【解決手段】半導体装置は、トランジスタ素子と、複数の入力ワイヤと、複数の出力ワイヤと、を備える。トランジスタ素子は、一辺に沿って複数配置された入力パッドと、一辺に対向する他辺に沿って複数配置された出力パッドとを有する。複数の入力ワイヤは、入力パッドそれぞれに接続されている。複数の出力ワイヤは、出力パッドそれぞれに接続され、複数の入力ワイヤより長いワイヤの長さを有する。隣接する入力ワイヤは互いに平行に配置され、隣接する出力ワイヤは互いに非平行に配置される。
前記少なくとも二つの出力パッドから延びる前記出力ワイヤの一端同士は、前記金属パターンと接続する接続ポイントにおいて互いに接触している、請求項2に記載の半導体装置。
前記入力分岐回路基板は、誘電体基板の上面に前記分岐パターンを有し、前記誘電体基板の裏面が前記ベースと接続され、前記分岐パターンと前記ベースとの間に容量成分を有する、請求項8に記載の半導体装置。
前記出力結合回路基板は、誘電体基板の上面に前記結合パターンを有し、前記誘電体基板の裏面が前記ベースと接続され、前記結合パターンと前記ベースとの間に容量成分を有する、請求項8に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
一実施形態に係る半導体装置は、トランジスタ素子と、複数の入力ワイヤと、複数の出力ワイヤと、を備える。トランジスタ素子は、一辺に沿って複数配置された入力パッドと、一辺に対向する他辺に沿って複数配置された出力パッドとを有する。複数の入力ワイヤは、入力パッドそれぞれに接続されている。複数の出力ワイヤは、出力パッドそれぞれに接続され、複数の入力ワイヤより長いワイヤの長さを有する。隣接する入力ワイヤは互いに平行に配置され、隣接する出力ワイヤは互いに非平行に配置される。
【0011】
この半導体装置では、隣接する出力ワイヤ同士が非平行とされている。各出力ワイヤに生じる相互インダクタンスは、隣接する出力ワイヤが互いに平行である場合に最も大きく、隣接する出力ワイヤが互いに非平行である場合に低減される。従って、上記の半導体装置によれば、各出力ワイヤに生じる相互インダクタンスを低減し、出力ワイヤ間におけるインダクタンスのばらつきを低減することができる。
【0012】
上記の半導体装置は、金属パターンを有する出力回路基板をさらに備えてもよい。金属パターンは、少なくとも二つの出力パッドに出力ワイヤを介して接続されている。少なくとも二つの出力パッドに金属パターンを接続する隣接する出力ワイヤ同士の間隔は、出力パッド側よりも金属パターン側で小さい。例えばこのような構成により、隣接する出力ワイヤを互いに非平行とすることが容易にできる。
【0013】
上記の半導体装置において、少なくとも二つの出力パッドから延びる出力ワイヤの一端同士は、金属パターンと接続する接続ポイントにおいて互いに接触してもよい。例えばこのような構成により、隣接する出力ワイヤを互いに非平行とすることが容易にできる。
【0014】
上記の半導体装置において、少なくとも二つの出力パッドから延びる出力ワイヤ同士の成す角が45°以上55°以下であってもよい。シミュレーション結果によれば、この場合に、出力ワイヤ間におけるインダクタンスのばらつきをより効果的に低減することができる。
【0015】
上記の半導体装置は、別の金属パターンを有する入力回路基板をさらに備えてもよい。別の金属パターンは、少なくとも二つの入力パッドに入力ワイヤを介して接続される。これにより、トランジスタ素子の入力パッドに入力する入力信号に対し、入力回路基板によるインピーダンス整合が可能となる。
【0016】
上記の半導体装置は、入力回路基板と、ベースと、枠体と、入力端子と、出力端子と、をさらに備えてもよい。入力回路基板は、別の金属パターンを有する。ベースは、トランジスタ素子と、入力回路基板と、出力回路基板と、を搭載する。枠体は、ベース上に設けられ、トランジスタ素子と、入力回路基板と、出力回路基板とを囲む。入力端子は、枠体に設けられ、入力回路基板と接続する。出力端子は、枠体に設けられ、出力回路基板と接続する。入力回路基板の別の金属パターンは、少なくとも二つの入力パッドに入力ワイヤを介して接続されている。これにより、半導体装置は高周波デバイスを構成することができる。
【0017】
上記の半導体装置において、トランジスタ素子と、入力回路基板と、出力回路基板とは、それぞれ複数設けられてもよい。これにより、トランジスタ素子が複数設けられることができ、半導体装置は高出力の高周波デバイスを構成することができる。
【0018】
上記の半導体装置は、入力分岐回路基板と、出力結合回路基板と、をさらに備えてもよい。入力分岐回路基板は、一端が入力端子と接続され、他端が複数の入力回路基板と接続されている分岐パターンを有する。出力結合回路基板は、一端が複数の出力回路基板と接続され、他端が出力端子と接続されている結合パターンを有する。入力分岐回路基板は、入力信号を同レベルの信号に分配することができる。出力結合回路基板は、高出力の出力信号を結合して出力することができる。
【0019】
上記の半導体装置は、トランジスタ素子と、出力回路基板と、が搭載されるベースをさらに備えてもよい。出力回路基板は、誘電体基板の上面に金属パターンを有し、誘電体基板の裏面がベースと接続され、金属パターンとベースとの間に容量成分を有してもよい。出力回路基板は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、出力回路基板に誘電体基板を用いることによって、出力回路基板の小型化が可能になる。
【0020】
上記の半導体装置は、トランジスタ素子と、入力回路基板と、が搭載されるベースをさらに備えてもよい。入力回路基板は、誘電体基板の上面に別の金属パターンを有し、誘電体基板の裏面がベースと接続され、別の金属パターンとベースとの間に容量成分を有してもよい。入力回路基板は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、入力回路基板に誘電体基板を用いることによって、入力回路基板の小型化が可能になる。
【0021】
上記の半導体装置において、入力分岐回路基板は、誘電体基板の上面に分岐パターンを有し、誘電体基板の裏面がベースと接続され、分岐パターンとベースとの間に容量成分を有してもよい。入力分岐回路基板は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、入力分岐回路基板に誘電体基板を用いることによって、入力分岐回路基板の小型化が可能になる。
【0022】
上記の半導体装置において、出力結合回路基板は、誘電体基板の上面に結合パターンを有し、誘電体基板の裏面がベースと接続され、結合パターンとベースとの間に容量成分を有してもよい。出力結合回路基板は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、出力結合回路基板に誘電体基板を用いることによって、出力結合回路基板の小型化が可能になる。
【0023】
上記の半導体装置において、出力パッドはドレインパッドであってもよい。
【0024】
上記の半導体装置において、入力パッドはゲートパッドであってもよい。
【0025】
上記の半導体装置において、トランジスタ素子の半導体部分は窒化ガリウム系半導体からなってもよい。
[本発明の実施形態の詳細]
【0026】
本開示の半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、一実施形態に係る半導体装置1の構成を示す平面図である。
図2は、半導体装置1の要部を拡大して示す平面図である。
図3は、トランジスタ素子5を拡大して示す図である。
図4は、
図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。
図1及び
図2では、理解の容易の為、パッケージ3のリッド(蓋)33の図示が省略されている。本実施形態に係る半導体装置1は、高周波信号を入力し、その高周波信号を増幅して出力する。
図1ないし
図4に示すように、半導体装置1は、パッケージ3、2つのトランジスタ素子5、入力分岐回路基板6,7、2つの入力回路基板8、2つの出力回路基板9、及び出力結合回路基板10,11を備える。
【0028】
パッケージ3は、金属製のベース31と、ベース31上に設けられた絶縁性の枠体32と、リッド33(
図4を参照)とを有する。ベース31は、トランジスタ素子5と、入力分岐回路基板6,7と、入力回路基板8と、出力回路基板9と、出力結合回路基板10,11と、を板面31d上に搭載する。ベース31は、板状の部材であって、方向D1を長手方向とする略長方形状といった平面形状を有する。方向D1において対向する一対の端辺31a,31bには、半導体装置1をネジ止めによって固定するための半円形のネジ受け31cがそれぞれ2カ所ずつ形成されている。ベース31は、基準電位に規定された導電性のマウント部材にネジ止めによって固定されることにより、基準電位に規定される。
【0029】
枠体32は、略長方形の枠状といった閉じた平面形状を有し、例えば多層セラミック材で構成されている。枠体32は、ベース31の板面31d上に板面31dの法線方向を高さ方向として固着されている。枠体32は、トランジスタ素子5と、入力分岐回路基板6,7と、入力回路基板8と、出力回路基板9と、出力結合回路基板10,11と、を囲む。枠体32は、ベース31上において、トランジスタ素子5及び基板6〜11を収容するための空間36を区画する。
図4に示すように、枠体32の上面(ベース31とは反対側の面)は、リッド33によって覆われ、これにより空間36は気密に封止される。リッド33は、例えばセラミック製または金属製である。枠体32は、方向D1において互いに対向する部分32a,32bと、方向D1と交差する(例えば直交する)方向D2において互いに対向する部分32c,32dとを含む。部分32a,32bは方向D2に沿って延在し、部分32c,32dは方向D1に沿って延在している。
【0030】
枠体32には、一つの入力端子34と、一つの出力端子35とが設けられている。入力端子34及び出力端子35は、セラミック材の層上に設けられた金属膜からなり、それぞれ方向D2に沿って伸びている。入力端子34は、方向D1における枠体32の部分32cの中央部を方向D2に沿って貫通し、その一部はパッケージ3の外側に露出している。パッケージ3の外側に露出した入力端子34の端部には、方向D2に沿って延びる図示しないリードが導電接合される。入力端子34は、高周波信号を半導体装置1の外部からリードを介して入力する。入力端子34に入力される高周波信号は、マルチキャリア伝送方式に基づく信号である。入力端子34に入力される高周波信号は、キャリア信号の周波数が互いに異なる複数の信号を重畳してなる。キャリア信号の周波数帯域は、例えば500MHz以下である。出力端子35は、方向D1における枠体32の部分32dの中央部を方向D2に沿って貫通し、その一部はパッケージ3の外側に露出している。パッケージ3の外側に露出した出力端子35の端部には、方向D2に沿って延びる図示しない別のリードが導電接合される。出力端子35は、増幅後の高周波信号を、別のリードを介して半導体装置1の外部へ出力する。
【0031】
トランジスタ素子5は、焼結されたAgを含む金属21を介してベース31に導電接合され、これによりベース31に固定されている。入力回路基板8及び出力回路基板9は、トランジスタ素子5と隣接する。入力回路基板8及び出力回路基板9もまた、焼結されたAgを含む金属21を介してベース31に導電接合され、これによりベース31に固定されている。金属21は、Agを含む焼結型導電ペーストが加熱されて溶剤が気化し、焼結したものである。枠体32に近い入力分岐回路基板6,7及び出力結合回路基板10,11は、AuSn共晶はんだ22を介してベース31に導電接合され、これによりベース31に固定されている。
【0032】
図2を参照しつつ、本実施形態の半導体装置1の内部構成について詳細に説明する。前述したように、半導体装置1は、2つのトランジスタ素子5を備える。1つのトランジスタ素子5あたりの出力は例えば30Wであり、全体の出力は例えば60Wである。各トランジスタ素子5は、複数のトランジスタを内蔵する。これらのトランジスタは例えば電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)である。各トランジスタ素子5は、複数本のゲートフィンガ、複数本のソースフィンガ、及び複数本のドレインフィンガを有する。方向D1において、ソースフィンガとドレインフィンガとは交互に並んでおり、各ソースフィンガとドレインフィンガとの間にゲートフィンガが配置されている。
図3に示すように、各トランジスタ素子5は、入力端子34側の一辺5dと、その一辺5dと対向する出力端子35側の他辺5bとを有する。各トランジスタ素子5の入力端子34側の一辺5dには複数のゲートパッド(入力パッド)50及び複数のソースパッド(不図示)が一辺5dに沿って交互に並んでいる。各トランジスタ素子5の出力端子35側の他辺5bには複数のドレインパッド(出力パッド)51が他辺5bに沿って並んでいる。各ソースパッドは、トランジスタ素子5を厚さ方向に貫通するビアホール及び金属21(
図4を参照)を介してベース31と電気的に接続され、基準電位とされている。各トランジスタ素子5は、各ゲートパッド50に入力された高周波信号を増幅し、増幅後の高周波信号を各ドレインパッド51から出力する。
【0033】
トランジスタ素子5の半導体部分は、例えばGaAs基板を備えるGaAs系化合物半導体、または窒化ガリウム系半導体からなる。トランジスタ素子5の方向D1の長さは例えば1mmであり、方向D2の長さは例えば6mmである。トランジスタ素子5の厚さは例えば0.1mmである。
【0034】
入力分岐回路基板6,7は、方向D2に沿って入力端子34及びトランジスタ素子5と並んで配置され、入力端子34とトランジスタ素子5との間に位置する。入力分岐回路基板6は、例えばセラミック製の誘電体基板61と、誘電体基板61の上面に設けられた分岐回路62とを有する。同様に、入力分岐回路基板7は、例えばセラミック製の誘電体基板71と、誘電体基板71の上面に設けられた分岐回路72とを有する。一例では、誘電体基板61,71はAl
2O
3(アルミナ)製である。誘電体基板61,71の平面形状は例えば長方形であり、一方の長辺は入力端子34と対向しており、他方の長辺は入力回路基板8を介してトランジスタ素子5と対向している。誘電体基板61の長辺の長さは例えば7.8mmであり、短辺の長さは例えば2.0mmである。誘電体基板71の長辺の長さは例えば12.5mmであり、短辺の長さは例えば3.8mmである。誘電体基板61,71の厚さは例えば0.3mmから0.5mm程度である。誘電体基板61,71の裏面には図示しない金属膜が固着しており、その金属膜がAuSn共晶はんだ22を介してベース31と接続される。誘電体基板71の一方の短辺は枠体32の部分32aの近傍に位置しており、誘電体基板71の他方の短辺は枠体32の部分32bの近傍に位置している。すなわち、誘電体基板71は、方向D1において枠体32の一端近傍から他端近傍にわたって延在している。
【0035】
分岐回路62及び72は、入力回路基板8の入力回路に対する分岐回路である。分岐回路62は、誘電体基板61の上面に設けられた分岐パターン63を含む。分岐パターン63の一端は、ワイヤ2aを介して入力端子34と電気的に接続されている。分岐パターン63は、ワイヤ2aとの接続点を起点として二方に分岐する。分岐回路72は、誘電体基板71の上面に設けられた2つの分岐パターン73を含む。各分岐パターン73は、分岐パターン63の分岐した2つの端部それぞれと、ワイヤ2bを介して電気的に接続されている。各分岐パターン73は、ワイヤ2bとの接続点を起点として分岐を繰り返し、最終的にそれぞれ4個の金属パッド73aに至る。計8個の金属パッド73aは、誘電体基板71のトランジスタ素子5側の長辺に沿って並んで配列されている。互いに隣り合う金属パッド73a同士は、膜抵抗74を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、トランジスタ素子5の複数のゲートパッド50間のアイソレーションを確保しつつ、入力端子34から見た、トランジスタ素子5の入力インピーダンスの整合を図っている。膜抵抗74の抵抗値は例えば50Ωである。
【0036】
2つの入力回路基板8は、方向D2において入力分岐回路基板7とトランジスタ素子5との間に配置され、方向D1に沿って並んでいる。これらの入力回路基板8は、トランジスタ素子5に対する入力回路(入力マッチング回路)を含む。各入力回路基板8は、誘電体基板81を有する。各入力回路基板8は、例えばダイキャパシタであり、誘電体基板81の上面に一又は複数(本実施形態では4つ)の金属パターン82を有する。金属パターン82の総数は、例えば金属パッド73aと同数とされる。複数の金属パターン82は、方向D1に沿って一列に配列されている。各金属パターン82は、ワイヤ2cを介して、対応する金属パッド73aと電気的に接続されるとともに、少なくとも二つのワイヤ2d(入力ワイヤ)を介して、トランジスタ素子5の対応する少なくとも二つのゲートパッド50と電気的に接続されている。ワイヤ2dの本数は1つの金属パターン82につき例えば2本(計16本)である。隣接するワイヤ2dは、互いに平行に配置される。1つの金属パターン82に接続されるゲートパッド50の個数は例えば2つである。入力回路基板8の裏面には図示しない金属膜が固着しており、その金属膜が金属21を介してベース31と接続される。
【0037】
入力回路基板8においては、ワイヤ2c及び2dによるインダクタンス成分が存在する。これらのインダクタンス成分の間のノード、すなわち金属パターン82と、基準電位点すなわちベース31との間には、容量成分(キャパシタンス)が存在する。これらのインダクタンス成分とキャパシタンスとによって、T型フィルタ回路が構成される。入力回路基板8は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、トランジスタ素子5においてゲートパッド50からトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)と異なる。入力回路基板8は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路により入力端子34からパッケージ3内部を見込んだ50Ωに変換する。
【0038】
入力回路基板8の誘電体基板81は、例えばAlNからなる。入力回路基板8の方向D1の長さは例えば5.4mmであり、方向D2の長さは例えば2.0mmである。入力回路基板8の厚さは例えば0.2mmから0.3mm程度である。入力回路基板8のダイキャパシタの容量は、例えば1つの金属パターン82につき30pFである。
【0039】
2つの出力回路基板9は、方向D2においてトランジスタ素子5と出力結合回路基板10,11との間に配置され、方向D1に沿って並んでいる。これらの出力回路基板9は、トランジスタ素子5に対する出力整合回路(出力マッチング回路)を含む。出力回路基板9は、入力回路基板8と同様に、例えば平行平板型キャパシタ(ダイキャパシタ)である。各出力回路基板9は、誘電体基板91を有する。各出力回路基板9は、誘電体基板91の上面に、一又は複数(本実施形態では4つ)の金属パターン92を有する。金属パターン92の総数は、例えば入力回路基板8の金属パターン82と同数とされる。複数の金属パターン92は、方向D1に沿って一列に配列されている。各金属パターン92は、二以上のワイヤ2e(出力ワイヤ)を介して、トランジスタ素子5の対応する少なくとも二つのドレインパッド51と電気的に接続されるとともに、ワイヤ2fを介して、出力結合回路基板10の対応する金属パッド103a(後述)と電気的に接続されている。ワイヤ2eの本数は1つの金属パターン92につき例えば2本(計16本)である。出力回路基板9の裏面には図示しない金属膜が固着しており、その金属膜が金属21を介してベース31と接続される。
【0040】
出力回路基板9においても、ワイヤ2e及び2fによるインダクタンス成分が存在する。これらのインダクタンス成分の間のノードすなわち金属パターン92と基準電位点すなわちベース31との間には、容量成分(キャパシタンス)が存在する。これらのインダクタンス成分とキャパシタンスとによって、T型フィルタ回路が構成される。出力回路基板9は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、トランジスタ素子5においてドレインパッド51からトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)と異なり、大概は50Ωより小さい値である。出力回路基板9は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路により出力端子35からパッケージ3内部を見込んだ50Ωに変換する。
【0041】
出力回路基板9の誘電体基板91は、例えばAlNからなる。出力回路基板9の方向D1の長さは例えば5.4mmであり、方向D2の長さは例えば2.0mmである。出力回路基板9の厚さは例えば0.2mmから0.3mm程度である。出力回路基板9のダイキャパシタの容量は、例えば1つの金属パターン92につき20pFである。
【0042】
出力結合回路基板10,11は、方向D2に沿ってトランジスタ素子5及び出力端子35と並んで配置され、トランジスタ素子5と出力端子35との間に位置する。出力結合回路基板10は、例えばセラミック製の誘電体基板101と、誘電体基板101の上面に設けられた合波回路102とを有する。同様に、出力結合回路基板11は、例えばセラミック製の誘電体基板111と、誘電体基板111の上面に設けられた合波回路112とを有する。一例では、誘電体基板101,111はAl
2O
3(アルミナ)製である。誘電体基板101,111の平面形状は例えば長方形であり、一方の長辺は出力回路基板9を介してトランジスタ素子5と対向しており、他方の長辺は出力端子35と対向している。誘電体基板101の長辺の長さは例えば12.5mmであり、短辺の長さは例えば4.5mmである。誘電体基板111の長辺の長さは例えば7.8mmであり、短辺の長さは例えば2.0mmである。誘電体基板101,111の厚さは例えば0.3mmから0.5mm程度である。誘電体基板101,111の裏面には図示しない金属膜が固着しており、その金属膜がAuSn共晶はんだ22を介してベース31と接続される。誘電体基板101の一方の短辺は枠体32の部分32aの近傍に位置しており、誘電体基板101の他方の短辺は枠体32の部分32bの近傍に位置している。すなわち、誘電体基板101は、方向D1において枠体32の一端近傍から他端近傍にわたって延在している。
【0043】
合波回路102及び112は、出力回路基板9の出力回路に対する合波回路である。すなわち、合波回路102及び112は、トランジスタ素子5の複数のドレインパッド51から出力される信号を合波して一の出力信号とする。合波回路102は、誘電体基板101の上面に設けられた2つの結合パターン103を含む。各結合パターン103の一端は、それぞれ4つの金属パッド103aを含む。4つの金属パッド103aは、出力結合回路基板10のトランジスタ素子5側の長辺に沿って並んで配列されている。互いに隣り合う金属パッド103a同士は、膜抵抗104を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、トランジスタ素子5の複数のドレインパッド51間のアイソレーションを確保しつつ、出力端子35から見た、トランジスタ素子5の出力インピーダンスの整合を図っている。膜抵抗104の抵抗値は例えば50Ωである。各金属パッド103aは、ワイヤ2fを介して、出力回路基板9の対応する金属パターン92と電気的に接続されている。
【0044】
各結合パターン103は、4つの金属パッド103aから結合を繰り返しつつ、最終的にワイヤ2gとの接続点に至る。各結合パターン103は、ワイヤ2gを介して、合波回路112の結合パターン113が有する2つの端部それぞれと電気的に接続されている。結合パターン113の中央部は、方向D2における結合パターン113の他端に位置し、ワイヤ2hを介して出力端子35と電気的に接続されている。
【0045】
出力回路基板9及びトランジスタ素子5の接続態様について詳細に説明する。
図5は、出力回路基板9及びトランジスタ素子5の各一部を拡大して示す平面図である。
図5に示すように、トランジスタ素子5は、上面5aと、上面5aにおいて方向D1に沿って延びる長辺5bと、方向D1と交差する方向D2に沿って延びる短辺5cとを有する。上面5aは、ベース31と対向する裏面とは反対側の面である。長辺5bは、トランジスタ素子5の出力端子35側の端辺である。前述したように、トランジスタ素子5は、上面5a上において長辺5bに沿って配列されたN個(Nは3以上の整数)のドレインパッド51を有する。一例では、各トランジスタ素子5が有するドレインパッド51の個数は8である。
【0046】
出力回路基板9は、トランジスタ素子5の長辺5bと間隔をあけて方向D2に設けられ、方向D1に沿って延在する上面9aを有する。出力回路基板9は、方向D1に沿って延びる長辺9bと、方向D2に沿って延びる短辺9cとを有する。長辺9bは、方向D2においてトランジスタ素子5の長辺5bと対向している。出力回路基板9は、前述した一又は複数(本実施形態では4つ)の金属パターン92を上面9a上に有する。これらの金属パターン92は、長辺9bに沿って並んで配置されている。
【0047】
各ドレインパッド51は、例えば金(Au)を主に含むワイヤ2eを介して、金属パターン92の少なくとも1つと電気的に接続されている。図示例では、1つのドレインパッド51につき1本のワイヤ2eが接続されており、ワイヤ2eの本数はN本である。なお、この例に限られず、1つのドレインパッド51につき複数本のワイヤ2eが接続されてもよい。また、1つの金属パターン92につき、少なくとも2つのドレインパッド51がワイヤ2eを介して接続されている。図示例では、1つの金属パターン92につき、2つのドレインパッド51がそれぞれワイヤ2eを介して接続されている。この例に限定されず、1つの金属パターン92につき、少なくとも3つのドレインパッド51がそれぞれワイヤ2eを介して接続されてもよい。これらのワイヤ2eの長さは互いに等しく、ワイヤ2dよりも長い。
【0048】
図5に示すように、各上面5a,9aの法線方向から見て、隣接するワイヤ2e同士は、互いに非平行である。ここで、非平行とは、或るドレインパッド51に接続されたワイヤ2eをD1−D2平面に射影したときのそのワイヤ2eの延在方向と、そのドレインパッド51と隣り合う別のドレインパッド51に接続されたワイヤ2eをD1−D2平面に射影したときのそのワイヤ2eの延在方向とが、互いに0°より大きい角度を成していることをいう。より実際的には、これらの延在方向が、製造誤差(例えば±5°)を超える相対角度を成していることをいう。
【0049】
一例では、隣接するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eの、上面5a,9aの法線方向から見た形状(言い換えると、D1−D2平面に射影した形状)が、方向D1及び上面5a,9aの法線方向の双方に対して垂直な(すなわち方向D2に沿った)軸線Qに関して線対称である。また、各金属パターン92上において、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端同士は、間隔Waをあけて互いに離間している。隣接する同士の間隔は、ドレインパッド51側よりも金属パターン92側で小さい。すなわち、金属パターン92上における一端同士の間隔Waは、ドレインパッド51上におけるワイヤ2eの他端同士の間隔Wbよりも小さい。一例では、間隔Waの大きさは100μm以上150μm以下であり、間隔Wbの大きさは600μm以上1200μm以下である。上面5a,9aの法線方向から見た、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2e同士の成す角θは、例えば20°以上145°以下であり、より好適には45°以上55°以下である。
【0050】
各金属パターン92上において、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端は、方向D1における金属パターン92の中央部に位置する。より詳細には、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端同士の中点は、方向D2に沿った金属パターン92の中心線上に位置する。各金属パターン92に接続されるワイヤ2fの一端もまた、方向D1における金属パターン92の中央部(より詳細には方向D2に沿った金属パターン92の中心線上)に位置する。
【0051】
以上に説明した本実施形態の半導体装置1によって得られる効果について、比較例とともに説明する。
図6は、比較例として、隣接するワイヤ2eが互いに平行である場合を示す平面図である。なお、隣接するワイヤ2eの長さは互いに等しいものとする。この場合、トランジスタ素子5から複数のワイヤ2eにRF信号が流れると、相互インダクタンスによって各ワイヤ2eのインダクタンス値にばらつきが生じる。具体的には、ドレインパッド51の並び方向(方向D1)において最も端に位置するドレインパッド511に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値が最も小さくなり、中央に位置するドレインパッド512に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値が最も大きくなる。つまり、インダクタンス値のばらつきの最大幅は、ドレインパッド511に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値と、ドレインパッド512に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値との差となる。
【0052】
図7は、各トランジスタ素子5が2個のドレインパッド51を有する場合における、信号周波数(単位:GHz)と位相(単位:度)との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7において、実線G11は、2つのドレインパッド51のうち一方に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。破線G12は、2つのドレインパッド51のうち他方に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。
図8は、各トランジスタ素子5が4個のドレインパッド51を有する場合における、信号周波数(単位:GHz)と位相(単位:度)との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8において、実線G21は、4つのドレインパッド51のうち外側に位置する2つのドレインパッド51の一方に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。破線G22は、4つのドレインパッド51のうち内側に位置する2つのドレインパッド51の一方に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。
図7に示すように、ドレインパッド51の個数が2である場合、各ワイヤ2eを伝搬する信号に位相差はほとんど無かった。これに対し、
図8に示すように、ドレインパッド51の個数が4である場合、外側のドレインパッド51に接続されたワイヤ2eを伝搬する信号と、内側のドレインパッド51に接続されたワイヤ2eを伝搬する信号との間で、有意な位相差が生じた。このことは、ドレインパッド51の個数が4である場合、ワイヤ2eのインダクタンス値がばらつくことを意味する。このようなインダクタンス値のばらつきは、ドレインパッド51の個数が3以上である場合に生じる。
【0053】
図9は、ドレインパッド51の個数が4である場合の上記シミュレーションにおいて、外側に位置する2つのドレインパッド51に接続される各ワイヤ2eに対し、直列にインダクタ(0.08nH)を追加した場合の結果を示すグラフである。この場合、実線G21と破線G22とが互いに近づき、位相差が解消した。このことから、上記シミュレーションにおいて、ドレインパッド51の個数が4である場合、外側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値と、内側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eのインダクタンス値との差は0.08nHであることがわかる。
【0054】
このようなインダクタンス値のばらつきを解消する方法として、
図10に示すように、複数のドレインパッド51に接続される各ワイヤ2eの長さを互いに異ならせることが考えられる。すなわち、ドレインパッド51の並び方向の端に近づくほど、ドレインパッド51に接続されるワイヤ2eを長くしてインダクタンスを増大させる。しかしながら、各ワイヤ2eは回路要素の一部を構成しているので、高周波特性を最適化するために長さを調整する必要がある。そのため、各ワイヤ2eの長さの設定が極めて複雑になってしまい、製造容易性を損なう。加えて、
図11に示すように、ワイヤ2fと金属パターン92との接続位置が、製造誤差等により方向D1における金属パターン92の中心からずれる場合がある。その場合、金属パターン92内での電流経路Jの長さに差が生じるので、各金属パターン92に接続される2つのドレインパッド51からの信号の位相が互いにずれてしまう。
図12は、ドレインパッド51の個数が4である場合の上記シミュレーションにおいて、ワイヤ2fと金属パターン92との接続位置が金属パターン92の中心からずれた場合の信号位相を示すグラフである。同図に示すように、ワイヤ2fの位置ずれによって、電流経路Jが短くなった側の信号位相(実線G21)と、電流経路Jが長くなった側の信号位相(破線G22)との間に大きな位相差が生じる。
【0055】
上記の問題に対し、本実施形態の半導体装置1では、互いに隣接するドレインパッド51に接続されたワイヤ2e同士が非平行とされている。各ワイヤ2eに生じる相互インダクタンスは、各ワイヤ2eが互いに平行である場合に最も大きく、各ワイヤ2eが互いに非平行である場合に低減される。従って、本実施形態の半導体装置1によれば、各ワイヤ2eに生じる相互インダクタンスを低減し、ワイヤ2e間におけるインダクタンスのばらつきを低減することができる。
【0056】
図13は、ドレインパッド51の個数が4の場合の上記シミュレーションにおいて、ワイヤ2eの形態を
図5に示した形態とした場合の信号周波数(単位:GHz)と位相(単位:度)との関係を示すグラフである。実線G21は、4つのドレインパッド51のうち外側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。破線G22は、4つのドレインパッド51のうち内側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。
図13に示すように、ワイヤ2e同士を非平行とすることによって、平行である場合(
図8)と比較して、実線G21と破線G22とが共に低位相側に移動すると共に、互いに近づく(すなわち位相差が小さくなる)ことがわかる。つまり、本実施形態によれば、各ワイヤ2eに生じる相互インダクタンスを低減し、ワイヤ2e間におけるインダクタンスのばらつきを低減することができる。
【0057】
本実施形態のように、複数のワイヤ2eの長さが互いに等しく、上面5a及び9aの法線方向から見た、互いに隣り合うドレインパッド51に接続されたワイヤ2eの形状は、方向D1及び上面5a及び9aの法線方向の双方に対して垂直な軸線Qに関して線対称であってもよい。この場合、互いに隣り合うワイヤ2e同士の成す角のばらつきが抑制されるので、ワイヤ2e間におけるインダクタンスのばらつきをより効果的に低減することができる。
【0058】
本実施形態のように、半導体装置1は、金属パターン92を有する出力回路基板9をさらに備えてもよい。金属パターン92は、少なくとも2つのドレインパッド51にワイヤ2eを介して接続されている。少なくとも2つのドレインパッド51に金属パターン92を接続する隣接するワイヤ2e同士の間隔は、ドレインパッド51側よりも金属パターン92側で小さい。例えばこのような構成により、隣接するワイヤ2eを互いに非平行とすることが容易にできる。加えて、ワイヤ2e同士が互いに平行である場合と比較して、ワイヤ2eの一端同士が互いに近づくので、ワイヤ2fと金属パターン92との接続位置が金属パターン92の中心からずれた場合(
図11を参照)であっても、電流経路Jの長さのばらつきを低減でき、2つのドレインパッド51からの信号の位相差を低減できる。
【0059】
本実施形態のように、上面5a及び9aの法線方向から見た、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2e同士の成す角θは45°以上55°以下であってもよい。後述するシミュレーション結果によれば、この場合に、ワイヤ2e間におけるインダクタンスのばらつきをより効果的に低減することができる。
【0060】
本実施形態のように、半導体装置1は、金属パターン82を有する入力回路基板8を備えてもよい。金属パターン82は、少なくとも二つのゲートパッド50にワイヤ2dを介して接続される。これにより、トランジスタ素子5のゲートパッド50に入力する入力信号に対し、入力回路基板8によるインピーダンス整合が可能となる。
【0061】
本実施形態のように、半導体装置1は、入力回路基板8と、ベース31と、枠体32と、入力端子34と、出力端子35と、を備えてもよい。入力回路基板8は、金属パターン82を有する。ベース31は、トランジスタ素子5と、入力回路基板8と、出力回路基板9と、を搭載する。枠体32は、ベース31上に設けられ、トランジスタ素子5と、入力回路基板8と、出力回路基板9とを囲む。入力端子34は、枠体32に設けられ、入力回路基板8と接続する。出力端子35は、枠体32に設けられ、出力回路基板9と接続する。入力回路基板8の金属パターン82は、少なくとも二つのゲートパッド50にワイヤ2dを介して接続されている。これにより、半導体装置1は高周波デバイスを構成することができる。
【0062】
本実施形態のように、トランジスタ素子5と、入力回路基板8と、出力回路基板9とは、それぞれ複数設けられてもよい。これにより、トランジスタ素子5が複数設けられることができ、半導体装置1は高出力の高周波デバイスを構成することができる。
【0063】
本実施形態のように、半導体装置1は、入力分岐回路基板6,7と、出力結合回路基板10,11と、を備えてもよい。入力分岐回路基板6,7は、一端が入力端子34と接続され、他端が複数の入力回路基板8と接続されている分岐パターン63,73を有する。出力結合回路基板10,11は、一端が複数の出力回路基板9と接続され、他端が出力端子35と接続されている結合パターン103,113を有する。入力分岐回路基板6,7は、入力信号を同レベルの信号に分配することができる。出力結合回路基板10,11は、高出力の出力信号を結合して出力することができる。
【0064】
本実施形態のように、半導体装置1は、トランジスタ素子5と、出力回路基板9と、が搭載されるベース31を備えてもよい。出力回路基板9は、誘電体基板91の上面に金属パターン92を有し、誘電体基板91の裏面がベース31と接続され、金属パターン92とベース31との間に容量成分を有してもよい。出力回路基板9は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、出力回路基板9に誘電体基板91を用いることによって、出力回路基板9の小型化が可能になる。
【0065】
本実施形態のように、入力回路基板8は、誘電体基板81の上面に金属パターン82を有し、誘電体基板81の裏面がベース31と接続され、金属パターン82とベース31との間に容量成分を有してもよい。入力回路基板8は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、入力回路基板8に誘電体基板81を用いることによって、入力回路基板8の小型化が可能になる。
【0066】
本実施形態のように、入力分岐回路基板6,7は、誘電体基板61,71の上面に分岐パターン63,73を有し、誘電体基板61,71の裏面がベース31と接続され、分岐パターン63,73とベース31との間に容量成分を有してもよい。入力分岐回路基板6,7は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、入力分岐回路基板6,7に誘電体基板61,71を用いることによって、入力分岐回路基板6,7の小型化が可能になる。
【0067】
本実施形態のように、出力結合回路基板10,11は、誘電体基板101,111の上面に結合パターン103,113を有し、誘電体基板101,111の裏面がベース31と接続され、結合パターン103,113とベース31との間に容量成分を有してもよい。出力結合回路基板10,11は、容量成分を有することによりインピーダンス整合をすることができる。また、出力結合回路基板10,11に誘電体基板101,111を用いることによって、出力結合回路基板10,11の小型化が可能になる。
(変形例)
【0068】
図14は、上記実施形態の一変形例に係る平面図であって、出力回路基板9及びトランジスタ素子5の各一部を拡大して示す。
図14に示すように、本変形例においても、各上面5a,9aの法線方向から見て、隣接するワイヤ2e同士は、互いに非平行である。上記実施形態では、各金属パターン92上において、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端同士は間隔Waをあけて互いに離間している(
図5を参照)。本変形例では、これらの一端同士は、各金属パターン92と接続する接続ポイントにおいて互いに接触している。ここで、一端同士が接触しているとは、次の3つの形態を含む。一つの形態は、一方のワイヤ2eと他方のワイヤ2eとがそれぞれの一端において互いに連続している形態である。別の形態は、一方のワイヤ2eの一端と他方のワイヤ2eの一端とが、方向D1に沿って並んでおり且つ互いに接触している形態である。更に別の形態は、一方のワイヤ2eの一端と他方のワイヤ2eの一端とが互いに重なっている形態である。
【0069】
一例では、互いに隣り合うドレインパッド51に接続されたワイヤ2eの、上面5a,9aの法線方向から見た形状(言い換えると、D1−D2平面に射影した形状)は、方向D1及び上面5a,9aの法線方向の双方に対して垂直な軸線Qに関して線対称である。本変形例においても、上面5a及び9aの法線方向から見て、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2e同士の成す角θは、例えば20°以上145°以下であり、より好適には45°以上55°以下である。
【0070】
図15は、上記実施形態において説明したシミュレーション(ドレインパッド51の個数が4の場合)において、ワイヤ2eの形態を
図14に示した形態とした場合の信号周波数(単位:GHz)と位相(単位:度)との関係を示すグラフである。実線G21は、4つのドレインパッド51のうち外側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。破線G22は、4つのドレインパッド51のうち内側に位置するドレインパッド51に接続されたワイヤ2eについての関係を示す。
図15に示すように、本変形例においても、実線G21と破線G22とは共に低位相側に移動すると共に、互いに近づく(すなわち位相差が小さくなる)。つまり、本変形例によれば、各ワイヤ2eに生じる相互インダクタンスを低減し、ワイヤ2e間におけるインダクタンスのばらつきを低減することができる。
【0071】
本変形例のように、各金属パターン92上において、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端同士は、金属パターン92と接続する接続ポイントにおいて互いに接触してもよい。例えばこのような構成により、各ワイヤ2eを互いに非平行とすることが容易にできる。加えて、2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの各一端がほぼ同じ位置に設けられるので、ワイヤ2fと金属パターン92との接続位置が金属パターン92の中心からずれた場合(
図11を参照)における電流経路Jの長さのばらつきをほぼ無くすことができる。従って、2つのドレインパッド51からの信号の位相差をより効果的に抑制できる。
図16は、ドレインパッド51の個数が4である場合の上記シミュレーションにおいて、ワイヤ2fと金属パターン92との接続位置が金属パターン92の中心からずれた場合の信号位相を示すグラフである。同図に示すように、ワイヤ2fの位置ずれによって電流経路Jが短くなった側の信号位相(実線G21)と、電流経路Jが長くなった側の信号位相(破線G22)との間の位相差は、
図12と比較して格段に低減される。
【0072】
2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2e同士の成す角θの好適な大きさについて検討する。
図17から
図20は、本変形例において角度θを変化させたときの信号周波数と位相との関係を示すグラフである。
図17はθ=30°の場合を示す。
図18はθ=50°の場合を示す。
図19はθ=60°の場合を示す。
図20はθ=90°の場合を示す。これらのグラフを比較すると、θ=50°のときに実線G21と破線G22との間隔(すなわち位相差)が最も小さくなることがわかる。つまり、角度θの最適値は50°であり、実用的には、角度θは50°の近傍(例えば50°±5°の範囲内)であるとよい。このことは、上記実施形態、すなわち2つのドレインパッド51から延びるワイヤ2eの一端同士が互いに離れている場合においても同様であると考えられる。
【0073】
本開示による半導体装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、トランジスタ素子5、入力分岐回路基板6,7、入力回路基板8、出力回路基板9、及び出力結合回路基板10,11を備える半導体装置1に本開示を適用しているが、本開示はこれに限らず、トランジスタ素子と、トランジスタ素子と並んで配置される回路基板とを備える半導体装置に適用可能である。