(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-108507(P2021-108507A)
(43)【公開日】2021年7月29日
(54)【発明の名称】永久磁石式スピンドルモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20210702BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20210702BHJP
【FI】
H02K1/27 501M
H02K1/27 501C
H02K21/14 M
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-238696(P2019-238696)
(22)【出願日】2019年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張哲▲うぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑞濱
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA02
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA01
5H621HH01
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
5H622CB02
5H622CB03
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】 本発明は永久磁石式スピンドルモータを得ることにある。
【解決手段】 本発明が提供する永久磁石式スピンドルモータは、回転子中に位置する複数の磁石群が特定の空間形態を有し、磁束を集中させることで回転速度が向上する効果を実現しており、そのうち、各磁石群はそれぞれ2つの第1磁石を有し、それらは回転子の管状回転軸の直径を鏡映軸として互いに鏡映されて回転軸中に各々形成されており、孔状を呈する2つの磁気障壁空間が回転軸に貫通形成され、各々は回転軸の回転軸外環面と各第1磁石の間の部分に位置しており、且つ各々は各第1磁石の鏡映軸から離れた最遠端の近くで回転軸の軸方向に沿って回転軸の軸方向の両端に延在して貫通している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子本体部を有し、前記固定子本体部の内側環面に複数の固定子スロットが各々形成された固定子と、
管状の回転軸を有し、前記固定子本体部中に同軸で穿伸され、且つ前記回転軸の内径が前記回転軸の外径の半分である回転子と、を含み、
前記スロットよりも数が少ない複数の磁石群が前記回転軸の円周に沿って順に前記回転軸中に各々形成され、各々が前記回転軸の半径方向に沿った断面が長手形状を呈する2つの第1磁石を有しており、前記2つの第1磁石は前記回転軸の直径を鏡映軸として互いに鏡映されて前記回転軸内に対称に埋設され、且つ前記2つの第1磁石の長軸と前記鏡映軸の間は前記回転軸の中心に向かう方向上において鋭角角度で離れており、孔状を呈する2つの磁気障壁空間が各々前記回転軸の前記回転軸外環面と各前記第1磁石の間の部分に位置しており、且つ各々は各前記第1磁石の前記鏡映軸から離れた最遠端の近くで前記回転軸の軸方向に沿って前記回転軸の軸方向の両端に延在して貫通している、永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項2】
各前記磁石群の各々が各前記第1磁石の間に位置する第2磁石をさらに含む、請求項1に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項3】
各前記磁石群中、前記第2磁石の中心が前記鏡映軸の軸方向上に位置する、請求項2に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項4】
各前記磁石群中、前記第2磁石の両側と各前記第1磁石の間が離されている、請求項2又は請求項3に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項5】
各前記磁石群中、前記回転軸の半径方向に沿った断面方向において、前記第2磁石の長さが各前記第1磁石の長さよりも短い、請求項2又は請求項3に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項6】
各前記磁石群中、各前記第1磁石同士が互いに離されている、請求項1に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項7】
前記回転子は各前記磁石群の数と同じ数の収容空間を有し、前記収容空間は前記回転軸に各々形成され、各前記磁石群が収容されて設けられている、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項8】
各前記収容空間が各々単一の貫通孔であり、前記回転軸に貫通形成されている、請求項7に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項9】
前記回転軸の内径が前記回転軸の外径の0.6〜0.8倍である、請求項1に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【請求項10】
前記固定子スロットの数が前記磁石群の数の6倍〜10倍である、請求項1に記載の永久磁石式スピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに係り、特に永久磁石式スピンドルモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
良好な加工精度を得るには、工作機械に使用するスピンドル(spindle)が高回転精度、高回転数、幅広い回転数範囲、高剛性、低温度及び高い信頼性を具備していなければならない。スピンドルが上述の性能を具備するか否かを左右する要素は一概には言えないが、スピンドルを回転させる動力源であるスピンドルモータ(spindle motor)が重要な地位を占めていることは否定できない。
【0003】
誘導式モータと比較した場合、永久磁石式モータは、より幅広い回転数範囲(constant power speed ratio,CPSR)、より良好な効率及び低い回転数での高い出力トルクを有しており、駆動するスピンドルを工作機械の高速且つ精密な加工により適したものとならせる。一方で、モータのトルク性能がスピンドルの回転状態に及ぼす影響は極めて大きく、例えば、リップルの大きさは工作機械の加工の挽き目に影響し、トルクの大きさは工作機械が再切削を行うかどうかの程度に影響し、回転数の大きさは工作機械の加工効率に影響する。工作機械の産業分野においては、こうしたモータの出力性能の違いにより生じる差異が強調され、スピンドルの回転性能に重大な影響を及ぼしてしまう。たとえ異なるモータ同士の差異がわずかであっても、工作機械に使用した場合には、わずかな差異によって重大な違いが生じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に鑑み、回転速度範囲を向上させて工作機械の作業効率を高めることができる、永久磁石式スピンドルモータを提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明が提供する永久磁石式スピンドルモータは、回転子中に位置する複数の磁石群が特定の空間形態を有し、磁束を集中させることで回転速度が向上する効果を実現しており、そのうち、各磁石群はそれぞれ2つの第1磁石を有し、それらは回転子の管状回転軸の直径を鏡映軸として互いに鏡映されて回転軸中に各々形成されており、孔状を呈する2つの磁気障壁空間が回転軸に貫通形成され、各々は回転軸の回転軸外環面と各第1磁石の間の部分に位置しており、且つ各々は各第1磁石の鏡映軸から離れた最遠端の近くで回転軸の軸方向に沿って回転軸の軸方向の両端に延在して貫通している。
【0006】
各磁石群中、各第1磁石の回転軸の半径方向に沿った断面形状は長手形状を呈しており、且つ長軸と鏡映軸は回転軸の中心に向かう方向上において鋭角で離れている。
【0007】
そのうち、各磁石群は各々がさらに第2磁石を含み、それらは各第1磁石の間に位置するように回転軸中に埋設されている。
【0008】
各磁石群中、第2磁石の中心は鏡映軸に対応しており、且つ長さは各第1磁石よりも短い。
【0009】
そのうち、回転軸の内径と外径の比率は0.6:1〜0.8:1であり、スピンドルモータが直径の大きな工作機械のスピンドルを駆動できるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好ましい実施例の平面概略図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例における磁石群及び回転子の立体図である。
【
図3】本発明の好ましい実施例の部分平面図である。
【
図4A】本発明の好ましい実施例の磁力線図である。
【
図4B】比較用の永久磁石モータの磁力線図である。
【
図5】本発明と比較用永久磁石モータの円線図(circle diagram)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例]
最初に、
図1〜
図3を参照して、本発明の好ましい実施例で提供する永久磁石式スピンドルモータ(10)は、主に固定子(20)、回転子(30)及び複数の磁石群(40)を含む。
【0012】
固定子(20)は環状を呈する固定子本体部(21)を有し、固定子本体部(21)の内側環面には複数の固定子スロット(22)が各々放射状に凹設されて、コイル巻線を収容する空間として用いられ、そのうち、コイル巻線は分布巻であるのが好ましい。
【0013】
回転子(30)は回転軸(31)及び磁石群の数と同じ数の収容空間(32)を有する。回転軸(31)は直管状を呈しており、且つ内径寸法は外形寸法の0.6倍〜0.8倍の間であり、管壁の厚さは管孔の半径よりも薄い。各収容空間(32)は各々が単一の孔状を呈しており、互いに回転軸(31)の環周に沿って順に等間隔に離されつつ、回転軸(31)の軸方向の両端間に各々直線的に貫通形成され、且つ回転軸(31)に対応する半径方向において折れ曲がった長手形状を呈している。
【0014】
各磁石群(40)は各々が2つの第1磁石(41)、第2磁石(42)及び2つの磁気障壁空間(43)を有しており、各々は対応する収容空間(32)に各第1磁石(41)及び第2磁石(42)が填装され、回転軸(31)内に埋め込まれている。さらに、各磁石群(40)中、第1磁石(41)同士は回転軸(31)の直径を鏡映軸(L1)として互いに鏡映されて回転軸(31)中に埋設され、且つ各第1磁石(41)の鏡映軸(L1)に近い最近端(411)は互いに離されている。第2磁石(42)は各第1磁石(41)の間に位置するように回転軸(31)中に埋設され、且つ第2磁石(42)の中心位置は鏡映軸(L1)上に位置している。そのうち、各第1磁石(41)の回転軸(31)の半径方向断面に対応する長手形状の長軸(L2)と鏡映軸(L1)の間は、回転軸(31)の中心に向かう方向上において鋭角角度(α)で離れており、且つ第2磁石(42)の回転軸(31)の半径方向断面に対応する長手形状の長軸(L3)は鏡映軸(L1)に対して垂直であり、第2磁石(42)の長さは各第1磁石(41)の長さよりも短い。各磁気障壁空間(43)は、各々が孔状を呈しており、それぞれ回転軸(31)の軸方向に沿って回転軸(31)の軸方向の両端間に貫通形成されており、且つ各々は各第1磁石(41)の長軸方向で鏡映軸(L1)から離れた最遠端(412)に近く、且つ隣接する第1磁石(41)と回転軸(31)の外環面との間に位置している。
【0015】
上述の部材中、回転子(30)は固定子(20)中に穿伸され、且つ回転軸(31)の外径が固定子本体部(21)の内径よりも小さいため、回転軸(31)の外側環面と固定子本体部(21)の内側環面との間に環状の空隙空間が形成される。同時に、本実施例で挙げた例ではさらに、各磁石群(40)がある角度範囲内に対応する固定子スロット部の数は6であり、即ち各固定子スロット(22)の数は磁石群(40)の数の6倍であるが、この数値は説明のために開示したに過ぎず、決して本発明を限定するものではない。例えば上述の6倍を6倍〜10倍に変更することなどは、いずれも本発明に対する簡単な変更に過ぎない。
【0016】
効果については、永久磁石式スピンドルモータ(10)の主な技術的特徴の1つは、磁束の集中に対して磁気障壁空間(43)が提供する効果であり、これに関しては、
図4Aに示す永久磁石式スピンドルモータ(10)の磁力線図、及び
図4Bに示す磁気障壁空間を持たない比較用のスピンドルモータの磁力線図を参照すると、磁力線によって示された差異が分かるが、永久磁石式スピンドルモータ(10)は、磁束の集中効果を有しており、高いトルク及び高い回転速度を提供してスピンドルの使用ニーズを満足させることができる。さらに、
図5の円線図(circle diagram)では、永久磁石式スピンドルモータ(10)が提供可能な作業の回転速度範囲(C1)が示されているが、
図4Bに示した比較用スピンドルモータの回転速度範囲(C2)よりも大きく、本発明が開示する永久磁石式スピンドルモータが使用においてトルクの向上及び高回転数という実際の効果を確かに有し、まさに工作機械のスピンドルに求められる条件を満たしていることが一目瞭然であり、本発明が提供する技術は特にスピンドルモータに適していることが分かる。
【0017】
特に説明すべき別の点として、上述の実施例における磁石群中には、第1磁石以外に第2磁石も含まれているが、産業上の実施や使用においては、第2磁石は省略してもよく、磁石群が第2磁石を持たない場合と上述で開示したものとで達成可能な効果に顕著な差異はないが、磁石群が第2磁石を持たない場合には、回転軸の限りある体積を有効活用するため、互いに鏡映された2つの第1磁石の最近端同士の距離を縮めることができる。
【符号の説明】
【0018】
10 永久磁石式スピンドルモータ
20 固定子
21 固定子本体部
22 固定子スロット
30 回転子
31 回転軸
32 収容空間
40 磁石群
41 第1磁石
411 最近端
412 最遠端
42 第2磁石
43 磁気障壁空間
L1 鏡映軸
L2 第1磁石の長軸
L3 第2磁石の長軸
α 第1磁石の長軸と鏡映軸の夾角
C1 本実施例の回転速度範囲
C2 対照群の回転速度範囲