前記標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、次を含む。第1結合器と第2結合器を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の両端に接続し、核酸テンプレートを形成し、第1結合器はY型結合器又はヘアピン型(hair−pin)結合器を含み、且つ第2結合器はヘアピン型結合器である。次に、核酸テンプレートに対してPCR増幅サイクルを行い、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを取得する。
(a)第1結合器と第2結合器を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の両端に接続して、核酸テンプレートを形成し、前記標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖及び逆方向鎖を含み、前記第1結合器は、Y型結合器又はヘアピン型(hair−pin)結合器を含み、且つ前記第2結合器は、ヘアピン型結合器であり、
(b)前記核酸テンプレートに対して変性反応を行い、
(c)前記標的ヌクレオチド配列でPCR増幅を実行し、第1プライマー、第2プライマー、DNAポリメラーゼを前記核酸テンプレートに接触させ、前記第1プライマーは、前記順方向鎖の近くの前記第1結合器に特異的にアニーリングした第1配列を含み、第2プライマーには逆方向鎖の近くの第1結合器に特異的にアニーリングした第2配列を含み、
(d)ステップ(c)を繰り返して、1つ又は複数回のPCR増幅サイクルを実行し、前記標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを得る、
ステップを含む、標的ヌクレオチド配列を増幅する方法。
前記核酸テンプレートに対して前記変性反応を行うステップは、前記核酸テンプレートを重亜硫酸塩処理に供することを含む、請求項1に記載の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法。
前記増幅は、ローリングサークル増幅(Rolling circle amplification,RCA)である、請求項6に記載の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法。
前記ローリングサークル増幅は、少なくとも1つの相補プライマーを使用し、前記相補プライマーは、前記標的ヌクレオチド配列と相補的である、請求項7に記載の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法。
前記ローリングサークル増幅が少なくとも1つの相補プライマーを使用し、前記相補プライマーは、前記第1結合器及び前記第2結合器の少なくとも1つと相補的である、請求項7に記載の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[用語の定義]
本実施例において、互換可能に用いられる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを指し、且つDNAとRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基及び/又はそれらの類似体、或いはDNA又はRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込むことができる任意のマトリックスであることができる。ポリヌクレオチドには、メチル化ヌクレオチドやその類似体等の修飾ヌクレオチドを含むことができる。
【0014】
本実施形態において、「オリゴヌクレオチド」は通常、より短い一本鎖の合成ポリヌクレオチドを指し、その長さは一般に約200個のヌクレオチドを超えないが、本開示はこれに限定するものではない。本実施形態では、「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」という用語は相互に排他的ではない。以上のポリヌクレオチドに関する説明は、オリゴヌクレオチドにも同様に完全に適用される。
【0015】
「5’」及び「3’」という用語は通常、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおける同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの方向性における両端を指す。一般的に、5’は上流に位置し、3’は下流に位置し、ヌクレオチドinvivoは、5’から3’の方向の合成である。
【0016】
本実施形態において、互換可能に使用される「ハイブリダイゼーション(hybridization)」と「アニーリング(annealing)」は、2つの核酸分子が互いの間で高度な相同性(homology)を有することが必須であり、それにより、ヌクレオチドグループの塩基の間の水素結合によって安定した複合体となることを表している。本実施形態において、核酸分子の一部が別の核酸分子上の相補的な配列と特異的にハイブリダイゼーション又はアニーリングすることができる。例えば、核酸分子の5’末端に一部分のハイブリダイゼーションしていないヌクレオチドが存在し、同じ核酸分子の3’末端の一部分の配列は、別の核酸分子と特異的にハイブリダイゼーション又はアニーリングすることができる。
【0017】
本実施形態において、「核酸テンプレート」は、標的濃縮及びシーケンシングの開始材料としての核酸サンプル中のヌクレオチドを指す。核酸テンプレートは、一本鎖又は二本鎖であることができる。
【0018】
本実施形態において、「変性(denature)」とは、核酸テンプレートを処理し、相補的な二本鎖核酸分子を一本鎖の分子に分割し、オリゴヌクレオチドプライマー(例えば、第1プライマーや第2プライマー)等にアニーリングすることに用いることができるようにすることを指す。
【0019】
本実施形態では、「プライマー」は、通常、比較的短い一本鎖ポリヌクレオチドであり、且つ通常は、遊離した3’‐OH基を有する。プライマーは、標的配列とハイブリダイゼーションして対象の標的に結合し、標的と相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する。
【0020】
本実施形態では、「シーケンシングプライマー」は、オリゴヌクレオチドであり、核酸分子内のプライマー接続及びシーケンシング反応における延伸に適した位置に接続し、配列情報を生成することができる。
【0021】
本実施形態において、「結合器(adaptor)」とは、ポリヌクレオチドのフラグメントに接続することができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0022】
「解離温度(melting temperature)」は、核酸の半分が溶液中で解離状態であり、核酸の残りの半分が解離していない状態である温度を表す。結合器がヘアピン型(hairpin)を形成できる場合、解離温度は、半分の結合器が部分的にセルフハイブリダイゼーションした「ヘアピン型」となる時の温度である。
【0023】
核酸結合器及び核酸サンプルが、前記核酸結合器と核酸サンプルとの間に他の挿入された繰り返し配列を有さない場合、前記核酸結合器及び核酸サンプルは、互いのすぐ上流又は下流にある。一本鎖分子では、上流は、5’末端方向を意味し、下流は3’末端方向を意味する。二本鎖分子では、この極性はそれ自体で決定することも、指向性を有する構成要素(例えば、プロモーター、コーディング配列等)の極性に基づいて決定することもできる。例えば、プロモーターの極性は、RNAポリメラーゼが合成を開始する方向から下流に延伸する。コーディング配列の極性は、開始コドンから停止コドンへの方向に下流に向かって延伸する。
【0024】
本実施形態では、「増幅(amplification)」とは、所望の配列の2つ以上のコピーを生成する過程を指す。増幅反応の成分は、プライマー、核酸テンプレート、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、dNTPを含み得るが、本開示は、それに限定するものではない。
【0025】
「増幅した生成物」、「増幅生成物」又は「アンプリコン(amplicon)」とは、PCR増幅反応によって生成されるオリゴヌクレオチドを指し、特定の標的テンプレート核酸及び/又はその相補配列の一部のコピーであり、ヌクレオチド配列において、核酸テンプレート配列及び/又はその相補配列に対応する。増幅生成物は、プライマーに特異的な配列を更に含むことができ、且つ前記配列は、標的核酸の配列及び/又はその相補配列に隣接する。本明細書に記載のアンプリコンは、通常、二本鎖DNAであるが、一本鎖として引用することもできる。
【0026】
「濃縮(enrichment)」という用語は、処理前に前記サンプルに最初に存在する全体的な核酸配列レベルに対して、サンプル中の特定の核酸配列の相対的な存在量を増加させる過程を指す。従って、濃縮ステップは、直接の増加量ではなく、相対的なパーセンテージ又は割合の増加量を提供している。濃縮ステップの後、分析されるサンプルは、濃縮又は選択されたポリヌクレオチドと称することができる。
【0027】
本開示は、標的配列に対して標的配列濃縮を有効に実行することができる標的ヌクレオチド配列を増幅する方法を提供する。具体的には、本開示は、次世代のシーケンシング技術を使用して標的ヌクレオチド配列を確定する前に、対象の標的ヌクレオチド配列を濃縮する方法を提供する。
【0028】
本開示は、標的ヌクレオチド配列を増幅する方法を提供し、それは、以下のステップを含む。(a)第1結合器と第2結合器を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の両端に接続し、核酸テンプレートを形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖及び逆方向鎖を含み、第1結合器は、Y型結合器又はヘアピン型(hair−pin)結合器を含み、且つ第2結合器は、ヘアピン型結合器である。(b)核酸テンプレートに対して変性反応を行う。(c)標的ヌクレオチド配列をPCR増幅するのに十分な条件下で、第1プライマー、第2プライマー、DNAポリメラーゼを核酸テンプレートと接触させ、第1プライマーは、順方向鎖の近くの第1結合器に特異的にアニーリング(annealing)する第1配列を含み、前記第2プライマーは、逆方向鎖の近くの第1結合器に特異的にアニールする第2配列を含む。(d)ステップ(c)を繰り返し、1つ又は複数回のPCR増幅サイクルを行い、標的ヌクレオチド配列PCRアンプリコンを取得する。
【0029】
本実施形態では、標的ヌクレオチド配列は、二本鎖標的ポリヌクレオチドの配列を指し、順方向鎖と逆方向鎖を含むことができる。
【0030】
本実施形態では、使用される結合器には、第1結合器と第2結合器を含み、第1結合器はY型結合器又はヘアピン型(hair−pin)結合器を含み、第2結合器は、ヘアピン型結合器である。
【0031】
一実施形態では、Y型結合器には、対をなす二本鎖部分と対をなさない一本鎖部分を含む。具体的には、Y型結合器は、第1末端に接続可能な二本鎖部分を含み、第2端に非二本鎖部分のオリゴヌクレオチドを含み、二本鎖部分は、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子に接続することができる。一実施形態では、Y型結合器は、単独の第1鎖と第2鎖を含み、Y型結合器の第1鎖は、3’末端が、Y型結合器の第1末端(即ち、接続可能な末端)に位置する1つの鎖を指す。Y型結合器の第2鎖は、5’末端がY型結合器の第1末端(即ち、接続可能な末端)に位置する別の鎖を指す。
【0032】
一実施形態において、Y型結合器の第1鎖は、5’不対部分及び3’対部分を含み、Y型結合器の第2鎖は、3’不対部分及び5’対部分を有する。一実施形態では、Y型結合器の第1鎖と第2鎖の対をなす部分は、基本的に相補的であり、接続可能な二本鎖部分を含む第1末端を形成し、且つ二本鎖部分は、アニーリング温度で二本鎖形態を維持するのに十分な長さを有する。
【0033】
一実施形態では、Y型結合器の非二本鎖部分は、第1不対鎖(例えば、第1鎖の5’不対部分)と第2不対鎖(第2鎖の3’不対部分)を含む。実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖の長さは、第2不対鎖の長さよりも短い、長い、又は等しいものであることができる。
【0034】
一実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖と第2不対鎖は基本的に相補的ではない。一実施形態では、Y型結合器の第2鎖の第2不対鎖(即ち。3’不対部分)は、アニーリング温度(annealing temperature)で第1鎖の第1不対鎖(即ち、5’不対部分)に特異的にアニーリングしない。
【0035】
一実施形態では、Y型結合器の二本鎖部分の長さは、約10bp〜30bpであることができ、例えば、約12bp〜28bp、約15bp〜25bp、約18bp、約20bp等であり得るが、これらに限定するものではない。一実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖及び第2不対鎖の長さは、約10bp〜60bpであることができ、例えば、約15bp〜45bp、約20bp〜40bp、約25bp、約30bp、約35bp等であり得るが、これらに限定するものではない。一実施形態では、Y型結合器の解離温度は、約30℃〜90℃であることができ、例えば、約35℃〜90℃、約45℃〜85℃、又は約50℃〜80℃、約55℃〜75℃、約60℃、約65℃、約70℃等であり得るが、これらに限定するものではない。
【0036】
一実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖と第2不対鎖は、プライマーのアニーリング領域である。一実施形態では、プライマーは、増幅用のプライマーと核酸シーケンシング用のプライマーを含む。一実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖は、増幅用のプライマー(例えば、第1プライマー)と相補的な配列を含み、且つY型結合器の第2不対鎖は、増幅用の別のプライマー(例えば、第2プライマー)と相補的な配列を含む。
【0037】
一実施形態では、Y型結合器の第1不対鎖及び第2不対鎖がプライマーと結合する温度範囲は、約20℃〜72℃であることができ、例えば、約25℃〜70℃、約30℃〜65℃、約35℃〜60℃、約40℃〜55℃、約52℃〜70℃、約55℃〜68℃、約45℃、約58℃、約60℃、約62℃、約65℃等であり得るが、これらに限定するものではない。
【0038】
一実施形態では、ヘアピン型結合器は、部分的にセルフハイブリダイゼーションし且つヘアピン型(hairpin)を形成することができる。一実施形態では、ヘアピン型結合器は、対をなす二本鎖部分(即ち、ステム領域(stem region))と対をなさない一本鎖部分(即ち、ループ領域(loop region))を含み、二本鎖部分は、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子に接続することができ、対をなさない一本鎖部分は、ループ(loop)構造を有する。
【0039】
一実施形態では、ヘアピン型結合器の二本鎖部分の長さは、約10bp〜30bpであることができ、例えば、約12bp〜28bp、約15bp〜25bp、約18bp、約20bp等であり得るが、これらに限定するものではない。ヘアピン型結合器の二本鎖部分の長さが過度に長いと、後続のPCR反応によって生成されるPCRアンプリコンを抑制する。一実施形態では、ヘアピン型結合器の一本鎖部分の長さは、約5bp〜50bpであることができ、例えば、約10bp〜45bp、約15bp〜40bp、約20bp〜35bp、約25bp、約30bp等であり得るが、これらに限定するものではない。実施形態では、ヘアピン型結合器の解離温度は、約30℃〜90℃であることができ、例えば、約35℃〜85℃、約40℃〜80℃、約45℃〜75℃、約35℃〜65℃、約40℃〜60℃、約45℃、約50℃、約55℃、約68℃、約72℃、約85℃等であり得るが、これらに限定するものではない。
【0040】
一実施形態では、ヘアピン型結合器の一本鎖部分がプライマーボンディング領域である。一実施形態では、プライマーは、増幅用のプライマーと核酸シーケンシング用のプライマーを含む。一実施形態では、ヘアピン型結合器の一本鎖部分は、増幅用のプライマー対(例えば、第1プライマーと第2プライマー)と同じ又は相補的な配列を含む。
【0041】
一実施形態では、ヘアピン型結合器の一本鎖部分がプライマーに結合する温度範囲は、約20℃〜72℃であることができ、例えば、約25℃〜70℃、約30℃〜65℃、約35℃〜60℃、約40℃〜55℃、約52℃〜70℃、約55℃〜68℃、約26℃、約37℃、約46℃、約58℃、約60℃、約62℃、約65℃等であり得るが、これらに限定するものではない。
【0042】
一実施形態では、ヘアピン型結合器の一本鎖部分は、少なくとも1つのウラシル(U)塩基を含む。一実施形態では、ウラシルの特異的消化酵素(digestion enzyme)によってヘアピン型結合器の一本鎖部分のウラシル(U)塩基の位置で消化を行い、2つの単独の鎖(例えば、第1鎖と第2鎖)を形成することができ、第1鎖と第2鎖は、Y型を形成する。一実施形態では、ウラシル特異的切除試薬(Uracil‐Specific Excision Reagent,USER)酵素(NewEnglandBiolabs;NEBから入手可能)を使用し、ヘアピン型結合器のU塩基を含む一本鎖部分を消化し、ウラシル位置に1つの単一のヌクレオチドのギャップを生成することができる。USER酵素は、ウラシル‐DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase,UDG)とDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIII(DNA glycosylase−lyase endonuclease VIII,endoVIII)の混合物である。UDGは、ウラシル塩基の除去を触媒し、脱塩基部位(abasic site,AP site)(ピリミジンジオン)を形成し、同時にホスホジエステル骨格を完全に保持する。エンドヌクレアーゼVIIIリアーゼ活性は、脱塩基部位の3’及び5’のホスホジエステル骨格を破壊し、次に脱塩基デオキシリボースを放出する。上記の実施形態では、ウラシル‐DNAグリコシラーゼとDNAグリコシラーゼリアーゼ−エンドヌクレアーゼVIIIを先に混合し(USER酵素等)、次にヘアピン型結合器のU塩基を含む一本鎖部分を消化するが、本開示はこれに限定するものではない。別の実施形態では、先ず、ヘアピン型結合器のU塩基を含む一本鎖部分にウラシル−DNAグリコシラーゼを処理させ、次にDNAグリコシラーゼ−リアーゼエンドヌクレアーゼVIIIを処理することができる。一実施形態では、第1鎖は、増幅用のプライマー(例えば、第1プライマー)と相補的な配列を含み、第2鎖は、増幅用の別のプライマー(例えば、第2プライマー)と相補的な配列を含む。
【0043】
一実施形態では、プライマーの長さは、少なくとも約10個のヌクレオチドであるが、約200個ヌクレオチドを超えない。
【0044】
本実施形態では、プライマーは、核酸テンプレートの既知のヌクレオチド配列に特異的にアニーリングするように設計される。一実施形態では、プライマーは、核酸テンプレートと基本的に相補な配列を含むため、プライマーは、核酸テンプレートに特異的にアニーリングすることができる。一実施形態では、プライマー中の核酸テンプレートとハイブリダイゼーションする配列は、プライマー配列の3’末端に位置する。プライマーとその相補体は、アニーリングし、2本鎖のポリヌクレオチドを形成することができる。
【0045】
本実施形態では、第1プライマーは、順方向鎖の近くの第1結合器に特異的にアニーリングすることができる第1配列を含み、第2プライマーは、逆方向鎖の近くの第1結合器に特異的にアニーリングすることができる第2配列を含む。
【0046】
一実施形態では、第1結合器は、ヘアピン型結合器であり、第1プライマーは、一本鎖部分の順方向鎖の近くの領域に特異的にアニーリングすることができ、第2プライマーは、一本鎖部分の逆方向鎖の近くの領域に特異的にアニーリングすることができる。より具体的には、一本鎖部分の順方向鎖の近くの領域は、第1配列と相補的な配列を含み、一本鎖部分の逆方向鎖の近くの領域は、第2配列と相補的な配列を含む。
【0047】
一実施形態では、第1結合器は、Y型結合器であり、第1プライマーは、順方向鎖の近くの第1不対鎖に特異的にアニーリングすることができ、第2プライマーは、逆方向鎖の近くの第2不対鎖に特異的にアニーリングすることができる。より具体的には、順方向鎖の近くの第1不対鎖は、第1配列と相補的である配列を含み、逆方向鎖の近くの第2不対鎖は、第2配列と相補的である配列を含む。
【0048】
一実施形態では、第1結合器は、核酸マーカー又は分子バーコード(barcode)を含む。一実施形態では、第1結合器の一本鎖部分に核酸マーカー又は分子バーコードを含む。一実施形態では、第1結合器の二本鎖部分に核酸マーカー又は分子バーコードを含む。核酸マーカー又は分子バーコードを使用し、同じ核酸テンプレートのアンプリコンアンプリコンから派生したシーケンスリード(sequencing reads)を比較し、PCR増幅サイクルによって引き起こされるエラーを訂正させることができる。即ち、核酸マーカー又は分子バーコードは、同じ初期核酸テンプレートをマークすることに用いることができるため、分析のエラー率を低減することができる。一実施形態では、分子バーコードは一本鎖である。一実施形態では、Y型の第1結合器の第1鎖は、対になっていない部分の3’末端に分子バーコードを含む。一実施形態では、分子バーコードは、二本鎖である。
【0049】
本実施形態では、第2結合器は、ヘアピン型結合器である。一実施形態では、第1結合器は、ヘアピン型結合器であり、且つ第2結合器は、第1結合器とは異なるヘアピン型結合器である。一実施形態では、第2結合器は、第1プライマー及び第2プライマーと基本的に相補的ではないか、同じではない。
【0050】
一実施形態では、結合器と標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子との接続は、当技術分野で知られている任意の方法、例えば、平滑末端(blunt−end)接続又は粘着末端(sticky−end)接続によって行うことができる。
【0051】
一実施形態では、先に、第1結合器を、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の一端に接続し、次に第2結合器を、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の他端に接続することができる。別の実施形態では、先に第2結合器を、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の一端に接続し、次に第1結合器を、標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子の他端に接続することができる。
【0052】
一実施形態では、変性反応は、核酸テンプレートを十分に高い温度で加熱することによって実現される。一実施形態では、十分に高い温度は、約90℃〜100℃であり、例えば、約92℃、約95℃、約98℃等であるが、これに限定するものではない。一実施形態では、核酸テンプレートの変性反応は、例えば、核酸テンプレートをバイサルファイト処理することである。バイサルファイト処理は、核酸テンプレートのシトシン(C)をウラシル(U)に変換し、それによって塩基対の特異性を変えることができる。具体的には、元のシトシン(C)は、グアニン(G)と対をなす(C−G対)が、バイサルファイト変換後、シトシンはウラシル(U)に変換され、ウラシル(U)とグアニン(G)が非相補的な塩基対(G−U対)を形成するため、核酸テンプレートを一本鎖に変性させることができる。一実施形態では、バイサルファイト処理の変換率は60%以上である。一実施形態では、バイサルファイト処理の変換率は、約70%から100%であることができ、例えば、約75%、80%、85%、90%、95%等であり得るが、これらに限定するものではない。
【0053】
一実施形態では、第1結合器は、ヘアピン型結合器であり、ステップ(c)の前に更に核酸テンプレートを増幅することができる。一実施形態では、ローリングサークル増幅(Rolling circle amplification,RCA)を使用して核酸テンプレートを増幅し、大量の核酸テンプレート配列を有する相補複製物に合成する。具体的には、第1結合器と第2結合器は、何れもヘアピン型結合器であるため、変性後の核酸テンプレートは、環状核酸分子(第1結合器配列、順方向配列、第2結合器配列及び逆方向鎖配列を含む)であり、この環状核酸分子をローリングサークル増幅のテンプレートとして使用することができる。一実施形態では、ローリングサークル増幅は、少なくとも2つの核酸テンプレート配列の核酸分子生成物に合成することができる。
【0054】
一実施形態では、少なくとも1つの相補プライマーを使用してローリングサークル増幅を行う。一実施形態では、相補プライマーは、核酸テンプレートの標的ヌクレオチド配列と相補である。一実施形態では、相補プライマーは、核酸テンプレートの第1結合器と第2結合器の少なくとも一方と相補である。一実施形態では、ローリングサークル増幅は、多重プライマーローリングサークル増幅である。本実施形態では、当技術分野で知られている方法を使用してローリングサークル増幅を行い、ここでは、更に詳細に記載しない。
【0055】
本実施形態では、標的ヌクレオチド配列にPCR増幅を行うのに十分な条件下で、増幅用のプライマー(即ち、第1プライマー及び第2プライマー)を使用し、上記の核酸テンプレート又は相補複製物に1つ以上のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅サイクルを実行する。PCR増幅サイクルは、標的ヌクレオチド配列の存在量を指数関数的に増加させる可能性がある。一実施形態では、前記方法は、少なくとも2回以上のPCR増幅サイクル、例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30回の何れか又はそれ以上の反復されるPCR増幅サイクルを含む。一実施形態では、前記方法は、約30回〜50回のPCR増幅サイクルを含むことができる。各PCR増幅サイクルは、次のステップを含む。1)鎖分離(例えば、熱変性)、2)第1プライマーと第2プライマーを核酸テンプレートに結合、及び3)アニーリングを経たプライマーのDNAポリメラーゼの増大。当業者は、これらの各ステップに必要な条件及び時間を設計することができる。
【0056】
一実施形態では、以下の例示的な条件下でPCR増幅サイクルを実行する。1)95℃で5分間維持する。2)次に、10〜25回のサイクルを実行し、95℃で30秒間変性し、それから56℃でアニーリングし、72℃で1分間の延伸させることを含む。3)PCR反応終了後、4℃に保持する。但し、本開示は、これに限定するものではなく、他の適切な反応条件も使用することができる。
【0057】
一実施形態では、PCR増幅サイクルを実行した後、PCRアンプリコンを更に精製することができる。一実施形態では、PCRアンプリコンを更に分析することができ、例えば、核酸シーケンシング、DNAマイクロアレイ分析(DNA microarray analysis)等であるが、本開示は、これらに限定するものではない。一実施形態では、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing, NGS)に使用することができる。
【0058】
一実施形態では、第1結合器は、核酸シーケンシングの第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列及び核酸シーケンシングの第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。
【0059】
一実施形態では、Y型の第1結合器の第1不対鎖には、核酸シーケンシング用の第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含み、且つ第2不対鎖は、核酸シーケンシング用の第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。
【0060】
一実施形態では、ヘアピン型第1結合器の一本鎖部分は、シーケンシング用の第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列及びシーケンシング用の第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。
【0061】
一実施形態では、ウラシル‐DNAグリコシラーゼ及びDNAグリコシラーゼリアーゼ-エンドヌクレアーゼVIII(USER酵素等)の消化によって形成される第1鎖は、シーケンシング用の第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含み、第2鎖は、シーケンシング用の第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。
【0062】
一実施形態では、第1結合器は、ヘアピン型結合器であり、第1シーケンシングプライマーは、一本鎖部分の順方向鎖の近くの領域に特異的にアニーリングすることができ、第2シーケンシングプライマーは、一本鎖部分の逆方向鎖の近くの領域に特異的にアニーリングすることができる。一実施形態では、一本鎖部分の順方向鎖の近くの領域は、第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含み、一本鎖部分の逆方向鎖の近くの領域は、第2シーケンシングプライマー列と同じ又は相補的な配列を含む。
【0063】
一実施形態では、第1結合器は、Y型結合器であり、第1シーケンシングプライマーは、順方向鎖の近くの第1不対鎖に特異的にアニーリングし、且つ第2シーケンシングプライマーは、逆方向鎖の近くの第2不対鎖に特異的にアニーリングする。
【0064】
一実施形態では、第1結合器は、ヘアピン型結合器であり、一本鎖部分の順方向鎖の近くの領域及び/又は第1プライマーは、第1シーケンシングプライマーの配列と同じ又は相補的である配列を含むことができ、且つ一本鎖部分の逆方向鎖の近くの領域及び/又は第2プライマーは、第2シーケンシングプライマーの配列と同じ又は相補的な配列を含むことができる。
【0065】
一実施形態では、第1結合器は、Y型結合器であり、第1不対鎖及び/又は第1プライマーは、第1シーケンシングプライマーの配列と同じ又は相補的な配列を含むことができ、第2不対鎖及び/又は第2プライマーは、第2シーケンシングプライマーの配列と同じ又は相補的である配列を含むことができる。
【0066】
一実施形態では、第1プライマーは、第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含み、第2プライマーは、第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。実施形態では、第1プライマーの5’末端に第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含み、第2プライマーの5’末端に第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を含む。
【0067】
一実施形態では、第1シーケンシングプライマーのシーケンシング方向は、第2シーケンシングプライマーのシーケンシング方向の反対である。一実施形態では、第1シーケンシングプライマーと第2シーケンシングプライマーが次世代のシーケンシングに用いられる。一実施形態では、第1シーケンシングプライマーと第2シーケンシングプライマーは、次世代のシーケンシング技術に基づくプライマー配列を含む。
【0068】
一実施形態では、第2結合器は、第1シーケンシングプライマー及び第2シーケンシングプライマーと基本的に相補的ではないか、基本的に同じではない。一実施形態では、第2結合器は、第1プライマー、第2プライマー、第1シーケンシングプライマー及び第2シーケンシングプライマーと基本的に相補的ではないか、基本的に同じではない。
【0069】
本実施形態では、ヘアピン型第2結合器によって標的ヌクレオチド配列の相補的な二本鎖のDNA(即ち、順方向鎖と逆方向鎖)を1つに結合し、核酸テンプレートとし、第1結合器上に位置するプライマーを使用して核酸テンプレートにPCR増幅サイクルを行う。従って、得られたPCRアンプリコンの任意の1つの鎖は、何れも順方向標的ヌクレオチド配列、第2結合器配列、逆方向標的ヌクレオチド配列、及び両端に位置する第1結合器配列を有し、第2結合器配列は、順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列を1つに接続する。PCRアンプリコンの何れの鎖にも順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列を含むため、後続の核酸シーケンシング分析を行う時、どちらの端からも相補的な二本鎖のDNA領域の配列を得ることができ、且つ得られた相補的な二本鎖のDNA領域の配列を比較することができ、それにより元の配列の精度を向上させることができる。また、本実施形態では、相補的な二本鎖のDNAを1つに接続してシーケンシング及び分析を行うため、シーケンシングのコストを低減することができる。更に、本開示は、標的ヌクレオチド配列の濃縮期間に核酸シーケンシングに特異性を有する配列を導入するため(例えば、第1結合器又は第1プライマー及び第2プライマー上の配列設計)、上記設計によって、シーケンシングから得られるシーケンシング方向を識別することができる。
【0070】
本開示は、また、以下のステップを含む、標的ヌクレオチド配列を確定する方法を提供する。先ず、上記の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法によって得られる標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを提供する。次に、標的ヌクレオチド配列PCRアンプリコンで核酸シーケンシングを実行し、標的ヌクレオチド配列の配列情報を取得する。
【0071】
一実施形態では、核酸シーケンシングは、次世代のシーケンシングである。
【0072】
一実施形態では、前記方法は、核酸シーケンシングを実行する前に、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを使用してシーケンシングDNAライブラリを調製することを更に含む。一実施形態では、前記方法には、複数のサンプルから標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを定量化し、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを1つに併合して単一のシーケンシングDNAライブラリとすることを含む。一実施形態では、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを結合器に接続し、それにより、シーケンシングステップ用のシーケンシングDNAライブラリを構築する。一実施形態では、PCRアンプリコンを更に断片化することができる。
【0073】
本開示の上記方法は、多様な用途に用いることができ、例えば、臨床診断又は遺伝子工学のためのツールであるが、本発明は、これに限定するものではない。一実施形態では、上記方法を使用して、対象の遺伝子座の標的ヌクレオチド配列を確定し、標的ヌクレオチド配列内の配列変異体を検出することができる。一実施形態では、配列変異体は、疾患(例えば、遺伝性疾患や癌)に関連する配列変異体である。
【0074】
本開示を完全に理解するために、前記標的ヌクレオチド配列を増幅するステップを以下に詳細に説明する。但し、本開示を制限することを避けるために、周知の組成又はプロセスステップは詳細に説明しない。本開示の好ましい実施形態について以下に詳細に説明するが、本開示はこれに限定するものではなく、本開示は、他の実施形態にも広く実施することができ、本開示の範囲は限定されず、後述の特許請求の範囲に準ずるものである。
【0075】
図1は、本開示による第1実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法のフローチャートである。第1実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、以下のステップを含む。
【0076】
先ず、ステップa)を行い、Y型の第1結合器101とヘアピン型の第2結合器102を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子100の両端に接続し、核酸テンプレート10を形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖と逆方向鎖を含む。Y型の第1結合器101は、対をなさないY5鎖105とY3鎖103を有する。Y5鎖105とY3鎖103は、指向性を有することができ、例えば、Y5鎖105は、Y型の第1結合器の5’末端であることができ、Y3鎖103は、Y型第1結合器の3’末端であることができるが、これに限定するものではない。本実施形態では、核酸テンプレート10は、ヘアピン型構造体(Hair−pin construct)である。
【0077】
次に、ステップb)を行い、核酸テンプレート10に対して変性反応を行って、二本鎖核酸テンプレート10を一本鎖に解離させる。本実施形態では、核酸テンプレート10の変性反応は、例えば、核酸テンプレート10に対してバイサルファイト処理することである。
【0078】
次に、ステップc)を行い、第1結合器101のY5鎖105に位置する第1プライマー106と第1結合器101のY3鎖103に位置する第2プライマー104を使用して複数会のPCR増幅サイクルを実行し、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコン20を取得する。本実施形態では、第1プライマー106は、順方向鎖の近くのY5鎖105に特異的にアニーリングした第1配列を含み、第2プライマー104は、逆方向鎖の近くのY3鎖103に特異的にアニーリングした第2配列を含む。本実施形態では、PCRアンプリコン20は、順方向標的ヌクレオチド配列100aと逆方向標的ヌクレオチド配列100bを含む。
【0079】
本実施形態では、第1プライマー106は、第1シーケンシング方向112でシーケンシングを実行することができる第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有し、第2プライマー104は、第2シーケンシング方向114でシーケンシングを実行することができる第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有する。
【0080】
本実施形態では、PCRアンプリコン20をもって更に核酸シーケンシングすることができる。本実施形態では、核酸シーケンシングは、例えば、次世代シーケンシングである。
【0081】
本実施形態では、PCRアンプリコン20の何れの鎖にも順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列を含むため、核酸シーケンシングを実行する場合、何れの端からシーケンシングを実行しても順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列が得られる。また、得られた順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列を比較することで、元の配列を復元する精度を向上させることができる。更に、本実施形態では、二本鎖の相補的なDNAを1つに接続してシーケンシングと分析を行うため、シーケンシングのコストを低減することができる。
【0082】
図2は、本開示による第2実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法のフローチャートである。以下の実施形態では、前述の実施形態の一部の要素符号と一部の内容を用い、同じ符号で同じ要素を示し、同じ技術内容の説明を省略する。第2実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、以下のステップを含む。
【0083】
先ず、ステップa)を行い、ヘアピン型の第1結合器101とヘアピン型の第2結合器102を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子100の両端に接続し、核酸テンプレート10を形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖と逆方向鎖を含む。本実施形態では、核酸テンプレート10は、円形構造体(Circular construct)である。本実施形態では、第1結合器101のループ構造を有する一本鎖部分に1つのU塩基を含む。
【0084】
次に、ステップb)ウラシル‐DNAグリコシラーゼとDNAグリコシラーゼリアーゼ‐エンドヌクレアーゼVIIIによってループ構造を有する一本鎖部分のU塩基の位置で消化を行い、2つの単独のY5鎖105及びY3鎖103を形成する。本ステップでは、核酸テンプレート10は、消化を経た後にヘアピン型構造体(Hair−pin construct)を形成する。
【0085】
次に、ステップc)を行い、核酸テンプレート10に対して変性反応を行って、二本鎖核酸テンプレート10を一本鎖に解離させる。本実施形態では、核酸テンプレート10の変性反応は、例えば、核酸テンプレート10をバイサルファイト処理することである。
【0086】
次に、ステップd)を行い、第1結合器101のY5鎖105に位置する第1プライマー106と第1結合器101のY3鎖103に位置する第2プライマー104を使用し、複数回のPCR増幅サイクルを実行し、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコン20を取得する。本実施形態では、第1プライマー106は、第1シーケンシング方向112を実行することができる第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有し、第2プライマー104は、第2シーケンシング方向114を実行することができる第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有する。本実施形態では、PCRアンプリコン20は、順方向標的ヌクレオチド配列100aと逆方向標的ヌクレオチド配列100bを含む。
【0087】
本実施形態では、PCRアンプリコン20に対して更に核酸シーケンシングすることができる。
【0088】
図3は、本開示による第3実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法のフローチャートである。以下の実施形態では、前述の実施形態の一部の要素符号と一部の内容を使用し、同じ符号で同じ要素を示し、同じ技術内容の説明を省略する。第3実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、以下のステップを含む。
【0089】
先ず、ステップa)を行い、ヘアピン第1結合器101とヘアピン第2結合器102を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子100の両端に接続し、核酸テンプレート10を形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖と逆方向鎖を含む。第1結合器101は、対をなす二本鎖部分と対をなさない一本鎖部分を含む。本実施形態では、核酸テンプレート10は、円形構造(Circular construct)である。
【0090】
次に、ステップb)を行い、核酸テンプレート10に対して変性反応を実行し、二本鎖核酸テンプレート10を一本鎖環状分子に解離させる。本実施形態では、核酸テンプレート10の変性反応は、例えば、核酸テンプレート10をバイサルファイト処理することである。
【0091】
次に、ステップc)を行い、順方向鎖の近くの第1結合器101領域に位置する第1プライマー106及び逆方向鎖の近くの第1結合器101領域に位置する第2プライマー104を使用して、複数回のPCR増幅サイクルを実行し、標的ヌクレオチド配列PCRアンプリコン20を取得する。本実施形態において、第1プライマー106は、一本鎖部分に特異的にアニーリングした第1配列を含み、第2プライマー104は、一本鎖部分に特異的にアニーリングした第2配列を含む。本実施形態では、第1プライマー106は、第1シーケンシング方向112を実行することができる第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有し、第2プライマー104には第2シーケンシング方向114を実行することができる第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有する。本実施形態では、PCRアンプリコン20は、順方向標的ヌクレオチド配列100aと逆方向標的ヌクレオチド配列100bを含む。
【0092】
本実施形態では、PCRアンプリコン20に対して更に核酸シーケンシングすることができる。
【0093】
図4は、本開示による第4実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法のフローチャートである。以下の実施形態では、前述の実施形態の一部の要素符号と一部の内容を使用し、同じ符号で同じ要素を示し、同じ技術内容の説明を省略する。第4実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、以下のステップを含む。
【0094】
先ず、ステップa)を行い、ヘアピン型の第1結合器101とヘアピン型の第2結合器102を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子100の両端に接続し、核酸テンプレート10を形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖と逆方向鎖を含む。本実施形態では、核酸テンプレート10は、円形構造(Circular construct)である。
【0095】
次に、ステップb)を行い、核酸テンプレート10に対して変性反応を実行して、二本鎖核酸テンプレート10を一本鎖環状分子に解離させる。本実施形態では、核酸テンプレート10の変性反応は、例えば、核酸テンプレート10をバイサルファイト処理することである。
【0096】
次に、ステップc)を行い、標的ヌクレオチド配列上に位置する相補プライマー109を使用して一本鎖環状分子(核酸テンプレート10)に対してローリングサークル増幅を行い、大量の核酸テンプレート配列有する相補複製物110を取得する。本実施形態では、相補プライマー109は、逆方向鎖に位置するが、本開示は、これに限定するものではない。他の実施形態では、相補プライマー109は、順方向鎖に位置する。本実施形態では、相補的な逆方向鎖配列、相補的な第1結合器配列、相補的な順方向鎖配列、及び相補的な第2結合器配列は、この順序で相補複製物110に繰り返して存在する。
【0097】
その後、ステップd)を行い、相補的な第1結合器配列の相補的な順方向鎖の近くの領域に位置する第1プライマー106と、相補的な第1結合器配列の相補的な逆方向鎖の近くの領域に位置する第2プライマー104を使用し、複数回のPCR増幅サイクルを実行し、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコン20を取得する。本実施形態では、第1プライマー106は、一本鎖部分に特異的にアニーリングすることができる第1配列を含み、第2プライマー104は、一本鎖部分に特異的にアニーリングすることができる第2配列を含む。本実施形態では、第1プライマー106は、第1シーケンシング方向112を実行することができる第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有し、第2プライマー104は、第2シーケンシング方向114を実行することができる第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有する。本実施形態では、PCRアンプリコン20は、順方向標的ヌクレオチド配列100aと逆方向標的ヌクレオチド配列100bを含む。
【0098】
本実施形態では、PCRアンプリコン20に対して更に核酸シーケンシングすることができる。
【0099】
図5は、本開示による第4実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法のフローチャートである。以下の実施形態では、前述の実施形態の一部の要素符号と一部の内容を使用し、同じ符号で同じ要素を示し、同じ技術内容の説明を省略する。第5実施形態の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法は、以下のステップを含む。
【0100】
先ず、ステップa)を行い、ヘアピン第1結合器101とヘアピン第2結合器102を、それぞれ標的ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸分子100の両端に接続し、核酸テンプレート10を形成し、標的ヌクレオチド配列は、順方向鎖と逆方向鎖を含む。本実施形態では、核酸テンプレート10は、円形構造(Circular construct)である。
【0101】
次に、ステップb)を行い、核酸テンプレート10に対して変性反応を実行し、二本鎖核酸テンプレート10を一本鎖環状分子に解離させる。本実施形態では、核酸テンプレート10の変性反応は、例えば、核酸テンプレート10をバイサルファイト処理することである。
【0102】
次に、ステップc)を行い、第1結合器101上に位置する相補プライマー109を使用して一本鎖環状分子(核酸テンプレート10)に対してローリングサークル増幅を行い、大量の核酸テンプレート配列を有する相補複製物110を取得する。本実施形態では、相補プライマー109は、第1結合器101に位置するが、本開示は、これに限定するものではない。別の実施形態では、相補プライマー109は、第2結合器102に位置する。本実施形態では、相補的な第1結合器配列、相補的な順方向鎖配列、相補的な第2結合器配列、及び相補的な逆方向鎖配列が、この順序で相補複製物110中に繰り返して存在する。
【0103】
その後、ステップd)を行い、相補的な第1結合器配列の相補的な順方向鎖の近くの領域に位置する第1プライマー106と、相補的な第1結合器配列の相補的な逆方向鎖の近くの領域に位置する第2プライマー104を使用し、複数回のPCR増幅サイクルを実行して標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコン20を取得する。本実施形態では、第1プライマー106は、一本鎖部分に特異的にアニーリングすることができる第1配列を含み、第2プライマー104は、一本鎖部分に特異的にアニーリングすることができる第2配列を含む。本実施形態では、第1プライマー106は、第1シーケンシング方向112を実行することができる第1シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有し、第2プライマー104は、第2シーケンシング方向114を実行することができる第2シーケンシングプライマーと同じ又は相補的な配列を有する。本実施形態では、PCRアンプリコン20は、順方向標的ヌクレオチド配列100aと逆方向標的ヌクレオチド配列100bを含む。
【0104】
本実施形態では、PCRアンプリコン20に対して更に核酸シーケンシングすることができる。
【0105】
以下、本発明をより具体的に実証するために、本開示の実験例を記載する。但し、本発明の精神から逸脱することなく、以下の実験例に示す材料、使用方法等を適切に変更することができる。従って、本発明の範囲は、以下に示す実験例によって限定解釈されるべきではない。
【0106】
実験例1:ヘアピン型構造体の構築(Construction of Hair−pin construct)
【0107】
図6は、ヘアピン型の構築物の例示的な構造を示している。本実施形態では、ヘアピン型構造体は、Y型構造体201、標的二本鎖核酸分子202、及びステムループ(stem−loop)構造体203の3つの部分を含み、Y型構造体201は、Y型結合器から派生し、ステムループ構造体203は、ヘアピン型結合器から派生し、且つ標的二本鎖核酸分子203は、標的ヌクレオチド配列を有する。このヘアピン型構造体の3つの部分について、以下で詳しく説明する。
【0108】
[Y型構造体の設計]
本実施形態では、Y型構造体201のステム部分(即ち、対をなす二本鎖DNA部分)の長さは、12bpで、2つの6塩基制限消化部位(SacIとEcoRI)、即ちgagctcgaattc(配列番号1)を含む。Y型構造体201の対をなさない部分は、Y5鎖(5’末端の対をなさない鎖)とY3鎖(3’末端の対をなさない鎖)を含み、それぞれの長さは25bpである。本実施形態では、Y5鎖とY3鎖の配列はヒトゲノム(human genome)に特定の配列(specific sequence)であり、且つPCRプライマーがPCRを行うのに適した領域配列である。
【0109】
[ステムループ構造体の設計]
本実施形態では、ステムループ構造体203のステム部分(即ち、対をなす二本鎖DNA部分)の長さは12bpであり、2つの6塩基制限消化部位(BamHIとXbaI)、即ちggatcctctaga(配列番号2)を含む。ステムループ構造体203のループ部分の長さは25bpである。本実施形態では、ステムループ構造体203のループ部分の配列は、ヒトゲノム(human genome)に特定の配列(specific sequence)であり、且つPCRプライマーがPCRを行うのに適した領域配列である。
【0110】
[ 標的二本鎖核酸分子デザイン]
本実施形態では、標的二本鎖核酸分子202の長さは、100bpであり、配列番号3のヌクレオチド配列を有する。
【0111】
[ヘアピン型構造体の構築]
表1に示すように、2つのオリゴヌクレオチド(Oligo‐186及びOligo‐137)を提供する。
【0113】
オリゴヌクレオチドOligo‐186は、Y5鎖、Y型構造体のステム部分(順方向)、標的二本鎖核酸分子(順方向)、ステムループ構造体のステム部分(順方向)、Y型構造体の環部分及びステムループ構造体のステム部分(逆方向)の領域を順に含む。オリゴヌクレオチドOligo‐137は、標的二本鎖核酸分子(逆)、Y型構造体のステム部分(逆)及びY3鎖の領域を順に含む。本実施形態では、iMe‐dCは、メチル化したシトシンを表す。オリゴヌクレオチドOligo‐186とオリゴヌクレオチドOligo‐137は、メッド社(Medclub Scientific Co.Ltd.,Taiwan)によって合成されたものである。
【0114】
オリゴヌクレオチドOligo‐186とオリゴヌクレオチドOligo‐137をもってアニーリング(annealing)反応を行った。10μLのオリゴヌクレオチドOligo‐137、10μLのオリゴヌクレオチドOligo‐186、3μLの10X T4リガーゼ緩衝液(New England Biolabs;NEB)及び7μLの再蒸留水(ddH
2O)を混合し、総体積30μLのアニーリング混合溶液を得た(表2)。アニーリング混合溶液を95℃で5分間変性させた。その後、室温(約25℃)でゆっくりと温度を下げ、アニーリング反応を行った。
【0116】
2μLの10X T4リガーゼ緩衝液、2.5μLのT4リガーゼ(New England Biolabs;NEB)及び15.5μLのddH2Oを上記の結合混合溶液(30μL)に加え、総体積50μLのライゲーション(ligation)混合溶液を取得する(表3)。ライゲーション混合溶液を室温(約25℃)で30分間、ライゲーション反応させて、核酸テンプレートとしてヘアピン型構造体を形成した。ここまでで、
図1のステップa)及び
図6に示す構造が得られた。
【0118】
実験例2:ヘアピン型構造体のバイサルファイト処理
本実施形態では、カイジエ社(QIAGEN Taiwan Company Ltd)のEpiTectFastBisulfiteKit(10)(QIAGENカタログ番号/ID:59802)を使用し、実験例1のヘアピン型構造体にバイサルファイト処理を行った。具体的には、10μLのライゲーション混合溶液(19.9912ngのDNAを含む)、10μLのRNaseフリー水(RNase−free water)、85μLの重亜硫酸溶液(Bisulfite Solution)及び10μLのDNA保護緩衝液(DNA protect buffer)をもって、総体積140μLのバイサルファイト変換(Bisulfite conversion)溶液を得た(表4)。
【0120】
上記のバイサルファイト変換溶液を95℃で5分間変性させた後、バイサルファイト変換反応を60℃で10分間行った。その後、95℃で5分間変性させた後、60℃で10分間のバイサルファイト変換反応を行った。その後、反応後のバイサルファイト変換溶液を後で使用するために20℃に置いた。ここまでで、
図1のステップb)に示す構造が得られた。
【0121】
実験例3:バイサルファイト変換されたヘアピン型構造体のメチル化を検出するシミュレーション
[バイサルファイトで形質転換したヘアピン型構造体のPCR反応]
本実施形態では、バイサルファイト変換されたヘアピン型構造体(以下、BSDNAと称する)にプライマーF(配列番号6のヌクレオチド配列)とプライマーR(配列番号7のヌクレオチド配列)を使用してPCR反応を行い、標的ヌクレオチド配列のPCRアンプリコンを得た。プライマーFとプライマーRの配列を表5に示す。得られたPCRアンプリコンの長さは320bpである。
【0123】
PCR反応溶液の成分を以下の表6に示す。
【0125】
PCR反応溶液をもって次のプロセスによってPCR反応を実行する。(1)95℃で10分間維持する。(2)次の40回のサイクルを実行する[95℃で20秒;56℃で30秒;72℃で40秒];(2)72℃で7分間維持する。
【0126】
[インシリコバイサルファイト変換(in silico Bisulfite−conversion)のコンピューターシミュレーションとその配列アライメント]
本実施形態では、実験例1で設計されたヘアピン型構造体はY5鎖からシーケンシングを開始し、配列番号8のヌクレオチド配列を有することができる。実験例2では、インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体は、Y5鎖からシーケンシングを開始し、配列番号9のヌクレオチド配列を有することができる。
【0127】
図7は、配列番号8と配列番号9のヌクレオチド配列アライメントを示している。
図7に示すように、設計されたヘアピン型構造体(配列番号8)は、11個のメチル化シトシン(▲でマークする箇所)を有し、そのうちの3つは、標的核酸分子領域にあり、8つは、プライマー領域(Y5鎖及びY3鎖)にあり、バイサルファイト変換されることができるシトシン(即ち、元々メチル化されていないシトシン)は、計71箇所を有する。インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の配列(配列番号9)は、配列中のメチル化されていないシトシン(C)を全てウラシル(U)/チミン(T)に変換する。
【0128】
[バイサルファイト変換率(BS−conversion rate)の分析]
バイサルファイトシーケンシング(Bisulfite sequencing)法を用いてメチル化を検出することは、原則として、メチル化されていないシトシン(C)を全てウラシル(U)/チミン(T)に変換するが、メチル化されているシトシン(C)は変化せずに維持され、それによって、配列中のシトシン(C)のメチル化の状況を識別することができる。従って、全ての「元々メチル化されていなかったシトシン(C)」を「ウラシル(U)/チミン(T)」に変換することは1つの重要なステップである。
【0129】
本実施形態で使用される推定方法は、先ず個別に取得されたシーケンシング結果(配列)の「元々メチル化されていなかったCの位置」をマークし、次にその変換(C‐>T又はC‐>C)の割合を計算することである。本実施形態では、比較に用いられる配列は、「ペアエンドシーケンス(paired−end sequencing)」方式で整理される。具体的には、Y5鎖とY3鎖からPCRアンプリコンの順方向シーケンシング(forward sequencing)と逆方向シーケンシング(backward sequencing)を実行し、順方向配列と逆方向配列を使用して比較する。又は、逆方向配列を逆方向相補シーケンス配列(reverse complementary sequence)に変換してから、順方向配列と比較する。本実施形態では、逆方向シーケンシング(逆方向プライマーを用いてシーケンシングする)後のPCRアンプリコンの逆方向相補配列(配列番号10)、設計されたヘアピン型構造体の配列(配列番号8)及びインシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の配列(配列番号9)を比較し、バイサルファイト変換率を計算することができる。
【0130】
図8は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のヌクレオチド配列の比較を示している。
図8中の矢印箇所は、メチル化されたCの位置である。表7は、計算後の順方向配列及び逆方向相補配列(配列番号10)のバイサルファイト変換率を示している。表7の結果から、順方向配列と逆方向相補配列のバイサルファイト変換率が何れも100%であることがわかる。
【0132】
[相補的両側シーケンシング法を用いたDNAメチル化の位置の分析]
本実施形態では、次のステップを用いてDNAメチル化の位置を分析する。
(1)設計されたヘアピン型構造体の順方向配列(配列番号8)とその逆方向相補配列(配列番号11)を配列アライメントする。
(2)インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の順方向配列(配列番号9)とその逆方向補体配列(配列番号12)を配列アライメントする。
(3)「相補的両側シーケンシング」法を用いてDNAメチル化の規則を分析する。
(4)上記の規則を用いて、シーケンシング後のPCRアンプリコンの配列を分析し、元のDNA配列を復元し、メチル化されたCの位置を確定する。
【0133】
[ヘアピン型構造体の順方向配列とその逆方向相補配列の配列アライメント]
図9は、設計されたヘアピン型構造体の順方向配列とその逆方向相補配列の配列アライメントを示している。
図9では、ヘアピン型構造体の順方向配列(配列番号8)は「Y5鎖から実行を開始したシーケンシング」を表し、ヘアピン型構造体の逆方向相補配列(配列番号11)は「Y3鎖から実行を開始したシーケンシング」を表す。
図9から分かるように、二本鎖DNA領域の配列(標的二本鎖核酸分子とステム領域)は同じであり、一本鎖のY3鎖と一本鎖のY5鎖のDNA領域の配列は異なり、一本鎖のY3鎖は「Y3鎖からのシーケンシング」によって得られた配列を示し、一本鎖のY5鎖は「Y5鎖からのシーケンシング」から得られた配列を示す。
【0134】
[インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の順方向配列とその逆方向相補配列の配列アライメント]
図10は、インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の順方向配列とその逆方向相補配列の配列アライメントを示している。
図10において、インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造の順方向配列(配列番号9)は、「Y5鎖から実行を開始したシーケンシング」を表し、インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の逆方向相補配列(配列番号12)は「Y3鎖から実行を開始したシーケンシング」を表す。
図10から分かるように、二本鎖のDNA領域の配列(標的二本鎖核酸分子及びステム領域)では、バイサルファイト変換を経た位置の塩基が異なり、一本鎖のY3鎖と一本鎖のY5鎖のDNA領域の配列が異なり、一本鎖のY3鎖は「Y3鎖から実行を開始したシーケンシング」によって得られた配列を示し、一本鎖のY5鎖は「Y5鎖から実行を開始したシーケンシング」によって得られた配列を示す。
【0135】
[「相補的両側シーケンシング」法を用いたDNAメチル化の分析の規則]
図10の配列アライメントデータから、DNAメチル化分析の規則を取得することができる。
図11は、DNAメチル化を分析する規則を示している。
図11の(a)は、配列中のCがメチル化されているため、バイサルファイトによって変換されない塩基に属することを示している。従って、Y5順方向プライマー又はY3逆方向プライマーの何れによってシーケンシングを実行するかにかかわらず、何れも5’‐ATCG‐3’の配列を取得することができる。
図11(b)は、配列中のCがメチル化されておらず、バイサルファイトによって変換される塩基に属することを示している。従って、バイサルファイト変換を経た後、Y5順方向プライマーとY3逆方向プライマーによってシーケンシングを行えば、特定の塩基対(即ち、C−T及びG−A)が得られる。
【0136】
[上記の規則を用いて、シーケンシング後のPCRアンプリコンの配列を分析し、元のDNA配列を復元し、メチル化されたCの位置を決定する]
インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の順方向配列(配列番号9)、インシリコバイサルファイト変換されたヘアピン型構造体の逆方向相補配列(配列番号12)、順方向シーケンシング後のPCRアンプリコンの順方向配列(配列番号13)及び逆方向シーケンシング後のPCRアンプリコンの逆方向配列(配列番号14)を配列対比する。
図12は、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14の配列対比を示している。
【0137】
上記のDNAメチル化を分析する規則により、それぞれ配列を比較した各塩基に特定の塩基対(即ち、C−TとG−A)を有する場合、規則に従って元のDNA配列に復元することができる。それぞれ配列を比較した対応する位置の塩基が全て同じである場合、元のDNAの対応する位置は、その一致する塩基であることを示している。例えば、4つの配列の対応する位置の塩基が何れもAである場合、元のDNAのその対応する位置にある塩基はAであることを表す。従って、上記の規則によれば、ヘアピン構築物の標的核酸分子領域におけるメチル化の位置、即ち、
図12の方形フレームによって示される位置は、計3つのメチル化されたシトシンを有することを確定することができる。
【0138】
要約すると、本開示の標的ヌクレオチド配列を増幅する方法によって得られるPCRアンプリコンの任意の鎖は、順方向標的ヌクレオチド配列及び逆方向標的ヌクレオチド配列を含むので、核酸シーケンシングを実行する場合、いずれかの端からシーケンシングを実行しても、順方向標的ヌクレオチド配列及び逆方向標的ヌクレオチド配列を得ることができる。また、得られた順方向標的ヌクレオチド配列と逆方向標的ヌクレオチド配列を比較することで、元の配列を復元する精度を向上させることができる。更に、本実施形態では、二本鎖の相補的なDNAを1つに接続してシーケンシングと分析を行うため、シーケンシングのコストを低減することができる。
【0139】
本開示は、実施形態をもって上記のとおり開示しているが、本開示を限定するためのものではなく、当業者は、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、いくつかの変更や修飾を行うことができ、故に、本開示の保護範囲は、後述の特許請求の範囲に従うものとする。