(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112442(P2021-112442A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】前照灯付模型およびその導光機構
(51)【国際特許分類】
A63H 19/20 20060101AFI20210709BHJP
A63H 17/28 20060101ALI20210709BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20210709BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20210709BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20210709BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20210709BHJP
【FI】
A63H19/20
A63H17/28
A63H33/22 A
F21V8/00 330
F21V8/00 310
F21V8/00 320
F21Y115:10
F21Y101:00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-7294(P2020-7294)
(22)【出願日】2020年1月21日
(11)【特許番号】特許第6733065号(P6733065)
(45)【特許公報発行日】2020年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】306009927
【氏名又は名称】株式会社トミーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】大胡 疾風
【テーマコード(参考)】
2C150
3K244
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150CA08
2C150DG01
2C150DG11
2C150DG31
2C150DG42
2C150EC38
3K244AA04
3K244BA08
3K244BA50
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA10
3K244EA08
3K244EA10
3K244EA16
3K244EA23
3K244EA34
3K244EB01
3K244EE03
(57)【要約】
【課題】前照灯付模型において、消灯時の色味を改善しつつ、点灯時における光り方の偏りを低減する。
【解決手段】前照灯導光体8は、前後に分割されており、別部材として形成された後導光部8aおよび前導光部8bを有する。後導光部8aは、発光体から出射された光が後端より入射する。後導光部8aは、左右に分岐した形状を有する。前導光部8bは、左右の円柱部8dを有する。これらの円柱部8dは、模型車両における前照灯の点灯部位に設けられた左右の開口部にそれぞれ挿通され、それぞれの先端面8cが開口部より露出する。前導光部8b内には、粒子状の光拡散材8fが混合されている。光拡散材8fによって光が拡散するため、点灯時における光り方の偏り(明暗)を有効に低減できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前照灯付模型において、
前照灯の点灯部位に内外を貫通する開口部が設けられた模型本体と、
前記模型本体内に設けられた発光体と、
前記開口部に挿通されているとともに、前記発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、前記開口部より露出した先端面から外部に向かって放射する導光体と、
前記導光体に設けられ、前記導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、前記先端面から入射した外光を反射する反射面と、
前記導光体のうち、少なくとも、前記先端面から見通すことができる導光部位に混合され、前記導光体内を通過する光を拡散させる粒子状の光拡散材と
を有することを特徴とする前照灯付模型。
【請求項2】
前記導光体は、前記発光体から出射された光が入射する第1の導光部と、前記先端面を備え、かつ、前記光拡散材が混合された第2の導光部とが別部材で構成されており、
前記第2の導光部は、前記第1の導光部との対向面を有し、当該対向面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項1に記載された前照灯付模型。
【請求項3】
前記対向面は、前記先端面側に向かって陥没した形状を有することを特徴とする請求項2に記載された前照灯付模型。
【請求項4】
前記導光体は、前記先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、当該テーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項1に記載された前照灯付模型。
【請求項5】
前照灯付模型用の導光機構において、
発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、前照灯付模型の点灯部位より露出する先端面から外部に向かって放射する導光体と、
前記導光体に設けられ、前記導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、前記先端面から入射した外光を反射する反射面と、
前記導光体のうち、少なくとも、前記先端面から見通すことができる導光部位に混合され、前記導光体内を通過する光を拡散させる粒子状の光拡散材と
を有することを特徴とする前照灯模型用の導光機構。
【請求項6】
前記導光体は、前記発光体から出射された光が入射する第1の導光部と、前記先端面を備え、かつ、前記光拡散材が混合された第2の導光部とが別部材で構成されており、
前記第2の導光部は、前記第1の導光部との対向面を有し、当該対向面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項5に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【請求項7】
前記対向面は、前記先端面側に向かって陥没した形状を有することを特徴とする請求項6に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【請求項8】
前記導光体は、前記先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、当該テーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項5に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯付模型およびその導光機構に係り、特に、模型に内蔵された発光体からの出射光を前照灯の点灯部位に導く導光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、Nゲージなどの前照灯付鉄道模型において、透明な導光体を用いて、模型本体に内蔵された発光体からの出射光を前照灯の点灯部位に導く導光機構が開示されている。模型用の導光機構では、構造上の理由から、消灯時における前照灯の色味が黒くなるため、模型としてのリアリティに欠けるといった課題がある。
【0003】
この点について詳述すると、特許文献1でも指摘されているように、実車どおりであれば、消灯時における前照灯の色味は、白みがかった銀色に見えなければならないが(
図11(a))、模型では、前照灯全体が黒く見えてしまう(
図11(b))。実車では、ランプと、湾曲した反射板と、レンズとによって前照灯が構成されており、前照灯内で鏡面反射した外光が人の目に入射するため、白みがかった銀色に見える。これに対して、模型では、サイズ、コスト、組立性等の理由から実物同様の構成は採用し難く、模型に内蔵された発光体(豆球やLED)からの出射光を導光体で導いて外部に向かって放射するといった単純な構造が採用されている。この場合、光学系からの不要な光漏れを防止すべく、導光体の大半が遮光されている。その結果、導光体内に外光が殆ど入射せず、かつ、外部に露出した先端面から入射した光の反射も生じないので、黒く見えるのである。そこで、特許文献1の導光機構では、導光体の途中にハーフミラーを介在させ、このハーフミラーによって先端面から入射した外光を反射させる。ハーフミラーの銀色の色味と光の半透過性とを利用することで、点灯性を損なうことなく、リアリティ溢れる消灯色味を実現できる。
【0004】
また、ハーフミラーによる反射に代えて、導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因した反射を用いて、消灯時の黒みを軽減する手法も知られており、一部のNゲージ製品で既に採用されている。この反射は、導光形状を工夫して、先端面から見通すことができる導光部位に、空気との境界面を形成することによって実現される。最も簡単なものは、非特許文献1に記載されているように、導光体を前後に分割する構成である。
図12に示すように、後導光部の前方に配置される前導光部は、模型の開口部より露出する一対の先端面Aを備えている。そして、前導光部の後面(空気との境界面)に形成された凹部が反射面Bとして機能し、先端面Aから入射した外光の反射が実現される。また、別の構成として、非特許文献2に記載された導光体も存在する。
図13に示すように、この導光体は、模型の開口部より露出する一対の先端面Aを備えており、先端面Aから奥まるに向かって徐々に窄まったテーパー形状を有している。そして、このテーパー状に窄まった導光部位周りの表面(先端面に対して傾斜したテーパー面)が外光の反射面Bとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5086008号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“113系補完計画いよいよ開始!!<新製品>”、[online]、アルファモデル、[2020年1月12日検索]、インターネット<URL: http://mskanagata.com/a-model/No2116tori.pdf>
【非特許文献2】“ホビーセンターカトー ASSY PARTS クモハ165 ヘッドライトレンズ”、[online]、カトー、[2020年1月12日検索]、インターネット<URL: http://www.katomodels.com/hobbycenter/product/assy/000878.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2のように、導光体における空気との境界面を外光の反射面として用いる場合、外光のみならず、発光体の出射光も反射面を形成する導光形状の影響を強く受ける。その結果、発光体の点灯時の光り方として、例えば、先端面の中央部分が明るく見え、その周辺部分が暗く見えるといった如く、明暗の偏りが生じ易い。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、前照灯付模型において、消灯時の色味を改善しつつ、点灯時における光り方の偏りを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、模型本体と、発光体と、導光体と、反射面と、粒子状の光拡散材とを有する前照灯付模型を提供する。模型本体には、前照灯の点灯部位に内外を貫通する開口部が設けられている。発光体は、模型本体内に設けられている。導光体は、開口部に挿通されているとともに、発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、開口部より露出した先端面から外部に向かって放射する。反射面は、導光体に設けられ、導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、先端面から入射した外光を反射する。粒子状の光拡散材は、導光体のうち、少なくとも、先端面から見通すことができる導光部位に混合され、導光体内を通過する光を拡散させる。
【0010】
ここで、第1の発明において、上記導光体は、第1の導光部と、第2の導光部とが別部材で構成されていてもよい。第1の導光部には、発光体から出射された光が入射する。第2の導光部は、先端面を備え、かつ、光拡散材が混合されている。この場合、第2の導光部は、第1の導光部との対向面を有し、この対向面を上記反射面として機能させることが好ましい。また、上記対向面は、先端面側に向かって陥没した形状を有していてもよい。
【0011】
第1の発明において、上記導光体は、先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、このテーパー状の窄まった導光部位周りのテーパー面を上記反射面として機能させてもよい。
【0012】
第2の発明は、導光体と、反射面と、粒子状の光拡散材とを有する前照灯付模型用の導光機構を提供する。導光体は、発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、模型の点灯部位より露出する先端面から外部に向かって放射する。反射面は、導光体に設けられ、導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、先端面から入射した外光を反射する。粒子状の光拡散材は、導光体のうち、少なくとも、先端面から見通すことができる導光部位に混合され、導光体内を通過する光を拡散させる。
【0013】
ここで、第2の発明において、上記導光体は、第1の導光部と、第2の導光部とが別部材で構成されていてもよい。第1の導光部は、発光体から出射された光が入射する。第2の導光部は、先端面を備え、かつ、光拡散材が混合されている。この場合、第2の導光部は、第1の導光部との対向面を有し、この対向面が上記反射面として機能するようにしてもよい。また、上記対向面は、先端面側に向かって陥没した形状を有していてもよい。
【0014】
第2の発明において、上記導光体は、先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、このテーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面を上記反射面として機能させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光体の消灯時には、導光体の先端面から入射した外光が反射面にて反射し、先端面から外部に向かって放射される。この放射量分だけ前照灯が明るく見えるので、消灯時の黒みが軽減される。一方、発光体の点灯時には、発光体からの出射光は反射面を形成する導光形状の影響を受けるが、導光体内の光の通り方に偏りが生じたとしても、光拡散材による光の拡散によって、この偏りが緩和される。その結果、消灯時の色味を改善しつつ、点灯時における光り方の偏りを有効に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、鉄道車両模型の外観斜視図である。この鉄道車両模型1は、一例として、旧国鉄の153系急行型電車をNゲージでモデル化したものである。模型本体2の内部には、LEDや豆球といった発光体が2つ設けられている。これらの発光体は、外部から供給される電流によって発光状態(点灯・消灯)を制御可能である。模型本体2の前面には、前照灯3(ヘッドライト)が左右に形成されている。前照灯3は、前方に向かって円筒状に突出していると共に、その点灯部位には、前照灯用の光学系を挿通するために、模型本体2の内外を貫通する大径の開口部が形成されている。また、模型本体2の前面には、前照灯3よりも下側の位置に尾灯4(テールライト)が左右に設けられている。尾灯4は、前方に向かって円筒状に突出していると共に、その点灯部位には、尾灯用の光学系を挿通するために、模型本体2の内外を貫通する小径の開口部が形成されている。さらに、模型本体2の底部には、ネジ5によって台車6が取り付けられている。レールに供給された電流は、台車6が有する金属車輪や集電スプリング等を介して、模型本体2に内蔵された発光体に供給される。
【0018】
図2に示すように、模型本体2の内部には、点灯ユニット7が取り付けられている。この点灯ユニット7は、前照灯3および尾灯4を点灯させる発光体や光学系をユニット化したものであり、光漏れが生じないように、遮光ケース内に収容されている。これにより、光学系は、前照灯3および尾灯4の部分的に露出した導光部位を除いて、遮光される。
【0019】
図3は、点灯ユニット7の展開斜視図である。この点灯ユニット7は、プリント基板7aと、複数に分割されたケース7d〜7fと、導光体8の一部(後導光部8a)と、導光体9とを主体に構成されている。プリント基板7aの上面には、前照灯3を点灯させるための発光体7bが取り付けられており、その下面には、尾灯4を点灯させるための発光体(図示せず)が取り付けられている。また、プリント基板7aの下面には、集電用の一対の接点バネ7cが設けられており、これらの接点バネ7cは、図示しない他の導電材を介して、台車6の金属車輪に電気的に接続される。プリント基板7aが載置された下ケース7dの上方には、上ケース7eが取り付けられ、その前方には、前ケース7fが取り付けられている。これらのケース7d〜7fによって、点灯ユニット7内の光が外部に漏れないように遮光されると共に、プリント基板7a自体が遮光壁となって、プリント基板7aの上下の発光体が光学的に分離される。
【0020】
前ケース7fには、前照灯導光体8の一部である後導光部8aと、尾灯導光体9とが取り付けられている。前照灯導光体8は、ABS樹脂などのプラスチックで構成された透明な部材であって、プリント基板7aの上面に設けられた発光体7bから出射された光を前照灯3の点灯部位に導く。また、尾灯導光体9は、ABS樹脂などのプラスチックで構成された透明かつ赤色に着色された部材であって、プリント基板7aの下面に設けられた発光体から出射された光を尾灯4の点灯部位に導く。これらの導光体8,9は、前部ケース7fに形成された壁部によって光学的に互いに分離されているので、両者の間で光漏れが生じることはない。
【0021】
図4は、前照灯導光体8の外観斜視図である。本実施形態において、この導光体8は、前後に分割されており、別部材として形成された後導光部8aおよび前導光部8bを有する。後導光部8aは、点灯ユニット7に取り付けられ、発光体7bから出射された光が後端に入射する。また、後導光部8aは、左右に分岐した形状を有しており、後導光部8aの後端に入射した光は、この分岐形状に沿って左右の前端に導かれる。
【0022】
一方、前導光部8bは、点灯ユニット7ではなく車両本体2に取り付けられ、前後方向に延在する左右の円柱部8dを有する。これらの円柱部8dは、模型車両2における前照灯3の点灯部位に設けられた左右の開口部にそれぞれ挿通され、それぞれの先端面8cが点灯部位(開口部)より露出する。また、円柱部8dの後端は、後導光部8aの前端と対向している。これによって、発光体7bより出射された光は、後導光部8aの形状に沿って前方に導かれ、前導光部8b(円柱部8d)の後端に入射した後、前照灯3の点灯部位より露出した先端部8cから外部に向かって放射される。
【0023】
また、左右の円柱部8dは、横方向に延在する連結部8eを介して互いに連結され、一体化されている。これらを一体化する理由は、前導光部8bを車両本体2に取り付ける際、実車同様に表現された先端面8cの縦縞模様が回転方向にズレることを防止し、その位置決めを不要にするためである。
【0024】
図5は、前照灯導光体8の断面図である。本実施形態の特徴として、第1に、前照灯導光体8の内部、より具体的には、少なくとも、先端面8cから見通すことができる導光部位に、光を拡散させる粒子状の光拡散材8fが混合されていることが挙げられる。光拡散材8fは、導光体8全体または部分的に混合されている。光拡散材8fを混合させる理由は、先端面8cにおける光り方の偏りを低減するためである。したがって、最低限、先端面8cから見通すことができる導光部位、本実施形態では、円柱部8dに混合されていれば足りる。ただし、前導光部8b全体が一体で射出成形される関係上、本実施形態では、円柱部8dのみならず連結部8dを含めた前導光部8b全体に光拡散材8fが混合されている。前導光部8bを製造する際、透明樹脂のペレットに粒子状の光拡散材8fを混入し、これらを十分に攪拌した上で射出成形を行えば、光拡散材8fが均一に混在した前導光部8bを簡単かつ安価に得ることができる。
【0025】
光拡散材8fとしては、例えば、根本特殊化学株式会社製の光拡散顔料(登録商標「ルミパール」)を用いることができる。この製品は、高純度かつ特殊形状の炭酸カルシウムを主成分とし、その平均粒子径は5.0μm程度であって、各種の合成樹脂に対して練り込んで用いられる。また、この製品は、良好な光拡散特性を有しており、電装看板、照明用カバー、化粧品容器、装飾用品などで幅広く使用されている。
【0026】
第2の特徴として、前照灯導光体8に反射面8gを設けていることが挙げられる。この反射面8gの位置は、先端面8cから入射した外光をより多く反射するという観点から、先端面8cにより近い方に設けることが好ましい。本実施形態において、前導光部8bの後端は、後導光部8aの前端と対向する対向面となっており、この対向面が反射面8gとして機能する。反射面8gは、前照灯導光体8の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、先端面8cから入射した外光の一部を反射する(部分反射)。例えば、導光体8bの構成材料として透明なABS樹脂を用い、その屈折率が1.5、空気の屈折率が1.0の場合、ABS樹脂と空気との境界に相当する反射面8gにおける反射率は0.04となる。いうまでもなく、反射面8gの反射率は高い方が好ましいので、反射率が高くなるような材料を選択すべきである。
【0027】
また、反射面8gは、その反射特性をさらに向上させるべく、先端面8c側に向かってすり鉢状に陥没した立体形状(凹形状)を有している。そして、後導光部8aの前端(反射面8gと対向する面)は、反射面8gの凹形状に対応した凸形状を有している。なお、反射面8gの立体形状は、上述した凹形状に限らず、凸形状であってもよいが、反射面8gを実質的に先端面8cに近づけて、反射特性の向上を図るという観点では、凹形状の方が有利である。
【0028】
図6は、消灯時の光学的メカニズムの説明図である。発光体7bの消灯時には、先端面8cより外光が前導光部8bに入射する。前導光部8bに入射した外光の一部は、反射面8gを透過するが、反射面8gの反射率に相当する光は、反射面8gにて反射し、前導光部8b内の光拡散材8fによって拡散された上で、先端面8cから外部に向かって放射される。これにより、反射面8gの反射光分だけ白っぽく見えるため、前照灯3の黒みが軽減され、消灯時の色味が改善される。また、反射面8gの前方に存在する光拡散材8fによって反射光が拡散するため、先端面8cの光り方に偏り(明暗)が生じることを抑制できる。さらに、先端面8cに対して反射面8gが奥まって存在したとしても、光拡散材8fによって光が拡散することで、反射面8gが奥まって見え難くなる。
【0029】
図7は、点灯時の光学的メカニズムの説明図である。発光体7bの点灯時には、発光体7bより出射された光が後導光部8aを経て、前導光部8bの後端に入射する。前導光部8bに入射した光は、前導光部8b内の光拡散材8fによって拡散された上で、先端面8cから外部に向かって放射される。その際、発光体7bからの出射光が反射面8gの影響を受けて、前導光体8b内の光の通り方に偏りが生じたとしても、光拡散材8fによる光の拡散によって、先端面8cの光り方の偏り(明暗)が抑制される。光拡散材8fの混在により得られる効果は、消灯時よりも、光量が大きな点灯時において顕著である。
【0030】
このように、本実施形態によれば、発光体7bの消灯時には、導光体8の先端面8cから入射した外光が反射面8gによって反射して、先端面8cから外部に放射される。この放射量分だけ前照灯3が明るく見えるので、消灯時の黒みが軽減される。一方、発光体7bの点灯時には、発光体7bの出射光は反射面8gを形成する導光形状の影響を受けるが、この影響によって導光体8内の光路(光の通り方)に偏りが生じたとしても、光拡散材8fによる光の拡散により、光路の偏りが緩和される。その結果、消灯時の色味を改善しつつ、点灯時における光り方(先端面8cにおける光の見え方)の偏りを有効に低減できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、反射面8gとして機能する前導光部8bの後端(後導光部8aとの対向面)を先端面8c側に向かって陥没した凹形状としている。これにより、反射面8gが平坦な場合と比較して、反射面8gを実質的に先端面8cに近づけることができるので、前導光部8gの強度を弱めることなく、反射特性の向上を図ることができる。
【0032】
なお、上述した実施形態では、前照灯導光体8を前後に分割し、前導光部8bの後端、すなわち、後導光部8aとの対向面を反射面8gする例について説明したが、以下に変形例を示すように、反射面8gを形成するための形状は、これに限定されるものではない。
【0033】
図8は、変形例に係る前照灯導光体8の概略図である。この前照灯導光体8は、前後に分割することなく一体化されており、上述した
図12に準じた構成を有している。ただし、この導光体8には、その全体に光拡散材8fが均一に混合されている。導光体8は、発光体7bの光を自己の形状に沿って導き、先端部8cから外部に向かって放射する。ここで、導光体8は、先端面8cから見通すことができる位置において、先端面8cから奥まるに従って徐々に窄まった、換言すれば、断面が徐々に小さくなるテーパー形状を有する。そして、このテーパー状に窄まった導光部位周りの表面、すなわち、先端面に対して傾斜したテーパー面が反射面8gとして機能する。
【0034】
図9は、変形例に係る消灯時の光学的メカニズムの説明図である。発光体7bの消灯時には、先端面8cより外光が導光体8に入射する。導光体8に入射した外光の一部は、先端面8cに対して傾斜した反射面8gにて反射し、導光体8内の光拡散材8fによって拡散された上で、先端面8cから外部に向かって放射される。これにより、上述した実施形態と同様、反射面8gの反射光分だけ白っぽく見えるため、前照灯3の黒みが軽減され、消灯時の色味を改善できる。また、光拡散材8fによって反射光が拡散するため、先端面8cの光り方の偏り、特に、先端面8cの中央部分が暗くなることが抑制される。
【0035】
図10は、変形例に係る点灯時の光学的メカニズムの説明図である。発光体7bの点灯時において、発光体7bより出射された光は、導光体8内に混合された光拡散材8fによって拡散された上で、先端面8cから外部に向かって放射される。これにより、先端面8cの光り方の偏り、特に、先端面8cの周辺部分が暗くなることが抑制される。
【0036】
なお、Nゲージにおける前照灯導光機構の基本的な構成は同一なので、本発明は、他形式および他メーカのNゲージ車両全般(電車・気動車の制御車や機関車等)にも適用可能なのは当然である。また、安価かつ小型を商品特性とするNゲージ車両に対する本発明の適用は、最も好ましい一例ではあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、これよりも大型なHOゲージ車両等への適用も当然に可能である。さらに、自動車、バス、トラック、特殊車両、飛行機、船舶、更にはアニメのロボット等の各種模型(点灯式前照灯を備えるものに限る。)に対しても、本発明は広く適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 鉄道車両模型
2 模型本体
3 前照灯
4 尾灯
5 ネジ
6 台車
7 点灯ユニット
7a プリント基板
7b 発光体
7c 接点バネ
7d 下ケース
7e 上ケース
7f 前ケース
8 前照灯導光体
8a 後導光部
8b 前導光部
8c 先端面
8d 円柱部
8e 連結部
8f 光拡散材
8g 反射面
9 尾灯導光体
【手続補正書】
【提出日】2020年4月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前照灯付模型において、
前照灯の点灯部位に内外を貫通する開口部が設けられた模型本体と、
前記模型本体内に設けられた発光体と、
前記開口部に挿通されているとともに、前記発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、前記開口部より露出した先端面から外部に向かって放射する導光体と、
前記導光体に設けられ、前記導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、前記先端面から入射した外光を反射する反射面と、
前記導光体のうち、少なくとも、前記先端面から見通すことができる導光部位に均一に混合され、前記反射面によって反射された光を拡散させることによって、前記先端面における光り方の偏りを低減する粒子状の光拡散材と
を有することを特徴とする前照灯付模型。
【請求項2】
前記導光体は、前記発光体から出射された光が入射する第1の導光部と、前記先端面を備え、かつ、前記光拡散材が均一に混合された第2の導光部とが別部材で構成されており、
前記第2の導光部は、前記第1の導光部との対向面を有し、当該対向面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項1に記載された前照灯付模型。
【請求項3】
前記対向面は、前記先端面側に向かって陥没した形状を有することを特徴とする請求項2に記載された前照灯付模型。
【請求項4】
前記導光体は、前記先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、当該テーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面が前記反射面として機能すると共に、その全体に前記光拡散材が均一に混合されていることを特徴とする請求項1に記載された前照灯付模型。
【請求項5】
前照灯付模型用の導光機構において、
発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、前照灯付模型の点灯部位より露出する先端面から外部に向かって放射する導光体と、
前記導光体に設けられ、前記導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、前記先端面から入射した外光を反射する反射面と、
前記導光体のうち、少なくとも、前記先端面から見通すことができる導光部位に均一に混合され、前記反射面によって反射された光を拡散させることによって、前記先端面における光り方の偏りを低減する粒子状の光拡散材と
を有することを特徴とする前照灯模型用の導光機構。
【請求項6】
前記導光体は、前記発光体から出射された光が入射する第1の導光部と、前記先端面を備え、かつ、前記光拡散材が均一に混合された第2の導光部とが別部材で構成されており、
前記第2の導光部は、前記第1の導光部との対向面を有し、当該対向面が前記反射面として機能することを特徴とする請求項5に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【請求項7】
前記対向面は、前記先端面側に向かって陥没した形状を有することを特徴とする請求項6に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【請求項8】
前記導光体は、前記先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、当該テーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面が前記反射面として機能すると共に、その全体に前記光拡散材が均一に混合されていることを特徴とする請求項5に記載された前照灯付模型用の導光機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、模型本体と、発光体と、導光体と、反射面と、粒子状の光拡散材とを有する前照灯付模型を提供する。模型本体には、前照灯の点灯部位に内外を貫通する開口部が設けられている。発光体は、模型本体内に設けられている。導光体は、開口部に挿通されているとともに、発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、開口部より露出した先端面から外部に向かって放射する。反射面は、導光体に設けられ、導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、先端面から入射した外光を反射する。粒子状の光拡散材は、導光体のうち、少なくとも、先端面から見通すことができる導光部位に
均一に混合され、
反射面によって反射された光を拡散させることによって、先端面における光り方の偏りを低減する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
ここで、第1の発明において、上記導光体は、第1の導光部と、第2の導光部とが別部材で構成されていてもよい。第1の導光部には、発光体から出射された光が入射する。第2の導光部は、先端面を備え、かつ、光拡散材が
均一に混合されている。この場合、第2の導光部は、第1の導光部との対向面を有し、この対向面を上記反射面として機能させることが好ましい。また、上記対向面は、先端面側に向かって陥没した形状を有していてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
第1の発明において、上記導光体は、先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、このテーパー状の窄まった導光部位周りのテーパー面を上記反射面として機能させ
ると共に、その全体に上記光拡散材が均一に混合されていてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
第2の発明は、導光体と、反射面と、粒子状の光拡散材とを有する前照灯付模型用の導光機構を提供する。導光体は、発光体からの入射光を自己の形状に沿って導き、模型の点灯部位より露出する先端面から外部に向かって放射する。反射面は、導光体に設けられ、導光体の構成材料と空気との屈折率の差に起因して、先端面から入射した外光を反射する。粒子状の光拡散材は、導光体のうち、少なくとも、先端面から見通すことができる導光部位に
均一に混合され、
反射面によって反射された光を拡散させることによって、先端面における光り方の偏りを低減する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
ここで、第2の発明において、上記導光体は、第1の導光部と、第2の導光部とが別部材で構成されていてもよい。第1の導光部は、発光体から出射された光が入射する。第2の導光部は、先端面を備え、かつ、光拡散材が
均一に混合されている。この場合、第2の導光部は、第1の導光部との対向面を有し、この対向面が上記反射面として機能するようにしてもよい。また、上記対向面は、先端面側に向かって陥没した形状を有していてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
第2の発明において、上記導光体は、先端面から奥まるに従って徐々に窄まったテーパー形状を有し、このテーパー状に窄まった導光部位周りのテーパー面を上記反射面として機能させ
ると共に、その全体に上記光拡散材が均一に混合されていてもよい。