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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-109487(P2021-109487A)
(43)【公開日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20210705BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
   B60R21/231
   B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-1283(P2020-1283)
(22)【出願日】2020年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】ピンケル ラモン
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】八田 太伺
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA23
3D054CC04
3D054CC27
3D054CC42
3D054CC47
3D054DD14
3D054EE01
3D054EE20
3D054EE30
3D054FF13
(57)【要約】
【課題】乗員の首部及び頭部を衝撃から保護する性能を維持しつつエアバッグを小型化する。
【解決手段】ファーサイドエアバッグ装置は、車両10の側壁部12に対し外方から衝撃が加わった場合、隣り合う車両用シート13,65間でエアバッグ33,69を展開及び膨張させることで、側壁部12から遠い側の車両用シート13に着座している乗員P1の上半身を拘束し、衝撃から保護する。エアバッグ33は、乗員P1の上半身の側方であって、少なくとも首部PN及び頭部PHを含む部位の側方で展開及び膨張する主膨張部34と、主膨張部34よりも乗員P1側に配置された副膨張部51とを備える。副膨張部51は、主膨張部34と乗員P1の首部PN及び頭部PHとの間で展開及び膨張する副側部膨張部52を備える。展開及び膨張を完了した状態の副膨張部51の上端51tは、展開及び膨張を完了した状態の主膨張部34の上端34tよりも低い箇所に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗物用シートが同乗物用シートの幅方向に並設され、かつ同幅方向における両側部が一対の側壁部により構成された乗物に適用され、両側壁部のうちの一方を特定側壁部とし、前記特定側壁部に対し外方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合に、膨張用ガスをエアバッグに供給し、隣り合う前記乗物用シートの間で前記エアバッグを展開及び膨張させることで、前記特定側壁部から遠い側の前記乗物用シートに着座している乗員の上半身を拘束し、前記衝撃から保護するファーサイドエアバッグ装置であり、
前記エアバッグは、前記乗員の上半身の側方であって、少なくとも首部及び頭部を含む部位の側方で展開及び膨張する主膨張部と、前記主膨張部よりも前記乗員側に配置された副膨張部とを備え、
前記副膨張部は、前記主膨張部と前記乗員の首部及び前記頭部との間で展開及び膨張する副側部膨張部を備えており、
さらに、展開及び膨張を完了した状態の前記副膨張部の上端は、展開及び膨張を完了した状態の前記主膨張部の上端よりも低い箇所に位置しているファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記副膨張部は、前記副側部膨張部に対し連通した状態で接続され、かつ前記乗員の前記頭部の前方で展開及び膨張する副前部膨張部をさらに備えている請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記副膨張部は前記副側部膨張部のみにより構成され、
前記副側部膨張部は、前記主膨張部に隣接する第1副布部と、前記第1副布部を挟んで前記主膨張部とは反対側に配置された第2副布部とを備え、
前記副側部膨張部は、前記第1副布部の周縁部と前記第2副布部の周縁部とが副周縁結合部で相互に結合されることにより形成されており、
前記主膨張部及び前記第1副布部は、前記副周縁結合部よりも内側に設けられた環状結合部により結合されており、
前記主膨張部及び前記副側部膨張部は、前記環状結合部により囲まれた領域において、前記主膨張部及び前記第1副布部にそれぞれ形成された連通孔部により相互に連通されている請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記主膨張部は、第1主布部と、前記第1主布部よりも乗員側に配置された第2主布部とを備え、
前記主膨張部は、前記第1主布部の周縁部と前記第2主布部の周縁部とが主周縁結合部で相互に結合されることにより形成されており、
前記第2主布部の一部には、残部よりも多く前記乗員の頭部側へ突出するように膨張する膨張部が、前記副側部膨張部のみからなる前記副膨張部として形成されており、
前記副側部膨張部は、一対の突出壁部により形成され、
前記第2主布部は、一方の前記突出壁部を有する第1構成布部と、他方の前記突出壁部を有する第2構成布部とに分割され、
前記第1構成布部及び前記第2構成布部の分割部分の周縁部同士が分割周縁結合部で結合されることにより、前記副側部膨張部を有する前記第2主布部が形成されている請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物における側壁部に対し外方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合に、その側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員をエアバッグによって保護するファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車幅方向に複数の車両用シートが並設された車両の中には、ファーサイドエアバッグ装置が搭載されたものがある。このタイプのエアバッグ装置におけるエアバッグは、車両用シートのうち、隣の車両用シートに近い側の側部内にガス発生器とともに固定される。
【0003】
そして、側突等により、車両のサイドドア等の側壁部に対し、側方や斜め前側方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合には、ガス発生器から膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスにより、エアバッグが膨張して上記側部から出て、隣り合う車両用シートの間で展開及び膨張される。衝撃の加わった側壁部から遠い側の車両用シートに着座している乗員の上半身は、慣性により、その側壁部側の側方や斜め前側方へ移動しようとするが、上記エアバッグによって受け止められ、衝撃から保護される。
【0004】
上記ファーサイドエアバッグ装置の一形態として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このファーサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、バッグ下部とバッグ上部とを備えている。バッグ上部は、シートバックの肩部よりも高い箇所で展開及び膨張し、乗員の首部、頭部等を衝撃から保護する。バッグ下部は、シートバックの肩部よりも低い箇所で展開及び膨張し、乗員の肩部、腕部等を衝撃から保護する。
【0005】
バッグ上部は、車幅方向へは、隣り合うヘッドレストのそれぞれの内端部付近まで展開及び膨張する。バッグ下部は、車幅方向へは、隣り合うシートバックのそれぞれの内端部付近まで展開及び膨張する。このように、エアバッグは、乗員の車幅方向における内側の輪郭を象る形状となるように展開及び膨張する。そのため、頭部、首部、肩部、腕部等を略同じタイミングで拘束して、衝撃から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−67331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、エアバッグの形状を工夫することにより、首部、頭部等を拘束して衝撃から保護する上記特許文献1に記載されたファーサイドエアバッグ装置では、首部の側方及び頭部の側方とは異なる箇所、特に、頭部よりも高い箇所においても、エアバッグの車幅方向の寸法が不要に大きくなり、エアバッグ全体が大型化する問題がある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、乗員の首部及び頭部を衝撃から保護する性能を維持しつつエアバッグを小型化することのできるファーサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、複数の乗物用シートが同乗物用シートの幅方向に並設され、かつ同幅方向における両側部が一対の側壁部により構成された乗物に適用され、両側壁部のうちの一方を特定側壁部とし、前記特定側壁部に対し外方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合に、膨張用ガスをエアバッグに供給し、隣り合う前記乗物用シートの間で前記エアバッグを展開及び膨張させることで、前記特定側壁部から遠い側の前記乗物用シートに着座している乗員の上半身を拘束し、前記衝撃から保護するファーサイドエアバッグ装置であり、前記エアバッグは、前記乗員の上半身の側方であって、少なくとも首部及び頭部を含む部位の側方で展開及び膨張する主膨張部と、前記主膨張部よりも前記乗員側に配置された副膨張部とを備え、前記副膨張部は、前記主膨張部と前記乗員の首部及び前記頭部との間で展開及び膨張する副側部膨張部を備えており、さらに、展開及び膨張を完了した状態の前記副膨張部の上端は、展開及び膨張を完了した状態の前記主膨張部の上端よりも低い箇所に位置している。
【0010】
上記の構成によれば、乗物の特定側壁部に対し、側方から衝撃が加わると、隣り合う乗物用シートのうち、特定側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員の上半身は、慣性により、特定側壁部側の側方へ移動しようとする。また、上記特定側壁部に対し斜め前側方から衝撃が加わると、乗員の上半身は、慣性により、特定側壁部側の斜め前側方へ移動しようとする。
【0011】
一方、ファーサイドエアバッグ装置では、特定側壁部に対し、側方から又は斜め前側方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合、膨張用ガスがエアバッグに供給されて、同エアバッグが隣り合う乗物用シートの間で展開及び膨張する。
【0012】
ここで、エアバッグのうち、乗員に対し、乗物用シートの幅方向に遠い側の部分を構成する主膨張部は、乗員の上半身の側方や斜め前側方に位置する。そのため、乗員の上半身が主膨張部によって受け止められ、その上半身の側方や斜め前側方への移動が規制されて、同上半身が衝撃から保護される。
【0013】
また、上記エアバッグのうち、乗員に対し、上記幅方向に近い側の部分を構成する副膨張部は、主膨張部と乗員の頭部及び首部との間に位置する。そのため、乗員の上半身が主膨張部によって受け止められた状態で、乗員の首部及び頭部が慣性により、特定側壁部側の側方や斜め前側方へ移動しようとしても、それらの首部及び頭部は、副側部膨張部によって受け止められる。また、上記側方や斜め前側方への副側部膨張部の動きは、主膨張部によって受け止められる。首部及び頭部の側方や斜め前側方への移動が規制されて、すなわち、首部及び頭部が拘束されて、衝撃から保護される。
【0014】
上記の副膨張部及び主膨張部の両方の機能を、単一の膨張部からなるエアバッグによって実現しようとすると、副膨張部の機能を発揮する部分の上側に、首部及び頭部の保護に直接関与しない余剰部分ができ、その部分では、エアバッグの膨張厚みが適正値よりも大きくなり、エアバッグが大型化する。
【0015】
これに対し、上記の構成によるように、エアバッグを主膨張部及び副膨張部といった2つの膨張部によって構成し、副膨張部の上端を主膨張部の上端よりも低い箇所に位置させると、乗員の首部及び頭部を拘束して衝撃から保護する機能を発揮しつつ、副膨張部よりも上側の上記余剰部分を省略することが可能となる。その省略の分、エアバッグの小型化を図ることが可能となる。
【0016】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記副膨張部は、前記副側部膨張部に対し連通した状態で接続され、かつ前記乗員の前記頭部の前方で展開及び膨張する副前部膨張部をさらに備えていることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、特定側壁部に対し斜め前側方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合、副膨張部の副前部膨張部が、乗員の頭部の前方で展開及び膨張する。
【0018】
従って、特定側壁部に対し斜め前側方から衝撃が加わって、乗員の頭部が慣性により、特定側壁部側の斜め前側方へ移動しようとしても、頭部は副側部膨張部上を前方へ向けて滑った後に、副前部膨張部によって受け止められる。この場合、副前部膨張部は頭部の移動を規制する機能を発揮し、副側部膨張部は頭部の側方への移動を規制しつつ同頭部を副前部膨張部に導く機能を発揮する。そのため、副膨張部に副前部膨張部が設けられない場合に比べ、乗員の頭部の斜め前側方への移動がより規制され、乗員を衝撃から保護する性能がさらに高められる。
【0019】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記副膨張部は前記副側部膨張部のみにより構成され、前記副側部膨張部は、前記主膨張部に隣接する第1副布部と、前記第1副布部を挟んで前記主膨張部とは反対側に配置された第2副布部とを備え、前記副側部膨張部は、前記第1副布部の周縁部と前記第2副布部の周縁部とが副周縁結合部で相互に結合されることにより形成されており、前記主膨張部及び前記第1副布部は、前記副周縁結合部よりも内側に設けられた環状結合部により結合されており、前記主膨張部及び前記副側部膨張部は、前記環状結合部により囲まれた領域において、前記主膨張部及び前記第1副布部にそれぞれ形成された連通孔部により相互に連通されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によるように、第1副布部及び主膨張部のそれぞれに連通孔部を設け、両連通孔部の周りで、第1副布部及び主膨張部を環状結合部によって結合し、さらに第1副布部及び第2副布部の周縁部同士を副周縁結合部によって結合する。こうすることで、副側部膨張部を形成するとともに、同副側部膨張部を主膨張部に対し、連通させた状態で結合させることが可能である。
【0021】
この場合、特定側壁部に対し外方から衝撃が加わり、膨張用ガスが例えばエアバッグの主膨張部に供給されると、その主膨張部が膨張用ガスにより、乗員の上半身の側方で展開及び膨張を開始する。主膨張部の展開及び膨張の途中から、同主膨張部内の膨張用ガスの一部が、同主膨張部の連通孔部、及び第1副布部の連通孔部を通り、副膨張部へ供給される。この膨張用ガスにより、副膨張部が上記主膨張部と乗員の首部及び頭部との間で展開及び膨張する。
【0022】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記主膨張部は、第1主布部と、前記第1主布部よりも乗員側に配置された第2主布部とを備え、前記主膨張部は、前記第1主布部の周縁部と前記第2主布部の周縁部とが主周縁結合部で相互に結合されることにより形成されており、前記第2主布部の一部には、残部よりも多く前記乗員の頭部側へ突出するように膨張する膨張部が、前記副側部膨張部のみからなる前記副膨張部として形成されており、前記副側部膨張部は、一対の突出壁部により形成され、前記第2主布部は、一方の前記突出壁部を有する第1構成布部と、他方の前記突出壁部を有する第2構成布部とに分割され、前記第1構成布部及び前記第2構成布部の分割部分の周縁部同士が分割周縁結合部で結合されることにより、前記副側部膨張部を有する前記第2主布部が形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、第2主布部の形成に際しては、第1構成布部及び第2構成布部の分割部分の周縁部同士が重ね合わされる。そして、両構成布部の分割部分の周縁部同士が分割周縁結合部によって結合される。この結合により、副側部膨張部を有する第2主布部が形成される。
【0024】
ここで、副側部膨張部の一部を構成する一方の突出壁部は、第1構成布部の一部として形成されている。そのため、上記一方の突出壁部を第1構成布部に結合する工程は不要である。また、副側部膨張部の残りの部分を構成する他方の突出壁部は、第2構成布部の一部として形成されている。そのため、上記他方の突出壁部を第2構成布部に結合する工程は不要である。
【0025】
ところで、特定側壁部に対し外方から衝撃が加わり、膨張用ガスが例えばエアバッグの主膨張部に供給されると、その主膨張部が膨張用ガスにより、乗員の上半身の側方で展開及び膨張を開始する。主膨張部の展開及び膨張の途中から、同主膨張部内の膨張用ガスの一部が、副膨張部へ供給される。この膨張用ガスにより、副膨張部が上記主膨張部と乗員の首部及び頭部との間で展開及び膨張する。
【発明の効果】
【0026】
上記ファーサイドエアバッグ装置によれば、乗員の首部及び頭部を衝撃から保護する性能を維持しつつエアバッグを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第1実施形態を示す図であり、ファーサイドエアバッグ装置が搭載された車両の部分平面図。
図2】第1実施形態において、ファーサイドエアバッグ装置が設けられた車両用シートを乗員及びエアバッグとともに示す部分側面図。
図3】第1実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部を車両前方から見た部分断面図。
図4】(a),(b)は第1実施形態において、それぞれエアバッグモジュールが組み込まれたシートバックの側部の内部構造を示す部分平断面図。
図5】第1実施形態において、エアバッグが非膨張展開形態にされたエアバッグモジュールを乗員側から見た側面図。
図6図5の6−6線断面図。
図7】第1実施形態においてエアバッグが展開及び膨張して乗員の頭部を保護する様子を説明する模式図。
図8】車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第2実施形態において、エアバッグが展開及び膨張して乗員の頭部を保護する様子を説明する模式図。
図9図8の9−9線断面図。
図10】車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第3実施形態において、エアバッグが非膨張展開形態にされたエアバッグモジュールを乗員側から見た側面図。
図11】第3実施形態において、展開及び膨張したエアバッグを乗員側から見た側面図。
図12】第3実施形態において、車両用シート、エアバッグ及び乗員を車両前方から見た部分断面図。
図13】第3実施形態におけるエアバッグの構成部材を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第1実施形態について、図1図7を参照して説明する。
【0029】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が、予め定められた正規の姿勢で着座しているものとする。
【0030】
図1に示すように、車両10の左右方向における両側部は、ドア、ピラー等からなる側壁部11,12によって構成されている。車室内には、車両用シート13,65が、左右方向に並べられた状態で配置されている。側壁部11に近い側の車両用シート13は運転席として機能するものであり、ここに乗員(運転者)P1が着座する。側壁部12に近い側の車両用シート65は助手席として機能するものであり、ここに乗員P2が着座する。
【0031】
車両用シート13及び車両用シート65はいずれも、後述するシートバック15,66が前方を向く姿勢で配置されている。このように配置された車両用シート13,65の各幅方向は、左右方向と合致する。
【0032】
図2及び図3に示すように、車両用シート13は、シートクッション14と、そのシートクッション14の後側から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されたシートバック15と、シートバック15の上に配置されたヘッドレスト16とを備えている。
【0033】
図4(b)は、車両用シート13におけるシートバック15であって、車両用シート65側の側部17の内部構造を示している。シートバック15の内部には、その骨格部分をなすシートフレームが配置されている。
【0034】
側部17の内部には、シートフレームの一部を構成するサイドフレーム部18が配置されている。サイドフレーム部18は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。
【0035】
サイドフレーム部18を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド19が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード21が配置されている。なお、シートパッド19は表皮によって被覆されているが、図4(b)ではその表皮の図示が省略されている。
【0036】
シートパッド19内において、サイドフレーム部18よりも車両用シート65側には、収納部22が設けられている。収納部22には、ファーサイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABM1が組み込まれている。
【0037】
収納部22の前部の角部からは、車両用シート65側の斜め前側方に向けてスリット23が延びている。シートパッド19の前側の角部19cとスリット23とによって挟まれた箇所(図4(b)において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、エアバッグ33によって破断される破断予定部24を構成している。
【0038】
エアバッグモジュールABM1は、エアバッグ33と、これに膨張用ガスを供給するガス発生器25とを主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0039】
<ガス発生器25>
ガス発生器25は、インフレータ26と、そのインフレータ26を覆うリテーナ27とを備えている。ここでは、インフレータ26として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ26は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生する図示しないガス発生剤が収容されている。インフレータ26は、その上端部にガス噴出部26aを有している。また、インフレータ26の下端部には、同インフレータ26への作動信号の入力配線となる図示しないハーネスが接続されている。
【0040】
なお、インフレータ26としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0041】
一方、リテーナ27は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ26をエアバッグ33等と一緒にサイドフレーム部18に締結する機能を有する部材である。リテーナ27の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ27の互いに上下方向へ離間した複数箇所(2箇所)には、これをサイドフレーム部18に取付けるための部材として、車両用シート65から遠ざかる方向へ延びるボルト28が固定されている。なお、ガス発生器25は、インフレータ26とリテーナ27とが一体になったものであってもよい。
【0042】
<エアバッグ33>
図5は、エアバッグ33が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた形態(以下「非膨張展開形態」という)のエアバッグモジュールABM1を示している。また、図6は、図5の6−6線における断面構造を示し、図7は、エアバッグ33と乗員P1の頭部PHとの位置関係を示している。
【0043】
図5図7に示すようにエアバッグ33は、主膨張部34及び副膨張部51を備えている。
主膨張部34は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線35に沿って前方へ二つ折りして左右方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ33の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、乗員P1から遠い側に位置するものを第1主布部36といい、乗員P1に近い側に位置するものを第2主布部37というものとする。
【0044】
なお、第1実施形態では、折り線35が主膨張部34の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線35が他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、主膨張部34は折り線35に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、主膨張部34は、2枚の布片を左右方向に重ね合わせ、両布片を、全周にわたって結合させることにより形成される。さらに、第1主布部36及び第2主布部37の少なくとも一方は、2枚以上の布片によって構成されてもよい。
【0045】
主膨張部34においては、第1主布部36及び第2主布部37のそれぞれの形状が、折り線35を対称軸として互いに線対称の関係にある。第1主布部36及び第2主布部37は、図2において二点鎖線で示すように、主膨張部34が展開及び膨張を完了したときに、乗員P1の上半身の多くの部位、第1実施形態では、胸部PTから頭部PHにかけての部位の側方に隣接する領域を占有し得る形状及び大きさに形成されている。
【0046】
図5及び図6に示すように、第1主布部36及び第2主布部37としては、強度が高く、伸びにくく、しかも可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0047】
第1主布部36及び第2主布部37の上記結合は、それらの周縁部に沿って設けられた主周縁結合部38においてなされている。主周縁結合部38は、第1主布部36及び第2主布部37のそれぞれの周縁部のうち、後端部(折り線35の近傍部分)を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。
【0048】
上記縫製に関し、図5では、2つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(図5における主周縁結合部38参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、第1主布部36及び第2主布部37の少なくとも一方の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図5における環状結合部57参照)。これらの点は、後述する分割周縁結合部46及び副周縁結合部56についても同様である。
【0049】
なお、主周縁結合部38は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、上記分割周縁結合部46、副周縁結合部56及び環状結合部57についても同様である。
【0050】
第1主布部36及び第2主布部37の間であって、主周縁結合部38及び折り線35によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって展開及び膨張させられる。
第2主布部37における後下部の複数箇所(2箇所)には、ガス発生器25のボルト28を挿通させるためのボルト孔39があけられている(図5参照)。
【0051】
図5及び図6に示すように、第2主布部37の上部であって、主膨張部34が展開及び膨張を完了した状態で、乗員P1の頭部PHの側方となる箇所には、主膨張部34の内部と外部とを連通させる連通孔部41が形成されている。連通孔部41は単一の長孔によって構成されてもよいし、単一のスリットによって構成されてもよい。また、連通孔部41は複数の孔によって構成されてもよい。第1実施形態では、連通孔部41は、略前後方向に延びる長孔によって構成されている。
【0052】
主膨張部34内には、図示しない膨張厚み規制部が設けられている。膨張厚み規制部は、主膨張部34の左右方向における膨張厚みを規制するためのものであり、例えば、第1主布部36及び第2主布部37の間に、帯状の布が架け渡されることにより構成されたもの(テザーとも呼ばれる)であってもよい。また、膨張厚み規制部は、第1主布部36及び第2主布部37が重ね合わされた状態で結合されることにより構成されたものであってもよい。また、主膨張部34内の後下部には、図示しないインナチューブが配置されている。インナチューブは、ガス発生器25を取り囲んだ状態で上下方向へ延びており、同ガス発生器25で発生された膨張用ガスを整流する機能を有している。
【0053】
図2及び図5に示すように、第1主布部36及び第2主布部37のそれぞれの下端部では、主周縁結合部38による結合がなされていない。この結合がなされていない部分は、ガス発生器25の挿入部42を構成している。また、挿入部42は、インフレータ26から延びるハーネスを主膨張部34の外部へ引き出す箇所としても利用される。
【0054】
主膨張部34における挿入部42の上方近傍であって、上記ボルト孔39の周辺部分は、エアバッグ33がサイドフレーム部18に固定される箇所である固定部43を構成している。
【0055】
そして、ガス発生器25が、挿入部42を通じ、主膨張部34の後端部内に挿入されている。ガス発生器25が略上下方向へ延びる姿勢にされたうえで、ボルト28がインナチューブに挿通されるとともに、第2主布部37の上記ボルト孔39に挿通されている。この挿通により、ガス発生器25が主膨張部34に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0056】
一方、図5及び図6に示すように、副膨張部51は、主膨張部34よりも乗員P1側に配置されている。第1実施形態では、副膨張部51は、主膨張部34と乗員P1の首部PN及び頭部PHとの間で展開及び膨張する副側部膨張部52のみによって構成されている。
【0057】
副側部膨張部52は、主膨張部34の第2主布部37に隣接する第1副布部53と、第1副布部53を挟んで主膨張部34とは反対側(乗員P1側)に配置された第2副布部55とを備えている。第1副布部53には、副膨張部51の内部と外部とを連通させる連通孔部54が形成されている。第1実施形態では、連通孔部54は、上記第2主布部37における連通孔部41と同一の形状をなしており、同連通孔部41に合致させられている。なお、連通孔部41,54は互いに異なる形状をなしていてもよい。例えば、連通孔部41,54の一方が長孔によって構成され、他方が上記長孔に沿って並べられた複数の小径孔によって構成されてもよい。要は、連通孔部41,54の一方が他方に対し少なくとも一部において重なっていればよい。
【0058】
第1副布部53の周縁部と第2副布部55の周縁部とは重ね合わされている。両周縁部は副周縁結合部56によって結合されている。
第2主布部37の連通孔部41の周辺部分と、第1副布部53の連通孔部54の周辺部分とは重ね合わされている。両周辺部分は、上記副周縁結合部56よりも内側に位置し、かつ同副周縁結合部56よりも小さな環状結合部57によって結合されている。
【0059】
このようにして、副膨張部51が主膨張部34に対し結合されている。主膨張部34と副膨張部51とは、両連通孔部41,54を介して相互に連通されている。
さらに、第1実施形態では、図3に示すように、展開及び膨張を完了した状態の副膨張部51の上端51tは、展開及び膨張を完了した状態の主膨張部34の上端34tよりも低い箇所に位置している。
【0060】
ところで、ガス発生器25及びエアバッグ33を主要な構成部材として有するエアバッグモジュールABM1は、図5に示す非膨張展開形態のエアバッグ33が折り畳まれることにより、図4(b)に示すコンパクトな収納用形態にされている。エアバッグ33が収納用形態にされたエアバッグモジュールABM1は、収納部22に収納されている。そして、ガス発生器25から延びるボルト28が、サイドフレーム部18に対し、隣の車両用シート65側から挿通され、同ボルト28にナット29が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器25が、エアバッグ33等と一緒にサイドフレーム部18に固定されている。
【0061】
なお、ガス発生器25は、上述したボルト28及びナット29とは異なる部材によってサイドフレーム部18に固定されてもよい。また、リテーナ27が用いられることなくインフレータ26がサイドフレーム部18に直接固定されてもよい。
【0062】
これに対し、図2及び図3に示すように、車両用シート65は、上記車両用シート13と同様の構成を有している。そのため、ここでは、車両用シート65において車両用シート13と同様の構成部材については、同一の符号を付すことで、詳しい説明を省略する。
【0063】
図4(a)は、車両用シート65におけるシートバック66であって、車両用シート13側の側部67の内部構造を示している。
車両用シート65の車両用シート13との相違点は、収納部22に対応する収納部68が、シートバック66のシートパッド19内において、サイドフレーム部18よりも車両用シート13側に設けられていることである。
【0064】
収納部68には、エアバッグ69と、これに膨張用ガスを供給するガス発生器71とを備えてなるエアバッグモジュールABM2が組み込まれている。
エアバッグ69は、上記エアバッグ33と同様の構成を有している。非膨張展開形態のエアバッグ69は折り畳まれることで、エアバッグ33と同様、収納用形態にされている。
【0065】
また、ガス発生器71は、上記ガス発生器25と同様の構成を有しており、エアバッグ69における主膨張部34の後下端部内に配置され、位置決めされた状態で係止されている。
【0066】
エアバッグ69が収納用形態にされたエアバッグモジュールABM2は、収納部68に収納されている。そして、ガス発生器71から延びるボルト28が、サイドフレーム部18に対し、隣の車両用シート13側から挿通され、同ボルト28にナット29が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器71が、エアバッグ69等と一緒にサイドフレーム部18に固定されている。
【0067】
ファーサイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABM1,ABM2のほかに、図2に示す衝撃センサ75及び制御装置76を備えている。衝撃センサ75は加速度センサ等からなり、側壁部11,12等に設けられており、同側壁部11,12に外方から加えられる衝撃を検出する。制御装置76は、衝撃センサ75の検出信号に基づきガス発生器25,71のそれぞれの作動を制御する。第1実施形態では、制御装置76は、衝撃センサ75が一対の側壁部11,12のうち一方に対し、外方から衝撃が加わったことを検出した場合に、ガス発生器25,71に対し、同ガス発生器25,71を作動させるための作動信号を出力する。
【0068】
さらに、図1における車両用シート13には、側壁部11に外方から衝撃に加わった場合に、その側壁部11と同車両用シート13との間でエアバッグを展開及び膨張させて乗員P1を拘束し、衝撃から保護するタイプのサイドエアバッグ装置(ニアサイドエアバッグ装置とも呼ばれる、図示略)が設けられている。また、図1における車両用シート65の側壁部12側の側部にも、上記と同様のニアサイドエアバッグ装置が設けられている。
【0069】
また、車室内には、車両用シート13に着座している乗員P1を同車両用シート13に拘束するための図示しないシートベルト装置と、車両用シート65に着座している乗員P2を同車両用シート65に拘束するための図示しないシートベルト装置とが設けられている。
【0070】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図1及び図2において、側壁部11,12に対し外方から所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ75によって検出されないときには、制御装置76からガス発生器25,71のいずれに対しても、上記作動信号が出力されず、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ33は、図4(b)に示すように、収納用形態で収納部22に収納され続ける。また、エアバッグ69は、図4(a)に示すように、収納用形態で収納部68に収納され続ける。
【0071】
両側壁部11,12の一方、例えば、側壁部12が特定側壁部とされて、この側壁部12に対し、図1において矢印で示すように、側突等による衝撃が側方から加わると、衝撃の加わった側壁部12から遠い側(運転席側)の乗員P1の上半身が、慣性により側壁部12側へ倒れ込もうとする。また、乗員P1の頭部PHは、衝突発生後、70ms程度経過してから移動し始める。その後、頭部PHの移動速度が上昇する。
【0072】
これに対し、側壁部12に外方から所定値以上の衝撃が加わったことが図2の衝撃センサ75によって検出されると、その検出信号に応じ制御装置76からガス発生器25に対し、上記作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ26のガス噴出部26aから膨張用ガスが噴出されると、その膨張用ガスは収納用形態のエアバッグ33の主膨張部34に供給される。
【0073】
主膨張部34に膨張用ガスが供給されることで同主膨張部34の内圧が上昇する。主膨張部34及び副膨張部51は、折りを解消しながら、すなわち展開しながら膨張する。
上記展開及び膨張の途中で、主膨張部34は副膨張部51を伴って、図4(b)における収納部22の近くでシートパッド19を押圧し、破断予定部24においてシートパッド19を破断させる。その後も膨張用ガスの供給が続けられることにより、主膨張部34は、固定部43及びその周辺部分を収納部22内に残した状態で、同収納部22から斜め前上方へ出る。図2及び図3に示すように、主膨張部34は、車両用シート13,65間で、前上方へ向けて展開及び膨張する。
【0074】
主膨張部34の展開及び膨張の途中から、膨張用ガスの一部が図6における連通孔部41,54を通って副膨張部51に供給される。この膨張用ガスにより、副膨張部51は、図7に示すように主膨張部34から、乗員P1の首部PN及び頭部PHに向けて展開及び膨張する。エアバッグ33のうち、乗員P1から遠い側の部分を構成する主膨張部34は、乗員P1の上半身の側方や斜め前側方に位置する。そのため、乗員P1の上半身が主膨張部34によって受け止められ、上記上半身の側方や斜め前側方への移動が規制されて、同上半身が衝撃から保護される。
【0075】
また、上記エアバッグ33のうち、乗員P1に近い側の部分を構成する副膨張部51は、衝突の発生後、乗員P1の頭部PHが動き始めるよりも速いタイミングで、すなわち、頭部PHの移動速度が速くなる前に、主膨張部34と乗員P1の頭部PH及び首部PNとの間に位置する。そのため、乗員P1の上半身が主膨張部34によって受け止められた状態で、乗員P1の首部PN及び頭部PHが慣性により、車両用シート65側の側方や斜め前側方へ移動しようとしても、それらの首部PN及び頭部PHは、副膨張部51(副側部膨張部52)によって側方から受け止められる。また、側方や斜め前側方への副膨張部51(副側部膨張部52)の動きは、主膨張部34によって受け止められる。首部PN及び頭部PHの側方や斜め前側方への移動が規制されて、すなわち、首部PN及び頭部PHが拘束されて、衝撃から保護される。
【0076】
また、衝撃センサ75からの上記検出信号に応じ、制御装置76から図4(a)に示すガス発生器71に対し、上記作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ26のガス噴出部26aから膨張用ガスが噴出されてエアバッグ69に供給される。エアバッグ69が上記エアバッグ33と同様に展開及び膨張する。
【0077】
上記展開及び膨張の途中で、エアバッグ69は、図4(a)における収納部68の近くでシートパッド19を押圧し、破断予定部24においてシートパッド19を破断させる。エアバッグ69の主膨張部34は、固定部43及びその周辺部分を収納部68内に残した状態で、同収納部68から斜め前上方へ出る。図2及び図3に示すように、エアバッグ69は、車両用シート65,13間で、前上方へ向けて展開及び膨張する。
【0078】
従って、図3において、倒れ込もうとする乗員P1からエアバッグ33が外力を受けても、エアバッグ69によってその外力を打ち消す方向の力(反力)を早期に発生させて、上記エアバッグ33を動きにくくすることができる。乗員P1の上半身の側壁部12側への動きをエアバッグ33,69によって規制して、同上半身を衝撃から保護する性能を早期に発揮させることができる。
【0079】
なお、図1における側壁部11が特定側壁部とされて、この側壁部11に対し外方から衝撃が加わった場合については説明しないが、上記と同様の作用が行なわれて、車両用シート65に着座している乗員P2が衝撃から保護される。
【0080】
ところで、主膨張部34及び副膨張部51の両方の機能を、特許文献1のように、仮に単一の膨張部からなるエアバッグによって実現しようとすると、副膨張部51の機能を発揮する部分の上側に、首部PN及び頭部PHの保護に直接関与しない余剰部分ができ、その部分では、エアバッグの膨張厚みが適正値よりも大きくなり、エアバッグが大型化する。
【0081】
これに対し、第1実施形態では図3に示すように、エアバッグ33,69を主膨張部34及び副膨張部51といった2つの膨張部によって構成している。しかも、副膨張部51の上端51tを主膨張部34の上端34tよりも低い箇所に位置させている。そのため、乗員P1の首部PN及び頭部PHを拘束して衝撃から保護する機能を発揮しつつ、副膨張部51よりも上側の上記余剰部分を省略することが可能となる。この省略の分、エアバッグ33,69の小型化を図ることができる。
【0082】
なお、副膨張部51の上端51tが主膨張部34の上端34tよりも高いと、乗員P1の首部PN及び頭部PHを副膨張部51(副側部膨張部52)によって受け止める性能が十分に発揮されないおそれがある。主膨張部34には、副膨張部51よりも高い部分がないため、副膨張部51のうち主膨張部34よりも高い部分を受け止めることができないからである。
【0083】
(第2実施形態)
次に、車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第2実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
【0084】
第2実施形態では、副膨張部51が副側部膨張部52に加え、副前部膨張部58を備えて構成されている。この点で、副膨張部51が副側部膨張部52のみによって構成されている第1実施形態と異なっている。副前部膨張部58は、副側部膨張部52に対し連通した状態で、次の条件を満たす箇所に接続されている。その条件とは、副膨張部51が展開及び膨張を完了したときに、副前部膨張部58が頭部PHの前方に位置することである。
【0085】
副膨張部51は、平面視でL字形をなす第1副布部53と、同様に平面視でL字形をなし、かつ第1副布部53の上側に配置された第2副布部55を備えている。第1副布部53には、副膨張部51の内部と外部とを連通させる連通孔部54が形成されている。第2実施形態でも、連通孔部54は、第2主布部37における連通孔部41と同一の形状をなしており、同連通孔部41に合致させられている。
【0086】
第1副布部53の周縁部と、第2副布部55の周縁部とは、互いに重ね合わされており、それらの周縁部に沿って設けられた副周縁結合部56によって相互に結合されている。このようにして、互いにL字形をなす第1副布部53及び第2副布部55が副周縁結合部56によって結合されることで、副側部膨張部52及び副前部膨張部58が一体となった第2実施形態の副膨張部51が形成されている。
【0087】
第2主布部37の連通孔部41の周辺部分と、第1副布部53の連通孔部54の周辺部分とは重ね合わされている。両周辺部分は、上記副周縁結合部56よりも内側に位置し、かつ同副周縁結合部56よりも小さな環状結合部57によって結合されている。
【0088】
このようにして、副膨張部51が主膨張部34に対し結合されている。主膨張部34と副膨張部51とは、両連通孔部41,54を介して相互に連通されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。展開及び膨張を完了した状態の副膨張部51の上端51tが、展開及び膨張を完了した状態の主膨張部34の上端34tよりも低い箇所に位置している点も第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0089】
従って、第2実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。そのほかにも、側壁部12に対し斜め前側方から衝撃が加わって、膨張用ガスが主膨張部34から副膨張部51に供給された場合、副前部膨張部58が、乗員P1の頭部PHの前方で展開及び膨張する。
【0090】
その結果、図1における側壁部12が特定側壁部とされ、これに対し斜め前側方から衝撃が加わって、乗員P1の頭部PHが慣性により、側壁部12側の斜め前側方へ移動しようとしても、頭部PHは副側部膨張部52上を前方へ向けて滑った後に、副前部膨張部58によって受け止められる。この場合、副前部膨張部58は頭部PHの移動を規制する機能を発揮し、副側部膨張部52は頭部PHの側方への移動を規制しつつ同頭部PHを副前部膨張部58に導く機能を発揮する。そのため、副膨張部51に副前部膨張部58が設けられない場合に比べ、頭部PHの斜め前側方への移動をより規制し、同頭部PHを衝撃から保護する性能をさらに高めることができる。
【0091】
なお、図1における側壁部11が特定側壁部とされて、これに対し斜め前側方から衝撃が加わった場合については説明しないが、上記と同様の作用が行なわれて、車両用シート65に着座している乗員P2の上半身、特に首部PN及び頭部PHが衝撃から保護される。
【0092】
(第3実施形態)
次に、車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した第3実施形態について、図10図13を参照して説明する。
【0093】
第3実施形態では、ファーサイドエアバッグ装置が、運転席を構成する車両用シート13にのみ搭載されているものとする。
この場合には、側壁部12側の側方へ移動しようとする乗員P1によって主膨張部34が押されると、同主膨張部34が固定部43を支点として、隣の車両用シート65側へ倒れようとする。仮に、エアバッグ33に副膨張部51が設けられていないとすると、乗員P1の車両用シート65側への移動量が多くなってしまう。
【0094】
これに対し、第3実施形態では、展開及び膨張を完了した状態の主膨張部34の大きさや形状が次の条件を満たすように設定されている。その条件とは、図12において二点鎖線で示すように、主膨張部34が乗員P1によって押されて隣の車両用シート65側へ倒れた場合、その主膨張部34が同車両用シート65の一部、例えばシートバック66の上角部に接触することである。この条件が満たされることで、主膨張部34がシートバック66によって受け止められる。主膨張部34が、それ以上倒れることがシートバック66によって規制される。
【0095】
第3実施形態の副膨張部51は副側部膨張部52のみによって構成されている。副側部膨張部52は、第1及び第2実施形態における副側部膨張部52とは異なる形状を有している。すなわち、第3実施形態の副側部膨張部52は、上記のように隣の車両用シート65に接触するまで倒れた状態の主膨張部34から乗員P1の頭部PHの近くまで延びる長さを有している。主膨張部34からの副膨張部51の突出長さは、第1及び第2実施形態での突出長さよりも長く設定されている。
【0096】
また、第3実施形態は、図10に示すように副膨張部51が、主膨張部34の一部を構成する第2主布部37によって形成されている点で、同副膨張部51が、主膨張部34(第2主布部37)とは別体の一対の布部(第1副布部53及び第2副布部55)を用いて形成された第1実施形態と異なっている。
【0097】
より詳しくは、図11及び図12に示すように、第2主布部37の上部には、残部よりも多く乗員P1の頭部PH側へ突出するように膨張する副側部膨張部52が副膨張部51として形成されている。副膨張部51は、展開及び膨張を完了した状態で、同副膨張部51の上部を構成する突出壁部44aと、同副膨張部51の下部を構成する突出壁部45aとを備えている。図11及び図13に示すように、第2主布部37は、上側の突出壁部44aを有する上側の第1構成布部44と、下側の突出壁部45aを有する下側の第2構成布部45とに分割されている。
【0098】
このように、副膨張部51の上部を構成する上側の突出壁部44aは、第1構成布部44の一部として形成されている。また、副膨張部51の下部を構成する下側の突出壁部45aは、第2構成布部45の一部として形成されている。
【0099】
そして、第1構成布部44及び第2構成布部45の分割部分の周縁部同士が分割周縁結合部46で結合されることにより、副膨張部51を有する第2主布部37が形成されている。
【0100】
なお、図10及び図13では、膨張厚み規制部、インナチューブ等の図示が省略されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0101】
従って、第3実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、側壁部12に対し外方から衝撃が加わり、膨張用ガスがエアバッグ33の主膨張部34に供給されると、その主膨張部34が膨張用ガスにより、乗員P1の上半身の側方で展開及び膨張を開始する。
【0102】
側壁部12側の側方へ移動しようとする乗員P1によって主膨張部34が押されて、同乗員P1による押圧力が主膨張部34に伝わると、図12において二点鎖線で示すように、同主膨張部34が固定部43を支点として、隣の車両用シート65側へ倒れる。主膨張部34は、車両用シート65のシートバック66の上角部に接触する。この接触により、主膨張部34がシートバック66によって受け止められる。主膨張部34が、それ以上倒れることがシートバック66によって規制される。
【0103】
さらに、主膨張部34の展開及び膨張の途中から、同主膨張部34内の膨張用ガスが、副膨張部51へ供給される。この膨張用ガスにより、副膨張部51が主膨張部34から乗員P1の首部PN及び頭部PHに向けて展開及び膨張する。
【0104】
エアバッグ33のうち、乗員P1に近い側の部分を構成する副膨張部51は、主膨張部34と乗員P1の頭部PH及び首部PNとの間に位置する。そのため、乗員P1の上半身が主膨張部34によって受け止められた状態で、乗員P1の首部PN及び頭部PHが慣性により、側方や斜め前側方へ移動しようとしても、それらの首部PN及び頭部PHは、副側部膨張部52によって側方から受け止められる。また、側方や斜め前側方への副側部膨張部52の動きは、主膨張部34によって受け止められる。首部PN及び頭部PHの側方や斜め前側方への移動が規制されて、すなわち、首部PN及び頭部PHが拘束されて、衝撃から保護される。
【0105】
このように、第3実施形態では、主膨張部34が乗員P1によって押されて倒れるのを許容し、同主膨張部34が倒れた状態で、副膨張部51によって乗員P1の首部PN及び頭部PHを受け止めて衝撃から保護することができる。
【0106】
第3実施形態によると、上記以外にも、次の作用及び効果が得られる。
第1及び第2実施形態では、エアバッグ33の形成のために、主膨張部34を形成するための第1主布部36及び第2主布部37に加え、副膨張部51の形成のために、第1副布部53及び第2副布部55が必要となる。また、第1副布部53及び第2副布部55を結合するために副周縁結合部56が必要となる。さらに、副膨張部51を主膨張部34に対し連通状態で結合させるために環状結合部57が必要となる。
【0107】
これに対し、第3実施形態では、図13に示すように、副膨張部51の一部を構成する突出壁部44aは第1構成布部44の一部として形成されている。そのため、突出壁部44aを第1構成布部44に結合する工程は不要である。また、副膨張部51の残りの部分を構成する突出壁部45aは第2構成布部45の一部として形成されている。そのため、突出壁部45aを第2構成布部45に結合する工程は不要である。
【0108】
また、第2主布部37の形成に際しては、第1構成布部44及び第2構成布部45の分割部分の周縁部同士が重ね合わされる。この周縁部には、突出壁部44a,45aの周縁部も含まれる。この際、突出壁部44aが第1構成布部44の一部によって構成され、突出壁部45aが第2構成布部45の一部によって構成されている。そのため、突出壁部44aの第1構成布部44に対する位置決めが不要であり、突出壁部45aの第2構成布部45に対する位置決めが不要である。
【0109】
そして、上記のように重ね合わされた第1構成布部44及び第2構成布部45の分割部分の周縁部同士が結合される。この結合により、副側部膨張部52を有する第2主布部37が形成される。この際、結合の対象となる箇所の長さは、第1構成布部44及び第2構成布部45の分割部分の周縁部のみであり、短い。そのため、結合作業が容易である。
【0110】
また、主膨張部34における第2主布部37を利用して副側部膨張部52を形成していることから、エアバッグ33の全体を形成するために使用する布の枚数が少ない。そのため、エアバッグ33を折り畳んだときの厚みを小さくすることができ、収納部22に対する収納性がよい。
【0111】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0112】
<エアバッグ33,69について>
・エアバッグ33,69の固定部43は、サイドフレーム部18に代えて、車両用シート13,65を構成する部材のうち、同サイドフレーム部18と同程度に高い剛性を有する部材に固定されてもよい。
【0113】
・エアバッグ33,69は、上記第1〜第3実施形態のようにその略全体が膨張するものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0114】
・第3実施形態における副膨張部51は、展開及び膨張を完了した状態で、同副膨張部51の前部を構成する突出壁部と、同副膨張部51の後部を構成する突出壁部とを備えてもよい。
【0115】
この場合、第2主布部37は、前側の突出壁部を有する前側の第1構成布部と、後側の突出壁部を有する後側の第2構成布部とに分割される。
・主膨張部34は、乗員P1,P2の上半身の側方であって、少なくとも首部PN及び頭部PHを含む部位の側方で展開及び膨張するものであることを条件に、上記上半身のうち、上記第1〜第3の各実施形態とは異なる部位の側方で展開及び膨張するものに変更されてもよい。
【0116】
<その他>
・制御装置76は、側壁部11,12に対し、側方又は斜め前側方からの衝撃が加わることを予測した場合に、ガス発生器25,71に作動信号を出力する仕様に変更されてもよい。
【0117】
・上記ファーサイドエアバッグ装置は、シートバック15,66が車両10の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で複数の車両用シート13,65が配置された車両10にも適用可能である。この場合、車両10において、車両用シート13,65を、それらの幅方向における両側から挟み込む一対の壁部が、特許請求の範囲における一対の側壁部に該当する。
【0118】
・第1〜第3の各実施形態では、車両用シート13が運転席とされ、車両用シート65が助手席とされたが、本発明はこれに限らず、車両用シート13,65は、独立したものであれば、車両の後部座席(2列目以降の座席)であってもよい。
【0119】
・上記ファーサイドエアバッグ装置は、3つ以上の車両用シートがそれらの幅方向に並設された車両にも適用可能である。この場合、車両の特定側壁部に対し、衝撃が加わったとき、又は衝撃が加わることが予測されるときに、隣り合う車両用シートの間でエアバッグを展開及び膨張させる。
【0120】
・上記ファーサイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記ファーサイドエアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等に装備されて、隣り合う乗物用シートの間でエアバッグを展開及び膨張させることで、衝撃の加わる側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員を衝撃から保護するファーサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
10…車両(乗物)
11,12…側壁部
13,65…車両用シート(乗物用シート)
33,69…エアバッグ
34…主膨張部
34t,51t…上端
36…第1主布部
37…第2主布部
38…主周縁結合部
41,54…連通孔部
44…第1構成布部
44a,45a…突出壁部
45…第2構成布部
46…分割周縁結合部
51…副膨張部
52…副側部膨張部
53…第1副布部
55…第2副布部
56…副周縁結合部
57…環状結合部
58…副前部膨張部
P1,P2…乗員
PH…頭部
PN…首部
図1
図2
図3
図4
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図13