【解決手段】滅菌室内に滅菌剤を充填して対象物を滅菌する滅菌処理方法であって、対象物を滅菌する滅菌処理時の運転のデータである複数の滅菌運転データを含む滅菌運転データユニットを取得するステップと、滅菌運転データユニットから滅菌が成功した場合である滅菌成功データを含む成功データユニットを抽出するデータ抽出ステップと、成功データユニットに基づいて、滅菌処理が成功している中で最も失敗に近いデータであるワースト基準データを生成する基準ケース生成ステップと、今回の対象物の滅菌処理の運転のデータである今回運転データを取得する今回データ取得ステップと、今回運転データとワースト基準データとを比較して今回の対象物の滅菌処理が成功しているかを判定する判定ステップと、を含む。
前記判定ステップは、前記今回運転データの評価対象パラメータが、前記ワースト基準データの評価対象パラメータの値以上である場合、滅菌処理が成功であると判定する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の滅菌処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0016】
図1は、本実施形態に係る滅菌システムを示す図である。
図2は、処理装置及び状態監視装置の機能を示す模式図である。
図1に示す滅菌システム(滅菌装置)100は、例えば、病院又は医療機器等の洗浄滅菌施設のような施設内で使用される複数の処理装置(滅菌装置本体)1と、コンピュータ6と、携帯通信端末装置7と、状態監視装置10と、を含む。状態監視装置10は、処理装置1の運転を監視する。コンピュータ6、携帯通信端末装置7は、状態監視装置10と通信し、受信した情報をオペレータに提供する。
【0017】
滅菌システム100は、処理装置1と、携帯通信端末装置7と、状態監視装置10とが通信回線3を介して通信できるようになっている。さらに、滅菌システム100は、処理装置1が設けられた処理設備を管理する管理拠点に設けられたコンピュータ6と、通信回線3を介して通信できるようになっている。
【0018】
本実施形態において、状態監視装置10には、複数の処理装置1a、1b、・・・1nが接続されており、複数の処理装置1a、1b、・・・1nの滅菌処理の処理内容に関する情報が状態監視装置10に送信されるようになっている。なお、滅菌システム100に含まれる処理装置1は、
図1に示すように複数台でもよいし、1台でもよい。また、滅菌システム100に含まれる携帯通信端末装置7も、複数台でもよいし、単数でもよい。以下において、処理装置1a、1b、・・・1nを区別しない場合、適宜、処理装置1という。また、本実施形態の滅菌システム100は、コンピュータ6、携帯通信端末装置7を含む場合としたが、含まなくてもよい。コンピュータ6、携帯通信端末装置7を含まない場合、状態監視装置10や、処理装置1に備えられたオペレータへの通知を行う機器、操作を入力する機器を用いる。
【0019】
通信回線3は、電話回線又は施設内に敷設されたLAN(Local Area Network)等である。本実施形態において、状態監視装置10は、配線によって通信回線3と接続されているが、無線通信装置を介して通信回線3と接続されるようにしてもよい。通信回線3には、コンピュータ6及び携帯通信端末装置7A、7Bが接続されている。以下において、携帯通信端末装置7A、7Bを区別しない場合、適宜、携帯通信端末装置7という。
【0020】
コンピュータ6は、配線によって通信回線3と接続されている。通信回線3には携帯通信端末装置7用の無線通信基地4が接続されている。携帯通信端末装置7は、無線通信基地4を介して通信回線3と接続されるようになっている。携帯通信端末装置7は、例えば、PHS(Personal Handy-phone System)又はいわゆる携帯電話である。処理装置1が使用される施設が病院である場合、携帯通信端末装置7はPHSが使用される。処理装置1が使用される施設が病院以外である場合、携帯通信端末装置7はいわゆる携帯電話であってもよい。なお、携帯通信端末装置7は、PHS及び携帯電話に限定されるものではない。
【0021】
処理装置1は、容器内に被処理物を収納して滅菌処理する。処理装置1が取り扱う滅菌処理は、1つ又は複数の工程で処理を行うものであり、その工程のうち少なくとも1つの工程は物理量の変化に基づいて進行し、かつその工程の処理時間が変化し得る処理である。このような滅菌処理の工程では、例えば、加熱、加圧、減圧及び冷却のいずれか1つ又はこれらの組合せを含んで処理が行われる。このような滅菌処理は、物理量の変化に基づいて進行する工程を含むため、運転開始から完了までの時間が変動し、一義的に決定されないものである。
【0022】
処理装置1は、このような滅菌処理を行うため、例えば、物理量の変化で工程が進行する運転プログラムを有している。例えば、処理装置1に組み込まれた制御用のマイクロコンピュータがコンピュータプログラムとしての運転プログラムを実行することにより、前述した滅菌処理を実行してもよい。また、処理装置1は、前述した運転プログラムを実現する電子回路によって、滅菌処理を実行してもよい。
【0023】
処理装置1の例としては、例えば、滅菌剤として水蒸気を用いる蒸気滅菌装置、滅菌剤として、エチレンオキサイドガス(EOG)と水蒸気を用いるEOGガス滅菌装置、滅菌剤として、過酸化水素を用いる過酸化水素ガス低温滅菌器、滅菌剤としてホルムアルデヒドと水蒸気を用いる低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌器又は、プラズマを発生させて滅菌するプラズマ滅菌装置等の滅菌装置、レトルト殺菌装置、ホルマリン消毒装置等の消毒装置等が挙げられる。このような装置は、減圧工程、給蒸工程、給水工程等を含んでおり、これらの工程を次の工程に進行させるにあたり、物理量の変化、すなわち、圧力又は温度等が設定値になったらステップを進める運転プログラムを有している。また、このような装置は、必ず、給蒸による加圧を含む加熱、空気排除又は冷却のため減圧、貯留槽への給水等の処理を含む。これらの処理は外的要因、すなわち給蒸設備、給水設備又は水温等によって運転時間が変化する。
【0024】
処理装置1は、制御装置1Cと、操作パネルとを備える。制御装置1Cは、処理装置1の動作を制御するための装置であり、例えば、マイクロコンピュータである。操作パネルは、処理装置1に命令を入力するための入力装置及び処理装置1の状態等を表示するモニタを有している。モニタをタッチパネルとして、入力装置を兼ねるようにしてもよい。状態監視装置10は、制御装置1Cと接続されており、制御装置1Cから処理装置1の情報を受け取る。
【0025】
制御装置1Cは、実行している処理の各情報を滅菌運転データとして状態監視装置10に送信する。滅菌運転データは、滅菌処理で実行している際に取得する、蒸気、電気、ガス、純水及び圧縮空気のそれぞれについての温度、圧力等や、運転データに基づいて算出される菌の致死率を示す指標、例えばF値である。また、制御装置1Cは、例えば、装置情報、異常情報等の情報を示す信号も状態監視装置10に送信する。装置情報は、処理装置1の運転が正常完了したことに関する情報である。異常情報は、処理装置1で発生した異常に関する情報である。
【0026】
次に、
図2を参照して、前述した処理装置1及び状態監視装置10の構成について説明する。以下の説明においては、同様の構成要素に同一の符号を付す。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0027】
図2に示すように、処理装置1の制御装置1Cは、制御部51と、入出力部53とを含む。制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせたものであり、マイクロコンピュータを利用してもよい。制御部51には、圧力センサ54と、温度センサ55と、供給バルブ56とが電気的に接続されている。
【0028】
圧力センサ54及び温度センサ55は、処理装置1の容器内、供給ライン及び処理装置1が設けられた設備に設けられた圧力センサ及び温度センサである。圧力センサ54及び温度センサ55は、検出した圧力及び温度を示す信号を制御部51に対して出力する。供給バルブ56は、供給ライン及び処理装置1が設けられた設備に設けられた供給バルブである。供給バルブ56は、バルブの開閉状態を示す信号を制御部51に対して出力する。制御部51は、圧力センサ54と、温度センサ55と、供給バルブ56等から入力される信号に基づいて滅菌運転データを取得する。
【0029】
入出力部53は、制御部51及び状態監視装置10の入出力部13と接続されている。入出力部53は、制御部51からの情報を状態監視装置10に出力する。入出力部53は、状態監視装置10が出力した各種情報を受け取り、その情報を制御部51に出力する。
【0030】
状態監視装置10は、処理部11と、記憶部12と、入出力部13とを含む。処理部11は、情報収集部11Aと、状態判定部11Bと、情報送信部11Cとを含む。処理部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせたものであり、マイクロコンピュータを利用してもよい。処理部11は、前述した滅菌運転データを送信するためのコンピュータプログラムを実行し、処理装置1から受け取った滅菌運転データ、通信回線3を介して携帯通信端末装置7等に送信する。
【0031】
処理部11の情報収集部11Aは、滅菌運転データを処理装置1から受け取る。情報収集部11Aは、情報を受け取ると、受け取った情報を状態判定部11Bに送信する。状態判定部11Bは、記憶部12に記憶されているデータと、情報収集部11Aで取得した今回の処理装置1での滅菌運転データに基づいて、今回の滅菌運転データの滅菌が良好であったか否かを判定し、判定結果を作成する。状態判定部11Bは、判定結果を情報送信部11Cに送信する。情報送信部11Cは、状態判定部11Bの判定結果等の各種情報を、処理装置1や、無線通信、本実施形態では、通信回線3と携帯通信端末装置7との間に介在する無線通信基地4を介して携帯通信端末装置7に送信する。なお、各種処理については後述する。
【0032】
記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性のメモリを組み合わせたものであるが、このようなものに限定されない。記憶部12は、収集データ12Aと、判定基準データ12Bと、判定プログラム12Cを保存している。また、記憶部12は、状態判定部11Bで実行する各処理を実行するためのプログラムも保存している。収集データ12Aは、処理装置1で実行した滅菌運転データと滅菌結果とが対応付けられたデータの集合体つまり、滅菌運転データユニットである。滅菌運転データは、滅菌処理の実行後の検査等で取得するCI(ケミカルインジケータ、chemical indicator)値、BI(バイオロジカルインジケータ、biological indicator)値も含む。判定基準データ12Bは、状態判定部11Bでの判定処理に用いるデータであり、ワースト基準データと、滅菌失敗のデータベースと、を含む。ワースト基準データは、滅菌処理が成功している運転滅菌データの中で最も失敗に近いデータである。判定プログラム12Cは、状態判定部11Bの機能を実現するプログラムである。
【0033】
入出力部13は、処理部11、通信回線3及び処理装置1の制御装置1Cと接続されている。処理部11は、入出力部13を介して制御装置1Cが送信した各種情報を受け取り、その情報を通信回線3に出力する。処理装置1が1台である場合、入出力部13には処理装置1の制御装置1Cが接続される。処理装置1に加え、複数の処理装置1a〜1nが状態監視装置10に各種情報を送信する場合、入出力部13には、さらに、複数の処理装置1a〜1nの制御装置1Ca〜1Cnが接続される。
【0034】
次に、
図3から
図6を用いて、滅菌システムの滅菌処理方法の一例を説明する。
図3は、滅菌システムの滅菌運転データを記憶する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、滅菌システムの判定基準データを作成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5は、滅菌システムの滅菌処理の判定を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6は、滅菌システムの滅菌処理の判定を行う処理手順の他の例を示すフローチャートである。本実施形態の滅菌処理方法は、複数回の滅菌処理を行い、滅菌処理で取得した各種データを用いて、ワーストケースを抽出して判定基準データを設定し、設定したワースト基準データを用いて、今回の(評価対象の)滅菌処理が良好に実行できたかを判定する。
【0035】
滅菌処理方法は、滅菌運転データを取得する(ステップS12)。滅菌運転データは、各種センサで取得した情報である。滅菌運転データのパラメータとしては、処理装置1内の温度、圧力を含む。計測値は、時間履歴で保存する。また、滅菌運転データは、滅菌処理の対象物の情報、対象物の量、配置等の情報を含んでもよい。
【0036】
滅菌処理方法は、取得した滅菌運転データの滅菌結果を取得する(ステップS14)。滅菌結果は、CI(ケミカルインジケータ、chemical indicator)値、BI(バイオロジカルインジケータ、biological indicator)値、オペレータが確認した評価値の少なくとも1つである。滅菌結果は、滅菌運転データの取得と同時に取得する必要はなく、それぞれの検査、確認が完了した後に入力すればよい。CI(ケミカルインジケータ、chemical indicator)値、BI(バイオロジカルインジケータ、biological indicator)値は、滅菌処理時に処理装置1にサンプルを載置し、滅菌処理後にサンプルを回収して、それぞれの値を評価することで、滅菌運転データに対応する滅菌処理を評価することができる。
【0037】
滅菌処理方法は、取得した滅菌運転データと、滅菌結果とを対応付けて保存する(ステップS16)。これにより、滅菌処理方法は、滅菌運転プログラムと滅菌運転データと滅菌結果とが対応付けられたデータを複数取得し、収集データとする。収集データは、滅菌が成功したデータと、滅菌に失敗したデータと、を含む。
【0038】
次に、
図4を用いて、判定基準データの作成方法の一例を説明する。なお、
図4の処理は、収集データが更新される毎に行っても、一定数の滅菌運転データが追加される毎に行っても、一定期間経過毎に行ってもよい。滅菌処理方法は、収集データから滅菌運転データを抽出する(ステップS20)。つまり、滅菌処理方法は、収集データに含まれる複数の滅菌運転データから1つの滅菌運転データを選択し、抽出する。前記抽出に先駆けて、収集データから、最小二乗法等で今回の滅菌運転データに近似している近似収集データや滅菌運転プログラムが類似した類似収集データに絞り込んでおいてもよい。滅菌処理方法は、抽出データ、つまり抽出した滅菌運転データの滅菌は、良好かを判定する(ステップS22)。滅菌処置方法は、滅菌結果に基づいて、滅菌が良好か、滅菌が失敗したかを判定する。
【0039】
滅菌処理方法は、抽出データの滅菌が良好ではない(ステップS22でNo)、つまり、滅菌が失敗している滅菌運転データである場合、抽出データを滅菌失敗のデータベースに保存する(ステップS24)。滅菌処理方法は、その後ステップS30に進む。
【0040】
滅菌処理方法は、抽出データの滅菌が良好である(ステップS22でYes)、つまり、滅菌が成功している滅菌運転データである場合、ワースト基準データよりも悪いデータであるかを判定する(ステップS26)。例えば、滅菌処理方法は、脱気時の処理装置1内の圧力等に基づいて真空到達度を基準として判断する場合、抽出データの真空到達度が、ワースト基準データよりも悪い(真空度が低い、圧力値としては高い)と、ワースト基準データよりも悪いデータであると判定する。滅菌処理方法は、処理装置1内の温度に基づいて、昇温速度を基準として判断する場合、抽出データの昇温速度が、ワースト基準データよりも悪い(温度の上昇速度が大きい、到達温度が低い)と、ワースト基準データよりも悪いデータであると判定する。滅菌処理方法は、滅菌時間を基準として判断する場合、処理装置1内の温度、圧力が所定の条件に到達している間の時間を算出し、滅菌時間がワースト基準データよりも短いと、ワースト基準データよりも悪いデータであると判定する。滅菌処理方法は、F値を基準として判断する場合、抽出データのF値が、ワースト基準データよりも悪い(菌の致死率が低い、生存している菌が多い)と、ワースト基準データよりも悪いデータであると判定する。
【0041】
滅菌処理方法は、ワースト基準データよりも悪いデータである(ステップS26でYes)と判定した場合、あるいはワースト基準データがない場合には、評価対象のデータをワースト基準データに設定し(ステップS28)、ステップS30に進む。滅菌処理方法は、ワースト基準データよりも悪いデータではない(ステップS26でNo)と判定した場合、そのままステップS30に進む。つまり、評価対象のデータの方が、ワースト基準データよりも条件がよいと判定した場合、ワースト基準データを維持する。
【0042】
滅菌処理方法は、ステップS24、ステップS28の処理を実行した後、またはステップS26でNoと判定した場合、蓄積データの評価が完了したかを判定する(ステップS30)。滅菌処理方法は、蓄積データの評価が完了していない(ステップS30でNo)、つまり、評価していない滅菌運転データがある場合、ステップS20に戻り、評価していない滅菌運転データについて、上述した処理を実行する。滅菌処理方法は、蓄積データの評価が完了した(ステップS30でYes)と判定した場合、本処理を終了する。滅菌処理方法は、上記処理で、滅菌運転データから滅菌が成功した運転のうち、最も失敗に近い滅菌運転データをワースト基準データとして抽出する。また、滅菌処理方法は、ステップS22で、滅菌運転データから滅菌が成功した滅菌運転データを抽出することで、成功した滅菌運転データに対して順番にステップS26の処理を実行することができる。滅菌処理方法は、上記処理を繰り返すことで、滅菌が成功した滅菌運転データを複数含むデータユニットを生成することができる。また、滅菌処理方法は、滅菌に失敗した滅菌運転データを滅菌失敗のデータベースに蓄積する。
図4の処理で作成したデータは、判定基準データ12Bに保存する。
【0043】
次に、
図5を用いて、ワースト基準データを用いて、今回実行した滅菌運転データを評価する処理の一例を説明する。滅菌処理方法は、ワースト基準データを取得する(ステップS42)。次に、滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データを取得する(ステップS44)。具体的には、今回の処理装置1で実行した滅菌処理の滅菌運転データを取得する。ステップS42とステップS44の処理は、並行して実行しても、逆の順序で実行してもよい。また、ステップS42の処理時に、
図4の処理を実行してもよい。
【0044】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好または同等であるかを判定する(ステップS46)。ここで、良好であるかの判定基準は、予め設定すればよい。判断対象は、滅菌運転データの評価対象のパラメータを1つとしても複数としてもよい。また、判断対象は、滅菌処理の全ての時間帯を対象としても、一部の時間帯を対象としてもよい。例えば、滅菌処理方法は、脱気時の処理装置1内の圧力等に基づいて真空到達度を基準として判断する場合、評価対象の滅菌運転データの真空到達度が、ワースト基準データよりも良い(真空度が高い、圧力値としては低い)場合、良好であると判定する。滅菌処理方法は、処理装置1内の温度に基づいて、昇温速度を基準として判断する場合、抽出データの昇温速度が、ワースト基準データよりも良い(温度の上昇速度が小さい、到達温度が高い)と、良好であると判定する。滅菌処理方法は、滅菌時間を基準として判断する場合、処理装置1内の温度、圧力が所定の条件に到達している間の時間を算出し、滅菌時間がワースト基準データよりも長いと、良好であると判定する。滅菌処理方法は、F値を基準として判断する場合、抽出データのF値が、ワースト基準データよりもよい(菌の致死率が高い、生存している菌が少ない)と、良好であると判定する。また、同等であるかの判定も上記と同様に各種パラメータを比較して判定する。
【0045】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好または同等ではない(ステップS46でNo)、つまり評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも悪い滅菌処理であると判定した場合、滅菌失敗の可能性がありと判定し(ステップS48)、ステップS52に進む。
【0046】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好である(ステップS46でYes)、つまり評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりもよい滅菌処理であるデータであると判定した場合、滅菌成功と判定し(ステップS50)、ステップS52に進む。ここで、滅菌処理方法は、例えば、滅菌運転データの評価対象パラメータが、ワースト基準データの評価対象パラメータの値以上である場合、滅菌処理が成功であると判定する。また、滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データと同等である場合、滅菌成功と判定する。
【0047】
滅菌処理方法は、ステップS48、ステップS50の処理を実行した後、判定結果を出力する(ステップS52)。具体的には、判定結果をコンピュータ6や携帯通信端末装置7に出力し、オペレータに通知する。
【0048】
滅菌システム100及び滅菌処理方法は、以上のように、滅菌を成功した滅菌運転データを用いて、滅菌が成功した中で最も条件が悪い、つまり最も失敗する可能性が高かった滅菌運転データ抽出し、ワースト基準データを設定し、ワースト基準データに基づいて、評価対象(今回)の滅菌運転データを評価することで、滅菌処理の実行中または実行直後に、滅菌が成功しているか、失敗の可能性があるかを判定することができる。また、過去の実績に基づいて判定することで、判定の精度を高くすることができる。これにより、再度滅菌処理が必要か、滅菌完了で次の工程に進んでよいかを迅速にかつ高い精度で判定することができる。
【0049】
また、本実施形態は、滅菌を成功した滅菌運転データから、条件が最も悪い滅菌運転データを抽出して、ワースト基準データとすることで、実際のデータに基づいて比較することができる。
【0050】
滅菌処理方法のワースト基準データの作成方法はこれに限定されず、滅菌を成功した複数の滅菌運転データを組み合わせて、失敗に最も近い滅菌運転データを作成し、ワースト基準データとしてもよい。また、ワースト基準データは、滅菌運転データと同様のデータ形式である必要はなく、滅菌処理の成否の判断基準となる、タイミングの条件を抽出し、抽出したタイミングで満たす必要がある条件をワースト基準データとして用いてもよい。
【0051】
図5に示す滅菌処理方法は、ワースト基準データを用いて判定を行ったが、さらに滅菌失敗のデータベースを用いて、判定を行ってもよい。
図6を用いて、処理の一例を説明する。
図6は、滅菌システムの滅菌処理の判定を行う処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【0052】
滅菌処理方法は、ワースト基準データを取得する(ステップS42)。次に、滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データを取得する(ステップS44)。具体的には、今回の処理装置1で実行した滅菌処理の滅菌運転データを取得する。ステップS42とステップS44の処理は、並行して実行しても、逆の順序で実行してもよい。また、ステップS42の処理時に、
図4の処理を実行してもよい。
【0053】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好または同等であるかを判定する(ステップS46)。ここで、良好であるかの判定基準は、上述の各種判定方法を用いることができ、予め設定すればよい。判断対象は、滅菌運転データの評価対象のパラメータを1つとしても複数としてもよい。また、判断対象は、滅菌処理の全ての時間帯を対象としても、一部の時間帯を対象としてもよい。
【0054】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好または同等ではない(ステップS46でNo)、つまり評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも悪い滅菌処理であると判定した場合、評価対象の滅菌運転データと滅菌失敗データベースとのデータとの比較を行う(ステップS62)。滅菌処理方法は、ステップS62で比較を行った結果、評価対象の滅菌運転データより、条件のよいまたは同等の失敗データ、つまり滅菌失敗データベースの滅菌運転データベースがあるかを判定する(ステップS64)。条件がよいとは、より滅菌が行えている可能性が高い条件である。判定の基準は予め設定すればよい。例えば、温度が高い、滅菌剤の圧力が高い、減圧処理時の圧力が低い等の場合条件がよいと設定することができる。評価対象の滅菌運転データと、滅菌失敗データベースとの比較に基づいた判定も、上述したワースト基準データとの判定を行う各種方法を用いることができる。
【0055】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データより、条件のよいまたは同等の失敗データがない(ステップS64でNo)と判定した場合、つまり、ワースト基準データよりも条件が悪く、かつ、滅菌失敗データベースの滅菌運転データよりも条件が良い場合、滅菌失敗の可能性がありと判定し(ステップS66)、ステップS52に進む。滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データより、条件のよいまたは同等の失敗データがある(ステップS64でYes)と判定した場合、滅菌失敗と判定し(ステップS68)、ステップS52に進む。
【0056】
滅菌処理方法は、評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりも良好または同等である(ステップS46でYes)、つまり評価対象の滅菌運転データが、ワースト基準データの滅菌運転データよりもよいまたは同等の滅菌処理のデータであると判定した場合、滅菌成功と判定し(ステップS50)、ステップS52に進む。
【0057】
滅菌処理方法は、ステップS50、ステップS66、ステップS68の処理を実行した後、判定結果を出力する(ステップS52)。具体的には、判定結果をコンピュータ6や携帯通信端末装置7に出力し、オペレータに通知する。
【0058】
滅菌処理方法は、
図6に示すように、ワースト基準データに加え、滅菌失敗データベースに保存した、滅菌を失敗した滅菌運転データに基づいて、今回の滅菌運転データを判定することで、滅菌処理を失敗しているか否かも高い精度で判定することができる。これにより、滅菌を成功したか、失敗の可能性があるか、失敗しているかで分けることができ、それぞれの滅菌処理をした対象物に対して適切な事後処理を行うことができる。
【0059】
また、滅菌運転データは、温度、圧力等の運転時にセンサで取得できる条件に加え、滅菌処理する対象物の量、配置等を用いて、ワースト基準データ、及びワースト基準データを用いた判定条件を設定することが好ましい。これにより、滅菌処理の条件の変化により適切に応じた判定を行うことができ、精度をより高くすることができる。
【0060】
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0061】
例えば、本実施形態の滅菌システム100は、滅菌運転データを状態監視装置10に記憶させたが、各種データをクラウドに保存してもよい。また、滅菌システム100は、状態監視装置10の機能をクラウドで実行しても、つまり、公衆回線を介して設置されたサーバとしてもよい。