【解決手段】本発明は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法を使用して、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を有することが疑われる患者からの検体で感作させた、ドナー血小板から放出されたセロトニンまたは安定な標識されたセロトニンを測定するための方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムは、アッセイが放射標識されたセロトニンの使用を必要としないという、その他の方法に勝る利点を有する。加えて、本方法は、HITに関してより感度の高い高精度試験をもたらすLC−MS/MSシステムを取り入れる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本明細書では、試料中のセロトニンの測定によってヘパリン起因性抗体を間接的に測定するための方法およびシステムが記載される。
【0008】
ある特定の実施形態では、本発明は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法を使用して、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を有することが疑われる患者からの検体で感作させた、ドナー血小板から放出されたセロトニンまたは安定な標識されたセロトニンを測定するための方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムは、アッセイが放射標識されたセロトニンの使用を必要としないという、その他の方法に勝る利点を有する。加えて、本方法は、HITに関してより感度の高い高精度試験をもたらすLC−MS/MSシステムを取り入れる。本方法は、異常なドナー血小板活性化に関連するその他の状態および疾患に役立てることができる。本発明は、様々な方法で具体化されてもよい。
【0009】
少なくとも1つの態様では、本発明は、試料中の放出されたセロトニンおよび/または安定な標識されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートすること;液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および質量分析法によってクロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内で利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法を提供する。これらの方法のさらなる実施形態を、以下に詳述する。
【0010】
別の態様では、本発明は、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、生体試料、ヘパリン、およびセロトニンとインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;ならびに質量分析法によってクロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内で利用可能なセロトニンの総量に対する、合わせた試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法を提供する。これらの方法のさらなる実施形態を、以下に詳述する。
【0011】
別の態様では、本発明は、試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、生体試料、ヘパリン、および安定な同位体で標識されたセロトニンとインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;血小板から安定な同位体で標識されたセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中の安定な同位体で標識されたセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;ならびに質量分析法によってクロマトグラフィーで分離された安定な同位体で標識されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内で利用可能な安定な同位体で標識されたセロトニンの総量に対する、試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法を提供する。これらの方法のさらなる実施形態を、以下に詳述する。
【0012】
別の態様では、本発明は、異常なドナー血小板活性化に関連する疾患または状態を診断するのに有用な報告を作成する方法であって、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;ドナー血小板からセロトニンまたは安定な標識されたセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;質量分析法によってクロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内で利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの量を決定するステップ;および試料中のセロトニンの放出パーセンテージを述べた報告を作成するステップを含む方法を提供する。これらの方法のさらなる実施形態を、以下に詳述する。
【0013】
別の態様では、本発明は、試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むシステムを提供する。これらのシステムのさらなる実施形態を、以下に詳述する。
【0014】
本発明のさらなる態様を、以下に詳述する。
本発明の特定の態様では例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;
前記ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、前記試料を所定期間にわたってインキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、前記クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、前記試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップ
を含む方法。
(項目2)
前記生体試料が、血清試料または血漿試料である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記生体試料が、ヘパリンで処置した対象から得られる、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記生体試料が、ヘパリン起因性血小板減少症を有することが疑われる対象から得られる、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記ドナー血小板が、少なくとも1名の健康と推定される対象から得られる、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記試料中の前記ドナー血小板が、洗浄され、部分的に精製される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記インキュベートするステップが、室温で行われる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記インキュベートするステップが、少なくとも30分間行われる、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記提供するステップにおける前記ヘパリンが、0.001から1U/mLの量で存在する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記提供するステップにおける前記ヘパリンが、50から1000U/mLの量で存在する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記クロマトグラフィーで分離するステップの前に、前記インキュベートされた試料を内部標準と接触させるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記内部標準が、安定な同位体で標識された形のセロトニンである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記安定な同位体で標識された形のセロトニンが、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記内部標準がセロトニンd4である、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記提供するステップにおける前記ドナー血小板が、前記提供するステップの前にセロトニンと共にインキュベートされた、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記提供するステップにおける前記ドナー血小板が、前記提供するステップの前に、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せと共にインキュベートされた、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記クロマトグラフィーで分離するステップの前に、前記インキュベートされた試料を部分的に精製するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記部分的に精製するステップが、前記インキュベートされた試料を遠心分離することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
液体クロマトグラフィーを使用することが、分析液体クロマトグラフィーを使用することを含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
分析液体クロマトグラフィーを使用することが、逆相カラムを使用することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
液体クロマトグラフィーを使用することが、少なくとも1つのカラムを使用することを含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
液体クロマトグラフィーを使用することが、平行な2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムを使用することを含み、前記2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムが単一の質量分析計にインライン接続されている、項目1に記載の方法。
(項目23)
平行な2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムを使用することが、前記インキュベートされた試料を、前記2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムに時間をずらして導入することを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記分析するステップが、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化、および大気圧光イオン化からなる群から選択されるイオン化技法を使用して、セロトニンをイオン化することを含む、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記分析するステップが、四重極質量分析計を使用してセロトニンを検出することを含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
前記四重極質量分析計が、三連四重極質量分析計である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記分析するステップが、第1の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを検出すること;第2の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを断片化することであって、1つまたは複数のセロトニン断片イオンをもたらすこと;および第3の四重極中の1つまたは複数のセロトニン断片イオンを検出することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記分析するステップが、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンをイオン化することであって、160.1±0.5の前駆体イオン、または115.1±0.5、132.1±0.5、105.1±0.5、もしくは89.1±0.5のプロダクトイオンの少なくとも1つを含む質量/電荷比を有する1つまたは複数のセロトニンイオンを生成することを含む、項目1に記載の方法。
(項目29)
試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ヘパリン、およびセロトニンとインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;
前記血小板からセロトニンが放出されるように、前記試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、前記試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップ
を含む方法。
(項目30)
試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ヘパリン、および安定な同位体で標識されたセロトニンとインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;
前記血小板から安定な同位体で標識されたセロトニンが放出されるように、前記試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中の安定な同位体で標識されたセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離された安定な同位体で標識されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能な同位体で標識されたセロトニンの総量に対する、前記試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するステップ
を含む方法。
(項目31)
前記提供するステップの前の前記安定な同位体で標識されたセロトニンが、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せである、項目30に記載の方法。
(項目32)
異常な血小板活性化に関連した疾患または状態を診断するために有用な報告を作成する方法であって、
(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;
(b)前記ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、前記試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
(c)液体クロマトグラフィーを使用して、前記インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;
(d)質量分析法によって、前記クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、前記ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、前記試料中の放出されたセロトニンの量を決定するステップ;および
(e)前記試料中のセロトニンの放出パーセンテージを述べた報告を作成するステップ
を含む方法。
(項目33)
前記疾患または状態が、ヘパリン起因性血小板減少症である、項目32に記載の方法。(項目34)
試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、
(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;
(b)前記ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、前記試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;
(c)液体クロマトグラフィーを使用して、前記インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および
(d)質量分析法によって、前記クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、前記ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、前記試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーション
を含むシステム。
【0015】
本出願は、以下の図面を含む。図面は、本発明のある特定の実施形態および/または特徴を例示するものであり、本発明の任意の記述(単数または複数)を補うものである。図面は、書かれた記述がその通りであることを明らかに示さない限り、本発明の範囲を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
以下の記載は、本発明の様々な態様および実施形態を述べたものである。本発明の範囲を限定しようとする特定の実施形態はない。むしろ実施形態は、本発明の範囲内に少なくとも含まれる非限定的な例の様々な方法およびシステムを単に提供するものである。この記載は、当業者の観点から読み取られ、したがって当業者に周知の情報は必ずしも含まれない。
【0021】
本出願では様々な略称が使用され得る。全てではないとしてもほとんどの場合、そのような略称の意味は当業者に公知である。これらの略称は、下記の略称を含み、その意味を提示する。
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
LOQ=定量限界
LLOQ=定量下限
ELISA=酵素結合免疫測定法
ESI=エレクトロスプレーイオン化
ULOQ=定量上限
(LC)−MS/MS=液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析法
【0022】
(定義)
下記の用語は、他に指示しない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0023】
本明細書で使用される「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に記載しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0024】
本出願の全体を通して、「約」という用語は、値が、デバイスに関する誤差の固有のばらつき、値を決定するのに用いられる方法、または研究対象の中に存在するばらつきを含むことを示すのに使用される。
【0025】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、生物の生理学的状態に関する生体情報を提供し得る、任意の生体分子である。ある特定の実施形態では、バイオマーカーの存在または不在が情報価値あるものになり得る。他の実施形態では、バイオマーカーのレベルが情報価値あるものになり得る。バイオマーカーは、セロトニンなどの神経伝達物質、または神経伝達物質の代謝産物であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、交換可能に使用される。これらの用語の使用は、医師などの医療専門家に対するいかなる種類の関係も示唆しない。
【0027】
本明細書で使用される「生体試料」という用語は、個体から単離することができる任意の流体または組織を指すのに使用される。例えば生体試料は、全血、血漿、血清、その他の血液画分、尿、脳脊髄液、組織ホモジネート、唾液、羊水、胆汁、粘液、腹水、リンパ液、発汗、組織、および組織ホモジネートなどであってもよい。
【0028】
本発明で使用される「試料」という用語は、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含有する混合物を指すのに使用される。試料は、追加の成分を含有していてもよい。
【0029】
本明細書で使用される「液体クロマトグラフィー」または「LC」という語句は、試料中の1種または複数の分子または分析物を、試料中のその他の分析物から分離するためのプロセスを指すのに使用される。LCでは、流体の均一性が、微細化された物質のカラム内を移動するにつれて、流体溶液の1種または複数の分析物が遅速化する。遅速化は、1つまたは複数の固定相と移動相との間に混合物の成分が分布することによって起こる。LCには、例えば、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「分離する」または「精製する」などの用語は、試料マトリックスからの目的の分析物以外の、全ての材料の除去を指すのに必ずしも使用されない。代わりに、一部の実施形態では、この用語は、試料マトリックス中に存在する1種または複数のその他の成分に比べて目的の1種または複数の分析物の量を豊富にする手順を指すのに使用される。一部の実施形態では、「分離」または「精製」は、例えば質量分析法による分析物の検出を妨げる可能性のある、試料からの1種または複数の成分の量を、除去するまたは減少させるのに使用されてもよい。
【0031】
本明細書で使用される「質量分析法」または「MS」分析という用語は、試料中の分子の同定および/または定量のための技法を指す。MSは、試料中の分子をイオン化し、荷電分子を形成し;それらの質量対電荷比に従って荷電分子を分離し;荷電分子を検出することを含む。MSは、試料中の分子の定性的および定量的検出の両方を可能にする。分子は、当業者に公知の任意の適切な手段によって、イオン化され検出されてもよい。「タンデム質量分析法」または「MS/MS」という語句は、本明細書では、試料中の分子の同定および/または定量のための技法であって、1つ超の質量分析法が、複数の質量分析装置を使用して同時にまたは単一の質量分析装置を使用して逐次行われる技法を指すのに使用される。本明細書で使用される「質量分析計」は、分子をイオン化しかつ荷電分子を検出する手段を含む装置である。
【0032】
本明細書で使用される「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」は、分子の断片化を回避しながら試料中の分子をイオン化するのに、質量分析法で使用される技法を指す。試料は、エレクトロスプレーによって微細なエアロゾル中に分散される。試料は、溶媒、通常は水と混合された揮発性有機化合物(例えば、メタノールまたはアセトニトリル)と、典型的には混合されることになる。次いでエアロゾルを、毛管を通して質量分析計に移し、これを加熱して、荷電液滴からのさらなる溶媒蒸発を助けることができる。
【0033】
本明細書で使用される「四重極分析装置」は、MSで使用されるあるタイプの質量分析装置である。この分析装置は、互いに高度に平行に設定された4個の円形ロッド(2対)からなる。四重極分析装置は、試料の荷電粒子をそれらの質量対電荷比に基づいて組織する機器の構成要素である。当業者なら、四重極分析装置の使用は、結果の高い特異性をもたらすことができることを理解されよう。1対のロッドは正電位に設定され、他方の対のロッドは負電位にある。検出するには、イオンが、位置合わせされたロッドと境を接しかつ平行な軌道経路の中心を通過しなければならない。四重極が、直流および無線周波電圧の所与の振幅で動作するとき、所与の質量対電荷比のイオンのみが、共鳴することになり、四重極を通過しかつ検出される安定な軌道を有することになる。本明細書で使用される「正のイオンモード」は、正に荷電したイオンが質量分析装置によって検出されるモードを指し、「負のイオンモード」は、負に荷電したイオンが質量分析装置によって検出されるモードを指す。「選択イオンモニタリング」または「SIM」の場合、直流および無線周波電圧の振幅は、特定の質量のみを観察するように設定される。
【0034】
本明細書で使用される「分析カラム」という用語は、試験試料マトリックスの成分の分離を有効にするのに十分なクロマトグラフ板を有する、クロマトグラフィーカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶出した成分は、目的の分析物(単数または複数)の存在または量を決定するのを可能にするような方法で分離される。一部の実施形態では、分析カラムは、平均直径が約5μmの粒子を含む。一部の実施形態では、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー−シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ固定相、例えばフェニル−ヘキシル官能化分析カラムである。
【0035】
分析カラムは、さらなる精製または分析のために「精製された」試料が得られるよう、保持される材料を保持されていない材料から分離または抽出するのに典型的には使用される、「抽出カラム」または「分取カラム」と区別することができる。一部の実施形態では、抽出カラムは、官能化シリカもしくはポリマー−シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ固定相、例えばPoroshell SBC−18カラムである。
【0036】
本明細書で使用される「ヘパリン処置」という用語は、対象(例えば、ヒト対象)へのヘパリン薬の投与を含む、処置レジメンを指す。「ヘパリン薬」という用語は、ヘパリン、非分画ヘパリン、ならびにエノキサパリン、ダルテパリン、およびチンザパリンを含む低分子量ヘパリンを含むがこれらに限定されない、当業者に公知の様々なヘパリンおよびヘパリン誘導体を指す。そのような薬物は、抗凝固剤を必要とする状態(例えば、心房細動、肺塞栓症、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、うっ血性心不全、卒中、心筋梗塞、および遺伝性または後天性凝固性亢進)を含む様々な状態を処置するために使用することができる。
【0037】
(試料中のセロトニンの存在または量を決定するための方法)
少なくとも1つの態様では、本発明は、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法を提供する。
【0038】
セロトニンは、血小板活性化のマーカーである。HITの患者からの血清は、高濃度のヘパリンではなく処置的濃度のヘパリンで、血小板の凝集および分泌を開始する。本明細書に記載の方法またはアッセイは、2つのヘパリン濃度、即ち低ヘパリン濃度および高ヘパリン濃度で、患者の血清または血漿などの生体試料の存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。セロトニン放出は、放出されたセロトニンの量を測定し、放出されたセロトニンをドナー血小板中の利用可能な総セロトニンと比較することによって、決定される。ドナー血小板中の利用可能な総セロトニンは、内因性セロトニンを含むことができ、血小板にスパイクされるセロトニンも含むことができる。本明細書に記載の本発明の実施形態では、ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料をドナー血小板およびヘパリンの存在下で所定期間の間インキュベートする。次いで、液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離することができる。本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、試料中の放出されたセロトニンの量を決定する。また、ある特定の実施形態では、試料中のセロトニンの放出パーセンテージを述べた報告を作成する。
【0039】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態によるアッセイの、実施例およびグラフ表示を、
図2に示す。
図2に例示されるように、試料は、低濃度のヘパリンおよび高濃度のヘパリンで、セロトニンの放出パーセントに関する測定値の関係に従って、本明細書に記載の基準に従い「陰性」、「中間」、「低陽性」、または「陽性」と標識される。「陽性」結果は、HITの診断を支持する。「陰性」結果は、HITの診断と相反するが、それを完全に排除しなくてもよい。「低陽性」または「未確定」の結果は、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリン曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて、解釈すべきである。
【0040】
一態様では、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法は、(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;(c)液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む。
【0041】
当業者に公知のように、ヘパリン起因正血小板減少症(HIT)の患者からの血清は、高濃度のヘパリンではなく処置的濃度のヘパリンで、血小板の凝集および分泌を開始させる。このように、HITの患者からの血清は、高濃度のヘパリンではなく低い処置的濃度のヘパリンでセロトニンの放出を引き起こすので、本明細書に記載の方法は、2つのヘパリン濃度(即ち、低ヘパリン濃度および高ヘパリン濃度)で、血小板からのセロトニンの放出を測定する。このアッセイは、放射標識されたセロトニンの使用を必要としないという、その他の方法に勝る利点を有する。加えて、本方法は、HITに関してより感度の高い高精度試験をもたらすLC−MS/MSシステムを取り入れる。本方法は、異常なドナー血小板活性化に関連するその他の状態および疾患に役立てることができる。本方法のステップを、以下にさらに記載する。
【0042】
(試料の提供)
これらの方法は、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を、提供することを含む。この文脈において、「提供する」という用語は広く解釈される。この用語は、生体試料を提供する対象を排他的に指すものではない。例えば、現場から離れた臨床実験室の技術者は、例えば、試料がクロマトグラフィーによる精製のために調製されるとき、試料を「提供する」と言える。
【0043】
試料は、任意の特定の試料タイプに限定されない。試料は、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含有するが、一般にその他の成分も含有する。一部の実施形態では、試料は、クロマトグラフィーによる精製のために加工され調製された試料である。そのような加工は、後続の精製ステップの有効性を最適化するのに役立ててもよい。そのような加工方法は、当業者に周知である。
【0044】
本発明は、試料の取扱いの、任意の特定の手段に限定されない。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにより精製する前に、試料を2つまたはそれ超の画分に分離するのに役立ててもよい。一部のそのような実施形態では、特定のカラム化学に関する分離の感度または選択性を改善するのを助けるため、そのような画分の2つまたはそれ超を異ならせて調製してもよい。一部の実施形態では、本方法は、多数の液体クロマトグラフィーシステム全体にわたって繰り返し注入するための、単一の試料を調製することを含む。本発明は、任意の特定の試料サイズに限定されない。
【0045】
試料は、生体試料を含む。そのような実施形態では、生体試料は、溶媒、緩衝液、および抗凝固剤などの、その他の成分を含んでいてもよい。一部の実施形態では、生体試料は、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、組織ホモジネート、唾液、羊水、胆汁、粘液、腹水、またはリンパ液の1種または複数とすることができる。一部の実施形態では、生体試料は、血清または血漿である。一部の実施形態では、生体試料は、薬物で処置した対象から得られる。例えば、生体試料は、ヘパリンで処置した対象またはヘパリン類似体もしくは誘導体で処置した対象から得ることができる。一部の実施形態では、生体試料は、ヘパリン、非分画ヘパリン、ならびにエノキサパリン、ダルテパリン、およびチンザパリンを含む低分子量ヘパリンで予め処置された対象から得られる。一部の実施形態では、生体試料は、異常な血小板活性化に関連した疾患または状態を有する、またはそれらを発症するリスクのある対象から得られる。例えば、生体試料は、ヘパリン起因性血小板減少症を発症するリスクのある対象から得ることができる。ヘパリン起因性血小板減少症を発症するリスクのある対象は、以前または現在ヘパリンで処置している対象を含むことができる。本発明は、生体試料の任意の特定の体積に限定されない。一部の実施形態では、生体試料は、体積が少なくとも約1〜100μL、少なくとも約10〜75μL、または少なくとも約15〜50μLである。ある特定の実施形態では、生体試料は、体積が少なくとも約20μLである。
【0046】
試料は、追加としてドナー血小板を含む。一部の実施形態では、ドナー血小板は、少なくとも1名の健康な対象(例えば、ヘパリン起因性血小板減少症または異常な血小板活性化に関連した状態もしくは疾患のない対象)から得られる。例えば、ドナー血小板は、実施例1で以下に記載される方法により、患者からの血漿から得ることができる。一部の実施形態では、ドナー血小板は、試料の使用前に洗浄および/または精製される。ある特定の場合には、アッセイの限定的な態様は、血小板中に存在するセロトニンに内在する量であることが見出されている。このように、一部の実施形態では、提供するステップの前に、ドナー血小板をセロトニンとインキュベートして、インキュベートするステップで放出するのに利用可能な血小板中に存在するセロトニンの量を増加させるようにする。一部の実施形態では、ドナー血小板を標識セロトニンとインキュベートする。標識されたセロトニンは、放出されたセロトニンを測定するための追加の方法として使用することができる。セロトニンの標識は、重水素、炭素13、窒素15、および/または酸素18などの安定同位体を含むことができる。例えば、提供するステップの前に、試料中のドナー血小板を、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、重水素標識セロトニン、またはこれらの標識の組合せと共にインキュベートすることができる。一部の実施形態では、ドナー血小板と共にインキュベートするのに使用することができるセロトニンまたは安定な標識されたセロトニンの量は、50ng/mLから500ng/mL(例えば、75ng/mLから400ng/mL、または150ng/mLから300ng/mL)の範囲であり得る。本発明は、ドナー血小板の任意の特定の体積に限定されない。任意選択で、ドナー血小板は、緩衝液(例えば、水性緩衝液)に懸濁させた懸濁液の形で提供される。緩衝液は、カルシウムイオン(Ca
2+)および少なくとも1種の酵素を含むことができる。一部の実施形態では、酵素はアピラーゼ(apryase)、カルシウム活性化原形質膜結合酵素であり、アデノシン二リン酸(ADP)の蓄積を防止する。一部の実施形態では、ドナー血小板懸濁液は、体積が少なくとも約25〜250μL、少なくとも約35〜200μL、少なくとも約45〜150μL、または少なくとも約50〜100μLである。ある特定の実施形態では、ドナー血小板懸濁液は、体積が少なくとも約75μLである。
【0047】
試料はヘパリンも含む。上述のように、アッセイは、2つの濃度のヘパリンを使用して行われる。一部の試料では、ヘパリンが低濃度で提供される。低濃度のヘパリンは、0.001から1U/mL、0.005から0.5U/mL、または0.01から0.25U/mLの量で提供されたヘパリンを含むことができる。一部の実施形態では、ヘパリンは、0.2U/mLの量で提供される。他の試料では、ヘパリンが高濃度で提供される。高濃度のヘパリンは、50から1000U/mL、75から750U/mL、または100から500U/mLの量で提供されるヘパリンを含むことができる。一部の実施形態では、ヘパリンは、100U/mLの量で提供される。本発明は、ヘパリンの任意の特定の体積に限定されない。一部の実施形態では、高濃度のヘパリンまたは低濃度のヘパリンは、体積が少なくとも約0.1〜25μL、少なくとも約0.5〜20μL、または少なくとも約1〜15μLの量で、試料に提供される。ある特定の実施形態では、生体試料は、体積が少なくとも約10μLである。
【0048】
(ドナー血小板からのセロトニン放出)
本方法は、ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートすることを含む。一部の実施形態では、インキュベートするステップは、室温で行われる。インキュベートするステップは、少なくとも30分間(例えば、少なくとも40分、少なくとも45分、少なくとも50分、少なくとも55分、または少なくとも60分)行うことができる。インキュベートするステップは、追加として、セロトニンの放出が容易になるように機械的動作を適用することを含むことができる。そのような機械的動作は、撹拌、振動、および振盪などを含むことができる。一部の実施形態では、インキュベートするステップは、セロトニンの放出反応を終わりにするために、試料に試薬を添加することをさらに含むことができる。反応を終わらせる試薬は、本明細書では、「停止試薬」と呼ぶことができる。一部の実施形態では、停止試薬は、カルシウム(Ca
2+)などの2価のイオンを結合するキレート剤を含む。例えば、停止試薬はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことができる。
【0049】
本発明の一部の実施形態では、インキュベートされた試料には、クロマトグラフ分離の前に1つまたは複数の加工ステップを行うことができる。例えば、一部の実施形態では、インキュベートされた試料を蒸発させることができる。次いで得られた残留物を、溶媒系に入れて元に戻すことができる。任意の適切な溶媒系を、残留物を元に戻すために使用することができる。一部の実施形態では、溶媒系は、クロマトグラフ分離に適合性のある溶媒系である。一部の実施形態では、元に戻すための溶媒系は、水、メタノール、またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の一部の実施形態では、インキュベートされた試料を、クロマトグラフ分離ステップの前に、部分的に精製することができる。例えば、インキュベートされた試料を遠心分離し、上澄みを収集して、試料を部分的に精製することができる。一部の実施形態では、本明細書でさらに記載される内部標準を、クロマトグラフ分離ステップの前に添加することができる。
【0051】
(セロトニンのクロマトグラフ的分離)
本方法は、液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離することを含んでいてもよい。本発明は、液体クロマトグラフィーを行う任意の特定の手法に限定されない。一般に、クロマトグラフ分離ステップは、少なくとも1つの液体クロマトグラフィー(LC)カラムを使用することを含んでいてもよい。一部の実施形態では、2つもしくはそれ超、または3つもしくはそれ超、または4つもしくはそれ超のLCカラムなど、多数のLCカラムを使用する。一部のそのような実施形態では、2、3、4、5、6、8、または10個のLCカラムが使用される。一部のそのような実施形態では、これらのLCカラムの2つまたはそれ超が互いに平行に配置構成され、同じ質量分析計にインライン接続される。
【0052】
本発明は、カラムの任意の特定のタイプに限定されない。セロトニンの分離に適切な任意のカラムを使用することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の分析カラムが使用される。一部のそのような実施形態では、1つまたは複数の逆相カラムが使用される。一部の実施形態では、本方法は、同じ質量分析計に接続された、平行な2つまたはそれ超の逆相カラムを用いる。
【0053】
さらに、本発明は、任意の特定の移動相に限定されない。任意の適切な移動相を、移動相が特定のLCカラムと共に使用するのに適切である限り、およびLCカラム内でセロトニンをクロマトグラフィーで分離するのに適切である限り、使用することができる。一部の実施形態では、移動相は、極性溶媒系である。極性溶媒系は、水、メタノール、アセトニトリル、または前述の2種もしくはそれ超の混合物を含むがこれらに限定されない、1種または複数の極性溶媒を含むことができる。一部のそのような実施形態では、移動相は、2種またはそれ超の溶媒の相対比が経時的に変化するように、勾配を用いる。
【0054】
上述のように、2つまたはそれ超のLCカラム(例えば、逆相カラム)を、平行にかつ同じ質量分析計にインライン接続して、例えばスループットを改善するために使用することができる。一部のそのような実施形態では、セロトニン含有試料(即ち、インキュベートされた試料)を、2つまたはそれ超のLCカラムに異なる時間で導入する。一部の実施形態では、2つまたはそれ超のLCカラムへの試験試料の導入は互い違いになされ、これは2つまたはそれ超のLCカラムへの試料の導入を切り離す、事前に決定された時間間隔があることを意味する。適切な時間間隔は、溶出時間、カラム化学、およびその他のLCカラムの1つまたは複数から溶出されたセロトニンの分析の妨害を回避する潜在的な必要性を含む、様々な要因に基づいて選択することができる。
【0055】
本発明の一部の実施形態では、1つまたは複数のLCカラムを、別のカラムと直列に配置することができる。例えば、一部の実施形態では、適切なガードカラムを用いることができる。ガードカラムは、試料中の化学不純物から分析カラムを保護するのに使用される、典型的には分析カラムから上流に取り付けられるカラムである。当業者なら、本発明の方法で使用するのに適切なガードカラムを選択することが可能である。一部の実施形態では、ガードカラムを別のLCカラムと平行に配置し、ガードカラムとLCカラムとは共に逆相カラムである。そのような直列の2つまたはそれ超のカラムを平行に配置構成して、各直列のカラムが2つまたはそれ超のカラムを含有する、平行に動作する2つまたはそれ超の直列のカラムが存在するようにすることもできる。
【0056】
(セロトニンの分析)
本方法は、質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析することにより、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、放出されたセロトニンの存在または量を決定することを含む。一部の実施形態では、LCカラムの2つまたはそれ超が、同じ質量分析計に流れ込む。一部のさらなる実施形態では、LCカラムの3つまたはそれ超が同じ質量分析計に流れ込む。一部の実施形態では、質量分析計が、合わせたLC−MSシステムの部分である。
【0057】
本発明は、質量分析計の任意の特定のタイプに限定されない。任意の適切な質量分析計を使用することができる。一部の実施形態では、本方法は、タンデム質量分析計を用いる。一部のそのような実施形態では、セロトニンを分析することは、セロトニンまたは標識セロトニンをイオン化すること、イオン化したセロトニンまたは標識セロトニンを分析すること、セロトニンまたは標識セロトニンを2つまたはそれ超のプロダクトイオンに断片化すること、およびプロダクトイオンを分析することを含む。本発明は、任意の特定のイオン化方法を使用する質量分析計に限定されない。任意の適切なイオン化を使用することができる。適切なイオン化方法には、光イオン化、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化、大気圧光イオン化、および電子捕獲イオン化が含まれるが、これらに限定されない。断片化を用いる実施形態では、任意の適切な断片化技法を使用することができる。適切な技法には、衝突誘起解離、電子捕獲解離、電子移動解離、赤外多光子解離、放射解離、電子脱離解離、および表面誘起解離が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
一部の実施形態では、タンデム質量分析計が、MDS−Sciex API5000三連四重極質量分析計である。一部の実施形態では、タンデム質量分析計は大気圧イオン化源を有し、分析するステップは、光イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子捕獲イオン化、電子イオン化、高速原子衝撃/液体二次イオン化(FAB/LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電場イオン化、電場脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、および粒子線イオン化からなる群から選択されるイオン化方法を含む。イオン化方法は、陽イオンモードであっても陰イオンモードであってもよい。分析するステップは、多数の反応のモニタリングまたは選択イオンモニタリング(SIM)を含んでいてもよく、2つまたはそれ超の生体分子が同時にまたは順次分析される。一部の実施形態では、分析するステップは、四重極分析計を使用する。一部の実施形態では、質量分析計は、三連四重極質量分析計である。三連四重極質量分析計を含む実施形態では、分析するステップは、第1の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを検出すること;第2の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを断片化して、1つまたは複数のセロトニン断片イオンをもたらすこと;および第3の四重極中の1つまたは複数のセロトニン断片イオンを検出することを含むことができる。
【0059】
一部の実施形態では、分析するステップは、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンをイオン化して、160.1±0.5の前駆体イオン、または115.1±0.5、132.1±0.5、105.1±0.5、もしくは89.1±0.5のプロダクトイオンの少なくとも1つを含む、質量/電荷比を有する1つまたは複数のセロトニンイオンを生成することを含む。一部の実施形態では、分析するステップは、セロトニンに関して、上に列挙したように多数の遷移を同時に測定することを含む。遷移比の測定は、報告される結果の測定値に信頼性を与える。2つの遷移の比を、較正物質の平均比と比較する。
【0060】
本方法は、一部の実施形態において、内部標準を使用することを含む。そのような実施形態では、内部標準は、クロマトグラフ分離ステップの前の任意の適切な点で導入することができる。任意の適切な内部標準を使用することができる。一部の実施形態では、内部標準は、安定な同位体で標識された形のセロトニンである。一部のそのような実施形態では、内部標準は、炭素13、窒素15、および/または重水素によって標識される。内部標準は、例えば、テトラ重水素化セロトニン(即ち、セロトニン−d4)とすることができる。
【0061】
一部の実施形態では、本方法は、試料中のセロトニンまたは標識セロトニンの存在または不在を決定するのに使用することができる。他の実施形態では、本方法は、試料中のセロトニンまたは標識セロトニンの量を決定するのに使用される。
【0062】
一部の実施形態では、本方法は、検出の任意の下限および/または上限によって限定されない。一部の実施形態では、本方法は、1ng/mLから1000ng/mL、または5ng/mLから750ng/mL、または10ng/mLから500ng/mLに及ぶ濃度で、試料(例えば、インキュベートされた試料)中のセロトニンまたは標識セロトニンを測定するのに使用することができる。
【0063】
上で論じたように、ある特定の場合には、アッセイの限られた態様は、血小板中に存在するセロトニンの内在量であることが見出されている。したがって別の態様では、本発明は、血小板にセロトニンが「スパイク」された試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法を提供する。特に、セロトニンまたは標識セロトニンは、提供するステップの前に、ドナー血小板と共にインキュベートすることができる。スパイクしている血小板は、得られるアッセイが高い分析感度を有し、得られるアッセイが既存の商業的に利用可能なセロトニン放出アッセイでの潜在的な誤差を決定することができ、かつアッセイが偽陽性および偽陰性を有効に区別することができるので、有益である。スパイクしている血小板の利益には、アッセイの高い分析感度が含まれる。
【0064】
一実施形態では、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法は、(a)生体試料、ヘパリン、およびセロトニンと共にインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;(b)血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;(c)液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;ならびに(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む。別の実施形態では、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法は、(a)生体試料、ヘパリン、および安定な同位体で標識されたセロトニンとインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;(b)血小板から安定な同位体で標識されたセロトニンが放出されるように、試料を所定時間の間インキュベートするステップ;(c)液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中の安定な同位体で標識されたセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離された安定な同位体で標識されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能な安定な同位体で標識されたセロトニンの総量に対する、試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む。
【0065】
全てのステップの特徴および実施形態は、直前に記述されている。上述のように、安定な同位体で標識されたセロトニンは、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、重水素化セロトニン、またはこれらの組合せとすることができる。
【0066】
図1に、例示的な目的で、3つの方法(即ち、正常と表示された、スパイクされていないもの;S−スパイクと表示された、セロトニンがスパイクされたもの;D4−Sスパイクと表示された、標識セロトニンがスパイクされたもの)を使用したセロトニンの放出パーセントの比較が示される。
図1は、未処理のセロトニンの血小板、スパイクセロトニンの血小板、およびD4スパイクセロトニンの血小板を使用してアッセイした12の試料と、後続の、三重にアッセイされた放出測定(精度バー参照)を表す。試料1および9は、HIT陰性であり、したがって全ての方法で一致し、試料11は、境界低陽性/未確定であり、その他全ての試料はHIT陽性であった。
図1は、HITの測定における、非スパイク、セロトニンスパイク、および標識セロトニンスパイクによる手法間での、臨床上の一致点を示す。
【0067】
(報告を作成する方法)
別の態様では、本発明は、異常な血小板活性化に関連した疾患または状態を診断するのに有用な報告を作成する方法であって、(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;(c)液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、試料中の放出されたセロトニンの量を決定するステップ;および(e)試料中のセロトニンの放出パーセンテージを述べた報告を作成するステッップを含む方法を提供する。
【0068】
ステップ(e)以外の全てのステップの特徴および実施形態は、直前に記述されている。上述のように、本方法は、同じ質量分析計に平行にインライン接続された1つ超のカラム、例えば2つまたはそれ超のカラムを用いることができる。
【0069】
本方法は、試料中のセロトニン(例えば、放出されたセロトニン)の量を述べた報告を作成するステップをさらに含む。放出されたセロトニンの量は、放出パーセントとして伝えることができる。一部の実施形態では、この情報は、ドナー試料中の利用可能な総セロトニンと比較して、生体試料中の放出されたセロトニンの濃度を決定するのに使用することができる。そのような情報から、対照がHITを有するか否かを評価することができる。
【0070】
本方法は、対象のヘパリン起因性血小板減少症を診断するために、低濃度のヘパリンおよび高濃度のヘパリンでのセロトニンの放出パーセントを相関させることを含むことができる。試料は、以下にさらに記載するように、「陰性」、「低陽性」、「陽性」、または「未確定」と表示することができる。アッセイは、患者の血清の存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。セロトニン放出は、放出されたセロトニンの量を測定し、放出されたセロトニンとドナー血小板中の利用可能な総セロトニンとを比較することによって決定される。ドナー血小板中の利用可能な総セロトニンは、内因性セロトニンを含むことができ、本明細書に記載されるように血小板にスパイクされるセロトニンを含むこともできる。
【0071】
陽性結果は、低用量(0.2IU/mL)ヘパリンの存在下で>20%の放出と、高用量(100IU/mL)ヘパリンの存在下で放出の阻害(低用量のヘパリンで測定された放出の50%もしくはそれ超の低減または20%未満)とを必要とする。
【0072】
試料は、低用量ヘパリンの存在下での放出パーセントが0〜20%であり、高用量ヘパリンの存在下での放出パーセントが20%未満である場合、「陰性」と表示される。これらの結果は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断とは反対の結果を示すが、診断を完全に排除するものではない。
【0073】
試料は、低用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが21〜30%であり、かつ高用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが20%未満である場合、「低陽性」と表示される。これらの結果は陽性であるが、カットオフの直上にあり、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリンの曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。
【0074】
試料は、低用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが31%超またはそれに等しく、かつ高用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが50%未満であり、または低用量ヘパリンの放出パーセントがドナー血小板内の利用可能な総セロトニンの20%未満である場合、「陽性」と表示される。結果は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断を裏付ける。
【0075】
試料は、高用量ヘパリンの結果が低用量ヘパリンの50%未満でない限り、低用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが20%超またはそれに等しく、かつ高用量ヘパリンの存在下で放出パーセントが20%超またはそれに等しい場合に「未確定」と表示される。低用量ヘパリンの存在下で>20%のセロトニン放出があったが、この反応は、高用量ヘパリンによって適切に阻害されなかった。これらの結果はヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断と一致しないが、診断を完全に排除するものではない。結果は、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリンの曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。
【0076】
図2は、対象のヘパリン起因性血小板減少症を診断するための、低濃度のヘパリンおよび高濃度のヘパリンでの、セロトニンの放出パーセントに関する測定値の関係のグラフ表示を提示する。
【0077】
(試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステム)
別の態様では、本発明は、試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;(c)液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むシステムを提供する。
【0078】
別の態様では、本発明は、試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、(a)生体試料、セロトニンとインキュベートされた血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;(c)液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むシステムを提供する。
【0079】
別の態様では、本発明は、試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、(a)生体試料、安定な同位体で標識されたセロトニンとインキュベートされた血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;(b)ドナー血小板から安定な同位体で標識されたセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;(c)液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中の安定な同位体で標識されたセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離された安定な同位体で標識されたセロトニンを分析して、試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むシステムを提供する。
【0080】
そのようなシステムは、試料中のセロトニンの存在または量を決定する方法に関する上述の内容に類似した、様々な実施形態およびサブ実施形態を含むことができる。
【0081】
これらのシステムは、様々なステーションを含む。本明細書で使用される「ステーション」という用語は、広く定義され、列挙される方法を実施するために適切な、任意の適切な装置または装置の集合体を含む。ステーションは、任意の特定の方法で互いに一体的に接続されまたは据えられる必要はない。本発明は、互いに対してステーションの任意の適切な配置構成を含む。例えばステーションは、同じ室内にある必要もない。一部の実施形態では、ステーションは、一体型ユニット内で互いに接続される。
【0082】
システムは、本明細書に記載の方法を使用して、生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーションを含むことができる。システムは、本明細書に記載の方法を使用して、ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーションを含むことができる。システムは、本明細書に記載の方法を使用して、液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーションを含むことができる。システムは、本明細書に記載の方法を使用して、質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むことができる。システムは、本明細書に記載の方法を使用して、異常な血小板活性化に関連した疾患または状態を診断するのに有用な報告を作成するためのステーションを含むことができる。
【0083】
(非限定的な実施形態)
非限定的な実施形態は、下記を含む:
1.試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;
ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法。
【0084】
2.生体試料が、血清試料または血漿試料である、パラグラフ1の実施形態。
【0085】
3.生体試料が、ヘパリンで処置した対象から得られる、パラグラフ1および/または2の実施形態。
【0086】
4.生体試料が、ヘパリン起因性血小板減少症であることが疑われる対象から得られる、パラグラフ1〜3のいずれかの実施形態。
【0087】
5.ドナー血小板が、少なくとも1名の健康と推定される対象から得られる、パラグラフ1〜4のいずれかの実施形態。
【0088】
6.試料中のドナー血小板が、洗浄され、部分的に精製される、パラグラフ1〜5のいずれかの実施形態。
【0089】
7.インキュベートするステップが、室温で行われる、パラグラフ1〜6のいずれかの実施形態。
【0090】
8.インキュベートするステップが、少なくとも30分間行われる、パラグラフ1〜7のいずれかの実施形態。
【0091】
9.提供するステップにおけるヘパリンが、0.001から1U/mLの量で存在する、パラグラフ1〜8のいずれかの実施形態。
【0092】
10.提供するステップにおけるヘパリンが、50から1000U/mLの量で存在する、パラグラフ1〜8のいずれかの実施形態。
【0093】
11.クロマトグラフィーで分離するステップの前に、インキュベートされた試料を内部標準と接触させるステップをさらに含む、パラグラフ1〜10のいずれかの実施形態。
【0094】
12.内部標準が、安定同位体標識された形のセロトニンである、11の実施形態。
【0095】
13.安定な同位体で標識された形のセロトニンが、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ12の実施形態。
【0096】
14.内部標準がセロトニン−d4である、パラグラフ13の実施形態。
【0097】
15.提供するステップにおけるドナー血小板が、提供するステップの前にセロトニンとインキュベートされた、パラグラフ1〜14のいずれかの実施形態。
【0098】
16.提供するステップにおけるドナー血小板が、提供するステップの前に、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せと共にインキュベートされた、パラグラフ1〜14のいずれかの実施形態。
【0099】
17.クロマトグラフィーで分離するステップの前に、インキュベートされた試料を部分的に精製するステップをさらに含む、パラグラフ1〜16のいずれかの実施形態。
【0100】
18.部分的に精製するステップが、インキュベートされた試料を遠心分離することを含む、パラグラフ17の実施形態。
【0101】
19.液体クロマトグラフィーを使用するステップが、分析液体クロマトグラフィーを使用することを含む、パラグラフ1〜18のいずれかの実施形態。
【0102】
20.分析液体クロマトグラフィーを使用することが、逆相カラムを使用することを含む、パラグラフ19の実施形態。
【0103】
21.液体クロマトグラフィーを使用することが、少なくとも1つのカラムを使用することを含む、パラグラフ1〜20のいずれかの実施形態。
【0104】
22.液体クロマトグラフィーを使用することが、平行な2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムを使用することを含み、2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムが単一の質量分析計にインライン接続されている、パラグラフ1〜21のいずれかの実施形態。
【0105】
23.平行な2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムを使用することが、インキュベートされた試料を、2つまたはそれ超の液体クロマトグラフィーカラムに時間をずらして導入することを含む、パラグラフ22の実施形態。
【0106】
24.分析するステップが、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化、および大気圧光イオン化からなる群から選択されるイオン化技法を使用して、セロトニンをイオン化することを含む、パラグラフ1〜23のいずれかの実施形態。
【0107】
25.分析するステップが、四重極質量分析計を使用してセロトニンを検出することを含む、パラグラフ1〜24のいずれかの実施形態。
【0108】
26.四重極質量分析計が、三連四重極質量分析計である、パラグラフ25の実施形態。
【0109】
27.分析するステップが、第1の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを検出すること;第2の四重極中のインタクトなセロトニンイオンを断片化して、1つまたは複数のセロトニン断片イオンをもたらすこと;および第3の四重極中の1つまたは複数のセロトニン断片イオンを検出することを含む、パラグラフ26の実施形態。
【0110】
28.分析するステップが、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンをイオン化して、160.1±0.5の前駆体イオン、または115.1±0.5、132.1±0.5、105.1±0.5、もしくは89.1±0.5のプロダクトイオンの少なくとも1つを含む質量/電荷比を有する1つまたは複数のセロトニンイオンを生成することを含む、パラグラフ1〜27のいずれかの実施形態。
【0111】
29.試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ヘパリン、およびセロトニンと共にインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;
血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法。
【0112】
30.試料中の放出された安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するための方法であって、
生体試料、ヘパリン、および安定な同位体で標識されたセロトニンと共にインキュベートされた血小板を含む試料を提供するステップ;
血小板から安定な同位体で標識されたセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中の安定な同位体で標識されたセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;および
質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離された安定な同位体で標識されたセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能な同位体標識セロトニンの総量に対する、試料中の放出された、安定な同位体で標識されたセロトニンの存在または量を決定するステップを含む方法。
【0113】
31.提供するステップの前の安定な同位体で標識されたセロトニンが、重水素標識セロトニン、炭素13標識セロトニン、窒素15標識セロトニン、酸素18標識セロトニン、またはこれらの組合せである、パラグラフ30の実施形態。
【0114】
32.異常な血小板活性化に関連した疾患または状態を診断するのに有用な報告を作成する方法であって、
(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するステップ;
(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするステップ;
(c)液体クロマトグラフィーを使用するステップであって、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するステップ;
(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離したセロトニンを分析するステップであって、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの量を決定するステップ;および
(e)試料中のセロトニンの放出パーセンテージを述べた報告を作成するステップを含む方法。
【0115】
33.疾患または状態が、ヘパリン起因性血小板減少症である、パラグラフ33の実施形態。
【0116】
34.試料中のセロトニンの存在または量を決定するためのシステムであって、
(a)生体試料、ドナー血小板、およびヘパリンを含む試料を提供するためのステーション;
(b)ドナー血小板からセロトニンが放出されるように、試料を所定期間の間インキュベートするためのステーション;
(c)液体クロマトグラフィーを使用して、インキュベートされた試料中のセロトニンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するためのステーション;および
(d)質量分析法によって、クロマトグラフィーで分離されたセロトニンを分析して、ドナー血小板内の利用可能なセロトニンの総量に対する、試料中の放出されたセロトニンの存在または量を決定するためのステーションを含むシステム。
【実施例】
【0117】
下記の実施例は、現在開示されている主題の代表的な実施形態を実施するために、当業者に指針を提供するよう含めている。本開示および当業者の一般的レベルに照らし、当業者なら、下記の実施例は単なる例示であり、現在開示されている主題の範囲から逸脱することなく数多くの変更例、修正例、および代替例を用いることができることを、理解することができる。
【0118】
(実施例1)
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断で使用されるセロトニン放出アッセイ(SRA)
セロトニンを、同位体希釈およびクロマトグラフ分離の後に、質量分析検出によって測定した。セロトニンに関する安定標識同位体を、内部標準として試料アリコートに添加した。沈殿溶液中の内部標準を試料アリコートに添加した後、試料を混合し、遠心分離し、酢酸エチルでさらに希釈し、次いでLC−MS/MSシステムに注入した。陽イオンエレクトロスプレーイオン化モードで動作するMDS−Sciex API5500三連四重極質量分析計を、検出用に使用した。分析物および内部標準の定量を、選択反応モニタリングモード(SRM)で行った。各試料中のセロトニンの逆算量は、公知の量の精製済みセロトニンを、1〜1000ng/mLのブランクの活性炭処理血清にスパイクすることによって作成した較正曲線から決定した。セロトニン放出パーセントを、血小板中の総セロトニンと、患者血清およびドナー血小板の存在下でのセロトニン放出とを使用して計算した。
【0119】
(検体)
推奨される試料は、0.5mL〜1.0mLの血清または血漿であった。血漿を、クエン酸デキストロース(ACD)を含有するチューブを使用して、成人または小児のヒトドナーから収集した。血清を、標準サンプリングチューブを使用して、成人または小児のヒト患者から収集した。
【0120】
(設備および材料)
下記の備品および機器を使用した:チップを備えたマニュアルピペットまたは有効自動化ピペット分取システム;クラスA容量ピペットおよびフラスコ;アソートガラス試薬ボトル;ボルテックスミキサー(VWR;Radnor、PA);マイクロプレートローターまたは均等物を備えた5804−R遠心分離(Eppendorf;Hamburg、ドイツ);穿孔容易なヒートシール箔(Fisher Healthcare;Waltham、MA);サーモマニュアルヒートシーラーALPS25または均等物(Thermo Scientific;Waltham、MA);96ウェルポリプロピレンディープウェルプレート(Phenomenex;Torrance、CA);API 5000タンデム質量分析計およびTurbo V(商標)イオン源、エレクトロスプレー付き(Sciex;Toronto、カナダ);8 1200SLシリーズ二元ポンプおよび4 1200シリーズ真空脱気装置からなるAria Transcend TX4システム(Thermo−Fisher;Waltham、MA);HTSツインPALシステムオートサンプラー(CTC Analytics AG、スイス);アナリストバージョン1.4またはそれ超(Applied Biosystems;Foster City、CA);Aria OSバージョン1.6またはそれ超(Thermo−Fisher;Waltham、MA);Ascentis Express HILICカラム、3cm×3.0mm、2.7μm(Sigma−Aldrich;St.Louis、MO);ヒートプレート(Fisher Scientific);ガラスPasteurピペット(Fisher Scientific;Waltham、MA);ポリスチレンマイクロタイタープレート(Thermo Scientific;Waltham、MA);タイタープレートシェーカー(Thermo Scientific;Waltham、MA);Big Shot IIハイブリダイゼーション炉(Boekel;Feasterville、PA);pH計(Metler Toledo;Columbus、OH);ならびに超音波処理機(Gen−Probe;San Diego、CA)。
【0121】
(試薬)
下記の試薬を使用した:D4−セロトニン(CDN Isotopes;Quebec、カナダ);セロトニン塩酸塩(Sigma;St.Louis、MO);水酸化ナトリウム10N(Fisher Scientific;Waltham、MA);塩酸(Fisher Scientific;Waltham、MA);CSS Mass Spec Gold(Golden West Biologicals;Temecula、CA);アルファー−D−グルコース(Aldrich;St.Louis、MO);塩化カルシウム(Sigma;St.Louis、MO);塩化マグネシウム(Sigma;St.Louis、MO);塩化ナトリウム(Sigma;St.Louis、MO);HEPES(Sigma;St.Louis、MO);リン酸ナトリウム(モノ)(Sigma;St.Louis、MO);塩化カリウム(Sigma;St.Louis、MO);アピラーゼ(Sigma;St.Louis、MO);クエン酸デキストロース溶液(Sigma;St.Louis、MO);ヘパリンナトリウム塩(Sigma;St.Louis、MO);Optima Water HPLCグレード(Fisher Scientific;Waltham、MA);ギ酸、>95%(Sigma−Aldrich;St.Louis、MO);アセトニトリル、HPLCグレード(Fisher Scientific;Waltham、MA);メタノール、HPLCグレード(Fisher Scientific;Waltham、MA);酢酸エチル(Fisher Scientific;Waltham、MA);エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(Fisher Scientific;Waltham、MA);およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Sigma;St.Louis、MO)。
【0122】
下記の溶液は、液体クロマトグラフィー用の移動相、洗浄緩衝液、および本方法で使用される試薬として調製した:
【0123】
針洗浄溶液1(0.1%ギ酸水溶液):ギ酸(1mL)を、1Lの試薬ボトルに入っているI型ミリポア水999mLに添加した。ボトルの内容物を十分混合し、室温で保存した。
【0124】
針洗浄溶液2(メタノール):メタノール(1000mL)をガラスボトルに移し、室温で保存した。
【0125】
ポンプA移動相(50:50 アセトニトリル:酢酸エチル):アセトニトリル(1000mL)および1000mLの酢酸エチルを、2Lのボトルに添加し、混合した。混合物を室温で保存した。
【0126】
ポンプB移動相(3%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム):約1.26グラムのギ酸アンモニウムを分析用天秤で秤量し、クラスAの2L容量フラスコに移した。フラスコの半分まで、ミリポア水を満たした。ギ酸(60mL)を添加し、その後、適切な量のミリポア水を添加して、2Lの溶液にした。溶液を十分混合し、室温で保存した。
【0127】
洗浄緩衝液調製用の溶液1:1.0リットルの容量フラスコに、8.0gのNaCl、0.2gのKCl、および0.4gのNaH
2PO
4を添加した。溶液を、Optima水で所望の体積にした。
【0128】
SRA洗浄緩衝液1:洗浄緩衝液1を400mL調製するために、洗浄緩衝液1の2つの個別の200mLフラスコを準備した。1つの200mLフラスコに関し、500単位のApyraseボトルの全内容物、約0.2gのグルコース、および約0.24gのHEPESを合わせた。適切な量の溶液1を添加して200mLにした。200mLのフラスコの両方を合わせ、合わせた溶液を、1N HClまたは1N NaOHを使用してpH6.3±0.05にした。溶液を冷蔵保存した。
【0129】
SRA洗浄緩衝液2:500mLのフラスコに、約0.1gのCaClおよび0.1gのMgClを添加し、その後、適切な量の溶液1を添加して500mLにした。溶液のpHを、1N HClまたは1N NaOHを使用して7.4±0.05に調節した。溶液を冷蔵保存した。
【0130】
高濃度ヘパリン溶液−1050IU/mL:高濃度ヘパリン溶液に関する成分の量を、以下に示す式に従い、使用される特定のヘパリンに関する分析証明書(C of A)のデータに基づいて計算した:
(秤量した量)×(U/mgの数(C of A))=単位の合計数
(単位の合計数)/1050IU/mL=XmLのOptima水
【0131】
例えば、秤量された材料の量が111.48mgであり、使用したヘパリンに関するC of Aが193U/mgであった場合、単位の合計数は21515.6Uであり、約20.5mLのOptima水を使用した。溶液を冷蔵保存した。
【0132】
低濃度ヘパリン溶液−2.1IU/mL:低濃度ヘパリン溶液を、高濃度(1050IU/mL)溶液から調製した。低濃度ヘパリン溶液を調製するために、高濃度ヘパリン(1050IU/mL)0.05mLを測定し、溶液を、Optima水を使用して25mLの最終体積にした。溶液を冷蔵保存した。
【0133】
使用内部標準溶液:d4−セロトニンを秤量して、50:50のMeOH:H
2Oで1mg/mLの上部ストックを生成した。上部ストック(0.25mL)を、100%アセトニトリル1リットルに添加した。溶液を冷蔵保存した。
【0134】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS):PBS溶液を調製するため、1パックのPBSを、ミリポア水1リットル当たりに使用した。PBSに0.5%EDTAを加えたもの1リットルを調製するために、EDTA 5gをPBS溶液に添加し、溶液を15分間超音波処理した。
【0135】
SRA停止試薬:セロトニン放出アッセイ(SRA)用の停止試薬は、0.5%のEDTAをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に加えたものであった。試薬を調製するために、5gのEDTAをフラスコに添加し、PBS溶液を添加して、最終体積1リットルにした。溶液を室温で保存した。
【0136】
(較正)
較正物質を、メタノールにセロトニン(1mg/mL)を溶かしたストック溶液から調製した。下記の濃度(単位ng/mL):活性炭処理血清中、1、2、10、25、100、250、および500を有する標準物質を調製した。標準物質を、−70℃で保存した場合、栓をしたチューブ内で最長1年保存した。
【0137】
(品質対照(QC))
分析QC:活性炭処理血清およびプール血清を、品質対照調製の前にスクリーニングした。全てのQCの、サブアリコートを計量し、−70℃で保存した。QC1(約3ng/mL)を調製するために、上部ストック3 60μLをフラスコにピペット分取し、溶液を、活性炭処理血清(CSS)を使用して100mLの最終体積にした。QC2(約200〜400ng/mL)を調製するために、上部ストック4 100μLをフラスコにピペット分取し、溶液を、活性炭処理血清(CSS)を使用して100mLの最終体積にした。
【0138】
生体QC:生体QCを調製するために、予め実行したHIT ELISA試料を検討した。1.5ODよりも大きいまたはそれに等しい結果を持つ、HIT ELISAによって予め分析した試料を選択し、QC試料Prepマイクロタイタープレートで実行した。陰性(≦20%)結果を持つ試料を一緒にプールして、生体QC1陰性を創出した。高(High)(≧75%)の結果を持つ試料を一緒にプールして、生体QC2高(HIgh)を創出した。全てのQCの、サブアリコートを計量し、−70℃で保存した。
【0139】
(ドナー手順)
(ドナースクリーニングのための血小板洗浄プロトコール)
血小板を、ドナースクリーニングのための下記のプロトコールに従い洗浄した:血液をドナーからACDチューブに引き出し、チューブを反転させて内容物を混合した(8〜10mlの血小板 プレート当たり約4チューブ)。チューブを1200rpmで10分間遠心分離した。血小板リッチの血漿(PRP)を、小型ピペットバルブを備えたガラスパスツールピペットを使用して取り出した。追加のACD(111μL)を、血漿mLごとに添加した。チューブを反転させて内容物を混合した。16×100ポリプロピレンチューブを使用して、プレートQC用のPRPチューブを合わせた。PRPを2400rpmで15分間遠心分離し、ラインをチューブの外に引き出して、血漿の液体レベルを示した。血小板に乏しい血漿を注ぎ出し、廃棄した。血小板ペレットを、チューブに予め引き出されたラインに洗浄緩衝液1を添加することにより、SRA洗浄緩衝液1に再懸濁した(室温で)。血小板ペレットを再懸濁するために、内容物を、使い捨てピペットを使用して穏やかに吸引し吐出させた。再懸濁した血小板を、37℃で15分間インキュベートし、チューブを2400rpmで15分間遠心分離した。得られた上澄みを注ぎ出し、廃棄した。血小板ペレットを、チューブ上に予め引き出されたラインに洗浄緩衝液を添加することによって、SRA洗浄緩衝液2に再懸濁した。チューブを反転させ、使い捨てのピペットを使用して穏やかに吸引し、吐出させて、血小板ペレットを再懸濁した。チューブを45分間、37℃でインキュベートした。血小板懸濁液を検査して、凝塊または凝集物の形成がないことを確認した。
【0140】
(マイクロタイタープレート用のドナー血小板試料の調製)
予めスクリーニングした試料(2陰性および3陽性)(250μL)を、清浄なチューブ内に置き、チューブに栓をした。同じステップを、生体QC(陰性および高(High))に関して行った。試料体積250μLが、プレート当たりのものであった(例えば、2つのプレートは、患者試料500μLを必要とした)。チューブを56℃で30分間インキュベートし、3600rpmで10分間回転させた。
【0141】
各患者ごとに、下記の成分を1列中3つのウェルに添加することによって、ひと組の測定値を作成した。ひと組のうちの第1および第2のウェルのそれぞれに、低濃度(2.1IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。ひと組のうちの第3のウェルに、高濃度(1050IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。次いで試料20μLを各ウェルにピペット分取し、チューブの底から引き出されないように注意を払った。試験される各ドナーおよびプレートのQCの、陰性(即ち、試料なし)ウェルでは、洗浄緩衝液2を使用した。
【0142】
血小板溶液をピペット分取する前に、血小板溶液の品質を、チューブを反転させて溶液を穏やかに混合することにより確かめた。各ドナーごとに準備した血小板(75μL)を全てのウェルにピペット分取した。各ドナーは、個人としておよびプールとして、5名の患者を試験した。ウェルを、箔を使用して封止し、プレートを、回転振盪機上に室温(RT)および設定5で60分間置いた。SRA停止試薬(100μL)を添加し、ウェルを、箔を使用して封止した。プレートを、回転振盪機上にRTおよび設定5で15秒間置いた。次いで内容物を3700rpmで5分間回転させた。次いで以下に記載する分析手順を行った。
【0143】
(患者手順)
(患者試料に関する血小板洗浄プロトコール)
血小板を、ドナースクリーニングのための下記のプロトコールに従って洗浄した:血液を、ドナーからACDチューブに引き出し、チューブを反転させて内容物を混合した(8〜10mlの血小板 プレート当たり約4チューブ)。チューブを1200rpmで10分間遠心分離した。血小板リッチの血漿(PRP)を、小型ピペットバルブを備えたガラスパスツールピペットを使用して取り出した。追加のACD(111μL)を、血漿mLごとに添加した。チューブを反転させて、内容物を混合した。16×100ポリプロピレンチューブを使用して、PRPチューブを、ACDを添加した後に合わせた。PRPを2400rpmで15分間遠心分離し、ラインをチューブの外に引き出して、血漿の液体レベルを示した。血小板に乏しい血漿を注ぎ出し、廃棄した。血小板ペレットを、チューブに予め引き出されたラインに洗浄緩衝液1をラインに添加することによって、SRA洗浄緩衝液1に再懸濁した(室温で)。血小板ペレットを再懸濁するため、内容物を、反転および吸引することによって穏やかに混合した。再懸濁した血小板を、15分間37℃でインキュベートし、チューブを2400rpmで15分間遠心分離した。得られた上澄みを注ぎ出し、廃棄した。血小板ペレットを、チューブに予め引き出されたラインに洗浄緩衝液を添加することにより、SRA洗浄緩衝液2に再懸濁した。チューブを反転させ、穏やかに吸引し、吐出して、血小板ペレットを再懸濁した。チューブを、45分間、37℃でインキュベートした。血小板懸濁液を検査して、凝塊または凝集物の形成がないことを確かめた。血小板溶液は、2時間にわたりそのままの状態で、室温で安定であった。
【0144】
(マイクロタイタープレート用の患者試料の調製)
患者血清(200μL)を得、清浄なチューブに入れた。チューブに栓をした。同じステップを、QC試料に行った。チューブを56℃で30分間インキュベートし、10分間、3600rpmで回転させた。
【0145】
QC試料では、マイクロタイタープレート内でひと組の測定値(0.2、0.2、および100)を作成した。各患者ごとに、下記の成分を、1列中4つのウェルに添加した。4つのひと組のうちの第1のウェルのそれぞれに、Optima水10μLをピペット分取した。ひと組のうちの第2および第3のウェルのそれぞれに、低濃度(2.1IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。ひと組のうちの第4のウェルのそれぞれに、高濃度(1050IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。次いで、試料(単数または複数)20μLを、患者ウェルおよび生体QCウェルを含む各ウェルにピペット分取し、チューブの底から引き出されないよう注意を払った。陰性(即ち、試料なし)ウェルでは、洗浄緩衝液2を、20μLの患者試料の代わりに使用した。
【0146】
血小板溶液をピペット分取する前に、血小板溶液の品質を、チューブを反転させて溶液を穏やかに混合することによって確かめた。洗浄緩衝液2(75μL)を、患者試料の組の第1のウェルにピペット分取した。血小板溶液(75μL)を、その他全てのウェルにピペット分取した。ウェルを、箔を使用して封止し、回転振盪機上に60分間、室温(RT)および設定5で置いた。SRA停止試薬(100μL)を添加し、ウェルを、箔を使用して封止した。プレートを、回転振盪機上に、15秒間、RTおよび設定5で置いた。次いで内容物を3700rpmで5分間回転させた。次いで以下に記載する分析手順を行った。
【0147】
(分析手順)
血小板溶液のチューブを、チューブを反転させることによって穏やかに混合した。ブランク、較正物質、品質対照、および血小板溶液(それぞれ100μL)を、適切なウェルにピペット分取した。試料(100μL)をマイクロタイタープレートから除去し、96ディープウェルプレートに添加した。二重ブランクでは、ブランクマトリックス100μLおよびアセトニトリル300μLを添加した。次いで200ng/mLのセロトニン−d4をアセトニトリルに加えたもの300μLを、添加した。内容物を2500rpmで10分間渦動させ、3700rpmで10分間遠心分離した。次いで内容物(150μL)を、清浄なプレートに移した。酢酸エチル(150μL)を全てのウェルに添加した。プレートを箔で封止し、2500rpmで10秒間渦動させ、3700rpmで15秒間遠心分離した。得られた試料(20μL)を、LC−MS/MS分析のためLC−MS/MSシステムに注入した。
【0148】
(マイクロタイタープレート用の生体QC試料の調製)
患者試料(200μL)を得、清浄なチューブ内に入れ、チューブに栓をした。同じステップを、生体QC(陰性および高)に関して行った。チューブを56℃で30分間インキュベートし、3600rpmで10分間回転させた。ひと組の測定値を、3つのウェルを使用することによって同じ患者に関して作成した。ひと組のうちの第1および第2のウェルのそれぞれに、低濃度(2.1IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。ひと組のうちの第3のウェルのそれぞれに、高濃度(1050IU/mL)ヘパリン10μLをピペット分取した。次いで試料20μLを、各ウェルにピペット分取した。
【0149】
血小板溶液のチューブを、チューブを反転させることによって穏やかに混合した。準備した血小板(75μL)を、全てのウェルにピペット分取した。ウェルを箔で封止し、回転振盪機上に60分間、室温および設定5で置いた。SRA停止試薬(100μL)を添加し、プレートを箔で封止した。プレートを、回転振盪機上に、15秒間、RTおよび設定5で置き、3700rpmで5分間回転させた。
【0150】
(結果の報告)
このアッセイの単位は、放出パーセント(放出%)である。放出パーセントは、血小板中の総セロトニンと、患者血清およびドナー血小板の存在下でのセロトニン放出とを使用して計算する。特に、放出パーセントは、患者試料およびドナー血小板の存在下でのセロトニン放出を、アッセイで使用されたドナー血小板中のセロトニンまたは標識セロトニンの総量で割った比である。
【0151】
結果は、0.2IU/mLおよび100IU/mLの放出パーセントとして報告する。
【0152】
このアッセイに関する定量下限(LLOQ)は1ng/mLである。定量上限(ULOQ)は1000ng/mLである。十分な検体が、報告するのに利用できない場合、「QNSR」が示される。この略称は、結果を検証するのに不十分な検体であるという理由を知らしめる。
【0153】
(結果の解釈)
結果を、低用量ヘパリンアッセイ(即ち、低ヘパリン放出パーセントまたは低放出)および高用量ヘパリンアッセイ(即ち、高ヘパリン放出パーセントまたは高放出)に関するセロトニン放出パーセント値に基づいて解釈した。低および高ヘパリン放出パーセントに基づく解釈は、表1における表形式で、および
図2のグラフで表示される。
【表1】
【0154】
表1に示されるように、かつ
図2に図示されるように、低用量ヘパリンアッセイに関するセロトニン放出パーセント値は、20パーセントまたはそれ未満であり、その解釈は、高用量ヘパリンアッセイの結果とは無関係に、陰性であった。低用量ヘパリンアッセイに関するセロトニン放出パーセント値が20パーセント超であった全ての場合、低用量ヘパリンアッセイと高用量ヘパリンアッセイとに関するセロトニン放出パーセント値の関係を使用して、その解釈を決定した。低用量ヘパリンアッセイに関する全ての可能性あるセロトニン放出パーセント値では、対応する陽性対未確定閾値も、表にした。高放出アッセイの結果が表にした数値未満またはそれに等しい場合、その解釈は、「低陽性」(低放出21〜30%)または「陽性」(低放出>30%)のいずれかであった。高放出アッセイの結果が、測定された低放出アッセイに関して表にされた数値よりも大きい場合、その解釈は「未確定」であった。
【0155】
(陰性結果)
上述のように、低ヘパリン放出パーセントが0〜20%である場合、SRA結果は「陰性」であった。これらの結果はヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断と相反するが、診断を完全に排除するものではない。結果は、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、先のヘパリン曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。アッセイは、患者の血清およびヘパリンの存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。陽性結果は、低用量(0.2IU/mL)ヘパリンの存在下での>20%放出と、高用量(100IU/mL)ヘパリンの存在下でのセロトニン放出の阻害を必要とする。
【0156】
(低陽性結果)
低ヘパリン放出パーセントが21〜30%であり、かつ高ヘパリン放出パーセントが0〜20%である場合、SRA結果は「低陽性」であった。これらの結果は陽性であり、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断を裏付けると考えられるが、それらはカットオフの直上にあり、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリンの曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。アッセイは、患者の血清およびヘパリンの存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。低陽性結果は、低用量(0.2IU/mL)ヘパリンの存在下での21〜30放出パーセントと、高用量(100IU/mL)ヘパリンの存在下でのセロトニン放出の阻害とからなる。
【0157】
(陽性結果)
低ヘパリン放出パーセントが31〜40%であり、かつ高ヘパリン放出パーセントが0〜20%であった場合、SRA結果は「陽性」である。追加として、低ヘパリン放出パーセントが40%超(即ち、>40%)であり、かつ高ヘパリン放出パーセントが、低ヘパリン放出パーセントに0.5を乗じた値未満またはそれに等しい場合(即ち、≦(低ヘパリン放出パーセント×0.5))、SRA結果は「陽性」であった。患者の血清は、SRAによって陽性と判断され、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断を裏付ける。アッセイは、患者の血清およびヘパリンの存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。陽性結果は、低用量(0.2IU/mL)ヘパリンの存在下で20%超の放出と、高用量(100IU/mL)ヘパリンの存在下での放出の阻害とを必要とする。結果は、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリンの曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。
【0158】
(未確定の結果)
低ヘパリン放出パーセントが21〜40%であり、かつ高ヘパリン放出パーセントが20%超(即ち、>20%)である場合、SRA結果は「未確定」であった。追加として、低ヘパリン放出パーセントが40%超(即ち、>40%)であり、かつ高ヘパリン放出パーセントが、低ヘパリン放出パーセントに0.5を乗じた値よりも大きい場合(即ち、>(低ヘパリン放出パーセント×0.5))、SRA結果は「未確定」であった。アッセイは、患者の血清およびヘパリンの存在下、ドナー血小板からのセロトニン放出を測定する。陽性結果は、低用量(0.2IU/mL)ヘパリンの存在下で20%超の放出と、高用量(100IU/mL)ヘパリンの存在下での放出の阻害とを必要とする。低用量ヘパリンの存在下で20%超のセロトニン放出があったが、この反応は、高用量ヘパリンによって適切に阻害されなかった。これらの結果はヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断と一致しないが、診断を完全に排除するわけではない。結果は、その他のHITアッセイ、ならびに血小板数、投与されるヘパリンのタイプ、ヘパリン曝露の持続時間、以前のヘパリンの曝露、および任意の血栓症履歴を含む全ての臨床情報の文脈と併せて解釈されるべきである。この反応の複合体は、循環する免疫複合体、高力価HLAクラス1抗体および/またはその他の血小板活性化因子に起因すると考えられる。
【0159】
(実施例2)
陽性HIT決定
生体試料を、実施例1の手順に従い、HITに関して試験した。試料は、生体試料を添加していない本明細書に記載の方法による分析を通して決定された血小板内で利用可能な総セロトニン(100%)に対し、0.2U/mLヘパリンでの27%セロトニン放出と、100U/mLヘパリンでの放出の阻害を示した(
図3参照)。
図3の左上のパネルに示されるように、生体試料および緩衝液中の内因性セロトニンレベルは、1.2ng/mLである。
図3の中上パネルは、生体試料および0.2U/mLヘパリンを示す。約60.4ng/mLのセロトニンを、試料中で測定した。
図3の右上のパネルは、生体試料および100U/mLヘパリンを示す。約0.2ng/mLのセロトニンを、試料中で測定した。試料および0.2U/mLヘパリン中のセロトニン放出パーセントは27%であった。生体試料は、HITに関して陽性と決定された。
【0160】
60.4ng/mLのセロトニンが存在する場合の陽性放出クロマトグラムを、1ng/mLのセロトニンが存在する場合のLLOQクロマトグラムと比較した。
図4に示されるように、アッセイは、1ng/mL程度に低いレベルのセロトニンを検出することが可能である。
【0161】
(実施例3)
遷移比の評価
遷移比の評価は、試料中の、定性的遷移の面積応答を定量的遷移の面積応答で割り(即ち、遷移比)、その値を、同じバッチからの較正物質(較正物質1は除外)で測定された平均遷移比と比較することによって行った。遷移比の評価に関するデータは、定量化された結果の表からまとめた。検証中に確立された合否基準は、分析物に関して提供した(表2参照)。濃度特異的な合否基準を自動化された手法で利用することができない場合には、全ての試料に関して推奨される合否基準(即ち、濃度に依存しない)をバックアップとして提供した。
【表2】