【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0010】
微孔化ポリビニルアルコール繊維の製造方法は、
紡糸溶液の調製:原料ポリビニルアルコール樹脂を水と混合し、原料ポリビニルアルコール樹脂が完全に溶解するまで加熱して紡糸溶液を形成する、
水酸化カルシウム溶液の調製:水酸化カルシウム粉末を水と混合して水酸化カルシウム溶液を形成する、
硫酸ナトリウム溶液の調製:ボウ硝を水と混合して濃度35%の硫酸ナトリウム溶液を形成するステップ1と、
ポリビニルアルコール紡糸原液の調製:ステップ1で取得された紡糸溶液を40〜60℃に冷却し、発泡剤を加えてポリビニルアルコール紡糸原液を取得するステップ2と、
紡糸及び第1の凝固浴処理:ステップ2で取得されたポリビニルアルコール紡糸原液を紡糸し、吐出された繊維を硫酸ナトリウム溶液に入れて第1の凝固浴処理を行い、ポリビニルアルコール一次繊維に脱水するステップ3と、
第2の凝固浴処理:ステップ3で取得されたポリビニルアルコール一次繊維を水酸化カルシウム溶液と反応させ、二次繊維を取得するステップ4と、
発泡と細孔形成:ステップ4で取得された二次繊維を加熱して発泡させるとともに延伸し、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品を形成するステップ5と、
ステップ5で取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品を洗浄及び乾燥し、微孔化ポリビニルアルコール繊維最終製品を取得するステップ6と、を含み、
ただし、前記発泡剤は炭酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムのいずれかである。
【0011】
上記技術的解決手段により、ステップ1では、紡糸溶液、水酸化カルシウム溶液、硫酸ナトリウム溶液を別々に準備して使用に備えることで、後の操作を容易にして操作全体を連続的にする一方、調製して取得された溶液の清浄度を増し、他の不純物の持ち込みが調製効果に影響を与えることを減らす。
【0012】
ステップ2では、紡糸溶液を40〜60℃に降温して軽ゲル状態とし、このとき発泡剤として炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウムを加えて軽ゲル状態の紡糸溶液と混合し、ポリビニルアルコール紡糸原液を形成する。このときの温度は発泡剤が分解して大量のガスが発生するには不十分であるためポリビニルアルコール紡糸原液の状態維持に役立つ。
【0013】
ステップ3では、まず、ポリビニルアルコール紡糸原液を用いて紡糸口金等により紡糸し、吐出された繊維は直ちに硫酸ナトリウム溶液中に取り込まれる。なお、製造工場での調製工程は連続的に行われるため、ステップ3の第1の凝固浴処理による脱水効果を高めるためには、硫酸ナトリウム溶液の濃度を35%に維持する必要があるのは、実際の工程には、硫酸ナトリウム溶液中の硫酸ナトリウムを発泡剤で連続的に除去し、硫酸ナトリウム溶液の濃度を35%に維持するように硫酸ナトリウムを増やし続ける必要があるためである。例えば、元の硫酸ナトリウム溶液の濃度が35%であり、吐出された繊維に第1の凝固浴処理を行った後、硫酸ナトリウムを添加しない場合、硫酸ナトリウム溶液中の硫酸ナトリウムの含有量が持続的に低減し、硫酸ナトリウムを完全に反応させるように設定され、従って、該廃水は、その中の硫酸ナトリウムの含有量が高すぎて環境に大きな汚染を引き起こす可能性が低い。
【0014】
発泡剤が炭酸水素アンモニウムである場合、吐出された繊維内部及び繊維表面は炭酸水素アンモニウムを含み、繊維表面の炭酸水素アンモニウムは硫酸ナトリウムと反応して炭酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムを形成し、発泡剤が炭酸アンモニウムである場合、吐出された繊維の内部及び表面に炭酸アンモニウムが含まれ、発泡剤の一部が硫酸ナトリウムと反応して炭酸ナトリウム及び硫酸アンモニウムを形成し、硫酸ナトリウムの含有量が低減し、形成されたポリビニルアルコール一次繊維への硫酸ナトリウムの付着が低減され、その後の操作への悪影響も低減される。また該操作は、硫酸ナトリウムによる環境汚染の低減にも有利になり、水処理の困難性も軽減する。
【0015】
発泡剤が炭酸水素アンモニウムである場合、反応式は2NH
4HCO
3+Na
2SO
4=2NaHCO
3+(NH
4)
2SO
4であり、
発泡剤が炭酸アンモニウムである場合、反応式は(NH
4)
2CO
3+Na
2SO
4=Na
2CO
3+(NH
4)
2SO
4である。
【0016】
ステップ4では、水酸化カルシウムが過剰に使用され、水酸化カルシウム溶液をステップ3で生成した硫酸アンモニウムと反応させると、比較的純粋で不純物のない硫酸カルシウムを生成する。従って、発泡剤が炭酸水素アンモニウムであっても炭酸アンモニウムであっても、ステップ4において、Ca(OH)
2+(NH
4)
2SO
4=CaSO
4+2NH
3↑+2H
2Oという反応式の反応が生じる。
【0017】
それとともに、発泡剤が炭酸アンモニウムである場合、炭酸アンモニウムと硫酸ナトリウムの反応によって生成された炭酸ナトリウムは、水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成する。
【0018】
硫酸カルシウム又は炭酸カルシウムは、ポリビニルアルコール繊維の分子鎖上のヒドロキシル基と強い相互作用を形成することにより分子鎖の動きを制限するとともに、可塑剤分子を拘束することにより、ポリビニルアルコール繊維の寸法変化を小さくすることができ、ポリビニルアルコール繊維の機械的特性と寸法安定性をさらに向上させる。
【0019】
逆に、硫酸カルシウムをポリビニルアルコール繊維に直接添加すると、硫酸カルシウムの比重が大きいため硫酸カルシウムが沈降し、添加した硫酸カルシウムが不均一に分散し、それによって硫酸カルシウムは一次繊維と均一に結合することができない。また、硫酸カルシウムを直接添加すると、添加した硫酸カルシウムの純度に影響される。硫酸ナトリウムのさまざまな調製方法のため、それらのほとんどは依然としてより多くの副生成物又は不純物を含み、その結果硫酸カルシウムの純度が影響を受ける。本出願では、すべてのステップで添加される物質は高純度であり、且つ処理されたポリビニルアルコール樹脂は他の副生成物を生成せず、従って、最終的に反応して形成された硫酸カルシウムは高純度であり、最終的に取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維の機械的特性を改善する上で重要な役割を果たす。
【0020】
本出願の反応工程において、発泡剤である炭酸水素アンモニウムと硫酸ナトリウムとの反応により炭酸水素ナトリウムと硫酸アンモニウムが生成され、あるいは発泡剤である炭酸アンモニウムと硫酸ナトリウムとの反応により炭酸ナトリウムと硫酸アンモニウムが生成される。調製方法はステップ4まで終了し、取得された二次繊維は、内部にアンモニア、二酸化炭素ガス、発泡剤(炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウム)、反応により生成された炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを含む。ステップ5で加熱して処理した後、発泡剤(炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウム)、反応により生成された炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムは、多数の気泡を発生させ、形成された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の内部に多数の微孔があり、それとともに、発泡剤(炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウム)、反応により生成された炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムから発生する大量の気泡、アンモニア、二酸化炭素が、二次繊維から抜け出ることにより、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の表面にも大量の微孔が形成され、最終的に取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の内部及び表面にも多数の微孔が形成され、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の親水性を効果的に向上させる。また、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の表面に多数の微孔が形成され、従来の方法で製造されたポリビニルアルコール繊維に比べて機械的特性が若干低下するが、それでもなお優れており、ポリビニルアルコール繊維の機械的強度に対する医療用材料の要件を満たすことができる。また、ステップ5において、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムは熱により分解して気泡を発生するが、その発泡効果は炭酸水素アンモニウムの発泡効果に劣るという特徴があり、この特徴から、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを炭酸水素アンモニウム発泡剤の発泡補助剤として用いて、炭酸水素アンモニウムと協働してステップ5における発泡と細孔形成工程で発泡作用を生じ、発泡現象をより持続させ、且つ、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品に形成される微孔をより多くする。
【0021】
前記ステップ2における発泡剤は、好ましくは炭酸水素アンモニウムであることがさらに好ましい。
【0022】
上記技術的解決手段により、炭酸水素アンモニウムがより熱分解し易くなり、気泡の発生が促進され、また、形成される微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の微孔がより多くなる。炭酸水素アンモニウムと炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムとが相互に協同するため、気泡を形成する効果が持続的に発揮している。
【0023】
前記ステップ2において、ポリビニルアルコール樹脂と発泡剤の重量部数比は1:(0.0003〜0.001)であることがさらに好ましい。
【0024】
上記技術的解決手段により、ポリビニルアルコール樹脂と発泡剤との重量部数比の範囲を限定することにより、ステップ5で発泡と細孔形成して取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の微孔数が適度であり、微孔構造の比表面積が大きいだけでなく、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の破断強度が過度に低下することをさらに回避できる。
【0025】
発泡剤の使用量が多すぎると、発泡数が多すぎ、最終的に、微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品の破断強度が低下し、紡糸が困難になる傾向があり、一方、発泡剤の使用量が少なすぎると、発泡数が少なくなりやすく、繊維の破断強度が高くなるが、比表面積が制限されて寸法安定性に劣る。
【0026】
前記ステップ2において、ポリビニルアルコール樹脂と発泡剤の重量部数比は1:(0.0006〜0.0009)であることがさらに好ましい。
【0027】
上記技術的解決手段により、ポリビニルアルコール樹脂と発泡剤の重量部数比は1:(0.0006〜0.0009)の範囲にあるとき、最終的に取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維最終製品は、より優れた破断強度とより大きい比表面積を持つ微孔構造を有する。
【0028】
前記ステップ3において、第1の凝固浴処理の温度は35〜55℃で、第1の凝固浴処理の処理速度は7〜9m/sであることがさらに好ましい。
【0029】
上記技術的解決手段により、第1の凝固浴処理では、調製した硫酸ナトリウム溶液を使用するが、硫酸ナトリウム溶液の主成分は硫酸ナトリウムであり、処理温度35〜55℃の条件下で、硫酸ナトリウム溶液中の硫酸ナトリウム成分の溶解を助け、硫酸ナトリウム溶液の濃度をより均一にする。第1の凝固浴処理により取得されたポリビニルアルコール一次繊維は、脱水効果が高く、寸法安定性に優れている。
【0030】
前記ステップ3において、第1の凝固浴処理の温度は好ましくは40〜50℃で、第1の凝固浴処理の処理速度は好ましくは7m/sであることがさらに好ましい。
【0031】
上記技術的解決手段により、上記温度範囲において、上記処理速度と合わせて、処理により取得されたポリビニルアルコール一次繊維の脱水効果と寸法安定性を向上させるのに役立つ。
【0032】
前記ステップ1において、水と水酸化カルシウムの重量部数比は1:(0.006〜0.02)であることがさらに好ましい。
【0033】
上記技術的解決手段により、水酸化カルシウムは、加熱せずに強い浸透力を有するが、本出願では、ステップ4における第2の凝固浴処理で水酸化カルシウムを加え、ステップ3で反応した硫酸アンモニウムと反応させ、硫酸カルシウム、アンモニア及び水を生成する。生成した硫酸カルシウムがそのまま二次繊維の表面に作用し、その寸法安定性を向上させる。
【0034】
前記ステップ4において、水と水酸化カルシウムの重量部数比は1:(0.011〜0.014)であることがさらに好ましい。
【0035】
上記技術的解決手段により、水と水酸化カルシウムの上記重量部数比の範囲を使用すると、第2の凝固浴処理により取得された二次繊維はよりよい機械的特性を有することが研究により判明される。
【0036】
前記ステップ5において、発泡のために180〜250℃に加熱し、前記二次繊維の搬送速度は30〜40m/sであることがさらに好ましい。
【0037】
上記技術的解決手段により、従来のポリビニルアルコールの湿式紡糸生産は二次繊維の後続の工程で、乾燥トンネル加熱及び延伸することがあり、乾燥トンネルの温度は180〜250℃であり、すなわちステップ5において、この温度を利用し、完全に反応せずに二次繊維に残留する炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウムが加熱により分解してNH
3、CO
2となり二次繊維から抜け出し、二次繊維に微孔が残留して微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品を取得する。該方法は、もともとの乾燥トンネルによって二次繊維を乾燥させる加熱工程を利用しており、別途加熱する必要がなく、省エネルギーでありながら、残留する炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウムを十分に分解する作用を達成し、取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品には多くの微孔が含まれている。
【0038】
前記ステップ5において、発泡と細孔形成の温度は、220〜230℃であることがさらに好ましい。
【0039】
上記技術的解決手段により、該温度範囲は、発泡剤を十分に熱分解させ、発泡剤の気泡発生を促進し、取得された微孔化ポリビニルアルコール繊維初期製品に発泡剤が残留しないようにするため、発泡剤の残留する可能性のある味を除去するのに役立ち、従来の方法では乾燥トンネルの温度は220〜230℃であり、工程機器を追加する必要がなく、生産コストを低減するのに有利である。