【解決手段】ロボットシステム10では、作業ツールTが交換可能な複数のロボットRによって、ワークWに対して順番に作業をする。走行型のツールキャリアー16は、複数のロボットRにそれぞれ対応したツール交換位置Ptに移動可能であり、作業ツールTを複数種類積載可能ある。ワークWは複数のロボットRに対して循環搬送され、複数のロボットRのうち少なくとも1台に対して複数回搬送される。ワークWが複数回搬送されるロボットRは、対応するツール交換位置Ptに着いたツールキャリアー16との間で作業ツールTを異なる種類に交換し、ワークWの複数回搬送にともなって該ワークWに対して異なる作業をする。ワークWは、走行型のワークキャリアー14によって搬送される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかるロボットシステムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。ロボットシステム10は、作業ツールTが交換可能な複数の作業ロボットによって、ワークWに対して順番に作業をする生産システムである。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかるロボットシステム10の模式図である。ロボットシステム10は、基本的に、ワークWが循環搬送される2以上のステーションSを備える。なお、ステーションSは、後述するワーク循環路18に沿って環状に配置される。ステーションSの数が2である場合にも、ステーションSはワーク循環路18に沿って環状に配置することが可能である。この場合にも、ワークWは「往復搬送」ではなくワーク循環路18に沿った「循環搬送」が可能であることはもちろんである。
【0021】
ステーションSは作業ステーションSO、作業者ステーションSH、待機ステーションSW(
図6参照)および搬入搬出ステーションSL(
図2参照)に分けられる。さらに、これらとは別にツール格納ステーションSCが設けられてもよい。
図1におけるロボットシステム10は、作業ステーションSO1,SO2,SO3(代表的に作業ステーションSOとも呼ぶ)、およびツール格納ステーションSCを備えている。なお、本願における「ステーション」とは説明の便宜上で概念的なものであって、ワークWが搬入されて停止する場所とその周辺部を示すものであり、「ステーション」としての具体的機構は特段必要ないが、例えばワークWの位置決めをする機構などが設けられていてもよい。
【0022】
作業ステーションSOにはそれぞれロボットRが設けられている。ロボットRは例えば産業用多関節型の作業ロボットであり、先端にはエンドエフェクタとしての作業ツールTが取り付けられている。ロボットRはプログラムやティーチング等の手段で動作の変更が可能であり汎用に用いることができる。ロボットRはロボット制御部Raによって制御される。
【0023】
作業ツールTは複数種類が用意されており、ロボットRでは作業ツールTの交換が可能である。
図1では、作業ステーションSO1,SO2およびSO3の各ロボットRに対して、順に作業ツールT1,T2およびT3が取り付けられている。作業ツールTには様々なものがあり、例えばクリーニングツール、接着剤塗布ツール、グリッパ、加圧ツール、刻印ツール、スタンピングツール、ペイントツール、切削ツール、研磨ツール、ネジ止めツール、センサ、カメラなどである。作業ツールTで行う作業はワークWに対して直接に加工を加えるものの他に、例えば計測、検査などが含まれる。一般的に1つの作業ツールTは1台のロボットRより相当に廉価である。
【0024】
ロボットシステム10は主制御部12によって統括的に制御される。主制御部12は各制御対象(ロボット制御部Ra、後述するワークキャリアー14、ツールキャリアー16など)に対して有線または無線により制御を行う。主制御部12はネットワークを介して制御対象を制御してもよい。主制御部12は1台でもよいし、複数台によって分散制御をする構成でもよい。
【0025】
ロボットシステム10は、ワークWを載置可能なワークキャリアー14と、作業ツールTを複数種類積載可能なツールキャリアー16とを備える。ワークキャリアー14は、複数のロボットRにそれぞれ対応したワーク作業位置Poに移動可能な走行型である。ツールキャリアー16は、複数のロボットRにそれぞれ対応したツール交換位置Ptに移動可能な走行型である。ツールキャリアー16およびワークキャリアー14は主制御部12の制御下に走行するが、ある程度の自律性を有する自走型でもよい。自律性を有する場合、ツールキャリアー16およびワークキャリアー14は相互間および他の障害物との接触を避けるための自ら判断して回避または一時停止する。ワークキャリアー14は、基本的には作業ステーションSO、待機ステーションSW、および作業者ステーションSHの合計数N以上である。ツールキャリアー16は、基本的には1台であるが、条件により複数台設けてもよい。
【0026】
ワークキャリアー14はワークWを載置するターンテーブル14aを有する。ワークキャリアー14は、ワークWを載置した状態で各ワーク作業位置Poを接続するワーク循環路18に沿って循環し、ワークWを循環搬送する。ワークキャリアー14は、各ワーク作業位置Poで所定のタスク時間だけ一時停止し、対応する作業ステーションSOにおけるロボットRがワークWに対して作業を行う。ターンテーブル14aは作業中に固定であってもよいし、作業に応じて回転してもよい。ワークWはワークキャリアー14によって複数が同時に順次搬送され、複数のロボットRが対応するワークWに対して同時に作業可能である。
【0027】
ワークキャリアー14は外からワーク循環路18に進入し、該ワーク循環路18を1周以上循環してから離脱する。つまり、ワーク循環路18におけるステーションSの合計数をNとするとき、ワークWはN+1以上のステーションS間を搬送される。さらに換言すれば、ワークWは複数のロボットRに対して循環搬送され、複数のロボットRのうち少なくとも1台に対して複数回搬送される。ワークWはワークキャリアー14によって、基本的にワーク循環路18を一方向(
図1では反時計方向)に搬送される。ワーク循環路18に入っている複数のワークキャリアー14は、基本的に順番を維持したまま、追い越しをせずに循環走行する。ワークキャリアー14がワーク循環路18に進入する箇所、および離脱する箇所は、生産計画に応じて任意に設定可能である。
【0028】
ツールキャリアー16は複数の作業ツールTを収納するツールホルダー16aを有する。ツールホルダー16aは回転可能な筒体であり、上辺に開口する複数の切欠22が形成されている。作業ツールTはロボットRに対する接続部を外周に向けた状態で切欠22に嵌まり込んでいる。ツールホルダー16aには、各ロボットRで当面必要とされる作業ツールTが収納されている。
【0029】
ツールキャリアー16は複数種類の作業ツールTを載置した状態で各ツール交換位置Ptを接続するツール搬送路20に沿って移動し、作業ツールTを搬送する。ツールキャリアー16は、ツールホルダー16aの各切欠22の空き状態と、それぞれに収納されている作業ツールTの種類を記憶し、または適宜検知することができ、ロボットRに対してツールホルダー16aを適切な向きに回転させる。ロボットRは、対応するツール交換位置Ptに着いたツールキャリアー16との間で作業ツールTを異なる種類に交換し、ワークWの複数回搬送にともなって該ワークWに対して異なる作業をする。
【0030】
具体的には、ツールキャリアー16はツール交換位置Ptに着くと、ツールホルダー16aを回転させて空き状態の切欠22をロボットRの側へ向ける。ロボットRはその時点で装着されている作業ツールTを空き状態の切欠22に挿入し、所定の処理によって現状の作業ツールTの切り離しを行う。ツールキャリアー16はツールホルダー16aを回転させて、ロボットRが次に必要とする作業ツールTを該ロボットRの側へ向ける。ロボットRは自身の側に向いている作業ツールTの装着処理を行う。このようにして、ロボットRは作業ツールTを適宜交換することができる。
【0031】
なお、ワーク循環路18およびツール搬送路20は概念的なものであり、特段の専用走行路などはなくてもよい。ワーク循環路18およびツール搬送路20は固定的なものではなく、例えばワークキャリアー14およびツールキャリアー16は障害物を避けて移動してもよい。作業ステーションSOは、ワーク循環路18に対して等間隔に設けられていると効率的であるが、製造現場のレイアウト等によっては適宜不等間隔に設けてもよい。ワーク循環路18およびツール搬送路20(後述するワーク循環搬送ライン18Aおよびツール搬送ライン20Aを含む)は、図示のような円形に限らず、例えば製造区画に応じて矩形にしてもよい。
【0032】
ツールキャリアー16はツール搬送路20を走行するが、随時時計方向および反時計方向に走行してよく、また必ずしも循環走行である必要はない。
図1ではワーク循環路18の外周側に各ロボットRが配置され、さらにその外周側にツール搬送路20が設定されているが、配置順はこれに限られず、例えばロボットRがワーク循環路18の内周側に配置されてもよいし、ツール搬送路20がロボットRの内周側に設定されていてもよい。
【0033】
ツール格納ステーションSCは複数種類の作業ツールTを格納するツールストッカー24と、ロボットRとを備える。ツールストッカー24は上下方向または水平方向に並列された複数のストッカー壁24aを備えるストッカー壁24aには、作業ツールTが嵌まり込む複数の切欠22が形成されている。この切欠22は、ツールキャリアー16におけるものと同じである。ツールストッカー24で格納可能な作業ツールTの数は、ツールキャリアー16で格納可能な作業ツールTの数よりも多い。
【0034】
ツール格納ステーションSCでは、ツールストッカー24に作業ツールTを格納するとともに、該ツールストッカー24とツールキャリアー16との間でロボットRによって作業ツールTの入れ替えを行う。すなわち、ツール格納ステーションSCにおけるロボットRは、ツールキャリアー16とツールストッカー24との間で作業ツールTを入れ替えるツール入替機として機能する。
【0035】
具体的には、ツールキャリアー16がツール格納ステーションSCのツール格納位置Pcに着くと、ロボットRはツールストッカー24の作業ツールTをツールキャリアー16に載せ替え、および/またはツールキャリアー16の作業ツールTをツールストッカー24に載せ替える。このとき、ツールキャリアー16は、適宜ツールホルダー16aを回転させて所定の切欠22をロボットRの側へ向ける。作業ツールTの載せ替えが終了したツールキャリアー16はツール搬送路20に復帰する。ツールキャリアー16とツールストッカー24との間の作業ツールTの載せ替え処理は、ロボットシステム10における生産開始時、生産途中、および生産終了後の任意のタイミングで行われる。なお、作業ステーションSO1,SO2およびSO3には工程の優先順序がなく、生産計画によりいずれの作業ステーションSOから作業を開始してもよい。すなわち、ロボットシステム10には回転対称性があると言える。
【0036】
次に、変形例にかかるロボットシステム10Aについて説明する。ロボットシステム10Aにおいて、上記のロボットシステム10と同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
図2は、変形例にかかるロボットシステム10Aを示す模式図である。
【0037】
図2に示すように、ロボットシステム10Aは、作業ステーションSO1,SO2,SO3、搬入搬出ステーションSL、複数の搬送テーブル(ワークキャリアー)26、ワーク循環搬送ライン18A、ツール搬送ライン20Aおよびツールストッカー24を備えている。
【0038】
搬送テールブル26は、ターンテーブル26aにワークWを載置して該ワークWを搬送するもので、上記のワークキャリアー14に相当する。搬送テーブル26は、ワーク循環搬送ライン18Aに複数(例えば4台)が設けられており、該ワーク循環搬送ライン18Aをそれぞれ循環し、ワーク作業位置Po、搬入搬出位置Pl、またはその他の箇所で一時停止する。ワーク循環搬送ライン18Aは,ワーク作業位置Poを含む環状の搬送ラインである。
【0039】
ツール搬送ライン20Aは、ツールストッカー24が搬送される経路である。ツールストッカー24は、ツール搬送ライン20Aに沿って搬送される。
【0040】
ツールストッカー24は複数種類の作業ツールTを載置した状態で各ツール交換位置Ptを接続するツール搬送ライン20Aに沿って循環し、作業ツールTを循環搬送する。ロボットRは、対応するツール交換位置Ptに着いたツールストッカー24との間で作業ツールTを異なる種類に交換し、ワークWの複数回搬送にともなって該ワークWに対して異なる作業をする。すなわち、ロボットシステム10Aにおけるツールストッカー24は、ロボットシステム10におけるツールキャリアー16の働きをする。ツールストッカー24は複数台あってもよい。
【0041】
搬入搬出ステーションSLは、対応する搬入搬出位置Plに着いた搬送テーブル26に対して、ロボットRがワークWの搬入および搬出をする場所である。ワーク循環搬送ライン18Aの近傍には、複数のワークWを搭載可能な搬送台車28が横付けされる。ロボットRは搬送台車28に設けられている。つまり、搬送台車28が駐車する任意箇所を搬入搬出ステーションSLとすることができるが、搬入搬出ステーションSLおよびロボットRをいずれかの箇所に固定してもよい。ロボットRは、搬送台車28の所定位置に載置された未加工のワークWを取り出して搬送テーブル26のターンテーブル26aに載置する。また、ロボットRは搬送テーブル26のターンテーブル26aに載置された加工済のワークW’を取り出して搬送台車28の所定位置に載置する。
【0042】
搬入搬出ステーションSLのロボットRおよび搬送台車28は、それぞれ搬入用と搬出用とで分けてもよい。搬入搬出ステーションSLは、搬入用ステーションと搬出用ステーションとに分けてもよい。搬入搬出ステーションSLのロボットRは、搬入搬出用の専用機械に置き替えてもよい。ワーク循環搬送ライン18A、ツール搬送ライン20Aは、例えばベルトコンベアやレールなどが挙げられる。ワーク循環搬送ライン18Aおよびツール搬送ライン20Aがレールである場合には、搬送テーブル26およびツールストッカー24は該レールに沿って自走する。
【0043】
なお、ワーク循環路18およびワーク循環搬送ライン18Aには、作業ステーションSOおよび搬入搬出ステーションSLの他に、作業者ステーションSHおよび待機ステーションSWが設けられる場合がある。作業者ステーションSHは、作業者がワークWに対して直接的に作業をするステーションである。待機ステーションSWは、ワークWに対する特段の作業がないステーションである。
【0044】
次に、ロボットシステム10,10Aにおいて行われるワークWの加工例について説明する。
【0045】
図3は、加工済のワークW’を示す模式図である。ワークW’は母材となるワークWの上面WtにサブワークWsが取り付けられたものである。上面WtにサブワークWsを取り付けるには、まずタスクAとして上面Wtをクリーニングする。次に、タスクBとして上面Wtに接着剤を塗布する。そして、タスクCとして上面WtにサブワークWsを載せる。その後必要に応じて、タスクDとしてサブワークWsをワークWに対して加熱圧縮して接着力の強化を図る。タスクA,B,CおよびDは、順に作業ツールTA,TB,TCおよびTDによって行われる。これらのタスクA〜Dは順序付けられた順序作業である。作業ツールTA〜TCはロボットRに対して着脱可能である。
【0046】
なお、順序作業はなるべく連続して短時間で行うことが望ましい場合がある。例えば、所定のワークWに対してタスクAのクリーニングを行った後には、再び汚損が発生しないうちに速やかにタスクBの接着剤塗布を行うことが望ましい。またタスクBを行った後には、接着剤が硬化しないうちに速やかにタスクCのサブワークWsの載置を行うことが望ましい。そのため、後述する各作業手順では原則として順序作業は連続して行い、各順序作業の間には、次に説明する任意順作業を行わないこととしている。
【0047】
加工済のワークW’にはペイント部Wpが形成されている。
図3のドット地はペイント部Wpのペイントを示している。また、ワークW’には刻印部Wnが形成されている。さらに、ワークW’にはマークWmが記されている。ペイント部Wpは、タスクaとしてペイント用の作業ツールTaによって形成される。刻印部Wnは、タスクbとして刻印用の作業ツールTbによって形成される。刻印部Wnは例えばレーザによってナンバーや製造日が刻印される。マークWmは、例えばシール貼り付けにより記される。このシールは、タスクcとしてマーク用の作業ツールTcによって貼り付けされる。貼り付けるシールは作業ツールTcに相当数が予めセットされている。
【0048】
これらのタスクa,b,cは特段の優先順位はなく、順序付けのない任意順作業である。作業ツールTa〜TcはロボットRに対して着脱可能である。タスクA〜Dおよびタスクa〜cは、それぞれ作業時間が概ね等しくなるよう、時間的対称性を考慮して設定されている。もし、いずれかのタスクの時間が比較的長い場合には、該タスクを2以上に分割してもよい。例えば、タスクaによるペイントの面積が広くて時間がかかる場合には、ペイント面を複数に区分けして2以上のステーションで行ってもよい。タスクA〜Dおよびタスクa〜cは、それぞれ作業ステーションSO1〜SO3のいずれでも実行可能である。
【0049】
次に、ロボットシステム10によってワークWを加工して製品としてのワークW’を生産する手順について説明する。
図4は、ロボットシステム10による第1の生産手順を示す工程チャートである。
図5は、ロボットシステム10による第2の生産手順を示す工程チャートである。
図6は、ロボットシステム10による第3の生産手順を示す工程チャートである。
図7は、ロボットシステム10による第4の生産手順を説明する表であり、(a)は工程チャートであり、(b)はツールキャリアー16の第1動作チャートであり、(c)はツールキャリアー16の第2動作チャートである。
【0050】
図4〜
図7では、各ステーションで行われるタスクと、該タスクで用いられる作業ツールを示している。各セルの上段がワークWの番号であり、下段が作業ツールTの種類を示す。ワークWの番号は、「W」と数字との組み合わせで示している。これらの数字は識別子であり、厳密な処理順序を示すものではない。各図で縦方向にステーション別の作業を示し、横方向に工程順の作業を示す。また、各図における太矢印はツールキャリアー16を用いた作業ツールTの交換を示す。細矢印はワークW1の搬送経路例を示す。細矢印でチャート外からの進入はワークW1がワーク循環路18に搬入されることを示し、チャート外への進出はワークW1がワーク循環路18から搬出されることを示す。煩雑となることを避けるため、他のワークW2,W3等については搬送経路の矢印を省略する。
【0051】
第1〜第3の作業手順では、ワークWに対して順序作業であるタスクA〜Cと、任意順作業であるタスクa〜cを行い、タスクDは行わない。第4の作業手順では、ワークWに対して順序作業であるタスクA〜Cと、任意順作業であるタスクa〜cを行う。
【0052】
図4に示すように第1の生産手順では、まず工程1において、ワークW1が作業ステーションSO1に搬入され、ロボットRが作業ツールTAによりタスクAの処理を行う。なお、第1の生産手順では、作業ステーションSO1,SO2,SO3の各ロボットRに対して作業ツールTA,TB,TCが予め装着されているものとする。また、作業ステーションSO2およびSO3は空き状態となっている。
【0053】
次いで、ワークW1は、ワーク循環路18に沿ってワークキャリアー14により作業ステーションSO2に搬送される。一方、空いた作業ステーションSO1にはワークW2が搬入される。そして、工程2において、ワークW1は作業ステーションSO2で作業ツールTBによりタスクBの処理が行われ、ワークW2は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われる。これらの各タスクは同時進行で行われる。この時点では作業ステーションSO3は空き状態となっている。
【0054】
次いで、ワークW1,W2は、ワーク循環路18に沿ってワークキャリアー14により作業ステーションSO2,SO3に搬送される。一方、空いた作業ステーションSO2にはワークW3が搬入される。そして、工程3において、ワークW1は作業ステーションSO3で作業ツールTCによりタスクCの処理が行われ、ワークW2は作業ステーションSO2で作業ツールTBによりタスクBの処理が行われ、ワークW3は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われる。これらの各タスクは同時進行で行われる。
【0055】
なお、ツールキャリアー16は、工程3が終了するまでに作業ステーションSO1に対応したツール交換位置Pt(
図1参照)に移動しておく。
【0056】
この時点で、ワークW1は順序処理であるタスクA〜Cが順序通りに終了している。また、ワークW2,W3についても、少なくとも順序処理の最初の処理であるタスクAは終了している。そうすると、タスクAの処理をしていた作業ステーションSO1はもはや順序処理を継続する必要はないため、次に任意順処理のタスクを分担することになる。任意順処理であるタスクa〜cは、任意順で処理可能であるが、ここではまずタスクaを行う。
【0057】
そのため、作業ステーションSO1のロボットRは、それまで装着していた作業ツールTAをツールキャリアー16におけるツールホルダー16aの所定の空き部分に取り付け、該作業ツールTAを切り離す。そして、ツールホルダー16aの所定箇所に取り付けられている作業ツールTaを装着する。すなわち太矢印で模式的に示すように、作業ツールTAを作業ツールTaに交換する。
【0058】
そして、ワークW1,W2,W3は、作業ステーションSO1,SO3,SO2に搬送される。この時点で、ワークW1はすでに3つの作業ステーションSO1,SO2,SO3を全て経由しているが、循環搬送されることからワーク循環路18から離脱することはなく、再び作業ステーションSO1に搬入される。工程4では、ワークW1,W3,W2は、作業ステーションSO1,SO2,SO3において、作業ツールTa、TB、TCによりタスクa,B,Cの作業を受ける。
【0059】
この後、ワークW1,W2,W3はワーク循環路18に沿って作業ステーションSO1,SO2,SO3に対して反時計方向に循環搬送される。そして、工程4の終了後には作業ステーションSO2では3つのワークW1〜W3に対して作業ツールTBによるタスクBの作業が終了することから、ツールキャリアー16との間で作業ツールTBを作業ツールTbに交換し、以後の工程でワークW1〜W3に対してタスクbの作業を行う。工程5の終了後には作業ステーションSO3では3つのワークW1〜W3に対して作業ツールTCによるタスクCの作業が終了することから、ツールキャリアー16との間で作業ツールTCを作業ツールTcに交換し、以後の工程でワークW1〜W3に対してタスクcの作業を行う。作業ツールTの交換時には、ツールキャリアー16は対応するツール交換位置Ptに到着している。作業ツールTを交換するのは、作業ステーションSO1,SO2,SO3のうち1箇所であることから、ツールキャリアー16は1台で足りる。
【0060】
このようにして各タスクA,B,C,a,b,cの作業が、ワークW1は工程1〜6において行われ、ワークW2は工程2〜7において行われ、ワークW3は工程3〜8において行われる。こうして3つのワークW1〜W3に対する処理は終了して、それぞれワークキャリアー14によってワーク循環路18から離脱して搬出される。これが、ロボットシステム10の第1の作業手順における第1サイクルになる。こののち、必要に応じて別のワークW4〜W6に対して第2サイクル以降を続行してもよい。
図4では、第1サイクルと第2サイクルとの境界を二点鎖線で示している。第2サイクル以降は、最初から作業ステーションSO1だけでなく,作業ステーションSO2,SO3にもいずれかのワークWが配置されて作業が行われ、システムの稼働率が高くなる。
【0061】
このようなロボットシステム10では、ワークWは複数のロボットRに対して循環搬送され、複数のロボットRのうち少なくとも1台に対して複数回搬送される。そして、ワークWが複数回搬送されるロボットRは、対応するツール交換位置Ptに着いたツールキャリアー16との間で作業ツールTを異なる種類に交換し、ワークWの複数回搬送にともなって該ワークWに対して異なる作業をする。したがって、ワークWに対して作業をする製造工程は、作業ステーションSOの数つまりロボットRの数以上の工程数に対応することができ、高価なロボットRの数を低減させてシステムを廉価に構成することができる。また、それぞれのロボットRは作業ツールTを交換可能であることから、ワークWの種類に応じて作業内容を柔軟に対応することができ、他品種少量生産に適する。
【0062】
なお、
図4に示した作業手順では、ロボットRによって作業が行われる作業ステーションSOのうち1または2を作業者によって作業が行われる作業者ステーションSHに置き替えてもよい。作業者ステーションSHは、例えばロボットRには困難な作業が作業者によって行われる。作業者ステーションSHの作業者はロボットRとは異なり、常時同じ作業をワークWに対して行うようにしてもよいし、状況により2以上の作業を順次行うようにしてもよい。
【0063】
図5に示すように第2の作業手順では、最初の工程1において作業ステーションSO1,SO2,SO3にはワークW1,W2,W3がそれぞれワークキャリアー14によって搬送されている。すなわち、空き状態のステーションはない。第2の生産手順では、作業ステーションSO1,SO2,SO3の各ロボットRに対して作業ツールTA,Tb,Tcが予め装着されているものとする。
【0064】
第2の作業手順では、全作業ステーションSOのうち、いずれか1つに順序作業のうち最初のタスクAにかかる作業ツールTAがロボットRに装着され、その他の作業ステーションSOには任意順作業にかかる作業ツールTa,Tb,TcのいずれかがロボットRに装着されているとよい。また、順序作業が複数組ある場合には、それぞれの最初の作業にかかる作業ツールTが全作業ステーションSOのうちいずれかのロボットRに装着され、その他の作業ステーションSOには任意順作業にかかる作業ツールTがロボットRに装着されているとよい。こうすると、工程1からいずれかの作業ステーションSOで順序作業を開始するとともに、その他の作業ステーションSOでは、順序作業の開始前に任意順作業を先行して実行し、空き状態の作業ステーションSOが存在せず、または空き状態の作業ステーションSOを減らすことができる。
【0065】
第2の作業手順では、ワークW1については第1の作業手順(
図4参照)と同様の作業ステーションSOで同様の作業が順に行われる。一方、工程1において、ワークW2は作業ステーションSO2で作業ツールTbによりタスクbの処理が行われ、ワークW3は作業ステーションSO3で作業ツールTcによりタスクcの処理が行われる。
【0066】
そして、各ワークWは循環してワークW1,W2,W3は、作業ステーションSO2,SO3,SO1に搬送される。順序作業のうちタスクAが終了しているワークW1は、次にタスクBを行うことが望ましいため作業ステーションSO2のロボットRは、太矢印で模式的に示すように、作業ツールTbを作業ツールTBに交換する。そして、工程2において、ワークW3は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われ、ワークW1は作業ステーションSO2で作業ツールTBによりタスクBの処理が行われ、ワークW2は作業ステーションSO3で作業ツールTcによりタスクcの処理が行われる。
【0067】
そして、ワークW1,W2,W3は循環して、作業ステーションSO3,SO1,SO2に搬送される。順序作業のうちタスクBが終了しているワークW1は、次にタスクCを行うことが望ましいため作業ステーションSO3のロボットRは、太矢印で模式的に示すように、作業ツールTcを作業ツールTCに交換する。そして、工程3において、ワークW2は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われ、ワークW3は作業ステーションSO2で作業ツールTBによりタスクBの処理が行われ、ワークW1は作業ステーションSO3で作業ツールTCによりタスクCの処理が行われる。
【0068】
以後、同様に各ワークWの循環搬送と、いずれかのステーションでの作業ツールTの交換とを行いながら各ワークWに対して作業を続ける。そうすると、ワークW2は工程5で作業ツールTCによるタスクCが完了した後に作業ステーションSO1に循環搬送されるが、この時点で該作業ステーションSO1のロボットRには作業ツールTaが装着されている。ワークW2は、作業ツールTaによるタスクaが未完なので、そのままタスクaが実行される。
【0069】
また、ワークW3は工程4で作業ツールTCによるタスクCが完了した後に工程5で作業ステーションSO1に循環搬送され、工程6で作業ステーションSO2に循環搬送されるが、各時点で該作業ステーションSO1,SO2のロボットRには作業ツールTa、Tbが装着されている。ワークW3は、作業ツールTa、Tbによるタスクa,bが未完なので、そのままタスクa,bが実行される。これにより工程6の終了時点で、各ワークWは、順序作業のタスクA〜Cおよび任意順作業のタスクa〜cの全てが終了していることになる。したがって、ロボットシステム10では、ワークWに対する作業の1サイクルが終了し、各ワークWはそれぞれワーク循環路18から搬出される。
【0070】
このように、6工程で終了する第2の作業手順では、8工程を要する第1の作業手順と比較して2工程分短くすることができる。この後、ロボットシステム10では必要に応じて第2サイクル目以降を続行してもよい。第2サイクルでは、ワークW4〜W6が作業ステーションSO1〜SO3に搬入された後に、最初の工程1が実行される。この第2サイクルの工程1は、第1サイクルの工程1と比較して、ワークW1〜W3がワークW4〜W6に入れ替わっただけであり、第1サイクルと同様に実行可能である。
【0071】
ここでは各ワークWに対してタスクA〜Cおよびタスクa〜cの合計6つの作業が必要であることから、最低限として6つの工程を要する。第2の作業手順では空き状態の作業ステーションSOが存在しないことから、最低限の工程数で1サイクルを終えることができる。
【0072】
運転開始時にロボットRのうち少なくとも1台は順序作業のうち最初の作業を行い、同時並行してロボットRのうち少なくとも他の1台は任意順作業のうち1つを行うことによって、工程数の削減を図ることができる。すなわち、ロボットシステム10ではワーク循環路18によってワークWが環状に搬送されることから工程順序の柔軟性があって、このような工程数の削減が可能になっている。また、運転開始時に、複数のロボットRの全てが同時並行して自身が受け持つワークWに対して作業を行うことにより、空き状態の作業ステーションSOがなくなり、工程数をさらに削減するとともにシステム稼働率を向上させることができる。
【0073】
従来技術にかかるライン生産方式(ステーションが直列定期に配置されたもの)では、運転開始時に最初のステーション以外は空き状態となっており、特に少量生産時には空き状態による稼働率の低さが問題となる。これに対して、ロボットシステム10では、運転開始時の稼働率を向上させることができる。
【0074】
図6に示すように第3の作業手順は、作業ステーションSO1,SO2と、待機ステーションSWとを用いて実行される。待機ステーションは、例えば上記の作業ステーションSO3の代わりに設定されるものであり、ワークWに対して特段の作業が行われないステーションである。すなわち、この場合ワークWは、複数の作業ステーションSO、および作業を受けない待機ステーションSWを循環するように搬送される。第3の作業手順は、例えばロボットシステム10で作業ステーションSO3のロボットRが何らかの理由により使用できない場合に適用される。
【0075】
第3の作業手順では、最初の工程1において作業ステーションSO1,SO2にはワークW1,W3がそれぞれワークキャリアー14によって搬送されている。作業ステーションSO3は、空き状態でもよいし、ワークW2が搬入されていてもよい。第3の生産手順では、作業ステーションSO1,SO2の各ロボットRに対して、順に作業ツールTA,Tbが予め装着されているものとする。
【0076】
第3の作業手順では、工程1において、ワークW1は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われ、ワークW3は作業ステーションSO2で作業ツールTbによりタスクbの処理が行われる。
【0077】
そして、ワークW1,W3は循環して、作業ステーションSO1,SWに搬送される。ワークW2は作業ステーションSO1に搬入される。順序作業のうちタスクAが終了しているワークW1は、次にタスクBを行うことが望ましいため作業ステーションSO2のロボットRは、太矢印で模式的に示すように、作業ツールTbを作業ツールTBに交換する。そして、工程2において、ワークW2は作業ステーションSO1で作業ツールTAによりタスクAの処理が行われ、ワークW1は作業ステーションSO2で作業ツールTBによりタスクBの処理が行われる。このとき、ワークW3はステーションSWで待機する。
【0078】
以後、同様に各ワークWの循環搬送を行う。また、作業ステーションSO1では工程3および工程6の後に作業ツールTの交換を行い、作業ステーションSO2では工程4および工程7の後に作業ツールTの交換を行う。
図6から了解されるように、ワークW1は工程8で全ての作業が終了して搬出される。またワークW2およびW3は工程9で全ての作業が終了して搬出される。これは、第1の作業手順(
図4参照)と比較して1工程増えるだけである。このように、ロボットシステム10ではロボットRの数が減っても、柔軟に対応してワークWに対する作業を行うことができる。
【0079】
次に、
図7を参照しながら第4の作業手順について説明する。第4の作業手順についてはツールキャリアー16の動作についても併せて説明する。
【0080】
図7(a)に示すように、第4の作業手順では4つの作業ステーションSO1,SO2,SO3およびSO4が用いられる。これらの作業ステーションSOはそれぞれロボットRを備え、ワーク循環路18に等間隔に配置されているものとする。また、第4の作業手順では、任意順作業であるタスクa〜bと、順序作業であるタスクA〜Dとを実行するものとする。
【0081】
第4の作業手順は、第2の作業手順(
図5参照)に対して、構成として作業ステーションSO4が追加され、作業としてタスクDが追加されたものである。タスクDは順序作業であることから、タスクCの後に実行される。第4の作業手順は、第2の作業手順と同様に工程1では、順序作業のタスクA(作業ツールTA)に対応する作業ステーションSO1にはワークW1が搬入されており、その他の作業ステーションSO2〜SO4は任意順作業であるタスクa〜cに対応しており、ワークW2,W3,W4が搬入されている。
【0082】
第4の作業手順においては、順序作業はタスクA,B,C,Dの順(つまり、作業ツールTA,TB,TC,TDの順)に行うが、任意順作業についてはタスクc,b,a(つまり、作業ツールTc,Tb,Taの順)の順に行う。ただし、ワークW1については順序作業の後に任意順作業を行うが、ワークW2については順序作業の前に3つの任意順作業を行う。ワークW3についてはタスクc,bを順序作業に先行して行い、順序作業の後にタスクaを行う。ワークW4についてはタスクbを順序作業に先行して行い、順序作業の後にタスクb,aを行う。
【0083】
ここでは各ワークWに対してタスクA〜Dおよびタスクa〜cの合計7つの作業が必要であることから、最低限として7つの工程を要する。第4の作業手順では空き状態の作業ステーションSOが存在しないことから、最低限の工程数で1サイクルを終えることができる。
【0084】
また、第2サイクルの工程1では、作業ステーションSO1〜SO3は、第1サイクルの最終段階である工程7の作業ツールTc,TbおよびTaをそのまま継続して使用する。そして作業ステーションSO4では作業ツールTDを作業ツールTAに交換する。第4の作業手順では作業ステーションSOに関係なく、作業ツールTは、TA→Tc→TB→Tb→TC→Ta→TD→TA→…の順で交換される。
【0085】
第1サイクルの工程1における各作業ツールTと、右端部の第2サイクルの工程1における各作業ツールTとを比較すると、作業ステーションSOが1つずつずれている。ワーク循環路18には始点や終点が特に規定されてなく、基本的にはエンドレスに利用が可能な回転対称性を有していることから、このように作業ステーションSOがずれても主制御部12のプログラム上で対応関係を1つシフトさせるだけでそのまま次のサイクルを続行することができる。つまり、ロボットシステム10では、主制御部12などにおける制御手順を簡便にすることができる。
【0086】
図7(b)に示すように、ツールキャリアー16は切欠22(
図1参照)が8つ設けられており、#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8として識別されている。#1は作業ツールTAが格納される場所であり、#2は作業ツールTBが格納される場所であり、#3は作業ツールTCが格納される場所であり、#4は作業ツールTDが格納される場所であり、#5は作業ツールTaが格納される場所であり、#6は作業ツールTbが格納される場所であり、#7は作業ツールTcが格納される場所である。すなわち、第4の作業手順では7種類の作業ツールTを用いるが、ツールキャリアー16では各作業ツールTにそれぞれ専用の格納場所が確保されている。#8は予備である。
【0087】
ツールキャリアー16は、まず作業ステーションSO3,SO4,SO1,SO2を巡り、ロボットRに対して順に作業ツールTb,Ta,TA,Tcを供給し、装着させる。ツールキャリアー16はそのまま作業ステーションSO2で待機する。
【0088】
その後工程1が終了すると、作業ステーションSO2のロボットRは作業ツールTcをツールキャリアー16における#7の切欠22に入れて切り離す。そして、#2に格納されている作業ツールTBに交換する。
【0089】
このようにして、ツールキャリアー16は、ステーション間をSO2→SO3→SO4→SO1→SO2→…の順で循環移動する。そして、到着した作業ステーションSOのロボットRは、それまで装着されていた作業ツールTを決められた切欠22に入れて切り離し、次に必要となる作業ツールTに交換する。
【0090】
ツールキャリアー16は、各工程が行われている間に隣接する作業ステーションSOに移動するだけでよく、移動距離が短い。なお、ツールキャリアー16はワークW1に伴うように移動している。したがって、条件によってはワークW1を搬送するワークキャリアー14にツールキャリアー16の機能を併設してもよい。ツールキャリアー16は、7つの作業ツールTの格納場所が決まっていることから、ツールホルダー16a(
図1参照)の向きは作業ツールTの種類に応じて一義的に決まり、該ツールホルダー16aの回転制御が容易である。
【0091】
また、ツールホルダー16aが回転型でない場合(
図2のツールストッカー24を用いるような場合)にはロボットR自身が作業ツールTの載せ替え位置を判断するが、作業ツールTの格納場所が決まっていると、空き状態の判断処理などが不要で、交換が容易である。
【0092】
図7(c)に示すように、ツールキャリアー16は切欠22(
図1参照)の数が、#1,#2,#3,#4の4つであってもよい。この場合、ツールキャリアー16は、まず作業ツールTA,Tc,Tb,Taを格納して作業ステーションSO1,SO2,SO3,SO4を巡り、ロボットRに対して順に供給し、装着させる。ツールキャリアー16は、一度ツール格納ステーションSCへ行き、ツールストッカー24から作業ツールTB,TC,TDを#1,#2,#3の切欠22に格納する。#4の切欠22は空けておく。ツールキャリアー16は作業ステーションSO2へ移動し待機する。
【0093】
その後工程1が終了すると、作業ステーションSO2のロボットRは作業ツールTcをツールキャリアー16における空状態の#4の切欠22に入れて切り離す。そして#1に格納されている作業ツールTBに交換する。#1は空状態となる。
【0094】
このようにして、ツールキャリアー16は、ステーション間をSO2→SO3→SO4→SO1→SO2→…の順で循環移動する。そして、到着した作業ステーションSOのロボットRは、それまで装着されていた作業ツールTを空状態の切欠22に入れて切り離し、次に必要となる作業ツールTに交換する。ツールキャリアー16または主制御部12はツールホルダー16aにおける切欠22の空状態や次に必要とされる作業ツールTの位置を記憶し、またはセンサによって検出し、所定の切欠22をロボットRの側へ向けるとよい。
【0095】
また、ツールホルダー16aが回転型でない場合(
図2のツールストッカー24を用いるような場合)には、ロボットRがツールキャリアー16または主制御部12から切欠22の空状態や次に必要とされる作業ツールTの位置を取得し、所定の交換処理を行うことができる。
【0096】
ツールキャリアー16で搭載する作業ツールTの数N
Cは、ロボットシステム10で利用する全ての作業ツールTの数をN
T、作業ステーションSOの数をN
Sとしたとき、N
C(4)≧N
T(7)―N
S(4)+1にするとよい(括弧内は
図7(c)の例である。)。N
C=N
T―N
S+1 とすることで、ツールキャリアー16が搬送する作業ツールTの数が低減され、該ツールキャリアー16を小型化することができる。ただしN
Cがこれ未満であっても、ツールキャリアー16が適宜ツール格納ステーションSCで当面不要となる作業ツールTを戻し、当面必要な作業ツールTを補充して、ロボットRの作業ツール交換処理に供してもよい。
【0097】
図4〜
図7では、各作業手順をロボットシステム10を例にして説明したが、ロボットシステム10A(
図2参照)においてもワークWの搬入搬出を搬入搬出ステーションSLで行うようにすれば、ロボットシステム10の場合と同様に実行可能である。また、ワークWはワーク循環路18またはワーク循環搬送ライン18Aに沿って環状に搬送されるが、ここでいう搬送とは相対的なものであり、作業中に各ワークWを固定し、各ロボットRが環状に移動してもよい。
【0098】
次に、ロボットシステム10,10Aによる経済的合理性の判断の一例について説明する。まず、必要となるパラメータや式について説明する。
【0099】
Eは、決まった台数を何時間で完了する必要があるのかを示す製造期間である。これは、例えば1時間で次の生産にラインを組み替える必要がある場合や、最少人件費で夜間を通して生産する場合など、設定に関わるパラメータとなる。後者の条件において、1時間で生産を終了させると、装置稼働率は10%以下となり、経済的に不適当と判断できる。後者の場合は翌朝までに終了すればよい作業であり、通常では装置稼働率は80%以上であることが望ましい。
【0100】
Nは、生産台数である。Nの生産台数はユーザー要求に合った納期で生産しなければならない。n(α)は、1工程(任意のシステム構成α)で流す生産量である。ΣF(α)は、1工程(任意のシステム構成α)の長さである。η(α)を、η(α)=n(α)/(ΣF(α))とおく。ΣC(α)は、工程αの総コストである。E/(ΣF(α))は、決まった製造期間Eに何回工程を繰り返せるかを示す式である。E・n(α)/(ΣF(α))=E・η(α)は、1つのライン(上記の例ではロボットシステム10)で期間Eに生産できる数量である。Lnは、Ln=N/{E・η(α)}で表され、期間Eに数Nを生産するに要するライン数を示す。Ln・ΣC(α)は、システムを稼働する総コストである。
【0101】
経済的合理性判断基準は、Min{Ln・ΣC(α)}で示される。すなわち、ワークWをワーク循環路18やワーク循環搬送ライン18Aに沿って環状に搬送することで、ロボットRの数が同じであれば製造期間Eを短縮できるし、同程度の製造期間EであればロボットRの数を削減することができる。
【0102】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。