特開2021-112378(P2021-112378A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112378(P2021-112378A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】点眼具
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20210709BHJP
【FI】
   A61J1/05 313E
   A61J1/05 313B
   A61J1/05 313C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-6479(P2020-6479)
(22)【出願日】2020年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】520022894
【氏名又は名称】株式会社スクエアメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100170449
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 達夫
(72)【発明者】
【氏名】早田 栄
(72)【発明者】
【氏名】原田 厚志
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047EE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与し、かつ、微量の点眼剤を容易に点眼することができる点眼具を提供する。
【解決手段】開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体(2)を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤をカップ体(2)の中央の付近において眼球に点眼する点眼具(1)であって、カップ体(2)は、開口側に略環状に配設される複数の前記当て部を有し、該複数の当て部は、上眼瞼当て部(3a)と、前記中央を挟んで上眼瞼当て部(3a)と相対して配置される下眼瞼当て部(3b)と、前記中央を中心に上眼瞼当て部(3a)及び下眼瞼当て部(3b)とそれぞれ略90度の角度を成して配置される外眼角当て部(4)とを含み、前記各当て部は弾性を有するとともに、前記中央に対して拡がる向きに自在に弾性変形可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤を前記カップ体の中央の付近において眼球に点眼する点眼具であって、
前記カップ体は、開口側に略環状に配設される複数の前記当て部を有し、
該複数の当て部は、上眼瞼当て部と、前記中央を挟んで前記上眼瞼当て部と相対して配置される下眼瞼当て部と、前記中央を中心に前記上眼瞼当て部及び前記下眼瞼当て部とそれぞれ略90度の角度を成して配置される外眼角当て部とを含み、
前記各当て部は弾性を有するとともに、前記中央に対して拡がる向きに自在に弾性変形可能な
ことを特徴とする点眼具。
【請求項2】
前記点眼剤を噴出するための点眼ノズルと、前記点眼剤容器の長手方向に対して前記点眼ノズルの噴出方向を曲げる流路とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の点眼具。
【請求項3】
前記流路は、前記噴出方向を前記長手方向に対して90度曲げる
ことを特徴とする請求項2に記載の点眼具。
【請求項4】
開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器の胴部を直径方向から押圧し、かつ、該押圧した状態から解除するために移動する容器押圧部を有し、該容器押圧部が前記点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤を前記カップ体の中央の付近において眼球に点眼する点眼具であって、
前記カップ体は、略環状に配設される複数の前記当て部を有し、
該複数の当て部は、上眼瞼当て部と、前記中央を挟んで前記上眼瞼当て部と相対して配置される下眼瞼当て部と、前記中央を中心に前記上眼瞼当て部及び前記下眼瞼当て部とそれぞれ略90度の角度を成して配置される外眼角当て部とを含み、
前記各当て部は弾性を有するとともに、前記中央に対して拡がる向きに自在に弾性変形可能であり、
前記容器押圧部は、電動機によって駆動され、前記胴部を押圧する方向である胴部押圧方向に往復動する
ことを特徴とする点眼具。
【請求項5】
前記点眼剤を噴出するための点眼ノズルと、前記点眼剤容器の長手方向に対して前記点眼ノズルの噴出方向を曲げる流路とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の点眼具。
【請求項6】
前記流路は、前記噴出方向を前記長手方向に対して90度曲げる
ことを特徴とする請求項5に記載の点眼具。
【請求項7】
前記容器押圧部は、点眼具本体側に固定される第1の節と、前記電動機の駆動によって回転する第2の節とを含むピストンクランク機構において、滑り子であり、かつ、前記第1の節と共に一の滑り対偶を構成する第3の節に相当するとともに、前記胴部押圧方向にスライドして往復動する
ことを特徴とする請求項4ないし6の何れかに記載の点眼具。
【請求項8】
前記点眼剤容器の胴部を直径方向の両側に挟むための一対の前記容器押圧部を有し、
一方の前記容器押圧部は、点眼具本体側に固定される第1の節と、前記電動機の駆動によって回転する第2の節とを含むピストンクランク機構において、滑り子であり、かつ、前記第1の節と共に一の滑り対偶を構成する第3の節に相当するとともに、前記胴部押圧方向にスライドして往復動し、
前記一方の容器押圧部と他方の前記容器押圧部とは、それぞれが軸支し、かつ、一組の回り対偶を成す一対の傾斜リンクがパンタグラフ機構を構成するとともに、前記一対の傾斜リンクによる正逆反対向きの回転に伴い、互いが同時且つ反対向きにスライドして往復動する
ことを特徴とする請求項4ないし6の何れかに記載の点眼具。
【請求項9】
前記容器押圧部がラックに固定され、かつ、前記ラックと共にラック・アンド・ピニオンを構成するピニオンが前記電動機の駆動によって回転し、
前記容器押圧部は、前記回転に従動して前記往復動する
ことを特徴とする請求項4ないし6の何れかに記載の点眼具。
【請求項10】
前記容器押圧部は、少なくとも前記点眼剤容器の胴部を押圧する部分の材質が金属である
ことを特徴とする請求項4ないし9の何れかに記載の点眼具。
【請求項11】
前記カップ体は、前記中央を略中心に回転自在に軸支される
ことを特徴とする請求項1ないし10の何れかに記載の点眼具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点眼剤容器中の点眼剤を眼球に点眼する点眼具に関し、特に開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有する点眼具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤を前記カップ体の中央の付近において眼球に点眼する点眼具がある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された従来の点眼具は、前記カップ体を有するため、カップ体の開口側に設けられた当て部を使用者の眼窩周辺に当てることができ、これにより、使用者又は介助者が点眼具を適切な姿勢に保持し、点眼操作を容易に行うことができる。
【0004】
また、従来、装着する点眼剤容器の胴部を直径方向から押圧し、かつ、該押圧した状態から解除するために移動する容器押圧部を有する点眼具がある(特許文献2)。
【0005】
点眼剤容器の一般的な材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑樹脂が用いられることが知られている。
【0006】
そこで、特許文献2に開示された従来の点眼具は、前記容器押圧部を有するため、小さな操作力でこれら樹脂製の点眼剤容器の押圧を行うことができ、指操作が苦手な人でも容易な点眼操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−295880号公報
【特許文献2】特開2002−248157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、点眼剤は1滴が30〜50μLであるのに対して成人が結膜嚢に保持できる液量が20〜30μLであり、しかも、約7μLの涙液が結膜嚢に常在する。そのため、1滴の一部は目の外にあふれてしまう。
【0009】
その一方で、従来の点眼具におけるカップ体を使用者の眼窩周辺に当てる場合でも、点眼時に上眼瞼と下眼瞼とが十分に開いていないときは、適切な量の点眼剤が目に入らない。例えば、特許文献1に開示された点眼具のカップ体が筒状のものであり、使用者の瞼の周縁に当接するに過ぎないので、カップ体を当てるときでも上下眼瞼を閉じてしまうことが起き、点眼剤は目の内に入らない。
【0010】
そのため、従来の点眼具を用いて点眼するときは、一回の点眼だけで適切な量の点眼剤が目に入らない虞がある。これにより、点眼し直しのため、使用者が既定の回数よりも多くの回数の点眼を行う可能性があり、また、その度合いの予測が難しい。その結果、本来ならば1本の容器によって十分な日数の点眼が可能にもかかわらず、多くの回数の点眼を行ったため、点眼剤の消費が速く、予定の日数よりも早く所定の本数を使い切ってしまう虞が大きい。これにより点眼剤が足りなくなる危険があり、かつ、だからといって予備の点眼剤を多く備えることは不経済である。しかも、品質を保証する期間を徒過する可能性が増大する。
【0011】
さらに、既定の回数よりも極端に多くの回数の点眼を行うときは、点眼剤の副作用が生じる事態に至る危険が心配される。特に、既定により微量の点眼剤を点眼する場合において、既定よりも多い点眼剤を目に入れてしまうリスクと、十分な点眼剤を目に入れていないリスクとの両方が懸念される。
【0012】
また、従来の点眼具は手動により点眼剤容器を押圧して点眼する。例えば、特許文献2に開示された点眼具は、一対の操作アーム部が手指により揺動操作され、前記各操作アーム部に設けられた押圧突起が点眼剤容器の胴部を押圧して点眼剤を排出する。そのため、前記各操作アーム部の揺動操作の強弱によって、排出される点眼剤の量は大小する。
【0013】
この理由からも、上で述べたように点眼剤が足りなくなる危険があり、また、副作用が生じる事態に至る危険がある。しかも、1回の点眼操作によって目に入る点眼剤の量にバラつきがあるため、使用者又は介助者は、適切な量の点眼剤が点眼されたかどうかを判断することが難しい。特に、微量の点眼剤を点眼するときに、手動の点眼操作によって量の調整を行うことは困難である。
【0014】
本発明は、これらのような問題に鑑み、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与し、かつ、微量の点眼剤を容易に点眼することができる点眼具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明は開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤を前記カップ体の中央の付近において眼球に点眼する点眼具であって、 前記カップ体は、開口側に略環状に配設される複数の前記当て部を有し、該複数の当て部は、上眼瞼当て部と、前記中央を挟んで前記上眼瞼当て部と相対して配置される下眼瞼当て部と、前記中央を中心に前記上眼瞼当て部及び前記下眼瞼当て部とそれぞれ略90度の角度を成して配置される外眼角当て部とを含み、前記各当て部は弾性を有するとともに、前記中央に対して拡がる向きに自在に弾性変形可能なことを特徴とする点眼具を提供するものである。
【0016】
すなわち、本発明の点眼具は、上眼瞼当て部と、下眼瞼当て部と、外眼角当て部とを有し、これらがカップ体の中央から拡がるように弾性変形するため、前記カップ体を使用者の眼窩周辺に当てることにより、点眼時に上眼瞼を上向きに、下眼瞼を下向きに、外眼角を外向きにそれぞれ広げることができる。これにより、上下眼瞼を閉じてしまって点眼剤が目に入らずに点眼を失敗する可能性が低減する。
【0017】
そのため、本発明の点眼具は、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与し、微量の点眼剤であっても一回で正確な分量を点眼することができる。
【0018】
(2)また、前記点眼剤を噴出するための点眼ノズルと、前記点眼剤容器の長手方向に対して前記点眼ノズルの噴出方向を曲げる流路とを有してもよい。
【0019】
一般に点眼剤容器は、点眼剤を最後まで使い切るため、吐出口を下向きにして長手方向が鉛直方向に一致する姿勢で装着される。これに対して、本発明の点眼具は、点眼ノズルの噴出方向が前記長手方向より曲がり、前記長手方向と一致していないため、前記点眼剤容器を縦に装着するときでも、点眼剤を鉛直下向き以外の向きに噴出させることができる。
【0020】
これにより、使用者は、本発明の点眼具を目の真上に掲げて点眼する必要がなく、楽な姿勢で点眼を行うことができる。そのため、点眼の失敗の可能性が低く、一回の点眼で適切な量を投与することができる。
【0021】
(3)また、前記流路は、前記噴出方向を前記長手方向に対して90度曲げてもよい。
【0022】
すなわち、本発明の点眼具は、点眼ノズルの噴出方向が点眼剤容器の長手方向より90度曲がっているため、前記点眼剤容器を縦に装着するときでも、点眼剤を真横向きに噴出させることができる。
【0023】
これにより、使用者は、本発明の点眼具を目と同じ高さに保持して点眼することができ、首を上向きに曲げることなく楽な姿勢で点眼を行うことができる。そのため、点眼の失敗の可能性が低く、一回の点眼で適切な量を投与することができる。
【0024】
(4)本発明は開口側に設けられる当て部が使用者の眼窩周辺に当たるカップ体を有し、点眼剤容器が装着され、該点眼剤容器の胴部を直径方向から押圧し、かつ、該押圧した状態から解除するために移動する容器押圧部を有し、該容器押圧部が前記点眼剤容器を押圧して前記点眼剤容器中の点眼剤を前記カップ体の中央の付近において眼球に点眼する点眼具であって、前記カップ体は、略環状に配設される複数の前記当て部を有し、該複数の当て部は、上眼瞼当て部と、前記中央を挟んで前記上眼瞼当て部と相対して配置される下眼瞼当て部と、前記中央を中心に前記上眼瞼当て部及び前記下眼瞼当て部とそれぞれ略90度の角度を成して配置される外眼角当て部とを含み、前記各当て部は弾性を有するとともに、前記中央に対して拡がる向きに自在に弾性変形可能であり、前記容器押圧部は、電動機によって駆動され、前記胴部を押圧する方向である胴部押圧方向に往復動することを特徴とする点眼具を提供するものである。
【0025】
すなわち、本発明の点眼具は、前記カップ体を使用者の眼窩周辺に当てることにより、点眼時に上眼瞼当て部によって上眼瞼を上向きに、下眼瞼当て部によって下眼瞼を下向きに、外眼角当て部によって外眼角を外向きにそれぞれ広げることができる。これにより、上下眼瞼を閉じてしまって点眼剤が目に入らずに点眼を失敗する可能性が低減する。
【0026】
また、本発明の点眼具は、容器押圧部が点眼剤容器の胴部を押圧し、かつ、この容器押圧部は電動機によって駆動されるため、前記電動機の回転に従って前記点眼剤容器を押圧し、この点眼剤容器から吐出される点眼剤の量を前記電動機の回転に従って調整することができる。そのため、前記電動機の回転角度又は回転数を精度よく制御することにより、微量の点眼剤を正確な量だけ吐出することができる。
【0027】
このように、本発明の点眼具は、正確な量の微量の点眼剤を吐出することができ、しかも、その微量の点眼剤を確実に眼に投与することができる。
【0028】
(5)また、前記点眼剤を噴出するための点眼ノズルと、前記点眼剤容器の長手方向に対して前記点眼ノズルの噴出方向を曲げる流路とを有してもよい。
【0029】
すなわち、使用者は、本発明の点眼具を目の真上に掲げて点眼する必要がなく、楽な姿勢で点眼を行うことができる。そのため、点眼の失敗の可能性が低く、一回の点眼で、正確な量の微量の点眼剤を確実に投与することができる。
【0030】
(6)また、前記流路は、前記噴出方向を前記長手方向に対して90度曲げてもよい。
【0031】
すなわち、使用者は、本発明の点眼具を目と同じ高さに保持して点眼することができ、首を上向きに曲げることなく楽な姿勢で点眼を行うことができる。そのため、点眼の失敗の可能性が低く、一回の点眼で、正確な量の微量の点眼剤を確実に投与することができる。
【0032】
(7)また、前記容器押圧部は、点眼具本体側に固定される第1の節と、前記電動機の駆動によって回転する第2の節とを含むピストンクランク機構において、滑り子であり、かつ、前記第1の節と共に一の滑り対偶を構成する第3の節に相当するとともに、前記胴部押圧方向にスライドして往復動してもよい。
【0033】
すなわち、本発明の点眼具は、電動機の回転運動を容器押圧部の直線運動に変換する上で、ピストンクランク機構を採用するため、制御された前記電動機の回転角度又は回転数に従って、正確な距離だけ前記容器押圧部を進めさせることができる。これにより、正確な所定量の点眼剤を吐出させる分だけ点眼剤容器を押圧することができ、その正確な所定量の点眼剤を投与することができる。
【0034】
(8)また、前記点眼剤容器の胴部を直径方向の両側に挟むための一対の前記容器押圧部を有し、一方の前記容器押圧部は、点眼具本体側に固定される第1の節と、前記電動機の駆動によって回転する第2の節とを含むピストンクランク機構において、滑り子であり、かつ、前記第1の節と共に一の滑り対偶を構成する第3の節に相当するとともに、前記胴部押圧方向にスライドして往復動し、前記一方の容器押圧部と他方の前記容器押圧部とは、それぞれが軸支し、かつ、一組の回り対偶を成す一対の傾斜リンクがパンタグラフ機構を構成するとともに、前記一対の傾斜リンクによる正逆反対向きの回転に伴い、互いが同時且つ反対向きにスライドして往復動してもよい。
【0035】
すなわち、本発明の点眼具は一対の容器押圧部を有し、これらの容器押圧部がそれぞれ軸支する各傾斜リンクが連鎖して、一方の前記容器押圧部に、他方の前記容器押圧部が従動する。このとき、それぞれの容器押圧部はお互いに反対向きに往復動する。そのため、これらの容器押圧部は点眼剤容器の胴部を両側から挟んで押圧することができる。
【0036】
これにより、本発明の点眼具は、1基の前記電動機によって前記一対の容器押圧部を同時に動かすことができ、前記点眼剤容器に対して正確且つ効率良く押圧することができる。
【0037】
(9)また、前記容器押圧部がラックに固定され、かつ、前記ラックと共にラック・アンド・ピニオンを構成するピニオンが前記電動機の駆動によって回転し、前記容器押圧部は、前記回転に従動して前記往復動してもよい。
【0038】
すなわち、本発明の点眼具は、ラック・アンド・ピニオンによって容器押圧部が電動機の回転に従動して往復動するため、ピストンクランク機構やパンタグラフ機構を採用する必要が無い。これにより、コンパクトな構造によって前記容器押圧部を往復動させ、点眼剤容器を押圧することができる。そのため、本発明の点眼具は正確な量の微量の点眼剤を吐出することができ、しかも、容易に持ち運び、かつ、点眼のために保持することができる。また、収容のために必要なスペースが小さい。
【0039】
(10)また、前記容器押圧部は、少なくとも前記点眼剤容器の胴部を押圧する部分の材質が金属であってもよい。
【0040】
点眼剤容器の一般的な材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑樹脂が用いられることが知られている。そこで、本発明の点眼具は、容器押圧部の押圧部分が金属であることにより、押圧時に前記点眼剤容器から受ける反力に抗って、より確実に前記点眼剤容器を押圧することができる。そのため、電動機の回転に従って前記容器押圧部が正確な距離を移動することができ、本発明の点眼具は、正確な量の微量の点眼剤を吐出することができる。
【0041】
(11)また、前記カップ体は、前記中央を略中心に回転自在に軸支されてもよい。
【0042】
すなわち、カップ体が回転自在であるため、使用者は、点眼具本体を傾いて保持するときでも、点眼時に上眼瞼を上向きに、下眼瞼を下向きに、外眼角を外向きにそれぞれ広げることができる。そのため、点眼具本体の姿勢にかかわらず、点眼を失敗する可能性が低減し、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与することができる。
【0043】
また、上眼瞼当て部と下眼瞼当て部とを共用するときは、前記カップ体の向きを回転させないときの点眼具、または、同じく180°回転させたときの点眼具を、外眼瞼当て部が鼻側に位置しないように、それぞれ左右何れかの目に用いることができる。これにより、一台の本発明の点眼具を、左右それぞれの目に兼用することができて経済的である。
【発明の効果】
【0044】
このように、本発明の点眼具は、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与し、微量の点眼剤であっても一回で正確な分量を点眼することができる。また、正確な量の微量の点眼剤を吐出することができ、しかも、その微量の点眼剤を確実に眼に投与することができる。
【0045】
なお、容器押圧部が電動機によって駆動される場合、本発明の点眼具と、インターネット等の通信回線に接続可能な端末通信手段とを組み合わせ、使用者が操作して原動機を回転させた時にこの端末通信手段から発信される信号を、この使用者とは異なる場所に所在する別の端末通信手段やWebサーバ手段が受信してもよい。これにより、使用者の家族、介護施設、医療機関等は、前記異なる場所においても使用者への点眼剤の投与の履歴を確認することができ、適切な投与が行われるかを判断することができる。
【0046】
このとき、本発明の点眼具が、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与することができるため、前記信号の送受信を通じて、投与された正確な点眼量の履歴を得ることができる。
【0047】
また、カップ体が回転自在に軸支される場合、使用者は、一台の本発明の点眼具を左眼と右眼とのそれぞれに使い分けるとき、その都度、前記カップ体を180°回転させる。そこで、本発明の点眼具と、前記カップ体の回転角度を検知するセンサーと、前記の端末通信手段とを組み合わせ、前記カップ体が回転された時にこの端末通信手段から発信される信号を、この使用者とは異なる場所に所在する別の端末通信手段やWebサーバ手段が受信してもよい。これにより、使用者の家族、介護施設、医療機関等は、前記異なる場所においても使用者への点眼剤の投与が左右何れの眼に対して行われたかを判別することができ、適切な投与が行われたかを判断することができる。
【0048】
このとき、カップ体が外眼角当て部を有するため、仮に左右誤った向きで用いようとするときは使用者の鼻が外眼角当て部の邪魔をする。そのため、本発明の点眼具によって点眼剤の投与を左右何れの眼に対して行われたかを正確に判断することができる。特に使用者の病状によって左右の何れかの眼にしか投与できない場合、誤った側の眼に投与しないように注意を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の第1の実施形態を示す点眼具1の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態を示す点眼具1の正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態を示す点眼具1を使用者の左目の眼窩Gl周辺にカップ体2を当てる状態の説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態を示す点眼具1の左側面断面である。
図5図4の拡大部Eの拡大図である。
図6】本発明の第1の実施形態を示す点眼具1を使用者の右目の眼窩Gr周辺にカップ体2を当てる状態の説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態を示す点眼具11の斜視図である。
図8図7の点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の斜視図である。
図9図7の点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の斜視図である。
図10図7の点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[第1の実施形態]
図1図6は、本発明の第1の実施形態を例示している。図において1が点眼具である。
【0051】
図1は点眼剤容器Bを装着した状態の点眼具1を表した斜視図である。点眼具1はカップ体2を備え、カップ体2が、その開口側に設けられる複数の当て部3a,3b,4を有する。各当て部3a,3b,4は後述するように使用者の眼窩G周辺に当たる。
【0052】
また、点眼具1はノズルブロック5において点眼剤容器Bが装着される。使用者は点眼剤容器Bを押圧して、この点眼剤容器B中の点眼剤Qをカップ体2の中央Cの付近において眼球Eに点眼する。点眼剤容器Bはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑樹脂により形成され、可撓性を有するため、胴部Baが押圧されることにより凹む。そして、内部の体積が減少して押し出される点眼剤Qを排出する。
【0053】
カップ体2は、略環状に配設される各当て部3a,3b,4を有する。図2は、カップ体2の開口側から視た点眼具1の正面図を表す。図において、矢印Uが点眼具1の上側(上向き)を示し、矢印Dが下側(下向き)を示す。また、矢印Lが点眼具1の左側(左向き)を示し、矢印Rが右側(右向き)を示す。
【0054】
カップ体2の各当て部3a,3b,4は、中央Cの上側Uに配置される上眼瞼当て部3aと、中央Cの下側Dに配置される下眼瞼当て部3bと、中央Cの左側Lに配置される外眼角当て部4とによって構成される。また、カップ体2は、形状が上下対称に構成される。
【0055】
カップ体2はシリコン、ゴム等の弾性の高い材料により形成される。そして、各当て部3a,3b,4が図2の手前向きに突出するように形成されるため、各当て部3a,3b,4の手前側の先端部は中央Cから拡がるように容易に弾性変形することができる。また、カップ体2は半透明の材料により形成される。
【0056】
図3は、想像線によって表わされた使用者の頭部Hにおいて、左目の眼窩Gl周辺に正面からカップ体2を当てる状態を示す。図において、矢印uが頭部Hの上側(上向き)を示し、矢印dが頭部Hの下側(下向き)を示す。また、矢印lが頭部Hにおける使用者の左手側(左向き)を示し、矢印rが頭部Hにおける使用者の右手側(右向き)を示す。
【0057】
図3において、説明のために点眼具1のカップ体2以外の部分を省略する。また、図1及び図2に示すカップ体2の開口側が図の手前側に向くのに対して、図3に示すカップ体2は、頭部Hに正面から当てられるため、開口側が図の奥側に向く。そのため、図3におけるカップ体2は、左右が図1及び図2における左右と逆に位置する。
【0058】
左眼の眼窩Gl周辺においては、左目の眼球Elの上側uの瞼である上眼瞼と、同じく下側dの瞼である下眼瞼と、同じく左側lの目じりである外眼角とが配置している。そのため、使用者がカップ体2を左目の眼窩Gl周辺に当てるとき、上眼瞼当て部3aが使用者の上眼瞼に、下眼瞼当て部3bが使用者の下眼瞼に、外眼角当て部4が使用者の外眼角に接触する。また、カップ体2は中央Cが左目の眼球Elと正面視の略同位置になるように配置される。このとき、外眼角当て部4が左右方向において鼻の反対側に位置するため、使用者の鼻は、点眼具1の装着の邪魔にならない。
【0059】
図4は、図2に示されたA−A断面を表す点眼具1の左側面断面を示す。矢印Uが点眼具1の上側(上向き)を示し、矢印Dが下側(下向き)を示す。また、矢印Fが点眼具1の前側(前向き)を示し、矢印Bが後側(後向き)を示す。
【0060】
図2〜4及び図6に示す矢印UB,DB,LBは、上眼瞼当て部3a,下眼瞼当て部3b,外眼角当て部4の各先端部が、それぞれ中央Cから拡がるように弾性変形可能な向きを示す。すなわち、上眼瞼当て部3aの先端部は、図4が示すように上向きUと後向きBとが合成された向きである上後向きUBに弾性変形することができる。下眼瞼当て部3bは、下向きDと後向きBとが合成された向きである下後向きDBに弾性変形することができる。外眼角当て部4は、図2及び4が示すように左向きLと後向きBとが合成された向きである左後向きLBに弾性変形することができる。
【0061】
そのため、使用者が頭部Hに対して点眼具1を後向きBに押し付けることによってその頭部Hからの反力が働き、上眼瞼当て部3a,下眼瞼当て部3b,外眼角当て部4の各先端部は、それぞれ上後向きUB,下後向きDB,左後向きLBに捲れるように弾性変形する。その結果、図3が示すように、各当て部3a,3b,4は、それぞれ上眼瞼を上向きuに,下眼瞼を下向きdに,外眼角を左向きlに引っ張ることができる。
【0062】
これらにより、カップ体2を使用者の眼窩G周辺に当てることにより、点眼時に上眼瞼を上向きuに、下眼瞼を下向きdに、外眼角を外向きにそれぞれ広げることができる。そのため、上下眼瞼を閉じてしまって点眼剤Qが目に入らずに点眼を失敗する可能性が低減する。その結果、本発明の点眼具1は、一回の点眼で適切な量の点眼剤Qを確実に目に投与し、微量の点眼剤Qであっても一回で正確な分量を点眼することができる。
【0063】
[ノズルブロック及び点眼ノズル]
図4が示すように、点眼剤容器Bは長手方向が鉛直方向と一致し、かつ、吐出口Bbが下側Dに位置する姿勢で点眼具1に装着される。点眼具1のノズルブロック5は、鉛直方向上向きUの開口部5aを有し、この開口部5aが雌ネジ5bを有する。一方の点眼剤容器Bが首部を有し、この首部が雄ネジBcを有する。そして、雄ネジBcが雌ネジ5bに螺合することにより、点眼剤容器Bがノズルブロック5に接合する。
【0064】
このノズルブロック5は、開口部5aと連通する点眼ノズル5cを有する。点眼ノズル5cは点眼具1の正面視においてカップ体Cの略中央Cに配置される。そのため、点眼ノズル5cから噴出される点眼剤Qは左目の眼球Elに命中する。
【0065】
図4に示す拡大部Eを図5に拡大して示す。点眼ノズル5cは前後方向に配置され、軸心が鉛直方向と90°を成す。また、点眼ノズル5cは先端が前向きFに開口し、基端が開口部5aと連通する。そのため、押出しにより吐出口Bbから吐出する点眼剤Qは開口部5aを経て点眼ノズル5cに流入する。
【0066】
点眼ノズル5cの基端部は前側Fほど縮径する円錐台状に、同じく先端部は前記基端部から連続する円柱状にそれぞれ形成される。そのため、点眼ノズル5cに流入する点眼剤Qは先端から勢いよく噴出して左目の眼球Elに投与される。
【0067】
このとき、点眼ノズル5cの噴出方向が点眼剤容器Bの長手方向より90度曲がっているため、点眼剤容器5cを縦に装着するときでも、点眼剤Qを真横向きに噴出させることができる。これにより、使用者は、本発明の点眼具1を眼球Elと同じ高さに保持して点眼することができ、眼球Elの真上に掲げて点眼する必要がない。そして、首を上向きに曲げることなく楽な姿勢で点眼を行うことができる。そのため、点眼の失敗の可能性が低く、一回の点眼で適切な量を投与することができる。
【0068】
[カップ体支持内筒部及び外筒部]
ノズルブロック5は、点眼ノズル5cの開口を囲むように前向きFに突出する円筒状のカップ体支持内筒部5dを有する。また、カップ体支持内筒部5dの外周面には、環状で径外向きに突出する凸部である環状凸部5eが形成されている。
【0069】
一方で、カップ体2の後側B端は、円筒状に形成された外筒部2aを有する。外筒部2aの内周面には、環状で径内向きに凹む凹部である環状凹部2bが形成される。
【0070】
カップ体2は、ノズルブロック5と別体に形成され、外筒部2aがカップ体支持内筒部5dに対して回転自在に外嵌合することによってノズルブロック5に接合される。このとき、環状凹部2bに環状凸部5eが組み合わさることにより、カップ体2はノズルブロック5に対して前後方向にずれることがなく、カップ体支持内筒部5dの軸心を中心に回転することができる。
【0071】
このように、カップ体2が回転自在であるため、使用者は、点眼具1を傾けて保持するときでも、点眼時に上眼瞼を上向きに、下眼瞼を下向きに、外眼角を外向きにそれぞれ広げることができる。そのため、点眼具1の姿勢にかかわらず、点眼を失敗する可能性が低減し、一回の点眼で適切な量の点眼剤を確実に眼に投与することができる。
【0072】
また、カップ体2は上下対称に形成されているため、カップ体2を180°回転させて上眼瞼当て部3aを中央Cの下側Dに、また、下眼瞼当て部3bを同じく上側Uに配置することにより、使用者は、点眼具1を右目の点眼のために使用することができる。
【0073】
すなわち、図6が示すように、下眼瞼当て部3bは右目の上眼瞼に当たって、先端部が上後向きUBに捲れるように弾性変形して上眼瞼を上向きuに引っ張ることができる。上眼瞼当て部3aは右目の下眼瞼に当たって、先端部が下後向きDBに捲れるように弾性変形して下眼瞼を下向きdに引っ張ることができる。また、外眼角当て部4は右目の外眼角に当たって、先端部が右後向きRBに捲れるように弾性変形して外眼角を右向きrに引っ張ることができる。
【0074】
このように、カップ体2の向きを回転させないときの点眼具1、または、同じく180°回転させたときの点眼具1を、外眼瞼当て部4が鼻側に位置しないように、それぞれ左右何れかの目に用いることができる。これにより、一台の本発明の点眼具1を、左右それぞれの目に兼用することができて経済的である。
【0075】
[第2の実施形態]
図7図10は、本発明の第2の実施形態を例示している。図において11が点眼具である。
【0076】
図7は点眼剤容器Bを装着した状態の点眼具11の正面、平面及び右側面を表した斜視図である。図において、矢印Uが点眼具1の上側(上向き)を示し、矢印Dが下側(下向き)を示す。矢印Lが点眼具1の左側(左向き)を示し、矢印Rが右側(右向き)を示す。また、矢印Fが点眼具1の前側(前向き)を示し、矢印Bが後側(後向き)を示す。
【0077】
点眼具11は正面側にカップ体12を備え、カップ体12が上眼瞼当て部13a、下眼瞼当て部13b及び外眼角当て部14を有する。カップ体12は、図7で隠れている外筒部12aがカップ体支持内筒部15dに対して回転自在に外嵌合することによってノズルブロック15に接合される。点眼剤容器Bは、首部の雄ネジBcがノズルブロック15の開口部15aの雌ネジ15bに螺合することによりノズルブロック15に接合する。ノズルブロック15は、ノズルブロック15を囲む箱状の筐体15eに固定される。
【0078】
点眼具11は、点眼剤容器Bの胴部Baを直径方向から押圧し、かつ、この押圧した状態から解除するために移動する左右一対の容器押圧部16r,16lを有する。各容器押圧部16r,16lは上下方向に偏平な略直方体状に形成され、それぞれの一端が胴部Baを左右両側から挟む。
【0079】
点眼具11は、上下方向の出力軸を有する電動機17を有する。電動機17は、出力軸の上側U端である出力軸上側端17aが左側容器押圧部16lの下側Dに位置するように筐体15e内に収納される。各容器押圧部16r,16lは電動機17によって駆動され、胴部Baを押圧する方向である図の左右方向に往復動する。
【0080】
図8は、図7の点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の説明図を示す。
【0081】
図8が示すように各容器押圧部16r,16lの前記一端は、前後方向の中心線を有する半円柱状に形成され、この半円柱状の外周面である半円柱外周面16aが胴部Baに当接する。半円柱外周面16aの材質はステンレス等の金属である。
【0082】
各容器押圧部16r,16lは、左右方向に自在に摺動するように筐体15eによって支持されている。すなわち、筐体15eが、前側Fの内壁と後側Bの内壁とのそれぞれに左右方向のガイドレール15fを有し、各容器押圧部16r,16lは、前後各側F,Bの端面がこれらのガイドレール15fに遊嵌する状態で左右に摺動することができる。
【0083】
[ピストンクランク機構]
図9は、点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の背面、底面及び左側面を表した斜視図である。平面視円形状のクランク板18aは、図9に示されていない電動機17の出力軸上側端17aと上下方向に直結し、電動機17に従って回転運動する。このクランク板18aは、上下方向のピンを介して連接部材18bの左側L端を回転自在に枢支する。次に、連接部材18bの右側R端は、上下方向の別のピンを介して左側容器押圧部16lと回転自在に枢着される。
【0084】
このとき、左側容器押圧部16lはガイドレール15fによって制約され左右方向にのみ移動してスライドすることができる。そのため、左側容器押圧部16lは、筐体15eに固定される第1の節であるガイドレール15fと、電動機17の駆動によって回転する第2の節であるクランク板18aとを含むピストンクランク機構を構成する。そして、左側容器押圧部16lは滑り子であり、かつ、前記第1の節と共に一の滑り対偶を構成する第3の節に相当する。これにより、電動機17に従動して、左側容器押圧部16lは左右方向にスライドして往復動する。
【0085】
こうして、点眼具11は、電動機17の回転運動を左側容器押圧部16lの直線運動に変換する。ここで、回転運動を直線運動に変換する上で、ピストンクランク機構を採用するため、制御された電動機17の回転角度又は回転数に従って、正確な距離だけ左側容器押圧部16lを進めさせることができる。これにより、正確な所定量の点眼剤Qを吐出させる分だけ点眼剤容器Bを押圧することができ、その正確な所定量の点眼剤Qを投与することができる。
【0086】
また、点眼剤容器Bの一般的な材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑樹脂が用いられるのに対し、容器押圧部16r,16lの押圧部分が金属であることにより、押圧時に点眼剤容器Bから受ける反力に抗って、より確実に点眼剤容器Bを押圧することができる。そのため、電動機17の回転に従って容器押圧部16r,16lが正確な距離を移動することができ、点眼具11は、正確な量の微量の点眼剤を吐出することができる。
【0087】
[パンタグラフ機構]
図10は、点眼具11から筐体15e及び電動機17を取り外した状態の背面図である。点眼具11を背面から視るため、図10を手前から見る角度においては、点眼具11の左側Lが右側に、点眼具11の右側Rが左側に表されている。左側容器押圧部16lは、左側Lの傾斜リンクである左側傾斜リンク19lを後向きBに軸支する。また、右側容器押圧部16rは、右側Rの傾斜リンクである右側傾斜リンク19rを後向きBに軸支する。左側傾斜リンク19lと右側傾斜リンク19rとは、それぞれの下側D端が、前後方向のピンである左右傾斜リンク結合ピン20によって枢着され、この左右傾斜リンク結合ピン20を中心にして自在に回転する。これらの一対の傾斜リンク19r,19lは、パンタグラフ機構を構成する一組の回り対偶に含まれる。
【0088】
前記パンタグラフ機構には、一対の傾斜リンク19r,19lの外に揺動リンク19mが含まれる。揺動リンク19mは一端が筐体15eによって回転自在に軸支され、他端が左側傾斜リンク19lの長手方向の略中央に回転自在に枢着される。このとき、揺動リンク19mは、正面視において右側傾斜リンク19rと平行に位置するように配置される。
【0089】
そのため、左側容器押圧部16lが右向きR(図10を手前から見る角度においては左向き)に直進するとき、左側傾斜リンク19lは揺動リンク19mに制約されて、右側傾斜リンク19rに対して閉じる向きCLに姿勢を変える。図において、一方の傾斜リンク19r,19lが他方の傾斜リンク19r,19lに対して閉じる向きをCLの矢印により表し、また、同じく開く向きをOPの矢印により表す。
【0090】
左側傾斜リンク19lが閉じる向きCLに姿勢を変えるとき、左右傾斜リンク結合ピン20は、右側傾斜リンク19rの制約を受けて下向きDに移動する。これによって、右側傾斜リンク19rは、左右傾斜リンク結合ピン20によって下向きDに引っ張られるとともに、閉じる向きCLに姿勢を変える。ところで、右側容器押圧部16rは、左側容器押圧部16lと同様にガイドレール15fによって制約されるため左右方向にのみ移動してスライドすることができる。その結果、右側容器押圧部16rは左向きL(図10を手前から見る角度においては右向き)に直進する。
【0091】
逆に、左側容器押圧部16lが左向きLに直進するときは、左側傾斜リンク19lが右側傾斜リンク19rに対して開く向きOPに姿勢を変える。そのため左右傾斜リンク結合ピン20が上向きUに移動して右側傾斜リンク19rが開く向きOPに姿勢を変え、右側容器押圧部16rは右向きRに直進する。
【0092】
このように、左右一対の容器押圧部16r,16lは、それぞれが軸支し、かつ、一組の回り対偶を成す一対の傾斜リンク19r,19lがパンタグラフ機構を構成するとともに、各傾斜リンク19r,19lによる正逆反対向きの回転に伴い、互いが同時且つ反対向きにスライドして往復動する。
【0093】
すなわち、本発明の点眼具11は一対の容器押圧部16r,16lを有し、これらの容器押圧部16r,16lがそれぞれ軸支する各傾斜リンク19r,19lが連鎖して、左側容器押圧部16lに、右側容器押圧部16rが従動する。このとき、それぞれの容器押圧部16r,16lはお互いに反対向きに往復動する。そのため、これらの容器押圧部16r,16lは点眼剤容器Bの胴部Baを両側から挟んで押圧することができる。
【0094】
これにより、本発明の点眼具11は、1基の電動機17によって一対の容器押圧部16r,16lを同時に動かすことができ、点眼剤容器Bに対して正確且つ効率良く押圧することができる。
【0095】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0096】
なお、第2の実施形態の変形例として、図示はしないが、容器押圧部16r,16lがラックに固定され、かつ、このラックと共にラック・アンド・ピニオンを構成するピニオンが電動機17の駆動によって回転してもよい。これにより、容器押圧部16r,16lは、正逆回転する電動機17に従動して往復動することができる。
【0097】
このようなラック・アンド・ピニオンによって容器押圧部16r,16lが電動機17の回転に従動して往復動するため、ピストンクランク機構やパンタグラフ機構を採用する必要が無い。これにより、コンパクトな構造によって容器押圧部16r,16lを往復動させ、点眼剤容器Bを押圧することができる。そのため、点眼具11は正確な量の微量の点眼剤を吐出することができ、しかも、容易に持ち運び、かつ、点眼のために保持することができる。また、収容のために必要なスペースが小さい。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、カップ体2,12は半透明の材料により形成されるだけでなく、不透明又は透明の材料により形成されてもよい。もし半透明又は透明の材料により形成されるときは、介助者が点眼する場合、点眼剤Qが使用者の眼球Eに点眼されたか否かを、介助者が目視によって確認することができる。
【0100】
また、カップ体2,12は形状が上下対称に構成されなくてもよく、カップ体支持内筒部5d,15dを中心にして180°回転されたときでも、上眼瞼当て部3a,13aが下眼瞼を下向きdに引っ張り、下眼瞼当て部3b,13bが上眼瞼を上向きuに引っ張り、また、外眼角当て部4,14が外眼角を外向けに引っ張ることができるような形状であれば、例えば、上眼瞼当て部3a,13aと下眼瞼当て部3b,13bとが異なる形状に形成されていてもよい。
【0101】
点眼ノズル5c,15cは円柱状及び円錐台状に形成されなくてもよく、点眼剤Qが先端から勢いよく噴出する形状であれば、例えば、角柱、角錐台等の形状に形成されていてもよい。
【0102】
点眼ノズル5c,15cの噴出方向は、点眼剤容器Bの長手方向より90°曲がってなくてもよく、使用者が楽な姿勢で点眼を行うことができれれば、例えば、45°、60°のような90°未満の角度において曲がっていてもよい。
【0103】
容器押圧部16r,16lは、両方が移動しなくてもよく、点眼剤容器Bを効率良く押圧することができれば、例えば、一方のみが左右方向に往復動して胴部Baを押し、他方が移動せずに点眼剤容器Bを受け止めるだけでもよい。
【0104】
また、容器押圧部16r,16lは1台の電動機17によって駆動しなくてもよく、各容器押圧部16r,16lがタイミング良く同時に胴部Baの両側を押圧することができれば、例えば、それぞれが独立して2台の電動機によって駆動してもよい。
【0105】
半円柱外周面16aの材質は金属でなくてもよく、確実に点眼剤容器Bを押圧することができれば、例えば、十分な硬さを有する合成樹脂でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、点眼剤容器中の点眼剤を、手動又は電動により使用者の眼球に点眼する点眼具に利用できる。
【符号の説明】
【0107】
1,11 点眼具
2,12 カップ体
2a,12a 外筒部
3a,13a 上眼瞼当て部
3b,13b 下眼瞼当て部
4,14 外眼角当て部
5,15 ノズルブロック
5c,15c 点眼ノズル
5d,15d カップ体支持内筒部
15e 筐体
15f ガイドレール
16r 右側容器押圧部
16l 左側容器押圧部
17 電動機
18a クランク板
18b 連接部材
19r 右側傾斜リンク
19l 左側傾斜リンク
19m 揺動リンク
20 左右傾斜リンク結合ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10