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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112024(P2021-112024A)
(43)【公開日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】作業補助装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20210705BHJP
【FI】
   H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-1970(P2020-1970)
(22)【出願日】2020年1月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年5月15日 東京電力パワーグリッド株式会社主催の「配電エンジニアリングセンター 公開イベント」において文書をもって発表
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊二
(72)【発明者】
【氏名】高島 正
(72)【発明者】
【氏名】上之門 一重
(72)【発明者】
【氏名】鵜瀬 義則
(72)【発明者】
【氏名】谷 孝志
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AE05
5G352AJ09
(57)【要約】
【課題】従来の作業補助装置は大掛かりなものであり、利用しにくかった。
【解決手段】基端側において基部3に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンク12,13を有する第1アーム部11と、第1アーム部11の2つのリンク12,13のうち一方と基部3とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第1ガススプリング16と、第1アーム部11の先端側に接続された関節部4と、基端側において関節部4に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンク22,23を有する第2アーム部21と、第2アーム部21の2つのリンク22,23のうち一方と関節部4とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第2ガススプリング26と、第2アーム部21の先端側に接続された先端部5とを備える、作業補助装置1により、簡素な構造を有しており利便性が高い作業補助装置1を提供できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
基端側において前記基部に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンクを有する第1アーム部と、
前記第1アーム部の2つのリンクのうち一方と前記基部とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第1ガススプリングと、
前記第1アーム部の先端側に接続された関節部と、
基端側において前記関節部に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンクを有する第2アーム部と、
前記第2アーム部の2つのリンクのうち一方と前記関節部とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第2ガススプリングと、
前記第2アーム部の先端側に接続された先端部とを備え、
前記先端部は、間接活線工法に用いられる工具を保持する工具保持部を有する、作業補助装置。
【請求項2】
前記基部は、前記第1ガススプリングの取付部が接続されている位置を変位させるための第1調整機構を備え、
前記関節部は、前記第2ガススプリングの取付部が接続されている位置を変位させるための第2調整機構を備える、請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項3】
前記工具保持部は、回転軸が互いに平行である3以上のローラを有し、
前記3以上のローラは、前記工具保持部により保持される工具の棒状部の周囲を囲むように配置されている、請求項1又は2に記載の作業補助装置。
【請求項4】
前記3以上のローラのうち1以上のローラは、その回転軸に対して垂直な方向に変位可能である、請求項3に記載の作業補助装置。
【請求項5】
前記関節部は、
前記第1アーム部の先端側に接続された後側関節部と、
前記後側関節部に対して回転軸を介して回動可能に接続されており、前記第2アーム部の基端側に接続された前側関節部と、
前記後側関節部に対して前記前側関節部を固定する固定機構とを有し、
前記前側関節部が前記後側関節部に対して固定された第1の状態と、前記第1の状態から前記前側関節部が前記後側関節部に対して回動した第2の状態とに相互に変更可能である、請求項1から4のいずれかに記載の作業補助装置。
【請求項6】
前記第1アーム部の前記基部に対する変位を防止する第1ロック部と、前記第2アーム部の前記関節部に対する変位を防止する第2ロック部との少なくとも一方をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の作業補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工法による作業に利用可能な作業補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるホットスティックを利用した間接活線工法による電気工事が行われている。この種の電気工事では、一般的に、作業者は、高所作業車のバケット等に乗って電線に近づいて、ホットスティックを用いて電線を取り扱うことにより作業を行う。
【0003】
このような電気工事に利用するための装置として、種々の装置が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、操作棒のバランス支持装置の構造が開示されている。このようなバランス支持装置として、アームのバランスを支持するためのガススプリングと、操作棒を傾斜させる補助を行うためのガススプリングとを備えた構造が提案されている。
【0005】
なお、下記特許文献4には、平行リンクを倒伏させる方向に作用する荷重に抗して平行リンクを起仰させる補助力を付与するためのガススプリングが並行して2本設けられている作業用アームの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−225407号公報
【特許文献2】特開平11−18227号公報
【特許文献3】特開平10−94126号公報
【特許文献4】特開平10−180665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば上述の特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載されているような従来の装置は、構造が複雑で大掛かりなものであり、利用しにくいという課題があった。また、特許文献4に記載の作業用アームは、ガススプリングを用いることにより比較的シンプルな構造を有している。しかしながら、このような作業用アームは、リーチが比較的短い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第一の発明の作業補助装置は、基部と、基端側において基部に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンクを有する第1アーム部と、第1アーム部の2つのリンクのうち一方と基部とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第1ガススプリングと、第1アーム部の先端側に接続された関節部と、基端側において関節部に接続されており、平行リンクを構成する2つのリンクを有する第2アーム部と、第2アーム部の2つのリンクのうち一方と関節部とに、2つの取付部がそれぞれ接続された第2ガススプリングと、第2アーム部の先端側に接続された先端部とを備え、先端部は、間接活線工法に用いられる工具を保持する工具保持部を有する、作業補助装置である。
【0009】
かかる構成により、簡素な構造を有しており利便性が高い作業補助装置を提供することができる。
【0010】
また、本第二の発明の作業補助装置は、第一の発明に対して、基部は、第1ガススプリングの取付部が接続されている位置を変位させるための第1調整機構を備え、関節部は、第2ガススプリングの取付部が接続されている位置を変位させるための第2調整機構を備える、作業補助装置である。
【0011】
かかる構成により、2つのアーム部にはたらくそれぞれのガススプリングによる力の大きさを調整し、先端部にかかる負荷の大小に対応することができる。
【0012】
また、本第三の発明の作業補助装置は、第一又は二の発明に対して、工具保持部は、回転軸が互いに平行である3以上のローラを有し、3以上のローラは、工具保持部により保持される工具の棒状部の周囲を囲むように配置されている、作業補助装置である。
【0013】
かかる構成により、電線に対する先端部の向きが変わっても、電線に対する工具の向きを維持させることができ、容易に作業を行えるようにすることができる。
【0014】
また、本第四の発明の作業補助装置は、第三の発明に対して、3以上のローラのうち1以上のローラは、その回転軸に対して垂直な方向に変位可能である、作業補助装置である。
【0015】
かかる構成により、工具保持部において保持される棒状部の太さが異なる様々な工具に対応可能にすることができる。
【0016】
また、本第五の発明の作業補助装置は、第一から四のいずれかの発明に対して、関節部は、第1アーム部の先端側に接続された後側関節部と、後側関節部に対して回転軸を介して回動可能に接続されており、第2アーム部の基端側に接続された前側関節部と、後側関節部に対して前側関節部を固定する固定機構とを有し、前側関節部が後側関節部に対して固定された第1の状態と、第1の状態から前側関節部が後側関節部に対して回動した第2の状態とに相互に変更可能である、作業補助装置である。
【0017】
かかる構成により、状況に合わせて第1の状態と第2の状態とに相互に変更することができ、容易に取り扱い可能にすることができる。
【0018】
また、本第六の発明の作業補助装置は、第一から五のいずれかの発明に対して、第1アーム部の基部に対する変位を防止する第1ロック部と、第2アーム部の関節部に対する変位を防止する第2ロック部との少なくとも一方をさらに備える、作業補助装置である。
【0019】
かかる構成により、第1アーム部の基部に対する位置又は第2アーム部の関節部に対する位置を適宜固定して、容易に作業補助装置を用いた作業を遂行可能にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡素な構造を有しており利便性が高い作業補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態における作業補助装置の側面図
図2】同作業補助装置の平面図
図3】同作業補助装置の可動範囲を説明する図
図4】同作業補助装置におけるガススプリングの取付構造について説明する図
図5】同作業補助装置の工具保持部を示す平面図
図6】同工具保持部の蓋部を開いた状態を示す図
図7】同工具保持部の一機能を説明する図
図8】同工具保持部の動作を説明する図
図9】同作業補助装置の非使用状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る作業補助装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
なお、以下の説明において、図面において示される座標は、各図同士で共通している。座標のZ方向は、水平面に対して垂直な方向であり、基部に対して関節部及び先端部が変位可能な方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な方向であり、基部に対して関節部及び先端部が変位可能な方向である。Y方向は、Z方向に垂直な方向であって、X方向に垂直な方向である。なお、Z方向を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上)ということがあり、X方向を前後方向(原点から見てX軸で正となる方向が前)ということがあり、Y方向を左右方向ということがある。作業補助装置について、基部から先端部に向かう方向を「先端方向」といい、その反対の方向を「基端方向」ということがある。すなわち、図1に示されるように、各アーム部の長手方向が水平であるとき、先端方向は前であり、基端方向は後である。以下において、このように各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、これらはあくまで説明の便宜のために定義したものであって、本発明に係る作業補助装置の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0024】
(実施の形態)
【0025】
本実施の形態において、作業補助装置は、2つのアーム部が直列に接続されたものであり、2つのアーム部を展開させることにより、基部から先端部までの距離を長く確保することができるように構成されている。2つのアーム部のそれぞれに対してガススプリングが設けられており、ガススプリングにより発生する力を用いて、容易に、アーム部を折り畳んだり作業補助装置の姿勢を保持したりすることできるようになっている。なお、本実施の形態において、2つのアーム部のそれぞれについてガススプリングによる支持力の大きさを調整する調整機構が設けられていてもよい。また、工具を保持する工具保持部には、回転軸が互いに平行である3以上のローラが設けられており、さらに、3以上のローラのうち1以上のローラを、他のローラに対して、回転軸に対し垂直な方向に変位させることができるように構成されているが、これに限られない。また、2つのアーム部の間にある関節部は、回転軸を中心に回動可能である前側関節部と後側関節部とに分かれており、前側関節部が後側関節部に対して固定された第1の状態と、第1の状態から前側関節部が後側関節部に対して回転した第2の状態とに相互に変更可能であるが、これに限られない。以下、このように構成された本実施の形態に係る作業補助装置1について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態における作業補助装置1の側面図である。図2は、同作業補助装置1の平面図である。
【0027】
以下の各図において、説明の便宜上の都合により、隠線が実線として示されていたり、隠線が省略されていたり、細部の描写が簡素化されていたり、特定の部材の図示が省略されていたりする場合がある。
【0028】
図2においては、第1ガススプリング16及び第2ガススプリング26の図示は省略されている。
【0029】
図1又は2に示されるように、本実施の形態において、作業補助装置1は、大まかに、基部3、関節部4、工具保持部6を有する先端部5、基台部8、旋回ロックレバー9、第1アーム部11、第2アーム部21を備える。第1アーム部11、関節部4、第2アーム部21、及び先端部5は、基部3から先端側に向けて、この順に並んでいる。基部3は、基台部8の上方に取り付けられている。
【0030】
基台部8は、例えば高所作業車のバケットの一部である取付壁80に取り付けられる。基台部8は、例えば、取付壁80を両面から挟み込むクランプのように構成されているが、これに限られるものではない。取付壁80に取り付けられた基台部8を基礎として、作業補助装置1のその他の部位が機能可能に支持されている。
【0031】
基部3は、基台部8から上方に延びている部材である。基部3は、略垂直な柱状に構成されている。なお、基部3は、斜めに傾いていてもよい。基部3の上部は、例えば、左右一対に設けられた2つの板状部材を有しているが、これに限られるものではない。
【0032】
基部3は、基台部8に対して水平方向に回動(旋回)可能である。すなわち、作業補助装置1は、基台部8に対して水平方向に回動可能である。
【0033】
旋回ロックレバー9は、基部3に取り付けられている。作業者は、旋回ロックレバー9を操作することにより、基部3を旋回しないようにロックすることができる。本実施の形態においては、基部3は、例えば、基台部8の上部から上方に突出する支持軸に取り付けられており、支持軸を中心に旋回可能である。基部3には、旋回ロックレバー9に連動して支持軸に当接する部位が設けられている。作業者は、旋回ロックレバー9を操作することにより、当該部位を支持軸に押し当てて基部3をロックしたり、当該部位を支持軸から離して基部3を旋回可能な状態にしたりすることができるように構成されている。なお、基部3をロックする機構の具体的な構造はこれに限られず、例えば基部3側から基台部8の一部に嵌り込む部材が旋回ロックレバー9に連動するような構成など、様々な構成を採用することができる。
【0034】
第1アーム部11は、基端側において基部3に接続されている。基部3の上部に、第1アーム部11の基端側の部位が接続されている。
【0035】
関節部4は、第1アーム部11の先端側に接続されている。すなわち、第1アーム部11は、先端側において関節部4に接続されている。関節部4は、例えば、金属製のブロックを切削することにより形成されたものであるが、これに限られない。関節部4は、左右両側の板状部の間に後述のように第2調整機構44が配置されて構成されているが、これに限られるものではない。
【0036】
第2アーム部21は、基端側において関節部4に接続されている。すなわち、関節部4の先端側の部位に、第2アーム部21の基端側の部位が接続されている。
【0037】
先端部5は、第2アーム部21の先端側に接続されている。すなわち、第2アーム部21は、先端側において先端部5に接続されている。先端部5は、例えば、金属製のブロックを切削することにより形成されたものであるが、これに限られない。
【0038】
先端部5は、工具保持部6を備える。工具保持部6は、間接活線工法に用いられる工具90を保持する。工具保持部6は、先端部5の本体に着脱可能なものであるが、これに限られない。
【0039】
本実施の形態において、工具保持部6は、間接活線工法に用いられる工具90を保持することができるように構成されている。工具90は、例えば、いわゆるホットスティックと呼ばれるものである。ホットスティックは、例えば、絶縁性を有する素材で構成されている棒状部(図示せず)と、棒状部の上端に取り付けられており例えば電線を把持する把持部(図示せず)とを有する。
【0040】
本実施の形態において、作業補助装置1は、上述の各部のほかに、さらに、第1ロックレバー15、第1ガススプリング16、第1ガード部材18、第2ロックレバー25、第2ガススプリング26、及び第2ガード部材28等を有している。以下、作業補助装置1の各部の構造について、より詳細に説明する。
【0041】
第1アーム部11は、第1上側リンク12、第1連結部材12b、第1下側リンク13、及び第1固定プレート14を備える。
【0042】
図2に示されるように、第1上側リンク12は、左右方向が厚み方向となるように配置された梁状である左右2つの板状部材を複数の第1連結部材12bで連結したラダーフレーム型の構造を有している。また、第1下側リンク13も、第1上側リンク12と同様に、左右2つの板状部材を複数の第1連結部材12bで連結したラダーフレーム型の構造を有している。なお、各リンク12,13は、これと異なる構造を有していてもよい。例えば、板金構造(例えば、長手方向に延びる折り曲げ線に沿って折り曲げられている金属板を用いた構造など)を有していてもよいし、パイプフレーム構造を有していてもよい。
【0043】
第1上側リンク12と第1下側リンク13とは、上下に並び、平行リンクを構成する。すなわち、第1アーム部11は、平行リンクを構成する2つのリンク12,13を有している。第1上側リンク12は、基端側において基部3に接続されており、先端側において関節部4に接続されている。第1下側リンク12も、基端側において基部3に接続されており、先端側において関節部4に接続されている。各部材同士を接続するジョイントは、回転軸が左右方向となっている。基部3側の2箇所のジョイント間の距離と関節部4側の2箇所のジョイント間の距離は等しく、第1上側リンク12の先端側のジョイントと基端側のジョイント間の距離と、第1下側リンク13の先端側のジョイントと基端側のジョイント間の距離とは等しくなっている。このようにして2つのリンク12,13を介して基部3と関節部4とが接続されているため、関節部4は、基部3に対して上下に変位可能であり、関節部4が変位しても、関節部4の水平面に対する姿勢は変わらない。
【0044】
第1固定プレート14は、第1下側リンク13の基端側に設けられている。第1固定プレート14は、左右方向が厚み方向となるようにして、基部3の左右両側に、基部3の一部を挟み込むようにして配置されている。第1固定プレート14は、第1下側リンク13とともに基部3に対して回転する。第1固定プレート14は、第1上側リンク12と基部3とを接続するジョイントが貫通する円弧状のスリットを有している。すなわち、第1アーム部11が基部3に対して変位可能な範囲は、第1固定プレート14のスリットによって規制されている。
【0045】
第1固定プレート14の外側には、第1上側リンク12と基部3とを接続するジョイントを締め込む第1ロックレバー15が設けられている。第1ロックレバー15が締め込まれることにより、第1固定プレート14が基部3又は第1ロックレバー15に押し付けられて、第1固定プレート14と基部3又は第1ロックレバー15との間で発生する摩擦力の大きさが大きくなる。すなわち、第1固定プレート14が基部3に対して変位しにくい状態にすることにより、関節部4及び第1アーム部11が基部3に対して固定される。
【0046】
本実施の形態においては、このように、第1固定プレート14と第1ロックレバー15とを有し、第1アーム部11の基部3に対する変位を防止する第1ロック部19が設けられている。したがって、第1アーム部11の基部3に対する位置を適宜固定して、容易に作業補助装置1を用いた作業を行うことができる。なお、第1ロック部19の構成はこれに限られない。例えば、第1固定プレート14は、第1アーム部11の基部3に対する変位可能な範囲を規制するものではなくてもよい。また、基部3に固定されている固定プレートにより第1ロック部が構成されていてもよい。また、基部3側ではなく関節部4側において固定プレート及びロックレバーが設けられていたり、基部3側と関節部4側との両方に固定プレート及びロックレバーが設けられていてもよい。第1ロック部19は、設けられていなくてもよい。
【0047】
第1アーム部11には、第1ガススプリング16が接続されている。本実施の形態において、第1ガススプリング16は、圧縮されたときに略一定の反力を発生させる(発生する反力の変動が比較的小さい)圧縮タイプのものであるが、これに限られず、例えば引っ張られたときに反力を発生させる引張タイプのものであってもよい。また、圧縮量に応じて反力の変動が大きいものであってもよい。
【0048】
第1ガススプリング16の両端部にある2つの取付部は、第1アーム部11の2つのリンクのうち一方と、基部3とに、それぞれ接続されている。本実施の形態においては、第1ガススプリング16は、第1上側リンク12と、第1上側リンク12と基部3とのジョイント部よりも下方の位置との間に接続されている。すなわち、第1ガススプリングの反発力は、第1アーム部11を重力に抗して押し上げる方向に作用する。第1ガススプリング16の詳細な取付構造については、後述する。なお、第1ガススプリング16が引張タイプのものであり、2つの取付部が第1下側リンク13と基部3とにそれぞれ接続されていてもよい。また、第1ガススプリング16は、第1アーム部11と関節部4との間に設けられていてもよい。
【0049】
第1ガード部材18は、第1アーム部11の左右両側に配置されている。第1ガード部材18は、例えば、第1上側リンク12に対して固定されているが、これに限られず第1下側リンク13に対して固定されていてもよい。第1ガード部材18は、左右方向が厚み方向となる平板状の部材であり、側面視において第1上側リンク12と第1下側リンク13との間にあるスペースを塞ぐように設けられている。
【0050】
平行リンクを構成する第1上側リンク12と第1下側リンク13との間のスペースは、基部3に対して関節部4が上方に変位したり下方に変位したりするのに伴って狭くなる。第1ガード部材18が設けられていることにより第1上側リンク12と第1下側リンク13との間のスペースに側方から異物が入り込み、第1アーム部11の基部3に対する可動範囲が制限されたり、異物が第1上側リンク12と第1下側リンク13との間に挟まれて損傷したりすることを未然に防ぐことができる。
【0051】
第2アーム部21は、第2上側リンク22、第2連結部材22b、第2下側リンク23、及び第2固定プレート24を備える。
【0052】
図2に示されるように、第2上側リンク22は、左右方向が厚み方向となるように配置された梁状である左右2つの板状部材を複数の第2連結部材22bで連結したラダーフレーム型の構造を有している。また、第2下側リンク23も、第2上側リンク22と同様に、左右2つの板状部材を複数の第2連結部材22bで連結したラダーフレーム型の構造を有している。なお、各リンク22,23は、これと異なる構造を有していてもよい。例えば、板金構造を有していてもよいし、パイプフレーム構造を有していてもよい。
【0053】
第2上側リンク22と第2下側リンク23とは、上下に並び、平行リンクを構成する。すなわち、第2アーム部21は、平行リンクを構成する2つのリンク22,23を有している。第2上側リンク22は、基端側において関節部4に接続されており、先端側において先端部5に接続されている。第2下側リンク22も、基端側において関節部4に接続されており、先端側において先端部5に接続されている。各部材同士を接続するジョイントは、回転軸が左右方向となっている。関節部4側の2箇所のジョイント間の距離と先端部5側の2箇所のジョイント間の距離は等しく、第2上側リンク22の先端側のジョイントと基端側のジョイント間の距離と、第2下側リンク23の先端側のジョイントと基端側のジョイント間の距離とは等しくなっている。このようにして2つのリンク22,23を介して関節部4と先端部5とが接続されているため、先端部5は、関節部4に対して上下に変位可能であり、先端部5が変位しても、先端部5の水平面に対する姿勢は変わらない。すなわち、先端部5は、基部3に対して上下に変位可能であり、先端部5及び関節部4の位置にかかわらず、先端部5の水平面に対する姿勢は保たれる。
【0054】
なお、本実施の形態において、第2上側リンク22よりも第2下側リンク23のほうが先端部よりに位置している。これにより、関節部4に対して先端部5が上方に変位可能な範囲がより広く確保されている。なお、第2上側リンク22と第2下側リンク23都の位置関係はこれに限られない。
【0055】
第2固定プレート24は、第2下側リンク23の基端側に設けられている。第2固定プレート24は、左右方向が厚み方向となるようにして、関節部4の左右両側に、関節部4の一部を挟み込むようにして配置されている。第2固定プレート24は、第2下側リンク23とともに関節部4に対して回転する。第2固定プレート24は、第2上側リンク22と関節部4とを接続するジョイントが貫通する円弧状のスリットを有している。すなわち、第2アーム部21が関節部4に対して変位可能な範囲は、第2固定プレート24のスリットによって規制されている。
【0056】
第2固定プレート24の外側には、第2上側リンク22と関節部4とを接続するジョイントを締め込む第2ロックレバー25が設けられている。第2ロックレバー25が締め込まれることにより、第2固定プレート24が関節部4又は第2ロックレバー25に押し付けられて、第2固定プレート24と関節部4又は第2ロックレバー25との間で発生する摩擦力の大きさが大きくなる。すなわち、第2固定プレート24が関節部4に対して変位しにくい状態にすることにより、先端部5及び第2アーム部21が関節部4に対して固定される。
【0057】
本実施の形態においては、このように、第2固定プレート24と第2ロックレバー25とを有し、第2アーム部21の関節部4に対する変位を防止する第2ロック部29が設けられている。したがって、第2アーム部21の関節部4に対する位置を適宜固定して、容易に作業補助装置1を用いた作業を行うことができる。なお、第2ロック部29の構成はこれに限られない。例えば、第2固定プレート24は、第2アーム部21の関節部4に対する変位可能な範囲を規制するものではなくてもよい。また、関節部4に固定されている固定プレートにより第1ロック部が構成されていてもよい。また、関節部4側ではなく先端部5側において固定プレート及びロックレバーが設けられていたり、関節部4側と先端部5側との両方に固定プレート及びロックレバーが設けられていてもよい。第2ロック部29は、設けられていなくてもよい。
【0058】
第2アーム部21には、第2ガススプリング26が接続されている。本実施の形態において、第2ガススプリング26は、略一定の反力を発生させる圧縮タイプのものであるが、これに限られず、引張タイプのものであってもよいし、圧縮量に応じて反力の変動が大きいものであってもよい。
【0059】
第2ガススプリング26の両端部にある2つの取付部は、第2アーム部21の2つのリンクのうち一方と、関節部4とに、それぞれ接続されている。本実施の形態においては、第2ガススプリング26は、第2上側リンク22と、第2上側リンク22と関節部4とのジョイント部よりも下方の位置との間に接続されている。すなわち、第2ガススプリングの反発力は、第2アーム部21を重力に抗して押し上げる方向に作用する。第2ガススプリング26の詳細な取付構造については、後述する。なお、第2ガススプリング26が引張タイプのものであり、2つの取付部が第2下側リンク23と関節部4とにそれぞれ接続されていてもよい。また、第2ガススプリング26は、第2アーム部12と先端部5との間に設けられていてもよい。
【0060】
第2ガード部材28は、第2アーム部21の左右両側に配置されている。第2ガード部材28は、例えば、第2上側リンク22に対して固定されているが、これに限られず第2下側リンク23に対して固定されていてもよい。第2ガード部材28は、左右方向が厚み方向となる平板状の部材であり、側面視において第2上側リンク22と第2下側リンク23との間にあるスペースを塞ぐように設けられている。
【0061】
平行リンクを構成する第2上側リンク22と第2下側リンク23との間のスペースは、関節部4に対して先端部5が上方に変位したり下方に変位したりするのに伴って狭くなる。第2ガード部材28が設けられていることにより第2上側リンク22と第2下側リンク23との間のスペースに側方から異物が入り込み、第2アーム部21の関節部4に対する可動範囲が制限されたり、異物が第2上側リンク22と第2下側リンク23との間に挟まれて損傷したりすることを未然に防ぐことができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、関節部4は、後側関節部41と、前側関節部42と、固定機構48とを備えている。後側関節部41は、第1アーム部11の先端側に接続されている。前側関節部42は、後側関節部41に対して回転軸43を介して回動可能に接続されており、第2アーム部21の基端側に接続されている。固定機構48は、例えばレバー付きの留め金具(いわゆるパチン錠)であり、後側関節部41に対して前側関節部42を固定する。
【0063】
図3は、同作業補助装置1の可動範囲を説明する図である。
【0064】
図3において、ガード部材18,28や、ロックレバー15,25や、工具保持部6などの図示は省略されている。図3に示されるように、作業補助装置1では、平行リンクを構成する2つのアーム部11,21が直列に連なっているので、基部3に対して、先端部5を、より広い範囲に変位させることができる。各アーム部11,12には、重力に抗してアーム部11,12を押し上げる方向に作用するガススプリング16,26が設けられているため、作業者が、手動による操作によって少ない力で先端部5を変位させることができる。
【0065】
図4は、同作業補助装置1におけるガススプリング16,26の取付構造について説明する図である。
【0066】
図4において、基部3や、固定プレート14,24や、ロックレバー15,25などの図示は省略されている。図4に示されるように、第1ガススプリング16の第1先端側取付部16b及び第1基端側取付部16cが、それぞれ、第1上側リンク12と基部3とに接続されている。例えば、第1先端側取付部16bは、ボディ側(シリンダ側)のジョイント部であり、第1基端側取付部16cは、ピストンロッド側のジョイント部である。第1先端側取付部16bは、第1上側リンク12において、先端側に設けられているブラケット部12bに取り付けられている。第1基端側端部16cは、基部3に設けられている第1変位部材35に取り付けられている。
【0067】
ここで、本実施の形態において、第1変位部材35は、第1調整ボルト36及び第1シャフト37とともに、第1ガススプリング16の第1基端側取付部16cが接続されている位置を変位させるための第1調整機構34を構成する。すなわち、基部3は、第1調整機構34を備えている。第1調整機構34は、第1変位部材35、第1調整ボルト36、及び2つの第1シャフト37を備える。
【0068】
本実施の形態において、第1変位部材35は、基部3の左右方向内側の部分に配置されている。第1調整ボルト36及び2つの第1シャフト37のそれぞれは、軸方向が上下方向となるように配置されている。第1調整ボルト36は、基部3に対して軸周りに回転可能であって、かつ、基部3に対して軸方向に変位しないように基部3に保持されている。第1調整ボルト36は、第1変位部材35に設けられているねじ穴にねじ込まれている。2つの第1シャフト37のそれぞれは、上下の端部において基部3に固定されている。第1シャフト37は、第1変位部材35を貫通している。
【0069】
このように構成されている第1調整機構34において、第1調整ボルト36が軸周りに回転するのに伴い、図に矢印M1で示されるように、第1変位部材35が第1シャフト37に沿って上下に変位する。第1調整機構34は、第1調整ボルト36を用いた直動機構により第1変位部材35を変位させるといえる。すなわち、作業者は、第1調整ボルト36を回転させて第1変位部材35の位置を調整することにより、第1ガススプリング16の第1基端側取付部16cが接続されている位置を変位させることができる。なお、第1基端側取付部16cの位置の上下方向における調整範囲は、第1上側リンク12の基端側のジョイントと第1下側リンク13の基端側のジョイントとの間にあるが、これに限られない。
【0070】
なお、第1調整ボルト36には、作業者が手で摘むことができる把持部(図示せず)が設けられていてもよい。把持部は、例えば、第1調整ボルト36と同軸に設けられたノブなど、第1調整ボルト36の軸に垂直な方向の寸法が第1調整ボルト36の径よりも大きな部位を有するものであることが好ましい。作業者は、把持部を手で摘まんで第1調整ボルト36の軸周りに回転させることにより、容易に第1調整ボルト36を回転させて第1変位部材35の位置を調整することができる。なお、第1調整ボルト36として、把持部が一体となったノブボルトを用いるようにしてもよい。
【0071】
第1ガススプリング16の第1基端側取付部16cの位置が上下方向に変位すると、側面視で、第1先端側取付部16bと第1上側リンク12の基端側の回転軸とを結ぶ直線と、第1ガススプリング16の取付部16b,16cを結ぶ直線とがなす角度(図4において符号b1,b2で示す角度)が変化する。そのため、第1ガススプリング16の反力のうち第1上側リンク12を上方に回転させるようにはたらく力の大きさが変化する。したがって、第1調整機構34により、作業者は、負荷の大きさに応じた適切な第1ガススプリング16による反力を得ることができる。
【0072】
また、第1先端側取付部16bは関節部4の近くに取り付けられており、第1基端側取付部16cの位置の上下方向における調整範囲は、第1上側リンク12の基端側のジョイントと第1下側リンク13の基端側のジョイントとの間にある。したがって、第1アーム部11の基部3に対する可動範囲を大きく確保することができ、また、第1アーム部11の周囲に作業の妨げになりうる他の部材が存在しないようにすることができる。
【0073】
また、図4に示されるように、第2ガススプリング26の第2先端側取付部26b及び第2基端側取付部26cは、それぞれ、第2上側リンク22と関節部4とに接続されている。例えば、第2先端側取付部26bは、ボディ側のジョイント部であり、第2基端側取付部26cは、ピストンロッド側のジョイント部である。第2先端側取付部26bは、第2上側リンク22において、先端側に設けられているブラケット部22bに取り付けられている。第2基端側端部26cは、関節部4に設けられている第2変位部材45に取り付けられている。
【0074】
ここで、本実施の形態において、第2変位部材45は、第2調整ボルト46及び第2シャフト47とともに、第2ガススプリング26の第2基端側取付部26cが接続されている位置を変位させるための第2調整機構44を構成する。すなわち、関節部4は、第2調整機構44を備えている。第2調整機構44は、第2変位部材45、第2調整ボルト46、及び2つの第2シャフト47を備える。
【0075】
本実施の形態において、第2変位部材45は、関節部4の左右方向内側の部分に配置されている。第2調整ボルト46及び2つの第2シャフト47のそれぞれは、軸方向が上下方向となるように配置されている。第2調整ボルト46は、関節部4に対して軸周りに回転可能であって、かつ、関節部4に対して軸方向に変位しないように関節部4に保持されている。第2調整ボルト46は、第2変位部材45に設けられているねじ穴にねじ込まれている。2つの第2シャフト47のそれぞれは、上下の端部において関節部4に固定されている。第2シャフト47は、第2変位部材45を貫通している。
【0076】
このように構成されている第2調整機構44において、第2調整ボルト46が軸周りに回転するのに伴い、図に矢印M2で示されるように、第2変位部材45が第2シャフト47に沿って変位する。第2調整機構44は、第2調整ボルト46を用いた直動機構により第2変位部材45を変位させるといえる。すなわち、作業者は、第2調整ボルト46を回転させて第2変位部材45の位置を調整することにより、第2ガススプリング26の第2基端側取付部26cが接続されている位置を変位させることができる。なお、第2基端側取付部26cの位置の上下方向における調整範囲は、第2上側リンク22の基端側のジョイントと第2下側リンク23の基端側のジョイントとの間にあるが、これに限られない。
【0077】
なお、第2調整ボルト46には、作業者が手で摘むことができる把持部(図示せず)が設けられていてもよい。把持部は、例えば、第2調整ボルト46と同軸に設けられたノブなど、第2調整ボルト46の軸に垂直な方向の寸法が第2調整ボルト46の径よりも大きな部位を有するものであることが好ましい。作業者は、把持部を手で摘まんで第2調整ボルト46の軸周りに回転させることにより、容易に第2調整ボルト46を回転させて第2変位部材45の位置を調整することができる。なお、第2調整ボルト46として、把持部が一体となったノブボルトを用いるようにしてもよい。
【0078】
第2ガススプリング26の第2基端側取付部26cの位置が上下方向に変位すると、側面視で、第2先端側取付部26bと第2上側リンク22の基端側の回転軸とを結ぶ直線と、第2ガススプリング26の取付部26b,26cを結ぶ直線とがなす角度(図4において符号c1,c2で示す角度)が変化する。そのため、第2ガススプリング26の反力のうち第2上側リンク22を上方に回転させるようにはたらく力の大きさが変化する。したがって、第2調整機構44により、作業者は、負荷の大きさに応じた適切な第2ガススプリング26による反力を得ることができる。
【0079】
また、第2先端側取付部26bは先端部5の近くに取り付けられており、第2基端側取付部26cの位置の上下方向における調整範囲は、第2上側リンク22の基端側のジョイントと第2下側リンク23の基端側のジョイントとの間にある。したがって、第2アーム部21の関節部4に対する可動範囲を大きく確保することができ、また、第2アーム部21の周囲に作業の妨げになりうる他の部材が存在しないようにすることができる。
【0080】
このように、本実施の形態においては、2つのアーム部11,21に作用するそれぞれのガススプリングによる力の大きさを調整することができるので、先端部5にかかる負荷の大小に対応することができる。
【0081】
図5は、同作業補助装置1の工具保持部6を示す平面図である。
【0082】
図5に示されるように、実施の形態においては、工具保持部6は、筐体61と、筐体61の前方に設けられている蓋部62と、筐体61と蓋部62との間に設けられているヒンジ63と、筐体61に対して蓋部62を固定するためのロック機構64とを備えている。工具保持部6は、先端部5に対して、左右方向の回転軸周りに回転可能となるように取り付けられるが、これに限られるものではない。
【0083】
本実施の形態において、工具保持部6には、4つのローラ65,66が設けられている。すなわち、工具保持部6には、後側にある2つの可動ローラ65と、前側にある2つの支持ローラ66とが設けられている。また、工具保持部6は、位置調整機構67を備える。位置調整機構67は、可動ローラ支持部68とノブ69とを備える。
【0084】
2つの可動ローラ65は、可動ローラ支持部68に回転可能に支持されている。可動ローラ支持部68の前方に、2つの可動ローラ65が左右に並んで配置されている。また、可動ローラ支持部68は、筐体61に、前後方向に変位可能に支持されている。可動ローラ支持部68は、ノブ69が取り付けられているねじを用いた直動機構により、筐体61に対して前後方向に変位可能である。すなわち、本実施の形態において、2つの可動ローラ65は、位置調整機構67により、その回転軸に対して垂直な方向に変位可能となっている。2つの可動ローラ65は、他の支持ローラ66に対して近づいたり離れたりする方向すなわち前後方向に変位可能となっている。
【0085】
2つの支持ローラ66は、蓋部62に回転可能に支持されている。蓋部62の内側に向けて、2つの支持ローラ66が左右に並んで配置されている。
【0086】
4つのローラ65,66は、それぞれ、上下方向の寸法が比較的長い円柱形状を有している。4つのローラ65,66のそれぞれの回転軸は互いに平行であり、各回転軸は上下方向に平行である。4つのローラ65,66の外周面は、例えばゴム等の樹脂製である。
【0087】
ここで、2つの支持ローラ66は、2つの可動ローラ65の前方に位置している。4つのローラ65,66は、工具保持部6により保持される工具90の棒状部(図5において二点鎖線で示す)の周囲を囲むように配置されている。4つのローラ65,66は、それぞれの外周面が一の円筒面に接しうるように配置されている。
【0088】
4つのローラ65,66に棒状部の外周面が接するようにして工具90が配置されると、工具90は、上下方向には変位しないように保持される。各ローラ65,66は筐体61に対して回転可能であるため、工具保持部6により保持されている工具90は、上下方向周り(水平方向)には、工具保持部6に対して回転可能となる。
【0089】
図6は、同工具保持部6の蓋部62を開いた状態を示す図である。
【0090】
図6に示されるように、蓋部62は、ヒンジ63を中心に筐体61に対して回転して開状態になりうる。ヒンジ63は、回転軸が上下方向に平行となるように、筐体61及び蓋部62の左側の側面に配置されている。筐体61及び蓋部62の右側の側面には、蓋部62が筐体61の前面を覆う閉状態であるときに蓋部62を筐体61に対して固定するロック機構64が設けられている。ロック機構64は、例えばレバー付きの留め金具(いわゆるパチン錠)であるが、これに限られない。閉状態からロック機構64による固定を外すことで蓋部62が回転可能となり、筐体61の前面が前方に露出する開状態にすることができる。
【0091】
工具保持部6に工具90を保持させる場合は、蓋部62を開状態としてから、工具90を可動ローラ65に当たるように配置したままで蓋部62を閉状態になるように回転させて、ロック機構64により蓋部62の位置を固定すればよい。これにより、容易に工具90を工具保持部6に取り付けたり取り外したりすることができる。
【0092】
なお、ロック機構64により固定されている状態とは、蓋部62が筐体61に対して全く変位する余地のない状態を意味するものに限られない。蓋部62が開状態にならない程度に遊びを有する状態で筐体61に取り付けられている状態であってもよい。本実施の形態において、ロック機構64は蓋部62を筐体61に対して引き付けるばねを有するものであるが、これに限られない。
【0093】
図7は、同工具保持部6の一機能を説明する図である。
【0094】
本実施の形態においては、上述のように、工具保持部6に位置調整機構67が設けられており、2つの可動ローラ65は、他の支持ローラ66に対して近づいたり離れたりする方向すなわち前後方向に変位可能となっている。したがって、工具保持部6は、棒状部の太さが異なる様々な工具90を保持可能に構成されている。
【0095】
すなわち、図5において示されているように、棒状部の直径がD1である工具90を保持する場合には、可動ローラ65と支持ローラ66との前後方向の軸間距離を例えばd1に設定して、工具90の棒状部に4つのローラ65,66がしっかり接触する状態とすることで、工具90を確実に保持することが可能となる。
【0096】
他方、図7において示されているように、棒状部の直径がD1よりも大きいD2である工具90Bを保持する場合には、可動ローラ65と支持ローラ66との前後方向の軸間距離を例えばd1よりも大きいd2に設定して、工具90Bの棒状部に4つのローラ65,66がしっかり接触する状態とすることで、工具90Bを確実に保持することが可能となる。
【0097】
図8は、同工具保持部6の動作を説明する図である。
【0098】
図8においては、工具90(二点鎖線で示す)と、工具90の把持部により把持されている電線とが模式的に示されている。本実施の形態においては、工具保持部6に4つのローラ65,66が設けられており、工具90は工具保持部6に対して水平方向に回転可能である。そのため、工具90で電線を把持した状態のままで、図8に実線及び二点鎖線で示すように作業補助装置1の先端部の向きが変わっても、電線に対する工具90の向きを維持させることができる。したがって、間接活線工法による作業を容易に行えるようにすることができる。
【0099】
図9は、同作業補助装置1の非使用状態を示す図である。
【0100】
上述のように、本実施の形態において、関節部4は、後側関節部41と、前側関節部42とに分かれている。そのため、固定機構48により前側関節部42が後側関節部41に対して固定された第1の状態と、固定機構48による固定が解除されて、第1の状態から前側関節部42が後側関節部41に対して回動した第2の状態とに相互に変更可能である。
【0101】
上述の図1などに示される状態は、第1の状態である。作業補助装置1が作業時に使用される際には、第1の状態とされる。すなわち、第1の状態は、ロック状態と言い替えることができるし、使用状態と言い替えることができる。
【0102】
図9においては、第2の状態が示されている。第2の状態は、アンロック状態と言い替えることができるし、非使用状態と言い替えることができる。第2の状態においては、回転軸43を中心に、先端側の各部(前側関節部42、第2アーム部21、及び先端部5など)を基端側の各部(後側関節部41、第1アーム部11、及び基部3など)に沿うように回転させることができる。そのため、関節部4に対する第2アーム部21の可動範囲にかかわらず、図9に示されるように、作業補助装置1を、全体として折り畳まれたコンパクトな状態にすることができる。このような第2の状態にすることは、作業補助装置1を運搬する場合や保管場所などに収納しておく場合などに好適である。すなわち、第2状態を、運搬状態又は収納状態と言い替えることができる。なお、第2の状態の姿勢のままで維持されるように作業補助装置1の各部を固定する機構が設けられていてもよい。
【0103】
このように、本実施の形態においては、作業補助装置1を、状況に合わせて第1の状態と第2の状態とに相互に変更することができるので、容易に取り扱い可能にすることができる。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態においては、作業補助装置1は、複雑な機構を用いずに、小さい力で先端部5を変位させることができるように構成されている。また、基部3に対する先端部5の可動範囲を広くすることができる。したがって、簡素な構造を有しており利便性が高い作業補助装置1を提供することができる。
【0105】
(その他)
【0106】
工具保持部は、上述のように4つのローラを有するものに限られず、他の方法で工具を保持可能であってもよい。複数のローラを用いる場合、回転軸が互いに平行である3以上のローラを有しているのが好適であり、これらの3以上のローラが、工具保持部により保持される工具の棒状部の周囲を囲むように配置されていればよい。このとき、3以上のローラのうち1以上のローラが、その回転軸に対して垂直な方向に変位可能にすることにより、棒状部の太さが異なる様々な工具を工具保持部に保持させることができる。
【0107】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0108】
上述の実施の形態の構成そのものに限られず、上述の実施の形態のそれぞれの構成要素について、適宜、他の実施の形態の構成要素と置換したり組み合わせたりしてもよい。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明にかかる作業補助装置は、簡素な構造を有し、かつ、利便性が高いものであるので、作業補助装置等として有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 作業補助装置、3 基部、4 関節部、5 先端部、6 工具保持部、11 第1アーム部、12 第1上側リンク、13 第1下側リンク、16 第1ガススプリング、16b 第1先端側取付部、16c 第1基端側取付部、19 第1ロック部、21 第2アーム部、22 第2上側リンク、23 第2下側リンク、26 第2ガススプリング、26b 第2先端側取付部、26c 第2基端側取付部、29 第2ロック部、34 第1調整機構、41 後側関節部、42 前側関節部、44 第2調整機構、48 固定機構、65 可動ローラ、66 支持ローラ、90 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9