【実施例】
【0048】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0049】
<実施例1>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液30.63gと、蒸留水35.13gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール34.23gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(17)で表される化合物を0.025g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0050】
<実施例2>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA124を溶解した水溶液12.25gと、蒸留水62.74gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール25.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(18)で表される化合物を0.010g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0051】
<実施例3>
PVA濃度が15質量%のクラレ社製PVA103を溶解した水溶液62.70gと、蒸留水2.21gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(19)で表される化合物を0.095g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0052】
<実施例4>
PVA濃度が15質量%のクラレ社製PVA103を溶解した水溶液53.28gと、蒸留水11.71gと、エタノール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(20)で表される化合物を0.008g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0053】
<実施例5>
PVA濃度が4質量%の日本合成化学社製ゴーセネックスT−330Hを溶解した水溶液38.80gと、蒸留水36.15gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール25.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(21)で表される化合物を0.048g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0054】
<実施例6>
PVA濃度が4質量%の日本合成化学社製ゴーセネックスT−330Hを溶解した水溶液16.88gと、蒸留水48.05gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.075g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0055】
<実施例7>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液24.75gと、蒸留水70.24gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール5.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.010g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0056】
<実施例8>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA103を溶解した水溶液24.50gと、蒸留水25.48gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール50.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.020g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0057】
<実施例9>
実施例1で調製した離型用液組成物100g(100質量%)に着色剤として食用青色1号を0.5g(0.5質量%)添加し、十分に混合して、最終的な液組成物を得た。
【0058】
<比較例1>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液9.70gと、蒸留水55.29gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(21)で表される化合物を0.012g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0059】
<比較例2>
PVA濃度が15質量%のクラレ社製PVA103を溶解した水溶液69.30gと、蒸留水5.60gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール25.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(21)で表される化合物を0.105g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0060】
<比較例3>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液24.99gと、蒸留水40.01gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(21)で表される化合物を0.0005g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0061】
<比較例4>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液22.25gと、蒸留水42.64gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.110g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0062】
<比較例5>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液67.50gと、蒸留水29.20gと、エタノール3.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.300g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0063】
<比較例6>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA124を溶解した水溶液47.50gと、蒸留水0.40gと、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール52.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.100g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0064】
<比較例7>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液30.63gと、蒸留水34.17gとエタノール85質量%、イソプロパノール5質量%及びn−プロパノール10質量%からなるアルコール35.00gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液にシリコーン系剥離剤(信越化学工業社製KM−244F)を0.20g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0065】
<比較例8>
PVA濃度が4質量%のクラレ社製PVA117を溶解した水溶液30.63gと、蒸留水35.13gと、n−ブタノール34.23gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上記式(22)で表される化合物を0.025g添加混合して離型用液組成物を調製した。
【0066】
<比較例9>
比較例9では、実施例1で調製した液組成物100g(100質量%)に着色剤として食用青色1号を2.0g(2質量%)添加し、十分に混合して、最終的な液組成物を得た。
【0067】
実施例1〜9及び比較例1〜9の離型用液組成物における、PVA水溶液の濃度と秤量値、両性型フッ素系化合物の種類と秤量値、アルコール及び水の各秤量値を表1に示す。表1中、両性型フッ素系化合物は、単に「フッ素化合物」と記載し、その種類として、例えば「式(17)」と記載したものは、「式(17)に示される化合物」を意味する。またPVAとフッ素化合物とを合計した質量割合、PVAとフッ素化合物の質量比及びアルコールの質量割合をそれぞれ表2に示す。
【0068】
<比較試験及び評価>
次に述べる方法で、(1) 金型からの樹脂層の剥離性(離型性)と、(2) 離型膜の易洗浄性を調べた。
【0069】
(1) 金型からの樹脂層の剥離性(離型性)
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた離型用液組成物を厚さ3mm、たて150mm、よこ75mmの板状のSUS基材(金型)表面に刷毛で塗布し、大気雰囲気下、常温で1時間放置し乾燥することにより離型膜を形成した。この離型膜の平均厚さはマイクロメーターにより測定したところ1μmであった。このSUS基材表面に形成された離型膜上に、アクリル樹脂(日本合成化学製コーボニールN-7520)とポリイソシアネート(東ソー社製コロネートL-55E)と希釈用溶媒である酢酸ブチルを質量比で100:0.2:100の割合で混合した樹脂液を刷毛を用いて積層塗布した。樹脂液により形成された樹脂層上にポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムを置き、PET表面をウレタン製ローラを転がして荷重を加えた。この状態で大気雰囲気下、常温で18時間放置することにより樹脂層を乾燥し、アクリル樹脂を硬化させて厚さ1mmの樹脂層(樹脂成形体)を得た。PETフィルムを樹脂層から静かに剥がした後、SUS基材(金型)からの樹脂層の剥離性(離型性)を目視により調べた。SUS基材(金型)から樹脂層が完全に剥離した場合を「良好」とし、樹脂層が一部でもSUS基材(金型)の表面に付着残存した場合を「不良」と評価した。
【0070】
(2) 離型膜の易洗浄性
SUS基材(金型)から剥離した樹脂層を14℃の水道水で洗浄した。水洗乾燥後、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製S-3500N、EDS:堀場製作所製EMAX モデル7021-H)を用いて、樹脂層の表面に離型膜成分のフッ素が存在しているか調べた。フッ素が全く存在しなかった場合を離型膜の易洗浄性が「良好」であると評価し、フッ素が少しでも存在した場合を離型膜の易洗浄性が「不良」であると評価した。これらの結果を次の表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表2から明らかなように、比較例1では、PVAとフッ素化合物を合計した固形分濃度が0.40質量%と低いため、成膜時に、膜の弾きが発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0074】
比較例2では、固形分濃度が10.50質量%と高すぎたため、液組成物の粘度が高く、成膜時に膜に凹凸が発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0075】
比較例3では、フッ素化合物の質量比が0.05と低すぎたため、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0076】
比較例4では、フッ素化合物の質量比が11.0と高すぎたため、成膜時に膜の弾きが発生し、凹凸が発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0077】
比較例5では、アルコール濃度が3.0質量%と低過ぎたため、液組成物中にフッ素化合物が析出しており、成膜時に膜に凹凸が発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0078】
比較例6では、アルコール濃度が52.0質量%と高過ぎたため、液組成物中にPVAが析出しており、成膜時に膜に凹凸が発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0079】
比較例7では、フッ素化合物の代わりに、シリコーンを用いたが、シリコーンの添加量が少なかったため、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0080】
比較例8では、アルコールが炭素数が4であるn−ブタノールであるため、液組成物中にPVAが析出しており、成膜時に膜に凹凸が発生し、均一に成膜できなかった。この結果、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0081】
比較例9では、更に比較例9の液組成物では、着色剤の含有割合が1質量%を超えたため、金型からの離型性が不良であった。金型からの離型が不良であったため、洗浄テストはできなかった。
【0082】
これに対して、表2から明らかなように、実施例1〜9では、PVAとフッ素化合物とを合計した質量割合が0.5質量%〜10質量%の範囲にあり、PVAとフッ素化合物の質量比が99.9:0.1〜90:10の範囲にあり、アルコールの質量割合が5質量%〜50質量%の範囲にあり、かつフッ素化合物が式(17)〜式(22)で表される両性型フッ素系化合物であったため、金型からの樹脂層の剥離性(離型性)はすべて「良好」であり、また離型膜の易洗浄性もすべて「良好」であった。更に実施例9で形成された膜は着色されていたため、目視で膜を容易に確認することができた。