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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-105473(P2021-105473A)
(43)【公開日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】焼却炉
(51)【国際特許分類】
   F23L 1/00 20060101AFI20210625BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20210625BHJP
【FI】
   F23L1/00 EZAB
   F23L1/00 Z
   F23G5/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-236289(P2019-236289)
(22)【出願日】2019年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】399072222
【氏名又は名称】株式会社アトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】高坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高坂 祐人
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
【Fターム(参考)】
3K023EA03
3K065AA18
3K065AB01
3K065AC13
3K065AC14
3K065AC17
3K065BA06
3K065GA03
3K065GA12
3K065GA22
3K065GA23
3K065GA34
(57)【要約】
【課題】 一次燃焼室での燃焼ガスと空気との混合をより良好なものとする。
【解決手段】 焼却炉1は廃棄物を燃焼させる箱型の一次燃焼室29の天井に形成した一次煙道44を介して上側に二次燃焼室43が連通されている。一次燃焼室29の前内側壁面29A、左内側面壁29C、右内側面壁29Dに設けた燃焼用空気を吐出する第1空気吐出部68、88、108が各内側壁面の横幅方向の中央から縁寄りにずらし、廃棄物から発生した燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流を発生させるようにしてある。これらの第1空気吐出部68、88、108は内側壁面間で高さに差を付けてある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を燃焼させる箱型の一次燃焼室の天井に形成した一次煙道を介して上側に二次燃焼室が連通されており、一次燃焼室の複数の内側壁面に燃焼用空気を吐出する空気吐出部を設け、この空気吐出部を内側壁面の横幅方向の中央から縁寄りにずらし、廃棄物から発生した燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流を発生させるようにした焼却炉であって、
一次燃焼室の内側壁面に設ける空気吐出部の高さに内側壁面間で差を付けたこと、
を特徴とする焼却炉。
【請求項2】
一次煙道の入り口を一次燃焼室の天井の縁寄りに細長く設けるとともに、一番高い空気吐出部から吐出する燃焼用空気が一次煙道の入り口近くを流れるようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】
一次煙道の横断面を部分円環状に形成したこと、
を特徴とする請求項1または2記載の焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼却炉に係り、とくに二次燃焼室付の焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、木材、布、プラスチック、ゴム等の廃棄物を着火すると、水素と炭素の可燃ガスが発生する。水素は比較的低温で酸素と結合し、水蒸気となるが、炭素ガはなかなか酸素と結合せず、そのまま排出されると黒煙となり、環境汚染を招く。水素、炭素の可燃ガスを完全燃焼させるためには、空気と良く混合すること、燃焼温度を800℃以上に2秒以上維持することが条件となる。
燃焼温度を2秒以上維持するには燃焼ガスの燃焼経路を長くすれば良く、これは旋回気流とすることで達成される。旋回気流は燃焼ガスと空気との混合も良好となり、完全燃焼の促進も計られる。
【0003】
このため、従来の焼却炉では、廃棄物を燃焼する箱型の一次燃焼室の上側に、一次煙道を介して連通した二次燃焼室を装備し、一次燃焼室の複数の内側壁面に燃焼用空気を吐出する空気吐出口を設け、空気吐出口を内側壁面の横幅方向の中心からずらして旋回気流を発生させるようにしていた。また二次燃焼室には助燃バーナーを設置し、燃焼ガスを800℃以上の高温に維持するとともに旋回気流を加速するようにしていた。
【0004】
ところで、助燃バーナーの使用はプロパンガスや灯油などの燃料を消費するため、できるだけ使用を減らすのが望ましい。このため一次燃焼室での燃焼ガスと空気との混合を良好なものとする必要があるが、従来の一次燃焼室の構成では十分とはいえなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたものであり、一次燃焼室での燃焼ガスと空気との混合をより良好なものとできる焼却炉を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、
廃棄物を燃焼させる箱型の一次燃焼室の天井側に形成した一次煙道を介して上側に二次燃焼室が連通されており、一次燃焼室の複数の内側壁面に燃焼用空気を吐出する空気吐出部を設け、この空気吐出部を内側壁面の横幅方向の中央から縁寄りにずらし、廃棄物から発生した燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流を発生させるようにした焼却炉であって、
一次燃焼室の内側壁面に設ける空気吐出部の高さに内側壁面間で差を付けたこと、
を特徴としている。
請求項2記載の発明では、一次煙道の入り口を一次燃焼室の天井の縁寄りに細長く設けるとともに、一番高い空気吐出部から吐出する燃焼用空気が一次煙道の入り口近くを流れるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項3記載の発明では、一次煙道の横断面を部分円環状に形成したこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つによれば、一次燃焼室の内側壁面に設ける空気吐出部の高さに内側壁面間で差を付けたことにより、一次燃焼室で発生した燃焼ガスが空気吐出部から吐出した燃焼用空気から旋回力を受けて旋回するときの遠心力で一次燃焼室内に拡がるようにできるので、吐出した燃焼用空気と燃焼ガスとの混合が良好になる。この結果、燃焼が促進して燃焼ガスの高温化が計られるので、二次燃焼室での補助燃焼バーナの使用を抑制し、燃料消費を節約可能となる。
本発明の他の一つによれば、一次煙道の入り口を一次燃焼室の天井の縁寄りに細長く設けるとともに、一番高い空気吐出部から吐出する燃焼用空気が一次煙道の入り口近くを流れるようにしたことにより、燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流の旋回が加速されながら一次煙道に入るので、二次燃焼室での燃焼時間が長く持続する。
また、本発明の更に他の一つによれば、一次煙道の横断面を部分円環状に形成したことにより、燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流が乱れることなく一次煙道を通過でき、二次燃焼室での旋回状態がより良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の一実施例に係る焼却炉の正面図である。
図2図1中の基台の平面図である。
図3図3図1の左側面図である。
図4図4図1の右側面図である。
図5図4のV−V’線に沿った縦断面図である。
図6図1のVI−VI’線に沿った横断面図である。
図7図1のVII−VII’線に沿った横断面図である。
図8図1のVIII−VIII’線に沿った横断面図である。
図9図1のIX−IX’線に沿った横断面図である。
図10図1のX−X’線に沿った横断面図である。
図11】従来技術の問題点の説明図である。
図12】従来技術の問題点の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0010】
図1乃至図9を参照して本発明に係る焼却炉の実施例を説明する。図1は本発明に係る焼却炉の正面図、図2図1中の基台の平面図、図3図1の左側面図、図4図1の右側面図、図5図4のV−V’線に沿った縦断面図、図6図1のVI−VI’線に沿った横断面図、図7図1のVII−VII’線に沿った横断面図、図8図1のVIII−VIII’線に沿った横断面図、図9図1のIX−IX’線に沿った横断面図、図10図1のX−X’線に沿った横断面図である。
これらの図において、1は下部に一次燃焼室、上部に二次燃焼室を内蔵した焼却炉であり、下部側の一次燃焼室において、投入された紙、木材、布、プラスチック、ゴム等の廃棄物に着火して発生した水素と炭素の可燃ガスに、外部から空気を供給し、旋回気流を起こして可燃ガスと空気を混合・燃焼させ、更に一次煙道を通じて導いた上部側の二次燃焼室において、旋回気流状態を維持し、燃焼を持続させて完全燃焼させたのち、外部へ強制排気するようになっている。
【0011】
焼却炉1の内、2は床に固定された鋼製の基台であり、図2に示す如く中空で角柱状の前後2本の横枠3、4と、横枠3、4の間を連結する3本の平行な縦枠5、6、7により構成されている。縦枠5、6、7は横枠3、4の左右方向の左端部、中央、右端部に配設されている。右側の縦枠7の右側面には、外部から燃焼用の空気を供給する燃焼用ブロア8が接続されている。また、縦枠5と横枠3の間と、横枠3と縦枠7の間には、連通孔9、10が穿設されている。燃焼用ブロア8から供給された燃焼用の空気は縦枠7の中に供給されたのち、横枠3を介して縦枠5の中に流入するようになっている。横枠3の上面の内、左右方向の中央よりも右寄りの位置と、縦枠5の上面の内、前後方向の中央よりも前寄りの位置と、縦枠7の上面の内、左右方向の中央よりも後ろ寄りの位置に各々、後述する中空角柱状の給気パイプ(図1の符号60、80、100参照)が立設されており、間に穿設された連通孔(図2の符号61、81、101参照)を介して燃焼用空気が給気パイプ内に流入するようになっている。
【0012】
20は基台1の上に装着された上下に長い鋼製箱型の筐体であり、前面板20Aの下端近くから約1/2の高さまで長方形状の開口21が形成されており、天井板20Bの中央には円形の開口22が形成されている。筐体20の内側の下端から約3/4の高さに耐火モルタルによる水平板状の仕切り壁23が固着されており、筐体20の内部が上下に区画分けされている。筐体20の内、仕切り壁23の下側の区画の内面の内、開口21を除く前後左右の側面に耐火壁24乃至27、底面に耐火壁28が固着されており、仕切り壁23と耐火壁24乃至28とで囲まれた空間により一次燃焼室29が形成されている。
【0013】
一次燃焼室29の下から約1/5の高さに鋼製格子状の網30が水平に装着されている。また筐体20の開口21を囲む前面に方形の枠体31が固着されており、枠体31の右側部の上下には、開口21の上側約3/5を開閉する廃棄物投入用の開閉扉32と、開口21の下側約2/5を開閉するゴミ出し用の開閉扉33とが上下に並設して軸支されている。
【0014】
筐体20の内、仕切り壁23の上側の区画には、四隅に装着された4つの補強板40と筐体20の4つの側壁20A、20C乃至20Eとで八角形状に囲まれた内側に、外側が断面8角形、内側が断面円形の筒状の耐火壁41が固着されている。耐火壁41の上端部は筐体20の天井面20Bの開口22を除く下面に固着されたドーナツ状の耐火壁42により閉塞されている。仕切り壁23と耐火壁41、42で囲まれた空間により二次燃焼室43が形成されている。
【0015】
一次燃焼室29の天井である仕切り壁23の後部縁寄りには、横断面が中心角約90度の部分円環状に形成されるとともに上下方向に貫通した一次煙道44が左右方向に設けられており、下側の一次燃焼室29と上側の二次燃焼室43とが連通されている。一次煙道44の入り口45は一次燃焼室29の天井である仕切り壁23の後部縁寄りに細長い部分円環状に形成されており、一次煙道44の出口46も、二次燃焼室43の床であるる仕切り壁23の後部縁寄りに細長い部分円環状に形成されている。
【0016】
筐体20の天井板20Bの開口22には、下底が開口し、上底が閉塞した鋼製で円筒状の煙突基部50が貫通状態で固着されている。煙突基部50の上端には煙突延部50aが連接されており、焼却炉1の設置された建物外部に燃焼ガスを排気可能になっている。煙突基部50の下端は二次燃焼室43の底から約1/3の高さまで延設されている。二次燃焼室43には、煙突基部50と同心上で煙突基部50の下部の外側を囲むように配設された鋼製の円筒体51が底側の仕切り壁23の上面から天上側の耐火壁42の下面までの間に固着されている。円筒体51の上端部は中心角180度の範囲が切除されて、後述する二次煙道の入り口52が形成されている。
【0017】
筐体20より上側の煙突基部50には、煙突基部50の内部で上向きに開口するとともに上端の開口53から下方へ1/4円弧状に湾曲されて煙突基部50の外側側方へ突出した送風管54が装着されており、この送風管54の端部に排気用ブロア58が装備されている。排気用ブロアにより送風管54の中に送り込まれた空気が開口53から上方へ吐出することで、煙突基部50内の燃焼ガスを上方へ誘引し、煙突延設部50aの中へ強制排気するようになっている。入り口52から入って円筒体51と煙突基部50の間の空間を下方へ下がり、煙突基部50の下端の開口55から煙突基部50の中に入って上方へ上がり、煙突延設部50aの入り口56に至る経路により二次煙道57が形成されている。煙突延設部50aの入り口56は二次煙道57の出口を成す。
筐体20の上の区画の右側部には、外部から右側板20Cと耐火壁41を貫通し、先端が一次煙道44の出口46の直上に向いた補助燃焼バーナ59が装着されている。
【0018】
基台2の横枠4の上面の内、左右方向の中央よりも右寄りの位置(ここでは、開閉扉32、33の右側位置)に鋼製で中空角柱状の給気パイプ60が立設されている。給気パイプ60は筐体20の前面板20Aの外面に装着されており、上端は正面から見て開閉扉32の上端より少し上の高さまで延設されている。横枠4と給気パイプ60の間は連通孔61により相互の内部が連通されている。給気パイプ60の上部と一次燃焼室29との間には、給気パイプ60の上部の上下に並んだ複数個所(ここでは4箇所)から筐体20、耐火壁24の内壁面である一次燃焼室29の前内側壁面29Aまで前後方向に水平に貫通するように空気吐出孔62乃至65が穿設されている。空気吐出孔62乃至65の先端の空気吐出口66乃至69により、第1空気吐出部70が構成されている。
【0019】
また、給気パイプ60の約1/2の高さの少し上の位置と、網30近くの高さ位置から、筐体20、耐火壁24の内壁面まで前後方向に水平に貫通するように一つずつの空気吐出孔71、72が穿設されており、先端の空気吐出口73、74により、第2、第3空気吐出部75、76が構成されている。
燃焼用ブロア8により外部から基台2の中に供給された燃焼用空気は、縦枠7、横枠4、給気パイプ60を通り、第1乃至第3空気吐出部70、75、76から一次燃焼室29の中に後方へ向かって吐出される。
【0020】
基台2の縦枠5の上面の内、前後方向の中央よりも前寄りの位置に鋼製で中空角柱状の給気パイプ80が立設されている。給気パイプ80は筐体20の左側板20Cの外面に装着されており、上端は給気パイプ80の上端と一次燃焼室29の天井内壁面25Bとの中間の高さまで延設されている。縦枠5と給気パイプ80の間は連通孔81により相互の内部が連通されている。給気パイプ80の上部と一次燃焼室25との間には、給気パイプ80の上部の上下に並んだ複数個所(ここでは3箇所)から筐体20、耐火壁26の内壁面である一次燃焼室29の左内側壁面29Cまでまで左右方向に水平に貫通するように空気吐出孔82乃至84が穿設されている。空気吐出孔82乃至84の先端の空気吐出口85乃至87により、第1空気吐出部88が構成されている。
【0021】
また、給気パイプ80の約1/2の高さの少し上の位置と、網30の高さ位置から、筐体20、耐火壁26の内壁面まで左右方向に水平に貫通するように一つずつの空気吐出孔89、90が穿設されており、先端の空気吐出口91、92により、第2、第3空気吐出部93、94が構成されている。
燃焼用ブロア8により外部から基台2の中に供給された燃焼用空気は、縦枠7、横枠4、縦枠5、給気パイプ80を通り、第1乃至第3空気吐出部88、93、94から一次燃焼室29の中に右方へ向かって吐出される。
【0022】
基台2の縦枠7の上面の内、前後方向の中央よりも後寄りの位置に鋼製で中空角柱状の給気パイプ100が立設されている。給気パイプ100は筐体20の右側板20Dの外面に装着されており、上端は一次燃焼室29の天井内壁面29Bの高さまで延設されている。縦枠7と給気パイプ100の間は連通孔101により相互の内部が連通されている。給気パイプ100の上部と一次燃焼室29との間には、給気パイプ100の上部の上下に並んだ複数個所(ここでは3箇所)から筐体20、耐火壁27の内壁面である一次燃焼室29の右内側壁面29Dまで左右方向に水平に貫通するように空気吐出孔102乃至104が穿設されている。空気吐出孔102乃至104の先端の空気吐出口105乃至107により、第1空気吐出部108が構成されている。
【0023】
また、給気パイプ100の約1/2の高さの少し下の位置と、網30近くの高さ位置から、筐体20、耐火壁27の内壁面まで左右方向に水平に貫通するように一つずつの空気吐出孔109、110が穿設されており、先端の空気吐出口111、112により、第2、第3空気吐出部113、114が構成されている。
燃焼用ブロアにより外部から基台2の中に供給された燃焼用空気は、縦枠7、給気パイプ100を通り、第1乃至第3空気吐出部108、113、114から一次燃焼室29の中に左方へ向かって吐出される。
【0024】
一次燃焼室29の3つの前内側壁面29A、左内側壁面29C、右内側壁面29Dの間で第1空気吐出部68、88、108の高さは異なっており、ここでは右内側壁面29Dの第1空気吐出部108が天井内壁面29B近くで一番高く、左内側壁面29Cの第1空気吐出部88が二番目に高く、前内側壁面29Aの第1空気吐出部68が一番低くなっている。また、第2空気吐出部73、93、113も高さが異なっており、左内側壁面29Cの第2空気吐出部93が一番高く、右内側壁面29Dの第2空気吐出部113が二番目に高く、前内側壁面29Aの第2空気吐出部73が一番低くなっている。なお、網30の近くの第3空気吐出部74、94、114の高さはほぼ同じである。
【0025】
次に、上記した実施例の作用を説明する。
一次燃焼室29において網30の上の廃棄物(図5の符号120参照)が着火されると、燃焼ガスが発生して上昇する。燃焼用ブロア8(図2参照)から基台2の縦枠7の中に供給された燃焼用空気が給気パイプ60、80、100の第1乃至第3空気吐出部70、88、108、75、93、113、76、94、114から一次燃焼室29の中に吐出される(図6図8乃至図10参照)。
【0026】
ここで、第1空気吐出部68が前内側壁面29Aの中央より右寄りに設けられていることから、第1空気吐出部68から吐出した燃焼用空気は後内側壁面29Eに当たって左方へ曲がり、更に左内側壁面29Cに当たって前方に回り、平面視で反時計回りJ字状に旋回する(図8の矢印A参照)。第1空気吐出部68から燃焼用空気が吐出すると、ベンチュリ効果により燃焼用空気の流れの近くが低圧となり、網30の廃棄物から発生した燃焼ガスは燃焼用空気の流れの側に吸引されるとともに、燃焼用空気の流れから反時計方向への旋回力を受けて旋回し、遠心力で内右側壁面29D、前内側壁面29Aの側に拡がりながら燃焼用空気と混合する(図8の矢印a1、a2参照)。
【0027】
第1空気吐出部88が左内側壁29Dの中央より前寄りに設けられていることから、第1空気吐出部88から吐出した燃焼用空気は右内側壁面29Dに当たって後方へ曲がり、更に後内側壁面29Eに当たって左方に回り、平面視で反時計回りJ字状に旋回する(図9の矢印B参照)。第1空気吐出部88から燃焼用空気が吐出すると、ベンチュリ効果により燃焼用空気の流れの近くが低圧となり、廃棄物から発生した燃焼ガスが燃焼用空気の流れの側に吸引されるとともに、燃焼用空気の流れから反時計方向への旋回力を受けて旋回し、遠心力で後内側壁面29E、右内側壁面29Dの側に拡がりながら燃焼用空気と混合する(図9の矢印b1、b2参照)。
【0028】
第1空気吐出部108が右内側壁面29Eの中央より後寄りに設けられていることから、第1空気吐出部108から吐出した燃焼用空気は左内側壁面29Cに当たって前方へ曲がり、更に前内側壁面29Aに当たって右方に回り、平面視で反時計回りJ字状に旋回する図10の矢印C参照)。第1空気吐出部108から燃焼用空気が吐出すると、ベンチュリ効果により燃焼用空気の流れの近くが低圧となり、廃棄物から発生した燃焼ガスが燃焼用空気の流れの側に吸引されるとともに、燃焼用空気の流れから反時計方向への旋回力を受けて旋回し、遠心力で前内側壁面29A、右内側壁面29Dの側に拡がりながら燃焼用空気と混合する(図10の矢印c1、c2参照)。
【0029】
ここで第1空気吐出部68、88、108の順に吐出高さが高くなることから、燃焼ガスは、第1空気吐出部68から後方へ吐出した燃焼用空気により、右内側壁面29Dと前内側壁面29A寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合し、次に、第1空気吐出部88から右方へ吐出した燃焼用空気により後内側壁面29E、左内側壁面29C寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合し、最後に第1空気吐出部108から左方へ吐出した燃焼用空気により前内側壁面29A、右内側壁面29D寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合するという具合にして、一次燃焼室29の中を壁寄りに大きく拡がり、燃焼用空気と混合しながら旋回して上昇するので、第1空気吐出部68、88、108から吐出した燃焼用空気との混合が良好となり、燃焼が促進されて800度以上への高温化が計られる。
仮に、図11または図12に示す如く(図12は給気パイプ80の位置を筐体20の前寄りに移動した例を示す)、第1空気吐出部70’、88’、108’の高さが同一の場合、吐出した燃焼用空気が一次燃焼室29の壁寄りを旋回するため(図11のD、E、Fまたは図12のG、H、I参照)、燃焼ガスを中心寄り閉じ込めてしまい、大きく拡がらず、燃焼用空気との混合が進まず、燃焼が促進されない(図11のdまたは図12のe参照)。
【0030】
第2空気吐出部75、93、113についても、第2空気吐出部73、93、113の順に吐出高さが高くなることから、燃焼ガスは、第2空気吐出部73から後方へ吐出した燃焼用空気により、右内側壁面29Dと前内側壁面29A寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合し、次に、第2空気吐出部93から右方へ吐出した燃焼用空気により後内側壁面29E、左内側壁面29C寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合し、最後に第2空気吐出部113から左方へ吐出した燃焼用空気により前内側壁面29A、右内側壁面29D寄りに拡がりながら燃焼用空気と混合するという具合にして、一次燃焼室29の中を内側壁面寄りに大きく拡がって燃焼用空気と混合しながら旋回して上昇するので、第2空気吐出部73、93、113から吐出した燃焼用空気との混合が良好となり、燃焼が促進される。
【0031】
一次燃焼室29の中で生成された燃焼用空気と燃焼用ガスの混合した旋回気流は、第1空気吐出部108から吐出した燃焼用空気により旋回力を加えられて加速しながら一次煙道44に入り、良好な旋回状態のまま一次煙道44を通過し、上側の二次燃焼室43に入る。そして、円筒体51の周囲を旋回しながら上昇し、上端部の入り口52から二次煙道57の中に入り、一端、煙突基部50と円筒体51の間を旋回しながら下降し、入り口55から煙突基部50の中に入る。そして、煙突基部50の中を筐体20の外側まで上昇し、開口53から吐出する空気に誘引されながら、煙突延設部50aの中に入り、外部に排気される。
【0032】
二次燃焼室43と二次煙道56による旋回経路が構造的に長く形成されていること、一次煙道44の入り口45の手前で第1空気吐出部108から吐出した燃焼用空気により旋回力を加えられて旋回気流が加速されていることから、二次燃焼室43では800度以上の高温状態が2秒以上継続し、燃焼ガスは完全燃焼することになる。
一次煙道44を通過して二次燃焼室43に入った燃焼ガスに対し、補助燃焼バーナ59により加熱し、完全燃焼をより促進することもできるが、一次燃焼室29での燃焼ガスと燃焼用空気の混合が良好で燃焼が促進されているので、二次燃焼室43に入った燃焼ガスが高温化しており、補助燃焼バーナ57による加熱は不要か、最小限で済み、プロパンガスや灯油などの燃料の消費を抑制できる。
【0033】
この実施例によれば、一次燃焼室29の内側壁面29A、29C、29Dに設けた第1空気吐出部70、88、108と第2空気吐出部75、93、113の高さに内側壁面間で差を付けたことにより、一次燃焼室29で発生した燃焼ガスが第1空気吐出部70、88、108と第2空気吐出部75、93、113から吐出した燃焼用空気から旋回力を受けて旋回するときの遠心力で一次燃焼室29内に拡がるようにできるので、吐出した燃焼用空気と燃焼ガスとの混合が良好になる。この結果、燃焼が促進して燃焼ガスの高温化が計られるので、二次燃焼室43での補助燃焼バーナ59の使用を抑制し、燃料消費を節約可能となる。
また、一次煙道44の入り口を一次燃焼室29の天井の縁寄りに細長く設けるとともに、一番高い第1空気吐出部108から吐出する燃焼用空気が一次煙道44の入り口45近くを流れるようにしたことにより、燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流の旋回が加速されながら一次煙道44に入るので、二次燃焼室43での燃焼時間が長く持続し、完全燃焼が促進される。
また、一次煙道44の横断面を部分円環状に形成したことにより、燃焼ガスと燃焼用空気の混合した旋回気流が乱れることなく一次煙道44を通過でき、二次燃焼室43での旋回気流の旋回状態が良好となり、これによって二次燃焼室43での燃焼時間が長く持続し、完全燃焼がより促進される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、紙、木材、布、プラスチック、ゴム等の廃棄物を燃焼させる箱型の一次燃焼室の天井に形成した一次煙道を介して上側に二次燃焼室が連通されており、一次燃焼室の複数の内側壁面に燃焼用空気を吐出する空気吐出部を設けた各種の焼却炉に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 焼却炉
23 仕切り壁
29 一次燃焼室
29A 前内側壁面
29C 左内側壁面
29D 右内側壁面
43 二次燃焼室
44 一次煙道
60、80、100 第1空気吐出部
75、93、113 第2空気吐出部
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