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特開2021-110173ハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-110173(P2021-110173A)
(43)【公開日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】ハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20210705BHJP
【FI】
   E01C13/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-3430(P2020-3430)
(22)【出願日】2020年1月14日
(11)【特許番号】特許第6837692号(P6837692)
(45)【特許公報発行日】2021年3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】594177151
【氏名又は名称】株式会社大晃
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 國人
(72)【発明者】
【氏名】内田 正良
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AB04
2D051AE04
2D051AE05
2D051AF01
2D051AF09
2D051AG11
2D051AG16
2D051AH01
2D051AH06
2D051HA01
2D051HA02
2D051HA08
2D051HA09
(57)【要約】
【課題】天然芝の根付きを向上させるハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド芝形成具10は、天然芝5の根5bが絡みつくことが可能な繊維材1と、繊維材1上に重ねられる人工芝の基布2とを備え、基布2は、人工芝葉3が植設される植設面2aと、植設面2a上に盛られた土壌4内で発芽した天然芝5の根5bが通ることが可能な複数の貫通孔2bとを有する。土壌4内で発芽した天然芝5の根5bは、土壌4内において人工芝葉3に絡みつくだけではなく、貫通孔2bを通じて基布2の下方に位置する繊維材1に到達し、繊維材1と絡みつく。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材と、前記繊維材上に重ねられる人工芝の基布とを備え、
前記基布は、人工芝葉が植設される植設面と、前記植設面上に盛られた土壌内で発芽した天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔とを有する、
ハイブリッド芝形成具。
【請求項2】
前記繊維材は、編物状または織物状であり、前記天然芝の根が貫通可能な網目よりなる模様を有している、請求項1に記載のハイブリッド芝形成具。
【請求項3】
前記繊維材は、不織布であり、前記天然芝の根が貫通可能な繊維間の空隙を有している、請求項1に記載のハイブリッド芝形成具。
【請求項4】
前記繊維材の下方に重ねられる透水材をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド芝形成具。
【請求項5】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材上に、植設面に人工芝葉が植設された人工芝の基布を重ねる準備工程と、
前記基布の植設面上に土壌を盛って天然芝の種をまく種まき工程と、
前記土壌内で前記種を発芽させて天然芝を生育させる生育工程と、
を含み、
前記基布は、天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔を備え、
前記生育工程において、天然芝の根を前記貫通孔を通して前記繊維材に絡みつかせる、ハイブリッド芝形成方法。
【請求項6】
前記土壌を前記人工芝葉の長さの60%〜80%に盛る、請求項5に記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項7】
前記土壌にケイ素含有植物に由来するシリカを散布する、請求項5または6に記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項8】
前記繊維材を建築物の屋上に設置する設置工程をさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のハイブリッド芝形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝と天然芝とが組み合わされたハイブリッド芝に関し、より詳細には、ハイブリッド芝を形成するのに用いられるハイブリッド芝形成具と、当該ハイブリッド芝形成具を用いてハイブリッド芝を形成するためのハイブリッド芝形成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工芝と天然芝とが組み合わされたハイブリッド芝が、サッカーなどの球技に使用されるグラウンドや、公園、駐車場および道路等の様々な場所に導入されつつある。例えば下記特許文献1には、人工芝の上に天然芝を生育させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−1116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド芝では、天然芝の根が人工芝の芝葉(パイルとも呼ぶ)に絡みつくことにより、天然芝の根付き(定着性とも呼ぶ)が向上し、耐久性も向上する。しかしながら、特許文献1に例示するハイブリッド芝では、天然芝は芝目に敷き込まれた土壌内においてのみ生育し、ハイブリッド芝を導入する場所によっては、天然芝の根付きおよび耐久性は不十分である。ハイブリッド芝が様々な場所に導入されるにつれて、ハイブリッド芝において天然芝の根付きをより向上し、耐久性をより向上することが求められている。
【0005】
本発明は、天然芝の根付きを向上させるハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハイブリッド芝形成具は、天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材と、繊維材上に重ねられる人工芝の基布とを備え、基布は、人工芝葉が植設される植設面と、植設面上に盛られた土壌内で発芽した天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔とを有する。
【0007】
本発明に係るハイブリッド芝形成具によると、土壌内で発芽した天然芝の根は、土壌内において人工芝葉に絡みつくだけではなく、貫通孔を通じて基布の下方に位置する繊維材に到達し、繊維材と絡みつく。これにより、天然芝の根付きが向上する。
【0008】
例えばサッカーで使用されるグラウンドにハイブリッド芝を敷設するケースでは、プレー性を考慮して、芝全体に占める人工芝の割合は概ね5%以下と低くされ、天然芝の割合は概ね95%以上と高くされている。さらなる耐久性の向上をねらって、人工芝の割合を増やして天然芝の根付きを向上させようとすると、天然芝の割合が低下してプレー性が低下する。球技用のグラウンドにハイブリッド芝を敷設するケースにおいて、耐久性とプレー性とはトレードオフの関係になっている。
【0009】
また例えば、駐車場や建築物の屋上、公園等にハイブリッド芝を敷設するケースでは、耐久性を考慮して、芝全体に占める人工芝の割合を増加させて天然芝の割合を低下させるほど、天然芝の自然な美観や自然な風合いが損なわれる。緑化を目的としてハイブリッド芝を敷設するケースにおいて、耐久性と美観とはトレードオフの関係になっている。
【0010】
これに対し、本発明に係るハイブリッド芝形成具によると、人工芝に対する天然芝の割合を高く維持したまま、天然芝の根付きを向上することができるので、球技におけるプレー性は低下しないし、自然な美観や自然な風合いも損なわれない。すなわち、本発明に係るハイブリッド芝形成具によると、天然芝の根付きを単に向上させるだけではなく、ハイブリッド芝を敷設するケースにおいて従来はトレードオフの関係になっていた、耐久性とプレー性とを両立することができるし、耐久性と美観とを両立することもできる。
【0011】
ハイブリッド芝形成具の好ましい実施形態では、繊維材は、編物状または織物状であり、天然芝の根が貫通可能な網目よりなる模様を有している。ハイブリッド芝形成具の別の好ましい実施形態では、繊維材は、不織布であり、天然芝の根が貫通可能な繊維間の空隙を有している。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、ハイブリッド芝形成具は、繊維材の下方に重ねられる透水材をさらに備える。これにより、繊維材に到達した天然芝の根は、防草シートとしても機能する透水材の表面において、繊維材内を水平方向に這うように生育する。
【0013】
本発明に係るハイブリッド芝形成方法は、天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材上に、植設面に人工芝葉が植設された人工芝の基布を重ねる準備工程と、基布の植設面上に土壌を盛って天然芝の種をまく種まき工程と、土壌内で種を発芽させて天然芝を生育させる生育工程と、を含み、基布は、天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔を備え、生育工程において、天然芝の根を貫通孔を通して繊維材に絡みつかせる。
【0014】
好ましくは、土壌を人工芝葉の長さの60%〜80%に盛る。これにより、土壌に天然芝のみを生育する場合と比較して、天然芝の生育に必要な土壌の厚さは軽減される。
【0015】
好ましくは、土壌にケイ素含有植物に由来するシリカを散布する。これにより、ハイブリッド芝の表面における遮熱性を向上させることができる。
【0016】
ハイブリッド芝形成方法の好ましい実施形態では、繊維材を建築物の屋上に設置する設置工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、天然芝の根付きを向上させるハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成具の模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成具において用いる繊維材の模式的な図である。
図3】本発明の実施例に係るハイブリッド芝による遮熱性能の測定結果を比較例と共に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成具の模式的な断面図である。
【0021】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成具10は、天然芝5の根5bが絡みつくことが可能な繊維材1と、繊維材1上に重ねられる人工芝の基布2とを備え、基布2は、人工芝葉3が植設される植設面2aと、植設面2a上に盛られた土壌4内で発芽した天然芝5の根5bが通ることが可能な複数の貫通孔2bとを有する。好ましくは、ハイブリッド芝形成具10は、繊維材1の下方に重ねられる透水材6をさらに備えることができる。
【0022】
ハイブリッド芝形成具10は、人工芝または天然芝が敷設可能な場所に設置される。設置場所の例としては、例えば、グラウンド、公園、庭先、ゴルフ場、ゴルフ練習場、建築物の屋上および法面等が挙げられ、設置場所の材質の例としては、例えば、土壌(真砂土および砕石等)、アスファルト、モルタル、煉瓦およびタイルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
また、ハイブリッド芝形成具10の平面視における大きさも制限されない。ハイブリッド芝形成具10はユニット化することができ、ユニット化された複数のハイブリッド芝形成具10を、上記例示する設置場所に、例えばタイルのように敷き詰めて設置することもできる。
【0024】
繊維材1には、貫通孔2bを通じて到達する天然芝5の根5bが絡みつく。本実施形態では、繊維材1は、編物状または織物状であり、天然芝5の根5bが貫通可能な網目よりなる模様を有している。編物状または織物状であることから、繊維材1は適度な保水力を有している。本実施形態において用いる繊維材1については、図2を参照して後述する。
【0025】
繊維材1上には人工芝の基布2が重ねられている。基布2の植設面2aには複数の人工芝葉3が植設されている。基布2には複数の貫通孔2bが設けられており、貫通孔2bは、天然芝5の根5bが通ることが可能な径に形成されている。例示的には、貫通孔2bの直径は約3mm程度であり、複数の貫通孔2bが、例えば10mm間隔で基布2に一様に形成されている。人工芝葉3は、植設部分が基布2の裏側へ貫通し、表出部分が基布2の表側へ突出するように植設されている。好ましくは、人工芝葉3は樹脂製のロングパイル型であり、人工芝葉3の長さは約50mm〜約80mmである。例示的には、人工芝葉3が植設されている人工芝の基布2には、ワールド敷物加工株式会社製の人工芝を使用するが、使用する人工芝はこれに限定されず、種々の既製の人工芝を使用することができる。
【0026】
植設面2a上の複数の人工芝葉3間には土壌4が盛られている。好ましくは、土壌4の厚さは、人工芝葉3の長さの60%〜80%である。好ましくは、土壌4には、ケイ素含有植物に由来するシリカが散布されている。
【0027】
土壌4には天然芝5の種5aがまかれており、種5aは土壌4内で発芽して生育する。生育した天然芝5の根5bは、土壌4内において人工芝葉3に絡みつく。これにより、天然芝5の根付きが向上する。さらに、土壌4内で発芽した天然芝5の根5bは、貫通孔2bを貫通して基布2の下方に位置する繊維材1に到達し、繊維材1と絡みつく。これにより、天然芝5の根付きがさらに向上する。好ましくは、天然芝5の根5bは、基布2の下方において繊維材1と絡みつき繊維材1と一体化される。好ましくは、天然芝5は、人工芝葉3よりも長めに生育されている。これにより、球技におけるプレー性は天然芝と同程度となる。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成具において用いる繊維材の模式的な図である。
【0029】
本実施形態では、繊維材1は、繊維材本体1aと、繊維材本体1aの表面に設けられた立体網目1bとの層構造を有している。繊維材本体1aおよび立体網目1bはいずれも、合成繊維製の糸が編物状(または織物状)に編成されて構成されている。天然芝5は生育すると、根5bが繊維材本体1aおよび立体網目1bに絡みつく。例示的には、本実施形態において用いる繊維材1には、ユニチカ株式会社製のキュービックアイ(登録商標)を使用することができる。
【0030】
図2の(A)は繊維材1の表側の平面図である。(A)に示すように、繊維材本体1aの表面に設けられた立体網目1bはハニカム状の網目模様を有している。例示的には、立体網目1bのハニカム状の網目の目開きは、図中に符号d1で示すものが約5mm〜約10mmであり、符号d2で示すものが約12mm〜約17mmであり、符号d3で示すものが約7mm〜約12mmである。立体網目1bの目開きは、基布2の貫通孔2bを通じて土壌4が流入可能であり、天然芝5の根5bが貫通可能であればよい。
【0031】
図2の(B)は繊維材1の裏側の平面図である。(B)に示すように、繊維材本体1aは網目模様を有している。例示的には、繊維材本体1aの網目の目開きd4は、天然芝5の根5bが貫通可能な約3mm程度である。
【0032】
図2の(C)は繊維材1の断面図である。(C)に示すように、繊維材本体1aの表面と立体網目1bの上部表面1cとの間には、弾性を有する複数の連結糸1dが介在している。連結糸1dは、繊維材本体1aの表面と立体網目1bの上部表面1cとを連結し、立体網目1bが自立するように設けられている。複数の連結糸1dで区画される立体網目1b内の空間は、凹状の空間1eになっている。平面視において、連結糸1dは立体網目1bの上部表面1cから下方に向けて延伸しており、平面視において、凹状の空間1eはハニカム状の形状を有している。例示的には、立体網目1bの厚みは約5mmである。
【0033】
本実施形態では、繊維材1は、立体網目1bが基布2の側を向くように配置されている。繊維材本体1aの表面に立体網目1bが設けられていることにより、ハニカム状の立体網目1b上および凹状の空間1e内には、基布2の貫通孔2bを通じて流入した土壌4が堆積する。これにより、基布2の下方に位置する繊維材1の立体網目1b上および凹状の空間1e内に上層から土壌4が供給される。これにより、天然芝5は繊維材1内に根5bを伸ばしやすくなり、天然芝5の根付きがより促進される。
【0034】
他の実施形態では、繊維材1は、不織布であり、天然芝5の根5bが貫通可能な繊維間の空隙を有している。例示的には、他の実施形態において用いる繊維材1には、合成繊維製または天然繊維製のフェルトを使用することができる。
【0035】
フェルトは伸縮性を有しており、フェルトを構成する繊維間の空隙は、天然芝5の根5bが貫通可能となっている。天然芝5は生育すると、根5bがフェルトに絡みつき、天然芝5の根付きがより促進される。天然芝5の根付きが阻害されないように、フェルトを構成する繊維間の空隙は、マイクロファイバー程の高密度である必要はなく、低密度であることが好ましい。フェルトであることから、繊維材1は適度な保水力を有している。
【0036】
透水材6は、可撓性を有する織布または不織布で形成されており、透水性および通気性を有している。透水材6は、透水性および通気性を有することにより、雨や雪等の水分を地面に浸透させ、水溜まりの発生を防止する透水シートとして機能する。好ましくは、透水材6はさらに、遮光性および耐圧性を有している。透水材6は、遮光性および耐圧性を有することにより、真砂土等の地面に生える雑草の生育を阻止する防草シートとしても機能する。例示的には、透水材6には、ポリエステル製の長繊維不織布(製造者:東レ株式会社、製品名:東レアクスター(登録商標)・マントル(登録商標))を使用することができる。ポリエステル製の長繊維不織布を用いた透水材6は、透水シートおよび防草シートとして機能する。
【0037】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るハイブリッド芝形成方法を説明する。
【0038】
まず、準備工程として、天然芝5の根5bが絡みつくことが可能な繊維材1上に、植設面2aに人工芝葉3が植設された人工芝の基布2を重ねる。基布2には、天然芝5の根5bが通ることが可能な複数の貫通孔2bが設けられている。準備工程は、ハイブリッド芝の敷設面に透水材6を設置した後に施すこともできる。この場合、準備工程を行う前に、透水材6上に繊維材1を重ねておく。
【0039】
次に、種まき工程として、基布2の植設面2a上に土壌4を盛って天然芝5の種5aをまく。図1に示すように、土壌4は、植設面2a上の複数の人工芝葉3間に、人工芝葉3の根元を埋め込むように盛る。好ましくは、土壌4を人工芝葉3の長さの60〜80%に盛る。本実施形態では、野芝の種を土壌4にまく。
【0040】
最後に、生育工程として、土壌4内で種5aを発芽させて天然芝5を生育させ、天然芝5の根5bを貫通孔2bを通して繊維材1に絡みつかせる。生育した天然芝5の根5bは、土壌4内において人工芝葉3に絡みつく。これにより、天然芝5の根付きが向上する。さらに、生育した天然芝5の根5bは、貫通孔2bを通じて基布2の下方に位置する繊維材1に到達し、繊維材1と絡みつく。これにより、天然芝5の根付きがさらに向上する。好ましくは、基布2の下方において根5bが繊維材1と絡みつき繊維材1と一体化されるまで、天然芝5を生育させる。好ましくは、天然芝5は、人工芝葉3よりも長めに生育させる。これにより、球技におけるプレー性を天然芝と同程度に維持することができる。繊維材1の下方に透水材6が重ねられている場合、繊維材1に到達した天然芝5の根5bは、防草シートとしても機能する透水材6の表面において、繊維材1内を水平方向に這うように生育する。
【0041】
好ましくは、天然芝5を生育させた後に、ケイ素含有植物に由来するシリカ(籾殻シリカとも呼ばれている)を土壌4に散布することができる。これにより、ハイブリッド芝の表面における遮熱性を向上させることができる。ケイ素含有植物とは稲の籾殻を意味し、ケイ素含有植物に由来するシリカとは、稲の籾殻を燃焼させてできた灰を意味する。シリカとは、二酸化ケイ素によって構成される物質を意味する。籾殻シリカは、植物構造の非晶質な多孔質材料であり空気を多く含んでいることから、断熱性を有していることが知られている。ケイ素含有植物に由来するシリカは、粉末として土壌4に散布してもよいし、粉末を水と混ぜ合わせて土壌4に散布してもよい。
【0042】
以上、本発明によると、天然芝の根付きを向上させるハイブリッド芝形成具およびハイブリッド芝形成方法を提供することができる。本発明によると、土壌4内で発芽した天然芝5の根5bは、土壌4内において人工芝葉3に絡みつくだけではなく、貫通孔2bを通じて基布2の下方に位置する繊維材1に到達し、繊維材1と絡みつく。これにより、天然芝5の根付きが向上する。
【0043】
本発明によると、人工芝葉3に対する天然芝5の割合を高く維持したまま、天然芝5の根付きを向上することができるので、球技におけるプレー性は低下しないし、自然な美観や自然な風合いも損なわれない。すなわち、本発明によると、天然芝5の根付きを単に向上させるだけではなく、ハイブリッド芝を敷設するケースにおいて従来はトレードオフの関係になっていた、耐久性とプレー性とを両立することができるし、耐久性と美観とを両立することもできる。
【0044】
また、従来において、天然芝を直接地面に敷設する場合には、土壌の厚みは通常150mm程度が必要であるが、本発明によれば、例えば長さが約65mmのロングパイル型の人工芝葉3を用いる場合には、土壌4の厚みは約50mm程度で良い。この場合、土壌4の厚みは人工芝葉3の約77%である。本発明によると、天然芝5の生育に必要な土壌4の厚さを軽減することが可能となり、緑化を目的として建築物の屋上等にハイブリッド芝を敷設するケースであっても、屋上に掛かる重量の負担を軽減することができる。
【0045】
また、建築物の屋上等では、下地となる敷設面が土壌ではなくモルタルである場合が多いが、本発明によると、ハイブリッド芝をこのような硬いモルタル上に敷設することが可能となる。透水材6を繊維材1の下方に重ねて用いることにより、繊維材1に到達した天然芝5の根5bが、透水材6の表面において繊維材1内を水平に這うように生育し、これにより天然芝5の根付きが向上する。繊維材1により衝撃吸収性も向上する。
【0046】
また、従来のゴルフ練習場では、ターゲットグリーンに人工芝が敷設されている場合が多いが、本発明によると、ターゲットグリーンにおけるハイブリッド芝の導入が促進される。ゴルフのアプローチショットの練習において、人工芝と天然芝とではボールに対するバックスピンのかかり具合が異なっており、プレーヤにとっては練習場と本コースとの感覚の違いが生じている。本発明によって、ターゲットグリーンにハイブリッド芝が敷設されることにより、天然芝に近い感覚で、アプローチショットの練習を行うことが可能となる。
[その他の形態]
【0047】
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0048】
繊維材1は、最終的な設置面に予め設置されていてもよいし、最終的な設置面とは異なる別の敷地に設置されていてもよい。例えば、準備工程から生育工程までの一連の工程を、最終的な設置面とは異なる別の敷地である、例えば園芸用地において行い、生育工程までの一連の工程が施されたハイブリッド芝形成具10を、最終的な設置面である、例えば球技用のグラウンドまたは建築物の屋上等に設置してもよい。すなわち、最終的な設置面とは異なる別の敷地に繊維材1を一時的に設置して、準備工程から生育工程までの一連の工程を施してもよい。この場合、設置工程として、繊維材1を最終的な設置面に設置する工程をさらに施すことができる。
【0049】
繊維材1は天然芝5の根5bが絡みつくことが可能であればよく、上記した実施形態において説明したように、編物状または織物状であってもよいし不織布であってもよい。例示的には、編物状または織物状の繊維材1には、アイリスオーヤマ株式会社製の製品名「フェアウェイターフソリッド」を用いることができる。例示するフェアウェイターフソリッドおよびキュービックアイは、ゴルフ練習場において集球用に敷設されているシート状の敷物である。
【0050】
繊維材1は合成繊維製であってもよく、天然繊維製であってもよい。同様に、繊維材本体1aおよび立体網目1bは天然繊維製であってもよく、天然繊維製の糸が編物状(または織物状)に編成されて構成されていてもよい。
【0051】
立体網目1bの網目模様はハニカム状(六角形状)に限らず、種々の形状とすることができる。立体網目1bの網目模様は、例えば三角形状であってもよいし、多角形状であってもよい。網目模様は、規則性を有する模様に限らず、種々の形状が不規則に組み合わされた、規則性を有しない乱雑な模様であってもよい。
【0052】
基布2の裏側に貫通する人工芝葉3の植設部分は、基布2の裏側から例えば樹脂層を設けることにより固定されていてもよい。貫通孔2bは、このような樹脂層を貫通するように形成すればよい。
【0053】
人工芝葉3は、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびナイロン等を含む樹脂製に限らず、例えばパルプ製であってもよい。
【0054】
土壌4にまく天然芝5の種5aは野芝に限らず、例えば高麗芝を含む日本芝や、例えばケンタッキーブルーグラスを含む西洋芝であってもよい。また、これら日本芝および西洋芝を混播してもよい。
【実施例1】
【0055】
建築物の屋上にハイブリッド芝を敷設して建築物の温度上昇を緩和することが可能であるかどうかを検証するために、本発明のハイブリッド芝形成具を用いて形成したハイブリッド芝の遮熱性について、人工芝との比較試験を行った。
【0056】
実施例1および実施例2では、図1に示すハイブリッド芝形成具10の構成を用いてハイブリッド芝を敷設した。透水材6には東レ株式会社製の製品名「アクスター」を使用し、透水材6を真砂土上に設置した。繊維材1はユニチカ株式会社製の製品名「キュービックアイ」を使用し、透水材6上に重ね合わせた。人工芝葉3はパイル長が65mmのものを使用し、土壌4を50mmの厚さで盛った。土壌4には真砂土を使用した。天然芝5は、実施例1では野芝を生育し、実施例2では西洋芝を生育した。天然芝5は、人工芝葉3と同程度の長さにまで生育させた。
【0057】
比較例1ないし比較例3では人工芝を敷設した。人工芝の芝目に充填する充填材として、比較例では、遮熱対策が施された種々のゴムチップを使用した。比較例1では、一般的なゴムチップおよび硅砂の混合物を、比較例2では、製品名「クールフィル」および硅砂の混合物を、比較例3では、遮熱ゴムチップおよび硅砂の混合物を、それぞれ使用した。
【0058】
250ワットの赤外線ランプの光をハイブリッド芝または人工芝の表面から60cm離して照射し、ハイブリッド芝または人工芝の表面における60分間の温度上昇を計測した。ハイブリッド芝または人工芝の温度は、レーザ温度計を用いて、ハイブリッド芝または人工芝の表面の中心部分の温度を計測した。計測結果を図3のグラフに示す。
【0059】
比較例1に示す一般的なゴムチップを充填した人工芝では、表面の温度は50℃を超えていた。ゴムチップに遮熱対策が施されている比較例2および比較例3の人工芝では、表面の温度は50℃を下回っていたものの、比較例2および比較例3のいずれにおいても40℃を超えていた。
【0060】
これに対し、実施例1および実施例2のハイブリッド芝ではいずれも、表面の温度は40℃を下回っていた。これにより、実施例1および実施例2に示すハイブリッド芝によると、人工芝と比較して遮熱性が向上していることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 繊維材
1a 繊維材本体
1b 立体網目
1c 立体網目の上部表面
1d 連結糸
1e 凹状の空間
2 基布
2a 植設面
2b 貫通孔
3 人工芝葉
4 土壌
5 天然芝
5a 天然芝の種
5b 天然芝の根
6 透水材
10 ハイブリッド芝形成具
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2020年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材と、前記繊維材上に重ねられる人工芝の基布とを備え、
前記基布は、人工芝葉が植設される植設面と、前記植設面上に盛られた土壌内で発芽した天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔とを有
前記繊維材は、編物状または織物状であり、前記天然芝の根が貫通可能な立体網目よりなる模様を有しており、前記立体網目の目開きに前記貫通孔を通じて前記土壌が流入する、ハイブリッド芝形成具。
【請求項2】
前記繊維材の下方に重ねられる透水材をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド芝形成具。
【請求項3】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材上に、植設面に人工芝葉が植設された人工芝の基布を重ねる準備工程と、
前記基布の植設面上に土壌を盛って天然芝の種をまく種まき工程と、
前記土壌内で前記種を発芽させて天然芝を生育させる生育工程と、
を含み、
前記基布は、天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔を備え、
前記繊維材は、編物状または織物状であり、前記天然芝の根が貫通可能な立体網目よりなる模様を有しており、前記立体網目の目開きには前記貫通孔を通じて前記土壌が流入可能であり、
前記生育工程において、天然芝の根を前記貫通孔を通して前記繊維材に絡みつかせる、
ハイブリッド芝形成方法。
【請求項4】
前記土壌を前記人工芝葉の長さの60%〜80%に盛る、請求項に記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項5】
前記土壌にケイ素含有植物に由来するシリカを散布する、請求項またはに記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項6】
前記繊維材を建築物の屋上に設置する設置工程をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載のハイブリッド芝形成方法。
【手続補正書】
【提出日】2020年10月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材と、前記繊維材上に重ねられる人工芝の基布と、前記繊維材の下方に重ねられる透水材とを備え、
前記基布は、人工芝葉が植設される植設面と、前記植設面上に盛られた土壌内で発芽した天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔とを有し、
前記繊維材は、編物状または織物状であり、前記天然芝の根が貫通可能な立体網目よりなる模様を有しており、前記立体網目の目開きに前記貫通孔を通じて前記土壌が流入する、ハイブリッド芝形成具。
【請求項2】
天然芝の根が絡みつくことが可能な繊維材上に、植設面に人工芝葉が植設された人工芝の基布を重ねる準備工程と、
前記基布の植設面上に土壌を盛って天然芝の種をまく種まき工程と、
前記土壌内で前記種を発芽させて天然芝を生育させる生育工程と、
を含み、
前記基布は、天然芝の根が通ることが可能な複数の貫通孔を備え、
前記繊維材は、編物状または織物状であり、前記天然芝の根が貫通可能な立体網目よりなる模様を有しており、前記立体網目の目開きには前記貫通孔を通じて前記土壌が流入可能であり、
前記生育工程において、天然芝の根を前記貫通孔を通して前記繊維材に絡みつかせる、ハイブリッド芝形成方法。
【請求項3】
前記土壌を前記人工芝葉の長さの60%〜80%に盛る、請求項に記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項4】
前記土壌にケイ素含有植物に由来するシリカを散布する、請求項またはに記載のハイブリッド芝形成方法。
【請求項5】
前記繊維材を建築物の屋上に設置する設置工程をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載のハイブリッド芝形成方法。