特開2021-112354(P2021-112354A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021112354-歯ブラシ 図000003
  • 特開2021112354-歯ブラシ 図000004
  • 特開2021112354-歯ブラシ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112354(P2021-112354A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20210709BHJP
   A46B 5/00 20060101ALI20210709BHJP
【FI】
   A46B15/00 P
   A46B5/00 BZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-5991(P2020-5991)
(22)【出願日】2020年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】507302874
【氏名又は名称】株式会社夢職人
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】辻 陽平
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB16
3B202BA02
3B202CA05
(57)【要約】
【課題】カビや黒ずみが発生しづらい歯ブラシを提供する。
【解決手段】竹製の本体2と、ブラシ部3とからなる歯ブラシ1であって、本体2には、白金コロイド粒子が溶け込んだ白金コロイド水溶液と、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を3分以上維持することで、ミネラル成分として、カルシウム15〜20(mg/L)、マグネシウム2.5〜3.0(mg/L)、カリウム2.9〜4.6(mg/L)、鉄<0.1(mg/L)、ナトリウム14〜21(mg/L)、ケイ素2.3〜6.7(mg/L)、銅<0.02(mg/L)、亜鉛<0.01(mg/L)を主成分として含有してなるミネラル水が塗布されてなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹製の本体と、ブラシ部とからなる歯ブラシであって、
前記本体には、白金コロイド粒子が溶け込んだ白金コロイド水溶液と、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を3分以上維持することで、ミネラル成分として、カルシウム15〜20(mg/L)、マグネシウム2.5〜3.0(mg/L)、カリウム2.9〜4.6(mg/L)、鉄<0.1(mg/L)、ナトリウム14〜21(mg/L)、ケイ素2.3〜6.7(mg/L)、銅<0.02(mg/L)、亜鉛<0.01(mg/L)を主成分として含有してなるミネラル水が塗布されてなること
を特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記白金コロイド水溶液と前記ミネラル水は、前記ブラシ部にも塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しく、防カビ性に優れた歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックごみの問題が深刻化を増している。例えば、世界中で製造・販売されている歯ブラシの大半はプラスチック製であり、世界中で1年間に廃棄されている歯ブラシは36憶本とも言われている。これを焼却処分した場合には、温室効果ガスを発生させることから、地球温暖化に与える影響は大きく、歯ブラシ業界に対し何らかの対策が求められている。
【0003】
この対策の1つとして、例えば、特許文献1に記載のロングライフ歯ブラシがある。このロングライフ歯ブラシは、曲がりやすい外側の毛を自然なカーブで短くカットした、毛が曲がり難くい構造の歯ブラシである。すなわち、このロングライフ歯ブラシの目的とするところは、従来よりも毛の部分を曲がり難くい構造とすることにより、1つの歯ブラシの使用期間を長くすることができるとしている。確かにこのロングライフ歯ブラシを使用すれば、年間の歯ブラシの廃棄量を削減でき、その結果、温室効果ガスの発生量の削減にもつながる。しかしながら、世界中の歯ブラシをこのロングライフ歯ブラシに変更したとしても、素材がプラスチックであることに変わりないので、単に、プラスチック製歯ブラシの年間の廃棄本数を減らせるだけで、地球温暖化防止の根本的な解決方法とは言えない。
【0004】
その一方、歯ブラシの素材自体を変えて温室効果ガスの発生量を削減した歯ブラシも近年出現している。その1つとして、近年、特に欧州で注目を集めている竹製歯ブラシがある。この竹製歯ブラシは、本体部分を竹製とするものであることから、燃やしたときにプラスチックのように温室効果ガスが出ない、プラスチックと違い生分解性を有するので環境に優しい、竹は成長が早いので材料として好適である、特に日本は欧州と違い竹資源が豊富なため、輸送での環境負荷をかけずに身近なものを地産地消できるなど、プラスチック製歯ブラシを竹製歯ブラシに変更すれば、多くの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−28462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、素材を竹にすれば上述したような種々の利点があり、温室効果ガスの発生の抑止につながる。その一方、竹製品は、カビの発生や、黒ずみの発生等の問題が生じ衛生面で問題が生ずる。
【0007】
そこで、本発明は、従来よりも、カビや黒ずみが発生しづらい歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の歯ブラシは、竹製の本体と、ブラシ部とからなる歯ブラシであって、前記本体には、白金コロイド粒子が溶け込んだ白金コロイド水溶液と、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を3分以上維持することで、ミネラル成分として、カルシウム15〜20(mg/L)、マグネシウム2.5〜3.0(mg/L)、カリウム2.9〜4.6(mg/L)、鉄<0.1(mg/L)、ナトリウム14〜21(mg/L)、ケイ素2.3〜6.7(mg/L)、銅<0.02(mg/L)、亜鉛<0.01(mg/L)を主成分として含有してなるミネラル水が塗布されてなることを特徴とする。
【0009】
また、白金コロイド水溶液と前記ミネラル水は、前記ブラシ部にも塗布されていてもよい。
【0010】
ここでは、歯を磨く部分をブラシ部と称し、それ以外の部分を本体と称している。
【0011】
また、前記ミネラル成分は玄武岩に接触した水が前記玄武岩の各種構成成分を抽出することによりその水中に溶出するが、この溶出成分は、前記水が低温である内は溶出しにくいと考えられ、その水は、玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上に加熱維持することによって、確実に有効成分を溶出させることができる。たとえば、常温もしくはそれ以下程度の温度の水を玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させることが好ましい。これにより、水の昇温過程で玄武岩が昇温されて、有効成分を放出し始めるとともに、高温に達した水が、その有効成分を抽出するというように、効率よく有効成分を抽出できるものと考えられる。
【0012】
なお、玄武岩は火成岩の一種であり、多孔質であることから、表面積が大きく、鉱石と水との接触面積を大きく確保することができるので、比較的容易に抽出作業が行えること、他の火成岩に比べ、塩基性に偏った成分組成が上述の有効成分として働いている可能性が高いこと、などの利点が見出され、特に好適なものとして選ばれたものである。
【0013】
また、水により抽出可能なミネラル成分量には限度があり、大量のミネラル分を抽出したとしても、常温で使用する場合に、溶解していたミネラル成分が析出してしまう場合がある。一方ミネラル成分が少なすぎると、有効成分の働きが十分得られなくなると考えられる。そこで、ミネラル成分の抽出条件について検討したところ、水量と玄武岩量との関係は、水1Lあたり、2g以上の玄武岩に接触させると、有効成分が十分量抽出されるため好ましく、玄武岩量が多すぎると抽出取り扱い操作性が低下するとともに「おり」が増加して好ましくない場合があるが、防カビ効果等にはかわりがない。また、抽出には、高温域において所定時間以上要するものと予想されることから、水を昇温して90℃以上になってから3分以上維持することが望ましい。実際には水を煮沸状態にまで昇温させたのち、即座に冷却しても十分に撥水効果等を発揮する場合があり、実用上は、煮沸状態で1〜2時間維持したとしても、「おり」がやや増加する程度で、十分高い防カビ効果等を発揮するミネラル水が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歯ブラシによれば、竹製の本体には、白金コロイド粒子が溶け込んだ白金コロイド水溶液と、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を3分以上維持することで、ミネラル成分として、カルシウム15〜20(mg/L)、マグネシウム2.5〜3.0(mg/L)、カリウム2.9〜4.6(mg/L)、鉄<0.1(mg/L)、ナトリウム14〜21(mg/L)、ケイ素2.3〜6.7(mg/L)、銅<0.02(mg/L)、亜鉛<0.01(mg/L)を主成分として含有してなるミネラル水が塗布されてなるように構成した。これにより、プラスチック製の歯ブラシ自体の廃棄をなくせることから従来の温室効果ガスの発生を抑止することができるとともに、さらに、従来よりも、カビや黒ずみが発生しづらいことから快適に長く歯ブラシを使用することができるといった効果を奏し得る。
【0015】
また、ブラシ部にも、白金コロイド水溶液とミネラル水を塗布することにより、ブラシ部にも防カビ効果や黒ずみ防止効果を得られる他、歯の再石灰化という効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る歯ブラシの図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
図2】実験結果を示す画像であり、従来の歯ブラシの実験結果を示す画像。
図3】実験結果を示す画像であり、本発明の歯ブラシの実験結果を示す画像。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る歯ブラシの実施の形態について説明する。
【0018】
図1に示すとおり、本発明の歯ブラシ1は、竹製の本体2と、ブラシ部3とからなる。ブラシ部3は、ナイロン、飽和ポリエステル樹脂(PBT)などの人工毛、豚毛、馬毛、山羊毛、アナグマ毛などの天然毛のいずれも適用可能である。本体2には、以下のようにして生成される白金コロイド水溶液とミネラル水が塗布されている。なお、図1には本発明の歯ブラシの一例を図示しているが、ここに図示する形状に限定されず、後述する図3に示した本発明の歯ブラシとは形状が異なっている。
【0019】
本体2に塗布する白金コロイド水溶液は、水99.99797%、白金0.002%、銀0.00003%を含む水溶液である。また、本体2に塗布するミネラル水は、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で加熱昇温させ、90℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を3分以上維持することによって生成される。具体的には、2gの粒状の玄武岩を1Lのイオン交換水に浸漬するとともに加熱容器に収容して加熱昇温し、前記水を煮沸状態とする。水と玄武岩との両者をあわせて加熱している場合、加熱操作中には、両者はほぼ同じ温度条件にあると考えられる。この煮沸状態は、玄武岩が90℃以上になってから1時間〜2時間維持する。この熱水を、玄武岩の粒子やおりを濾過した状態で冷却し、ミネラル水を生成する。
【0020】
ケイ素49.18、アルミニウム16.74、鉄(II)4.00、鉄(III)8.48、マグネシウム5.28、カルシウム10.42、ナトリウム2.42、カリウム1.16、チタン1.03、リン0.54、マンガン0.15(単位%、いずれの成分も酸化物として算出)からなる組成の玄武岩を用いた場合に得られたミネラル水を定法により分析したところ、このミネラル水の成分組成分析値は次のようになった。カルシウム15〜20、マグネシウム2.5〜3.0、カリウム2.9〜4.6、鉄<0.1、ナトリウム14〜21、ケイ素2.3〜6.7、銅<0.02、亜鉛<0.01(単位mg/L)。なお、このミネラル水を、水道法に基づく水質基準(厚生省令第69号)に照らした場合、法定46項目すべてについて、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準の飲用水として適合していることがわかり、このミネラル水は、食品衛生面での使用のほか、直接飲用としても好適に利用可能なものであることがわかった。
【0021】
そして、上記白金コロイド水溶液を竹製の本体2に塗布し、次いで、上記ミネラル水を竹製の本体2に塗布することにより、本発明の歯ブラシ1が製造される。
【0022】
次に、このようにして得られた歯ブラシ1の防カビ効果等を検証すべく、検証実験を行なった。実験方法としては、ペットボトルを2つ用意し、一方には従来の竹製歯ブラシ(以下「従来品」と言う)、もう一方には本発明の歯ブラシ(以下「本発明品」と言う)を入れ、同量の水を入れて密閉し、各ペットボトルを十分にシェイクしてそれぞれの歯ブラシを濡らし、この密閉状態のまま放置してカビや黒ずみの発生状況を観察した。
【0023】
この実験による16日後の状態を示したものが、図2図3である。図2は従来品の状態を示す画像であり、図3は本発明品の状態を示す画像である。両者を見比べると、従来品においては矢印部分他白くなっている部分にカビが発生しているが、本発明品においては全く発生していない。白黒画像なので分かりづらいが、従来品においては黒ずみも発生していたが、本発明品においては発生していなかった。このように、本発明品は従来品に比して、顕著な防カビ効果、黒ずみ防止効果を有するものである。
【0024】
次に、上記実験過程において、従来品の竹製歯ブラシの状態を観察したところ、ブラシ部にもカビが発生していたので、本発明者らは前記態様の本発明品においてブラシ部にも白金コロイド水溶液とミネラル水を塗布したところ、カビの発生を抑止することができた。
【0025】
更に、副次的な効果として歯の再石灰化という効果も得ることができた。
【符号の説明】
【0026】
1 歯ブラシ
2 本体
3 ブラシ部
図1
図2
図3