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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112727(P2021-112727A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】有機物の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20060101AFI20210709BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20210709BHJP
   B01J 27/128 20060101ALI20210709BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20210709BHJP
   C02F 1/30 20060101ALI20210709BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20210709BHJP
【FI】
   C02F1/72 Z
   B01J35/02 JZAB
   B01J27/128 A
   B01J27/053 A
   C02F1/72 101
   C02F1/30
   C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-7692(P2020-7692)
(22)【出願日】2020年1月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成31(2019)年2月20日に学校法人関西大学 環境都市工学部 卒業論文発表会にて「Fe系層状複水酸化物を用いるFenton反応による有機汚染物質の分解無害化」と題して発表 (2)平成31(2019)年3月1日に公益社団法人日本化学会 第99春季年会の予稿集にて「有機汚染物質の効果的な分解無害化を可能にする鉄系層状複水酸化物の開発」と題して発表 (3)平成31(2019)年3月19日に公益社団法人日本化学会第99春季年会の講演会にて「有機汚染物質の効果的な分解無害化を可能にする鉄系層状複水酸化物の開発」と題して発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費受託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】福 康二郎
(72)【発明者】
【氏名】池永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】轟 真誠
(72)【発明者】
【氏名】西内 亨
(72)【発明者】
【氏名】市川 康平
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4G169
【Fターム(参考)】
4D037AA11
4D037AB11
4D037AB13
4D037AB14
4D037AB16
4D037BA16
4D037BA17
4D037BA18
4D037BB09
4D037CA11
4D050AA12
4D050AB12
4D050AB13
4D050AB14
4D050AB16
4D050AB18
4D050AB19
4D050BB09
4D050BC06
4D050BC09
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA36A
4G169BA48A
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB08B
4G169BB10B
4G169BC16B
4G169BC43B
4G169BC54B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD12B
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA15
4G169DA03
4G169EB18Y
4G169HA02
4G169HB10
4G169HC01
4G169HC26
4G169HE05
(57)【要約】
【課題】不均一系フェントン反応触媒を用いて有機物を分解するに当たり、その触媒性能を高めることで有機物を効率よく分解することが可能な有機物の分解方法を提供する。
【解決手段】2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させて、ラジカルを生成すること;及び前記ラジカルと、分解対象の有機物とを接触させること;を含む、有機物の分解方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させて、ラジカルを生成すること;及び
前記ラジカルと、分解対象の有機物とを接触させること;
を含む、有機物の分解方法。
【請求項2】
前記光が、紫外線及び可視光線の少なくとも1種を含む請求項1に記載の有機物の分解方法。
【請求項3】
前記不均一系フェントン反応触媒は、前記層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物と、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物とを含有する複合化物を含む請求項1又は2に記載の有機物の分解方法。
【請求項4】
前記有機物を含有する被処理水と、前記ラジカルとを接触させることにより、前記ラジカルと前記有機物とを接触させることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物の分解方法。
【請求項5】
前記有機物を含有する被処理水と、前記不均一系フェントン反応触媒と、前記過酸化水素とを、前記光の照射条件下で接触させて、前記被処理水中で、前記ラジカルを生成すること;及び
前記被処理水中で前記ラジカルと前記有機物とを接触させることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機物の分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェントン反応は、二価鉄を触媒として過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる反応である。鉄イオン(Fe2+及びFe3+)はフェントン反応のための触媒、すなわち、フェントン反応触媒として広く知られている。これを使用することにより、以下の反応式(1)及び(2)で表されるように、ヒドロキシラジカル(・OH)を生成することができる。
Fe2+ + H → Fe3+ + ・OH + OH (1)
Fe3+ + H → Fe2+ + ・O + 2H (2)
【0003】
ヒドロキシラジカルは強い酸化力を有し、その強い酸化力を利用して、例えば、殺菌、有機物(有害物質や難分解性汚染物質等)の分解等を行うことが可能である。そのため、フェントン反応は、環境負荷の小さいクリーンな方法の一つとして、様々な分野への応用が期待されている。
【0004】
従来、フェントン反応としては、水中で鉄(II)イオンを生じる水溶性の鉄(II)塩(例えば硫酸鉄(II)等)を使用する均一系フェントン反応が一般的である。一方、水中で固体状の鉄触媒を使用する不均一系フェントン反応の報告例は少ない。不均一系フェントン反応を利用した技術としては、例えば特許文献1に、ゼオライト等の無機系担体に鉄等の触媒金属が担持されてなる触媒金属担持担体を用いる不均一系フェントン反応による難生物分解性有機物含有水の処理方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−198286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、有害物質や汚染物質として被酸化性の有機物を含有する廃水を処理するに当たり、均一系フェントン反応を利用して廃水中の有機物を酸化分解する場合、触媒として使用する鉄(II)イオンを生じる水溶性の鉄(II)塩は一過性のものであることから、通常、鉄(II)塩を連続的に添加する必要がある。そのため、この場合、廃水中に鉄(II)イオンが残存し、それを不溶化して除去するために、鉄触媒に由来する不溶化された鉄化合物を含む汚泥(スラッジ)が不可避的に、かつ、比較的多量に発生することになる。
【0007】
これに対して、不均一系フェントン反応を利用する場合は、均一系フェントン反応における鉄触媒として水溶性の鉄(II)塩を用いた一過性の分解技術とは異なり、固体状の鉄触媒を繰り返し使用できることから、鉄触媒に由来する化合物を含む汚泥の発生量を少なくできる。また、この場合、鉄触媒を汚泥として除去するための不溶化に使用する薬剤(例えば凝集剤等)の量も抑えることができる。そのため、不均一系フェントン反応の方が、触媒を再利用しやすい点で、均一系フェントン反応よりも、望ましいと考えられる。しかし、不均一系フェントン反応は、固体状の触媒を用いる点で、水中で鉄イオンを生じる水溶性の鉄塩を用いる均一系フェントン反応に比べて効率が低い。
【0008】
したがって、不均一系フェントン反応を利用して有機物を分解する場合に、その反応に用いる不均一系フェントン反応触媒の触媒性能を高めることができれば、有用な方法となり得る。
【0009】
そこで、本発明は、不均一系フェントン反応触媒を用いて有機物を分解するに当たり、その触媒性能を高めることで有機物を効率よく分解することが可能な有機物の分解方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した有機物の分解方法の提供を目的として鋭意研究を進めた結果、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物やその層状複水酸化物構造が崩壊後に得られる非晶質な複合水酸化物が、不均一系フェントン反応触媒として有用であることを見出した。そして、その不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させることで、触媒性能が高まることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させて、ラジカルを生成すること;及び前記ラジカルと、分解対象の有機物とを接触させること;を含む、有機物の分解方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不均一系フェントン反応触媒を用いて有機物を分解するに当たり、その触媒性能を高めることで有機物を効率よく分解することが可能な有機物の分解方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書において、「並びに/又は」は、「並びに」と「又は」の両方を包含する用語である。すなわち、A並びに/又はBは、A及びBのうち、Aのみ、Bのみ、AとBの両方の3つの意味を包含する。
【0014】
<有機物の分解方法>
本発明の一実施形態の有機物の分解方法(以下、単に「有機物の分解方法」と記載することがある。)は、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させて、ラジカルを生成すること;及びラジカルと、分解対象の有機物とを接触させること;を含む。
【0015】
上記特定の不均一系フェントン反応触媒は、特定の層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含むため、この不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させることで、ラジカルを生成することができる。このラジカルは、特に制限されないが、主にヒドロキシラジカルであると考えられる。本実施形態の有機物の分解方法では、上記特定の不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させることで、上記特定の不均一系フェントン反応触媒の触媒性能をより高めることが可能である。これにより、過酸化水素との接触によるラジカル生成能がより高まり、そのラジカルと有機物とを接触させることで、有機物を効率よく分解することが可能となる。
【0016】
不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させる際の紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件としては、不均一系フェントン反応触媒の触媒性能を高めることが可能であれば、特に制限されない。この光の照射には、紫外線から赤外線までの領域にある光を照射可能な装置であって、光照射部と制御盤とを備えた光照射装置を用いることができる。紫外線から赤外線までの領域にある光を用いることから、波長が1nm超1mm未満の光を用いることができる。不均一系フェントン反応触媒の活性の観点から、上記光としては、太陽光等のような、紫外線及び可視光線の少なくとも1種が好ましい。また、光の波長としては、200〜3000nmが好ましく、200〜900nmがより好ましく、300〜700nmがさらに好ましい。
【0017】
不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素との接触の態様は、それらの接触によりラジカルが生成すれば特に制限されない。不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素との接触は、例えば、不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを混合することにより、行うことができる。また、不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素との接触は、通常、水の存在下で行うことができ、例えば、不均一系フェントン反応触媒及び過酸化水素を含有する水中で行うことができる。その水中の不均一系フェントン反応触媒の濃度は、特に制限されず、上記層状複水酸化物としての濃度で、例えば、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましい。また、触媒を成型し反応装置内に充填する場合、水中の不均一系フェントン反応触媒の濃度は、上記層状複水酸化物としての濃度で、例えば、1〜50質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。水中の反応前の過酸化水素の濃度は、特に制限されず、例えば、0.1〜500mmol/Lであることが好ましく、1〜200mmol/Lであることがより好ましく、1〜100mmol/Lであることがさらに好ましく、2〜20mmol/Lであることがよりさらに好ましい。
【0018】
ラジカルと分解対象の有機物との接触の態様は、特に制限されない。ラジカルと有機物との接触は、例えば、不均一系フェントン反応触媒、過酸化水素、及び有機物を混合することにより、行うことができる。また、ラジカルと有機物との接触は、通常、水の存在下で行うことができ、例えば、不均一系フェントン反応触媒、過酸化水素、及び有機物を含有する水中で行うことができる。この場合、その水中において、不均一系フェントン反応触媒の作用により、過酸化水素からラジカル(ヒドロキシラジカル)が生成し、かつ、そのラジカルと有機物とを接触させることができる。水中の不均一系フェントン反応触媒の濃度、及び反応前の過酸化水素の濃度は、上記と同様である。水中の有機物の濃度は、特に制限されず、例えば、0.001〜1000mmol/Lであることが好ましく、0.01〜100mmol/Lであることがより好ましく、0.1〜10mmol/Lであることがさらに好ましい。
【0019】
不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素との接触時の温度は、フェントン反応が進行する温度である限り、特に制限されない。それらの温度は、例えば、0〜100℃であることが好ましく、10〜50℃であることがより好ましく、15〜40℃であることがさらに好ましい。また、接触時の時間は、一定量のラジカルが生成する程度の時間である限り、特に制限されず、例えば、1分間〜3時間、好ましくは15分間〜2時間である。
【0020】
有機物の分解方法は、好適には、その一態様として、分解対象の有機物を含有する水(被処理水)を処理する方法(水処理方法)において採用され得る。この水処理方法は、有機物を含有する被処理水と、不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを接触させることを含むことが好ましい。これにより、被処理水中で、不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させて、不均一系フェントン反応触媒の作用により、過酸化水素からラジカルを生成することができ、そのラジカルと被処理水とを接触させることができる。また、それにより、被処理水中で、生成したラジカルと有機物とを接触させることができ、ラジカルにより有機物を酸化分解することができる。本明細書において、被処理水とは、処理対象の水、すなわち、処理を受ける水を意味し、有機物を含有する水であれば、特に制限されず、例えば、有機物を含有する廃水等が挙げられる。
【0021】
被処理水と不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素との接触(被処理水とラジカルとの接触)の態様は、特に制限されない。例えば、被処理水と不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを混合することにより、それらを接触させることができ、それらの接触を所定の槽(反応槽)内にて行うことができる。好適には、有機物を含有する被処理水に過酸化水素及び不均一系フェントン反応触媒を添加することにより、それらを接触させることができる。また、別のより好適な一態様としては、不均一系フェントン反応触媒を担体に担持させて固定した状態で反応槽内に留めさせておき、その反応槽にて、被処理水と不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させることができる。例えば、不均一系フェントン反応触媒を担持させた担体(触媒担体)を設置した反応槽に、被処理水が移送されてくるように構成することができ、また、その反応槽(反応槽内の被処理水)に過酸化水素を添加するように構成することができる。
【0022】
なお、上述の水処理方法では、反応槽の前段及び後段のいずれか一方又は両方に、pH調整槽を設置して、被処理水や処理過程にある水のpHを調整してもよい。また、反応槽(さらにその後段にpH調整槽を設ける場合にはそのpH調整槽)の後段には、固液分離装置を設置してもよい。例えば、有機物の酸化分解に使用された不均一系フェントン反応触媒における層状複水酸化物を含む懸濁物質が水中に生じた場合に、固液分離装置を用いた処理(固液分離処理)により、懸濁物質を除去することができる。一方、上述のように、不均一系フェントン反応触媒を担体に担持させて固定した状態で反応槽内に留めさせておけば、上記固液分離処理を不要とすることも可能である。
【0023】
上述した水処理方法のように、有機物の分解方法が、水中で不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させることを含む場合、前述の光の照射は、例えば、水中(例えば上記反応槽内)に設けられた光照射部による内照式で行ってもよいし、外部(例えば上記反応槽外)に設けられた光照射部による外照式で行ってもよい。また、内照式及び外照式のいずれの場合でも、光照射部は、不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素とを接触させる場である水に対して光を照射できれば、上記反応槽の上部側、底部側、及び側部側のいずれに設けられてもよく、それらのいずれから光を照射してもよい。
【0024】
有機物の分解方法において用いる特定の不均一系フェントン反応触媒は、溶液に溶かして用いられる均一系触媒とは異なり、固相のままで用いられる不均一系触媒である。そのため、本実施形態の有機物の分解方法は、有機物を分解するために、水中で鉄(II)イオンを生じる水溶性の鉄(II)塩を触媒として連続的に添加することが必要な均一系フェントン反応触媒を用いた一過性の技術とは異なり、触媒(特定の不均一系フェントン反応触媒)を繰り返し使用することが可能である。また、それにより、触媒に由来する化合物を含む汚泥(スラッジ)の発生を抑制できることや、触媒を汚泥として除去するための不溶化のための薬剤(例えば凝集剤等)の使用を抑制できることにもつながる。したがって、スラッジ処分費や触媒費用を抑えた有用な水処理方法の実現が期待できる。これらの効果が得られやすい観点から、不均一系フェントン反応触媒は、上述した担体に担持させて固定した状態で用いられることが好ましい。
【0025】
有機物の分解方法において分解対象となる有機物は、ラジカルにより分解される有機化合物である限り、特に制限されない。このような有機物としては、例えば有機脂肪族物質、有機芳香族物質、ダイオキシン類汚染物質等が挙げられる。
【0026】
有機脂肪族物質は、環式、非環式、飽和または不飽和炭化水素であり得る。それらの炭化水素は、環式または非環式のアルカンおよびアルケン、好ましくは塩素化された、ハロゲン化環式または非環式のアルカンおよびアルケン、飽和および/または不飽和脂肪族および/または脂環式エーテル、好ましくは塩素化された、飽和および/または不飽和ハロゲン化脂肪族および/または脂環式エーテル、アルコールおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化アルコール、ケトンおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化ケトン、アルデヒドおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化アルデヒド、および/またはカルボン酸および、好ましくは塩素化されたハロゲン化カルボン酸である。有機脂肪族物質はまた、アルコールのようにヒドロキシ基を有していてもよく、脂肪酸のようにカルボキシ基を有していてもよく、スルホン酸のようにオキシ酸を有していてもよく、ジオキサンのようにエーテル基をはじめとする含酸素化合物であってもよく、炭素、水素、及び酸素以外の元素(例えば窒素及び硫黄等)を含んでいてもよい。
【0027】
有機脂肪族物質は好ましくは、トリクロロプロパン、好ましくは1,2,3−トリクロロプロパン、クロロプロペノール、好ましくは2−クロロ−2−プロペン−1−オール、ジクロロプロペン、好ましくは1,3−ジクロロプロペン・シスおよび1,3-ジクロロプロペン・トランス、ジクロロプロパン、好ましくは1,3−ジクロロプロパン、ジクロロプロパノール、好ましくは、1,3−ジクロロ−2−プロパノールおよび2,3−ジクロロ−1−プロパノール、モノクロロプロパンジオール、より好ましくは2−クロロ−1,3−プロパンジオールおよび3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、クロロエタノール、クロロエーテル、より好ましくはおおよその式C6H10Cl2O2、C6H12Cl2O、C6H9Cl3O2、C6H11Cl3O2のクロロエーテル、アクロレイン、メチルグリシジルエーテル、クロロアセトン、メタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,2−ジオール、ヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ギ酸、グリコール酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、ジクロロ酢酸、グリシドール、エピクロロヒドリン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびそれらの混合物から選択される。
【0028】
有機芳香族物質は、芳香族性の少なくとも1個の環を含む。それらは好ましくは、芳香族性の少なくとも1個の環および1個のハロゲン原子を含むハロゲン化芳香族炭化水素である。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択されてもよく、好ましくは塩素である。芳香環は、一核または多核であってもよく、好ましくは一核である。有機芳香族物質は好ましくは、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサクロロベンゼンおよび/またはナフタレン、ならびにそれらの混合物から選択される。有機芳香族物質は好ましくはモノクロロベンゼンである。有機芳香族物質はまた、フェノールのようにヒドロキシ基を有していてもよく、安息香酸のようにカルボキシ基を有していてもよく、ベンゼンスルホン酸のようにオキシ酸を有していてもよく、炭素、水素、及び酸素以外の元素(例えば窒素及び硫黄等)を含んでいてもよく、アルキルベンゼンスルホン酸のように鎖式構造を含んでいてもよい。
【0029】
ダイオキシン類汚染物質としては、例えば、ハロゲン化ジベンゾジオキシン類やハロゲン化ジベンゾフラン類、PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン化ジベンゾジオキシン類の例としては、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾ−P−ジオキシン等が挙げられる。
【0031】
ハロゲン化ジベンゾフラン類の例としては、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾフラン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾフラン等が挙げられる。
【0032】
PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)の例としては、3,3’,4,4’,5−テトラクロロビフェニル、3,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニル等が挙げられる。
【0033】
(不均一系フェントン反応触媒)
本実施形態の有機物の分解方法に用いる不均一系フェントン反応触媒は、2価鉄イオン(Fe2+)、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む。この不均一系フェントン反応触媒は、過酸化水素と接触させて用いられることで、過酸化水素からラジカルが生成し、そのラジカルにより有機物を分解することができる。このことから、この不均一系フェントン反応触媒は、ラジカル生成触媒、ラジカル生成能付与剤、ラジカル生成能向上化剤、有機物分解触媒、有機物分解能付与剤、及び有機物分解能向上化剤等として機能し得る。
【0034】
層状複水酸化物における2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンの配置態様は、特に制限されるものではなく、層状複水酸化物を構成する配置態様を採ることができる。層状複水酸化物は、水酸化物を含む基本層と、アニオン及び層間水を含む中間層が交互に積層した構造を有するものであるところ、一態様において、典型的には、2価鉄イオン及び3価金属イオンは基本層に配置され、アニオンは中間層に配置される。基本層の結晶構造は、特に制限されず、2価鉄イオン及び3価金属イオンの種類、合成方法等に応じた結晶構造を採ることができる。層状複水酸化物は、焼成処理や化学反応等で層状構造が崩壊された後も、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンが近接して配置された非晶質な複合水酸化物が形成される。そのため、不均一系フェントン反応触媒は、層状複水酸化物及び非晶質な複合水酸化物の少なくとも一方を含めばよい。非晶質な複合水酸化物も、元は層状複水酸化物であることから、本明細書においては、「層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物」について、単に「層状複水酸化物」と記載することがある。
【0035】
層状複水酸化物は、一態様において、典型的には、下記一般式(A)で表すことができる。一般式(A)中、M3+は3価金属イオンを表し、An−はn価のアニオンを表し、xは0<x<1の実数を表し、yは0より大きい実数を表す。
一般式(A):[(Fe2+)1−x(M3+)(OH)][(An−)x/n・yHO]
【0036】
3価金属イオン(M3+)は、2価鉄イオンと共に層状複水酸化物を構成し得るものである限り、特に制限されない。3価金属イオンとしては、例えば、3価アルミニウムイオン、3価バナジウムイオン、3価セリウムイオン、3価ランタン等に代表される3価ランタノイドイオン、3価鉄イオン、3価クロムイオン、3価コバルトイオン、3価インジウムイオン、3価ガリウムイオン、3価スカンジウムイオン、3価イットリウムイオン、3価マンガン、3価ヒ素、3価モリブデン、3価ルテニウム、3価ロジウム、3価アンチモン、3価金、及び3価ビスマス等が挙げられる。これらの中でも、不均一系フェントン反応触媒としての活性の観点から、一態様においては、好ましくは鉄イオン以外の3価金属イオンが挙げられ、より好ましくは3価アルミニウムイオン、3価バナジウムイオン、3価ランタノイドイオン(好ましくは3価セリウムイオン)等が挙げられ、さらに好ましくは3価アルミニウムイオン、3価バナジウムイオン等が挙げられ、特に好ましくは3価アルミニウムイオンが挙げられる。3価金属イオンは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
層状複水酸化物における2価鉄イオンと3価金属イオンとのモル比(2価鉄イオン:3価金属イオン)は、層状複水酸化物を形成可能なモル比である限り、特に制限されない。上記モル比(2価鉄イオン:3価金属イオン)は、好ましくは2:1〜4:1、より好ましくは2:1〜3:1である。2価鉄イオンに対する3価金属イオンのモル数が増えることにより、アニオンをより多く保持することができる。
【0038】
アニオンは、層状複水酸化物を構成し得るものである限り、特に制限されない。アニオンとしては、例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲンイオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、及び過臭素酸イオン等の強酸のアニオン;炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及びカルボン酸イオン(酢酸イオン等)等の弱酸のアニオン等が挙げられる。これらの中でも、不均一系フェントン反応触媒としての活性の観点から、好ましくは強酸のアニオンが挙げられ、中でも硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲンイオン等がより好ましく、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン等がさらに好ましく、硫酸イオンがよりさらに好ましい。アニオンは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
層状複水酸化物におけるアニオンのモル数は、2価鉄イオンに対する3価金属イオンのモル数と、アニオンの価数に応じて、適切な値を採り得る。典型的には、3価金属イオンのモル数をXと定義し、アニオンの価数をNと定義すると、アニオンのモル数はX/Nとなる。
【0040】
限定的な解釈を望むものではないが、不均一系フェントン反応触媒と過酸化水素を接触させた場合、アニオンと過酸化水素の反応によって生成する過酸化物種が、層状複水酸化物中の2価鉄イオン上でのフェントン反応に大きく寄与し、層状複水酸化物の構造(2価鉄イオンとアニオンとが近接して配置されていると考えられる)も相まって、フェントン反応の効率がより高まると考えられる。
【0041】
不均一系フェントン反応触媒は、上記層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物と、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物とを含有する複合化物を含むことが好ましい。二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、及び酸化アルミニウム(Al)は、上述した2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物に対して、さらに触媒性能を向上させ得る成分である。これら特定の無機酸化物と層状複水酸化物とを含有する複合化物を含む不均一系フェントン反応触媒を、前述の光の照射条件下、過酸化水素と接触させて用いることで、有機物をより効率よく分解することが可能となる。この観点から、上記無機酸化物としては、SiO及びTiOがより好ましく、TiOがさらに好ましい。
【0042】
上記複合化物における特定の無機酸化物の配置態様は、特定の無機酸化物が層状複水酸化物と複合化されている配置態様を採ることができ、前述の一般式(A)で表される層状複水酸化物と、特定の無機酸化物とが一体化した構成をとることが好ましい。このような態様から、上記層状複水酸化物は、特定の無機酸化物とともに複合化した層状複水酸化物(無機酸化物複合系の層状複水酸化物)と称され得る。複合化物における特定の無機酸化物は、層状複水酸化物と接する位置に、層状複水酸化物に被覆されるような態様で配置されていることがより好ましい。複合化物における特定の無機酸化物と層状複水酸化物との配置態様としては、特定の無機酸化物の周りに層状複水酸化物が付着しているような状態がさらに好ましい。このような複合化物は、例えば、特定の無機酸化物の存在下で層状複水酸化物を製造することによって得ることができる。
【0043】
触媒性能のさらなる向上や有機物分解性能のさらなる向上の観点から、層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物における2価鉄イオンに対する上記無機酸化物のモル比は、0.01〜2であることが好ましい。このモル比の範囲は、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。
【0044】
層状複水酸化物、及び特定の無機酸化物、並びにそれらを含有する複合化物の粒子形状は、特に制限されない。それらの粒子形状としては、例えば板状、球状、ロッド状、及び多面体状等が挙げられる。
【0045】
層状複水酸化物、及びそれと特定の無機酸化物とを含有する複合化物の平均粒子径は、特に制限されない。フェントン反応効率の観点からは、粒子はより小さいことが望ましい。層状複水酸化物の平均粒子径は、例えば10nm〜5000nmであることが好ましい。それらの粒子は操作を容易にするため、例えば板状、球状、ロッド状、及び多面体状等に造粒してもよく、固体表面に塗布してもよい。造粒された粒子の平均粒子径は、例えば1mm〜50mmであることが好ましい。
【0046】
不均一系フェントン反応触媒は、層状複水酸化物のみからなるものであっても、複合化物(層状複水酸化物及び特定の無機酸化物)のみからなるものであってもよく、また、それら以外の他の物質を含むものであってもよい。他の物質としては、例えば、層状複水酸化物を製造する際に不可避的に混入する不純物や、他の無機物質、層状複水酸化物構造が崩壊後に得られる非晶質な複合水酸化物等が挙げられる。他の物質は、層状複水酸化物と一体化しても、層状複水酸化物と分離していてもよい。
【0047】
層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物、又はそれと特定の無機酸化物を含有する複合化物の含有量は、不均一系フェントン反応触媒の全質量(100質量%)に対して、例えば50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上とすることができる。この含有量の上限は、例えば99.9質量%、99質量%、97質量%とすることができる。
【0048】
(不均一系フェントン反応触媒の製造方法)
上述した不均一系フェントン反応触媒の製造方法は、特に制限されない。例えば、2価鉄イオンとアニオンとの塩;3価金属イオンとアニオンとの塩;及び水を含有する混合物を調製すること;その混合物の25℃におけるpHを3〜14に調整して、懸濁液を得ることを含む製造方法によって、不均一系フェントン反応触媒を製造することが可能である。
【0049】
不均一系フェントン反応触媒の製造方法における「混合物を調製すること」によって、混合物に含有される成分の反応液を得ることができる。「混合物を調製すること」に用いられる、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンは、前述した通りである。また、混合物には、さらに前述の特定の無機酸化物を含有させることもできる。
【0050】
混合物の調製に用いる2価鉄イオンとアニオンとの塩(2価鉄塩)としては、層状複水酸化物において採用するアニオンの種類に応じて異なるが、例えば、FeCl、FeF、FeBr、FeI、FeSO、Fe(NO)を挙げることができる。これらの2価鉄塩の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。混合物(反応液)中の2価鉄塩の濃度は、特に制限されないが、例えば0.2〜2000mmol/Lとすることができ、好ましくは2〜1000mmol/L、より好ましくは4〜400mmol/L、さらに好ましくは20〜200mmol/Lである。
【0051】
混合物の調製に用いる3価金属イオンとアニオンとの塩(3価金属塩)としては、層状複水酸化物において採用するアニオンの種類に応じて異なるが、例えば、AlCl、AlF、AlBr、AlI、Al(SO)、Al(NO)、VCl、VF、VBr、VI、V(SO)、V(NO)、CeCl、CeF、CeBr、CeI、Ce(SO)、Ce(NO)、FeCl、FeF、FeBr、FeI、Fe(SO)、Fe(NO)等を挙げることができる。これらの3価金属塩の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。混合物(反応液)中の3価金属塩の濃度は、特に制限されないが、例えば0.1〜1000mmol/Lとすることができ、好ましくは1〜500mmol/L、より好ましくは2〜200mmol/L、さらに好ましくは10〜100mmol/Lである。
【0052】
2価鉄と3価金属のモル比(2価鉄:3価金属)は、層状複水酸化物を合成可能なモル比である限り、特に制限されない。2価鉄と3価金属のモル比(2価鉄:3価金属)は、2:1〜4:1であることが好ましく、2:1〜3:1であることがより好ましい。
【0053】
混合物(反応液)の液媒体は水を含む限りにおいて、特に制限されない。混合物(反応液)には、液媒体として、水以外の溶剤が含まれていてもよい。例えば、液媒体は、2価鉄イオンとアニオンとの塩(2価鉄塩)や、3価金属イオンとアニオンとの塩(3価金属塩)の溶媒であることが好ましく、上述の無機酸化物を用いる場合には、無機酸化物の分散媒であることが好ましい。水の含有量は、反応液の液媒体100質量%に対して、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上とすることができる。
【0054】
不均一系フェントン反応触媒の製造方法における「懸濁液を得ること」によって、その懸濁液から固形分として、2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を得ることができる。また、混合物にさらに前述の特定の無機酸化物を含有させておいて懸濁液を得ることによって、その懸濁液から固形分として、上記層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物と、特定の無機酸化物とを含有する複合化物を得ることができる。懸濁液は、上述の混合物(反応液)の25℃におけるpHを3〜14に調整することによって得ることができる。なお、この懸濁液を得る際の上述の混合物のpHの値は25℃での値をとるが、懸濁液を得る際の混合物の温度は、特に制限されず、例えば常温(5〜35℃)の範囲とすることができ、好ましくは15〜30℃の範囲とすることができる。
【0055】
混合物(反応液)のpHを調整する際には、公知のpH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウム等のアルカリや、塩酸及び硫酸等の酸等を挙げることができ、アルカリや酸を水溶液の形態で用いることが好ましい。懸濁液を得るに当たり、混合物(反応液)中に沈殿物が生じやすくなって懸濁液を得やすくなる観点から、混合物(反応液)の25℃におけるpHを、5〜14に調整することがより好ましく、7〜14に調整することがさらに好ましい。
【0056】
この不均一系フェントン反応触媒の製造方法では、上記懸濁液を得た後、常温でも、懸濁液から、層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物や、特定の無機酸化物を用いた場合には上記複合化物を得ることができる。一方、得られる層状複水酸化物の結晶性が高まる観点から、懸濁液を加熱処理することが好ましく、水熱処理することがより好ましい。これらにより、懸濁液にかける温度としては、層状複水酸化物を合成しやすい観点から、20〜200℃であることが好ましく、60〜140℃であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。懸濁液を水熱処理等により加熱する際には、層状複水酸化物が得られやすい観点から、その加熱時間は、例えば、1〜100時間であることが好ましく、12〜72時間であることがより好ましく、12〜48時間であることがさらに好ましい。
【0057】
上述のようにして得られた懸濁液から、固体状の層状複水酸化物や、特定の無機酸化物を用いた場合には上記複合化物を得ることができる。この際、懸濁液をろ過したり、水で洗浄したりすることが好ましく、それらの後、減圧下で乾燥させることがより好ましい。得られた物質(層状複水酸化物、又はそれと特定の無機酸化物とを含有する複合化物)は、そのまま、或いは他の物質と混合して、不均一系フェントン反応触媒として使用することができる。
【0058】
また、必要に応じて、公知の方法に従って又は準じて、不均一系フェントン反応触媒において層状複水酸化物が含まれることを確認することができる。例えば、粉末X線回折パターンを取得し、層状複水酸化物のピークが含まれているか否かを確認することができる。
【0059】
以上に述べた通り、本発明の一実施形態は、次の構成を採ることが可能である。
[1]2価鉄イオン、3価金属イオン、及びアニオンを含有する層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物を含む不均一系フェントン反応触媒と、過酸化水素とを、紫外線から赤外線までの領域にある光の照射条件下で接触させて、ラジカルを生成すること;及び前記ラジカルと、分解対象の有機物とを接触させること;を含む、有機物の分解方法。
[2]前記光が、紫外線及び可視光線の少なくとも1種を含む上記[1]に記載の有機物の分解方法。
[3]前記不均一系フェントン反応触媒は、前記層状複水酸化物並びに/又は非晶質な複合水酸化物と、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物とを含有する複合化物を含む上記[1]又は[2]に記載の有機物の分解方法。
[4]前記有機物を含有する被処理水と、前記ラジカルとを接触させることにより、前記ラジカルと前記有機物とを接触させることを含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の有機物の分解方法。
[5]前記有機物を含有する被処理水と、前記不均一系フェントン反応触媒と、前記過酸化水素とを、前記光の照射条件下で接触させて、前記被処理水中で、前記ラジカルを生成すること;及び前記被処理水中で前記ラジカルと前記有機物とを接触させることを含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の有機物の分解方法。
【実施例】
【0060】
以下、試験例を挙げて、本発明の一実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
【0061】
<層状複水酸化物の製造>
(製造例1)
硫酸鉄(II)(FeSO)、硫酸アルミニウム(Al(SO))、及び純水を含有する混合物(モル比(Fe2+:Al3+)=1:0.5、FeSO濃度=200mmol/L、Al(SO)濃度=100mmol/L)を調製した。この液状の混合物を1500rpmで撹拌しながら、混合物に5mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加して、混合物の25℃におけるpHを10に調整し、懸濁液を得た。次いで、混合物(懸濁液)を120℃で24時間水熱処理した後、ろ過及び純水で洗浄を行い、減圧下で乾燥させた。このようにして、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び硫酸イオンを含有する層状複水酸化物(SO2−型Fe(II)−Al(III)−層状複水酸化物)を調製した。得られた層状複水酸化物についてSEM観察を行い、10〜5000nmの粒子径を有することを確認した。また、粉末X線回折(XRD)を行い、XRDパターンにおいて層状複水酸化物のピークが存在することを確認した。
【0062】
(製造例2)
塩化鉄(II)(FeCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、及び純水を含有する混合物(モル比(Fe2+:Al3+)=1:0.5、FeCl濃度=200mmol/L、AlCl濃度=100mmol/L)を調製した。この液状の混合物を1500rpmで撹拌しながら、混合物に5mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加して、混合物の25℃におけるpHを10に調整し、懸濁液を得た。次いで、混合物(懸濁液)を120℃で24時間水熱処理した後、ろ過及び純水で洗浄を行い、減圧下で乾燥させた。このようにして、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物(Cl型Fe(II)−Al(III)−層状複水酸化物)を調製した。得られた層状複水酸化物についてSEM観察を行い、10〜5000nmの粒子径を有することを確認した。また、粉末X線回折(XRD)を行い、XRDパターンにおいて層状複水酸化物のピークが存在することを確認した。
【0063】
(製造例3)
製造例2における混合物の調製を、FeCl、AlCl、及び純水のほか、さらに二酸化チタン(TiO)粉末(石原産業株式会社製、商品名「ST−01」)を含有する混合物(モル比(Fe2+:Al3+:TiO)=1:0.5:1、FeCl濃度=200mmol/L、AlCl濃度=100mmol/L、TiO濃度=200mmol/L)を調製したことに変更したこと以外は、製造例2と同様にした。このようにして、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物(Cl−型Fe(II)−Al(III)−層状複水酸化物)と、二酸化チタンとを含有する複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物)を調製した。得られた複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物)についてSEM観察を行い、10〜5000nmの粒子径を有することを確認した。また、粉末X線回折(XRD)を行い、XRDパターンにおいて層状複水酸化物のピークが存在することを確認した。
【0064】
(製造例4)
塩化鉄(II)(FeCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、二酸化ケイ素(SiO)粉末(富士シリシア化学株式会社製、商品名「Q−3」)、及び純水を含有する混合物(モル比(Fe2+:Al3+:SiO)=1:0.5:1、FeCl濃度=200mmol/L、AlCl濃度=100mmol/L、SiO濃度=200mmol/L)を調製した。この液状の混合物を1500rpmで撹拌しながら、混合物に5mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加して、混合物の25℃におけるpHを10に調整し、懸濁液を得た。次いで、混合物(懸濁液)を120℃で24時間水熱処理した後、ろ過及び水で洗浄を行い、減圧下で乾燥させた。このようにして、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物(Cl−型Fe(II)−Al(III)−層状複水酸化物)と、二酸化ケイ素とを含む複合化物(SiO複合系の層状複水酸化物)を調製した。得られた複合化物(SiO複合系の層状複水酸化物)についてSEM観察を行い、10〜5000nmの粒子径を有することを確認した。また、粉末X線回折(XRD)を行い、XRDパターンにおいて層状複水酸化物のピークが存在することを確認した。
【0065】
(製造例a)
製造例1において、懸濁液を得る際の混合物のpHを10に調整したことを、pH7(製造例a1)、及びpH11(製造例a2)に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行った。これらの製造例によっても、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び硫酸イオンを含有する層状複水酸化物が得られたことが確認された。
【0066】
(製造例b)
製造例2において、懸濁液を得る際の混合物のpHを10に調整したことを、pH7(製造例b1)、及びpH11(製造例b2)に変更したこと以外は、製造例2と同様の操作を行った。これらの製造例によっても、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物が得られたことが確認された。
【0067】
(製造例c)
製造例2における「塩化アルミニウム(AlCl)」を、それぞれ、塩化バナジウム(VCl;製造例c1)、及び塩化セリウム(CeCl;製造例c2)にそれぞれ変更したこと以外は、製造例2と同様の操作を行った。これらの製造例により、2価鉄イオン、3価金属イオン(V3+、又はCe3+)、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物が得られたことが確認された。
【0068】
(製造例d)
製造例3における「AlCl」を、それぞれ、塩化バナジウム(VCl;製造例d1)、及び塩化セリウム(CeCl;製造例d2)にそれぞれ変更したこと以外は、製造例3と同様の操作を行った。これらの製造例により、2価鉄イオン、3価金属イオン(V3+、又はCe3+)、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物と、二酸化チタンとを含有する複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物)が得られたことが確認された。
【0069】
(製造例e)
製造例3における「二酸化チタン(TiO)粉末」を、酸化アルミニウム(Al)粉末(MERCK社製、商品名「Aluminiumoxid」)に変更して混合物(モル比(Fe2+:Al3+:Al)=1:0.5:1、FeCl濃度=200mmol/L、AlCl濃度=100mmol/L、Al濃度=200mmol/L)を調製したこと以外は、製造例3と同様の操作を行った。この製造例により、2価鉄イオン、3価アルミニウムイオン、及び塩化物イオンを含有する層状複水酸化物と、酸化アルミニウムとを含有する複合化物(Al複合系の層状複水酸化物)が得られたことが確認された。
【0070】
<試験例1:有機物分解試験1>
製造例1で作製した層状複水酸化物について、それを不均一系フェントン反応触媒試料として用い、有機物の分解性能(触媒性能)を確認する試験を行った。有機物としては、フェノール又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、「C12LAS−Na」と略記することがある。)を用いた。以下、具体的に述べる。
【0071】
(試験例1−1)
ビーカー内に、不均一系フェントン反応触媒試料として、製造例1で作製した層状複水酸化物60mgと水を入れ、それらを含む水懸濁液(不均一系)40mLを調製した。このビーカー内の水懸濁液に、フェノール0.04mmol(1mmol/L)、及び過酸化水素(H)1.2mmol(30mmol/L)を加えた。また、ビーカー内の液面から上方5cmの高さの位置にUV照射装置(「LED光源コントローラーCL−1501」及び「365nmLEDヘッドユニット(CL−H1−365−9−1)」、朝日分光株式会社製)を固定した。そして、そのUV照射装置により、波長365nmの紫外線(UV;光量544mW/cm)をビーカー内の液に照射しながら、ウォーターバスにビーカーを浸漬し、マグネチックスターラー及び撹拌子を用いて、ビーカー内の液を25±1℃の範囲内で60分間撹拌して反応させた。反応後の水懸濁液を0.2μmメンブレンフィルターでろ過し、亜硫酸水素ナトリウムの添加によってHを除去した後、JIS K0102:2016の規定に準じて、ろ液中の酸素要求量(二クロム酸カリウムによる酸素消費量;CODCr(mg/L))を測定した。
【0072】
(試験例1−2)
試験例1−1における「紫外線」を照射しなかったこと以外は、試験例1−1と同様にして、CODCr(mg/L)を測定した。
【0073】
(試験例1−3)
試験例1−1における「フェノール0.04mmol(1mmol/L)」を、「ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01mmol(0.25mmol/L)に変更したこと以外は、試験例1−1と同様にして、CODCr(mg/L)を測定した。
【0074】
(試験例1−4)
試験例1−1における「紫外線」を照射しなかったこと、及び試験例1−1における「フェノール0.04mmol(1mmol/L)」を、「ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01mmol(0.25mmol/L)に変更したこと以外は、試験例1−1と同様にして、CODCr(mg/L)を測定した。
【0075】
上記試験例1(試験例1−1〜1−4)で得られた各CODCr測定値(反応後CODCr)と、各試験例における分解反応前のCODCr測定値(反応前CODCr)から、下記式に基づいて、CODCr除去率(%)を算出した。反応前CODCrは、層状複水酸化物60mgと水を含む水懸濁液に、フェノール又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加えた後、過酸化水素を加える前の水懸濁液を0.2μmメンブレンフィルターでろ過し、そのろ液中のCODCrを測定した値である。なお、反応前CODCrは、試験例1−1及び1−2では、フェノールに起因して、234mg/Lであり、試験例1−3及び試験例1−4では、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに起因して、178mg/Lであった。
式:CODCr除去率(%)=[(反応前CODCr(mg/L)−反応後CODCr(mg/L))/反応前のCODCr(mg/L)]×100
【0076】
上記試験例1で得られた各CODCr除去率の結果を表1に示す。表1には、各試験例で使用した層状複水酸化物におけるモル比(Fe2+:Al3+)、UV照射の有無、及び分解対象有機物も示す。
【0077】
【0078】
試験例1の結果より、2価鉄イオン、3価金属イオン(Al3+)、及びアニオンを含有する層状複水酸化物と、過酸化水素とを接触させることで、フェノール及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの分解反応を促進していることが確認された。さらに、上記層状複水酸化物と過酸化水素とを紫外線の照射条件下で接触させることにより、フェノール及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの分解反応がさらに促進することが確認された。このことから、不均一系フェントン反応触媒としての上記層状複水酸化物と、過酸化水素とを、紫外線の照射条件下で接触させることで、ラジカル生成をさらに促進していることが認められた。よって、このようなラジカル生成をさらに促進することが可能な方法は、様々な有機物分解への利用がよりいっそう期待できるものといえる。
【0079】
なお、製造例1で得られた層状複水酸化物による上述した効果は、その層状複水酸化物の代わりに、前述の製造例aで得られた各層状複水酸化物を用いた場合にも認められたが、製造例1で得られた層状複水酸化物を用いた場合の方がより良好であった。
【0080】
<試験例2:有機物分解試験2>
製造例2で作製した層状複水酸化物、並びに製造例3及び4で作製した各複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物、SiO複合系の層状複水酸化物)について、それらを不均一系フェントン反応触媒試料として用い、有機物の分解性能(触媒性能)を確認する試験を行った。分解対象の有機物としては、フェノールを用いた。以下、具体的に述べる。
【0081】
(試験例2−1)
透明な反応容器内に、不均一系フェントン反応触媒試料として、製造例2で作製した層状複水酸化物30mgと水を入れ、それらを含む水懸濁液(不均一系)30mLを調製した。この水懸濁液に、フェノール20μmol(0.67mmol/L)、及び過酸化水素(H)600μmol(20mmol/L)を加えた。一方、反応容器の側面側に、ソーラシミュレータ(株式会社三永電機製作所製、型式「XES−40S2−CE」、光量:AM−1.5G(100mW/cm))を設置した。そして、反応容器の側面側から、反応容器内の水懸濁液に、上記ソーラシミュレータによる疑似太陽光を照射しながら、水懸濁液を30℃で60分間撹拌して反応させた。その反応により、フェノールが完全に分解される場合、反応式例:COH+14H→6CO+17HOのように、二酸化炭素(CO)が生成することから、生成したCO量を、ガスクロマトグラフィー(GC)により、以下に示す条件で定量した。この定量は、上記反応の開始(フェノール及びHの添加)から、0分、15分、30分、45分、及び60分後の経過時間毎に行った。
(GC測定条件)
・測定装置:商品名「GC−8A」(株式会社島津製作製)
・カラム:商品名「Porapak Q」(ジーエルサイエンス株式会社製)
・注入量:0.5mL
・注入口温度:100℃
・カラム温度:60℃
・キャリアガス:ヘリウム(流量20mL/min)
・検出器:TCD
・検出器温度:100℃
【0082】
また、上記のGCにより得られたCO量の定量値に基づいて、上述の各経過時間のフェノールからCOへの変換率(CO変換率(%))を下記式に基づいて算出した。
式:CO変換率(%)=[反応後のCO定量値(μmol)/(6×反応前のフェノール量(20μmol))]×100
【0083】
(試験例2−2)
試験例2−1における「疑似太陽光」を照射しなかったこと以外は、試験例2−1と同様の試験を行い、CO変換率を算出した。
【0084】
(試験例2−3)
試験例2−1における「製造例2で作製した層状複水酸化物」を、製造例3で作製した複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物)に変更したこと以外は、試験例2−1と同様の試験を行い、CO変換率を算出した。
【0085】
(試験例2−4)
試験例2−1における「製造例2で作製した層状複水酸化物」を、製造例4で作製した複合化物(SiO複合系の層状複水酸化物)に変更したこと以外は、試験例2−1と同様の試験を行い、CO変換率を算出した。
【0086】
(試験例2−5)
参考として、試験例2−1における「製造例2で作製した層状複水酸化物」を、二酸化チタン(TiO;石原産業株式会社製、商品名「ST−01」)に変更したこと以外は、試験例2−1と同様の試験を行い、CO変換率を算出した。
【0087】
上記試験例2(試験例2−1〜2−5)で得られた各CO変換率の結果を表2に示す。表2には、各試験例で使用した層状複水酸化物におけるモル比(Fe2+:Al3+:TiO又はSiO)、及び疑似太陽光照射の有無等も示す。
【0088】
【0089】
試験例2の結果より、2価鉄イオン、3価金属イオン(Al3+)、及びアニオンを含有する層状複水酸化物が、フェノールの分解反応を促進し、COまで分解可能であることが確認された。さらに、上記層状複水酸化物と過酸化水素とを疑似太陽光の照射条件下で接触させることにより、フェノールの分解反応がさらに促進し、CO変換率がより高まることが確認された。このことから、不均一系フェントン反応触媒としての上記層状複水酸化物と、過酸化水素とを、紫外線及び可視光線の少なくとも1種を含む光の照射条件下で接触させることで、ラジカル生成をさらに促進していることが認められた。よって、このようなラジカル生成をさらに促進することが可能な方法は、様々な有機物分解への利用がよりいっそう期待できるものといえる。
【0090】
なお、製造例2で得られた層状複水酸化物による上述した効果は、その層状複水酸化物の代わりに、前述の製造例b及び製造例cで得られた各層状複水酸化物を用いた場合にも認められたが、製造例2で得られた層状複水酸化物を用いた場合の方がより良好であった。
【0091】
また、試験例2−3及び試験例2−4の結果より、層状複水酸化物と、特定の無機酸化物(TiO、SiO)とを含有する複合化物(TiO複合系の層状複水酸化物、SiO複合系の層状複水酸化物)により、有機物分解性能がさらに向上することがわかった。この効果は、前述の製造例dで得られた各複合化物を用いた場合、及び前述の製造例eで得られた複合化物を用いた場合にも認められたが、製造例3及び製造例4で得られた各複合化物を用いた場合の方がより良好であった。