【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記嵌め込み式のトルク検出装置は、別部材の嵌め込みによって組み立てられるため、嵌め込み部の隙間を完全になくすことはできず、嵌め込み部に粗面或いは粗面による隙間が形成されてしまうという問題があった。シャフトに係るトルクを検出するという性質上、これらの隙間はシャフトとトルクの一体化を妨げ、トルク検知の精度に根本的に欠けるものであった。
【0006】
上記問題点に対し、嵌め込み後の溶接によってシャフトと磁歪リングとを一体化させることも考えられる。本発明者は溶接金属を磁歪リングの終端部ないし中間部に当てて連続溶接する試行を行った。溶接金属は磁歪リングとの一体化はある程度果たすものの、シャフトに熱影響部の窪みを形成したり、溶接金属自体にブローホールや割れを形成したりするという悪影響を与えることがあり、また、金属表面自体に窪みやへこみができやすいことから均一な表面に成り難く、トルク検出の精度向上につながるとは言えなかった。
【0007】
そこで本発明は、磁束漏れ量を確実にトルク検知することができる程度までの信頼性を有し、かつ、生産性に優れた磁歪式トルクセンサー、すなわち磁歪式応力検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明においては、以下の手段を講じるものとしている。但し以下において構成の名称に続けて記載する数字乃至アルファベットは、図面の理解のために便宜的に付した符号であり、これによって構成の概念ないし形状、構造を限定する趣旨ではない。
【0009】
(1) 本発明に係る磁歪式トルクセンサーは、
一軸方向に伸長するシャフト体からなり、シャフト体の端部を除く所定の第一区間12に亘って拡径部120を有する、一体製の磁歪合金製のシャフト(1)と、
前記拡径部の両端部それぞれに非接触で近接配置されたピックアップセンサ(4S)と、
第一区間内のシャフト及びピックアップセンサを箱状に囲って、シャフトの両端部以外を防磁する防磁ボックス(4)と、
拡径区間の両端それぞれよりも外方の第二区間にて、シャフト(1)外周部と防磁ボックス(4)の外端部との間に介設された、防除処理を施された防磁スペーサー(3)と、
を具備するトルクセンサであって、
ピックアップセンサ(4S)は、平面視対角位置/又は/及び側面視対角位置に対となるように、軸方向左右に配置されてなることを特徴とする。
【0010】
シャフト自体に拡径部を形成して、拡径部の段差による磁束漏れを検出するようにしたことで、いわゆるシャフトと磁歪リング部分との一体化を完全なものとし、トルク検知量の精度を格段に向上させることができる。
【0011】
上記磁歪式トルクセンサーにおいて、一体製の磁歪合金を表面層に形成した棒状体、或いは全体が一体製の磁歪合金からなる棒状体を原料とし、この棒状体の削り出しによって、前記拡径部120を有する一体製の磁歪合金製のシャフト(1)を形成したものであることが好ましい。
【0012】
(2)防磁スペーサー(3)は、ベアリング(23)を介してシャフト(1)及び防磁ボックス(4)それぞれを支持する弾性材からなり、
シャフト(1)の前記第一区間から所定の距離を開けた第二区間にて、シャフトに外周面接触してシャフトを支持すると共に、
ベアリング(23)を介して組み込まれた、自由回転可能な回転部品を有し、
この回転部品が、第二区間と第一区間の間の支持位置で、防磁ボックス(4)を自由回転可能に支持することが好ましい。
【0013】
シャフトの拡大径の部分を削り出し等によってシャフトと一体の磁歪性合金からなるものとし、この拡大径部分を、弾性材からなる防磁スペーサー3で囲ってシャフトを回転可能に支持することで、支持によって漏れ磁束に影響を与えることがなくなり、検知精度の高いセンサを構成することができる。
【0014】
(3)シャフト(1)の第一区間の両端の区間境界のうち少なくとも一方の拡径端部が、湾曲状に窪んだ凹部(121L/122L)からなることが好ましい。
【0015】
拡径端部が凹部からなることで、漏れ磁束の磁束方向が凹部付近に集まり、漏れ磁束の量が僅かであっても確実に漏れ磁束の増減を検知することができる。
【0016】
(4)シャフト(1)の第一区間の両端のうち少なくとも一方の拡径端部の角部が面取り部(121C)からなることが好ましい。
【0017】
拡径端部の角部は漏れ磁束の変化量が大きく極端な磁束変化を検知できるところ、この部分を面取り部からなるものとすることで、面取り部全体による放射方向を磁束変化領域とすることができる。この磁束変化領域内に磁束センサを対向させて設置することで、磁束変化を詳細に検知することができる。
【0018】
(5)シャフト(1)の第一区間の両端のうち一方の拡径端部の径が、他方の拡径端部の径と異なることが好ましい。
【0019】
一方の拡径端部と他方の拡径端部とを異なる第一径、第二径とし、第一径における磁束量変化と、第二径における磁束量変化とを、段差部の高さを考慮して比較することで、磁束量変化によるノイズを除去して、シャフトが受けた純粋なねじり応力の検知が可能となる。
【0020】
(6)シャフト(1)の第一区間内の拡径部の周面の一部が、軸に対して一定角度で傾斜した円錐面からなる、或いは軸に対して非一定角度で傾斜した凹面又は凸面からなることが好ましい。
一定角度で傾斜した円錐面を有した拡径部は、第一区間両端の段差量が明らかであり、下降によって第一区間両端の長さを変えることで、異なる第一径、第二径を両端の径とすることができる。これにより、ノイズの精度を調整できる。
或いは一定角度で傾斜した凹面又は凸面からなる周面を有することで、拡径部の第一区間両端の角部の角度を90度未満の鋭角に調整したり、90度超180度未満の鈍角に調整したりすることができる。角部の角度を鋭角側に調整することで、磁束漏れ量の変化をピーキーにすることができる一方、鈍角側に調整することで、磁束漏れ量の変化を緩やかにすることができる。
【0021】
(7)シャフト(1)の第一区間の両端の区間境界のうち少なくとも一方の拡径端部が、軸側面視にて複数の段差を有した階段状部を有することが好ましい。
複数の段差部がある場合、段差による角部それぞれで磁束漏れ量の変化を確認することができる。