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特開2021-110725金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-110725(P2021-110725A)
(43)【公開日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20210705BHJP
   G01N 31/02 20060101ALI20210705BHJP
   G01N 33/22 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
   G01N31/00 P
   G01N31/02
   G01N33/22 D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-178617(P2020-178617)
(22)【出願日】2020年10月26日
(31)【優先権主張番号】16/730,191
(32)【優先日】2019年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】109128059
(32)【優先日】2020年8月18日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 文龍
(72)【発明者】
【氏名】洪 煥毅
(72)【発明者】
【氏名】呂 健▲い▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 漢文
(72)【発明者】
【氏名】蘇 秀麗
(72)【発明者】
【氏名】李 月星
(72)【発明者】
【氏名】陳 重佑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 霆宇
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA08
2G042BB14
2G042BD15
2G042BD16
2G042CA06
2G042CB01
2G042CB03
2G042DA01
2G042DA03
2G042FA03
2G042FA05
2G042FB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストを低減すると共に、硫化物含有量が基準を超過しているか否かをより迅速に確認できる技術を提供する。
【解決手段】金属イオン溶液、含硫黄分析物、および還元剤を準備する工程と、金属イオン溶液と含硫黄分析物とを混合して混合溶液を作る工程と、還元剤を混合溶液に加えて検出結果を得る工程と、検出結果を観察して含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認する工程と、を含み、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値よりも小さいとき、その検出結果は沈殿を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法であって、
金属イオン溶液、含硫黄分析物、および還元剤を準備する工程と、
前記金属イオン溶液と前記含硫黄分析物とを混合して混合溶液を作る工程と、
前記還元剤を前記混合溶液に加えて検出結果を得る工程と、
前記検出結果を観察し前記含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認する工程と、
を含み、
前記含硫黄分析物の硫化物含有量が前記しきい値よりも小さいとき、前記検出結果は沈殿を有する、金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項2】
前記金属イオン溶液の金属イオンには、金イオン、銀イオン、銅イオン、クロムイオン、カドミウムイオンまたはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項3】
前記還元剤には、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸鉄、塩化鉄、アスコルビン酸、オレイルアミン、アミノ酸、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項4】
前記しきい値が0.1ppmから30000ppmの間である、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項5】
前記還元剤が前記金属イオン溶液の金属イオンを完全に金属原子に還元させ、還元剤の使用量は金属イオン溶液の10〜1000倍である、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項6】
前記含硫黄分析物には石油化学製品が含まれる、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項7】
前記金属イオン溶液の体積が1mLから30mLの間である、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項8】
前記金属イオン溶液の濃度が1Mから10−10Mである、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項9】
前記含硫黄分析物の体積が1mLから30mLの間である、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項10】
かかる時間が10分未満である請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項11】
前記硫化物には、硫化水素、チオール、スルフィド、チオフェン、過硫化物、多環チオフェンまたはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項12】
前記硫化物の官能基には、スルホニル基、スルホン酸基、スルフィニル基、スルフヒドリル基、チオシアネート、ジスルフィド結合、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。
【請求項13】
計器により前記検出結果の硫黄含有量濃度値を分析する工程をさらに含む請求項1に記載の金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が基準を超過しているか否かを確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学製品は生活において広く使用されているが、既存の技術の限界から、油製品製造プロセスにおいて硫化物が生成されてしまう、あるいは使用上の安全ために無臭の液化石油ガスおよび天然ガス中に追加の硫化物が添加されている。しかしながら、硫化物の含有量が高すぎると、空気汚染を生じるのみならず、発がんリスクも高まるため、硫化物の含有量については世界各地で規制基準が定められている。
【0003】
硫化物含有量の実験室における検出または現場における迅速スクリーニングは、いずれも一定の分析コストがかかり、現時点で台湾に存在するガソリンスタンドが約2500箇所であるとし、各ガソリンスタンドおよびがオクタン価92、95、98の無鉛ガソリンおよびディーゼル油の現場迅速スクリーニングを行い、かつ定期的にスクリーニング検査するとした場合、毎年数万の含硫黄分析物の検出を行わなければならず、非常にコストと時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第20190187135号明細書
【特許文献2】米国特許公開第20120045754号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーニングコストを低減すると共に、油製品中の硫化物含有量が基準を超過しているか否かをより迅速に確認できるようにする新たな迅速スクリーニング技術が、目下緊急に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施形態が提供する金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法は、金属イオン溶液、含硫黄分析物、および還元剤を準備する工程と、金属イオン溶液と含硫黄分析物を混合して混合溶液を作る工程と、還元剤を混合溶液に加えて検出結果を得る工程と、検出結果を観察して含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認する工程と、を含み、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値よりも小さいとき、その検出結果は沈殿を有する。
【発明の効果】
【0007】
上述した化物含有量の検出方法にかかる時間は10分未満、例えば3分または5分である。現在一般に用いられている硫化物含有量の検出方法に比べ、本開示の検出方法は、検出時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の1実施形態において、硫黄含有量がしきい値よりも小さい検出結果のときのUVスペクトルである。
図2】本開示の1実施形態において、硫黄含有量がしきい値よりも大きい検出結果のときのUVスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1実施形態が提供する金属イオン溶液で硫化物含有量を検出する方法は、金属イオン溶液、含硫黄分析物、および還元剤を準備する工程を含む。例えば、しきい値に基づいて、金属イオン溶液の濃度および体積、含硫黄分析物の体積、ならびに還元剤の使用量を確認することができる。1実施形態では、市販の金属塩を取り、体積の異なる金属イオン溶液を作製することができる。1実施形態では、金属イオンには、金イオン、銀イオン、銅イオン、クロムイオン、カドミウムイオン、ナノ粒子を作製することのできるその他の金属イオン、またはこれらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定はされない。金属イオンが金イオンであるとき、金属塩は塩化金、塩化金(III)、またはその他の適した金イオンであり得る。金属イオンが銀イオンであるとき、金属塩は塩化銀、硝酸銀、またはその他の適した銀イオンであり得る。金属イオンが銅イオンであるとき、金属塩は硫酸銅、酢酸銅、硝酸銅、またはその他の適した銅イオンであり得る。金属イオンがカドミウムイオンであるとき、金属塩はセレン化カドミウム、酢酸カドミウム、またはその他の適したカドミウムイオンであり得る。
【0010】
特定の濃度(つまり、しきい値)の硫黄化合物の含硫黄分析物を調製すると共に、含硫黄分析物の体積を決定する。体積の異なる金属イオン溶液に対し、金属イオン溶液の金属イオンを完全に金属原子に還元することのできる還元剤を調製する。例えば、還元剤の使用量は金属イオン溶液の10〜1000倍である。1実施形態において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)、クエン酸ナトリウム(sodium citrate)、硫酸鉄(ferric sulfate)、塩化鉄(ferric chloride)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、オレイルアミン(oleylamine)、アミノ酸(amino acid)、その他の適した還元剤の水溶液、またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定はされない。次いで、一定体積の含硫黄分析物を取り、異なる体積の金属イオン溶液に加えて混合し、混合溶液を作る。次いで、混合溶液中に還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認する。
【0011】
体積の小さい金属イオン溶液から体積の大きい金属イオン溶液の順で確認をしていき、最小の特定の体積の金属イオン溶液と一定体積の含硫黄分析物との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その濃度の金属イオン溶液の特定の体積を、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを検出するのに用いることができる。なお、上記金属イオン溶液の濃度と体積、含硫黄分析物の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者のニーズに合わせて設計を調整できるということが、理解されるはずである。また、上述した金属イオン溶液の体積と濃度、含硫黄分析物の試料体積、および還元剤の使用量を確認するステップは例に過ぎず、当該分野において通常の知識を有する者であれば当然に、その他のロジカルなステップを採用して、上記目的を達成することができる。
【0012】
次いで、金属イオン溶液と含硫黄分析物とを混合して、混合溶液を作ることができる。混合溶液中に還元剤を加え、検出結果を得る。検出結果を観察し、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認する。含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値よりも小さいとき、検出結果は沈殿を有する。1実施形態において、含硫黄分析物には、石油化学製品、例えば油製品または溶剤が含まれる。例えば、油製品は、無鉛ガソリン、車用ディーゼル油、液化石油ガス、またはその他の油製品であり得る。また、溶剤は、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、シクロペンタノン、アセトン、N−メチルピロリドン、またはその他の適した溶剤であり得る。
【0013】
1実施形態において、しきい値は0.1ppmwから30000ppmwの間、例えば、約0.1〜1ppmw、1〜10ppmw、10〜100ppmw、100〜1000ppmw、1000〜4000ppmw、4000〜10000ppmw、または10000〜30000ppmwである。しきい値が低すぎると、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えていなくても、金イオンを還元して生じる金原子の濃度が低くなりすぎて沈殿現象を見分けることができない可能性がある。しきい値過が高すぎると、金属イオンの使用量が多くなり過ぎてコストが高まる可能性がある。硫化物含有量の比較的高い含硫黄分析物に対しては、先ず含硫黄分析物を希釈してから検出を行って、しきい値を低くすることを検討してもよい。
【0014】
1実施形態において、金属イオン溶液の体積は1mLから30mLの間、例えば約1〜5mL、5〜10mL、10〜15mL、15〜20mL、20〜25mL、または25〜30mLとすることができ、金属イオン溶液の濃度は1Mから10−10M、例えば約1〜10−1M、10−1〜10−2M、10−2〜10−4M、10−4〜10−6M、10−6〜10−8M、または10−8〜10−10Mとすることができる。金属イオン溶液の体積が小さすぎると、沈殿反応を観察することが容易でなくなる。金属イオン溶液の体積が大きすぎると、検出キット(kit)の体積が増加し、運送コストが高まる。金属イオン溶液の濃度が低すぎると、含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えていなくても、金イオンを還元することにより生じる金原子濃度が低くなりすぎて沈殿現象を見分けることができない可能性がある。金属イオン溶液の濃度が高すぎると、試料の全てに沈殿反応が生じ、誤判定を招き得る。
【0015】
1実施形態において、含硫黄分析物の試料体積は1mLから30mLの間、例えば約1〜5mL、5〜10mL、10〜15mL、15〜20mL、20〜25mL、または25〜30mLである。含硫黄分析物の試料体積が小さすぎると、試料誤差が生じ易くなる。含硫黄分析物の試料体積が大きすぎると、金属イオンの使用量が増加して、コストが高まる。
【0016】
1実施形態において、上記硫化物含有量の検出方法にかかる時間は10分未満であり、例えば3分または5分である。現在よく用いられている硫化物含有量の検出方法と比較して、本開示の検出方法は、検出時間を大幅に短縮することができる。1実施形態において、硫化物には、硫化水素、チオール、スルフィド、チオフェン、過硫化物、多環チオフェン、これらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定はされない。また、1実施形態において、硫化物の官能基にはスルホニル基、スルホン酸基、スルフィニル基、スルフヒドリル基、チオシアネート、ジスルフィド結合、これらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定はされない。
【0017】
本開示のキーポイントは検出のステップの順序にある。金属イオン溶液と含硫黄分析物を先ずは混合してから、還元剤を加えて、検出結果が沈殿か否かを確認する必要がある。金属イオン溶液と還元剤を先に混合してしまうと、沈殿するか否かが、金属イオン溶液の濃度のみにより決まってしまい、含硫黄分析物の硫化物含有量とは無関係となってしまう。例えば、金属イオン溶液と還元剤を混合した後に沈殿が生じた場合、その後に加えた含硫黄分析物の硫化物含有量がしきい値を超えたとしても、その沈殿は消失しない。いくつかの実施形態において、検出技術に、計器(例えば紫外可視分光光度計、赤外分光光度計、またはその他の適した計器)を組み合わせて用い、検出結果の硫黄含有量濃度値を分析し、応用をより広げることもできる。
【0018】
本開示の上述した内容およびその他の目的、特徴、並びに利点がより明確かつ容易に理解できるよう、以下に好ましい実施例を挙げて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
実施例1
【0020】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を迅速スクリーニングするのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0021】
車用ディーゼル油およびバイオディーゼル油を含硫黄分析物として、携帯型のX線装置、標準測定法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。ディーゼル油の硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表1に示すとおりである。
【0022】
【表1】
【0023】
表1からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0024】
実施例2
【0025】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることできる。しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0026】
無鉛ガソリンを取って含硫黄分析物とし、標準測定法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。無鉛ガソリンの硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表2に示すとおりである。
【0027】
【表2】
【0028】
表2からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0029】
実施例3
【0030】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が45ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値45ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0031】
液化石油ガスを取り含硫黄分析物とし、携帯型ガスクロマトグラフ(GC)、標準測定法ASTM D6667により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。液化石油ガスの硫化物含有量は50ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は45ppmwである。測定結果は表3に示すとおりである。
【0032】
【表3】
【0033】
表3からわかるように、金イオン溶液を先ず液化石油ガスと混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより液化石油ガス中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0034】
実施例4
【0035】
すでに硫化物濃度がわかっている天然ガスを一定体積の溶剤に一定時間通し、次いで標準測定方法ASTM D5504により溶剤中の硫化物濃度を確認した。これにより、溶剤中の硫化物濃度、天然ガス中の硫化物濃度、天然ガスを溶剤に通した時間、および溶剤体積間の関数を算出することができる。天然ガスの硫化物含有量は45mg/mに規制されている。上記関数から、適切な天然ガスを溶剤に通す時間および溶剤体積を選択すると、硫化物含有量40mg/mのしきい値となる。
【0036】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が40mg/mの溶剤を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の溶剤と混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値40mg/mの溶剤を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0037】
市販の検知管(ガステック社製)で天然ガスの硫化物含有量を直接測定した。また、天然ガスを取り、一定体積の溶剤に一定時間通した後、それを含硫黄分析物とした。標準測定法ASTM D5504により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、検出の結果、沈殿が生じたか否かを観察した。測定結果は表4に示すとおりである。
【0038】
【表4】
【0039】
表4からわかるように、金イオン溶液を先ず天然ガス中の硫化物を吸収した溶剤と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより天然ガス中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0040】
実施例5
【0041】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0042】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表5に示すとおりである。
【0043】
【表5】
【0044】
表5からわかるように、金イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.1ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0045】
実施例6
【0046】
市販の硝酸銀を取り、体積の異なる銀イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる銀イオン溶液に対し、銀イオン溶液の銀イオンを完全に銀原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる銀イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい銀イオン溶液から体積の大きい銀イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の銀イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その銀イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記銀イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0047】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記銀イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表6に示すとおりである。
【0048】
【表6】
【0049】
表6からわかるように、銀イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0050】
実施例7
【0051】
市販の硝酸銅を取り、体積の異なる銅イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる銅イオン溶液に対し、銅イオン溶液の銅イオンを完全に銅原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる銅イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい銅イオン溶液から体積の大きい銅イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の銅イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その銅イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記銅イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0052】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記銅イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表7に示すとおりである。
【0053】
【表7】
【0054】
表7からわかるように、銅イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0055】
実施例8
【0056】
市販の硝酸カドミウムを取り、体積の異なるカドミウムイオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なるカドミウムイオン溶液に対し、カドミウムイオン溶液のカドミウムイオンを完全にカドミウム原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なるカドミウムイオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さいカドミウムイオン溶液から体積の大きいカドミウムイオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積のカドミウムイオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、そのカドミウムイオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記カドミウムイオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0057】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記カドミウムイオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値0.45ppmwである。測定結果は表8に示すとおりである。
【0058】
【表8】
【0059】
表8からわかるように、カドミウムイオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0060】
実施例9
【0061】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、溶液中の金イオンを金原子に還元することのできる還元剤(例えばクエン酸ナトリウム、塩化鉄、またはアスコルビン酸の水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0062】
車用ディーゼル油を取って含硫黄分析物とし、標準測定方法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。ディーゼル油の硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表9に示すとおりである。
【0063】
【表9】
【0064】
表9からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、各種還元剤を加えることで、沈殿の発生の有無により、油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認することもできる。
【0065】
実施例10
【0066】
実施例9の金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、還元剤、および還元剤使用量を選択し、硫黄含有量濃度7ppmwの車用ディーゼル油および硫黄含有量濃度10.6ppmwの車用ディーゼル油に対し、それぞれ硫黄含有量検出を行い、さらに紫外可視分光光度計で検出結果の紫外線吸収スペクトルを分析した。硫黄含有量が7ppmwのとき、硫黄含有量がしきい値(9.6ppmw)より小さいため、肉眼で観察できる沈殿の発生があり、その色はワインレッドで、かつそのUVスペクトルの吸収強度は粒子の沈殿に伴って減少した(図1参照)。硫黄含有量が10.5ppmwのとき、硫黄含有量はしきい値よりも大きいため、肉眼で観察できる沈殿の発生はなく、反応時間の経過に伴って増加しても、そのUVスペクトルの吸収強度は、粒子の沈殿がないことから、比較的変化はなかった(図2参照)。上述からわかるように、検出技術は、計器(例えば紫外可視分光光度計)を組み合わせて用い、硫黄含有量濃度値を分析することもでき、より応用が広がる。
【0067】
本開示をいくつかの好ましい実施例により以上のように開示したが、これらは本開示を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、任意の変更や修飾を加えることができる。よって、本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されたものを基準とする。

図1
図2