【実施例】
【0019】
実施例1
【0020】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を迅速スクリーニングするのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0021】
車用ディーゼル油およびバイオディーゼル油を含硫黄分析物として、携帯型のX線装置、標準測定法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。ディーゼル油の硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表1に示すとおりである。
【0022】
【表1】
【0023】
表1からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0024】
実施例2
【0025】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることできる。しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0026】
無鉛ガソリンを取って含硫黄分析物とし、標準測定法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。無鉛ガソリンの硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表2に示すとおりである。
【0027】
【表2】
【0028】
表2からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0029】
実施例3
【0030】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が45ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値45ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0031】
液化石油ガスを取り含硫黄分析物とし、携帯型ガスクロマトグラフ(GC)、標準測定法ASTM D6667により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。液化石油ガスの硫化物含有量は50ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は45ppmwである。測定結果は表3に示すとおりである。
【0032】
【表3】
【0033】
表3からわかるように、金イオン溶液を先ず液化石油ガスと混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより液化石油ガス中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0034】
実施例4
【0035】
すでに硫化物濃度がわかっている天然ガスを一定体積の溶剤に一定時間通し、次いで標準測定方法ASTM D5504により溶剤中の硫化物濃度を確認した。これにより、溶剤中の硫化物濃度、天然ガス中の硫化物濃度、天然ガスを溶剤に通した時間、および溶剤体積間の関数を算出することができる。天然ガスの硫化物含有量は45mg/m
3に規制されている。上記関数から、適切な天然ガスを溶剤に通す時間および溶剤体積を選択すると、硫化物含有量40mg/m
3のしきい値となる。
【0036】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が40mg/m
3の溶剤を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の溶剤と混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値40mg/m
3の溶剤を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0037】
市販の検知管(ガステック社製)で天然ガスの硫化物含有量を直接測定した。また、天然ガスを取り、一定体積の溶剤に一定時間通した後、それを含硫黄分析物とした。標準測定法ASTM D5504により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、検出の結果、沈殿が生じたか否かを観察した。測定結果は表4に示すとおりである。
【0038】
【表4】
【0039】
表4からわかるように、金イオン溶液を先ず天然ガス中の硫化物を吸収した溶剤と混合してから、還元剤を加えて沈殿が発生したか否かを確認し、これにより天然ガス中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確かめる手法は、明らかに迅速性、信頼性があり、かつコストを大幅に下げる等の利点がある。
【0040】
実施例5
【0041】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、金イオン溶液の金イオンを完全に金原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0042】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表5に示すとおりである。
【0043】
【表5】
【0044】
表5からわかるように、金イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.1ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0045】
実施例6
【0046】
市販の硝酸銀を取り、体積の異なる銀イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる銀イオン溶液に対し、銀イオン溶液の銀イオンを完全に銀原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる銀イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい銀イオン溶液から体積の大きい銀イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の銀イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その銀イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記銀イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0047】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記銀イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表6に示すとおりである。
【0048】
【表6】
【0049】
表6からわかるように、銀イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0050】
実施例7
【0051】
市販の硝酸銅を取り、体積の異なる銅イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なる銅イオン溶液に対し、銅イオン溶液の銅イオンを完全に銅原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なる銅イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい銅イオン溶液から体積の大きい銅イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の銅イオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その銅イオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記銅イオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0052】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記銅イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値は0.45ppmwである。測定結果は表7に示すとおりである。
【0053】
【表7】
【0054】
表7からわかるように、銅イオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0055】
実施例8
【0056】
市販の硝酸カドミウムを取り、体積の異なるカドミウムイオン溶液に調製した。硫化合物濃度が0.45ppmwの溶剤を調製した。体積の異なるカドミウムイオン溶液に対し、カドミウムイオン溶液のカドミウムイオンを完全にカドミウム原子に還元することのできる還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウムの水溶液)を調製した。一定体積の溶剤を取り、体積の異なるカドミウムイオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さいカドミウムイオン溶液から体積の大きいカドミウムイオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積のカドミウムイオン溶液と一定体積の溶剤との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、そのカドミウムイオン溶液の体積を、しきい値0.45ppmwの溶剤を検出するのに用いることができる。上記カドミウムイオン溶液の濃度、体積、溶剤の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0057】
硫黄含有量濃度の異なるエタノールとイソプロピルアルコールをそれぞれ調製して含硫黄分析物とした。一定体積の含硫黄分析物を上記カドミウムイオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。上記検出方法で設定したしきい値0.45ppmwである。測定結果は表8に示すとおりである。
【0058】
【表8】
【0059】
表8からわかるように、カドミウムイオン溶液は、含硫黄分析物中の硫化物含有量が極めて低いしきい値(例えば0.45ppmw)を超えているか否かを確認できるものである。
【0060】
実施例9
【0061】
市販の塩化金酸を取り、体積の異なる金イオン溶液に調製した。硫化合物濃度が9.6ppmwの油製品を調製した。体積の異なる金イオン溶液に対し、溶液中の金イオンを金原子に還元することのできる還元剤(例えばクエン酸ナトリウム、塩化鉄、またはアスコルビン酸の水溶液)を調製した。一定体積の油製品を取り、体積の異なる金イオン溶液に加え、混合して混合溶液を作った後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否かを確認した。体積の小さい金イオン溶液から体積の大きい金イオン溶液の順で確認をしていき、特定の体積の金イオン溶液と一定体積の油製品との混合溶液が、還元剤を加えた後に清澄で、沈殿が生じないことを発見したら、その金イオン溶液の体積を、しきい値9.6ppmwの油製品を検出するのに用いることができる。上記金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、および還元剤の使用量は、特定の数値に限定されることはなく、使用者の必要に応じて設計を調整できるという点が理解されよう。
【0062】
車用ディーゼル油を取って含硫黄分析物とし、標準測定方法ASTM D5453により含硫黄分析物の硫化合物含有量を測定した。また、一定体積の含硫黄分析物を上記金イオン溶液に加えて混合した後、還元剤を加え、沈殿が生じたか否か、検出の結果を観察した。ディーゼル油の硫化物含有量は10ppmwに規制されており、上記検出方法で設定したしきい値は9.6ppmwである。測定結果は表9に示すとおりである。
【0063】
【表9】
【0064】
表9からわかるように、金イオン溶液を先ず油製品と混合してから、各種還元剤を加えることで、沈殿の発生の有無により、油製品中の硫化物含有量がしきい値を超えているか否かを確認することもできる。
【0065】
実施例10
【0066】
実施例9の金イオン溶液の濃度、体積、油製品の一定体積、還元剤、および還元剤使用量を選択し、硫黄含有量濃度7ppmwの車用ディーゼル油および硫黄含有量濃度10.6ppmwの車用ディーゼル油に対し、それぞれ硫黄含有量検出を行い、さらに紫外可視分光光度計で検出結果の紫外線吸収スペクトルを分析した。硫黄含有量が7ppmwのとき、硫黄含有量がしきい値(9.6ppmw)より小さいため、肉眼で観察できる沈殿の発生があり、その色はワインレッドで、かつそのUVスペクトルの吸収強度は粒子の沈殿に伴って減少した(
図1参照)。硫黄含有量が10.5ppmwのとき、硫黄含有量はしきい値よりも大きいため、肉眼で観察できる沈殿の発生はなく、反応時間の経過に伴って増加しても、そのUVスペクトルの吸収強度は、粒子の沈殿がないことから、比較的変化はなかった(
図2参照)。上述からわかるように、検出技術は、計器(例えば紫外可視分光光度計)を組み合わせて用い、硫黄含有量濃度値を分析することもでき、より応用が広がる。
【0067】
本開示をいくつかの好ましい実施例により以上のように開示したが、これらは本開示を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、任意の変更や修飾を加えることができる。よって、本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されたものを基準とする。