【解決手段】ゲート型引戸装置Aはアウトセット構造であり、開口部1の左右一側にある壁部Wの前側に上レール部材8が設けられている。引戸31の戸尻側にその閉じ位置で壁部Wと重なる引き残し部32が設けられ、引き残し部32の上部に、上レール部材8にスライド可能に係合する戸先側及び戸尻側ガイドピン36,37の2本が互いに間隔をあけて突設されている。引戸31は、引き残し部32の上部がガイドピン36,37により上レール部材8に係合された状態で、上レール部材8下方の床部Fないし開口部1前側の床部F上を走行可能とされている。
建物において開口部を有する壁部の厚さ方向一側である前側に引戸が設けられ、該引戸の壁部に沿った左右方向の移動により開口部を開閉するようにしたアウトセット構造のゲート型引戸装置であって、
上記開口部の左右一側にある壁部の前側に上レール部材が設けられ、
上記引戸の戸尻側には、該引戸が上記開口部を閉じた閉じ位置にあるときに上記壁部と重なる引き残し部が設けられ、該引き残し部の上部には、上向きに延びて上記上レール部材にスライド可能に係合する少なくとも2本のガイドピンが引戸の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ方向に互いに間隔をあけて突設され、
上記引戸は、引き残し部の上部が上記ガイドピンにより上レール部材に係合された状態で、上記上レール部材下方の床部上ないし開口部前側の床部上を走行可能とされていることを特徴とするゲート型引戸装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば乳幼児の居る幼児施設や保育施設等の建物では、室内の乳幼児が開口部を通って自由に室外に出ないようにするために、その開口部にベビーゲート(乳幼児ゲート)を設置することがある。このベビーゲートは、開口部の全体を開閉するのではなく、その閉じ状態で開口部の下部のみを閉じて、乳幼児が不用意に開口部を通らないようにするものである。
【0005】
しかし、このベビーゲートを上記上吊り型の引戸装置で形成しようとした場合、引戸を吊り下げる上レール部材は開口部の上下中間部を通ることになり、開口部本来の利用が妨げられ、実用性がない。
【0006】
また、ベビーゲートは、閉じ状態や半閉じ状態にあるときに、乳幼児が引戸を押したり引戸にぶつかったりして引戸にある程度の横荷重や衝撃が加わっても、その引戸が上下レール部材から外れるのを防いで引戸の走行を確保できるようにして、その作動安定性や信頼性を高めることが要求される。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、引戸装置の構造に工夫を施すことにより、引戸が開口部の下部を開閉する引戸装置に限らず、開口部の全体を開閉する引戸装置であっても、引戸をスムーズに安定して走行させつつ、引戸に横荷重が加わったときに引戸を外れ難くしようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく、この発明では、引戸装置は、壁部の厚さ方向一側に配置される引戸が床部上を走行するアウトセット構造の下荷重型とする。その上で、開口部側方の壁部に上レール部材を配置し、引戸にその閉じ位置で開口部側方の壁部に重なる引き残し部を形成して、その引き残し部に引戸の戸先側及び戸尻側に離れた複数のガイドピンを突設し、それらガイドピンを上レール部材に係合させて案内させるようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、建物において開口部を有する壁部の厚さ方向一側である前側に引戸が設けられ、該引戸の壁部に沿った左右方向の移動により開口部を開閉するようにしたアウトセット構造のゲート型引戸装置が対象である。
【0010】
そして、このゲート型引戸装置では、上記開口部の左右一側にある壁部の前側に上レール部材が設けられている。上記引戸の戸尻側には、該引戸が上記開口部を閉じた閉じ位置にあるときに上記壁部と重なる引き残し部が設けられ、該引き残し部の上部には、上向きに延びて上記上レール部材にスライド可能に係合する少なくとも2本のガイドピンが引戸の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ方向に互いに間隔をあけて突設されており、上記引戸は、引き残し部の上部が上記ガイドピンにより上レール部材に係合された状態で、上記上レール部材下方の床部上ないし開口部前側の床部上を走行可能とされていることを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、ゲート型引戸装置は、引戸が壁部の厚さ方向一側である前側に配置されたアウトセット構造のものであり、壁部前側に上レール部材が配置されている。そして、引戸は、下端部が上レール部材下方の床部上ないし開口部前側の床部上を走行し、上端部に突出する複数のガイドピンが上レール部材に係合してスライドすることで、左右方向に移動して開口部を開閉する。このことで、引戸はスムーズに安定して走行する。また、上レール部材は開口部の左右一側にある壁部の前側に設けられているので、引戸が閉じ位置で開口部の下側部を閉じる構造であっても、上レール部材は開口部まで延びてその上下中間部を通ることはなく、開口部本来の利用が妨げられることはない。
【0012】
さらに、引戸の戸尻側には引戸の閉じ位置で壁部と重なる引き残し部が形成され、その引き残し部の上端部に複数のガイドピンが突出し、それらガイドピンにより引戸の上端部が上レール部材に係合している。そのため、引戸の上端部は複数本のガイドピンにより上レール部材に支持され、下端部は床部に支持される。このことで、引戸装置の閉じ状態や半閉じ状態で引戸の前後方向の横荷重に対する抵抗が大きくなり、特に上端部にあっては複数のガイドピンが引戸の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ方向に互いに間隔をあけて配置されているので、上記横荷重に対する抵抗が大に確保される。そのため、引戸に前後方向の横荷重が加わっても引戸が外れ難くなり、ゲート型引戸装置の作動安定性や信頼性が向上する。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記上レール部材と平行に延びる下レール部材が上レール部材下方の床部ないし開口部前側の床部に亘り連続するように設けられ、引戸の下部に上記下レール部材上を走行する戸車が設けられており、引戸の下部は、戸車により下レール部材に沿って走行可能とされていることを特徴とする。
【0014】
この第2の発明では、壁部の前側ないし開口部の前側の床部上に下レール部材が設けられ、この下レール部材に沿って引戸下部の戸車が走行する。また、引戸の上部は複数のガイドピンが上レール部材に係合してスライドする。これらにより、引戸が左右方向に移動して開口部を開閉する。このように引戸は下部が戸車により下レール部材に支持されることになり、引戸装置の閉じ状態や半閉じ状態で引戸の前後方向の横荷重に対する抵抗がより一層大きくなる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記ガイドピンは、引戸の戸先側に位置する戸先側ガイドピンと、引戸の戸尻側に位置する戸尻側ガイドピンとの2本であることを特徴とする。
【0016】
この第3の発明では、ガイドピンが戸先側ガイドピンと戸尻側ガイドピンとの2本でありながら、引戸装置の閉じ状態や半閉じ状態での引戸の前後方向の横荷重に対する抵抗を大に確保することができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、2本のガイドピンの間隔は110mm以下であることを特徴とする。
【0018】
この第4の発明では、引戸装置の閉じ状態や半閉じ状態で引戸に前後方向の横荷重が加えられた際、引戸は戸尻側ガイドピンを回動中心として、戸先側ガイドピンが上レール部材から外れる方向に回動するのではなく、戸先側ガイドピンを回動中心として、戸尻側ガイドピンが上レール部材から外れる方向に回動する。そのとき、2本のガイドピンの間隔が110mm以下であれば、上記回動に伴って戸尻側ガイドピンが上レール部材から外れるのを有効に防ぐことができる。
【0019】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、上レール部材の上面は、前側に向かって(壁部から前側に離れる方向に向かって)下側に向かうように前下がりに傾斜していることを特徴とする。
【0020】
この第5の発明では、上レール部材の上面が前下がりに傾斜しているので、例えば使用者、特に乳幼児が壁部の前側から手を伸ばして上レール部材に指を掛けようとしても、その傾斜した上面に指が掛かり難くなり、上レール部材に掴まってぶら下がる行為を抑止することができる。
【0021】
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、引戸上端部の高さ位置は開口部の上端部よりも低く、引戸は閉じ位置で開口部の下側部を開閉するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明は、第6の発明において、引戸上端部の高さ位置は700mm以上であることを特徴とする。
【0023】
この第6及び第7の発明では、引戸は閉じ位置で引戸が開口部の下側部を開閉するようになっており、例えば乳幼児ゲートに適用しても、その作動安定性や信頼性を向上させることができる。
【0024】
第8の発明は、第1〜第7の発明のいずれか1つにおいて、複数のガイドピンは互いに同じものであることを特徴とする。
【0025】
この第8の発明では、1種類のガイドピンを用いれば済み、部品点数が少なくなってコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明のように、本発明によると、下レール部材上を引戸が走行するアウトセット構造のゲート型引戸装置において、引戸の閉じ位置で壁部に重なる引き残し部を設けて、その上部に複数のガイドピンを引戸の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ方向に互いに間隔をあけて突設し、それらガイドピンを上レール部材にスライド可能に係合したことにより、引戸が閉じ位置で開口部の下側部を閉じる構造であっても、上レール部材により開口部本来の利用が妨げられることはない。また、引戸装置の閉じ状態や半閉じ状態で引戸に前後方向の横荷重が加わっても引戸が外れ難くなって、引戸装置の作動安定性や信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0029】
図1及び
図2は本発明の実施形態に係るゲート型引戸装置Aの全体構成を示し、このゲート型引戸装置Aは、建物の壁部Wに形成されている開口部1の下部を開閉するようになっている。この実施形態では、建物は例えば保育施設等の複数の乳幼児が集まるものであり、開口部1は例えば乳幼児の居室と他の空間との間の壁部Wに開口されており、ゲート型引戸装置Aは、乳幼児が居室から他の空間に往来しないようにするためのベビーゲート(乳幼児ゲート)として設置されている。本実施形態において、前側とはゲート型引戸装置Aにおいて居室側を、また後側とは居室と反対側をそれぞれ言い、左右とはゲート型引戸装置Aを前側から見て言うものとする。
【0030】
開口部1の左側には戸先側縦枠2が施工されている。戸先側縦枠2は、前後幅が壁部Wの厚さよりも大きく、その前部に壁部Wよりも前側に突出する戸当たり部2aを有し、その戸当たり部2aの右側面(戸尻側側面)には、戸当たり部2aの厚さが他の部分よりも薄くなるように戸当たり部2aの右側面を段差状に切り欠いた切欠段部3が形成されている。尚、開口部1の右側に戸尻側縦枠を施工してもよい。
【0031】
ゲート型引戸装置Aは、開口部1を有する壁部Wの厚さ方向一側である前側(
図1及び
図2で手前側)に位置する引戸31(扉)を備え、この引戸31が左右方向に移動することで、開口部1の上部が開放されたままで下部のみが開閉されるようになっており、ゲート型引戸装置Aはアウトセット構造とされている。
【0032】
上記開口部1の右側にある壁部Wの前側には所定の高さ位置(引戸31よりも少し高い位置)に左右水平方向に延びる上レール部材8が取付固定されている。この上レール部材8は、引戸31の左右幅よりも少し短い長さを有し、その左端部は開口部1の戸尻側端部近傍に位置している。
【0033】
図3及び
図4に示すように、上レール部材8はレール部材本体9とカバー20とを備えている。レール部材本体9は角筒状のレール構造体10と、その後側に位置する板状の取付部14とを有し、レール構造体10の下壁部には、レール構造体10の長さ方向に延びるスリット状のレール溝11が開口されている。レール構造体10において、レール溝11の前後両端部には下向きに延びる前後の縦壁部10a,10aが形成され、各縦壁部10aの下端部は相対向する縦壁部10aから離れるように折れ曲がっていて、両下端部間の間隔が上側の他の部分よりも若干大きくなっている。また、両縦壁部10a,10aの対向面の上部寄り位置にはそれぞれ横壁部10b,10bが互いに対向するように突設されており、これらの両横壁部10b,10bと各横壁部10b下側の両縦壁部10a,10aとで区画される部分に、後述のガイドピン36,37の回転ローラ40を係合して案内する溝状のレール部12が形成されている。このレール部12は上記縦壁部10aの下端部の折れ曲がりにより下部の幅が上部よりも広い2段の構造となっている。
【0034】
上記取付部14は上下方向の幅を有する細長い板状のもので、その幅方向中間部の上側寄り部分と上記レール構造体10の上側後部の角部とは、該角部から斜め後側に延びる上側接続部15により接続されている。一方、取付部14の幅方向中間部の下側寄り部分とレール構造体10の下側後部の角部とは、該角部から後側に水平に延びる下側接続部16により接続され、これら取付部14、上側及び下側接続部15,16はレール構造体10と一体に形成されている。そして、取付部14を上側接続部15への接続部分の上側取付位置と下側接続部16への接続部分の下側取付位置とで壁部Wにビス止めすることにより、レール部材本体9が壁部Wに固定されている。
【0035】
レール構造体10の上部前寄り部分には上方に延びる前側係合部17が、また上記取付部14の上端部には前側係合部17よりも高い位置に位置する後側係合部18がそれぞれ形成されている。これら係合部17,18は板状部をその幅方向中間部で断面略L字状に屈曲させた爪状のものである。以上のレール構造体10、取付部14、接続部15,16及び係合部17,18を含むレール部材本体9は、例えばアルミニウムの押出し成形材等からなっている。
【0036】
上記カバー20は例えばアルミニウムや硬質樹脂等の押出し成形材からなるもので、上記上レール部材8に上レール部材8を前側及び上側から覆うように一体的に取り付けられている。このカバー20は、レール部材本体9におけるレール構造体10の前側に位置して該レール構造体10を前側から覆う上下方向に延びる前壁部20aと、この前壁部20aの上端に連続し、レール構造体10ないし取付部14の上側に位置してそれらを上側から覆う上壁部20bとを有し、上壁部20bは、前側に向かって下側に向かうように前下がり(後上がり)に傾斜している。上壁部20b下面の前端寄り部分には下側に延びる前側係止部21が、また後端部には同様の後側係止部22がそれぞれ一体に突設され、これら係止部21,22は上記レール部材本体9の係合部17,18と同様に板状部を幅方向中間部で断面略L字状に屈曲させた爪状のものであり、前側係止部21をレール部材本体9の前側係合部17に、また後側係止部22をレール部材本体9の後側係合部18にそれぞれ係合させることで、カバー20がレール部材本体9に取付固定されている。
【0037】
上記カバー20は長さ方向の両端部に開放され、その両開放端は、カバー20の両端部に一体的に固定したエンドキャップ24,24により閉塞されており、各エンドキャップ24は例えばカバー20と同じ樹脂等からなっている。尚、エンドキャップ24はレール部材本体9にもビス止め等で固定されており、
図3中、19はそのレール部材本体9のビス固定部である。
【0038】
上記上レール部材8の色、具体的には例えばその外表面側に露出するカバー20の色は、壁部Wと同一色か同系色とされているのが好ましい。
【0039】
また、
図4にも示すように、上レール部材8の右端部には、その下面から下方に突出するエンドストッパ25がレール部材本体9のレール構造体10に固定されて取り付けられており、このエンドストッパ25に引戸31の戸尻側端部の上端部が当接することで、その引戸31が開き端位置に規制されるようになっている。
【0040】
尚、図示しないが、上レール部材8に、引戸31が前後方向に振れて転倒するのを規制するための振れ止め部材を固定してもよい。例えば、この振れ止め部材は、下側に開放されかつ底壁部に振れ止め部材の長さ方向に延びる長孔が貫通形成された断面コ字状の部材とする。そして、その振れ止め部材を底壁部上面でレール部材本体9下端部に設置して引戸31の上端部に前後から被せるように配置し、その引戸31を振れ止め部材にスライド可能に挿通させればよい。こうすると、引戸31の上端部が前後方向に振れて転倒するのを規制することができて好ましい。
【0041】
一方、
図1及び
図2に示すように、開口部1ないし壁部Wの前側の床部Fには上記上レール部材8と平行に水平左右方向に延びる下レール部材28が、上レール部材8下方の床部F(壁部W前側の床部F)から開口部1前側の床部Fまでの範囲に亘って連続するように敷設されている。この下レール部材28は、例えば床部Fに形成した溝部に埋め込まれてビス止めにより固定される埋め込みタイプ、或いは床部Fにビス等により固定される直付けタイプが用いられ、いずれも床部Fと段差が小さいフラットレールとされ、図示しないが、下レール部材28の上面には上側に開口するレール溝が形成されている。また、下レール部材28の右端部には、その上方に突出するエンドストッパ29が上レール部材8のエンドストッパ25に上下に対応して固定されて取り付けられており、このエンドストッパ29により引戸31の開き端位置を戸尻側端部の下端部で規制するようにしている。
【0042】
上記引戸31はフラッシュ構造の板状体であり、その上端部の高さ位置は開口部1の上端部よりも低くかつ例えば乳幼児の背丈よりも高い700mm以上(乳幼児が容易に乗り越えられない高さ)である。このことで、引戸31は閉じ位置で開口部1の下部を開閉するように構成されている。
【0043】
引戸31の左端部である戸先側端部の下部には戸先側戸車33が、また右端部である戸尻側端部の下部には戸尻側戸車34がそれぞれ引戸31に埋め込まれて取り付けられている。これらの戸車33,34には、引戸31下面から突出するローラ(図示せず)が前後方向の回転軸心を持って回転可能に支持されており、このローラを上記下レール部材28上でその溝部に係合させた状態で転動させることで、引戸31を床部Fに支持した下荷重の状態で左右方向に移動させるようにしている。よって、引戸31は、上レール部材8と下レール部材28との間に支持されて左右方向に移動する。尚、戸車33,34を取り付ける位置は、引戸31の戸先側端部及び戸先側端部に限定しなくてもよく、その数も3つ以上であってもよい。
【0044】
引戸31の左右幅は開口部1の左右幅よりも大きく、引戸31が開口部1を閉じた
図1に示す閉じ位置で、引戸31の戸尻側(右側)に、開口部1右側の壁部Wと重なる引き残し部32が設けられている。この引戸31の引き残し部32のうちの戸尻側部分には、引戸31の戸先側に位置する戸先側ガイドピン36と、戸尻側に位置する戸尻側ガイドピン37との2本が上向きに延びるように引戸31の上面から突出した状態で取り付けられ、2本のガイドピンの間には間隔Dが空けられている。これら2本のガイドピン36,37は互いに同じものであり、
図3に拡大して示すように、円柱状の下側の埋め込み部38と、下半部が埋め込み部38内に同心状に配置され、上半部が埋め込み部38の上端から同心状に上方に延びる回転不能の丸棒状の軸部39と、この軸部39の上部に同心状に回転可能に支持された円板状の回転ローラ40とを有する。回転ローラ40は、上記上レール部材8におけるレール部12の断面構造と対応するように、上部の外径が下部の外径よりも小さい段付きローラからなっている。すなわち、回転ローラ40の上部の外径はレール部12の上部の幅よりも、また下部の外径はレール部12の下部の幅よりもそれぞれ小さく、回転ローラ40がレール部12に嵌合された状態では、回転ローラ40の上部及び下部で共にレール部12との間に前後両側の隙間が生じるようになっている。そして、埋め込み部38を引戸31の上面に形成した有底状の埋め込み穴31aに圧入等により嵌合することにより、各ガイドピン36,37が軸部39及び回転ローラ40を引戸31から突出させて引戸31の上面に固定されている。このように引戸31の引き残し部32に固定された各ガイドピン36,37は、上記上レール部材8におけるレール部12に回転ローラ40の転動により移動可能に係合されている。よって、引戸31は、引き残し部32の上部が2つのガイドピン36,37により上レール部材8に係合された状態で下レール部材28に沿って走行可能とされ、ゲート型引戸装置Aの全開状態では、引戸31が壁部Wの前側に重なった全開位置に位置して開口部1が開放される一方、全閉状態では、引戸31は戸先側端部が戸先側縦枠2における戸当たり部2aの切欠段部3に入り込み、引き残し部32が壁部Wに重なった状態の全閉位置に位置して開口部1の下側部を閉じるようになっている。尚、回転ローラ40の代わりに、レール部12をスライドするスライド部材を設けることもできる。
【0045】
本発明の特徴は、上記のように、引戸31の引き残し部32の上部に、引戸31の戸先側に位置する戸先側ガイドピン36と、戸尻側に位置する戸尻側ガイドピン37との2本が取り付けられ、両ガイドピン36,37が上レール部材8に係合されていること、及び戸先側ガイドピン36と戸尻側ガイドピン37とが引戸31の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ左右方向(引戸31の幅方向)に互いに間隔Dをあけて配置されていることにある。これらのうち、例えば戸尻側ガイドピン37は引戸31の戸尻側端部から一定距離だけ離れた定位置にあり、この戸尻側ガイドピン37から間隔Dをあけた位置に戸先側ガイドピン36が固定されている。そして、両ガイドピン36,37の間隔Dは例えば110mm以下であることが好ましい。
【0046】
すなわち、引戸装置Aの閉じ状態や半閉じ状態で引戸31に前後方向の横荷重が加えられた際、引戸31は、戸尻側ガイドピン37を回動中心として、戸先側ガイドピン36が上レール部材8から外れる方向に回動するのではなく、戸先側ガイドピン36を回動中心として、戸尻側ガイドピン37が上レール部材8から外れる方向に回動する。そのとき、両ガイドピン36,37の間隔Dが110mmを超えると、小さい横荷重であっても、戸尻側ガイドピン37の破損や上レール部材8の曲がり等が生じて引戸31が走行不能になることがあるからである。一方、2本のガイドピン36,37の間隔Dが実質的に1本のガイドピンとして機能する程度まで小さくなると、2本のガイドピン36,37の機能を良好に発揮させることができなくなる。
【0047】
本発明の実施形態では、上記引戸31の引き残し部32に2本のガイドピン36,37を設けることの他に、以下の構造が採用されている。例えば、上レール部材8の内部にはソフトクローズ機構45が設けられている。このソフトクローズ機構45は公知構造のもので、図示しないが引込みバネとダンパとを有しており、引戸31が開き状態又は半開き状態から全閉位置に向かって移動したときに直前の所定位置で上レール部材8に突設したトリガにより引戸31を捕捉して引込みバネにより引き込むとともに、その引込みによる引戸31の移動をダンパにより減衰することで、引戸31をゆっくりと移動させて全閉位置に移動させるようにしている。尚、同様のソフトクローズ機構45を開き方向にも利用し、引戸31が閉じ状態又は半閉じ状態から全開位置に向かって移動したときに、引戸31をゆっくりと移動させて全開位置に移動させるようにすることもできる。
【0048】
また、引戸31の戸先側端部において、上端寄り位置から下端までに亘り、軟質樹脂等からなる細長状のクッション部材46が取付固定されている。
【0049】
さらに、引戸31の戸先側端部には上記クッション部材46の上端よりも高い位置、つまり乳幼児の手が届かない高さ位置に、引戸31を閉じ状態にロックするための鎌錠47が設けられている。この鎌錠47も公知構造のもので、引戸31内に前後方向の回動軸心をもって回動可能に支持されかつ回動により戸先側端面から突出する鎌形のボルト(図示せず)と、そのボルトを回動させるための操作部47aとを有し、操作部47aは例えば引戸31の前後面に露出している。戸先側縦枠2の切欠き段部3には係合穴を有する受座(図示せず)が取り付けられており、引戸31が閉じ位置にあって、その戸先側端部が戸先側縦枠2における切欠段部3に当接しているときに、操作部47aによってボルトを回動させて引戸31の戸先側端面から突出させ、その先端部を受座の係合穴に係合状態で挿入することにより、引戸31を閉じ位置にロックして保持するようになっている。
【0050】
また、引戸31の戸先側端部には、上記クッション部材46の上端部と略同じ高さ位置の前後面にそれぞれ引手49,49(
図1及び
図2では前側の引手49のみを示している)が対応して取り付けられている。この引手49や鎌錠47を引戸31に設ける場合、引戸31の前後面の所定位置に凹部を設けてその凹部に引手49を装着したり、鎌錠47の操作部47aを露出させるための穴部を設けたりすることが一般的であるが、この実施形態では、凹部の代わりに引戸31を前後面に亘り貫通する貫通孔31bが開口されており、その貫通孔31bの引戸31前後面の開口部に引手49,49が装着され、或いは別の貫通孔31bに鎌錠47の操作部47aが引戸31の前後面に露出するように装着されている。こうすれば、鎌錠47や引手49を引戸31の前後両側から操作することができるだけでなく、ゲート型引戸装置Aの施工現場で引手31の前後面を選択して引手49や鎌錠47を取り付けることができる利点が得られる
さらに、戸先側縦枠2の戸当たり部2aの切欠段部3において、上記鎌錠47の受座よりも高い位置には振れ止め部材51が取り付けられている。この振れ止め部材51は、図示しないが戸尻側に突出する例えば縦長の突起部を有し、この突起部は引戸31の戸先側端面に形成した例えば縦長の係合凹部(図示せず)に嵌合可能となっている。そして、ゲート型引戸装置Aの全閉状態で、引戸31の戸先側端面が戸先側縦枠2の切欠段部3に当接したときに、振れ止め部材51の突起部が引戸31の係合凹部に嵌合することで、引戸31の戸先側部が前後にずれてがたつくのを防止するようにしている。
【0051】
また、引戸31の戸先側部分の下部には、透明材を嵌め込んだ例えば円形状の固定窓53が形成され、この固定窓53を通して乳幼児等が引戸31の反対側を見通せるようにしている。こうして引戸31下部の固定窓53により引戸31の反対側が見えることで、背の低い乳幼児等であっても引戸31の向こう側を容易に視認できるようになり、安全性の点で有利となる。しかも、固定窓53は引戸31の戸先側部分に配置されているので、戸尻側部分に配置されている場合に比べ、引戸31の開閉時に固定窓53が壁部Wに重なって隠れる状態の出現頻度や割合が少なくなり、その固定窓53が機能し易くなる。
【0052】
したがって、上記実施形態に係るゲート型引戸装置Aは、引戸31及び上下のレール部材8,28が壁部Wの厚さ方向一側である前側に配置されたアウトセット構造であり、引戸31下端部の戸先側及び戸尻側の戸車33,34が壁部Wの前側ないし開口部1の前側の床部F上の下レール部材28に沿って走行し、引戸31の上端部に突出する2本のガイドピン36,37が壁部W前側の上レール部材8に係合してスライドする。このことで、引戸31はスムーズに左右方向に安定して走行して開口部1を開閉し、その全開位置では、引戸31が壁部Wの前側に重なった状態で開口部1が開放され、全閉位置では、引戸31の戸先側端部が戸先側縦枠2における戸当たり部2aの切欠段部3に入り込み、戸尻側の引き残し部32が壁部Wに重なった状態で開口部1の下側部を閉じる。そして、引戸31が閉じ位置で開口部1の下部を閉じる構造であっても、上レール部材8が開口部1の上下中間部を通る構造は不要となり、開口部1本来の利用が妨げられることはない。
【0053】
また、引戸31の下端部は、引戸31の自重により左右の戸車33,34において下レール部材28に前後方向に移動不能にかつ左右方向に移動可能に支持される。一方、引戸31の上端部については、その戸尻側の引き残し部32の上端部に上記2本のガイドピン36,37が突出し、それらガイドピン36,37により引戸31の上端部が上レール部材8に係合することで、引戸31の上端部が2本のガイドピン36,37により上レール部材8に前後方向に移動不能にかつ左右方向に移動可能に支持される。このようにして引戸31は上下端部で支持されているので、引戸31が閉じ位置や半閉じ位置にあっても引戸31の前後方向の横荷重に対する抵抗が大きくなる。その結果、引戸31に乳幼児のぶつかり等による前後方向の横荷重が加わっても、引戸31が上下レール部材8,28から外れ難くなり、ゲート型引戸装置Aの作動安定性や信頼性を向上させることができる。
【0054】
特に、引戸31の上端部にあっては戸尻側端部においてガイドピン36,37にて上レール部材8に支持されているので、引戸装置Aの閉じ状態や半閉じ状態で引戸31の前後方向の横荷重が加わると、引戸31が戸尻側端部のガイドピン36,37の位置を支点として回動しようとする。しかし、上記ガイドピン36,37は、引戸31の戸先側部及び戸尻側部を結ぶ方向に互いに間隔をあけて配置された2本であるので、これら2本のガイドピン36,37により上記横荷重の作用に伴う回動抵抗が大きくなり、引戸31の戸尻側上端部が回動して戸尻側ガイドピン37が上レール部材8から外れるのを抑制することができる。
【0055】
そのとき、上記のように、引戸装置Aの閉じ状態や半閉じ状態で引戸31の前後方向の横荷重を加えた際、引戸31は戸尻側ガイドピン37を回動中心として、戸先側ガイドピン36が上レール部材8から外れる方向に回動するのではなく、引戸31において横荷重の作用点に近い戸先側ガイドピン36を回動中心として回動して、戸尻側ガイドピン37が上レール部材8から外れようとする。このような動きに対し、2本のガイドピン36,37の間隔が110mm以下であれば、上記回動に伴って戸尻側ガイドピン37が上レール部材8から外れるのを有効に防ぐことができる。
【0056】
これらのことにより、引戸装置Aが引戸31により開口部1の下側部を開閉する乳幼児ゲートであっても、その作動安定性や信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、上記2本のガイドピン36,37は互いに同じものであるので、1種類のガイドピンを用意すればよく、部品点数が少なくなってコストダウンを図ることができる。
【0058】
また、戸先側縦枠2には、引戸31が全閉位置にあるときにその係合凹部に嵌合する突起部を有する振れ止め部材51が取り付けられているので、引戸31の全閉位置での前後方向のがたつきを防止することができる。
【0059】
引戸31の戸先側部分に鎌錠47が取り付けられており、引戸31の閉じ位置で、この鎌錠47の操作部47aの操作によりロックを回動させて戸先側縦枠2における受座の係合穴に係合させることで、その引戸31を閉じ位置に固定することができ、閉じ位置にある引戸31が不用意に開くことはない。この鎌錠47及びその操作部47aは、引戸31において乳幼児の手が届かない高さに配置されているので、乳幼児が容易に鎌錠47をロック解除するのを防ぐこともできる。
【0060】
しかも、上レール部材8にはカバー20が取り付けられ、そのカバー20により引戸31の上端部と上レール部材8との間の隙間が小さくなっているので、その隙間に乳幼児が指等を挟みこむことを防止することができる。
【0061】
また、上記カバー20の上壁部20bは前下がり(後上がり)に傾斜しているので、上壁部20bが仮に水平状態となっている場合のように乳幼児の手の指が掛かり易くなることはなく、そのカバー20に乳幼児が掴まってぶら下がることを避けることができる。
【0062】
しかも、上レール部材8(特に外表面側に露出するカバー20)の色が壁部Wと同一色か同系色であると、上レール部材8が壁部Wから突出していても、その壁部Wと見分けがつき難くなり、乳幼児が上レール部材8に掴まってぶら下がろうとする興味や意識を薄めることができる。
【0063】
さらに、上レール部材8は各筒状のレール構造体10を有し、そのレール構造体10のレール部12に各ガイドピン36,37の回転ローラ40,40が係合されているので、レール構造体10の内部にソフトクローズ機構45を組み込むスペースを確保できる。このソフトクローズ機構45を組み込むことにより、引戸31が勢いよく開閉されても、その動きはソフトクローズ機構45により減衰されて、引戸31はゆっくり閉じ位置、開き位置又はそれらの両方に移動するようになり、それらの位置に引戸31が急激に移動することに伴う問題を回避することができる。
【0064】
加えて、引戸31の戸先側端部にクッション部材46が取り付けられているので、乳幼児が戸先側縦枠2との間に指を挟んでも問題が生じることはない。
【0065】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態は、本発明をベビーゲートに適用したものであるが、本発明は、引戸31上端部の高さ位置が開口部1の上端部よりも低くて、引戸31が閉じ位置で開口部1の下側部を開閉するように構成されているゲート型引戸装置であれば適用することができる。さらには、本発明は、上レール部材8が開口部1と同じ高さ位置にあって、引戸31が開口部1の全体を開閉する(閉じ位置では引戸31が開口部1全体を閉じる)ゲート型引戸装置にも適用が可能であり、開口部1の上側に上レール部材8を取り付けることが困難な場合等に有効である。
【0066】
また、引戸31の引き残し部32に3本以上のガイドピンを設けることもできる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、床部Fに下レール部材28を敷設し、その下レール部材28上で引戸31の戸車33,34を転動させて、引戸31を移動させるようにしている。しかし、引戸31の下部を移動案内するための構造は他のものであってもよい。例えば、引戸31の下部に左右方向のガイド溝を形成し、そのガイド溝に係合する少なくとも1本のガイドピンを、開口部1前側の床部Fの壁部W寄り位置ないしは壁部W前側の床部Fに突設し、引戸31の下部を床部F上のガイドピンにより案内しながら開閉方向にスライド移動させる構造、或いは、引戸31の下部に直線走行用のキャスターを取り付け、そのキャスターを床部F上で転動させて引戸31を開閉移動する構造であってもよい。こうすれば、引戸31が移動する床部Fはフラットになり、安全性等の点で有利となる。