(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-111601(P2021-111601A)
(43)【公開日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】表面実装型マイクロヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/10 20060101AFI20210705BHJP
H01H 85/18 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
H01H85/10
H01H85/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-32012(P2020-32012)
(22)【出願日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】109100242
(32)【優先日】2020年1月3日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】510101697
【氏名又は名称】功得電子工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Conquer Electoronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】邱 鴻智
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA09
5G502BA08
5G502BB07
5G502BB17
5G502BC04
5G502BD06
5G502BE03
5G502CC04
5G502FF10
(57)【要約】
【課題】消弧効果を持つヒューズエレメントを備えた表面実装型マイクロヒューズを提供する。
【解決手段】ハウジング10内に設けられたヒューズエレメント20を備え、ヒューズエレメント20は、溶断部21と、溶断部21の両端部それぞれに接続された中間部22とを有し、溶断部21と中間部22の接続箇所に隙間24が形成されている。この構成によれば、瞬間的な異常電流によってヒューズエレメント20が溶断された際に、両中間部22の間における溶断箇所間の距離が隙間24の存在によって瞬時に大きくなるため、電気アークの発生を抑制し、回路全体を保護することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジング上に設置され、溶断部、二つの中間部及び二つの導電部を有するヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの溶断部と、中間部の少なくとも一部とを覆うように前記ハウジングの内部空間内に充填された難燃性の第1の封止材と、
を備えた表面実装型マイクロヒューズであって、
前記溶断部は、前記ハウジングの内部空間内に設けられ、前記溶断部の両端部それぞれに、前記中間部が接続され、
各中間部は、前記溶断部と、対応の導電部との間に接続され、
前記溶断部の各端部に一つの第一のセグメントと少なくとも一つの第二のセグメントとが備えられ、
前記溶断部の第一のセグメントは、対応の中間部の端部と接続されておらず、且つ、前記溶断部の第一のセグメントと、対応の中間部の端部との間に隙間が形成され、
前記溶断部の第二のセグメントは、対応の中間部の端部と接続され、
前記導電部は、前記ハウジング外へ延出している、表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項2】
前記ヒューズエレメントの溶断部には、前記第一のセグメントの両側にそれぞれ位置する二つの第二のセグメントが備えられ、
前記溶断部の両端部は、両側の第二のセグメントを介して前記中間部の端部と接続され、
前記溶断部の端部における中央側に位置する第一のセグメントと、前記中間部とは、前記隙間を形成するように離間されている、請求項1に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項3】
前記ハウジングは、周壁と、開口とを有し、
前記周壁は、前記内部空間を囲み、且つ、対向する二つの端部壁を有し、
前記ヒューズエレメントの導電部は、前記ハウジングの開口から前記ハウジング外へ延出し、且つ、それぞれ対応の端部壁に沿って配置されている、請求項1又は2に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項4】
前記ハウジングの開口を封止する耐熱性の第2の封止材を更に備え、前記第2の封止材は、前記第1の封止材と異なる材料からなる、請求項3に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項5】
前記ヒューズエレメントの中間部は、前記溶断部と前記ハウジングの開口との間に間隔が形成されるように、前記ハウジングの端部壁に対して非垂直に配置されている、請求項3に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項6】
前記第1の封止材は、けい砂、防爆砂、又は、難燃剤とエポキシ樹脂の混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項7】
前記難燃剤は、メラミン、水酸化マグネシウム、又は水酸化アルミニウムである請求項6に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項8】
前記第2の封止材は、シリカゲル又はポリイミドである、請求項4に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項9】
前記ヒューズエレメントの表面に、当該ヒューズエレメントより融点が低い電気めっき金属層が形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【請求項10】
前記ヒューズエレメントの溶断部は第1の材料からなり、前記ヒューズエレメントの中間部と導電部は、前記第1の材料と異なる第2の材料からなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の表面実装型マイクロヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロヒューズに関し、特に表面実装型であるマイクロヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
溶断素子とも呼ばれるヒューズは、内部に備えられたヒューズエレメントと、保護対象回路とが直列接続されるように回路に組み込まれて使用されるものであり、回路を流れる電流が異常に大きくなって定格電流を超えた場合、過熱によってヒューズエレメントが溶断することで、回路が遮断されて安全性が確保される。ところで、ヒューズエレメントが溶断したにもかかわらず、溶断箇所に存在する強い電場によって絶縁体である空気層が絶縁破壊されて電気アークが発生することがあり、その場合では、回路の遮断というヒューズの本来の目的が達成できなくなる。この問題を解決するために、電気アークの発生を抑え、また、発生した電気アークを早急に消滅させるための消弧材をヒューズエレメントの周りに配置することが提案されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電場強度が非常に大きい場合では、消弧材による電気アークの消滅作用が追い付かなくなる虞があり、従来のヒューズには、ヒューズエレメントが溶断しても回路を即時に遮断できないという問題が依然としてあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒューズエレメントの構造を改良することにより、ヒューズエレメントそのものに消弧効果を持たせることにある。
【0005】
上記発明の目的を達成するために提供される本発明に係る表面実装型マイクロヒューズは、
内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジング上に設置され、溶断部、二つの中間部及び二つの導電部を有するヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの溶断部と、中間部の少なくとも一部とを覆うように前記ハウジングの内部空間内に充填された難燃性の第1の封止材と、
を備え、
前記溶断部は、前記ハウジングの内部空間内に設けられ、前記溶断部の両端部それぞれに、前記中間部が接続され、
各中間部は、前記溶断部と、対応の導電部との間に接続され、
前記溶断部の各端部に一つの第一のセグメントと少なくとも一つの第二のセグメントとが備えられ、
前記溶断部の第一のセグメントは、対応の中間部の端部と接続されておらず、且つ、前記溶断部の第一のセグメントと、対応の中間部の端部との間に隙間が形成され、
前記溶断部の第二のセグメントは、対応の中間部の端部と接続され、
前記導電部は、前記ハウジング外へ延出している、という点に特徴がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る表面実装型マイクロヒューズでは、ヒューズエレメントの溶断部と中間部の間に隙間を設けることで、ヒューズエレメントの溶断時に、両中間部の間における溶断箇所間の距離を隙間によって瞬間的に増加させることができ、その結果、電気アークの発生を抑制することができる。すなわち、本発明に係る表面実装型マイクロヒューズによれば、ヒューズエレメントそれ自体の構造をもって、電気アークの効果的な抑制、ひいては回路の保護を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの外観斜視図である。
【
図2】本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの別の角度から見た外観斜視図である。
【
図3】本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの斜視断面図である。
【
図4】本発明に係るヒューズエレメントの平面図である。
【
図5】本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの他の実施形態の斜視断面図である。
【
図6】本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの平面視断面図である。
【
図7】ヒューズエレメントが溶断した状態を示す、本発明に係る表面実装型マイクロヒューズの平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の目的を達成するために採用された技術的手段を、図面及び本発明の実施形態を用いて説明する。ここでは、要素間の関係に基づいて本発明に係る構造又は方法を説明するため、図面は簡略化されており、図中の要素は実際の数量、実際の形状、実際のサイズ、実際の縮尺で示されていない。説明の便宜上、図中の要素のサイズが増減されることがあり、実際の状況では構成がより複雑になることがあることに留意されたい。
【0009】
図1から
図3に示すように、本発明に係る表面実装型マイクロヒューズは、ハウジング10、ヒューズエレメント20、第1の封止材30及び第2の封止材40を備える。
【0010】
ハウジング10は、中空であり、内部空間11と 、周壁12と、開口13とを有する。周壁12は、内部空間11を囲んでおり、主壁121と、当該主壁121の対向する二つの縁部に設けられた二つの側部壁122と、当該主壁121の対向する他の二つの縁部に設けられた二つの端部壁123とを有し、二つの側部壁122及び二つの端部壁123は、内部空間11の側方を囲むように配置されている。開口13は、側部壁122と端部壁123の縁部に形成され、内部空間11と連通している。ある実施形態において、ハウジング10はセラミックで構成されている。
【0011】
図3及び
図4に示すように、ヒューズエレメント20は、ハウジング10上に設置されている。ヒューズエレメント20は、溶断部21と、二つの中間部22と、二つの導電部23とを有する。溶断部21は、ハウジング10の内部空間11内に配置され、溶断部21の両端部それぞれに中間部22が接続されている。各中間部22は、少なくとも部分的にハウジング10の内部空間11内に配置され、且つ溶断部21と、対応の導電部23との間に接続されている。溶断部21の各端部に第一のセグメント211と少なくとも一つの第二のセグメント212とが備えられている。溶断部21の第一のセグメント211は、対応の中間部22の端部と接続されておらず、溶断部21の第一のセグメント211と、対応の中間部22の端部との間に隙間24が形成されている。溶断部21の第二のセグメント212は、対応の中間部22の端部と接続されている。ある実施形態において、溶断部21には、第一のセグメント211の両側にそれぞれ位置する二つの第二のセグメント212が備えられている。溶断部21の両端は、両側に位置している第二のセグメント212を介して中間部22の端部と接続され、そして、溶断部21の端部における中央側に位置する第一のセグメント211と、中間部22とは、隙間24を形成するように離間されている。導電部23の一端部は、ハウジング10の開口13からハウジング10外へ延出し、ハウジング10の端部壁に沿って配置されている。ある実施形態において、中間部22は、溶断部21とハウジング10の開口13との間に間隔が形成されるように、傾斜状に、すなわちハウジング10の端部壁123に対して非垂直に配置されている。ある実施形態において、ヒューズエレメント20は一体的に形成されたものであってもよく、または、溶断部21が異なる材料で構成されたものであってもよい。他の実施形態において(
図5参照)、ヒューズエレメント20上に、融点が比較的低い金属層を電気めっきによって形成してもよい。融点が比較的低い金属層を設けることにより、溶断部21は、(金属層が設けられていない場合の)通常の溶断が起こる温度よりも低い温度で溶断するため、溶断温度が低くなってトータルエネルギーが小さくなり、その結果、電場強度が小さくなり、電気アークが発生する確率が低くなる。
【0012】
図3に示すように、第1の封止材30は、難燃性で消弧効果を有するものであり、ヒューズエレメント20の溶断部21と、中間部22の少なくとも一部とを覆うように、ハウジング10内に充填されているある実施形態において、第1の封止材30は、けい砂、防爆砂(explosion−proof sand)、又は、難燃剤とエポキシ樹脂の混合物、などであってよい。難燃剤は、メラミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどであってよい。
【0013】
第2の封止材40は、第1の封止材30を外部から隔離するように、ハウジング10の開口13に配置されている。第2の封止材40は、第1の封止材30と異なる材料からなる耐熱性を有するものである。ある実施形態において、第2の封止材40はシリカゲル、ポリイミド(PI)などであってよい。
【0014】
図6に示すように、電流が正常範囲内にある時、ヒューズエレメント20の溶断部21は溶断されず本来の形状に維持されるため、ヒューズと直列接続された回路に電流が正常に流れ続ける。一方、
図7に示すように、異常に大きくなって定格電流を超え、ヒューズエレメント20の溶断部21が過熱によって溶断した場合、両中間部22の間における溶断箇所間の距離は、溶断部21の溶断によって形成した距離にとどまらず、溶断部21の第一のセグメント211と中間部22との間に存在する隙間24によって瞬間的に増加するため、電気アークが発生する確率が低くなる。すなわち、ヒューズエレメント20それ自体の構造によって電気アークの発生が抑制される。なお、溶断時の瞬間的な高熱によって引き起こされ得る炎による燃焼は、第1の封止材30によって効果的に抑制することができる。
【0015】
このように、本発明に係る表面実装型マイクロヒューズは、過電流によるヒューズエレメント20の溶断時に発生し得る電気アークをまずヒューズエレメント20それ自体の構造によって抑制できるという点に特徴があり、これに加えて消弧効果を持つ第2の封止材40が備えられているため、電気アークの発生を効果的に抑制するという目的を達成でき、回路を保護する効果が得られる。
【0016】
上述した実施形態は例示にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変更および修飾を加えて均等物とすることができる。したがって、上記実施形態に変更、改変および修飾を加えた内容もまた、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0017】
10 ハウジング
11 内部空間
12 周壁
121 主壁
122 側部壁
123 端部壁
13 開口
20 ヒューズエレメント
21 溶断部
211 第一のセグメント
212 第二のセグメント
22 中間部
23 導電部
24 隙間
30 第1の封止材
40 第2の封止材