【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、以下を含むか又は以下からなる組成物を提供する。
a)含有量がa)〜d)の総重量の5〜75重量%、好ましくは8〜65重量%、より好ましくは10〜55重量%の、マルトース、グリセロール、アミノ酸、オリゴペプチド、又はそれらのうち1以上の混合物からなる群から選択される化合物、好ましくはマルトースである。
b)含有量がa)の含有量の1/2未満、好ましくは1/3未満、且つ、総含有量がa)〜d)の総重量の5重量%未満のグルコースである。
c)あわせたときの含有量がa)の含有量の1/2未満、好ましくは1/3未満のDP3及びDP4のグルカン分子である。
d)a)、b)及びc)とあわせて100重量%となる含有量の、DP>4のグルカン分子である。このとき、
−DP>10のグルカン分子が、a)〜d)の総重量の15〜85重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは35〜80重量%の量で存在する。
−DP>24のグルカン分子が、a)〜d)の総重量の2〜60重量%、好ましくは4〜58重量%、より好ましくは5〜56重量%の量で存在する。
−DP>55のグルカン分子が、a)〜d)の総重量の15重量%未満、好ましくは12重量%未満の量で存在する。
【0028】
a)〜d)をあわせたときの重量平均分子量は、Mw0.8〜15kD、好ましくはMw1.0〜10kD、より好ましくはMw1.2〜6.2kD、又は、1〜6.2kD、より好ましくは1.4〜6kD、より好ましくは1.6〜5.8kDであってよい。
【0029】
a)〜d)をあわせたときの数平均分子量は、Mn0.2〜3kD、好ましくはMn0.3〜3kD、より好ましくはMn0.5〜3kD、又は、0.7〜3kD、好ましくは0.8〜2.7kD、より好ましくは0.9〜2.6kDであってよい。
【0030】
これらMw値とMn値は、例えばMw1〜6.2kDとMn0.7〜3kDといった任意の組み合わせで、組み合わせることができる。
【0031】
a)において、マルトースを単独で使用してもよい。マルトースを、前述のアミノ酸、オリゴペプチド、及び/又はグリセロールなど、インスリン分泌に影響を与えない他の低分子量(Mw)分子によって部分的又は完全に置き換えてもよい。そのような化合物は、現在適用されている低分子量浸透圧剤の例である。
【0032】
属性(attribute)の「好ましくは」、「より好ましくは」、「さらにより好ましくは」などで示される特徴は、任意の組み合わせで、つまり、これらの属性のいずれでも示されない特徴と組み合わせることができる。例えば、属性「好ましくは」で示される特徴は、そのような属性のいずれも含まない特徴、又は属性「より好ましく」を含む特徴等と組み合わせることができる。
【0033】
数字および単位に関連する記号「〜」は、別段の指示がない限り、範囲を示す。
【0034】
本発明はまた、そのような組成物及び水を含む液体水性組成物(liquid aqueous composition)を提供する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、医薬としての使用又は治療における使用のための前記組成物又は前記液体水性組成物を提供し、具体的な使用については詳細な説明で述べる。
【0036】
本発明はまた、以下の工程からなる、上記液体水性組成物を製造する方法を提供する。
−固形分が10重量%から60重量%までのデンプンの水溶液を調製する工程。
−アミログルコシダーゼ及び/又はアミラーゼから選択される酵素の特定の組み合わせで連続的に前記水溶液を処理することによる糊化工程。
−前記水溶液を精製する工程。
−40000Dを超える、好ましくは18kDを超える分子量を有する分子量糖類画分(saccharide fraction)を排除又は減少させて、他の画分を回収する(recover)ような方法で、前記水溶液を分画する工程。
−マルトース、グリセロール、アミノ酸、オリゴペプチド、又はそれらのうち1つ以上の混合物からなる群から選択される化合物、及び任意でグルコースを添加する工程。
【0037】
これにより、特に、分画によって、及びマルトース、グリセロール、アミノ酸又はオリゴペプチド、任意でグルコースを添加することによって、本発明の組成物が得られ、又は溶液中に得られる。
【0038】
本発明はまた、上記の液体水性組成物又は本発明の組成物を含む少なくとも1つのコンパートメントを備える容器又はキットを提供する。
【0039】
全体的な又は特定の実施形態において、本発明により以下の利点のうちの1以上に到達することができる。
−上記組成物は浸透圧活性(osmotical activity)を示す。この意味で、上記組成物は浸透圧活性組成物とも呼ばれる。
−上記液体組成物は、生理的レベルよりも多くのグルコースを含まない(最大0.2%)。
−高分子量(40kD超え、さらに好ましくは18kD超え)の糖類の画分が大幅に減少している。
−平均分子量がイコデキストリンより低い組成物。この組成物は、イコデキストリンと比較して、18kD及び40kDを超える高分子量糖類をそれぞれ大幅に削減している。
−初代ヒト中皮細胞培養に対するイコデキストリンの細胞毒性効果が減少する。このような細胞毒性効果は、イコデキストリンの高分子量糖類画分に少なくとも部分的に関連があると考えられている。本発明は、細胞毒性の可能性のある高分子量画分を排除または低減する(好ましくは、40kD超えが組成物全体の0.6重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、さらにより好ましくは18kD超えが組成物全体の1.5%未満)。
−本発明の組成物は、生理的濃度の塩類の存在下でPTF又はPDFに唯一の浸透圧剤として適用される場合、2〜7.2%の総CHO(w/v)濃度で、好ましくは2.2〜7%、好ましくは2.4〜6.8%、好ましくは2.6〜6.6%の総CHO(w/v)濃度で、等浸透圧を生み出すか、又は、高浸透圧(ヒト血液の生理的浸透圧よりも高い)を生み出すことができる。
−本発明に従って、医療用途において、浸透圧剤として作用する組成物、好ましいPTF、好ましいPDFが提供される。該組成物は、単独で、又は低分子量浸透圧剤と一緒に、十分に高い浸透圧を生み出して、患者の腹膜腔への腹膜透析液の注入後、腹膜全体に水及び老廃物を拡散させることができる。1つの浸透圧剤、又は浸透圧剤の組み合わせに加えて、そのような医療用液体は、ヒトの体液に匹敵する量のさまざまな生理的に重要な電解質を含む。
【0040】
市販のPDF(エクストラニール(登録商標)、バクスター)に現在用いられているマルトデキストリン(イコデキストリン)と比較して、浸透圧剤の有効性の観点から、本発明の組成物及びその誘導体は、驚くべきことに以下の効果の1つ以上によりイコデキストリンと区別することができる。
−短期間貯留時の経毛細管限外ろ過(TCUF)の大幅な増加。TCUFについては詳細な説明で定義する。
−短期間貯留時の正味限外ろ過(NUF)の大幅な増加。NUFについては詳細な説明で定義する。
−単位時間あたりのTCUF(ml/h)の大幅な増加。
−単位時間あたりのNUF(ml/h)の大幅な増加。
−単位炭水化物(CHO)吸収あたりのTCUF(ml/g)の大幅な増加。
−単位CHO濃度あたりのNUF(ml/g)の大幅な増加。
−PDF中の全体的なCHO濃度がより低い。
−本発明の枠組みで得られた結果は、貯留時間の短縮、CHO濃度の低下、及び、結果として生じる貯留あたりのCHO吸収の減少により、1日に2度、3度又は4度、溶液を適用できることを示唆する。このような限外ろ過の増加により、一定の場合において、単独療法として糖類ポリマー系PDが可能になるであろう。糖尿病PD患者の場合、日中の糖類ポリマー系PDの部分が増加すると大きな利益が得られ、高血糖症の現在の問題をさらに軽減する。
−本発明によれば、本発明の組成物は、以下の特徴により、上記の限外濾過効率を高める。
a)短い透析貯留中の効率的な浸透剤であること。
b)切断可能な結合の蓄積が高く、長い貯留中浸透圧の維持を可能にすること。
定義:
【0041】
溶液の溶解固形成分(例えば、腹膜透析液中のグルコースポリマー混合物)の濃度の記載のために、本特許出願では、与えられた化合物の重量を溶液の体積で割った値に相当する体積パーセンテージ(%w/v)を用いた。例えば10%w/vは、最終溶液100ml中に関連の化合物が10gあることに相当する。これは、このような溶液の薬理学的記載において一般的に適用されている標準的な記載方法である。
【0042】
本出願において、用語「グルカン」とは、D−グルコースモノマーからなるオリゴマー及び/又はポリマー分子(=グルカン分子)の任意の組成物又は多分散混合物を意味し、D−グルコースモノマーがグリコシド結合により連結される。用語「グルカン」の代わりに、用語「グルコースポリマー」を使用してもよい。グルカン分子の重合度(DP)は、本発明での定義により、少なくとも3である。本発明では、ダイマー(DP 2)を「マルトース」と呼び、モノマーを「グルコース」と呼び、これらの用語は公知の意味を有する。
【0043】
本発明のグルカンは、好ましくは「α−グルカン」である。「α−グルカン」という用語は、D−グルコースモノマーがα−グリコシド結合により連結されているグルカンを意味する。
【0044】
用語「デキストリン」は、α−1,4及び/又はα−1,6グリコシド結合、好ましくは両方を含むグルカンを意味する。デキストリンには、マルトデキストリンとシクロデキストリンが含まれてよい。デキストリンは、デンプン加水分解又は他の方法により得ることができるが、これに限らない。特別なデキストリンは、イコデキストリン、又は、分子量180ダルトンから200キロダルトン(kD)のデンプン加水分解生成物である。
【0045】
「マルトデキストリン」という用語は、シクロデキストリンを含まないデキストリンを意味する。特別な場合、マルトデキストリンは、イコデキストリン、又は分子量180ダルトンから200キロダルトンの他の直鎖状又は分岐状の非環状デキストリンである。マルトデキストリンは、デンプンの限られた加水分解から生成され得る。デンプンは、α(1,4)グリコシド結合によって結合された直鎖のグルコースポリマーであるアミロースと、糖類ポリマーに分岐導入するα(1,6)グリコシド結合を約10%含むアミロペクチンの2種類のグルコースポリマーから構成される。デンプンの初期組成、加水分解の条件、又は特定の酵素の添加の結果として、得られるマルトデキストリンは異なる分岐程度(例えば、0〜40%)を有することができる。
【0046】
「デキストラン」という用語は、α−1,3分岐をもつα−1,6−グルカンを意味する。
【0047】
グルカン又はグルカン分子の「誘導体」又は「誘導体化された」という用語は、酵素的、化学的及び/又は物理的修飾に由来する修飾された分子又は分子集団を意味する。例えば、ポリマー結合を加水分解してもよいし、又は、追加の結合を生成してもよいし、又は、グルカン内の官能基、特にヒドロキシル基を誘導体化又は置換してもよい。
【0048】
デンプン誘導体とは、デンプンの、1つ又は複数の工程での、酵素的、化学的及び/又は物理的修飾から生じる加工デンプン(modified starch)を意味する。
【0049】
「オリゴペプチド」という用語は、2〜10個のアミノ酸で構成されるペプチドを意味する。従って、「オリゴペプチド」という用語は、二アミノ酸(bi-amino acids)、すなわちアミノ酸二つから構成されるペプチドを包含する。オリゴペプチドは、好ましくは二アミノ酸であり、従ってオリゴペプチドという用語は、特定の実施形態では二アミノ酸という用語で置き換えることができる。
【0050】
分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、特にGPC−RI、又は、イオン交換クロマトグラフィー、又は両者の組み合わせによって行うことができる。グルカンに関する限りは、GPC又はGPC−RIが好ましい。アミノ酸又はペプチドに関する限りは、イオン交換クロマトグラフィーが好ましい。グルカン、及び、グリセロール、アミノ酸、オリゴペプチド、又はそれらのうち1つ以上の混合物を含む組成物中の(平均)分子量に対する結果を得るために、グルカンの分子量及び他の成分の分子量を単独で決定し、その結果を組み合わせて、例えば組成物の成分a)〜d)に対する平均分子量を得ることができる。従って、そのような組成物の場合、Mw及びMnを決定するための方法は、GPC又はGPC−RIとイオン交換クロマトグラフィーとの組み合わせであることが好ましい。成分a)がマルトースの場合、分子量は1つの試料で、好ましくはGPC又はGPC−RIを用いて測定することができる。
【0051】
分子量(M、単位g/Mol)は、任意の分子又はポリマーに対して計算することができる。例えば、グルカン分子の分子量は、下記式で与えられる。
M(i単位のグルカン分子)=180g/Mol+(i−1)*162g/Mol
ここで、180g/Molはグルコースの分子量、162g/Molは加水分解による重合後に追加されたグルコース単位1個についての分子量である。
【0052】
糖類調製物の分子量を適切に特徴付けることができるただ1つの数字はない。従って、さまざまな記述子が用いられる。最も一般的に用いられるのは、「重量平均分子量」(Mw)と「数平均分子量」(Mn)であり、MwとMnは下記式(1)及び式(2)によって求めることができる。
ここでn
iは分子量M
iの分子の数である。Mwは特に糖類調製物の高分子量含有量の変化の影響を受けやすいが、Mnは試料中の低分子量分子の変化に大きく影響される。
【0053】
【数1】
【0054】
グリセロールの分子量は92ダルトン、又は92g/Molである。
【0055】
アミノ酸の分子量は75〜205g/Molである。
【0056】
オリゴペプチドの分子量は、それらを構成するアミノ酸それぞれの分子量を合計したものから各ペプチド結合に対しペプチド結合形成時の1水分子の損失に相当する18g/Molを引く。
【0057】
アミノ酸及び/又はペプチドの混合物の平均MW(Mw及びMn)は、糖類の混合物に対するMWと同じく式(1)(2)で計算することができる。
混合物内の個々のアミノ酸又はオリゴペプチドの量は既知であるか、又は合計されたものである。
【0058】
糖類と非糖類の混合物の平均MW(Mw及びMn)は、例えば、糖類又はアミノ酸のMWと同じく式(1)(2)で計算することができる。
混合物の異なる成分全ての量とそれらの分子量は、既知であるか、又は合計されたものである。多くの場合、アミノ酸混合物の組成はサプライヤーによって分析されて知らされているか、そうでなければ以下に述べるようにそれらを決定することができる。
【0059】
アミノ酸の混合物又はペプチドの組成を分析するための信頼できる技術は、ポストカラム誘導体化(例えばニンヒドリンでの)を備えた、イオン交換クロマトグラフィーを伴う(アンダース(Anders) JC.アミノ酸分析の進歩。バイオファーム インターナショナル 2002;4:32〜39)。
【0060】
試料の「多分散指数」(Poly−D)は、Mw/Mnの比として計算することができる。
【0061】
ポリマー分子の重合度は、下記式で定義される。
DP=M(ポリマー分子)/M(モノマー)。ここで、グルカンの場合、M(モノマー)は162g/molである。
【0062】
従って、グルカン分子の分子量(M)はすべてDPとして表現でき、逆も同様である。
【0063】
DPw及びDPnという用語は、重量平均重合度と数平均重合度を意味し、次のように定義される。
DPw=Mw/M(モノマー)
DPn=Mn/M(モノマー)
【0064】
分子量と重合度、及びそれらの平均値は、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、好ましくは屈折率(RI)検出を備えるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI)により測定される。特にペプチド/アミノ酸の場合、イオン交換クロマトグラフィーも可能である。具体的な方法については、実施例でさらに説明する。
【0065】
所定の分子量範囲の分子画分の量は、さまざまな方法で示すことができる。そうするための非常に一般的で有用な方法は、そのような画分の量を組成物全体の重量パーセンテージとして表すことである(そのような組成物が最終溶液で用いられる最終濃度がなんであろうと)。本発明では、成分a)、b)、c)又はd)の重量パーセンテージを、a)+b)+c)+d)の総重量のパーセントで表す。a)+b)+c)+d)の総重量を、「総CHO」とも呼ぶ。a)+b)+c)+d)の総重量に関連するパーセンテージは、乾燥物質に基づいて計算される。
【0066】
グルコースポリマー調製物中のグルカン分子の重量パーセンテージ、又はグルカン分子の、DP又は他の方法によって定義される画分の重量パーセンテージは、GPC、特にGPC−RIによって決定できる。グルカン分子又は画分の重量パーセンテージは、特に、GPCクロマトグラムの前記グルカン分子/画分の面積を決定し、それが関係するであろう種、例えばすべてのグルカン分子の面積との関係を決めることによって決定できる。本発明の組成物内のすべてのグルカンの面積を知ることにより、a)〜d)(ここでa)〜d)は上記で定義されたとおり)内の、グルカン分子の、又はグルカン分子の画分の重量パーセンテージを、例えば下記式から算出できる。
対象となる画分又は分子の重量%
=[(対象となる分子又は画分の面積)/(総CHOの面積)] * 100
ここで、上記面積はGPCクロマトグラム中の面積を意味する。
【0067】
分子又は画分のパーセンテージを決める詳細な手順は、この分野の当業者には公知であり、その方法を詳細に限定する必要はない。公知のように、GPCでは、溶出溶媒中のポリマーの重量濃度を、検出器でモニターすることができる。分子量は、分子量標準を用いて決定できる。実施例では、上記の手順と組み合わせることのできる測定について説明する:グルコースポリマー調製物の総量又は濃度は、背景差分を行った後のGPCクロマトグラムの曲線下の面積に相当し、続いて、分子量標準、特にイコデキストリン、マルトース及びグルコース標準を用いて較正する。
分子量画分又は分子の定量化は、デキストラン分子量標準等の分子量標準や、イコデキストリンを比較標準として用いて評価することができる。
【0068】
液体組成物においては、代わりに、成分の重量パーセントを、液体組成物全体の全質量に基づいて定義してもよい。
【0069】
本発明では、「生理的塩類濃度(Physiological Concentrations of Salts)」という用語は、以下の濃度を記載するために使用される。
・約100から約150mEq/Lまでの濃度のナトリウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のカリウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のカルシウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のマグネシウム
【0070】
本出願で使用される「腹膜治療液」(PTF)という用語は、血液中に見られる濃度に匹敵する濃度で生理的量の様々な電解質を含む水溶液を指す。一般的な腹膜透析液には、以下が含まれてよい。
・約100から約150mEq/Lまでの濃度のナトリウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のカリウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のカルシウム
・約0から約10mEq/Lまでの濃度のマグネシウム
・グルコース及び/又はマルトデキストリン又は他の単糖及び/又は高糖分子、アミノ酸及びペプチド、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、デキストラン、及び、浸透圧を生み出すのに十分に高濃度の他の生体適合性化合物、そのような化合物の誘導体、及びそのような化合物の混合物、及び/又はそれらの誘導体等の「浸透圧剤」であって、該浸透圧剤は最終的に組み合わされた濃度が0.5から20%の間である。
【0071】
腹膜自体の治療又は全身治療を実行するために、PTFを腹膜に投与することができる。腹膜治療の例は、腹膜癌又は腹膜感染症に対する化学療法である。腹水による全身治療の非常に一般的な例が腹膜透析であり、ほとんどの場合、腎機能不全のためであり、低分子廃棄物が血液循環から排除される。
【0072】
「腹膜透析液」(PDF)は、血液を浄化し、その構成要素のバランスをとるために、患者から血液老廃物と水を除去するのに十分な、例えば1〜16時間の期間、透析を必要とする患者の腹膜腔に導入され維持される液体混合物である。前記期間の終わりに、「透析物質(dialysate)」が患者の腹膜腔から除去される。
【0073】
腹膜透析の貯留時間は、例えば自動腹膜透析(ADP)の場合2時間未満;例えば、連続携行式腹膜透析(CAPD)では4時間から6時間にわたって;例えば終日又は一晩中の貯留といった長時間の透析貯留では、8から12時間というように様々である。本出願では、6時間までの貯留を短いPD貯留と呼び、8時間以上の貯留を長い貯留と呼ぶ。
【0074】
「限外ろ過」(UF)という用語は、単位時間あたりの液体及び溶解物質(例えば、液体、電解質、尿素、クレアチニン、グルコース、及び他の小分子)の交換を表す。透析中の限外濾過は、血液コンパートメントから透析液を含む腹膜コンパートメントへと起こる。一方、小分子もしくは液体の、透析液から血液へのリンパ吸収又は逆限外ろ過のいずれかによって、透析液から溶質及び液体が患者体内(patient’s system)に逆移動する場合がある。
【0075】
本発明の文脈において、経毛細血管限外ろ過(transcapilary ultrafiltration)という用語は、腹膜透析貯留中に体から透析液に移動するすべての体液に対応する。
【0076】
正味限外濾過(NUF)という用語は、最初に投与されたPD液の量(IPFV)から、透析貯留の終わりに回収された透析液量(RDV)を引いて求められる。
NUF = IPFV − RDV
NUFは、透析液のリンパ吸収(LA)(腹腔から体内へ)に対する経毛細血管限外ろ過(TCUF)(血液から透析液へ)の結果である。
NUF = TCUF − LA
【0077】
正味限外ろ過は、透析の目的の1つに対応する正値(positive)(患者から透析液への流体除去)の可能性もあるし、又は、透析貯留の時間にわたって浸透圧が十分に維持されなかった場合など、負値(negative)(腹膜から患者への全体的な液体の取り込み)の可能性もある。
【0078】
リンパ吸収(LA)は、デキストラン70などの腹腔内に投与されたボリュームマーカーの量的損失を乗算した、最初に投与されたPD液Vol(PDF)
iに基づき、以下の式(3)により評価できる。
【数2】
【0079】
その後、経毛細血管限外ろ過(TCUF)を、下記式によりリンパ吸収と正味限外ろ過を足して計算することができる。
TCUF = NUF + LA
【0080】
「総CHO」という用語は、PTFに存在する炭水化物の総量に適用される。
【0081】
「CHO吸収」という用語は、腹膜透析(PD)貯留中に、腹膜内のPDFから患者が吸収する総「炭水化物量」(CHO)を表すために適用される。炭水化物の吸収は、透析貯留中に体内に吸収される代謝可能な浸透剤という意味として評価される。これは、最初に投与されたPD液の総炭水化物量から回収された透析液の総炭水化物量を差し引くことによって求められる。
【0082】
炭水化物誘導体であるグリセロールも炭水化物と見なし、適用される場合、用語「総CHO」及び「CHO吸収」内に入れる。
【0083】
厳密に言えば、アミノ酸及びペプチドは窒素原子も含むため、炭水化物ではない。しかし、総CHO及びCHO吸収の対象が主にPTF内の代謝可能な成分を推定することであるため、及び簡単化のために、我々は用語「総CHO」及び「CHO吸収」内にアミノ酸とオリゴペプチドを入れることとする。
【0084】
用語「CHO吸収あたりのNUFの割合」は、透析貯留中のCHO吸収の総重量(mg)に対するNUF体積(ml)の割合を表すために用いられる。
【0085】
「生理的血液に近いpH」とは6.5〜8、好ましくは6.8〜7.7、より好ましくは7〜7.5のpHに相当する。
【0086】
以下、分子量の範囲を記載する。範囲のそれぞれは、1以上の鎖長のグルカン分子を含み、DPで表される。この範囲は、こうした範囲が示される先行技術との比較を容易にすることを意図している。さらに、これらの範囲は、「発明を実施するための形態」に記載するように、本発明の特定の実施形態を定義するために使用される。これらの範囲の境界は端数処理した値(rounded values)であることに留意されたい。これは、多くの刊行物や特許においてそのようなものとして用いられてきたので、グルコースポリマーに関する先行する刊行物や特許についての我々の分析に、DP情報を以下のように取り込むことができる。
【0087】
DP 分子量(D) 分子量範囲(D)
1 180 <200
2 342 200〜400
3 504 400〜600
4 667 600〜750
5 829 750〜900
6 991 900〜1000
7 1153 1000〜1250
8 1315 1250〜1400
9 1477 1400〜1500
10 1639 1500〜1750
11 1802 1750〜1900
12 1964 1900〜2000
13 2126 2000〜2250
14 2288 2250〜2400
15 2450 2400〜2500
16 2612 2500〜2750
17 2774 2750〜2800
18 2937 2800〜3000
19 3099 3000〜3250
20 3261 3250〜3300
21 3423 3300〜3500
22〜24 3500〜4000
25〜27 4000〜4500
28〜30 4500〜5000
31〜33 5000〜5500
34〜36 5500〜6000
37〜39 6000〜6500
40〜43 6500〜7000
44〜46 7000〜7500
47〜49 7500〜8000
50〜55 8000〜9000
56〜61 9000〜10000
62〜67 10K〜11K
68〜73 11K−12K
74〜76 12K〜12.5K
77〜80 12.5K〜13K
81〜86 13K〜14K
87〜92 14K〜15K
93〜98 15〜16K
99〜104 16K〜17K
105〜110 17K〜18K
111〜117 18K〜19K
118〜123 19K〜20K
124〜129 20〜21K