【実施例】
【0022】
本実施例では、発泡層の両面に、非発泡層を積層した3層構造の発泡樹脂シートを作製した。発泡層用の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤を配合して調製した。また、非発泡層用の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂に、ポリエチレン系樹脂を配合して調製した。ポリプロピレン系樹脂としては汎用ポリプロピレン(PP)を用い、ポリエチレン系樹脂として植物由来高密度ポリエチレン(植物由来HD)を用いた。
【0023】
比較材として、非発泡層用の樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂を単独使用したもの、及び、発泡層用の樹脂組成物に植物由来HDを配合した単層構成の発泡樹脂シートを作製して評価を行った。以下、その詳細について記す。
【0024】
[樹脂組成物の調製]
表1に示すように、外層(非発泡層)、中間層(発泡層)及び内層(非発泡層)の樹脂組成物を調製した。なお、表中、「外」は外層を、「中」は中間層を、「内」は内層を、それぞれ示す。また、樹脂組成物の調製に使用した材料は以下のとおりである。
【0025】
・BC3BRF:日本ポリプロ社製PP
(密度:0.9g/cm3、MFR:12g/10min、バイオマス度:0%)
・FTS4000:日本ポリプロ社製PP
(密度:0.9g/cm3、MFR:8g/10min、バイオマス度:0%)
・SHE150:ブラスケム社製植物由来HD
(密度:0.95g/cm3、MFR:1g/10min、バイオマス度:94%)
・EE275F:永和化成工業社製無機系発泡剤
【0026】
【表1】
【0027】
[発泡樹脂シートの作製及び評価]
表1で調整した3種類の樹脂組成物を共押出機に供給し、3層の積層シートとして押出した。外層および内層の厚みは0.05mm、中間層の厚みは1.20mmとなるように調整し、全体で1.30mm厚の発泡樹脂シートを作製した。発泡樹脂シートについて、以下に示すように、発泡性、引張弾性率及びフィルムインパクトの評価を行なった。評価結果を表2に記す。
【0028】
(1)発泡性
成形された発泡樹脂シートの発泡性を以下の基準により評価した。
〇:発泡層全体にわたって均等に発泡しており、独立気泡構造の発泡シートが得られる。
×:発泡層全体にわたって均等に発泡しておらず、連続気泡構造の発泡シートとなる。
【0029】
(2)引張弾性率
JIS K7127に準拠して引張弾性率を測定した。試験片の大きさ(幅20mm、長さ150mm)、つかみ間隔100mm、引張速度5mm/minで試験を行い、応力−歪み曲線の最初の直線部分の傾きから引張弾性率を計算した。なお、試験はn=5で行い、その平均値を採用した。これをMD方向(Machine Direction)、TD方向(Traverse Direction)、それぞれについて算出した。
【0030】
(3)フィルムインパクト
発泡樹脂シートについて、フィルムインパクト測定を実施した。具体的に、100mm×100mmに切り出した試験片を東洋精機製作所製フィルムインパクトテスターに装着し、1インチの球がフィルムを突き破るときの力を測定し、これをフィルムインパクトとした。フィルムインパクトは以下の式によって算出した。測定はn=5で行ない、その平均値を採用した。
・フィルムインパクト(J)=(目盛の値)×9.8×10
−2
【0031】
【表2】
【0032】
[樹脂成形体の作製及び評価]
発泡樹脂シートを加熱し、金型を用いて上部開口を有する発泡容器を成形した。得られた発泡容器(樹脂成形体)について以下の評価を行った。評価結果を表3に記す。
【0033】
(1)圧縮時荷重
作製した発泡容器を圧縮試験機にセットする。発泡容器を上下方向に50±5mm/minの速度で圧縮し、接触位置を0mmとして、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm及び10mmまで治具で押し込み、そのときにかかる荷重を測定した。数値が大きいほど、耐圧縮性に優れていることを示す。
【0034】
(2)耐熱性試験
作製した発泡容器をオーブン内にセットし、所定の温度にて60分加熱した後、オーブンから出して30分自然法令後の蓋体の外観状況の評価を行った。加熱温度は5℃きざみとし、加熱後の容器の外観状況に変化がない上限温度を耐熱温度とした。
【0035】
【表3】
【0036】
[評価結果]
表1〜表3より、発泡層の樹脂組成物に植物由来ポリエチレンを配合した単層構成のNo.3は発泡性が悪く、独立気泡構造の発泡樹脂シートを得ることができなかった。したがって、以降の評価試験からNo.3は除外した。
【0037】
非発泡層用の樹脂組成物として、ポリプロピレン系樹脂に植物由来HDを添加したNo.1と、ポリプロピレン系樹脂を単独使用したNo.2とを比べると、発泡樹脂シートとしての特性は同等であり、実用レベルであることが確認された。また、発泡層及び非発泡層の密着性も良好であった。
【0038】
発泡樹脂シートを成形して得られた発泡容器について、No.2とNo.3を比較すると、圧縮時荷重試験において、圧縮距離3mmまでは両者は同等であるが、4mm以上になると、植物由来HDを添加したNo.2の荷重が小さくなる傾向にあることが確認された。
【0039】
耐熱試験においては、No.2及び3とも耐熱性は同等であることが確認された。以上より、No.2はNo.3と耐熱性は同等であり、耐荷重性はNo.3の方がやや良好であるものの、両者とも十分実用レベルを満たしていることが確認された。
【0040】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、上記実施例では、発泡層の両面に非発泡層が積層された3層構造の発泡樹脂シート及び発泡容器について説明したが、これに限らず、発泡層の少なくとも一面に非発泡層が積層されたものであればよい。