好ましい実施形態では、O−アセチル基の存在は、イオン−HPLC分析により決定する。
【0109】
好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.5、0.6または0.7mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのグリセロールを含む。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.7mMのグリセロールを含む。
【0110】
コンジュゲーションの程度は、血清型15B莢膜多糖体にコンジュゲートしている担体タンパク質中のリジン残基の数である。多糖体への共有結合的連結に起因する担体タンパク質のリジン修飾についての証拠は、当業者に公知の日常的な方法を使用するアミノ酸分析により得られる。コンジュゲーションの結果、コンジュゲートされた材料を作製するために使用したCRM
197タンパク質出発材料と比較して、回収されるリジン残基の数の低下が生じる。
【0111】
好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートのコンジュゲーションの程度は、2〜15、2〜13、2〜10、2〜8、2〜6、2〜5、2〜4、3〜15、3〜13、3〜10、3〜8、3〜6、3〜5、3〜4、5〜15、5〜10、8〜15、8〜12、10〜15または10〜12の間である。好ましい実施形態では、免疫原性コンジュゲートのコンジュゲーションの程度は、2〜5の間である。
【0112】
免疫原性組成物
用語「免疫原性組成物」は、抗原、例えば、微生物またはその構成成分を含有する任意の医薬組成物に関し、この組成物を使用して、対象の免疫応答を惹起することができる。
【0113】
本明細書で使用する場合、「免疫原性」は、細菌の莢膜多糖体等の抗原(もしくは抗原のエピトープ)、または抗原を含む免疫原性コンジュゲートもしくは免疫原性組成物の、宿主、例として、哺乳動物中で、免疫応答を液性媒介型または細胞性媒介型のいずれかまたは両方で惹起する能力を意味する。
【0114】
ある実施形態では、本開示は、本明細書に開示する血清型15B莢膜多糖体−担体タンパク質の免疫原性コンジュゲートを含む免疫原性組成物に関する。
【0115】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、標準的なELISAアッセイによる測定に従うと、対象に投与した場合、血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。
【0116】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、血清型15Bならびに15Aおよび/または15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、標準的なELISAアッセイによる測定に従うと、対象に投与した場合、血清型15Bならびに15Aおよび/または15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。
【0117】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、血清型15Bおよび15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、標準的なELISAアッセイによる測定に従うと、対象に投与した場合、血清型15Bおよび15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に結合することが可能な抗体の形成を誘発する。
【0118】
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)の方法では、ワクチンを接種した対象の血清から得られた抗体を、固体の支持体に吸着させてある多糖体と共にインキュベートする。結合した抗体を、酵素をコンジュゲートさせた二次検出抗体を使用して検出する。
【0119】
ある実施形態では、前記ELISAアッセイは、WHOにより「Training manual for Enzyme linked immunosorbent assay for the quantitation of Streptococcus pneumoniae serotype specific IgG(Pn PS ELISA)」(http://www.vaccine.uab.edu/ELISA%20protocol.pdfにおいて取得可能;取得日:2014年3月31日)において定義されている標準化された(WHO)ELISAアッセイである。
【0120】
ELISAにより、ヒト血清中に存在する型特異的なIgG抗肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)莢膜多糖体(PS)抗体について測定する。ヒト血清の希釈物を、型に特異的な莢膜PSで被覆したマイクロタイタープレートに添加すると、その莢膜PSに特異的な抗体が、マイクロタイタープレートに結合する。プレートに結合した抗体を、ヤギ抗ヒトIgGアルカリホスファターゼ標識抗体、続いて、リン酸p−ニトロフェニル基質を使用して検出する。有色最終産物の光学密度が、血清中に存在する抗莢膜PS抗体の量に比例する。
【0121】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、ELISAアッセイにより決定する場合、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4または0.5μg/mlの濃度で、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bの多糖体に結合することが可能であるヒト中のIgG抗体を惹起することができる。
【0122】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、ELISAアッセイにより決定する場合、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4または0.5μg/mlの濃度で、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Cの多糖体に結合することが可能であるヒト中のIgG抗体を惹起することができる。
【0123】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、ELISAアッセイにより決定する場合、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4または0.5μg/mlの濃度で、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bおよび15Cの多糖体に結合することが可能であるヒト中のIgG抗体を惹起することができる。
【0124】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、本明細書に開示するオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)において血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する。ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、本明細書に開示するOPAアッセイにおいて試験すると、コンジュゲートされていないネイティブ肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を用いて得たOPAタイターよりも高いOPAタイターを有する。
【0125】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、本明細書に開示するオプソニン化貪食作用アッセイにおいて血清型15C肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する。ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、本明細書に開示するOPAアッセイにおいて試験すると、コンジュゲートされていないネイティブ肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15C莢膜多糖体を用いて得たOPAタイターよりも高いOPAタイターを有する。
【0126】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、本明細書に開示するオプソニン化貪食作用アッセイにおいて血清型15Bならびに15Cおよび/または15Aの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する。
【0127】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、対象に投与した場合、血清型15Bおよび15Cを死滅させることが可能な抗体の形成を誘発する。
【0128】
肺炎球菌のオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)では、貪食性のエフェクター細胞が、機能性の抗体および補体の存在下で、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細胞を死滅させるのを測定し、このアッセイは、肺炎球菌ワクチンの有効性を評価するための重要な代替アッセイとなるとみなされる。
【0129】
オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細胞、試験しようとする熱不活性化ヒト血清、分化HL−60細胞(貪食細胞)および外因性補体供給源(例えば、仔ウサギの補体)の混合物を一緒にインキュベートすることによって実施することができる。オプソニン化貪食作用が、インキュベーションの間に進行し、抗体および補体で被覆されている細菌細胞は、オプソニン化貪食作用を受けて死滅する。オプソニン化貪食作用を逃れた生存細菌のコロニー形成単位(cfu)を、アッセイ混合物を平板培養することによって決定する。OPAタイターを、試験血清を有さない対照のウエルと比して細菌のカウント数の50%の低下をもたらす希釈度の逆数と定義する。OPAタイターを、この50%死滅のカットオフを包含する2つの希釈度から内挿する。
【0130】
これらの死滅型OPAでは、1:8以上の終点タイターを陽性の結果とみなす。
【0131】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ(OPA)により決定する場合、対象の少なくとも50%において、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bに対して少なくとも1:8のタイターを惹起することが可能である。ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ(OPA)により決定する場合、対象の少なくとも60%;70%、80%、90%、または少なくとも93%において、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bに対して少なくとも1:8のタイターを惹起することが可能である。
【0132】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ(OPA)により決定する場合、対象の少なくとも50%において、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Cに対して少なくとも1:8のタイターを惹起することが可能である。ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ(OPA)により決定する場合、対象の少なくとも60%;70%、80%、90%、または少なくとも95%において、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Cに対して少なくとも1:8のタイターを惹起することが可能である。
【0133】
本発明の免疫原性組成物の製剤化を、当技術分野において認識されている方法を使用して行うことができる。例えば、本発明の免疫原性コンジュゲートを生理的に許容できるビヒクルと共に製剤化して、組成物を調製することができる。そのようなビヒクルの例として、これらに限定されないが、水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、およびデキストロース溶液が挙げられる。
【0134】
好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の抗原を含むことができる。好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖体を含むことができる。
【0135】
好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の、担体タンパク質にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖体を含むことができる。好ましい実施形態では、前記担体タンパク質はCRM
197である。
【0136】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、1つまたは複数のアジュバントを含む。本明細書の定義に従うと、「アジュバント」は、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を増強するのに役立つ物質である。したがって、アジュバントは、しばしば免疫応答をブーストするために加えられ、当業者に周知である。組成物の有効性を増強するのに適切なアジュバントとして、これらに限定されないが、
(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例として、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;
(2)水中油型乳剤の製剤(ムラミルペプチド(下記に定義)または細菌細胞壁の構成成分等のその他の特異的な免疫賦活剤がある場合またはない場合の)、例えば、
(a)5%スクアレン、0.5%5Tween80および0.5%Span85を含有し((必ずしも必要ではないが)種々の量のMTP−PE(下記を参照されたい)を含有していてもよい)、顕微溶液化装置、例として、モデル11OY顕微溶液化装置(Microfluidics、Newton、MA)を使用してサブミクロン粒子に製剤化されたMF59(PCT公開第WO90/14837号)
(b)10%スクアレン、0.4%Tween80、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDP(下記を参照されたい)を含有し、顕微溶液化したサブミクロン乳剤またはボルテックスして作製したより大きな粒子サイズの乳剤のいずれかのSAF、さらに、
(c)2%スクアレン、0.2%Tween80、ならびに米国特許第4,912,094号(Corixa)に記載されている3−O−デスアシルモノホスホリルリピドA(MPL(商標))、トレハロースジミコール酸(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群から得られる1つまたは複数の細菌細胞壁構成成分、好ましくは、MPL+CWS(Detox(商標))を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)(Corixa、Hamilton、MT)
等;
(3)サポニンのアジュバント、例として、Quil AもしくはSTIMULON(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、MA)(米国特許第5,057,540号)を使用することができ、またはそれらから作製した粒子、例として、ISCOM(免疫賦活複合体);
(4)細菌のリポ多糖;合成リピドA類似体、例として、Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されているアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)またはそれらの誘導体もしくは類似体;1つのそのようなAGPが、水性形態または安定な乳剤として製剤化された2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−b−D−グルコピラノシドであり、これは、529としてもまた公知である(以前は、RC529として公知であった);合成ポリヌクレオチド、例として、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(米国特許第6,207,646号);
(5)サイトカイン、例として、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18等)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子87−1および87−2等;
(6)細菌のADPリボシル化毒素の解毒突然変異体、例として、コレラ毒素(CT)の野生型もしくは突然変異体形態のいずれか、例えば、公開されている国際特許出願公開第WO00/18434号(また、WO02/098368およびWO02/098369も参照されたい)に従う29位のアミノ酸のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくは、ヒスチジンで置き換えられているもの、百日咳毒素(PT)、または大腸菌(E.coli)の熱不安定性毒素(LT)、特に、LT−K63、LT−R72、CT−S109、PT−K9/G129(例えば、WO93/13302およびWO92/19265を参照されたい);さらに、
(7)免疫賦活剤として作用して組成物の有効性を増強する、その他の物質
が挙げられる。
【0137】
ムラミルペプチドとして、これらに限定されないが、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等が挙げられる。
【0138】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、CpGオリゴヌクレオチドをアジュバントとして含む。CpGオリゴヌクレオチドは、本明細書で使用する場合、免疫賦活性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)を指し、したがって、別段の記載がない限り、これらの用語を交換可能に使用する。免疫賦活性CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、1つまたは複数の免疫賦活性CpGモチーフを含有し、これらのモチーフは、シトシン−グアニンの非メチル化ジヌクレオチドであり、特定の好ましい塩基構成内に存在していてもよい。CpG免疫賦活性モチーフのメチル化状況は一般に、ジヌクレオチド中のシトシン残基について言及する。少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、リン酸結合により3’グアニンに連結する5’非メチル化シトシンを含有し、Toll様受容体9(TLR−9)に結合することによって、免疫系を活性化するオリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のメチル化CpGジヌクレオチドを含有することができ、この場合、免疫系を、TLR9を介して活性化するが、活性化は、CpGモチーフがメチル化されていない場合ほどには強くない。CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドもまた包含し得る1つまたは複数の回文構造を含むことができる。CpGオリゴヌクレオチドは、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;および第6,339,068号を含めた、いくつかの発行されている特許、公開されている特許出願、およびその他の刊行物に記載されている。
【0139】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、WO2010/125480、3頁22行〜12頁36行に記載されているCpGオリゴヌクレオチドのいずれかを含む。
【0140】
異なるクラスのCpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドが同定されている。これらは、Aクラス、Bクラス、CクラスおよびPクラスと呼ばれ、WO2010/125480、3頁22行〜12頁36行により詳細に記載されている。本発明の方法は、これらの異なるクラスのCpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドの使用を包含する。
【0141】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、AクラスのCpGオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明の「Aクラス」のCpGオリゴヌクレオチドは、核酸配列:5’GGGGACGACGTCGTGGGGGGG3’(配列番号:1)を有する。Aクラスのオリゴヌクレオチドのいくつかの非限定的な例は、5’G*G*G_G_A_C_G_A_C_G_T_C_G_T_G_G*G*G*G*G*G3’(配列番号:2)を含み、ここで、*は、ホスホロチオエート結合を指し、_は、リン酸ジエステル結合を指す。
【0142】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、BクラスのCpGオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、本発明において使用するためのCpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも式:5’X
1X
2CGX
3X
43’により示されるBクラスのCpGオリゴヌクレオチドであり、ここで、X1、X2、X3およびX4は、ヌクレオチドである。一実施形態では、X
2は、アデニン、グアニンまたはチミンである。別の実施形態では、X
3は、シトシン、アデニンまたはチミンである。
【0143】
本発明のBクラスのCpGオリゴヌクレオチドの配列は、上記の米国特許第6,194,388号、第6,207,646号、第6,214,806号、第6,218,371号、第6,239,116号および第6,339,068号に広く記載されている配列である。例示的な配列として、これらに限定されないが、こうした最近の出願および特許に開示されている配列が挙げられる。
【0144】
ある実施形態では、本発明の「Bクラス」のCpGオリゴヌクレオチドは、核酸配列:
5’TCGTCGTTTTTCGGTGCTTTT3’(配列番号3)、または
5’TCGTCGTTTTTCGGTCGTTTT3’(配列番号4)、または
5’TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT3’(配列番号5)、または
5’TCGTCGTTTCGTCGTTTTGTCGTT3’(配列番号6)、または
5’TCGTCGTTTTGTCGTTTTTTTCGA3’(配列番号7)
を有する。
【0145】
これらの配列のいずれにおいても、全ての連結はいずれも、ホスホロチオエート結合であり得る。別の実施形態では、これらの配列のいずれにおいても、1つまたは複数の連結が、リン酸ジエステルであり得、好ましくは、CpGモチーフの「C」と「G」との間でセミソフトなCpGオリゴヌクレオチドをなす。これらの配列のいずれにおいても、エチル−ウリジンまたはハロゲンで、5’Tを置換することができ;ハロゲン置換の例として、これらに限定されないが、ブロモ−ウリジン置換またはヨード−ウリジン置換が挙げられる。
【0146】
Bクラスのオリゴヌクレオチドのいくつかの非限定的な例として、
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*T*C*G*G*T*G*C*T*T*T*T3’(配列番号8)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*T*C*G*G*T*C*G*T*T*T*T3’(配列番号9)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*G*T*C*G*T*T*T*T*G*T*C*G*T*T3’(配列番号10)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*G*T*C*G*T*T3’(配列番号11)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*G*T*C*G*T*T*T*T*T*T*T*C*G*A3’(配列番号12)
が挙げられ、
ここで、*は、ホスホロチオエート結合を指す。
【0147】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、CクラスのCpGオリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態では、本発明の「Cクラス」のCpGオリゴヌクレオチドは、核酸配列:
5’TCGCGTCGTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号13)、または
5’TCGTCGACGTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号14)、または
5’TCGGACGTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号15)、または
5’TCGGACGTTCGGCGCGCCG3’(配列番号16)、または
5’TCGCGTCGTTCGGCGCGCCG3’(配列番号17)、または
5’TCGACGTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号18)、または
5’TCGACGTTCGGCGCGCCG3’(配列番号19)、または
5’TCGCGTCGTTCGGCGCCG3’(配列番号20)、または
5’TCGCGACGTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号21)、または
5’TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCG3’(配列番号22)、または
5’TCGTCGTTTTCGGCGGCCGCCG3’(配列番号23)、または
5’TCGTCGTTTTACGGCGCCGTGCCG3’(配列番号24)、または
5’TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCGT3’(配列番号25)
を有する。
【0148】
これらの配列のいずれにおいても、全ての連結はいずれも、ホスホロチオエート結合であり得る。別の実施形態では、これらの配列のいずれにおいても、1つまたは複数の連結が、リン酸ジエステルであり得、好ましくは、CpGモチーフの「C」と「G」との間でセミソフトなCpGオリゴヌクレオチドをなす。
【0149】
Cクラスのオリゴヌクレオチドのいくつかの非限定的な例として、
5’T*C_G*C_G*T*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号26)、または
5’T*C_G*T*C_G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号27)、または
5’T*C_G*G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号28)、または
5’T*C_G*G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C*G*C*C*G3’(配列番号29)、または
5’T*C_G*C_G*T*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C*G*C*C*G3’(配列番号30)、または
5’T*C_G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号31)、または
5’T*C_G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C*G*C*C*G3’(配列番号32)、または
5’T*C_G*C_G*T*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C*C*G3’(配列番号33)、または
5’T*C_G*C_G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号34)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G3’(配列番号35)、または
5’T*C*G*T*C*G*T*T*T*T*C*G*G*C*G*G*C*C*G*C*C*G3’(配列番号36)、または
5’T*C*G*T*C_G*T*T*T*T*A*C_G*G*C*G*C*C_G*T*G*C*C*G3’(配列番号37)、または
5’T*C_G*T*C*G*T*T*T*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T3’(配列番号38)
が挙げられ、
ここで、*は、ホスホロチオエート結合を指し、_は、リン酸ジエステル結合を指す。
【0150】
これらの配列のいずれにおいても、エチル−ウリジンまたはハロゲンで、5’Tを置換することができ;ハロゲン置換の例として、これらに限定されないが、ブロモ−ウリジン置換またはヨード−ウリジン置換が挙げられる。
【0151】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、PクラスのCpGオリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態では、本発明において使用するためのCpGオリゴヌクレオチドは、5’TLR活性化ドメインおよび少なくとも2つの回文構造領域を含有するPクラスのCpGオリゴヌクレオチドであり、1つの回文構造領域は、少なくとも6ヌクレオチド長の5’回文構造領域であり、少なくとも8ヌクレオチド長の3’回文構造領域に直接またはスペーサーを介して接続し、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのYpRジヌクレオチドを含む。ある実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、T*C_G*T*C_G*A*C_G*T*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G(配列番号:27)ではない。一実施形態では、PクラスのCpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。別の実施形態では、TLR活性化ドメインは、TCG、TTCG、TTTCG、TYpR、TTYpR、TTTYpR、UCG、UUCG、UUUCG、TTTまたはTTTTである。さらに別の実施形態では、TLR活性化ドメインは、5’回文構造領域内にある。別の実施形態では、TLR活性化ドメインは、5’回文構造領域に対して直接5’側にある。
【0152】
ある実施形態では、本発明の「Pクラス」のCpGオリゴヌクレオチドは、核酸配列:5’TCGTCGACGATCGGCGCGCGCCG3’(配列番号:39)を有する。
【0153】
前記配列において、全ての連結はいずれも、ホスホロチオエート結合であり得る。別の実施形態では、1つまたは複数の連結が、リン酸ジエステルであり得、好ましくは、CpGモチーフの「C」と「G」との間でセミソフトなCpGオリゴヌクレオチドをなす。これらの配列のいずれにおいても、エチル−ウリジンまたはハロゲンで、5’Tを置換することができ;ハロゲン置換の例として、これらに限定されないが、ブロモ−ウリジン置換またはヨード−ウリジン置換が挙げられる。
【0154】
Pクラスのオリゴヌクレオチドの非限定的な例として、
5’T*C_G*T*C_G*A*C_G*A*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’(配列番号:40)
が挙げられ、
ここで、*は、ホスホロチオエート結合を指し、_は、リン酸ジエステル結合を指す。
【0155】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチド間連結が、ホスホロチオエート連結である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのリン酸ジエステル様連結を含む。別の実施形態では、リン酸ジエステル様連結は、リン酸ジエステル連結である。別の実施形態では、親油性基が、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートしている。一実施形態では、親油性基はコレステロールである。
【0156】
ある実施形態では、本明細書に開示するCpGオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチド間連結が、リン酸ジエステル結合(PCT出願WO2007/026190の記載に従う「ソフトな」オリゴヌクレオチド)である。別の実施形態では、本発明のCpGオリゴヌクレオチドを、分解に対して抵抗性となす(例えば、安定化させる)。「安定化されたオリゴヌクレオチド」は、in vivoにおける(例えば、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)分解に対して比較的抵抗性であるオリゴヌクレオチドを指す。核酸の安定化は、骨格の改変を介して達成することができる。ホスホロチオエート連結を有するオリゴヌクレオチドは、最大の活性をもたらし、オリゴヌクレオチドを細胞内のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼによる分解から保護する。
【0157】
免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、キメラ骨格を有し得、この骨格は、リン酸ジエステル連結とホスホロチオエート連結との組合せを有する。本発明の目的では、キメラ骨格は、部分的に安定化された骨格を指し、ここで、少なくとも1つのヌクレオチド間連結が、リン酸ジエステルまたはリン酸ジエステル様であり、少なくとも1つのその他のヌクレオチド間連結が安定化されたヌクレオチド間連結であり、上記少なくとも1つのリン酸ジエステル連結またはリン酸ジエステル様連結と、上記少なくとも1つの安定化された連結とが異なる。リン酸ジエステル連結を、CpGモチーフ内に選択的に位置させる場合、そのような分子を、PCT出願WO2007/026190の記載に従って「セミソフトな」分子と呼ぶ。
【0158】
また、CpGオリゴヌクレオチドのサイズ(すなわち、オリゴヌクレオチドの長さに沿うヌクレオチド残基の数)も、オリゴヌクレオチドの賦活活性に寄与し得る。細胞内への取込みを促進するために、本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、好ましくは、6ヌクレオチド残基の最小長を有する。6ヌクレオチド超の任意のサイズのオリゴヌクレオチドも(数kb長のオリゴヌクレオチドであっても)、十分な免疫賦活性モチーフが存在するならば、免疫応答を誘発することが可能であり、これは、より大きなオリゴヌクレオチドは、細胞内部で分解されるからである。特定の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドは、6〜100ヌクレオチド長、優先的に、8〜30ヌクレオチド長である。重要な実施形態では、本発明の核酸およびオリゴヌクレオチドは、プラスミドおよび発現ベクターではない。
【0159】
ある実施形態では、本明細書に開示するCpGオリゴヌクレオチドは、WO2007/026190、段落134〜147の記載に従い、塩基および/糖中等に置換または修飾を含む。
【0160】
ある実施形態では、本発明のCpGオリゴヌクレオチドを、化学的に修飾する。化学的修飾の例は、当業者に公知であり、例えば、Uhlmann E.ら(1990)、Chem.Rev.、90:543、S.Agrawal編、Humana Press、Totowa、USA、1993;Crooke,S.T.ら(1996)Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.、36:107〜129;およびHunziker J.ら、(1995)Mod.Synth.Methods、7:331〜417に記載されている。本発明のオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾を有し得、それぞれの修飾が、天然のDNAまたはRNAで構成される同じ配列のオリゴヌクレオチドと比較して、特定のリン酸ジエステルヌクレオシド間架橋に、および/または特定のβ−D−リボース単位に、および/または特定の天然のヌクレオシド塩基の位置に存在する。
【0161】
当業者に公知の方法に従って、本発明のいくつかの実施形態では、CpG含有核酸を、免疫原性の担体と単に混合してもよいであろう(例えば、WO03/024480を参照されたい)。
【0162】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物はいずれも、2μg〜100mgのCpGオリゴヌクレオチド、好ましくは、0.1mg〜50mgのCpGオリゴヌクレオチド、好ましくは、0.2mg〜10mgのCpGオリゴヌクレオチド、好ましくは、0.3mg〜5mgのCpGオリゴヌクレオチド、さらに好ましくは、0.5〜2mgのCpGオリゴヌクレオチド、さらに好ましくは、0.75〜1.5mgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、およそ1mgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0163】
好ましい実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウムに基づくアジュバントである。一実施形態では、本明細書に記載する免疫原性組成物は、アジュバントのリン酸アルミニウムを含む。
【0164】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、緩衝液、凍結保護剤、塩、二価カチオン、非イオン性洗剤、フリーラジカル酸化阻害剤、希釈剤または担体のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0165】
免疫原性組成物は、これらに限定されないが、トリス(トロメタミン)、リン酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グリシン、ヒスチジンおよびコハク酸から選択される1つまたは複数の生理的に許容できる緩衝液を含んでいてもよい。特定の実施形態では、製剤を、約5.0〜約7.0、好ましくは、約5.5〜約6.5のpH範囲内に緩衝する。
【0166】
免疫原性組成物は、1つまたは複数の非イオン性界面活性剤を任意選択により含むことができ、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート−80(Tween80)、ポリソルベート−60(Tween60)、ポリソルベート−40(Tween40)およびポリソルベート−20(Tween20)、これらに限定されないが、Brij58、Brij35、およびその他、例として、Triton X−100;Triton X−114、NP40を含めた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、Span85、ならびにPluronic系の非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic121)が挙げられる。好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、ポリソルベート−80またはポリソルベート−40、好ましくは、ポリソルベート−80を含む。好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、ポリソルベート−80を約0.001%〜約2%(約0.25%までが好ましい)の濃度で、またはポリソルベート−40を約0.001%〜1%(約0.5%までが好ましい)の濃度で含む。
【0167】
本発明はさらに、本発明の免疫原性組成物を含むワクチンにも関する。
【0168】
免疫応答を誘発し、感染から防御するための方法
本開示はまた、本明細書に記載する免疫原性組成物についての使用方法も含む。例えば、本開示の一実施形態は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に対する免疫応答を誘発する方法であって、免疫原性量の、本明細書に記載する免疫原性組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0169】
本開示の一実施形態は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御する方法、または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防する方法、または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させる方法であって、免疫原性量の、本明細書に記載する免疫原性組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0170】
本開示の一実施形態は、血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御する方法、または血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防する方法、または血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させる方法であって、免疫原性量の、本明細書に記載する免疫原性組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0171】
本開示の一実施形態は、血清型15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御する方法、または血清型15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防する方法、または血清型15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させる方法であって、免疫原性量の、本明細書に記載する免疫原性組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0172】
本開示の一実施形態は、血清型15Aの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御する方法、または血清型15Aの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防する方法、または血清型15Aの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させる方法であって、免疫原性量の、本明細書に記載する免疫原性組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0173】
本開示の一実施形態は、対象において、血清型15A、15Bおよび/または15C(好ましくは、15Bおよび/または15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)と関連がある肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染、疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療有効量または予防有効量の本明細書に記載する免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態は、対象において、血清型15A、15Bおよび/または15C(好ましくは、15Bおよび/または15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)と関連がある肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染、疾患または状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載する免疫原性組成物からポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の調製物を作製するステップと、前記抗体調製物を使用して、受動免疫を対象に付与するステップとを含む方法を提供する。
【0174】
一実施形態では、本開示は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御するため、ならびに/または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防するため、ならびに/または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させるため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御するため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防するため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させるための医薬品を製造するために、本明細書に開示する免疫原性コンジュゲートまたは免疫原性組成物を使用することに関する。
【0175】
一実施形態では、本開示は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御するため、ならびに/または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防するため、ならびに/または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させるため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染から対象を防御するため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を予防するため、ならびに/または血清型15A、15Bおよび/もしくは15C(好ましくは、15Bおよび/もしくは15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が引き起こす感染と関連がある少なくとも1つの症状の重症度を低下させるもしくはそうした症状の発生を遅延させるために、本明細書に開示する免疫原性コンジュゲートまたは免疫原性組成物を使用することに関する。
【0176】
免疫原性組成物に対する「免疫応答」とは、対象中で、目的の免疫原性組成物またはワクチン組成物中に存在する分子に対して、液性および/または細胞媒介型の免疫応答が発生することである。本開示の目的では、「液性の免疫応答」は、抗体が媒介する免疫応答であり、本開示の免疫原性組成物またはワクチン中の抗原を認識し、何らかの親和性でそれに結合する抗体を誘発および生成し、一方、「細胞媒介型の免疫応答」は、T細胞および/またはその他の白血球細胞が媒介する免疫応答である。「細胞媒介型の免疫応答」は、主要組織適合複合体(MHC)のクラスIもしくはクラスIIの分子、CD1またはその他の非古典的なMHC様分子と会合したかたちで抗原性エピトープを提示することにより惹起される。これにより、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞、またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞(「CTL」)が活性化される。古典的または非古典的なMHCがコードし、細胞表面上に発現するタンパク質と会合したかたちで提示されるペプチド抗原に対して、CTLは特異性を有する。CTLは、細胞内の微生物の細胞内での破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘発および促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の態様では、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答が関与する。ヘルパーT細胞の作用は、細胞表面上に古典的または非古典的なMHC分子を伴ってペプチドまたはその他の抗原を呈する細胞に対して、非特異的エフェクター細胞の機能を賦活し、その活性を集中させるのに役立つ。「細胞媒介型の免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカイン、さらに、活性化したT細胞ならびに/またはCD4+T細胞およびCD8+T細胞に由来する細胞を含めた、その他の白血球細胞が生成するその他のそのような分子が生成されることも指す。特定の抗原または組成物の、細胞媒介型の免疫学的応答を賦活する能力を、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイ等のいくつかのアッセイ、感作された対象における、その抗原に特異的なTリンパ球をアッセイすること、または抗原での再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン生成を測定することによって決定することができる。そのようなアッセイは、当技術分野で周知である。例えば、Ericksonら(1993)J.Immunol.、151:4189〜4199;およびDoeら(1994)Eur.J.Immunol.、24:2369〜2376を参照されたい。
【0177】
本明細書で使用する場合、「治療(treatment)」(その変化形、例えば、「治療する(treat)」または「治療した(treated)」を含む)は、以下の1つまたは複数のいずれかを意味する:(i)従来のワクチンにおいて行われている感染または再感染の予防、(ii)症状の重症度の低下または症状の排除、および(iii)問題の病原体または障害の実質的または完全な排除。したがって、治療は、(感染に先立って)予防的に行う、または(感染後に)治療的に行うことができる。本開示では、予防的治療が、好ましい様式である。本開示の特定の実施形態によれば、血清型15A、15Bおよび/または15C(好ましくは、15Bおよび/または15C、より好ましくは、15B)の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)感染に対して、宿主動物を、予防的および/または治療的に免疫することを含め、治療する組成物および方法を提供する。本開示の方法は、予防的および/または治療的な免疫を対象に付与するのに有用である。また、本開示の方法は、生物医学的研究に応用するために、対象に対して実行することもできる。
【0178】
「免疫原性量」および「免疫学的有効量」の両方を、本明細書では交換可能に使用し、これらは、当業者に公知の標準的なアッセイにより測定する場合に、(T細胞による)細胞性応答または(B細胞もしくは抗体による)液性応答のいずれかまたは両方の免疫応答を惹起するのに十分な抗原または免疫原性組成物の量を指す。
【0179】
好ましい実施形態では、前記対象はヒトである。最も好ましい実施形態では、前記対象は、新生児(すなわち、年齢:3カ月未満)、乳児(年齢:3カ月〜1歳)、または幼児(すなわち、年齢:1〜4歳)である。
【0180】
ある実施形態では、本明細書に開示する免疫原性組成物は、ワクチンとして使用するためのものである。
【0181】
そのような実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、1歳未満である。例えば、ワクチンを接種すべき対象は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12カ月であり得る。ある実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、約2、4または6カ月である。別の実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、2歳未満である。例えば、ワクチンを接種すべき対象は、約12〜15カ月であり得る。場合によっては、わずか1回の用量の本発明に従う免疫原性組成物を必要とするに過ぎないが、状況によっては、第2、第3または第4の用量を投与する場合もある(レジメンのセクションを参照されたい)。
【0182】
本発明のある実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、年齢50歳以上のヒト成人、より好ましくは、年齢55歳以上のヒト成人である。ある実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、年齢65歳以上、年齢70歳以上、年齢75歳以上、または年齢80歳以上のヒト成人である。
【0183】
ある実施形態では、ワクチンを接種すべき対象は、免疫が低下した個体、特に、ヒトである。一般に、免疫が低下した個体を、感染性病原体による攻撃に対し、正常な液性または細胞性の防御を開始する能力の減弱または低下を示す人と定義する。
【0184】
本発明のある実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、免疫系を損傷し、その結果、抗体応答が肺炎球菌疾患を防御するまたはそれに対処するのに不十分である疾患または状態に罹患している。
【0185】
ある実施形態では、前記疾患は、原発性免疫不全障害である。好ましくは、前記原発性免疫不全障害は、T細胞およびB細胞の複合型免疫不全、抗体の欠乏、明確に定義された症候群、免疫調節不全疾患、貪食細胞障害、自然免疫の欠乏、自己炎症性の障害、ならびに補体の欠乏からなる群から選択される。ある実施形態では、前記原発性免疫不全障害は、PCT出願WO2010/125480、24頁11行〜25頁19行に開示されているものから選択される。
【0186】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、HIV感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、癌、慢性の心臓または肺の障害、うっ血性心不全、糖尿病、慢性肝臓疾患、アルコール依存、硬変、脊髄液漏出、心筋症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脾臓機能不全(例として、鎌状赤血球症)、脾臓機能の欠如(無脾症)、血液の悪性病変、白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ腫、腎臓不全、ネフローゼ症候群および喘息からなる群から選択される疾患に罹患している。
【0187】
本発明のある実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、栄養不良に陥っている。
【0188】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、感染に対する身体の抵抗性を低下させる薬物または治療を施されている。ある実施形態では、前記薬物は、PCT出願WO2010/125480、26頁33行〜26頁40行に開示されているものから選択される。
【0189】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、喫煙者である。
【0190】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、1リットル当たり5×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり4×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり3×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり2×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり1×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.5×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.3×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.1×10
9個未満の細胞の白血球細胞のカウント数(白血球のカウント数)を有する。
【0191】
白血球細胞のカウント数(白血球のカウント数):血中の白血球細胞(WBC)の数。WBCは通常、CBC(全血球数)の一部として測定される。白血球細胞は、血中の、感染と戦う細胞であり、赤血球として公知の、赤色の(酸素を運搬する)血液細胞とは明確に異なる。異なる型の白血球細胞があり、それらには、好中球(多型核白血球;PMN)、帯状核細胞(やや未熟な好中球)、T型リンパ球(T細胞)、B型リンパ球(B細胞)、単核球、好酸球および好塩基球がある。全ての型の白血球細胞が、白血球細胞のカウント数として反映される。白血球細胞のカウント数についての正常範囲は通常、血液1立方ミリメートル当たり4,300〜10,800個の細胞である。これはまた、白血球のカウント数と呼ぶ場合もあり、国際単位として、1リットル当たり4.3〜10.8×10
9個の細胞と表わすことができる。
【0192】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、好中球減少症に罹患している。本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、1リットル当たり2×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり1×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.5×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.1×10
9個未満の細胞、または1リットル当たり0.05×10
9個未満の細胞の好中球のカウント数を有する。
【0193】
低い白血球のカウント数または「好中球減少症」は、循環血液中の好中球の異常に低いレベルにより特徴付けられる状態である。好中球は、感染を予防したり、感染と戦ったりするのに役立つ特定の種類の白血球細胞である。癌患者が好中球減少症を経験する最も一般的な理由は、化学療法の副作用である。化学療法誘発性の好中球減少症により、患者の感染リスクが増加し、癌治療に混乱が生じる。
【0194】
本発明の特定の実施形態では、ワクチンを接種すべき、免疫が低下した対象は、500個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数、または300個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数、または200個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数、または100個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数、または75個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数、または50個/mm
3未満のCD4+細胞のカウント数を有する。
【0195】
CD4細胞試験は通例、1mm
3中の細胞の数として報告される。正常なCD4のカウント数は、500〜1600個の間であり、CD8のカウント数は、375〜1100個の間である。CD4のカウント数は、HIVを有する人々において劇的に低下する。
【0196】
本発明ある実施形態では、任意の本明細書に開示する免疫が低下した対象は、ヒト男性またはヒト女性である。
【0197】
組成物中のコンジュゲートの量は一般に、そのコンジュゲートについての、多糖体、すなわち、コンジュゲートされている多糖体とコンジュゲートされていない多糖体の総量に関して計算する。例えば、20%の遊離の多糖体を有するコンジュゲートは、100μgの多糖体の用量中に、約80μgのコンジュゲートされている多糖体および約20μgのコンジュゲートされていない多糖体を有する。コンジュゲートの用量を計算する場合、コンジュゲートへのタンパク質の寄与は通常考慮されない。一般に各用量が多糖体を、0.1〜100μg、特定すると0.1〜10μg、より特定すると1〜10μg、より特定すると1〜5μg含む。好ましくは、各用量は多糖体を、約1.1、2、2.2、3、3.3、4、4.4mg含む。
【0198】
特定の免疫原性組成物またはワクチンのための構成成分の最適な量を、対象における適切な免疫応答を観察する標準的な研究により確かめることができる。対象に、最初のワクチン接種の後、1回または数回のブースター免疫を、適切に間隔を開けて行うことができる。
【0199】
増殖アッセイ;細胞溶解アッセイ、例として、T細胞の、その特異的標的細胞を溶解させる能力を測定するためのクロム放出アッセイ;または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによって、B細胞の活性のレベルを測定することのいずれかにより、抗原の、免疫原としての有効性を測定することができる。また、免疫応答は、抗原の投与後に誘発される抗原特異的抗体の血清レベルを測定することによって、より具体的には、本明細書の記載に従って、そのようにして誘発される抗体の、特定の白血球細胞のオプソニン化貪食能力を増強する能力を測定することによって検出することもできる。免疫した宿主を、投与されている抗原でチャレンジすることによって、免疫応答の防御レベルを測定することができる。例えば、免疫応答が所望される抗原が細菌である場合には、動物を細菌細胞でチャレンジした後で、抗原の免疫原性量により誘発される防御レベルを、パーセント生存率またはパーセント死亡率を検出することによって測定する。一実施形態では、細菌感染と関連がある少なくとも1つの症状、例えば、感染と関連がある発熱を測定することによって、防御の量を測定することができる。多抗原型または複数構成成分のワクチンまたは免疫原性組成物中の各抗原の量は、その他の構成成分のそれぞれに関して変化させ、そうした量は、当業者に公知の方法により決定することができる。そのような方法は、免疫原性および/またはin vivoにおける効能を測定するための手順を含むであろう。
【0200】
本開示は、本開示の莢膜多糖体または免疫原性コンジュゲートに特異的かつ選択的に結合する抗体および抗体組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態では、本開示の莢膜多糖体または免疫原性コンジュゲートを対象に投与すると、抗体が生じる。いくつかの実施形態では、本開示は、1つまたは複数の本開示の莢膜多糖体または免疫原性コンジュゲートに対して作られ、精製または単離した抗体を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、動物効能モデル中でまたはオプソニン化貪食作用死滅アッセイにより細菌を死滅させることによって測定する場合に機能を示す。いくつかの実施形態では、本開示の抗体により、受動免疫が対象に付与される。本開示は、当業者に周知の技法を使用して、本開示の抗体もしくは抗体断片をコードするポリヌクレオチド分子、および細胞、細胞株(例として、ハイブリドーマ細胞、もしくは抗体を組換えにより生成するための、その他の工学的に作製された細胞株)、または本開示の抗体を生成するトランスジェニック動物、または抗体組成物をさら提供する。
【実施例】
【0201】
(実施例1)
単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体の調製
1.1 発酵および精製
血清型15B莢膜多糖体は、当業者に公知の単離の手順を使用して細菌から直接得ることができる(例えば、米国特許出願公開第20060228380号、第20060228381号、第20070184071号、第20070184072号、第20070231340号および第20080102498号、またはWO2008118752に開示されている方法を参照されたい)。血清型15Bの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を、培養ボトル中で増殖し、次いで、培養発酵槽に移した。細胞が標的とする光学密度に達したら、細胞を生産用発酵槽に移した。発酵ブロスを、N−ラウロイルサルコシンを添加することによって不活性化し、限外ろ過および透析ろ過により精製した。
【0202】
次いで、精製した肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B多糖体を、PANDA2K homogenizer(登録商標)(GEA Niro Soavi)を使用する高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節して、単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B多糖体を生成した。
【0203】
好ましくは、上記のプロセスにより得られる単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体は、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含み、50kDa〜500kDa、好ましくは、150〜350kDaの間の分子量を有する。
【0204】
1.2 単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体の酸化
多糖体の酸化を、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0±0.2)中で、2.0g/Lの多糖体の最終濃度を得るように計算された量の500mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)およびWFIを逐次添加することによって実施した。必要であれば、反応pHを、およそpH6.0に調整した。pH調整の後に、反応温度を、23±2℃に調整した。酸化を、およそ0.25モル当量の過ヨウ素酸ナトリウムを添加することによって開始した。酸化反応を、23±2℃でおよそ16時間の間実施した。
【0205】
活性型多糖体の濃縮および透析ろ過を、10KのMWCO限外ろ過カセットを使用して実施した。透析ろ過を、20倍のダイア容量のWFIに対して実施した。次いで、精製した活性型多糖体を、5±3℃で保存した。精製した活性型の糖をとりわけ、(i)比色分析アッセイによる糖の濃度;(ii)比色分析アッセイによるアルデヒドの濃度;(iii)酸化の程度、(iv)SEC−MALLSによる分子量、ならびに(v)O−アセチルおよびグリセロールの存在により特徴付けた。
【0206】
SEC−MALLSを使用して、多糖体および多糖体−タンパク質のコンジュゲートの分子量を決定した。SECを使用して、多糖体を流体力学的容積により分離した。屈折率(RI)検出器および多角レーザー光散乱(MALLS)検出器を使用して、分子量を決定した。光が物質と相互作用すると、光は散乱し、散乱光の量は、濃度、dn/dc(比屈折率の増加量)の二乗、および物質のモル質量と関係がある。分子量の測定値を、MALLS検出器から得られる散乱光のシグナルおよびRI検出器から得られる濃度のシグナルに由来する読取りに基づいて計算する。
【0207】
活性型多糖体の酸化の程度(DO=糖反復単位のモル数/アルデヒドのモル数)を、以下に従って決定した。糖反復単位のモル数を、種々の比色分析法により、例えば、アンスロン法を使用して決定する。アンスロン法により、多糖体は最初に、硫酸および熱の作用により単糖に分解される。アンスロン試薬がヘキソースと反応して、黄緑色の複合体を形成し、この吸光度を625nmで分光光学的に読み取る。アッセイの範囲内では、吸光度は、存在するヘキソースの量に直接比例する。
【0208】
また、アルデヒドのモル数も、MBTH比色分析法を使用して同時に決定する。MBTHアッセイでは、(所与の試料に由来する)アルデヒド基を3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン(MBTHアッセイ試薬)と反応させることによって、アジン化合物を形成する。過剰量の3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾンは酸化して、反応性カチオンを形成する。反応性カチオンとアジンが反応して、青色の発色団を形成する。次いで、形成した発色団を、650nmで分光学的に読み取る。
【0209】
好ましくは、上記のプロセスにより得られる活性型肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体は、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含み、50kDa〜500kDa、好ましくは、100〜250kDaの間の分子量を有する。
【0210】
1.3 活性型肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体のCRM
197とのコンジュゲーション
コンジュゲーションのプロセスは、
a)スクロース賦形剤と混ぜ合わせ、凍結乾燥を行うステップと、
b)凍結乾燥した活性型多糖体およびCRM
197を復元するステップと、
c)活性型多糖体をCRM
197にコンジュゲートさせ、キャップするステップと、
d)コンジュゲートを精製するステップと
からなる。
【0211】
a)スクロース賦形剤と混ぜ合わせ、凍結乾燥を行うステップ
活性型多糖体をスクロースと混ぜ合わせて、活性型多糖体1グラム当たり25グラムのスクロースの比とした。次いで、混ぜ合わせた混合物のボトルを凍結乾燥した。凍結乾燥に続き、凍結乾燥した活性型多糖体を含有するボトルを、−20±5℃で保存した。計算量のCRM
197タンパク質を別途、シェルフリーズおよび凍結乾燥した。凍結乾燥したCRM
197を、−20±5℃で保存した。
【0212】
b)凍結乾燥した活性型多糖体およびCRM
197タンパク質を復元するステップ
凍結乾燥した活性型多糖体を、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中で復元した。多糖体が完全に溶解したら、等しい量の無水DMSOを凍結乾燥したCRM
197に添加して、復元を行った。
【0213】
c)コンジュゲートさせ、キャップするステップ
反応槽中で、復元した活性型多糖体を復元したCRM
197と組み合わせ(投入量の比:0.8:1)、続いて、徹底的に混合して、透明溶液を得てから、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いてコンジュゲーションを開始した。反応溶液中の多糖体の最終濃度は、およそ1g/Lである。コンジュゲーションを、反応混合物に1.0〜1.5MEqのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加することによって開始し、インキュベーションを23±2℃で40〜48時間行った。2MEqの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)を添加して、未反応のアルデヒドをキャップすることによって、コンジュゲーション反応を止めた。このキャッピング反応を、23±2℃で3±1時間継続した。
【0214】
d)コンジュゲートを精製するステップ
コンジュゲート溶液を、100〜300KのMWCOメンブランを使用するタンジェンシャルフローろ過による精製に備えて、冷やした5mMコハク酸−0.9%生理食塩水(pH6.0)を用いて1:10に希釈した。希釈したコンジュゲート溶液を5μmのフィルターに通し、透析ろ過を、媒体として5mMコハク酸−0.9%生理食塩水(pH6.0)を使用して実施した。透析ろ過の完了の後に、コンジュゲート保持液を0.22μmのフィルターに通した。
【0215】
コンジュゲートを、5mMコハク酸/0.9%生理食塩水(pH6)を用いてさらに希釈して、およそ0.5mg/mLの糖の標的濃度を得た。最後の0.22μmのろ過のステップを完了して、免疫原性コンジュゲートを得た。
【0216】
好ましくは、上記のプロセスにより得られるコンジュゲートは、血清型15B莢膜多糖体1mM当たり少なくとも0.6mMのアセテートを含み、3000〜20000kDaの間の分子量を有し、2〜6の間のコンジュゲーションの程度を有する。
【0217】
(実施例2)
CRM
197に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートの特徴付け
コンジュゲート1は、実施例1に開示したプロセスにより調製した。コンジュゲート2および3は、異なる量の酸化剤を使用する類似のプロセスにより調製した。コンジュゲート4は、類似のプロセスにより調製したが、ただし、精製した血清型15B莢膜多糖体は、サイズ調節せずに、活性化させて、より低いDO(より高い酸化のレベル)を得、コンジュゲーションは、水性媒体中で実施した。コンジュゲート5は、類似のプロセスにより調製したが、ただし、精製した血清型15B莢膜多糖体は、化学的加水分解によりサイズ調節し、コンジュゲーションは、水性媒体中で実施した。コンジュゲート6および7は、類似のプロセスにより調製したが、ただし、精製した血清型15B莢膜多糖体は、サイズ調節しなかった。
【0218】
得られたコンジュゲートを特徴付け、結果を表1に要約する。
【0219】
【表1】
【0220】
水酸化アルミニウムゲルを利用し、タンパク質および共有結合している糖を結合させて、遠心分離により除去する手順により、遊離の多糖体のパーセントを測定する。試料を、リン酸緩衝水酸化アルミニウムゲルと混合し、遠心分離する。結合している糖は、ゲルと共にペレット化し、遊離の糖は、上清中に留まる。結果として得られた上清および対照試料を適切な比色分析アッセイにより定量して、遊離の糖のパーセントを決定し、タンパク質の除去および糖の回収が十分であることを確認する。
【0221】
アミノ酸分析のために、最初に、真空かつ加熱(160℃、15分間)下における6N塩酸(HCl)による加水分解を使用して、多糖体−タンパク質の試料を加水分解して、遊離のアミノ酸としてのその個々の構成成分を得る。加水分解の後、アミノ酸分析装置を使用して、試料を分析する。個々のアミノ酸を、クエン酸ナトリウム緩衝液の段階的勾配を使用するイオン交換クロマトグラフィーにより、温度および流速を変化させて分離する。分離の後、各アミノ酸の残留量を、ポストカラムニンヒドリンカップリング検出システムを使用して定量的に決定する。このシステムでは、ニンヒドリンを、ポストカラム反応器システム中でカラムの溶出液と混合し、混合物を光度計内に通す。ニンヒドリンが溶出したアミノ酸と反応すると、570nmで最大吸収を示す紫色の化合物が生じる。この吸光度は、存在するα−アミノ基の量に関して、線形の応答(関数)を示し、この反応により、α−アミノ基を有する全ての有機化合物の定量的比色分析アッセイを行う。プロリンおよびヒドロキシルプロリン等の、遊離のアミノ基を有さないイミノ酸との反応では、明るい黄色の化合物が生じ、これを440nmでモニターする。各アミノ酸についてのピーク面積を、570nmおよび440nmの両方の波長のアウトプットを使用して計算する。
【0222】
収率を、以下に従って計算する:(コンジュゲート中の多糖体の量×100)/活性型多糖体の量。
【0223】
水性媒体中で作製したコンジュゲート(4および5)は、O−アセチルのレベルの顕著な喪失を示した。ネイティブの多糖体を使用し、MWのサイズ調節は実施せず、DMSO溶媒中で作製したコンジュゲート(6および7)は、O−アセチルのレベルの喪失を示さなかった。しかし、ろ過特性が良好でないことに加えて、コンジュゲートの収率は非常に低かった。高圧ホモジナイゼーションによりサイズ調節した多糖体を使用して、DMSO中で作製したコンジュゲート(1、2および3)は、高い収率およびより良好なろ過特性を示し、O−アセチルのレベルは顕著に保存された。これらのコンジュゲートはまた、非常に低いレベルの遊離の多糖体も有していた。
【0224】
(実施例3)
オプソニン化貪食活性(OPA)アッセイ
本発明のコンジュゲートの免疫原性は、下記に記載するオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)を使用して評価することができる。
【0225】
30匹の6〜7週齢、雌のSwiss Websterマウスの群を、第0週に、0.001μg、0.01μgまたは0.1μgの試験用コンジュゲートを用いて、皮下経路を介して免疫した。第3週に、同じ用量のコンジュゲートを用いてマウスにブーストをかけ、次いで、第4週に採血した。血清型に特異的なOPAを、第4週の血清試料に対して実施した。
【0226】
OPAを使用して、マウス血清中の、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bに特異的な機能性抗体を測定する。試験血清を、莢膜多糖体に特異的な免疫グロブリンの、細菌をオプソニン化し、補体沈着を引き起こし、それにより、貪食細胞による貪食作用および細菌の死滅を促進する能力を測定するアッセイ反応に供する。OPAタイターを、試験血清を有さない対照のウエルと比して細菌のカウント数の50%の低下をもたらす希釈度の逆数と定義する。OPAタイターを、この50%死滅のカットオフを包含する2つの希釈度から内挿する。
【0227】
OPAの手順は、Huら、Clin Diagn Lab Immunol、2005;12(February(2)):287〜95に記載されている方法に基づくが、以下の改変を加えた。試験血清を、2.5倍に段階希釈し、マイクロタイターアッセイプレートに添加した。血清型15Bの生存標的細菌を、ウエルに添加し、プレートを、37℃で30分間振とうした。分化HL−60細胞(貪食細胞)および仔ウサギの血清(3〜4週齢、Pel−Freez(登録商標)、6.25%の最終濃度)を、ウエルに添加し、プレートを、37℃で45分間振とうした。反応を止めるために、80μLの0.9%NaClを、全てのウエルに添加し、混合し、10μLの一定分量を、200μLの水を含有する、MultiScreen HTS HVフィルタープレート(Millipore(登録商標))のウエルに移した。液体は、真空下でプレートを通ってろ過され、150μLのHySoy培地を、各ウエルに添加し、フィルターに通した。次いで、フィルタープレートを、37℃、5%CO
2で一晩インキュベートし、次いで、Destain Solution(Bio−Rad)を用いて固定した。次いで、プレートを、クマシーブルーを用いて染色し、1回脱染した。コロニーを、撮像し、Cellular Technology Limited(CTL)のImmunoSpot Analyzer(登録商標)上で数え上げた。未加工のコロニーのカウント数を使用して、死滅曲線をプロットし、OPAタイターを計算した。
【0228】
コンジュゲート1および2の免疫原性を、上記で言及したアッセイに従って試験するに至った。1つの追加のコンジュゲート、およびコンジュゲートされていないネイティブの肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型15Bの莢膜多糖体(非コンジュゲートPS)もまた、同じアッセイ中で試験した。ネイティブの(すなわち、サイズ調節されていない)血清型15B莢膜多糖体をCRM
197に水溶液中における還元的アミノ化によりコンジュゲートすることによって、コンジュゲート9を調製した。
【0229】
結果を、表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
上記の表に示すように、コンジュゲート1および2は、マウスに投与すると、血清型15Bの肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)をオプソニン化し、補体沈着を引き起こし、それにより、貪食細胞による貪食作用および細菌の死滅を促進することが可能な抗体を生じた。さらに、より低い分子量にもかかわらず、コンジュゲート1および2はまた、サイズ調節されていないコンジュゲート9と比較して、類似のレベルの免疫原性も示した。
【0232】
(実施例4)
血清型15Bと血清型15Cとの間の交差機能性OPA応答
肺炎球菌血清群15には、4つの、構造的に関連のある血清型:15A、15B、15Cおよび5Fが含まれる。血清型15Bおよび15Cは、遺伝子タイピングの技法によっては区別できず、15B−PSは15C−PSのO−アセチル化バリアントであることを除いて、類似の莢膜多糖体(PS)組成を有する。血清型15Bについての抗莢膜PS抗体が血清型15Cに対して機能的な交差反応性を示すかどうかを理解するために、10匹のウサギを、本明細書に開示するCRM
197に共有結合的に連結された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型15B莢膜多糖体を含む免疫原性コンジュゲートをいずれもその製剤の一部として含有するPCV16vワクチンおよびPCV20vワクチンを用いて免疫した。ワクチン接種の前および後に得られた血清を、OPAアッセイ中で、血清型15Bおよび15Cの標的の肺炎球菌の菌株に対して試験した。
【0233】
各群からの10匹のウサギのうち、100%が、血清型15Bコンジュゲートを用いて免疫した後に、血清型15Bに対するOPA応答を示した。これらの同じ試料のうち、100%が、血清型15Cに対してもOPA応答を示した(表1および表2)。15CのOPAにおいて、ワクチン接種前の血清中では、低いOPAタイターを観察した。しかし、OPA中において、ワクチン接種後の血清が、ワクチン接種前と比較して10倍超のGMT OPAタイターの増加を示したことから、本発明の免疫原性コンジュゲートが血清型15Bおよび15Cの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を死滅させることが可能な抗体の形成を誘発することが実証された。
【0234】
PCV16vは、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F(16vPnC)に由来し、いずれもがCRM
197に個々にコンジュゲートしている糖コンジュゲートを含む16価のコンジュゲート組成物である。
【0235】
PCV20vは、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F(20vPnC)に由来し、いずれもがCRM
197に個々にコンジュゲートしている糖コンジュゲートを含む20価のコンジュゲート組成物である。
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】