【解決手段】防爆弁30は、複数の弁部が交わる交点32から底面部10の周縁部側に向けて延びるように形成される補強弁部40を含み、補強弁部40は、第1端部41側から第2端部42側に向けて延びるように形成され、所定の第1弁深さD1を有する第1薄肉部51と、第1薄肉部51よりも第2端部42側に設けられ、所定の第2弁深さD2を有する第2薄肉部52と、第1薄肉部51および第2薄肉部52の間に設けられ、第1弁深さD1および第2弁深さD2よりも弁深さが浅い部分を有する補強部60と、を有するコンデンサ用ケース100とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかるコンデンサ用ケースは、
底面部、前記底面部から立ち上がる側面部、および前記底面部に形成される複数の弁部によって構成される防爆弁、を備えたコンデンサ用ケースであって、
前記防爆弁は、
複数の前記弁部が交わる交点から前記底面部の周縁部側に向けて延びるように形成される補強弁部を含み、
前記補強弁部は、
前記交点側の端部を第1端部とし、前記底面部の周縁部側の端部を第2端部として、
前記第1端部側から前記第2端部側に向けて延びるように形成され、所定の第1弁深さを有する第1薄肉部と、
前記第1薄肉部よりも前記第2端部側に設けられ、所定の第2弁深さを有する第2薄肉部と、
前記第1薄肉部および前記第2薄肉部の間に設けられ、前記第1弁深さおよび前記第2弁深さよりも弁深さが浅い部分を有する補強部と、
を有する(第1の構成)。
【0013】
上記構成によれば、補強部は、第1薄肉部および第2薄肉部の間に設けられているため、弁作動圧力は主に第1薄肉部および第2薄肉部の弁深さによって設定され、補強部を設けることによる弁作動圧力の上昇は抑制される。また、開弁時には、複数の弁部が交わる交点側から開裂するため、補強弁部は第1薄肉部の第1端部側から開裂していくが、補強部は弁深さが浅く(肉厚が厚く)強度が高いため、補強部によって開裂の進行を抑制することができる。このため、防爆弁を所定の弁作動圧力に設定できるとともに、防爆弁の開弁時において、防爆弁が大きく開裂することによるコンデンサ素子の突出を抑制することができる。
【0014】
上記第1の構成において、
前記補強弁部は、
前記第1薄肉部の長さが、前記補強弁部の前記第1端部から前記第2端部における長さの35%から60%であってもよい(第2の構成)。
【0015】
上記構成によれば、第1端部に近い第1薄肉部の長さを十分長くしていることにより、補強部を設けることによる弁作動圧力の上昇を抑制することができる。
【0016】
上記第2の構成において、
前記補強弁部は、
前記補強部の長さが、前記補強弁部の前記第1端部から前記第2端部における長さの5%から50%であり、
前記補強部の長さと前記第1薄肉部の長さとの和が、前記補強弁部の前記第1端部から前記第2端部における長さの95%以下であってもよい(第3の構成)。
【0017】
上記構成によれば、補強部を設けることによる弁作動圧力の上昇を抑制しながら、補強部に強度を持たせることができ、開弁時には、開裂の進行を抑制することができる。
【0018】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記補強弁部は、
前記補強部における弁深さが最も浅い部分と最も深い部分との差を補強部高さとして、
前記補強部高さは、前記第2薄肉部における弁深さの25%以上であってもよい(第4の構成)。
【0019】
上記構成によれば、補強部に強度を持たせることができ、開弁時には、開裂の進行を抑制することできる。
【0020】
上記第1から第4のいずれかの構成において、
前記補強部は、
前記第1端部側に形成されるとともに、前記第1薄肉部に対して傾斜するように形成されている第1傾斜面と、
前記第2端部側に形成されるとともに、前記第2薄肉部に対して傾斜するように形成されている第2傾斜面と、
を有してもよい(第5の構成)。
【0021】
上記構成によれば、補強部に第1傾斜面と第2傾斜面を形成することにより、補強部による弁強度の上昇を抑えることができるため、弁作動圧力の上昇を抑制することができる。
【0022】
上記第5の構成において、
前記補強部は、
前記補強部における弁深さが最も浅い部分である頂部を有し、
前記第1傾斜面、および前記第2傾斜面は、前記頂部で実質的に接していてもよい(第6の構成)。
【0023】
上記構成によれば、補強部は、第1端部側と第2端部側にそれぞれ第1傾斜面と第2傾斜面を有し、断面形状が略三角形状となる。このため、補強部による弁強度の上昇を抑えることができ、弁作動圧力の上昇を抑制することができる。
【0024】
上記第5または第6の構成において、
前記第1薄肉部における前記第1弁深さと、前記第2薄肉部における前記第2弁深さとが実質的に同一であり、
前記第1薄肉部に対する前記第1傾斜面の傾斜角と、前記第2薄肉部に対する前記第2傾斜面の傾斜角とが実質的に同一であってもよい(第7の構成)。
【0025】
上記構成によれば、補強部は、第1端部側と第2端部側にそれぞれ第1傾斜面と第2傾斜面を有し、断面形状が略三角形状であり、第1薄肉部と第2薄肉部の弁深さが実施的に同一となる。このため、補強部による弁強度の上昇を抑えることができ、弁作動圧力の上昇を抑制することができる。
【0026】
上記第1から第7のいずれかの構成において、
前記防爆弁は、複数の補強弁部を有しており、
前記各補強弁部の前記補強部は、
前記交点を中心とした仮想の同一円周上に配置されていてもよい(第8の構成)。
【0027】
上記構成によれば、各補強弁部の補強部は、交点を中心とした仮想の同一円周上に配置されている。補強部がバランスよく配置されることにより、開弁時における開裂の進行を抑制しやすくなる。
【0028】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係るコンデンサ用ケース100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0029】
以下の図では、矢印Uはコンデンサ用ケース100の上方向を示し、矢印Dは下方向を示す。
【0030】
図1は、本発明の実施形態1に係るコンデンサ用ケース100の平面図である。
図1に示すように、コンデンサ用ケース100は、底面部10、側面部20、および防爆弁30を備えている。
【0032】
側面部20は、底面部10の周縁部から立ち上がるように形成されている。底面部10および側面部20により、コンデンサ素子を収容する収容空間ARが形成されている。
【0033】
防爆弁30は、底面部10に形成されている。防爆弁30は、底面部10の収容空間AR側に形成されている。言い換えると、防爆弁30は、底面部10の上面に形成されている。
【0034】
コンデンサ用ケース100は、アルミニウム素材に対する絞り成形手段によって成形されている。本実施形態では、アルミニウム素材として、一方の表面にPET(polyethylene terephthalate)をコーティングしたアルミニウム板状材を用いている。絞り成形手段によって、PETコーティング面が外側となるように、コンデンサ用ケース100の底面部10および側面部20が成形されている。防爆弁30は、底面部10および側面部20が成形された後、別工程により底面部10の上面に形成される。なお、アルミニウム素材として、表面と裏面の両方にPET等でコーティングされたアルミニウム板状材を用いてもよく、表面がPET等でコーティングされていないアルミニウム板状材を用いてもよい。
【0035】
また、成型手段は絞り成型手段に限定されない。コンデンサ用ケース100の底面部10および側面部20を成形する手段として、インパクト成型手段など他の成型手段を用いてもよい。
【0036】
本実施形態では、防爆弁30を底面部10の上面に形成したが、防爆弁30を底面部10の下面に形成してもよい。
【0037】
防爆弁30は、第1弁部40および第2弁部80を有している。第1弁部40および第2弁部80は、それぞれ底面部10の上面に形成される凹状の溝によって構成されている。第1弁部40は、本発明の補強弁部に相当し、第2弁部80は、第1弁部40とは異なる構成を有する弁部である。
【0038】
本実施形態では、第1弁部40が2本形成され、第2弁部80が1本形成されている。第1弁部40および第2弁部80は、交点32で交わっており、いずれも交点32から底面部10の周縁部側に向けて延びるように形成されている。第1弁部40および第2弁部80は、長さが等しく、それぞれ内角が120度となるように放射状に配置されている。なお、防爆弁30に形成される複数の第1弁部40の長さは、同一でなくてもよく、複数の第1弁部40の長さを相互に異なる長さとしてもよい。
【0039】
本実施形態では、交点32は、底面部10の中心に位置しているが、交点32の位置は底面部10の中心に限定されない。また、本実施形態では、第1弁部40および第2弁部80がすべて交点32で交わっているが、すべての弁部が交点32で交わっていなくてもよく、一部の弁部が交点32で交わっていなくてもよい。なお、弁部が交わっている状態は、複数の弁部が交差している状態だけでなく、複数の弁部の端部が連続している状態も含んでいる。本実施形態では、第1弁部40および第2弁部80の端部が交点32で連続している状態である。
【0040】
第1弁部40の長さL1は、特に限定されないが、底面部10の半径Rの60%から90%であることが好ましい。本実施形態では、第1弁部40の長さL1は、底面部10の半径Rの約70%である。
【0041】
第1弁部40は、凹部の内側に第1薄肉部51、第2薄肉部52、および補強部60が形成されている。第1薄肉部51、第2薄肉部52、および補強部60については後に詳細に説明する。
【0042】
図2は、
図1のA―A線における断面図であり、第1弁部40の断面形状が示されている。
図2に示すように、第1弁部40は、第1薄肉部51、第2薄肉部52、および補強部60を有している。第1弁部40の端部のうち、交点32側の端部を第1端部41とし、底面部10の周縁部側の端部を第2端部42とする。交点32は、底面部10の中心線C上に位置している。
【0043】
第1薄肉部51は、第1弁部40の第1端部41側において、第1端部41側から第2端部42側に向けて延びるように形成されている。第1薄肉部51は、交点32から補強部60までの部分である。第1薄肉部51は、長さLA1を有し、所定の第1弁深さD1を有している。第1弁深さD1は、弁部が形成されていない部分における底面部10の肉厚をTとし、第1薄肉部51の肉厚をT1とすると、底面部10の肉厚Tと第1薄肉部51の肉厚T1との差である。
【0044】
第2薄肉部52は、第1薄肉部51よりも第2端部42側において、第1端部41側から第2端部42側に向けて延びるように形成されている。第2薄肉部52は、補強部60から第2端部42までの部分である。第2薄肉部52は、長さLA2を有し、所定の第2弁深さD2を有している。第2弁深さD2は、第2薄肉部52の肉厚をT2とすると、底面部10の肉厚Tと第2薄肉部52の肉厚T2との差である。第2薄肉部52の第2端部42側は、弁深さが漸次浅くなるように形成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、第1薄肉部51の第1弁深さD1と、第2薄肉部52の第2弁深さD2は、同一に設定されている。言い換えると、第1薄肉部51の肉厚T1と、第2薄肉部52の肉厚T2は、同一に設定されている。
【0046】
補強部60は、第1薄肉部51および第2薄肉部52の間に設けられている。補強部60は、防爆弁30の開弁時において、第1弁部40の開裂の進行を抑制するために設けられている。補強部60は、長さLA3を有している。
【0047】
補強部60は、第1薄肉部51の第1弁深さD1、および第2薄肉部52の第2弁深さD2よりも弁深さが浅い部分を有している。言い換えると、補強部60は、第1薄肉部51および第2薄肉部52よりも肉厚を厚くした部分を有している。本実施形態の補強部60の断面形状は凸状であり、頂部66を有している。補強部60は、頂部66において、弁深さが最も浅くなっており、補強部60の両端部において、弁深さが最も深くなっている。補強部60の両端部とは、補強部60が第1薄肉部51および第2薄肉部52と接する位置である。補強部60における弁深さが最も浅い部分と最も深い部分との差を補強部高さTA3とする。
【0048】
また、防爆弁30に設けられている各第1弁部40の補強部60の位置は同一に限定されないが、本実施形態では、各第1弁部40の補強部60は、交点32を中心とした仮想の同一円周上に配置されている(
図1参照)。
【0049】
ここで、第1薄肉部51の長さLA1は、第1弁部40の長さL1の35%から60%であることが好ましく、40%から55%であることがより好ましい。
【0050】
第1薄肉部51の長さLA1が35%未満であると、補強部60が交点32に近くなり、第1弁部40の強度に影響を及ぼして弁作動圧力が上昇する場合がある。また、第1薄肉部51の長さLA1が60%を超えると、補強部60の効果が小さくなり、防爆弁30の開弁時において、第1弁部40の開裂が大きくなる場合がある。本実施形態では、第1薄肉部51の長さLA1は、第1弁部40の長さL1の約50%とされている。
【0051】
補強部60の長さLA3は、第1弁部40の長さL1の5%から50%であることが好ましく、5%から35%であることがより好ましく、5%から25%であることがさらに好ましい。
【0052】
補強部60の長さLA3が5%未満であると、補強部60の強度が小さくなり、防爆弁30の開弁時において、第1弁部40の開裂を補強部60で止めにくくなる。また、補強部60の長さLA3が50%を超えると、補強部60の強度が大きくなり、第1弁部40の強度が高くなって弁作動圧力が上昇するおそれがある。本実施形態では、補強部60の長さLA3は、第1弁部40の長さL1の約20%とされている。
【0053】
なお、補強部60の長さLA3と第1薄肉部51の長さLA1との和は、第2薄肉部52の長さLA2を確保するため、第1弁部40の長さL1の95%以下に設定されている。
【0054】
また、補強部60における補強部高さTA3は、第2薄肉部52における第2弁深さD2の25%以上であることが好ましい。
【0055】
補強部高さTA3が第2弁深さD2の25%未満であると、補強部高さTA3が第1薄肉部51の肉厚T1に対して相対的に低くなって補強部60の強度が相対的に小さくなり、防爆弁30の開弁時において、第1弁部40の開裂の進行を抑制しにくくなる。本実施形態では、補強部高さTA3が第2弁深さD2の約50%とされている。
【0056】
次に
図3を用いて、補強部60の形状について詳細に説明する。
図3は、第1弁部40の補強部60付近の断面図である。
図3に示すように、補強部60は、第1傾斜面61、第2傾斜面62を有している。
【0057】
第1傾斜面61は、第1端部41側に形成されるとともに、第1薄肉部51に対して傾斜するように形成されている面である。第2傾斜面62は、第2端部42側に形成されるとともに、第2薄肉部52に対して傾斜するように形成されている面である。第1傾斜面61および第2傾斜面62は、頂部66で接している。なお、第1傾斜面61および第2傾斜面62は連続部分が円弧状になっているなど僅かに離れていてもよく、実質的に頂部66で接していてもよい。
【0058】
第1薄肉部51に対する第1傾斜面61の傾斜角をθ1とし、第2薄肉部52に対する第2傾斜面62の傾斜角をθ2とすると、本実施形態では傾斜角θ1と傾斜角θ2とが実質的に同一である。なお、傾斜角θ1と傾斜角θ2は同一でなくてもよい。傾斜角θ1と傾斜角θ2の角度は、20度から90度であることが好ましく、30度から60度がより好ましい。
【0059】
なお、補強部60の断面形状は、本実施形態では、第1傾斜面61および第2傾斜面62が頂部66で接する略三角形状としたが、これに限定されない。例えば、断面形状は台形や長方形であってもよく、補強部の上部を円弧状に湾曲させた形状としてもよい。
【0060】
以上説明した本実施形態に係るコンデンサ用ケース100によれば、補強部60は、第1薄肉部51および第2薄肉部52の間に設けられているため、弁作動圧力は主に第1薄肉部51および第2薄肉部52の弁深さによって設定され、補強部60を設けることによる弁作動圧力の上昇は抑制される。また、開弁時には、複数の弁部が交わる交点32側から開裂するため、第1弁部40は第1薄肉部51の第1端部41側から開裂していくが、補強部60は弁深さが浅く(肉厚が厚く)強度が高いため、補強部60によって開裂の進行を抑制することができる。このため、防爆弁30を所定の弁作動圧力に設定できるとともに、防爆弁30の開弁時において、防爆弁30が大きく開裂することによるコンデンサ素子の突出を抑制することができる。
【0061】
[変形例]
本発明に係るコンデンサ用ケースは、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、底面部の形状や寸法は、本実施形態の形状に限定されない。底面部は円形以外の形状であってもよい。
【0062】
本実施形態では、防爆弁30を2本の第1弁部40と1本の第2弁部80で構成したが、これに限定されない。例えば、防爆弁を3本の第1弁部40で構成し、第2弁部80を設けないようにしてもよい。
【0063】
図4から
図6は、コンデンサ用ケースの変形例を示す平面図である。例えば
図4、
図5に示すように、防爆弁を4本以上の溝状の凹部で構成してもよい。
図4では、コンデンサ用ケース100Aの防爆弁30Aを4本の第1弁部40で構成している。
図5では、コンデンサ用ケース100Bの防爆弁30Bを2本の第1弁部40、および2本の第2弁部80で構成している。
【0064】
図6に示すコンデンサ用ケース100Cの防爆弁30Cでは、第1弁部40に第3弁部81が交差している。第3弁部81の弁深さは、第1弁部40の弁深さ(第2薄肉部52の弁深さD2)よりも浅く形成されている。このように、第1弁部40の第1薄肉部51および第2薄肉部52に補強部60以外の肉厚部が形成されていてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。