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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-105956(P2021-105956A)
(43)【公開日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】レーザーによる印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G16Z 99/00 20190101AFI20210625BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210625BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20210625BHJP
【FI】
   G16Z99/00
   B23K26/00 B
   B41M5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-238167(P2019-238167)
(22)【出願日】2019年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】519128646
【氏名又は名称】株式会社日照堂
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】追分 健爾
【テーマコード(参考)】
2H111
4E168
5L049
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA24
2H111HA35
4E168AA02
4E168JA18
5L049DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザー装置が備えるデータ管理部によるシミュレーションにより印刷仕上がりを事前に確認し、印刷に伴うコストを低減して、印刷物を製造する技術を提供する。
【解決手段】レーザーを照射することにより印刷物を製造する方法において、レーザー装置は、レーザー照射部と、データ管理部を有する。データ管理部は、印刷データを作成しS101、印刷仕上がりをシミュレーションしS102、紙基材を選定するS103。続いてレーザー照射部が、レーザーを紙基材に照射するS104。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを照射することにより、印刷物を製造する方法であって、
レーザー装置は、レーザー照射部と、データ管理部を有し、
(a)前記データ管理部が印刷データを作成する工程と、
(b)前記データ管理部が印刷仕上がりをシミュレーションする工程と、
(c)前記データ管理部が紙基材を選定する工程と、
(d)前記レーザー照射部がレーザーを紙基材に照射する工程と、
を含む製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記データ管理部は、コンピュータ内で2次元または3次元のデータを扱うことにより、所望の照射領域を作成し、所望の照射領域の印刷仕上がりをシミュレーションする、製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法において、
前記データ管理部は、前記シミュレーションを行うことにより、前記レーザー照射部にレーザーを照射させる紙基材を選定し、
前記紙基材は、複数の紙材の層を構成する、製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法において、
前記レーザー照射部は、前記紙基材における所望の照射領域にレーザーを照射し、紙基材に対するレーザーの照射深さを変化させ、前記紙基材を構成する複数の紙材の層から所望の照射領域に対応する紙材の層の表面を顕出させる、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによる印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザー印刷には炭酸ガスレーザーが用いられているが、炭酸ガスレーザー光はその性質から、表面のニス層、インキ層のみならず、コート層も削ってしまい、更には紙基材までも容易に削ってしまう。このことにより紙粉や煙が大量に発生し、環境を汚染する。
【0003】
また、レーザー印刷によって紙基材の色の違いによるコントラスト等を表現する場合、仕上がりのシミュレーションを充分に行わずにレーザー印刷することにより、仕上がりの確認、およびその結果として発生する印刷修正に伴う無用なコストがかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−138641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、包装材料の紙基材表面に白インキと黒インキをこの順に重ね刷りし、黒インキ層をレーザー光で除去することにより白インキを露出させるレーザー印刷方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されている発明を実現するためには、包装材料の紙基
材上に隠蔽性の高い白色インキを厚塗りしなくてはならない。この際、紙基材に対する一
般的な印刷方法であるオフセット印刷において、隠蔽性の高い白インキ層を形成すること
はむずかしい。
【0007】
また、従来レーザー印刷に用いられていたレーザー光は、ビームの中にランダムにピー
クが発生するマルチモードビームを含むため、紙基材を削らないように、炭酸ガスレーザ
ー光の出力を落とすと、黒インキ層の削り残しが発生してしまう。他方、黒インキ層を完
全に除去しようとすると、紙基材も削ってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、レーザー装置が備えるデータ管理部によるシミュレーションにより印刷仕上がりを事前に確認し、印刷に伴うコストを低減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0010】
本発明の一実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法は、レーザーを照射することにより、印刷物を製造する方法であって、レーザー装置は、レーザー照射部510と、データ管理部530を有し、前記データ管理部530が印刷データを作成する工程と、前記データ管理部530が印刷仕上がりをシミュレーションする工程と、前記データ管理部530が紙基材500を選定する工程と、前記レーザー照射部510がレーザーを紙基材500に照射する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
本発明の代表的な実施の形態によれば、レーザー装置が備えるデータ管理部530によるシミュレーションにより印刷仕上がりを事前に確認し、印刷に伴うコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の全体の工程の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法を実現するレーザー装置の様子の一例を示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用されるレーザーを照射している様子の一例を示す模式図である。
図4】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材の一例を示す断面図および概念図である。
図5】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用されるレーザー光を照射している紙基材の断面の一例を示す模式図である。
図6】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材を構成する第一の紙材およびレーザーの照射領域および第二の紙材の層の表面の一例を示す模式図である。
図7】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材を構成する第二の紙材およびレーザーの照射領域および第三の紙材の層の表面の一例を示す模式図である。
図8】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材を構成する第三の紙材およびレーザーの照射領域および第四の紙材の層の表面の一例を示す模式図である。
図9】本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材を構成する紙材の選定についてのシミュレーションの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<全体の工程>
図1は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の全体の工程の一例を示すフロー図である。データ管理部530は、S101で、まず印刷データを作成する。なお、印刷データとは、後述する方法によって得る照射領域のCADデータ等と、それに付随する各紙材の色彩データ等を意味する。次に、S102で、データ管理部530は印刷仕上がりをシミュレーションする。次に、S103で、データ管理部530は紙基材500を選定する。次に、S104で、レーザー照射部510は紙基材500にレーザーを照射する。
<レーザー装置>
【0014】
図2は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法を実現するレーザー装置の様子の一例を示す模式図である。レーザー装置は、レーザー照射部510とデータ管理部530により構成される。レーザー照射部510は、ケーブル520によりデータ管理部530と連結される。
【0015】
レーザー照射部510は、レーザー照射口600(詳細は後述する)からレーザーを照射する。ケーブル520は、データ管理部530から送信されるデータを転送するための、例えばLANケーブル等とする。データ管理部530は、例えば、デスクトップパソコン等のコンピュータとする。これにより、データ管理部530は、データ管理部530で作業者に作成させたレーザーの照射領域に係るデータを、ケーブル520を介してレーザー照射部510に転送する。
【0016】
また、データ管理部530は、入力部540およびディスプレイ550を構成する。データ管理部530が有する入力部540は、作業者から印刷データを作成するために必要な情報、例えば印刷物の描画やそれに付随する色彩データ等の入力を受け付ける。また、データ管理部530が有するディスプレイ550は、上述したS102で生成した印刷仕上がりに係るシミュレーション結果を表示させる。
【0017】
レーザー照射部510は、レーザーの照射領域に係るデータに基づき、レーザーを照射する深さと、位置とを決定し、レーザーを照射する。なお、照射領域とは、印刷物のうち異なる色彩を表出させる所望の範囲を意味する。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用されるレーザーを照射している様子の一例を示す模式図である。レーザー照射部510は、レーザー照射口600と、照射台620と、構造体630から構成される。
【0019】
レーザー照射口600は、レーザー光610を、照射台620の上に載置した紙基材500に対して照射する。レーザー光610は、例えばガルバノレーザー等である。
【0020】
照射台620は、レーザー光610の照射体である紙基材500を台上に載置する。なお、照射台620の大きさは、紙基材500が収容できるだけの大きさである。また、照射台620の床面からの高さは、例えば床面から600から800ミリメートルの間とする。
【0021】
構造体630は、耐火構造のパネル壁が該当する。構造体630は、その壁面内にガラス窓を構成する。これにより、レーザー照射部510は、レーザー光610が紙基材500に照射される様子を、作業者に外部から窓ガラスを通じて目視により確認させることを容易に行える。
<レーザー照射する方法>
図4は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材500の一例を示す断面図および概念図である。
【0022】
図4(a)は、紙基材500を横(側方)から見た断面の様子を示す。紙基材500は、紙材100と、紙材200と、紙材300と、紙材400とから構成される。なお、図4では4種類としているが、紙基材500を構成する紙材の種類の数は特に限定されない。図4(b)は、紙基材500を斜め上方から見た断面の様子を示す。また、図4(c)は、レーザー照射後の紙基材500を横(側方)から見た断面の様子を示す。
【0023】
なお、紙基材500は、第四の紙材400と、第四の紙材400を覆う第三の紙材300と、第三の紙材300を覆う第二の紙材200と、第二の紙材200を覆う第一の紙材100とが層状に重ねられて構成される。また、第一の紙材100は、紙基材500の表面側である。第四の紙材400は、紙基材500の裏面側である。
【0024】
また、紙基材500は、例えば、糊付け等により複数の各紙材同士を圧着させる。紙材の厚さは、例えば0.1乃至0.3ミリメートルとできる。紙材の素材は、特に限定されないが、例えば、色彩を付した和紙または洋紙、画用紙等とできる。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用されるレーザー光610を照射している紙基材500の断面の一例を示す模式図である。図5(a)で示すように、まず、レーザー照射部510は、データ管理部530が作成した、図6(a)に示される照射領域110、210、220の部分について、第一の紙材100の厚みと同じ深さだけ、レーザー光610を照射する。このとき、レーザー照射部510は、第二の紙材200まで切除しないようにレーザー光610を照射する。これによって、第一の紙材100のみが切除され、第二の紙材200の表面が露出する。そして、第二の紙材200と対応する色が露出する。
【0026】
また、レーザー照射部510は、水平に載置された紙基材500に対して、鉛直上方から下向きにレーザー光610を照射する。前述した図3で示すように、レーザー照射部510は、照射領域に応じた一定の幅の分を一括して直線的に照射し、当該直線方向を便宜的にx方向として、x方向と直交する方向を便宜的にy方向とすると、x方向に一括して照射するレーザー光610をy方向に一端から終端まで漸次移動させる。
【0027】
なお、レーザー照射部510がレーザー光610を紙基材500に照射する時の速度および、上記y方向への移動の向きについては特に限定されない。また、レーザー照射部510は、レーザー光610をy方向に移動する際に往復させないで、すなわち一端から終端まで照射させることとしてもよい。
【0028】
次に、図5(b)で示すように、レーザー照射部510は、データ管理部530が作成した照射領域110と、210、220、310、320の部分について、第一の紙材100と第二の紙材200の厚みの合計と同じ深さだけ、レーザー光610を照射する。このとき、レーザー照射部510は、紙材300まで切除しないようにレーザー光610を照射する。これによって、第一の紙材100から第二の紙材200までが切除され、第三の紙材300の表面が露出する。そして、第三の紙材300と対応する色が露出する。
【0029】
その後、図5(c)で示すように、レーザー照射部510は、データ管理部530が作成した照射領域110と、210、220、310、320、410、420の部分について、紙材100と紙材200と紙材300の厚みの合計と同じ深さだけ、レーザー光610を照射する。このとき、レーザー照射部510は、紙材400まで切除しないようにレーザー光610を照射する。これによって、第一の紙材100から第三の紙材300までが切除され、第四の紙材400の表面が露出する。そして、第四の紙材400と対応する色が露出する。
【0030】
このように、レーザー照射部510は、紙基材500における所望の照射領域にレーザー光610を照射し、紙基材500に対するレーザー光610の照射深さを変化させることにより、紙基材500を構成する複数の紙材の層から所望の照射領域に対応する紙材の層の表面を顕出させることができる。なお、レーザー照射による切除とは、例えば、レーザーで紙材の表面から内部に向かって焼き切ることを意味する。
【0031】
また、レーザー照射部510は、段落[0042]で後述するように、各紙材の層に対応する照射領域を描画した後、各層の照射領域のうちその範囲内部(220、320、420)の面積が大きい順に、紙材の順序を割り振る。すなわち、レーザー照射部510は、紙基材500を構成する各紙材の照射領域のうち、最も面積が広い照射領域を有する紙材を最上層の紙材(例えば第一の紙材100)としてレーザー光610を照射する。また、レーザー照射部510は、紙基材500を構成する各紙材の照射領域のうち、最も面積が狭い照射領域を有する紙材を最下層の紙材(例えば第四の紙材400)としてレーザー光610を照射する。なお、範囲内部(220、320、420)とは、照射領域210が閉曲線であった場合における当該曲線の内側の領域を意味する。
【0032】
これにより、レーザー照射部510は、レーザー照射対象の紙材が下層になるに従い、照射範囲を狭くすることができる。つまり、紙基材500を構成する紙材のうち最下層(例えば第四)の紙材にレーザー照射するということは、紙基材500を構成する各紙材が有する照射領域のうち共通する照射領域を第一の紙材から一貫してレーザー照射するということであるから、当該領域の範囲面積を狭くすることでレーザー光610の照射の反復に伴う紙基材500への過度のレーザー照射による切除を防止できる。すなわち、レーザー照射部510は、紙基材500の強度の維持および、印刷物の制作時間を短縮できる。
<印刷データを作成する方法>
上述した図1に示すレーザーによる印刷物の製造方法においては、まず、データ管理部530は印刷データを作成する(図1の工程S101)。
【0033】
この工程S101における印刷データを作成する具体的手法としては、特に限定されないが、本発明に係るレーザー装置に含まれるデータ管理部530(詳細は後述する)が、コンピュータ内で2次元または3次元のデータを扱うことにより、所望の照射領域を作成する。なお、2次元または3次元のデータは、例えばCADなどのベクターデータや、その他のラスターデータとできる。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材500(詳細は後述する)を構成する第一の紙材100およびレーザーの照射領域110と、210および第二の紙材200の層の表面の一例を示す模式図である。図6(a)は、紙基材500を構成する第一の紙材100に照射するレーザーの照射領域110と、210を示す。
【0035】
照射領域110は製造印刷物の全体範囲を画定するための周縁を示す。例えば、照射領域110を四角形とした場合、この四角形をレーザー照射により切除することで、レーザー装置に含まれるレーザー照射部510は、印刷物をこの範囲で製造できる。なお、レーザー照射部510が照射領域110をレーザー照射する順序は、最初か最後かを特に限定しない。
【0036】
照射領域210は紙材100から除外したい領域の範囲を示す。例えば、照射領域210を図6(a)で示される範囲とした場合、まずレーザー照射部510は、照射領域210の周縁をレーザー照射により切除する。次にレーザー照射部510は、照射領域210の範囲内部220をレーザー照射により切除することで、紙材100から照射領域210の範囲内部220に相当する部分を除外できる。
【0037】
図6(b)は、紙基材500を構成する第一の紙材100にレーザー照射をした後の照射領域210と、その範囲内部220に紙基材500を構成する第二の紙材200の層の表面が顕出される状態を示す。
【0038】
図7は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材500を構成する第二の紙材200およびレーザーの照射領域110と、310および第三の紙材300の層の表面の一例を示す模式図である。図7(a)は、紙基材500を構成する第二の紙材200に照射するレーザーの照射領域110と、310を示す。
【0039】
照射領域310は紙材200から除外したい領域の範囲を示す。例えば、照射領域310を図7(a)で示される範囲とした場合、まずレーザー照射部510は、照射領域310の周縁をレーザー照射により切除する。次にレーザー照射部510は、照射領域310の範囲内部320をレーザー照射により切除することで、紙材200から照射領域310の範囲内部320に相当する部分を除外できる。
【0040】
図7(b)は、紙基材500を構成する第二の紙材200にレーザー照射をした後の照射領域310と、その範囲内部320に、紙基材500を構成する第三の紙材300の層の表面、および紙基材500を構成する第二の紙材200の層の表面が顕出される状態を示す。
【0041】
図8は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材500を構成する第三の紙材300およびレーザーが照射される照射領域110と、410および第四の紙材400の層の表面の一例を示す模式図である。図8(a)は、紙基材500を構成する第三の紙材300に照射するレーザーの照射領域110と、410を示す。
【0042】
照射領域410は紙材300から除外したい領域の範囲を示す。例えば、照射領域410を図8(a)で示される範囲とした場合、まずレーザー照射部510は、照射領域410の周縁をレーザー照射により切除する。次にレーザー照射部510は、照射領域410の範囲内部420をレーザー照射により切除することで、紙材300から照射領域410の範囲内部420に相当する部分を除外できる。
【0043】
図8(b)は、紙基材500を構成する第三の紙材300にレーザー照射をした後の照射領域410と、その範囲内部420に、紙基材500を構成する第四の紙材400の層の表面、および紙基材500を構成する第三の紙材300の層の表面、および紙基材500を構成する第二の紙材200の層の表面が顕出される状態を示す。
【0044】
データ管理部530は、コンピュータ内で、作業者に2次元または3次元のデータを使用させることにより、図6乃至図8で示されるような所望の照射領域を作成できる。なお、データ管理部530は、各紙材の層に対応する照射領域を描画した後、各層の照射領域の面積を算出する。また、データ管理部530は、算出した各層の照射領域の面積のうちその範囲内部(220、320、420)の面積を算出する。そして、データ管理部530は、算出した各層の照射領域の面積のうちその範囲内部(220、320、420)の面積が大きい順に、紙材の順序を割り振る。すなわち、第一の紙材100の照射領域210の範囲内部220の面積が、各紙材の照射領域の範囲内部の面積のうちで最も大きいため第一の紙材100として割り振られる。第二の紙材200の照射領域310の範囲内部320の面積が、各紙材の照射領域の範囲内部の面積のうちで二番目に大きいため「第二の」紙材200として割り振られる。以後同様にして、データ管理部530は、各紙材の順序を割り振る。
<印刷仕上がりをシミュレーションする方法>
図1に示すレーザーによる印刷物の製造方法においては、次に、データ管理部530は印刷仕上がりをシミュレーションする(図1の工程S102)。
【0045】
データ管理部530は、S101で作成した照射領域データについて、図8(b)で示されるように、各紙材についての照射領域の範囲内部の色彩が、実際にレーザー照射で切除した状態と同様に重ね合わせた状態で表示させる。データ管理部530は、照射領域をコンピュータ内でデータにより作成させることで、照射領域の修正や、所望の紙材(200、300、400)の色彩を変更させ、実際にレーザー照射することなく仕上がりをシミュレーションできる。これにより、実際にレーザー照射して仕上がりを確認する必要がなくなり、無駄なレーザー照射による紙材のロスを低減でき、これに伴う作業コストを低減できる。
<紙基材を選定する方法>
図1に示すレーザーによる印刷物の製造方法においては、次に、データ管理部530は紙基材を選定する(図1の工程S103)。
【0046】
データ管理部530は、S102で作成した照射領域データについて仕上がりをシミュレーションした後、最終的に希望する各紙材を決定する。これにより、データ管理部530は、各紙材を積層してなる紙基材500を選定できる。
【0047】
例えば、データ管理部530は、第二の紙材200の色彩を赤として、第三の紙材300の色彩を緑とした場合に、シミュレーションの結果に応じて、希望によってその色彩を他の色彩に変更、または色相、彩度、明度を修正できる。これにより、データ管理部530は、実際にレーザー照射することなく所望の色彩を表現する印刷物を製造できる。
【0048】
データ管理部530が紙基材500を構成する紙材を選定する際、紙基材500を構成する紙材を、第一の紙材100から第四の紙材400に向かって(紙基材の表面側から裏面側に向かって)、順番に色が薄いものから濃くするものとして選定する。これによって、印刷物の立体感を増加して表現できる。具体的には、データ管理部530は、第一の紙材100を白色、第二の紙材200を赤色、第三の紙材300を緑色、第四の紙材400を黒色等として選定する。
【0049】
また、データ管理部530は、上述した紙基材500を構成する紙材の組み合わせによる効果をプログラムに保存できる。データ管理部530は、上述した紙基材500を構成する紙材の組み合わせによる効果を保存したプログラムのうち、所望の効果を有するプログラムをはじめに選定することで、自動的に各紙材の色彩を選定するという方法も採用できる。これにより、データ管理部530は、各紙材の色彩を細かく選定することに伴う時間や作業のロスを低減できる。
【0050】
また、図9は、本発明の実施の形態のレーザーによる印刷物の製造方法の適用される紙基材を構成する紙材の選定についてのシミュレーションの一例を示す模式図である。データ管理部530は、紙基材500を構成する特定の紙材の色を入れ替えて、入れ替えた結果に応じて、シミュレーション結果を表示し直すという方法を採用できる。例えば、第一の紙材100を白色、第二の紙材200を赤色、第三の紙材300を緑色、第四の紙材400を黒色とした場合に、第二の紙材200と第三の紙材300の色だけを入れ替えた状態で全体を表示し直すことができる。
【0051】
より詳細には、データ管理部530は、第一の紙材100〜第四の紙材400の色彩データを保持している。また、データ管理部530は、照射領域110〜照射領域410を保持している。データ管理部は、第一の紙材100〜第四の紙材400の色彩データと、照射領域110〜照射領域410とに基づいてシミュレーション結果をディスプレイ550に表示させる。
【0052】
上記の例の場合について、具体的に説明する。図9(a)で示すように、データ管理部530は、まず、第一の紙材100の色彩が白色であるから、対応する照射領域110である「全体範囲からレーザー照射により除外された残りの範囲」を白色としてシミュレーション結果を生成し、生成したシミュレーション結果をディスプレイ550に表示させる。
【0053】
次に、データ管理部530は、第二の紙材200の色彩が赤色であるから、対応する照射領域である「照射領域210の範囲内部220からレーザー照射により除外された残りの範囲」を赤色としてディスプレイ550にシミュレーション結果を表示させる。
【0054】
次に、データ管理部530は、第三の紙材300の色彩が緑色であるから、対応する照射領域である「照射領域310の範囲内部320からレーザー照射により除外された残りの範囲」を緑色としてディスプレイ550にシミュレーション結果を表示させる。
【0055】
次に、データ管理部530は、第四の紙材400の色彩が黒色であるから、対応する照射領域である「照射領域410の範囲内部420に相当する範囲」をディスプレイ550に黒色としてシミュレーション結果を表示させる。
【0056】
その後、図9(b)で示すように、データ管理部530は、第二の紙材200を赤色、第三の紙材300を緑色と、色彩を入れ替えた状態で全体を表示し直すことができる。具体的には、入力部540から第一の紙材100〜第四の紙材400を相互に入れ替えるための入力を受け付けた場合、データ管理部530は、保持している第一の紙材100〜第四の紙材400の色彩データを入れ替え後の色彩データへ変更する。そして、データ管理部530は、色彩データと、照射領域110〜照射領域410とに基づいてシミュレーション結果を生成し、生成したシミュレーション結果をディスプレイ550に表示させる。
【0057】
なお、各層をまとめて全体として表示させる他に、各層のうち所望の層のみを抽出して表示させることもできる。これにより、データ管理部530は、各紙材の色彩を個別に初めから選定し直すことに伴う時間や作業のロスを低減できる。
<本実施の形態の効果>
【0058】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、作業者は、レーザー装置が備えるデータ管理部530によるシミュレーションにより印刷仕上がりを事前に確認し、印刷に伴うコストを低減できる。また、レーザー光610の照射深さを変化させることで、所望の照射領域に対応する紙材の層の表面を顕出させることにより、紙基材の色の違いによるコントラスト等を表現できる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0060】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換を行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
100…第一の紙材、200…第二の紙材、210…照射領域、220…照射領域の範囲内部、300…第三の紙材、400…第四の紙材、500…紙基材、510…レーザー照射部、520…ケーブル、530…データ管理部、540…入力部、550…ディスプレイ、610…レーザー光。
図1
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図9