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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-107506(P2021-107506A)
(43)【公開日】2021年7月29日
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210702BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20210702BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210702BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210702BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20210702BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210702BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20210702BHJP
   B29B 7/20 20060101ALI20210702BHJP
   B29B 7/88 20060101ALI20210702BHJP
   B29B 7/28 20060101ALI20210702BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L7/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K5/3477
   B60C1/00 A
   C08J3/22CEQ
   B29B7/20
   B29B7/88
   B29B7/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-239146(P2019-239146)
(22)【出願日】2019年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 圭史
【テーマコード(参考)】
3D131
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BA18
3D131BC02
3D131BC51
4F070AA05
4F070AA08
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC23
4F070AC32
4F070AC45
4F070AC50
4F070AC53
4F070AC66
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE08
4F070FA17
4F070FB03
4F070FB07
4F070FC03
4F201AA46
4F201AA47
4F201AB03
4F201AB17
4F201AB18
4F201AH20
4F201BA01
4F201BK14
4F201BK26
4F201BK54
4J002AC01X
4J002AC02W
4J002AC02X
4J002AC08W
4J002DJ017
4J002EU186
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】テトラジン化合物を用いたことによる優れた低発熱性を維持しつつ、未加硫ゴム組成物の粘度上昇を抑える。
【解決手段】実施形態に係るゴム組成物の製造方法では、第1ジエン系ゴムにカーボンブラックとテトラジン化合物を添加し混練機で混合して混合物を排出し、得られた混合物に第2ジエン系ゴムとシリカを添加し混練機で混合して混合物を排出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ジエン系ゴムにカーボンブラックとテトラジン化合物を添加し混練機で混合して混合物を排出する第1混合工程と、
前記第1混合工程で得られた混合物に第2ジエン系ゴムとシリカを添加し混練機で混合して混合物を排出する第2混合工程と、を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記テトラジン化合物が下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基又はアミノ基を表し、これら各基はそれぞれ1個以上の置換基を有してもよい。
【請求項3】
前記第1ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴムを含み、前記第2ジエン系ゴムが天然ゴムを含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第2混合工程で得られた混合物に加硫剤を添加して混合する第3混合工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によりゴム組成物を製造すること、
得られたゴム組成物を用いて未加硫タイヤを作製すること、及び、
得られた未加硫タイヤを加硫成型すること、を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法に関し、またタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにおいては、低燃費性を向上するために低発熱性に優れるゴム組成物が求められる。低発熱性を向上するために、変性ジエン系ゴムやシランカップリング剤、分散剤などが使用されている。
【0003】
特許文献1には、シリカの分散剤としてテトラジン化合物を用いて、該テトラジン化合物をジエン系ゴムとマスターバッチ化することで低発熱性を改良することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WО2017/057758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジエン系ゴムにテトラジン化合物を加えてマスターバッチを作製した場合、該マスターバッチを用いて作製した未加硫ゴム組成物の粘度が上昇し、加工性が損なわれることが判明した。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、テトラジン化合物を用いたことによる優れた低発熱性を維持しつつ、未加硫ゴム組成物の粘度上昇を抑えることができるゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るゴム組成物の製造方法は、第1ジエン系ゴムにカーボンブラックとテトラジン化合物を添加し混練機で混合して混合物を排出する第1混合工程と、前記第1混合工程で得られた混合物に第2ジエン系ゴムとシリカを添加し混練機で混合して混合物を排出する第2混合工程と、を含むものである。
【0008】
本発明の実施形態に係るタイヤの製造方法は、該製造方法によりゴム組成物を製造すること、得られたゴム組成物を用いて未加硫タイヤを作製すること、及び、得られた未加硫タイヤを加硫成型すること、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、テトラジン化合物を用いたことによる優れた低発熱性を維持しつつ、未加硫ゴム組成物の粘度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分としてのジエン系ゴムと、テトラジン化合物と、シリカと、カーボンブラックを含む。
【0012】
ゴム成分として用いられるジエン系ゴムとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等、ゴム組成物において通常使用される各種が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ジエン系ゴムしては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0013】
上記で列挙した各ジエン系ゴムの具体例には、その分子末端又は分子鎖中において、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エポキシ基、シリル基、及びカルボキシ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基が導入されることで、当該官能基により変性された変性ジエン系ゴムも含まれる。ジエン系ゴムが変性ジエン系ゴムを含むことにより、充填剤としてシリカを用いたときに、その分散性を向上することができる。変性ジエン系ゴムとしては、変性スチレンブタジエンゴムを用いることが好ましい。そのため、一実施形態に係るジエン系ゴムは、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エポキシ基、シリル基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するスチレンブタジエンゴムを含むことである。
【0014】
テトラジン化合物は、テトラジン環を含む化合物の総称であり、テトラジン及びその誘導体である。テトラジン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩を用いることが好ましい。
【0015】
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基又はアミノ基を表し、これら各基はそれぞれ1個以上の置換基を有してもよい。
【0016】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキル基の炭素数は1〜8であることが好ましい。より好ましいアルキル基は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基である。
【0017】
アルキルチオ基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキルチオ基の炭素数は1〜8であることが好ましい。より好ましいアルキルチオ基は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキルチオ基である。
【0018】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、1−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0020】
アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0021】
複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、テトラヒドロキノリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基等の含窒素複素環基; フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基等の含酸素複素環基; チエニル基、ベンゾチエニル基等の含硫黄複素環基; オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等の窒素原子と酸素原子を含む複素環基; チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子と硫黄原子を含む複素環基が挙げられる。これらの中でも、芳香族性を持つ複素環基である複素芳香環基が好ましく、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、フリル基、又はチエニル基である。
【0022】
アミノ基としては、1級アミノ基(−NH)だけでなく、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を1つ又は2つ有する2級又は3級アミノ基でもよい。なお、2級又は3級アミノ基の場合、該炭化水素基の炭素数は合計で15以下であることが好ましい。
【0023】
これらのアルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基及びアミノ基の各基は、それぞれ1個以上の置換基を有してもよい。該置換基としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個有していてもよい。
【0024】
式(1)で表されるテトラジン化合物の塩としては、特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩; ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩; ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、テトラジン化合物としては、ジエン系ゴムの炭素−炭素二重結合との間でのディールス・アルダー反応の反応性を大きくできることから、式(1)中のR及びRが、それぞれ独立にアリール基又は複素環基であることが好ましく、より好ましくは複素環基であり、更に好ましくは含窒素複素芳香環基であり、特に好ましくはピリジル基である。
【0026】
テトラジン化合物の配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量部であり、0.3〜2質量部でもよい。
【0027】
充填剤としてのシリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0028】
シリカの配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜100質量部であり、更に好ましくは20〜80質量部であり、30〜60質量部でもよい。
【0029】
充填剤としてのカーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)等が挙げられる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
カーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜100質量部であり、更に好ましくは20〜80質量部であり、30〜60質量部でもよい。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、酸化亜鉛、オイル、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0032】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ配合量に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0033】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0034】
実施形態に係るゴム組成物の製造方法は、下記第1混合工程と第2混合工程を含み、通常は更に下記第3混合工程も含む。
・第1ジエン系ゴムにカーボンブラックとテトラジン化合物を添加し混練機で混合して混合物を排出する第1混合工程。
・前記第1混合工程で得られた混合物に第2ジエン系ゴムとシリカを添加し混練機で混合して混合物を排出する第2混合工程。
・前記第2混合工程で得られた混合物に加硫剤を添加して混合する第3混合工程。
【0035】
ここで、混練機としては、密閉式混練機であるバンバリーミキサーなどの公知の各種ゴム用混練機を用いることができる。なお、各混合工程で用いる混練機は、いずれか2つの混練工程または全ての混練工程で同じ混練機を用いてもよく、それぞれ別の混練機を用いてもよい。
【0036】
第1混合工程では、混練機に、第1ジエン系ゴムを投入するとともに、カーボンブラックとテトラジン化合物を投入して、混練を行う。混練すると、剪断による発熱で温度が上昇するので、所定の第1排出温度にて混合物を混練機から排出する。
【0037】
第1混合工程は、第1ジエン系ゴムとテトラジン化合物をマスターバッチ化する工程であり、本実施形態では更にカーボンブラックを加えてマスターバッチ化することを特徴とする。これにより、第2混合工程で添加するシリカに対するゴム成分の親和性を向上させてシリカの分散性を高めることができるとともに、カーボンブラックを加えてマスターバッチ化することで未加硫ゴム組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0038】
第1混合工程で用いる第1ジエン系ゴムとしては、上述したジエン系ゴムの1種以上を用いることができ、好ましくは、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択された少なくとも1種を含むことである。
【0039】
一実施形態において、第1ジエン系ゴムは、低発熱性と粘度上昇抑制効果の観点から、スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。その場合、第1ジエン系ゴムは、第1ジエン系ゴムの全量を100質量%として、スチレンブタジエンゴムを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは80質量%以上含むことであり、スチレンブタジエンゴム単独でもよい。
【0040】
第1混合工程において添加するカーボンブラックの量は、第1ジエン系ゴム100質量部に対して10〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜70質量部であり、更に好ましくは30〜60質量部である。第1混合工程で添加するカーボンブラック量を増やすことにより、未加硫ゴム組成物の粘度上昇抑制効果を高めることができる。
【0041】
第1混合工程において添加するテトラジン化合物の量は、第1ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量部であり、更に好ましくは0.3〜2質量部である。第1混合工程で添加するテトラジン化合物量を増やすことにより、低発熱性の改善効果を高めるとともに、未加硫ゴム組成物の粘度上昇抑制効果を高めることができる。
【0042】
第1混合工程は、上記のようにマスターバッチ化工程であるため、その他の成分は添加しないことが好ましいが、本実施形態の効果が損なわれない範囲で、オイルなどの他の成分を添加してもよい。なお、第1混合工程では、加硫剤及び加硫促進剤は添加しない。
【0043】
上記第1排出温度としては、特に限定されないが、80〜190℃であることが好ましく、より好ましくは90〜160℃であり、更に好ましくは100〜150℃であり、特に好ましくは120〜140℃である。混合時間は、特に限定されず、例えば30秒間から20分間でもよく、1分間から10分間でもよく、3分間から8分間でもよい。混練機から排出された混合物は、通常、常温下に放置することで冷却される。その際、混合物をシート状に引き伸ばしておくことにより、冷却効果を高めることができる。
【0044】
第2混合工程では、第1混合工程で得られた混合物を混練機に投入するとともに、第2ジエン系ゴムとシリカを投入して、混練を行う。混練すると、剪断による発熱で温度が上昇するので、所定の第2排出温度にて混合物を混練機から排出する。
【0045】
第2混合工程で用いる第2ジエン系ゴムとしては、上述したジエン系ゴムの1種以上を用いることができ、好ましくは、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択された少なくとも1種を含むことであり、より好ましくは、天然ゴム及び/又はポリジエン系ゴムを用いることである。第2ジエン系ゴムとしては、第1ジエン系ゴムと同種のジエン系ゴムを用いてもよいが、通常は第1ジエン系ゴムとは異なるジエン系ゴムを用いる。
【0046】
一実施形態において、第2ジエン系ゴムは天然ゴムを含むことが好ましい。その場合、第2ジエン系ゴムは、第2ジエン系ゴムの全量を100質量%として、天然ゴムを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは80質量%以上含むことであり、天然ゴム単独でもよい。
【0047】
第2混合工程において投入する第1ジエン系ゴム(第1混合工程で得られた混合物中に含まれる第1ジエン系ゴム)と第2ジエン系ゴムとの割合は、特に限定されず、例えば、質量比で、第1ジエン系ゴム/第2ジエン系ゴム=20/80〜90/10であることが好ましく、より好ましくは30/70〜80/20であり、更に好ましくは50/50〜70/30である。
【0048】
第2混合工程において添加するシリカの量は、特に限定されないが、ゴム成分(第1ジエン系ゴムと第2ジエン系ゴムの合計)100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜100質量部であり、更に好ましくは20〜80質量部であり、30〜60質量部でもよい。
【0049】
第2混合工程では、シリカとともに、カーボンブラック等の他の充填剤を投入してもよい。第2混合工程で添加するカーボンブラックの量は、特に限定されないが、第1混合工程で添加するカーボンブラックの量との合計が、上記のようにゴム成分100質量部に対して10〜120質量部、より好ましくは15〜100質量部、更に好ましくは20〜80質量部、特に好ましくは30〜60質量部となるように設定されることが好ましい。
【0050】
第2混合工程では、上記成分の他に、シランカップリング剤、酸化亜鉛、オイル、ステアリン酸、老化防止剤、ワックスなどの添加剤を添加することが好ましい。但し、第2混合工程は、ノンプロ練り工程であるため、加硫剤及び加硫促進剤は添加しない。
【0051】
上記第2排出温度としては、特に限定されないが、100〜190℃であることが好ましく、より好ましくは120〜180℃であり、更に好ましくは130〜170℃である。第2排出温度は第1排出温度よりも高いことが好ましい。混合時間は、特に限定されず、例えば30秒間から15分間でもよく、1分間から10分間でもよい。混練機から排出された混合物は、通常、常温下に放置することで冷却される。その際、混合物をシート状に引き伸ばしておくことにより、冷却効果を高めることができる。
【0052】
第3混合工程では、第2混合工程で得られた混合物を混練機に投入するとともに、加硫剤を投入して、混練を行う。混練すると、剪断による発熱で温度が上昇するので、所定の第3排出温度にて混合物を混練機から排出する。これにより、未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0053】
第3混合工程は、プロ練り工程であるため、加硫剤とともに加硫促進剤を添加することが好ましい。なお、第3混合工程では、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合してもよい。
【0054】
第3混合工程において添加する加硫剤及び加硫促進剤の量は、ゴム組成物における配合量として上述したとおりに設定することができる。
【0055】
第3混合工程では、加硫剤及び加硫促進剤の反応を抑えるために、排出温度(第3排出温度)が、第1及び第2排出温度よりも低く設定されることが好ましく、すなわち、第3排出温度は120℃未満であることが好ましく、より好ましくは80〜110℃、更に好ましくは90〜100℃に設定される。
【0056】
このようにして得られたゴム組成物は、タイヤ用、防振ゴム用、コンベアベルト用などの各種ゴム部材に用いることができる。
【0057】
実施形態に係るタイヤの製造方法は、以下の工程を含む。
・上記製造方法によりゴム組成物を製造する工程、
・得られたゴム組成物を用いて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製する工程、及び、
・得られた未加硫タイヤを加硫成型する工程。
【0058】
未加硫タイヤの作製及び加硫成型の各工程については、特に限定されず、常法に従い、該ゴム組成物を用いてタイヤを製造することができる。
【0059】
該ゴム組成物をタイヤに用いる場合、その適用部位としては、トレッド部、サイドウォール部などのタイヤの各部位が挙げられ、好ましくはタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いることである。すなわち、一実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物からなるトレッドゴムを備えたものである。タイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラックやバスの重荷重用タイヤなど各種用途、各種サイズの空気入りタイヤが挙げられる。
【0060】
一実施形態において、上記ゴム組成物からなるトレッドゴムを備える空気入りタイヤは、常法に従い、該ゴム組成物を押出加工等によって所定の形状のトレッドゴムに成形し、他の部品と組み合わせて未加硫タイヤを作製した後、例えば140〜180℃で未加硫タイヤを加硫成型することにより、製造することができる。
【0061】
なお、タイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
[マスターバッチの作製(第1混合工程)]
下記表1に示す配合(質量部)に従って、バンバリーミキサーにスチレンブタジエンゴムを投入し、続いてカーボンブラックとテトラジン化合物を添加し混合して、混合物の温度が120℃に達した段階でロール回転数を変更して120℃に維持し、5分間混合した。その後、120℃で混合物を排出した。該混合物をシート状に引き伸ばした後、常温下に放冷してマスターバッチ1〜8を得た。
【0064】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1:JSR(株)製「JSR1723」(乳化重合SBR、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
・SBR2:JSR(株)製「JSR0122」(乳化重合SBR、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分34質量部含有)
・SBR3:JSR(株)製「HPR350」(アルコキシ基及びアミノ基末端変性溶液重合SBR)
・カーボンブラック:HAF、東海カーボン(株)製「シースト3」
・テトラジン化合物:3,6−ジ(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業(株)製。
【0065】
【表1】
[ゴム組成物の調製及び評価]
第2混合工程として、下記表2〜4に示す配合(質量部)に従って、バンバリーミキサーに、硫黄と加硫促進剤を除く成分を投入し、4分間混合して第2排出温度(150℃)で混合物を排出した。該混合物をシート状に引き伸ばした後、常温下に放置して冷却した。次いで、第3混合工程として、バンバリーミキサーに該混合物を投入し、硫黄と加硫促進剤を添加して1分間混合し、第3排出温度(90℃)で混合物を排出することにより、各ゴム組成物を得た。
【0066】
なお、実施例および比較例においては、効果を対比しやすいように、ゴム成分はその組成がいずれもSBR/NR=60/40(質量部)となるように設定した。また、カーボンブラックの配合量はマスターバッチ由来の量も含めてすべて40質量部(ゴム成分100質量部に対して)となるように設定した。
【0067】
表2〜4中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1,SBR2,SBR3,カーボンブック:表1と同じ。
・マスターバッチ1〜8:表1にて作製したもの。
・NR:RSS#3
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「Ultrasil VN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC140」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・老化防止剤:住友化学株式会社製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油入微粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学株式会社製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」。
【0068】
得られた各ゴム組成物について、未加硫状態での粘度を測定するとともに、160℃×30分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、低発熱性を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0069】
・粘度:JIS K6300に準拠して島津製作所(株)製のMooney Viscometerを使用して、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、表2では比較例1の値、表3では比較例3の値、表4では比較例4の値をそれぞれ100とした指数で表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを表す。
【0070】
・低発熱性:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み1%、温度60℃の条件で損失係数tanδを測定し、表2では比較例1の値、表3では比較例3の値、表4では比較例4の値をそれぞれ100とした指数で示した。指数が小さいほど、発熱しにくく、タイヤでの転がり抵抗が小さくて転がり抵抗性能(即ち、低燃費性)に優れることを示す。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
結果は表2〜4に示す通りである。表2に示すように、テトラジン化合物を配合していない比較例1に対し、テトラジン化合物を予めマスターバッチ化して配合した比較例2では低発熱性は改善されたものの、未加硫ゴム粘度が増加した。これに対し、テトラジン化合物をカーボンブラックとともにスチレンブタジエンゴムとマスターバッチ化した実施例1〜5であると、比較例2に対して低発熱性を維持ないし更に改善しながら、粘度が大幅に低下しており、低発熱性と加工性を高度に両立させることができた。
【0074】
また、表3および表4に示すように、ゴム成分の種類を変更しても、テトラジン化合物をカーボンブラックとともにスチレンブタジエンゴムとマスターバッチ化した実施例6,7であると、それぞれコントロールである比較例3,4に対して低燃費性を改善しながら、粘度が大幅に低下しており、低発熱性と加工性を高度に両立させることができた。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。