気流を取り入れる導入部を備えた筐体と、気流を加熱して、所定温度を有する加熱気流を生成し、被乾燥品に対して、所定方向として、第1の方向から吹き付ける第1の加熱装置と、第1の加熱装置によって、吹き付けられた加熱気流を、筐体の外部に、所定方向として、第2の方向から放出する加熱気流排出部と、被乾燥品に、赤外線を照射して加熱する第2の加熱装置と、を備えた乾燥装置であって、第1の方向と、第2の方向とが異なり、一定方向に加熱気流が進行して排出される構成である乾燥装置、又はそれを用いた乾燥方法である。
前記第2の加熱装置が、反射装置を備えた赤外線加熱装置であって、当該赤外線加熱装置の放射輝度ピークの波長を2〜5μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
前記筐体の内部に空洞部が設けてあって、当該空洞部に沿って、前記被乾燥品を所定速度で移動させる移送手段が設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乾燥装置。
前記筐体の内部に、少なくとも側方及び天井部の周囲をアルミニウム板で遮蔽されてなる温度調整部材を備えており、当該温度調整部材の天井部に、前記加熱気流を前記第2の方向から放出するための換気口を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
前記温度調整部材の天井部における、前記アルミニウム板が、複数のアルミニウム板である、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板から形成されており、当該第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板の端部が、平面視した場合に、オーバーラップすることを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置。
前記筐体の内部に空洞部が設けてあって、当該空洞部に沿って、移送手段により、前記被乾燥品を所定速度で移動させながら乾燥させることを特徴とする請求項8に記載の乾燥方法。
前記乾燥工程において、前記第1の加熱装置として、50〜100℃未満の加熱気流を生成する電熱ヒーターを用い、かつ、前記第2の加熱装置として、放射輝度ピークの波長が2〜5μmの範囲内の値である赤外線加熱装置を用い、前記被乾燥品を100℃以上の温度に加熱することを特徴とする請求項8又は9に記載の乾燥方法。
前記筐体の内部に、少なくとも側方及び天井部の周囲をアルミニウム板で遮蔽されているとともに、前記天井部に換気口を備えた温度調整部材を備えており、当該換気口を介して、前記加熱気流を前記第2の方向から、前記筐体の外部に排出しながら乾燥させることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された乾燥装置の場合、被乾燥品として、ガラス容器等には適用できても、ダイレクトブローペットボトル(耐熱温度:約60〜80℃)等の比較的耐熱性に乏しい基体を有する被乾燥品に対しては、適用できないという問題が見られた。
すなわち、被乾燥品の各種基体(基材)の種類は、好適な加熱条件の調節範囲が極めて狭いことから、特許文献1に開示された乾燥装置の場合、各種基体に対応して、好適な加熱条件の変更ができないという問題が見られた。
また、高周波誘導加熱装置が必要なため、装置コストが嵩むばかりか、高周波誘導加熱の原理上、被乾燥品は高周波誘導が生じる塗膜に限定されるという問題が見られた。
さらに、被乾燥品の周囲を中心に、熱風を循環させて、加熱温度を均一化させているものの、熱風に含まれる水分や有機溶剤の関係で、加熱用の赤外線を吸収してしまい、塗膜形成の弊害になるという問題が見られた。
【0009】
また、特許文献2に開示された乾燥装置117の場合、ウェブ111の下面から熱風を当てて塗膜を下方から加熱しているため、被乾燥品自体の厚さが厚い場合や、被乾燥品自体の比熱が大きい場合等は、熱風の熱は、塗膜まで伝わりにくいという問題が見られた。そのため、塗膜の乾燥が、均一かつ効率的に行えないという問題が見られた。
また、熱風をウェブの下面から当てるのみであって、赤外線放射面側に照射していないことから、熱風と赤外線との相互効果を積極的に利用できないという問題が見られた。
【0010】
そこで、本発明の発明者は、従来の鋭意努力した結果、所定の第1の加熱装置と、第2の加熱装置と、を備えるとともに、第2の加熱装置による赤外線の吸収を防止するように、乾燥後の気流方向を一定方向に制御することによって、乾燥させてなる水性溶媒や有機溶媒に邪魔されずに、効果的に赤外線を照射できること見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、種々の被乾燥品に対して容易に適用可能であって、かつ、熱風と赤外線との相互効果を積極的に利用して、塗膜を短時間かつ効率的に乾燥形成できる乾燥装置及び、それを用いた乾燥方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、気流を取り入れる導入部を備えた筐体と、気流を加熱して、所定温度を有する加熱気流を生成し、被乾燥品に対して、所定方向として、第1の方向から吹き付ける第1の加熱装置と、第1の加熱装置によって、吹き付けられた加熱気流を、筐体の外部に、所定方向として、第2の方向から放出する加熱気流排出部と、被乾燥品に、赤外線を照射して加熱する第2の加熱装置と、を備えた乾燥装置であって、第1の方向と、第2の方向とが異なり、一定方向に加熱気流が進行して排出される構成であることを特徴とする乾燥装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0012】
すなわち、筐体外部から導入され、加熱されてなる加熱気流が、第1の方向から被乾燥品に当てられるともに、当該加熱気流が、第1の方向と異なる方向の、第2の方向から筐体外部に一定方向の流れとして排出することができる。
従って、被乾燥品に塗られている塗料から蒸発する水分や溶剤は、被乾燥品の周囲に循環することがなく、加熱気流の排出方向に沿って被乾燥品付近から、最短距離で、迅速かつ効果的に排除される。
よって、被乾燥品に対する赤外線照射につき、熱風と赤外線との相互効果を積極的に利用し、従来の循環加熱方式と異なり、当該赤外線(中赤外線)を吸収しやすい水分や溶剤の濃度が、薄い雰囲気中(例えば、約1/2〜1/10)で、行うことができるようになる。
従って、かかる赤外線は、飛散する水分や溶剤に吸収や、遮蔽されることなく、被乾燥品に効果的に届き、被乾燥品上の塗膜における赤外線の吸収効率が極めて高くなる(例えば、約2〜10倍)。
【0013】
また、塗料内部の加熱も促進され、すなわち、加熱気流と赤外線との併用効果が発揮されるので、加熱気流等の加熱条件(温度、風速、照射時間等)を変更するだけで、乾燥条件を幅広く変更することができ、各種被乾燥品の基体(基材)や塗膜の種類に応じて、幅広い温度域で、かつ、短時間かつ効率的に乾燥して、形成することができる。
なお、加熱空気が一定方向に進行するとは、例えば、乾燥装置の流路において、断面積100cm
2、長さ1mの屈曲部や湾曲部を有することもある円筒形流路を想定し(図の記号C参照)、その円筒形流路に沿って、加熱空気が逆流や循環することなく、一定方向に移動して、排気されることを意味する。
【0014】
したがって、例えば、想定される円筒形流路の、同じく想定される流路の途中において複数(例えば、5本)の吹き流しを備え、全ての吹き流しが、同一方向に流されれば、加熱空気が同一方向に進行していると言える。
また、他の目安としては、同様に想定される円筒形流路の始点と、終点付近において、それぞれ風速計や風圧計を用いて、風量や風圧を測定し、例えば、その差異が50%以下であれば加熱空気が同一方向に進行していると言え、より好ましくは、80%以下であれば、加熱空気がさらに適切に同一方向に進行していると言える。
【0015】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、気流を取り入れる導入部が、加熱気流排出部よりも、鉛直方向に沿って、下方に設けてあることが好ましい。
このような位置関係とすることによって、筐体外部から導入され、加熱された加熱気流が、第1の方向から被乾燥品に効果的に当てられるともに、被乾燥品に当てられた加熱気流は、水分や溶剤を含んだ状態で、被乾燥品の周囲に戻ることなく、第1の方向と異なる第2の方向から筐体外部に一定方向の流れとして、最短距離で、効果的に排出される。
【0016】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、第1の加熱装置が、50〜100℃未満の加熱気流を生成する電熱ヒーターであることが好ましい。
このような温度範囲の加熱気流にすることによって、ダイレクトブローペットボトル(耐熱温度:約60〜80℃)や、PP樹脂プレート(耐熱温度:約90℃)、ABS樹脂プレート(耐熱温度:約100℃)、PC樹脂プレート(耐熱温度:約120℃)等の比較的耐熱性に乏しい基体を有する被乾燥品に対しても、加熱気流の加熱条件等を変更するだけで、幅広く適用することができる。
【0017】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、第2の加熱装置が、反射装置を備えた赤外線加熱装置(中赤外線加熱装置と称する場合もある。)であって、当該赤外線加熱装置の放射輝度ピークの波長を2〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このような波長域の赤外線を用いると、水分や溶剤による吸収がさらに少なくなって、種々の塗料の塗膜の短時間乾燥に好ましい。
また、背面側に、反射装置を備えた赤外線加熱装置であることから、効率的に赤外線を利用できるとともに、加熱気流の方向性を制御しやすいという利点も得られる。
【0018】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、筐体の内部に空洞部が設けてあって、当該空洞部に沿って、被乾燥品を所定速度で移動させる移送手段が設けてあることが好ましい。
このような移送手段が設けてあることによって、乾燥装置による単位時間当たりの乾燥数を著しく多くすることができる。
【0019】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、筐体の内部に、少なくとも側方及び天井部の周囲をアルミニウム板で遮蔽されてなる温度調整部材を備えており、当該温度調整部材の天井部に、加熱気流を前記第2の方向から放出するための換気口を備えていることが好ましい。
このような構成とすることにより、所定構造の温度調整部材によって、乾燥装置の内部の気流の流れをさらに所定方向(第1方向〜第2方向)に安定化させるとともに、換気口等によって、乾燥装置の内部過度の温度上昇を防ぐことができる。
また、乾燥装置の内部温度が過度に上昇しないため、耐薬品性(耐水性、耐溶剤性)や機械的特性等が、ステンレス等と比較して、若干劣るアルミニウム板であっても、長期間にわたって、極めて良好な赤外線の反射板、特に、中赤外線の反射板として機能させることができる。
【0020】
また、本発明の乾燥装置を構成するにあたり、温度調整部材の天井部における、アルミニウム板が、複数のアルミニウム板である、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板から形成されており、当該第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板の端部を平面視した場合に、オーバーラップしていることが好ましい。
このような構成とすることにより、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板のオーバーラップ幅を可変とすることができ、換気口の幅を調整して、効率的に内部温度を調整することができる。
また、かかるオーバーラップ幅を可変とすることによって、温度調整部材の所定寸法を短くしたり、逆に、長くしたりすることができる。したがって、本発明の乾燥装置を、被乾燥物の大きさや量等に、容易に対応することができる。
なお、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板のオーバーラップ幅を容易に可変とするために、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板のスライド機構(例えば、ベアリング装着されたリニアスライダ)が、筐体の両端部との間に、それぞれ設けてあることが好ましい。
【0021】
また、本発明の別の態様は、気流を取り入れる導入部を備えた筐体と、気流を加熱して、所定温度を有する加熱気流を生成し、被乾燥品に対して、所定方向として、第1の方向から吹き付ける第1の加熱装置と、第1の加熱装置によって、吹き付けられた加熱気流を、筐体の外部に、所定方向として、第2の方向から放出する加熱気流排出部と、被乾燥品に、赤外線を照射して加熱する第2の加熱装置と、を備えた乾燥装置を用いてなる乾燥方法である。
そして、第1の方向と、第2の方向とが異なり、事実上、加熱気流が循環せず、一定方向に加熱気流が進行して排出される構成である乾燥装置を用いてなる乾燥方法であって、被乾燥品として、基体上に、塗膜を有する被乾燥品を準備する工程と、第1の加熱装置によって、第1の方向から、所定温度を有する加熱気流を被乾燥品に対して吹付けながら、第2の加熱装置によって、赤外線を照射して加熱する乾燥工程と、被乾燥品を乾燥した後の気流を、第2の方向から筐体の外部に排出する排出工程と、を備えることを特徴とする乾燥方法である。
【0022】
すなわち、本発明の乾燥方法によれば、筐体外部から導入され、加熱された加熱気流が、被乾燥品の周囲に循環することがなく、第1の方向から被乾燥品に当てられるともに、当該加熱気流が、第1の方向と異なる方向の、第2の方向から筐体外部に一定方向の流れとして、最短距離で、迅速かつ効果的に排出することができる。
よって、被乾燥品に対する赤外線照射につき、従来の循環加熱方式と異なり、当該赤外線、特に、所定波長の中赤外線を吸収しやすい水分や溶剤の濃度が薄い雰囲気中(例えば、約1/2〜1/10)で行うことができる。その結果、被乾燥品の塗膜等に到達し、吸収される赤外線量が対応して高くなる(例えば、約2〜10倍)。
そのため、塗料内部の加熱も促進され、すなわち、加熱気流と赤外線との併用効果が発揮されるので、乾燥条件を幅広く変更することができ、各種被乾燥品の基体や塗膜の種類に応じて、幅広い温度域で、かつ、短時間かつ効率的に乾燥(形成)することができる。
【0023】
また、本発明の乾燥方法を実施するにあたり、筐体の内部に空洞部が設けてあって、当該空洞部に沿って、移送手段により、被乾燥品を所定速度で移動させながら乾燥させることが好ましい。
このような移送手段によって、乾燥方法の実施による単位時間当たりの乾燥数を著しく多くすることができる。
【0024】
また、本発明の乾燥方法を実施するにあたり、乾燥工程において、第1の加熱装置として、50〜100℃未満の加熱気流を生成する電熱ヒーターを用い、かつ、第2の加熱装置として、反射装置を備えた放射輝度ピークの波長が2〜5μmの範囲内の値である赤外線加熱装置を用い、被乾燥品を100℃以上の温度に加熱することが好ましい。
まず、所定温度に加熱する第1の加熱装置を用いることによって、ダイレクトブローペットボトル(耐熱温度:約60〜80℃)等の比較的耐熱性に乏しい基体を有する被乾燥品に対しても、幅広く適用することができる。
また、このような波長域の赤外線、特に、それに含まれる中赤外線を主に用いると、水分や溶剤による吸収がさらに少なくなって、種々の塗料の塗膜の短時間乾燥に好ましい。
しかも、反射装置を背面側に備えた赤外線加熱装置を用いることから、効率的に赤外線を利用できるとともに、加熱気流の方向性を制御しやすいという利点も得られる。
【0025】
また、本発明の乾燥方法を実施するにあたり、筐体の内部に、少なくとも側方及び天井部の周囲をアルミニウム板で遮蔽されているとともに、天井部に換気口を備えた温度調整部材を備えており、当該換気口を介して、加熱気流を第2の方向から、筐体の外部に排出しながら乾燥させることが好ましい。
このように実施することにより、所定構造の温度調整部材によって、乾燥装置の内部の気流の流れをさらに所定方向(第1方向〜第2方向)に安定化させるとともに、換気口等によって、乾燥装置の内部過度の温度上昇を防ぐことができる。
また、乾燥装置の内部温度が過度に上昇しないため、耐薬品性(耐水性、耐溶剤性)や機械的特性等が、ステンレス等と比較して、若干劣るアルミニウム板であっても、長期間にわたって、極めて良好な赤外線、特に中赤外線の反射板として機能させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
また、以下の説明中で述べる、形状、材質、数値範囲等は、この発明の範囲内の好適例にすぎず、従って、本発明は、以下の実施形態のみに、特に理由なく限定されるものではない。
【0028】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の乾燥装置10は、
図1に示したように、気流を取り入れる導入部21を備えた筐体11と、気流を加熱して、所定温度を有する加熱気流を生成し、被乾燥品Wに対して、所定方向として、第1の方向(例えば、
図1の矢印Aを参照。)から吹き付ける第1の加熱装置23と、第1の加熱装置23によって、吹き付けられた加熱気流を、筐体11の外部に、所定方向として、第2の方向(例えば、
図1の矢印Bを参照。)から放出する加熱気流排出部19yと、被乾燥品Wに、赤外線を照射して加熱する第2の加熱装置15と、を備えた乾燥装置10であって、第1の方向と、第2の方向とが異なり、一定方向に加熱気流が進行して排出される構成であることを特徴とする乾燥装置10である。
また、塗料が塗られた被乾燥品Wを所定速度で、所定方向(例えば、
図1の符号Dを参照。)に、筐体11の内部を移送する移送手段13と、乾燥装置10の全体の動作を統括する制御装置(特に、図示せず。)と、をさらに備えている。
そして、第1の加熱装置23は、加熱気流を生成する熱風生成装置17と、生成された加熱気流を、所定方向から赤外線照射時に被乾燥品に吹き付ける加熱気流供給部19xとを含んでいる。
さらに、加熱気流を、好適には、移送手段13の下方から被乾燥品に供給し、移送手段13の上方に排出する形態の乾燥装置10である。
以下、第1の実施形態における乾燥装置10の各構成等について具体的に説明する。
【0029】
1.筐体
筐体11の外部から気流(空気)を取り入れる導入部21を備えた筐体11は、移送手段13と、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置と、第1の加熱装置23と、被乾燥品Wを乾燥した後に、周囲で循環させることなく、所定方向から、筐体11の外部に効率的に排出する構成と、を内包しているものである。
この筐体11は、例えば、金属フレーム、金属板、耐熱樹脂板等を用いて、上記移送手段13等を内包するに好適な形状の構造体で構成する。
また、
図1に例示した筐体11の場合は、10m以上の概ね長方形の外径を有したものであって、移送手段13を内包し、長方形の一端が、被乾燥品Wの入り口10aとされ、もう一方の他端が出口10bとなった筐体11である。
【0030】
また、金属フレームや金属板の材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、タングステン、又は、それらの組み合わせを使用することができるが、特に、アルミニウムを用いることが好ましい。
この理由は、アルミニウムであれば、鏡面研磨が比較的容易であって、例えば、表面粗さRaを0.1μm以下、より好ましくは、表面粗さRaを0.005〜0.1μmの範囲内の値に調整しやすいためである。
したがって、鏡面研磨されたアルミニウム板であれば、赤外線に含まれる、特定波長である2〜5μmの中赤外線を、より効率的に全反射することができる。
【0031】
ここで、導入部21から取り入れた気流を加熱して、第1の方向から加熱気流を被乾燥品Wに対して吹き付ける必要があるが、そのため、加熱気流供給部19xは、例えば、熱風生成装置17で生成された加熱気流をベルトコンベア13a方向に送るファン19a(この例では熱風生成装置17のファン17bと兼用)と、当該ファン19aによって送られる加熱気流をベルトコンベア13aに導くダクト19bと、で構成してある。
【0032】
また、ダクト19bは、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置の長さ及び幅とほぼ同様な長さ及び幅を持った加熱気流の吹き出し面を、ベルトコンベア13aの下面と対向させて設けた構造とするのが好ましい。
そして、この吹き出し面には、加熱気流を吹き出す開口穴又は開口スリットが適材適所に多数設けてあることが好ましい。
【0033】
2.移送手段
移送手段13は、筐体11の内部に内包されており、概ね水平方向に移動して、被乾燥品Wを、乾燥装置10の入り口10aから出口10bに向かって、かつ、第1の加熱装置23による加熱気流領域と、第2の加熱装置15による赤外線照射領域を経由させて、移送するものである。
この移送手段13は、筐体11の長手方向に沿って周回するベルトコンベア13aと、ベルトコンベア13aを駆動するモーター13bと、ベルトコンベア13aの移動を円滑にする回転ローラー13cと、図示を省略しているが複数個の中間ローラーと、を含む構成とするのが好ましい。
【0034】
また、この実施形態の乾燥装置10の場合、移送手段13として、加熱気流を、ベルトコンベア13aの下方から上方に通過できる開口13dを有したベルトコンベア13aとしてある。
従って、開口13dを有したベルトコンベア13aは、任意好適なもので良く、例えば、
図1(d)に示したような網状の移送手段13であって、網の目を開口13dとして利用したベルトコンベア13aが用いられることが好ましい。
【0035】
又は、
図1(e)に示したような格子状であって、格子間の隙間を開口13dとして利用したベルトコンベア13aを用いることもできる。
よって、ベルトコンベア13aの構成材料は、耐熱性、耐赤外線性を考慮し、例えばステンレスやカーボン繊維が好適である。
【0036】
その他、ベルトコンベア13aの移動速度は、使用する塗料の種類や、溶媒種、さらには、それの乾燥性等を判断して決められるが、通常、0.1〜20m/分の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜10m/分の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜8m/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
3.第1の加熱装置
第1の加熱装置23は、被乾燥品Wの基体(
図7の符号W2参照。)に塗られた塗膜(
図7の符号W1参照。)を乾燥するために、所定温度(例えば、50〜100℃未満)の加熱気流を、外部から取り入れた気流(空気)を元に、生成する部位である。
そして、第1の加熱装置23は、所定方向として、第1の方向(
図1の矢印A参照。)から、第1の気流として、加熱気流を被乾燥品Wに吹き付けて、さらには吹き付けられた後の加熱気流を、第2の気流として、速やかに、他の構成部位と協働して、所定方向に移動させるための部位である。
ここで、第1の加熱装置23で吹き付ける加熱気流の温度を50〜100℃未満の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる温度範囲とすることで、例えば、耐熱温度の比較的低いダイレクトブローペットボトル(耐熱温度:約60〜80℃)等に対しても、変形などの問題を起こすことなく、効果的に適用することができるためである。
【0038】
また、第1の加熱装置23は、導入部21から外気を取り込むとともに、熱風を送る熱風生成装置17と、熱風生成装置17によって送られた熱風を、第1の気流として、所定方向である第1の方向から、加熱気流を被乾燥品Wに吹き付ける加熱気流供給部19xと、を備えていることが好ましい。
そして、熱風生成装置17は、導入部21から取り入れた外気(空気)を加熱するための熱源としてのヒーター17aと、かかる外気を熱源に導いて、加熱気流として送るためのファン17bと、を含んでいることが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、効率的に所定温度の熱風を生成することができるとともに、安定した所定方向の加熱気流を被乾燥品Wに吹き付けることができるためである。
なお、必要に応じ、第1の加熱装置23は、塗膜形成に際して、引火性の高い有機塗料等を用いる場合があることを想定して、防爆仕様とするのが好ましい。
【0039】
4.第2の加熱装置
第2の加熱装置15は、
図1に示すように、反射装置を備えた赤外線加熱装置(中赤外線加熱装置と称する場合もある。)であって、当該赤外線加熱装置の、主として中赤外線における放射輝度ピークの波長を2〜5μmの範囲内の値とし、被乾燥品Wを100℃以上の温度に加熱することが好ましい。
また、第2の加熱装置15の一例である赤外線照射装置は、移送手段13の移送経路中に、移送方向に沿って設けた所定の長さの赤外線ランプ15a(中赤外線ランプと称する場合もある。)15aと、当該赤外線ランプ15aの背面(上方)に設けた反射板15bと、を含む構成とするのが好ましい。
このとき、耐熱温度の低い被乾燥品Wに適用した場合に、被乾燥品Wの変形等を防ぐために、移送手段13の移送速度、赤外線ランプ15aの照射時間や照射強度等を適宜調整する。
【0040】
また、かかる赤外線ランプ15aは、移送手段13の幅方向に沿って複数本、例えば、2〜10本/mの割合で設けるのが好ましい(
図1(c)参照)。
そして、複数本の赤外線ランプ15aを移送手段13の幅方向に設ける場合は、移送手段13の真上に限らず、斜め上方にも設けても良い(
図1(c)参照)。
また、赤外線ランプ15aと、移送手段13のベルトコンベア13aとの距離(直線距離)は、赤外線ランプ15aが被乾燥品Wには接触することなく、かつ、被乾燥品Wへの赤外線の到達効率に有利なように決定することが好ましい。
ここで、このような直線距離としては、例えば、10〜50cm程度の比較的短い距離とする。
かかる構成とすることで、より短時間かつ効率的に、被乾燥品Wを乾燥させることができるためである。
【0041】
ここで、赤外線ランプ15aとして、任意好適なものを用いることができるが、一例として、市販の中赤外線ランプ((有)ユーテン社製の型番S−08R)を用いることが好ましい。
図2は、横軸に波長をとり、縦軸に放射輝度をとって、この市販の中赤外線ランプの放射輝度特性を示したものである。
この中赤外線ランプは、放射輝度のピーク波長が3μm付近のもので、かつ、波長帯域が2〜5μmにおいても、ピーク波長の放射輝度に対し2分の1〜√2分の1程度までしか減衰しないものである。
この中赤外線ランプは、発明者の別の実験によれば、本発明を適用して所望の乾燥特性を得易いことが別途判明している。
【0042】
5.加熱気流供給部
加熱気流供給部19xは、熱風生成装置17が作り出した熱風を、移送手段13としてのベルトコンベア13aの下方から、吹き付ける部位である。
より具体的には、熱風生成装置17によって送られた方向が整っていない熱風を、かかる加熱気流供給部19xを介することで、所定方向として、第1の方向となるように整流し、加熱気流を被乾燥品Wに吹き付ける部位である。
従って、加熱気流供給部19xは、熱風を加熱気流として安定的に供給するためのファン19aと、所定方向に整流するためのダクト19bを含むことが好ましい。
すなわち、かかる構成とすることで、ベルトコンベア13aの上に種々の形状の被乾燥品Wを置いても、加熱気流を被乾燥品Wに効率良く供給できるためである。
【0043】
6.加熱気流排出部
加熱気流排出部19yは、加熱気流供給部19xによって吹き付けられ、ベルトコンベア13aの開口13dを通過してきた加熱気流を、ベルトコンベア13aの上方から、第1の方向とは異なる第2の方向に、一定方向の流れとして、移送する部位である。また、移送されてきた加熱気流を筐体11の外部に排出する部位である。
従って、加熱気流排出部19yは、例えば、加熱気流を受けて、所定方向である第2の方向に整流するダクト19cと、このダクト19cに接続されていてダクト19cに送られた加熱気流を吸引するファン19dと、で構成してあることが好ましい。
すなわち、かかる構成とすることで、吹き付けられた加熱気流を、事実上、循環させずに、一定方向の流れとして、最短距離で外部に排出することができ、効率的に、筐体11の中に滞留する空気を換気することができるためである。
【0044】
ここで、通常、ダクト19cは、第2の加熱装置15の一例としての赤外線照射装置の長さ及び幅とほぼ同様な長さ及び幅を持った形状とするのが好ましい。
また、ファン19dは、例えば筐体11の天面上に設けてあり、加熱気流を筐体11の外部に排出する構成とすることが好ましい。
なお、加熱気流排出部19yは、水性成分や溶剤成分を捕獲するためのスクラバーを設けることも好ましい。
この理由は、かかる構成とすることで、より効率的に、筐体11の中に滞留する空気を換気することができるためである。
【0045】
7.制御装置
制御装置(以下、特に図示せず。)は、移送手段13と、第2の加熱装置15の一例としての赤外線照射装置と、熱風生成装置17と、加熱気流供給部19xと、加熱気流排出部19yとの関係を考慮しつつ、それぞれ所定条件に制御する部位である。
具体的には、制御装置は、ベルトコンベア13aの速度、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置が照射する赤外線の出力(表面温度でも良い)、熱風生成装置17で生成する加熱気流の温度、流速、加熱気流供給部19xが供給する加熱気流の量、流速、そして、加熱気流排出部19yの排出速度などをそれぞれ制御するものである。
なお、この制御装置は、従来公知の制御回路、例えば、プログラミングされたマイコン等によって構成できる。
【0046】
8.付属部品
なお、
図8や
図9を参照して説明するように、付属部品として、筐体(特に、図示せず。)の内部に、少なくとも側方及び天井部を含む周囲を、アルミニウム板(41a、41b、41c、41d、43)で被覆されてなる温度調整部材40を備えていることが好ましい。
そして、温度調整部材40の側方両側に、少なくとも一組の赤外線ランプ45を設け、かつ、温度調整部材40の天井部に、加熱気流を排出するための換気口42を備えた構成とすることも好ましい。
このような温度調整部材40であれば、
図10に示すような温度プロフィールでもって、温度調整が容易になるとともに、所定の温度調整部材の筐体内部への後からの取り付けであっても、極めて経済的に行うことができるためである。
【0047】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、
図3(a)〜(c)に示したように、加熱気流を、ベルトコンベア13aの横方向両端の第1端13eから、第2端13fに向かって、かつ、ベルトコンベア13aの移送面に平行に供給する加熱気流供給部31xと、供給された加熱気流を第2端13fの側で受けて排出する加熱気流排出部31yと、を備えていることを特徴とする乾燥装置30である。
この実施形態の場合、第1の方向は、加熱気流供給部31xが供給する方向(
図3の矢印A参照。)であり、第2の方向は、加熱気流排出部19yが排出する方向(
図3の矢印B参照。)である。
なお、このとき、第1の方向(矢印A)と第2の方向(矢印B)を異なる角度とするため、矢印Aと矢印Bのいずれか一方を、ベルトコンベア13aの移送面に対して傾ければ良い。また、矢印Aと矢印Bの両方が、ベルトコンベア13aの移送面に対して平行である場合には、いずれか一方を、被乾燥品Wの進行方向に対して上流又は下流に傾ければ良い。
【0048】
この実施形態における加熱気流供給部31xは、ベルトコンベア13aの第1端13eに沿って赤外線照射装置と同じ長さを有したダクト31aで構成するのが好ましい。
また、ダクト31aは、加熱気流吹き出し用に、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置の長さ方向に沿って、複数個の開口穴又は赤外線照射装置の長さと同じ程度の長さの長尺な開口を備えた構成とするのが好ましい。そして、このダクト31aは、第1の加熱装置25の熱風生成装置17と接続してある。
【0049】
一方、加熱気流排出部31yは、ベルトコンベア13aの第2端13fに沿って赤外線照射装置と同じ長さを有したダクト31bで構成できる。
また、ダクト31bは、加熱気流吸い込み用に、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置の長さ方向に沿って複数個の開口穴又は赤外線照射装置の長さと同じ程度の長さの長尺な開口を備えた構成とするのが好ましい。このダクト31bは、ファン19dに接続してある。
このような構成であると、ベルトの上に平板状の被乾燥品を置いても、所望の通りに、加熱気流の供給と排出とを行うことができる。
【0050】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、
図4(a)〜(c)に示したように、加熱気流を、ベルトコンベア13aの横方向の両端である第1端13e及び第2端13fそれぞれから、ベルトコンベア13aの中心に向かって、かつ、ベルトコンベア13aの移送面に平行に供給する加熱気流供給部51xと、供給された加熱気流をベルトコンベア13aの上方に排出する加熱気流排出部19yと、を備えていることを特徴とする乾燥装置50である。
この実施形態の場合、第1の方向は、加熱気流供給部51xが供給する方向(
図4の矢印A参照。)であり、第2の方向は、加熱気流排出部19yが排出する方向(
図4の矢印B参照。)である。
なお、上述した第2の実施形態の乾燥装置30では、熱風生成装置17が生成した加熱気流は、ベルトコンベア13aの横方向の第1端13eから第2端13fに向けて供給し、第2端側で受けて排出する構成である点で、第3の実施形態と異なっている。
【0051】
また、第3の実施形態の乾燥装置50において、加熱気流供給部51xは、ベルトコンベア13aの第1端13e及び第2端13fに沿って、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置と同じ長さを有したダクト51aで構成することが好ましい。
そして、このダクト51aは、加熱気流吹き出し用に、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置の長さ方向に沿って複数個の開口穴又は赤外線照射装置の長さと同じ程度の長さの長尺な開口を備えた構成とするのが好ましい。
【0052】
ここで、このダクト51aは、第1の加熱装置27の熱風生成装置17と接続してある一方、加熱気流排出部19yは、第1の実施形態の乾燥装置10で用いたものと同様で良い。
このような構成であると、ベルトコンベア13a上に平板状の被乾燥品を置いても、所望の通りに加熱気流供給と排出を行うことができる。
しかも、加熱気流はベルトコンベア13aの上方に排出するので、3次元形状の被乾燥品Wに対しても加熱気流を溶媒濃度の薄い雰囲気で当てながら、第2の加熱装置15を用いて赤外線照射を行うことができる。
【0053】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、
図5(a)〜(b)に示すように、第1の実施形態の乾燥装置10での加熱気流の供給機構と、第2の実施形態の乾燥装置30、第3の実施形態の乾燥装置50での加熱気流供給機構とを組み合わせた構成とした乾燥装置60、60´である。
すなわち、上記の第2の実施形態の乾燥装置30及び第3の実施形態の乾燥装置50では、ベルトコンベア13aの横方向の一端から又は両端から加熱気流をベルトコンベア13aの移送面に平行に供給している点で、第4の実施形態とは異なっている。
この点、第4の実施形態では、これら横方向からの加熱気流の供給に加えて、ベルトコンベア13aの下方から加熱気流を供給する構成としても良い。
【0054】
具体的には、
図5(a)に示したように、加熱気流供給部32xの加熱気流用のダクトの、ベルトコンベア13aの下面と対向する領域に、加熱気流の吹き出し口71を設けて、加熱気流をベルトコンベア13aの下面に供給する構造の乾燥装置60とすることが好ましい。
この実施形態の場合、第1の方向は、加熱気流供給部32xが供給する方向(
図5(a)の矢印A1及び矢印A2参照。)であり、第2の方向は、加熱気流排出部31yが排出する方向(
図5(a)の矢印B参照。)である。このとき、第1の方向が2つとなるが、矢印A1及び矢印A2のそれぞれについて、矢印Bとの所定関係を満たせば良い。
このように構成すると、被乾燥品Wに、横方向及び下方から、加熱気流を十分に当てることができる。
【0055】
また、
図5(b)に示したように、加熱気流供給部52xの加熱気流用のダクトの、ベルトコンベア13aの下面と対向する領域に、加熱気流の吹き出し口71を設けて、加熱気流をベルトコンベア13aの下面に供給する構造の乾燥装置60´とすることも好ましい。
この実施形態の場合、第1の方向は、加熱気流供給部51xが供給する方向(
図5(b)の矢印A1及び矢印A2参照。)であり、第2の方向は、加熱気流排出部19yが排出する方向(
図5(b)の矢印B参照。)である。このときも、上記同様、矢印A1及び矢印A2のそれぞれについて、矢印Bとの所定関係を満たせば良い。
このように構成すると、加熱気流は、被乾燥品Wに対し、横方向両側からと下方から当たり、その後、上方に排出されるので、より多方面から加熱気流を当てることができる。
【0056】
[第5の実施形態]
第5の実施形態は、
図6(a)〜(b)に示したように、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置の前段に、被乾燥品Wに加熱気流を当てて、被乾燥品Wの塗膜を仮乾燥する第2の加熱気流供給装置91を設けた乾燥装置90である。
この乾燥装置90の場合、筐体11の全長を第1の実施形態のものより少し長くし、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置を筐体11の中央側に寄せて設け、入り口10aと、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置との間に、第2の加熱気流供給装置91を設けてある。
そして、この第2の加熱気流供給装置91は、第1の加熱装置29のダクト93aとして、第2の加熱装置15としての赤外線照射装置と、当該第2の加熱気流供給装置91との間に跨るように、長さを延長したダクト93aを用いて、加熱気流を移送手段13に供給する構成としてある。
従って、かかる第5の実施形態の乾燥装置90によれば、被乾燥品の仮乾燥を行える分、被乾燥品の乾燥時間の短縮をさらに図ることができる。
なお、この仮乾燥に用いる加熱気流の温度は、例えば、50〜100℃未満の範囲の温度とするのが好ましい。この理由は、第1の実施形態と同様に、かかる温度範囲とすることで、例えば、耐熱温度の比較的低い被乾燥品Wに対しても、効果的に適用することができるためである。
【0057】
[第6の実施形態]
第6の実施形態は、一部上述したものの、
図8に示したように、長方形状の筐体(特に図示せず。)の内部に、少なくとも側方及び天井部を含む周囲を、アルミニウム板(41a、41b、41c、41d、43)で被覆されてなる温度調整部材40を備えているとともに、温度調整部材40の天井部に、加熱気流を排出するための換気口42(42a、42b)を備えている乾燥装置である。
また、かかる好適態様として、温度調整部材40の天井部が、複数のアルミニウム板としての第1のアルミニウム板43aと第2のアルミニウム板43bで形成されており、各アルミニウム板の端部の縁に沿って、オーバーラップ幅を可変とするためのスライド機構が設けてある。
なお、第6の実施形態において、第1の実施形態で記載したその他の構成である、第1の加熱装置、第2の加熱装置、加熱気流排出部、移送手段等については、第1の実施形態と同一又は類似構成とすることができる。
【0058】
(1)温度調整部材
温度調整部材は、アルミニウム板等から構成されてなる乾燥装置の筐体の一部として認識されるべきフレーム部材であり、筐体の内部に位置し、第1の加熱装置の熱風を被乾燥品に対して効率的に導いたり、第2の加熱装置の赤外線を反射させて、外部へのエネルギーの流出を抑えたりするための機能部材である。
すなわち、被乾燥品を移送する移送手段としてのベルトコンベアを覆うように、直方体状のトンネル形状をしており、周囲を、アルミニウム板で覆う構成であることが好ましい。
この理由は、温度調整部材の内部において、ベルトコンベアに沿って、第1の加熱装置を向かい合わせに設置することで、アルミニウム板の反射も適宜利用して、被乾燥品に対して、極めて効率的に赤外線を当てることができるためである。
【0059】
また、周囲を被覆するアルミニウム板が、赤外線、特に、所定波長の中赤外線を効果的に全反射することにより、乾燥効率を高め、乾燥時間を著しく短縮することができるためである。
具体的には、筐体の内部に、所定の温度調整部材を全く設けなかった場合と比較して、例えば、所望温度範囲を180〜300℃未満として、乾燥時間を20〜90%短縮することができ、より良好には、所望温度範囲を40〜180℃未満としても、乾燥時間を50〜90%短縮することもできる。
一方、筐体の内部に、周囲を、ステンレス板で被覆したときに比べて、乾燥時間を20〜70%短縮することができ、アルミニウム板、特に、表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面アルミニウム板で覆うことが好適である。
【0060】
よって、温度調整部材のベルトコンベアの流れ方向に沿った方向の長さは、被乾燥品の種類やベルトコンベアの速さなどによって決まるが、30〜400cmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる長さであれば、ベルトコンベアを常時動かした状態でも、乾燥するだけの十分な時間を確保することができ、一方で、過度に乾燥して、被乾燥品の乾燥不良が発生するのを防ぐことができるためである。
したがって、温度調整部材の長さは、80〜300cmの範囲内の値であることがより好ましく、100〜200cmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0061】
また、温度調整部材の幅は、天井部のアルミニウム板のオーバーラップ幅で調整可能だが、20〜300cmの範囲内の値であることが好ましい。また、温度調整部材の高さは、50〜250cmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、被乾燥品を干渉させることなく内部を通過させることができ、過度に大きすぎて、内部の温度分布がバラつくことを防ぐことができるためである。
したがって、温度調整部材の幅は、40〜250cmの範囲内の値であることがより好ましく、50〜200cmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
そして、温度調整部材の高さは、80〜200cmの範囲内の値であることがより好ましく、100〜180cmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0062】
(2)アルミニウム板
また、アルミニウム板は、表面に、酸化処理(アルマイト処理)や非酸化処理を施すことが多いが、いずれであっても良い。
また、温度調整部材のアルミニウム板は、アルミニウム板の表面を研磨し、所定の表面粗さを有する、反射率が著しいアルミニウム板であることが好ましく、その平均表面粗さ(Ra)を0.005〜0.1μmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる範囲内の表面粗さであれば、第2の加熱装置から照射される赤外線が、乱反射することを防ぎ、全反射を利用して、乾燥時間をさらに短縮することができるためである。
したがって、アルミニウム板の平均表面粗さ(Ra)を0.01〜0.05μm、の範囲内の値とすることがより好ましく、0.015〜0.025μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
また、表面光沢度としての正反射率を80〜99.9%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反射率であれば、第2の加熱装置から照射される赤外線が、効率的に反射され、乾燥時間を著しく短縮することができるためである。
したがって、アルミニウム板の正反射率を85〜99.5%の範囲内の値とすることが好ましく、90〜99%の範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0064】
さらに、アルミニウム板(鏡面アルミニウム板を含む。)の厚さについては、乾燥装置の温度特性、耐腐食性、耐変色性、及び加工性等を考慮して定めることが好ましいが、通常、0.01〜5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、アルミニウム板の厚さが0.01mm未満の値になると、所望の表面粗さに調整したり、基材等に積層処理することが困難となる場合があるためである。
一方、係る厚さが5mmを超えると、温度調整部材を含む乾燥装置の重量が過度に増加したり、加工性が著しく低下したりする場合があるためである。
そして、乾燥装置の温度特性、耐腐食性、耐変色性が比較的良好で、かつ加工性が良好なことから、アルミニウム板の厚さを0.1〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜2mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
(3)換気口
換気口は、温度調整部材内部にたまった高温の空気を、温度調整部材の外部に出すための構成部位である。
すなわち、温度調整部材の天井部において、第1の加熱装置から吹き付けられた加熱気流を、第2の方向から放出し、加熱気流排出部に導くための換気口を備えることが好ましい。
この理由は、換気口を備えることで、温度調整部材内部の温度が過度に高くならず、被乾燥品が熱に弱いものであっても、外側の塗料部分だけを乾燥して、変形を起こすことなく、乾燥することができるためである。
そして、例えば溶剤系の塗料等が塗装された被乾燥品を乾燥する際に発生する、酸性やアルカリ性雰囲気を、すぐさま外部に放出することで、比較的耐薬品性が低いアルミニウム板であっても、腐食や変色を抑制しながら乾燥できるためである。
【0066】
また、換気口の形状としては、温度調整部材内部にたまった高温の空気を、効率的に排出できる形状であればよく、温度調整部材の長さ方向に空いた長方形や円形の長穴や小径の穴が複数空いたメッシュ状等が好ましい。
この理由は、被乾燥品が移送中のどの位置であっても、バラつきなく内部の空気を放出できるためである。
したがって、特に、製造の容易さの観点から、温度調整部材の天井部のアルミニウム板を幅方向の中央に寄せて配置して、側面側にできた隙間を換気口とすることが好ましい。
そして、温度調整部材の天井部を複数のアルミニウム板で構成して、後述するオーバーラップ機構を持たせた場合には、アルミニウム板が重なって浮いた中央の隙間を、換気口として利用することも好ましい(
図9(a)の符号42c参照)。
【0067】
また、換気口67は、
図9(a)〜(b)に示すように、温度調整部材40の側方のフレーム49と、天井部のアルミニウム板43との幅(L1、L2)として、後述のスライド機構44によって、調整可能であることが好ましい。
この理由は、被乾燥品にあわせて、設定温度を容易に調整でき、比較的低い温度で変形してしまうものであっても、効果的に乾燥させることができるためである。
ここで、
図9(a)〜(b)に示すように、側方のフレーム49aと、天井部の第1のアルミニウム板43aとの幅をL1とし、側方のフレーム49bと、天井部の第2のアルミニウム板43bとの幅をL2としている。
したがって、換気口の幅(L1、L2)は、1〜200mmの範囲内の値であることが好ましく、5〜150mmの範囲内の値であることがより好ましく、10〜100mmの範囲内の値であることが好ましい。
【0068】
また、換気口の開口面積としては、天井部及び換気口の全体の面積に対して、1〜50%の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる開口面積とすることにより、熱を過度に放出することなく、被乾燥品を乾燥した際に発生した酸性やアルカリ性の雰囲気を温度調整部材の外側に、効率的に排出できるためである。
したがって、換気口の開口面積としては5〜40%の範囲内の値であることがより好ましく、10〜30%の範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0069】
(4)オーバーラップ機構
また、オーバーラップ機構は、
図8に示すように、温度調整部材40の天井部において、幅方向の端部を見た場合に、第1のアルミニウム板43aと、第2のアルミニウム板43bが、鉛直方向の上下に重なっている機構である。
すなわち、
図9(a)〜(b)に示すように、後述のスライド機構44によって、第1のアルミニウム板43aと、第2のアルミニウム板43bを、幅方向にスライドさせて、中央寄りに配置し、オーバーラップ幅(L3)で重ねた構成とすることが好ましい。
この理由は、第1のアルミニウム板及び第2のアルミニウム板のオーバーラップ幅を可変とすることができ、換気口の幅を調整して、効率的に内部温度を調整することができるためである。
そして、オーバーラップ幅を可変とすることによって、温度調整部材40の側方のフレーム49を、より中央寄りに配置することができるようになり、温度調整部材の幅方向の寸法(L4)を大きくしたり、小さくしたりすることができるためである。したがって、本発明の乾燥装置を、被乾燥物の大きさや量等に、容易に対応させることができる。
【0070】
また、オーバーラップ幅(L3)としては、10〜1500mmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、オーバーラップ幅が10mm未満であると、アルミニウム板を重ねた部分の隙間から、過度に熱が逃げてしまい、効果的に温度を調整することができない場合があるためである。また、オーバーラップ幅が1500mmを超えると、重なった箇所の重さが重くなり、アルミニウム板に歪みが発生してしまう場合があるためである。
したがって、オーバーラップ幅は、20〜1000mmの範囲内の値であることがより好ましく、30〜500mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0071】
(5)スライド機構
また、スライド機構は、温度調整部材の天井部におけるアルミニウム板を、温度調整部材の幅方向(
図8の機構P、Qを参照。)にスライドさせるための機構である。
すなわち、温度調整部材の天井部が、複数のアルミニウム板で形成されており、アルミニウム板の縁に沿ってスライドする機構であることが好ましい。
この理由は、天井部が複数枚のアルミニウム板で構成されていることにより、部分的に重ねることができ、天井部の幅を調整することができるためである。
また、
図9(a)〜(b)に示すように、スライド機構44によって、天井部の各アルミニウム板の縁に沿って、動かすことができるため、換気口の幅(L1、L2)を調整するとともに、側方のフレーム49(49a、49b)を動かすことで、温度調整部材の幅(L4)も調整することができる。
【0072】
具体的には、スライド機構は、
図9(a)〜(b)に示すように、幅方向のフレーム48にスライド機構44を持たせ、温度調整部材の天井部における複数のアルミニウム板(43a、43b)を、それぞれ独立に、動かすことができる機構である。
これにより、換気口の幅(L1、L2)を、それぞれ調整することが可能になるとともに、幅方向のフレームに沿って、側方のフレームを動かすことができるため、温度調整部材の幅も調整できる。
【0073】
なお、スライド機構は、例えば、幅方向のフレーム48(48a、48b)に設けたスライドレールと、スライドレール上をスライドする、アルミニウム板に取り付けたスライダと、で構成できる。
より簡易な構成としては、スライド機構は、幅方向のフレームに溝を設け、アルミニウム板の縁に空けたねじ止め用の穴を介して、ねじ止めすることで構成することができる。
【0074】
[第7の実施形態]
第7の実施形態は、特に図示しないものの、気流を取り入れる導入部を備えた筐体と、気流を加熱して、所定温度を有する加熱気流を生成し、被乾燥品に対して所定方向としての第1の方向から吹き付ける第1の加熱装置と、第1の加熱装置によって、吹き付けられた加熱気流を筐体の外部に、所定方向としての第2の方向から放出する加熱気流排出部と、被乾燥品に対して赤外線を照射して加熱する第2の加熱装置と、を備えた乾燥装置を用いてなる乾燥方法に関する発明である。
そして、第1の方向と、第2の方向とが異なり、加熱気流を循環させずに、一定方向に進行して排出する構成の乾燥装置を用いてなる乾燥方法である。すなわち、被乾燥品として、基体上に、塗膜を有する被乾燥品を準備する工程と、第1の加熱装置によって、第1の方向から、所定温度を有する加熱気流を被乾燥品に対して吹付けながら、第2の加熱装置によって、赤外線を照射して加熱する乾燥工程と、被乾燥品を乾燥した後の気流を、第2の方向から筐体の外部に排出する排出工程と、を備えることを特徴とする乾燥方法である。
【0075】
よって、被乾燥品に対する赤外線照射につき、従来の循環加熱方式と異なり、当該赤外線(中赤外線)を吸収しやすい水分や溶剤の濃度が薄い雰囲気中(例えば、約1/2〜1/10)で行うことができ、その結果、被乾燥品上の塗膜における赤外線の吸収効率が対応して高くする(例えば、約2〜10倍)ことができる。
また、塗料内部の加熱も促進され、すなわち、加熱気流と赤外線との併用効果が発揮されるので、乾燥条件を幅広く変更することができ、各種被乾燥品の基体や塗膜の種類に応じて、幅広い温度域で、かつ、短時間かつ効率的に乾燥(形成)することができる。
以下、工程ごとに、より具体的に説明する。
【0076】
(1)塗膜を有する被乾燥品を準備する工程
まず、基体として、ダイレクトブローペット品(耐熱温度:約60〜80℃)や、PPボトル(耐熱温度:約90℃)、ペットボトル(耐熱温度:約100℃)、PC成形品(耐熱温度:約120℃)等の少なくなくとも一つを準備する。
次いで、スピンドル棒に、これらの成形品を取り付けるか、あるいは、平置きして、スプレー塗布やバーコータ塗布、あるいは、刷毛塗等で、基体の表面に対して、塗料を吹き付けて塗膜を形成する。
【0077】
ここで、塗料の種類は、基体の種類や装飾効果や着色効果等を考慮して定めることが好ましいが、熱硬化性樹脂塗料の場合、一例であるが、主剤としてのウレタンアクリレートポリマ−と、架橋剤としての、イソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物等を配合し、さらには、添加剤としての着色剤、フィラー、酸化防止剤、紫外線防止剤等を配合してなる用いることが好ましい。
【0078】
また、塗料が、熱可塑性樹脂の場合、これも一例であるが、主剤としてのアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、カルボキシル基含有化合物等の少なくとも一つと、さらには、添加剤としての着色剤、フィラー、酸化防止剤、紫外線防止剤、粘着付与剤等を配合することが好ましい。
そして、これらの熱硬化性樹脂塗料や熱可塑性樹脂塗料の塗りやすさや、形成される塗膜の均一性等を考慮して、所定量の水性溶剤や有機溶剤をさらに配合することが好ましい。
【0079】
(2)第1の加熱装置による加熱気流の吹付け工程/第2の加熱装置による赤外線の照射工程の同時実施工程
すなわち、第1の加熱装置によって、第1の方向から、所定温度を有する加熱気流を被乾燥品に対して吹付けながら、第2の加熱装置によって、赤外線を照射して加熱する乾燥工程と、被乾燥品を乾燥した後の気流を、第2の方向から筐体の外部に排出する排出工程と、を事実上、同時実施する工程である。
すなわち、筐体外部から導入され、加熱された加熱気流が、被乾燥品の周囲に循環することがなく、第1の方向から被乾燥品に当てられるともに、当該加熱気流が、第1の方向と異なる方向の、第2の方向から筐体外部に一定方向の流れとして、最短距離で、迅速かつ効果的に排出する工程である。
【0080】
もちろん、第1の加熱装置による加熱気流の吹付け工程と、第2の加熱装置による赤外線の照射工程とが、若干ずれていても良く、さらに言えば、第1の加熱装置による加熱気流の吹付け工程を1〜5秒先に実施し、その後で、第2の加熱装置による赤外線の照射工程を実施するほうが、より被乾燥品の乾燥には有効であると言える。
さらに言えば、第1の加熱装置による加熱気流の吹付け工程と、第2の加熱装置による赤外線の照射工程とが、同時に開始されたとしても、先に第1の加熱装置による加熱気流の吹付け工程を終了し、1〜5秒遅れて、第2の加熱装置による赤外線の照射工程を実施することも好ましい。
【0081】
(3)排出工程
排出工程は、第1の方向から被乾燥品に当てられた加熱気流が、第1の方向と交絡しないように、それとは異なる方向である第2の方向から筐体外部に一定方向の流れとして、最短距離で、迅速かつ効果的に排出する工程である。
ここで、通常は、加熱気流の第1の方向と、第2の方向とのなす角度を、対向する場合、対向しない場合を含めて、20°〜150°の範囲内の値にすることが好ましい。
この理由は、かかる角度が20°未満になると、第1の方向の加熱気流と、第2の方向の加熱気流とが、一部混在しやすくなって、被乾燥品に対する加熱性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる角度が150°を超えると、加熱気流における第1の方向及び第2の方向の位置決定が困難となって、乾燥装置が複雑化、大型化する恐れが生じる場合があるためである。
よって、加熱気流の第1の方向と、第2の方向とのなす角度を30〜120°の範囲内の値にすることが好ましく、45〜90°の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
なお、加熱気流の第1の方向と、第2の方向とのなす角度は、第2の加熱装置のみを止めて、第1の加熱装置及びその他の吸気ファンや、排出ファン等を動作させ、それぞれの該当位置の風速計に準じた風量、風圧、あるいは吹き流しによる目視確認等によって決定することができ、同時に、筐体内部を循環していないと判断することができる。
【0082】
(4)その他の工程1
また、筐体の内部に空洞部が設けてあって、当該空洞部に沿って、移送手段により、被乾燥品を所定速度で移動させながら乾燥させることが好ましい。
このような移送手段によって、乾燥方法の実施による単位時間当たりの乾燥数を著しく多くすることができる。
【0083】
(5)その他の工程2
また、乾燥工程において、第1の加熱装置として、50〜100℃未満の加熱気流を生成する電熱ヒーターを用い、かつ、第2の加熱装置として、反射装置を備えた放射輝度ピークの波長が2〜5μmの範囲内の値である赤外線加熱装置(中赤外線加熱装置と称する場合がある。)を用い、被乾燥品を100℃以上の温度に加熱することが好ましい。
まず、所定温度に加熱する第1の加熱装置を用いることによって、ダイレクトブローペット(耐熱温度:約60〜80℃)や、PC樹脂プレート(耐熱温度:約120℃)等の比較的耐熱性に乏しい基体を有する被乾燥品に対して、幅広く適用することができる。
また、このような波長域の中赤外線を用いると、水分や溶剤による吸収がさらに少なくなって、種々の塗料の塗膜の短時間乾燥に好ましい。
しかも、反射装置を備えた中赤外線加熱装置を用いることから、効率的に中赤外線を利用できるとともに、加熱気流の方向性を制御しやすいという利点も得られる。
【0084】
(6)乾燥装置における空気の流れ
ここで、
図7(a)〜(c)を使って、乾燥装置における空気の流れを概略的に説明する。
まず、
図7(a)に示すように、基体W2上に塗膜W1を有する被乾燥品Wに対して、赤外線Lを照射する。すると、
図7(b)に示すように、塗膜W1から水分や溶剤が飛散し、被乾燥品Wの表面が、筐体内部の湿度や溶剤濃度が高い空気S1で満たされる。
そして、この空気S1は、第1の方向(
図7の矢印A参照。)から非循環で新鮮な空気S3(加熱気流)が吹付けられ、それとは異なる方向である第2の方向(
図7の矢印B参照。)から、湿度や溶剤濃度が高い空気S1を筐体外部に一定方向の流れとして排出される。
このように実施することで、第2の加熱装置15と被乾燥品Wとの間に存在する空気が、適宜湿度や溶剤濃度の低い空気S2に置き換えられるとともに、被乾燥品Wの表面に近い領域(例えば、被乾燥品Wの表面から5〜50cm)は、新鮮な空気S3で置き換わる。
その結果、被乾燥品Wに対して、効果的に赤外線Lを照射することができる。
なお、上記に示すように、加熱気流供給部19xによる加熱気流の吹付けと、第2の加熱装置15による赤外線Lの照射と、及び加熱気流排出部19yによる排出は、重畳的に実施されていても良く、それぞれが単独で順番に実施されていても良い。
【実施例】
【0085】
1.準備工程
以下のようにして、本発明の実施例1と比較例1〜5と、を行った。
すなわち、攪拌装置を用い、全体量に対して、主剤が、ウレタンアクリレートポリマ−/ウレタンアクリレートオリゴマ−の混合物(重量比:50/50)を80重量%と、硬化剤としてのイソシアネート化合物(TDI)を20重量%と、着色剤を1重量%とを、溶剤としての所定量の酢酸エチルに均一に溶解させ、熱硬化性塗料(固形分濃度:25重量%)を作成した。
【0086】
2.作成工程
作成した塗料を以下の4種類の基体(ダイレクトブローペット容器(厚さ1mm)、ABS樹脂板(厚さ1mm)、PC樹脂板(厚さ1mm)、ガラス板(厚さ1mm))に対して、膜厚が20μmとなるように、スプレー塗装して、熱硬化性樹脂塗料の塗膜を形成し、いくつかの実施例用及び比較例用の被乾燥品を用意した。
そして、
図1に示す乾燥装置10によって、下記の表1に示した実施例及び比較例の乾燥条件に従い、未硬化の塗膜を有する被乾燥品を乾燥(加熱硬化)させた。
なお、溶剤の影響度を高くする目的で、乾燥装置10の内部に溶剤を入れた容器を置いた。乾燥装置10の内部に置いたこの溶剤によって、乾燥装置10の内部のVCO(揮発性有機化合物)濃度は約100ppm前後となっていた。
【0087】
3.評価方法
次いで、表1に示した各条件で乾燥させた実施例及び比較例の被乾燥品の塗膜に対し、硬化検証をするため、IPA(イソプロピルアルコール)及びカナキン3号綿布によるラビングテストを実施した。
また、変形検証として、所望形態に対する変形具合を目視で判断し、評価した。
なお、実施例1等において、少なくとも第1の方向から加熱気流を吹きかけた状態での、乾燥品の周囲の有機溶剤量は、少なくとも10ppm未満の低い値になっていた。
そして、
図1の乾燥装置において、所定の想定円筒流路を想定し、矢印Aと、矢印Bの加熱空気の流量を、流量計で測定したところ、矢印Bにおける流量は、矢印Aにおける流量の80%以上の値であることを確認した。
【0088】
(1)ラビングテスト
IPAを被乾燥品(10個)の塗膜の表面に吹き付けて、カナキン3号綿布で、塗膜の表面をラビング(往復10回)し、下記基準に沿って、4段階で評価を行った。
◎:綿布が引っ掛かることなくラビングでき、塗膜の光沢も保持される。
〇:綿布が引っ掛かることなくラビングできるが、塗膜の光沢が低下する現象が生じる。
△:綿布に塗膜が引っ掛かり、途中まで剥がれる現象が生じる。
×:綿布に塗膜が引っ掛かり、塗膜が完全に剥がれて、下地が見える現象が生じる。
【0089】
(2)変形検証
被乾燥品(10個)の変形程度を、目視にて、下記基準に沿って、4段階で評価を行った。
◎:所望形態を保持している。
〇:ほぼ所望形態を保持している。
△:所望形態から若干変形している。
×:所望形態から顕著に変形している。
【0090】
4.評価結果
実施例1、及び比較例1〜5として、下記4種類の基体(一部、容器)に対する、ラビングテスト(塗膜形成性)及び変形検証結果を、表1〜表4に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
5.評価結果
表1〜表4に示す、実施例1、及び比較例1〜5に基づく評価結果から、以下の点が考察される。
すなわち、実施例1に示すように、第1の加熱装置による加熱気流(非循環で新鮮な加熱気流)と、第2の加熱装置による赤外線照射とを併用した場合、基体の種類によらず、照射時間5分で、ラビングテスト及び変形検証で、いずれも「◎」評価が得られた。
【0096】
一方で、比較例1〜3に示すように、所定熱硬化性樹脂塗料の使用を前提に、第1の加熱装置による加熱気流の吹き付けのみで、塗膜を乾燥させる場合、加熱気流の温度が80℃で、20分間吹き付けを行っても、ラビングテストで、「〇」以上の評価は得られないことが理解される。
【0097】
また、比較例4に示すように、定熱硬化性樹脂塗料の使用を前提に、第1の加熱装置による加熱気流を、温度が80℃で、30分間吹き付けた場合、基体が、熱に弱いダイレクトブローペットでは、変形検証が「△」評価になっていることが理解できる。
【0098】
また、比較例5に示すように、第2の加熱装置による赤外線照射(赤外線の照射時間を5分、赤外線照射パワーを50%(赤外線ランプの表面温度でいって300℃)にして赤外線を照射)のみで塗膜を乾燥した場合、熱に弱いダイレクトブローペットやABS樹脂では、変形検証が「△」評価以下になっていることが理解できる。
そして、詳細は省略するが、別途試験において、第2の加熱装置による赤外線照射パワーを40%、50%、60%、85%(赤外線ランプの表面温度でいって240℃、300℃、360℃、510℃)と変化させるにしたがい、変形検証の結果が悪くなる傾向がみられている。
【0099】
それに対し、本発明の乾燥方法では、第1の加熱装置による加熱気流(非循環で新鮮な加熱気流)と、第2の加熱装置による赤外線照射とを併用することによって、5分という極めて短時間、すなわち比較例4、5等の6分の1等の時間で、より優れた所望の乾燥が行えることが判明した。しかも、4種類の素材に対し同様の効果が得られている。
すなわち、本発明の乾燥装置及び乾燥方法によれば、比較的低温加熱が要求されるダイレクトブローペット容器から、相当の高温加熱が可能なガラス板まで、第1の加熱装置及び第2の加熱装置の条件を容易に変更して、種々の材料に塗られた塗膜を、低コスト、高品質、かつ、短時間に乾燥できることが判明した。
【0100】
[実施例2]
また、実施例2として、第6の実施形態にかかる温度調整部材を、乾燥装置の筐体の内部に入れ込んだ上で、ダイレクトブローペットを乾燥させ、実施例1と同様にラビングテスト等の評価を行った。
具体的には、乾燥装置の筐体の内部に、幅60cm、長さ(奥行き)180cm、高さ160cmであって、厚さ0.6mm、表面粗さ0.02μmのアルミニウム板(FS003、株式会社UACJ製)で、周囲を構成した温度調整部材を入れて評価した。
また、温度調整部材の天井部は、2枚のアルミニウム板を、オーバーラップ幅(L3)が150mmとなるようにオーバーラップさせて、側方のフレームとアルミニウム板との間に、それぞれ換気口の幅(L1、L2)が100mmとなる換気口を設けている。
その結果、ラビングテスト及び変形検証の評価はともに「◎」であることを確認した。
【0101】
[実施例3、実施例4、比較例6]
また、
図10に、実施例3としての厚さ0.6mmの鏡面アルミニウム板(A)、実施例4としての、厚さ0.6mmのアルミニウム板(B)、比較例6としての、厚さ0.6mmのステンレス板(C)に対して、波長が2〜5μmに輝度ピークを有する赤外照射装置によって、中赤外線を照射したとき、照射側の表面温度を評価した。
具体的には、設定温度200℃で、ヒーターと各板300mmの距離を離して、照射直後、5分後、10分後、15分後、20分後で測定し、20分経過後に赤外線照射を停止させて、さらに3分後に測定した。
図10によれば、ステンレス板(C)だと、20分後には、ヒーター設定温度の半分程度の温度となり、初期温度から60℃以上上昇してしまった一方で、アルミニウム板(B)であれば、初期温度から30℃程度の温度上昇にとどまっている。
また、鏡面アルミニウム板(A)であれば、アルミニウム板(B)よりも、さらに10℃程度低くなっており、より効果的に中赤外線を反射できていることが理解できる。
よって、温度調整部材の周囲をアルミニウム板で構成すれば、中赤外線を反射して、外側にエネルギーが逃げるのを防止し、被乾燥品に対して、効率的に中赤外線を照射できることが理解できる。
【0102】
なお、実施例3、実施例4、及び比較例6においても、実施例1と同様にラビングテスト等の評価を行ったが、照射時間を3分と短く設定した。
その結果、実施例3のラビングテスト及び変形検証の評価はそれぞれ「◎」であるが、実施例4は、変形検証の評価は「◎」であるが、ラビングテストの評価は「〇」であった。
さらに、比較例6については、変形検証の評価は「◎」であるが、ラビングテストの評価は「×」であった。