【解決手段】この位相シフト型高周波インバータは、第1及び第2の半導体スイッチング素子を直列接続してなる第1のアーム回路と、第3及び第4の半導体スイッチング素子を直列接続してなる第2のアーム回路とを並列接続して構成される。ブリッジ回路は、前記第1乃至第4の半導体スイッチング素子のスイッチング動作により直流電圧を矩形波の第1電圧に変換する。フィルタ回路は、前記第1電圧を略正弦波状の第2電圧に変換する。関数演算部は、制御部が出力する第1制御量を関数に入力して第2制御量を出力する。ブリッジ回路は、前記第2制御量に従って前記ブリッジ回路の位相シフト量を制御するように構成される。関数は、前記第1制御量と前記第2電圧とが線形の関係となる関数である。
第1及び第2の半導体スイッチング素子を直列接続してなる第1のアーム回路と、第3及び第4の半導体スイッチング素子を直列接続してなる第2のアーム回路とを並列接続して構成され、前記第1乃至第4の半導体スイッチング素子のスイッチング動作により直流電圧を矩形波の第1電圧に変換するブリッジ回路と、
前記第1電圧を略正弦波状の第2電圧に変換するフィルタ回路と、
前記ブリッジ回路を制御する制御部と、
前記制御部が出力する第1制御量を関数に入力して第2制御量を出力する関数演算部と
を備え、
前記ブリッジ回路は、前記第2制御量に従って前記ブリッジ回路の位相シフト量を制御するように構成され、
前記関数は、前記第1制御量と前記第2電圧とが線形の関係となる関係を与える関数である
ことを特徴とする位相シフト型高周波インバータ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0011】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位相シフト型高周波インバータを説明する。この位相シフト型高周波インバータは、フルブリッジ回路10、フィルタ回路20、電力計測部30、制御部40、関数演算部50、及びゲート信号発生回路60を備えている。
【0013】
フルブリッジ回路10は、2つのアーム回路11、12を並列接続した構成を有し、直流の入力電圧Vinを高周波の出力電圧v
abに変換する機能を有する。アーム回路11は、半導体スイッチング素子Q1、Q2を直列接続した構造を有し、アーム回路12は、半導体スイッチング素子Q3、Q4を直列接続した構造を有している。半導体スイッチング素子Q1〜Q4は、一例として、それぞれトランジスタとダイオードを逆並列接続してなる素子である。半導体スイッチング素子Q1〜Q4のゲートにはゲート信号VQ1〜VQ4が印加され、これにより半導体スイッチング素子Q1〜Q4は導通状態と非導通状態との間で切り替えられる。出力電圧v
abは、ノードN1とN2の間に生じる矩形波の交流電圧である。
【0014】
図2に示すように、ゲート信号VQ2はゲート信号VQ1の反転信号であり、これにより、半導体スイッチング素子Q1及びQ2はどちらか一方のみが交互に導通し、同時に導通状態とはならないように制御される。同様に、ゲート信号VQ4はゲート信号VQ3の反転信号であり、これにより、半導体スイッチング素子Q3及びQ4はどちらか一方のみが交互に導通し、同時に導通状態にはならないように制御される。
【0015】
ゲート信号VQ1、VQ2を基準相とし、ゲート信号VQ3、VQ4はこの基準相に対し位相シフト量Φだけ位相が異なるよう調整される。位相シフト量Φ
2を制御することにより、フルブリッジ回路10の出力電圧v
ab、更には位相シフト型高周波インバータの出力電圧Voutの電圧値が制御される。なお、位相シフト量Φ
2は、ここでは、0°〜180°(0[rad]〜π/2[rad])の範囲で定義する。0°〜360°の範囲で定義することも可能である。
【0016】
図2を参照してフルブリッジ回路10の動作を更に説明する。ゲート信号VQ1〜VQ4が位相シフト量Φにより規定されるフルブリッジ回路10の動作は、モード1〜4に分けて説明することができる。モード1〜4は、それぞれ継続時間がT1〜T4であり、この4つのモードが周期Tで繰り返される(T=T1+T2+T3+T4)。
【0017】
モード1では、ゲート信号VQ4がゲート信号VQ1に位相シフト量Φだけ遅れて立ち上がり、半導体スイッチング素子Q1とQ4が同時にON(導通状態)となる。これにより、直流電源(Vin)からの電流は、半導体スイッチング素子Q1→ノードN1→フィルタ回路20→ノードN2→半導体スイッチング素子Q4の順に流れる。モード1におけるフルブリッジ回路10の出力電圧v
abの振幅はVinに略等しくなる。
【0018】
続くモード2では、半導体スイッチング素子Q4はONの状態を継続するが、半導体スイッチング素子Q1がOFF(非導通状態)となる。一方、半導体スイッチング素子Q2はON状態に切り替わるが、半導体スイッチング素子Q3は依然としてOFF(非導通状態)のままである。このため、リアクタ21に蓄積されたエネルギーにより、変圧器24の一次側において、リアクタ21→変圧器24→半導体スイッチング素子Q4→半導体スイッチング素子Q2の順に電流が還流する。モード2におけるフルブリッジ回路10の出力電圧v
abの振幅は、Vinから徐々に減少する。
【0019】
次のモード3では、半導体スイッチング素子Q2はONの状態を継続するが、半導体スイッチング素子Q3がONに切り替わる。一方、半導体スイッチング素子Q1はOFFを維持するが、半導体スイッチング素子Q4はOFFに切り替わる。これにより、電流は、直流電源(Vin)から、半導体スイッチング素子Q3→ノードN2→フィルタ回路20→ノードN1→半導体スイッチング素子Q2の順に流れる。すなわち、モード1とはフィルタ回路20に流れる電流の方向が逆である。モード3におけるフルブリッジ回路10の出力電圧v
abの振幅は−Vinに略等しくなる。
【0020】
その後のモード4では、半導体スイッチング素子Q3はONの状態を継続するが、半導体スイッチング素子Q2がOFF(非導通状態)となる。一方、半導体スイッチング素子Q1はON状態に切り替わるが、半導体スイッチング素子Q4は依然としてOFF(非導通状態)のままである。このため、リアクタ21に蓄積されたエネルギーにより、変圧器24の一次側において、リアクタ21→ノードN1→半導体スイッチング素子Q1→半導体スイッチング素子Q3→ノードN2→変圧器24の順に電流が還流する。モード4におけるフルブリッジ回路10の出力電圧v
abの振幅は、−Vinから徐々に増加する(絶対値が小さくなる)。
【0021】
以上のモード1〜4において、位相シフト量Φが大きくなると、モード2及び4における電圧v
abの振幅の減少が大きくなり、電圧v
abの実効値も低下する。従って、フルブリッジ回路10に対し位相シフト制御を行うことにより、出力電圧Voutの電圧値を制御することができる。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。フィルタ回路20は、リアクタ21及びコンデンサ22を直列接続してなる直列共振素子23、変圧器24、並びにリアクタ25及びコンデンサ26を直列接続してなるローパスフィルタ27を備える。フィルタ回路20は、矩形波の出力電圧v
abを略正弦波状の出力電圧Voutに変換する機能を有する。
【0023】
直列共振素子23は、フルブリッジ回路10が出力する矩形波状の出力電圧v
abを、基本周波数を主成分とする略正弦波状の電圧波形に変換するものである。すなわち、フルブリッジ回路10のスイッチング周波数が位相シフト型高周波インバータから出力する電圧の基本周波数となるので、この基本周波数に共振するように直列共振素子23の回路定数を定めることによって、矩形波状の出力電圧v
abを略正弦波状の電圧波形に変換することができる。直列共振素子23から出力された電圧は、変圧器24により異なる電圧値の電圧に変換される。ローパスフィルタ27は、変圧器24から出力された電圧に含まれる高周波成分を減衰させて負荷Lに出力する。なお、直列共振素子23は、ローパスフィルタ27により十分に高周波成分が減衰される場合には、省略することも可能である。フルブリッジ回路10から出力される矩形波状の電圧v
abの高周波成分が大きく、このため変圧器24における損失が大きいと判断される場合には、直列共振素子23を接続することが好適である。変圧器24は、フルブリッジ回路10の出力電圧v
abが差動出力であるため、フルブリッジ回路10とフィルタ回路20とを絶縁し、出力電圧Voutをシングルエンド出力とするために設けられている。なお、変圧器24の巻数比を変更することにより、変圧器24をインピーダンス変換素子として機能させることも可能である。
【0024】
電力計測部30は、負荷Lに向けて出力される出力電力Poutの電力値を計測し、その計測結果を出力信号として制御部40に出力する。制御部40は、この計測結果に従い、制御量Φ
1を調整して出力する。
なお、電力計測部30は、例えば、図示しない電圧計測部と電流計測部とを備えており、電圧計測部で計測した出力電圧Voutに対応する電圧信号と、電流計測部で計測した出力電流Ioutに対応する電流信号とに基づいて電力値を算出する。そして、算出した電力値に対応する信号を出力信号として制御部40に出力するように構成されている。
【0025】
関数演算部50は、内部に後述する関数を有し、この関数に制御量Φ
1を入力して制御量Φ
2を出力する機能を有する。この制御量Φ
2は、
図2で説明した位相シフト量Φに等しい値を有する。ゲート信号発生回路60は、この制御量Φ
2に従って位相シフト量Φを変化させてゲート信号VQ1〜VQ4を発生させる。
【0026】
図3は、関数演算部50が出力する制御量Φ
2と、出力電力Poutとの関係の一例を示すグラフである。前述のように、フルブリッジ回路10の出力電圧v
abは矩形波状の高周波電圧である一方、出力電圧Voutはフィルタ回路20を通過して略正弦波状の高周波電圧となる。しかし、フルブリッジ回路10の出力電圧v
abは位相シフトされたものなので、通常、出力電圧Voutは、純粋な正弦波状の電圧波形ではなく歪んだ波形となってしまう。その結果、出力電力Poutの電力値を示す出力信号の波形も純粋な正弦波状の電圧波形ではなく歪んだ波形となってしまう。このため、制御量Φ
2と、出力電力Poutとの関係は、
図3に示すように線形の関係を有さない。
【0027】
そこで、本実施の形態では、制御量Φ
1を制御部40で決定した後、関数演算部50において、制御量Φ
1を関数f(Φ
1)への入力として制御量Φ
2を演算し、この制御量Φ
2に基づいて位相シフト量Φを決定する。このとき、関数fは、制御量Φ
1と出力電圧Voutとが線形(一次式で表すことができる関係)となるように設定される。
【0028】
具体的には、フルブリッジ回路10の出力電圧v
abの基本波成分は、出力電圧Voutの波形をフーリエ級数奇関数展開すると、次の式により表すことができる。
【0029】
【数1】
ただし、0≦Φ≦π、n=0、1、2、…、ω
0=2πf
0
【0030】
上記[数1]より、出力電圧Voutの基本波成分(n=0)の実効値v
rmsは、次の式で表される。
【0032】
従って、出力電圧Voutは、位相シフト量をΦとした場合、cos
2(Φ/2)に比例する値となる。このため、出力電圧Voutは、位相シフト量Φと線形の関係にない。
【0033】
Φ
1=cos(Φ
2/2)とした場合、次式が成立する。
【0035】
本実施の形態では、制御部40で演算された制御量Φ
1を、更にΦ
2=f(Φ
1)=2arccos√Φ
1に入力し、新たな制御量Φ
2を得る。そして、この制御量Φ
2を位相シフト量Φとしてゲート信号VQ1〜VQ4を生成する。
【0036】
制御量Φ
1と制御量Φ
2とは、
図4のグラフ(曲線31)に示す如く、線形の関係にはない。しかし、制御量Φ
1と制御量Φ
2が上記[数3]に規定する関係とされることで、制御量Φ
1と出力電圧Voutとが線形の関係となる(曲線32)。従って、制御量Φ
1に基づく出力電圧Voutの安定的な制御が可能になる。
【0037】
[第2の実施の形態]
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る位相シフト型高周波インバータを説明する。
図5において、第1の実施の形態(
図1)と同一の構成要素については同一の参照符号を付し、以下では重複する説明は省略する。この第2の実施の形態の位相シフト型高周波インバータは、関数演算部50に代えて、制御量変換部70を備えている。
【0038】
この制御量変換部70は、制御量Φ
1の入力に従ってテーブルを参照し、テーブルにおいて対応付けられている制御量Φ
2を特定して出力する機能を有する(制御量Φ
1を対応する制御量Φ
2に変換する)。
図6はテーブルの一例を示している。このテーブルは、入力される制御量Φ
1と、規格化後の制御量Φ
1と、この規格化後の制御量Φ
1nと対応する規格化後の制御量Φ
2nとを対応付けて記憶している。制御量Φ
1nと制御量Φ
2nとの対応関係は、第1の実施の形態と同じ関数に従って決定される。従って、制御量変換部70は、関数演算部の一態様と考えることができる。なお、制御量Φ
2nを決定する場合に線形補間を用いることも可能である。
【0039】
以上説明したように、この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同一の効果を得ることができる。
【0040】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。