(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-105142(P2021-105142A)
(43)【公開日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】下地処理剤
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20210625BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20210625BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20210625BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-238026(P2019-238026)
(22)【出願日】2019年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】519464027
【氏名又は名称】ガイアノーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏道
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CA021
4J038CA031
4J038CA071
4J038CB131
4J038CC041
4J038CD091
4J038DG001
4J038DL031
4J038JC18
4J038KA02
4J038KA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA09
4J038PA07
4J038PB02
4J038PB06
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】複数の部材をつなぎ合わせて塗装する場合であっても、つなぎ目部分を十分に保護する。
【解決手段】下地処理剤は、組成物全質量に対する質量%で、樹脂:30〜70%、水分:25〜65%、安定剤:3.0〜8.0%を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全質量に対する質量%で、
合成樹脂:30〜70%、
水分:25〜65%、
安定剤:3.0〜8.0%、
を含有する下地処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、身の回りの様々な物に対してゴム部材を取りつけることが行われている。例えば走行中において飛石等から自動車のシャーシを保護するために、シャーシにゴム組成物を塗布することが行われている。あるいは、屋外に配置された金属製の機械製品や建築物等は、何ら保護するための処置を施さなければ金属部分が風雨により腐食劣化が進んでしまうことから、腐食劣化を抑制するために遊具の表面にゴム組成物を塗布することが行われている。これらは、いずれも製品を外部環境から守り、耐久性を向上させることを意図するためにゴム組成物を利用したものである。
【0003】
また、身の回りに存在する危険から使用者を守るためにゴム部材を利用することも行われている。例えば、電化製品に使用されるケーブル内部の金属部分に触れて使用者が感電しないよう、ケーブルの外周に絶縁膜としてゴム部材を被覆することが行われている。また、公共施設における滑りやすい、あるいは落下しやすい危険な場所にゴム部材を配置することにより、利用者が滑って転倒、転落しないようにすることも行われている。
【0004】
更に、上述のように人の目に触れる部分にゴム部材を配置する場合、このゴム部材に対して着色したいというニーズが存在する。例えば、特許文献1に記載の技術は、このようなニーズに応えるものである。特許文献1には、エスカレーターのハンドレールにウレタン系塗料を塗布する例をはじめ、自動車・車両部品、電機部品の絶縁用器具、医療用ゴム、野球場やテニスコートなどのスポーツ施設に対し、ウレタン系塗料を塗布する技術が開示されている。ゴム部材を着色することにより、ゴム部材を目立たせ、使用者に対して危険を知らせる等の役割も果たすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−144289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、ゴム表面に下地処理剤を塗布し、更にその上からウレタン系塗料を塗布することとされている。しかしながら、特許文献1の塗装方法は、複数の部材をつなぎ合わせてその上から塗料を塗布する前提でなされていないため、下地処理剤が塗布された複数の部材をつなぎ合わせてその上からウレタン系塗料を塗布した場合、部材間のつなぎ目部分において塗装に不備が生じ、つなぎ目部分を十分に保護できないという問題点があった。
【0007】
また、コスプレ造形の際に使用される小物や衣装等は、複数の部材をつなぎ合わせて製作することが多いが、複数の部材をつなぎ合わせるためには有機溶剤系の接着剤が使用される。造形物の塗装のために、接着剤が塗布されている箇所の上から直接ウレタン系塗料を塗布すると、例えば塗料に含まれている溶剤の影響により接着剤の再溶解(皮膜膨潤)が発生するという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、複数の部材をつなぎ合わせて塗装する場合であっても、つなぎ目部分を十分に保護することができる下地処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の下地処理剤は、組成物全質量に対する質量%で、合成樹脂:30〜70%、水分:25〜65%、安定剤:3.0〜8.0%、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した構成からなる本発明によれば、複数の部材をつなぎ合わせて塗装する場合であっても、つなぎ目部分を十分に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、アミューズメント分野、特に複数の部材を組合せて形成されたコスプレ造形物のつなぎ目部分に塗料を塗布する場合に、塗料の下に塗布される下地処理剤として合成樹脂、水分、安定剤を有することが必要であることを踏まえた上で、各成分がどの評価項目に対して寄与することができるかという点を詳細に検討した。
【0012】
その結果、本発明者は、合成樹脂、水分の含有量を適正にすることで塗着性を向上させることができることを見出した。また本発明者は、合成樹脂、安定剤の含有量を適正にすることでレベリング性を向上させることができることを見出した。また本発明者は、合成樹脂、水分の含有量を適正にすることで適度な弾性を確保することができることを見出した。また本発明者は、水分、安定剤の含有量を適正にすることで、良好な皮膜の靭性、防腐・防カビ性、界面活性性を確保できることを見出した。
【0013】
以下、本発明を適用した下地処理剤における数値限定理由について説明する。なお、各成分の含有量は質量%で表し、単に%として記載する。
【0014】
[合成樹脂:30〜70%]
合成樹脂は、主に塗着性、レベリング性を向上させるとともに適度な弾性を確保する効果がある。合成樹脂としては、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、ACM(アクリルゴム)、IR(イソプレンゴム)、U(ウレタンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、Q(シリコーンゴム)を挙げることができるが、これらの例に限定されない。合成樹脂が30%未満では、塗布膜が流れてしまいレベリング性が悪化するとともに、適度な弾性が得られず、塗着性が悪化する。一方、合成樹脂が70%を超えると、塗布膜が広がらずレベリング性が悪くなるとともに、適度な弾性が確保できず、塗着性が悪化する。従って、合成樹脂は30〜70%とする。
【0015】
[水分:25〜65%]
水分は、皮膜の靭性を向上させる効果がある。水分が25%未満では、皮膜の靭性が低下する。一方、水分が65%を超えても、皮膜の靭性が低下する。従って、水分は25〜65%とする。
【0016】
[安定剤:3.0〜8.0%]
安定剤は、防腐・防カビ性、界面活性性を確保する効果がある。安定剤としては、界面活性剤、チアゾリン系化合物、有機臭素系化合物、ジチオカルバメート系化合物、N-フェニルマレイミド樹脂、サリチルアニリド等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。なお、界面活性剤は親水基と親油基を併せ持つ事により水に溶けない物質を水に分散させることができる。また、チアゾリン系化合物は、水、エチレングリコールに可溶であり、ラテックス、エマルジョン、糊料などに広く使用されているものである。チアゾリン系化合物は、低濃度でバクテリア、カビを抑制し長期の残効性を有する。安定剤が3.0%未満では、防腐・防カビ性、界面活性性を確保することができない。また、安定剤が8.0%を超えても、防腐・防カビ性、界面活性性を確保することができない。従って、安定剤は3.0〜8.0%とする。
【0017】
本発明の下地処理剤を、接着剤が塗布されている箇所の上からエアブラシ等を用いて塗布し、更に下地処理剤の上から、例えばウレタン系塗料を塗布する。このように、接着剤とウレタン系塗料の間に下地処理剤を配置することにより、皮膜膨潤が発生して接着部分が膨張することを抑制することができる。従って、コスプレ造形の際に使用される小物等の表面に皺や割れが生じるのを防止することができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を適用した塗装用組成物について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
【0019】
本実施例において、合成樹脂と、水分と、安定剤とを、表1の割合で混合して、実施例及び比較例の塗装用組成物を作製した。また、合成樹脂としてCR(クロロプレンの重合により得られる合成ゴム)を使用し、安定剤として界面活性剤(親水基と親油基・疎水基を併せ持つ物質)とチアゾリン系化合物を使用して塗着性、レベリング性、弾性、皮膜の靭性、防腐・防カビ性、界面活性性を調査した。
【0020】
なお、評価項目のうち、塗着性、レベリング性、弾性、皮膜の靭性、防腐・防カビ性、界面活性性について、目視(肉眼による観察)により評価を行った。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
表1及び表2中、組成物No.1〜6は本発明例であり、組成物No.7〜12は比較例である。本発明例であるNo.1〜6は、塗装用組成物中の合成樹脂、水分、安定剤の割合が適正であるため、塗着性が良く、レベリング性が良く、適度な弾性が得られた。また、皮膜の靭性が向上し、良好な防腐・防カビ性、界面活性性を示した。
【0024】
比較例中No.7は、合成樹脂が少ないので、塗着性が悪化した。また、レベリング性が悪化するとともに、適度な弾性が得られなかった。
【0025】
比較例中No.8は、合成樹脂が多いので、塗着性が悪化した。また、レベリング性が悪化するとともに、適度な弾性が得られなかった。
【0026】
比較例中No.9は、水分が少ないので、皮膜の靭性が低下した。
【0027】
比較例中No.10は、水分が多いので、皮膜の靭性が低下した。
【0028】
比較例中No.11は、安定剤が少ないので、防腐・防カビ性、界面活性性が低下した。
【0029】
比較例中No.12は、安定剤が多いので、防腐・防カビ性、界面活性性が低下した。