【実施例】
【0062】
実施例1
βアミノ酸誘導体の合成
1.化合物1と化合物2の合成
化合物1と化合物2の合成スキームは以下のスキーム1に示すとおりである。
【0063】
スキーム1
【0064】
(1)合成例1
アルゴン下、密閉管中の1−ブロモ−4−ニトロベンゼン(1-bromo-4-nitrobenzene)(210mg,1.04mmol)、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(1-Boc-4-pyrazoleboronic acid pinacol ester)(305mg,1.04mmol)、PdCl
2(dppf)(76mg,103.76μmol)およびCs
2CO
3(676mg,2.08mmol)の混合物に、混合溶媒(ジオキサン(dioxane)/H
2O=10/1,6mL)を注入してから、その混合物を90℃で6時間撹拌した。室温まで冷却した後、回転蒸発によりで溶媒を除去し、残留物に水を加えると共に、EtOAc(15mL×3)で抽出を行った。合わせた有機層を塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(flash chromatography)(EtOAc/Hex=15%)を用いシリカゲルで精製し、tert−ブチル4−(3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール(tert-butyl 4-(3-(2-(dimethylamino)ethoxy)-4-nitrophenyl)-1H-pyrazole)(1a)を白色の固体として得た(249mg,64%)。
【0065】
tert−ブチル4−(3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール(1a)(360mg)がMeOH(8mL)に入った溶液に10% Pd/Cを加え、前述の反応の混合物をH
2雰囲気(H
2 balloon atmosphere)の室温下で1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ液を回転により蒸発させて、tert−ブチル−(4−アミノ−3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)−1H−ピラゾール(tert-butyl -(4-amino-3-(2-(dimethylamino)ethoxy)phenyl)-1H-pyrazole)(1b)を茶色の固体として得た(320mg,97%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.44(s,1H),8.27(d,J=9.0Hz,2H),8.06(s,1H),7.69−7.68(m,4H),1.68(s,9H),1.59(s,9H)。
【0066】
2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸(2-azido-3-((tert-butoxycarbonyl)amino)propanoic acid)(1.2eq)、HATU(1.5eq)およびDIPEA(2eq)をDMF(0.1M)中に溶解し、さらにtert−ブチル−(4−アミノ−3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)−1H−ピラゾール(1b)(1.0eq)を加えて混合物を作り、室温で1時間撹拌した。水で反応を促して起こし、EtOAcで抽出した。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥し、抽出液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル(EtOAc/Hex=20%)で精製し、所望の化合物tert−ブチル4−(4−(2−(2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(2-azido-3-((tert-butoxycarbonyl)amino)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(1c)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.41(s,1H),8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.58(d,J=9.0Hz,2H),7.47(d,J=9.0Hz,2H),5.07(s,1H),4.27(m,1H),3.72(m,1H),3.60(m,1H),1.65(s,9H),1.43(s,9H)。
【0067】
1,4−ジオキサン中の4M HCl(20eq)および4−(4−(2−(2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(1c)(1eq)を室温下で1時間撹拌した。ろ過により白色の固体を収集し、それを1,4−ジオキサンとDCMで洗浄した。白色の固体を真空乾燥し、N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−アジドプロパンアミドジヒドロクロリド)(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-azidopropanamide dihydrochloride)(1)を得た。
1H−NMR(500MHz,D2O)δ:8.30(s,2H),7.67(m,2H),7.55(m,2H),4.76(m,1H),3.57(dd,J=13.5,4.5Hz,1H),3.44(dd,J=13.5,7.5Hz,1H),3.60(m,1H)。
【0068】
(2)合成例2
tert−ブチル4−(4−(2−(2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(1c)(1eq)、フェニルアセチレン(phenyl acetylene)(1.1eq)、硫酸銅(II)(0.2eq)および(+)−Na−L−アスコルビン酸塩((+)-Na-L-ascorbate)(0.2eq)を、THFおよび2〜3滴のH
2O中で撹拌した。その混合物を室温下で一晩撹拌した後、溶媒を除去した。残留物をシリカゲル(EtOAc/Hex=20%)で精製し、所望の化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-phenyl-1H-1,2,3-triazol-1-yl) propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.98(s,1H),8.24(s,1H),8.11(s,1H),7.94(s,1H),7.83(d,J=7.5Hz,2H),7.58(d,J=8.5Hz,2H),7.46(d,J=8.5Hz,2H),7.42(t,J=7.0Hz,2H),7.34(t,J=7.0Hz,1H),5.61(s,1H),5.15(s,1H),4.10−4.06(m,1H),3.96−3.95(m,1H),1.65(s,9H),1.40(s,9H)。
【0069】
化合物2の作製方法は化合物1の作製方法と類似する。差異は、化合物tert−ブチル4−(4−(2−(2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレートが、化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレートに置き換えられて、生成物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)プロペンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-phenyl-1H-1,2,3-triazol-1-yl) propenamide dihydrochloride)(2)が得られた点である。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.63(s,1H),8.61(s,1H),7.88(d,J=7.5Hz,2H),7.74(d,J=8.5Hz,2H),7.67(d,J=8.5Hz,2H),7.45(t,J=8.5Hz,2H),7.37(t,J=8.5Hz,1H),5.97(t,J=6.0Hz,1H),5.54(s,1H),3.92(d,J=6.0Hz,2H),3.34(s,2H)。
【0070】
2.化合物3から化合物5の合成
化合物3から化合物5の合成スキームは以下のスキーム2に示すとおりである。
【0071】
スキーム2
【0072】
(3)合成例3
化合物3aの作製方法は化合物1cの作製方法と類似する。差異は、化合物2−アジド−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸が、化合物tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−ヒドロキシプロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-hydroxypropanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(3a)に置換された点である。最終生成物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-hydroxypropanamide dihydrochloride)(3)の合成方法は化合物1と類似する。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:8.20(s,2H),7.70(d,J=8.0,2H),7.56(d,J=8.0,2H),4.64(dd,J=8.5,4.5Hz,1H),3.51(dd,J=13.5,4.5Hz,1H),3.36−3.31(m,1H)。
【0073】
(4)合成例4
10mLTHF中の化合物3a(1eq)、フェノール(1eq)およびPPh
3(2eq)の0℃の溶液に、DIAD(1.5eq)を滴下して加えた。その混合物を室温で2時間撹拌した。減圧により溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(column chromatography)(EtOAc/Hex=10%)で粗生成物を精製して、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェノキシプロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenoxypropanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(4a)を油状物として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCI
3)δ:8.26(s,2H),7.96(s,1H),7.58(d,J=9.0Hz,2H),7.48(d,J=9.0Hz,2H),7.35(t,J=8.0Hz,2H),7.09−6.99(m,3H),5.03(brs,1H),4.76(t,J=5.0Hz,1H),3.81−3.78(m,1H),3.73−3.70(m,1H),1.68(s,9H),1.45(s,9H)。最終生成物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェノキシプロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-phenoxypropanamide dihydrochloride)(4)の合成方法は化合物1と類似する。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.30(s,2H),7.66(d,J=9.0Hz,2H),7.59(d,J=9.0Hz,2H),7.36(d,J=8.5Hz,2H),7.12(d,J=8.5Hz,1H),7.07(t,J=7.0Hz,1H),7.01−6.98(m,1H),3.75−3.66(m,1H),3.60−3.50(m,2H)。
【0074】
(5)合成例5
化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)プロペンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-(trifluoromethyl) phenoxy)propenamide dihydrochloride)(5)の合成方法は化合物4と類似する。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.14(br,2H),7.68(d,J=9.0,2H),7.63(d,J=6.5,2H),7.58(d,J=6.5,2H),7.26(d,J=9.0,2H),5.21(m,1H),3.60−3.58(m,2H)。
【0075】
3.化合物6の合成
化合物6の合成スキームは以下のスキーム3に示すとおりである。
【0076】
スキーム3
【0077】
(6)合成例6
化合物3a(1eq)が10mLのTHFに入った0℃の溶液に、NaH(1.5eq)を加えた。その混合物を0℃で1時間撹拌してから、BnBr(1.5eq)を滴下して加えた。その反応混合物を室温で6時間撹拌した。水で反応を促して起こし、EtOAcで抽出を行った。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥させた後、減圧下で溶媒を除去した。残留物をシリカゲル(EtOAc/Hex=5%から15%)で精製し、所望の化合物tert−ブチル4−(4−(2−(ベンジルオキシ)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(2-(benzyloxy)-3-((tert-butoxycarbonyl)amino)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(6a)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.44(s,1H),8.27(s,1H),7.97(s,1H),7.56(d,J=8.5Hz,2H),7.48(d,J=8.5Hz,2H),7.41−7.35(m,5H),4.93(brs,1H),4.82(d,J=8.5Hz,1H),4.66(d,J=11.0Hz,1H),4.06(t,J=5.0Hz,1H),3.65−3.61(m,2H),1.68(s,9H),1.44(s,9H)。
【0078】
最終生成物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(ベンジルオキシ)プロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(benzyloxy) propanamidedihydrochloride)(6)の合成方法は化合物1と類似する。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.46(s,2H),7.69−7.66(m,4H),7.49(d,J=7.5Hz,2H),7.38(t,J=7.5Hz,2H),7.34−7.31(m,1H),4.78(d,J=11.5Hz,1H),4.75(d,J=11.5Hz,1H),4.36−4.34(m,1H),3.36−3.31(m,2H)。
【0079】
4.化合物7および化合物8の合成
化合物7の合成スキームは以下のスキーム4に示すとおりである。
【0080】
スキーム4
【0081】
(7)合成例7
中間化合物7aおよび8aの作製方法は化合物1cの作製方法に類似する。
【0082】
中間化合物tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(7a)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.22(s,1H),7.92(s,1H),7.49(d,J=8.5Hz,2H),7.42(d,J=8.5Hz,2H),5.14(s,1H),3.90(m,1H),3.65(m,1H),3.55(m,1H),1.64(s,9H),1.40(s,9H)。
【0083】
中間化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−フルオロフェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-fluorophenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(8a)は白色の粉末であった。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.53−7.51(m,3H),7.45(d,J=8.5Hz,2H),7.34(t,J=8.5Hz,2H),7.05(t,J=8.5Hz,2H),5.13(brs,NH,1H),3.92(s,1H),3.65−3.64(m,1H),3.54−3.51(m,1H),1.67(s,9H),1.47(s,9H)。
【0084】
最終化合物7および8の作製方法は化合物1の作製方法と類似する。
【0085】
最終化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-phenylpropanamide dihydrochloride)(7)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.55(br,2H),7.69(d,J=8.5,2H),7.63(d,J=8.5,2H),7.47−7.34(m,5H),4.15−4.17(m,1H),3.61(dd,J=12.5,9.5Hz,1H),3.25(dd,J=12.5,5.5Hz,1H),3.60(m,1H)。
【0086】
最終化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−フルオロフェニル)プロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-fluorophenyl) propanamide dihydrochloride)(8)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:8.07(s,2H),7.42(d,J=8.5Hz,2H),7.34(dd,J=5.5,8.5Hz,2H),7.26(d,J=8.5Hz,2H),7.08(t,J=8.5Hz,2H),4.06(t,J=7.5Hz,1H),3.52(dd,J=7.5,13.0Hz,1H),3.33(dd,J=7.5,13.0Hz,1H)。
【0087】
5.化合物9の合成
(8)合成例8
化合物9fの合成スキームは以下スキーム5に示すとおりである。
【0088】
スキーム5
【0089】
ヨードフェノール(9a)(100g,454.5mmol)がDCM(1000mL)に入った溶液にイミダゾール(imidazole)(68g,999.9mmol)を加えてから、TIPSC1(87.3g,454.5mmol)を滴下して加えた。その混合物を16時間撹拌した後、氷/水中に注ぎ入れ、DCMで抽出を行った。塩水で有機層を洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:酢酸エチル/石油エーテル=1/50)、化合物9bを得た(170g,99.1%)。それは無色の油であった。
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):δ:1.05−1.08(d,18H),1.20−1.28(m,3H),6.64−6.66(m,2H),7.47−7.49(m,2H)。
【0090】
化合物9b(140g,372.3mmol)がジオキサン(1500mL)中に入った溶液に、2−シアノ酢酸エチル(ethyl2-cyanoacetate)(63.1g,558.8mmol)、ピコリン酸(picolinic acid)(13.8g,111.7mmol)、Cs
2CO
3(242g,744.6mmol)およびCuI(21.2g,111.7mmol)を加えた。その混合物を90℃で2時間撹拌し、ろ過した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:酢酸エチル/石油エーテル=1/20)化合物9c(44g,32.7%)を白色の固体として得た。
【0091】
化合物9c(22g,60.9mmol)がMeOH/THF(2:1,660mL)に入った溶液に、−20℃でCoCl
26H
2O(44g,184.9mmol)およびNaBH
4(33g,868.4mmol)を加えた。その混合物を30分撹拌し、ろ過してろ液を得た。そのろ液を有機物(Boc)
2O(40g,183.5mmol)に加え、室温で0.5時間撹拌した。次いで、その混合物を氷/水中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出を行った。塩水で有機層を洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:酢酸エチル/石油エーテル=1/30)、化合物9eを得た(10.5g,35.9%)。それは黄色の油であった。
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):δ:1.53−1.09(t,18H),1.17−1.28(m,6H),1.42(s,9H),3.46−3.56(m,2H),3.77−3.80(t,1H),4.11−4.18(m,2H),4.82(s,1H),6.81−6.83(d,2H),7.09−7.11(d,2H)。
【0092】
化合物9e(10g,21.5mmol)がEtOH/H
2O(10:1,220mL)に入った溶液にNaOH(2g,49.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その混合物を1N HClで中和し、EtOAcで抽出を行った。塩水で有機層を洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:酢酸エチル/石油エーテル=1/10)、化合物9fを得た(2.5g,26.6%)。それは白色の固体であった。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz):δ:1.08−1.10(d,18H),1.22−1.32(m,3H),1.37(s,9H),3.23−3.28(m,1H),3.42−3.46(t,1H),3.69−3.73(t,1H),6.85−6.87(d,3H),7.16−7.18(d,2H)。
【0093】
(9)合成例9
化合物9の合成スキームはスキーム6に示すとおりである。
【0094】
スキーム6
【0095】
中間化合物9gの作製方法は化合物1cの作製方法と類似する。
【0096】
中間化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−((トリイソプロピルシリル)オキシ)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-((triisopropylsilyl)oxy)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(9g)は白色の粉末であった。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.49(d,J=8.5Hz,2H),7.44(d,J=8.5Hz,2H),7.30(brs,NH,1H),7.19(d,J=8.5Hz,2H),6.87(d,J=8.5Hz,2H),5.17(brs,NH,1H),3.82(s,1H),3.64−3.62(m,1H),3.56−3.53(m,1H),1.67(s,9H),1.43(s,9H),1.30−1.20(m,3H),1.09(d,J=7.0Hz,18H)。
【0097】
tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−((トリイソプロピルシリル)オキシ)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(9g)(1030mg,1.52mmol)をTHF(10mL)中に入れて撹拌した溶液に、THF溶液に入った1M TBAF(3.03mL,3.03mmol)を加えた。生成された混合物を室温で1時間撹拌した。水で反応を促して起こし、EtOAcで抽出を行った。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥させ、抽出物を減圧下で濃縮した。残留物を逆相高速液体クロマトグラフィー(preparative reverse HPLC)(80% ACN, 20% H
2O)で精製し、次いで凍結乾燥して、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド)フェニル)−1−H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-hydroxyphenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(9h)(600mg,76%)を白色の粉末として得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.50(d,J=8.5Hz,2H),7.45−7.43(m,3H),7.15(d,J=8.5Hz,2H),6.81(d,J=8.5Hz,2H),5.26(brs,NH,1H),3.80(s,1H),3.62(s,1H),3.55−3.53(m,1H),1.67(s,9H),1.62(brs,OH,1H),1.43(s,9H)。
【0098】
最終化合物9の作製方法は化合物1の作製方法と類似する。
【0099】
最終化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-hydroxyphenyl) propanamide dihydrochloride)(9)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:8.06(s,2H),7.39(d,J=8.5Hz,2H),7.24(d,J=8.5Hz,2H),7.20(d,J=8.5Hz,2H),6.82(d,J=8.5Hz,2H),3.97(t,J=7.5Hz,1H),3.49(dd,J=7.5,13.0Hz,1H),3.30(dd,J=7.5,13.0Hz,1H)。
【0100】
6.化合物10の合成
(10)合成例10
化合物10の合成スキームは以下のスキーム7に示すとおりである。
【0101】
スキーム7
【0102】
tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-hydroxyphenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(9h)(356mg,0.68mmol)、2,4−ジメチル安息香酸(2,4-dimethylbenzoic acid)(103mg,0.68mmol)およびNEt
3(143μL,1.02mmol)をCH
2Cl
2(20mL)に入れて撹拌した溶液に、EDCI(196mg,1.02mmol)およびDMAP(25mg,0.21mmol)を加えた。生成された混合物を16時間撹拌した。飽和クエン酸で反応を促して起こし、EtOAcで抽出を行った。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。残留物を逆相高速液体クロマトグラフィー(100%ACN)で精製し、次いで凍結乾燥して、tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-((2,4-dimethylbenzoyl)oxy)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(10a)(355mg,80%)を白色の粉末として得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)8.26(s,1H),8.06(d,J=8.0Hz,1H),7.96(s,1H),7.53(d,J=8.5Hz,2H),7.52−7.42(m,5H),7.21(d,J=8.5Hz,2H),5.15(brs,NH,1H),3.95(s,1H),3.68−3.67(m,1H),3.58−3.55(m,1H),2.63(s,3H),2.40(s,3H),1.67(s,9H),1.44(s,9H)。
【0103】
20mLの瓶に、tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-((2,4-dimethylbenzoyl)oxy)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(10a)(350mg,0.54mmol)、およびジオキサンに入った4M HCl溶液(2.7mL)を入れた。生成された混合物を室温で1時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、所望の化合物4−(1−((4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)アミノ)−3−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニル2,4−ジメチル安息香酸エステルジヒドロクロリド(4-(1-((4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)amino)-3-amino-1-oxopropan-2-yl)phenyl 2,4-dimethylbenzoate dihydrochloride)(10)を白色の粉末として得た(271mg,96%)。
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ:10.47(s,1H),8.08(brs,3H),8.02(s,2H),7.94(d,J=8.5Hz,1H),7.61(d,J=9.0Hz,2H),7.53(d,J=8.5Hz,2H),7.50(d,J=8.5Hz,2H),7.28(d,J=8.5Hz,2H),7.19(d,J=9.0Hz,2H),4.18(dd,J=5.5,8.5Hz,1H),3.15−3.06(m,1H),2.52(s,3H),2.34(s,3H)。
【0104】
7.化合物11の合成
(11)合成例11
化合物11gの合成スキームは以下のスキーム8に示すとおりである。
【0105】
スキーム8
【0106】
2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)酢酸(2-(4-(hydroxymethyl)phenyl)aceticacid)(5233mg,31.49mmol)がCH
2Cl
2(25mL)およびMeOH(6mL)に入った0℃の溶液に、TMSジアゾメタン(diazomethane)(23.6mLのヘキサン中の2M溶液,47.23mmol)を滴下して加えた。15分後、HOAc(1mL)を加えることにより反応をクエンチした(quenched)。その反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(2×25mL)および塩水(25mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、ろ過および濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(0から33パーセントEtOAc/ヘキサン)により残留物を精製して、メチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテート(methyl2-(4-(hydroxymethyl)phenyl)acetate)(11b)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ:7.33(d,J=7.5Hz,2H),7.27(d,J=7.5Hz,2H),4.68(s,2H),3.69(s,3H),3.63(s,2H)。
【0107】
メチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテート(11b)(5674mg,31.49mmol)がCH
2Cl
2(50mL)に入った0℃の溶液に、2,6−ルチジン(2,6-lutidine)(5.47mL,47.23mmol)およびTIPS−OTf(14.48g,47.23mmol)を加えた。氷浴を取り除き、溶液を室温まで戻して撹拌した。2時間後、NH
4Cl
(aq)(50mL)を加えることにより反応をクエンチした。その反応混合物をCH
2Cl
2(100mL)で希釈し、H
2O(2×50mL)および塩水(50mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、ろ過および濃縮をした。フラッシュクロマトグラフィー(0から5パーセントEtOAc/ヘキサン)で残留物を精製し、メチル2−(4−(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アセテート(methyl 2-(4-(((triisopropylsilyl)oxy)methyl)phenyl)acetate)(11c)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ7.31(d,J=8.0Hz,2H),7.24(d,J=8.0Hz,2H),4.82(s,2H),3.69(s,3H),3.62(s,2H),1.21−1.15(m,3H),1.10−1.06(m,18H)。
【0108】
メチル2−(4−(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アセテート(11c)(10.60g,31.49mmol)がTHF(50mL)に入った−78℃の溶液に、LiHMDS(47.30mL,47.23mmol)を滴下して加えた。30分後、同じ温度で、THF(50mL)に入ったブロモメチルフタルイミド(bromo-methylphthalimide)(11.34g,47.23mmol)を滴下して加えた。−78℃の氷浴を取り除き、溶液を室温まで戻して撹拌した。2時間後、NH
4Cl
(aq)(40mL)を加えることにより反応をクエンチし、EtOAc(100mL)で抽出を行った。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、ろ過および濃縮をした。フラッシュクロマトグラフィー(0から10パーセントEtOAc/ヘキサン)により残留物を精製し、メチル3−(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)−2−(4−((((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(methyl 3-(1,3-dioxoisoindolin-2-yl)-2-(4-(((triisopropylsilyl)oxy)methyl)phenyl) propanoate)(11d)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ7.79−7.76(m,2H),7.69−7.67(m,2H),7.30−7.28(m,4H),4.77(s,2H),4.31(t,J=7.5Hz,1H),4.26−4.15(m,2H),3.66(s,3H),1.17−1.06(m,3H),1.05−1.02(m,18H)。
【0109】
メチル3−(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)−2−(4−((((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(11d)(4.39g,8.86mmol)の入ったMeOH(30mL)およびEtOH(50mL)の撹拌溶液に、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)(2.22g,44.29mmol)を加え、溶液を2時間還流させた。固体をろ過し、溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(0から50パーセントEtOAc/ヘキサン)により残留物を精製し、メチル3−アミノ−2−(4−((((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(methyl 3-amino-2-(4-(((triisopropylsilyl)oxy)methyl)phenyl)propanoate)(11e)を得た。
【0110】
メチル3−アミノ−2−(4−((((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(11e)(3.19g,8.74mmol)の入ったCH
2Cl
2(50mL)の撹拌した溶液に、TEA(2.44mL,17.47mmol)および(Boc)
2O(17.47mmol)を加えた。その溶液を室温で4時間撹拌してから、CH
2Cl
2/NaHCO
3(aq)中に注ぎ入れた。水層をCH
2Cl
2でさらに抽出し、乾燥させ(Na
2SO
4)、ろ過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(0から4パーセントEtOAc/ヘキサン)で残留物を精製し、メチル3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(methyl 3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(((triisopropylsilyl) oxy)methyl)phenyl)propanoate)(11f)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ7.32(d,J=7.5Hz,2H),7.22(d,J=7.5Hz,2H),4.86−4.82(m,1H),4.77(s,2H),3.88−3.83(m,1H),3.68(s,3H),3.63−3.57(m,1H),3.51−3.48(m,1H),1.42(s,9H),1.21−1.14(m,3H),1.10−1.08(m,18H)。
【0111】
メチル3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート(11f)(2.07g,4.44mmol)の入ったTHF/MeOH(1:1,40mL)の溶液にNaOH(8.88mL,17.76mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。混合物を1N HClで中和し、EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:EtOAc/ヘキサン=1/3)、化合物3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−((((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパン酸(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(((triisopropylsilyl)oxy)methyl)phenyl)propanoic acid)(11g)(1.84g,92%)を白色の固体として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ7.35(d,J=7.5Hz,2H),7.28(d,J=7.5Hz,2H),6.77(brs,0.5H),4.92(brs,0.5H),4.82(s,2H),3.91−3.80(m,1H),3.59−3.50(m,2H),1.46−1.42(m,9H),1.21−1.14(m,3H),1.10−1.08(m,18H)。
【0112】
(12)合成例12
化合物11の合成スキームは以下のスキーム9に示されるとおりである。
【0113】
スキーム9
【0114】
最終化合物11の合成方法は化合物9と類似する。
【0115】
化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(((triisopropylsilyl)oxy)methyl)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(11h)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ8.25(s,1H),7.95(s,1H),7.50(d,J=7.5Hz,2H),7.45(d,J=7.5Hz,2H),7.37(d,J=7.5Hz,2H),7.33−7.31(m,3H),5.15(brs,1H),4.83(s,2H),3.90(brs,1H),3.68(brs,1H),3.58−3.55(m,1H),1.67(s,9H),1.43(s,9H),1.26−1.14(m,3H),1.10−1.08(m,18H)。
【0116】
化合物tert−ブチル4−(4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(hydroxymethyl)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(11i)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.51(d,J=8.0Hz,2H),7.46−7.44(m,3H),7.39−7.37(m,4H),5.15(brs,1H),3.92(brs,1H),3.67−3.66(m,1H),3.56−3.54(m,1H),1.67−1.64(m,10H),1.43(s,9H)。
【0117】
最終化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)プロペンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-(hydroxymethyl) phenyl)propenamide dihydrochloride)(11)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:8.05(s,2H),7.44(d,J=9.0Hz,2H),7.35(s,4H),7.27(d,J=9.0Hz,2H),4.53(s,2H),4.08(t,J=6.5Hz,1H),3.56(dd,J=6.5,13.0Hz,1H),3.36(dd,J=6.5,13.0Hz,1H)。
【0118】
8.化合物12の合成
(13)合成例13
化合物12の合成スキームは以下のスキーム10に示されるとおりである。
【0119】
スキーム10
【0120】
最終化合物12の合成方法は化合物10と類似する。
【0121】
化合物tert−ブチル4−(4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−((((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(((2,4-dimethylbenzoyl)oxy)methyl)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(12a)は白色の粉末であった。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)8.25(s,1H),7.94(s,1H),7.86(d,J=7.5Hz,1H),7.52(d,J=8.0Hz,2H),7.46−7.44(m,4H),7.41−7.37(m,3H),7.06−7.03(m,3H),5.31(s,2H),5.14(brs,1H),3.93(brs,1H),3.68−3.67(m,1H),3.59−3.55(m,1H),2.60(s,3H),2.37(s,3H),1.67(s,9H),1.43(s,9H)。
【0122】
化合物2−(4−(1−((4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)アミノ)−3−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル2,4−ジメチル安息香酸エステルジヒドロクロリド(4-(1-((4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)amino)-3-amino-1-oxopropan-2-yl) benzyl 2,4-dimethylbenzoate dihydrochloride)(12)は白色の粉末であった。
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ:10.40(s,NH,1H),8.03(brs,NH,3H),8.00(s,2H),7.75(d,J=8.0Hz,1H),7.58(d,J=9.0Hz,2H),7.51(d,J=9.0Hz,2H),7.47−7.44(m,4H),7.12(s,1H),7.09(d,J=8.0Hz,1H),5.26(s,2H),4.13(dd,J=5.5,9.0Hz,1H),3.07−3.02(m,1H),2.47(s,3H),2.29(s,3H)。
【0123】
9.化合物13の合成
(14)合成例14
化合物13の合成スキームは以下のスキーム11に示されるとおりである。
【0124】
スキーム11
【0125】
tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)プロパンアミド)フェニル)−1−H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-(hydroxymethyl)phenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(11i)(100mg,0.19mmol)の入ったCH
2Cl
2(10mL)の撹拌した溶液に、Dess−Martin試薬(166mg,0.37mmol)を加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=25%から50%)で粗生成物を精製し、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−ホルミルフェニル)プロパンアミド)フェニル)−1−H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-(4-formylphenyl)propanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(13a)を白色の粉末として得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)10.01(s,CHO,1H),8.26(s,1H),7.95(s,1H),7.88(d,J=8.0Hz,2H),7.62(brs,1H),7.58−7.53(m,4H),7.46(d,J=8.0Hz,2H),5.12(brs,1H),4.13−4.05(m,1H),3.74−3.70(m,1H),3.60−3.56(m,1H),1.66(s,9H),1.43(s,9H)。
【0126】
4mLの瓶に、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−ホルミルフェニル)プロパンアミド)フェニル)−1−H−ピラゾール−1−カルボキシレート(13a)(52mg,0.10mmol)、およびジオキサン(1.0mL)に入った4M HClを入れた。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、所望の化合物N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−(4−ホルミルフェニル)プロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-(4-formylphenyl)propanamide dihydrochloride)(13)(44mg,90%)を得た。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:9.79(s,CHO,1H),7.94(s,2H),7.84(d,J=8.5Hz,2H),7.53(d,J=8.5Hz,2H),7.39(d,J=8.5Hz,2H),7.25(d,J=8.5Hz,2H),4.19(t,J=7.0Hz,1H),3.60(dd,J=7.0,12.5Hz,1H),3.38(dd,J=7.0,12.5Hz,1H)。
【0127】
10.化合物14の合成
(15)合成例15
化合物14の合成スキームは以下のスキーム12に示されるとおりである。
【0128】
スキーム12
【0129】
tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(7a)(506mg,1.0mmol,1.0eq)およびLawesson試薬(808mg,2.0mmol,2.0eq)をトルエン(5mL)中に入れた混合物を、N
2雰囲気(N
2 atmosphere)下で120℃に加温し16時間加熱を続けた。その反応混合物を冷却して濃縮し、粗化合物tert−ブチル4−(4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンチオアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl) amino)-2-phenylpropanethioamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(14a)を得た(520mg,収率:100%)。さらなる精製はせずに次のステップに用いることができた。LCMS(ES,m/z):[M+H]+=523.3。
【0130】
tert−ブチル4−(4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンチオアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(14a)(520mg,1.0mmol,1.0eq)を1mL MeOHに溶解し、HCl/MeOH(3M,5mL)を加え、室温で3時間撹拌した。その反応混合物を濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH、100%から10%まで)で精製し、粗生成物(110mg)を得た。それをDCMおよびMeOHで結晶化させ、1N HClでpH値を5.0に調製して、N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンチオアミドジヒドロクロリド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-phenylpropanethioamide dihydrochloride)(化合物14)を得た(75mg,収率:2ステップ23%)。それは黄色の固体であった。LCMS(ES,m/z):[M+H]
+=323.2。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6):12.08(s,1H),8.06−7.99(m,5H),7.77(d,J=8.4Hz,2H),7.63−7.59(m,4H),7.41−7.31(m,3H),4.54−4.50(m,1H),3.88−3.78(m,1H),3.31−3.24(m,1H)。
【0131】
11.化合物15の合成
(16)合成例16
化合物15の合成スキームは以下のスキーム13に示されるとおりである。
【0132】
スキーム13
【0133】
tert−ブチル−(4−アミノ−3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)−1H−ピラゾール(tert-butyl-(4-amino-3-(2-(dimethylamino)ethoxy)phenyl)-1H-pyrazole)(200mg,0.85mmol,1.0eq)が入ったCH
2Cl
2(4mL)の溶液にNaHCO
3飽和溶液(2mL,0.4M)を加えた。次いで、チオホスゲン(thiophosgene)(97mg,0.85mmol,1.0eq)をゆっくり加え、3時間撹拌した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去して、粗生成物15aを得た。残留物15a中に、CH
2Cl
2(4.0mL)に入ったtert−ブチル(2−アミノ−2−フェニルエチル)カルバメート(tert-butyl (2-amino-2-phenylethyl)carbamate)(220mg,0.85mmol,1.0eq)およびK
2CO
3(235mg,1.70mmol,2.0eq)を加えた。水で反応を促して起こし、CH
2Cl
2で抽出した。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥させ、抽出液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し(EtOAc/Hex=20%)、化合物tert−ブチル4−(4−(3−(2−(2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−フェニルエチル)チオウレイド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)-1-phenylethyl)thioureido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(15b)を得た(353mg,85%)。それは淡黄色の固体であった。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:8.30(s,1H),8.02(s,1H),7.98(s,1H),7.63(s,1H),7.57(d,J=8.0Hz,2H),7.38−7.34(m,4H),7.30−7.24(m,3H),5.63(s,1H),4.85(s,1H),3.55−3.44(m,2H),1.68(s,9H),1.31(s,9H)。
【0134】
20mLの瓶に、化合物tert−ブチル4−(4−(3−(2−(2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−フェニルエチル)チオウレイド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(15b)(353mg,0.66mmol)および4M HClの入ったジオキサン(3.3mL)を入れた。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、化合物1−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−(2−アミノ−1−フェニルエチル)チオウレアジヒドロクロリド(1-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-(2-amino-1-phenylethyl)thiourea dihydrochloride)(15)を得た(244mg,90%)。それは淡黄色の粉末状であった。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:8.56(brs,2H),7.65(d,J=8.0,2H),7.60−7.58(m,2H),7.48−7.39(m,4H),7.38−7.37(m,1H),6.08(dd,J=9.0,5.0Hz,1H),3.49(dd,J=13.0,9.0Hz,1H),3.36(dd,J=13.0,5.0Hz,1H)。
【0135】
12.化合物16の合成
(17)合成例17
化合物16の合成スキームは以下のスキーム14に示されるとおりである。
【0136】
スキーム14
【0137】
tert−ブチル−(4−アミノ−3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)−1H−ピラゾール(1b)(400mg,1.54mmol,1.0equiv)および(イソチオシアナトメチル)ベンゼン((isothiocyanatomethyl)benzene)(276mg,1.85mmol,1.2eq)がtert−ブタノール(t−BuOH)(10mL)に入った混合物をN
2雰囲気にて85℃で一晩撹拌した。その混合物を冷却し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムで精製し、酢酸エチル/石油エーテル(1:1)で活性化して、tert−ブチル4−(4−(3−ベンジルチオウレイド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-benzylthioureido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(16a)を得た(410mg、収率:65%)。それは黄色の固体であった。LCMS(ES,m/z):[M+H]
+=409.3。
【0138】
tert−ブチル4−(4−(3−ベンジルチオウレイド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(16a)(410mg,1.00mmol,1.0eq)およびCH
3I(214mg,1.51mmol,1.5eq)がアセトン(15mL)に入った混合物をN
2雰囲気にて30℃で3時間撹拌した。その反応混合物をろ過した。ろ過ケーク(filtercake)を収集し、tert−ブチル4−(4−((((ベンジルアミノ)(メチルチオ)メチレン)アミノ)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(((benzylamino)(methylthio)methylene)amino)phenyl)-1H-pyrazole -1-carboxylate)(16b)を得た(370mg,収率:87%)。それは白色の固体であった。LCMS(ES,m/z):[M+H]
+=423.3。
【0139】
tert−ブチル4−(4−((((ベンジルアミノ)(メチルチオ)メチレン)アミノ)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(16b)(370mg,0.88mmol,1.0eq)、シアナミド(cyanamide)(110mg,2.63mmol,3.0eq)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane)(98mg, 0.88mmol,1.0eq)がtert−ブタノール(10 mL)中に入った混合物をN
2雰囲気にて90℃で一晩撹拌し、次いで130℃で3時間撹拌した。その反応混合物を冷卻し、濃縮した。残留物をジクロロメタン(10mL)で処理し、ろ過した。Prep−HPLC(H
2O:CH
3CN=7:3)によりろ過ケークを精製して、1−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−ベンジル−2−シアノグアニジン塩酸塩(1-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-benzyl-2-cyanoguanidine hydrochloride)(16)(53mg,収率:19%)を得た。それは白色の固体であった。LCMS(ES,m/z):[M+H]
+=317.2。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6):9.08(s,1H),8.03(s,2H),7.64−7.62(m,1H),7.57(d,J=8.4Hz,2H),7.32(t,J=7.4Hz,2H),7.28−7.23(m,3H),7.17(d,J=8.8Hz,2H),4.36(d,J=5.6Hz,2H)。
【0140】
13.化合物17の合成
(18)合成例18
化合物17の合成スキームは以下のスキーム15に示されるとおりである。
【0141】
スキーム15
【0142】
4−ブロモ安息香酸(4-bromobenzoic acid)(322mg,1.60mmol)およびtert−ブチル(2−((4−フルオロベンジル)アミノ)エチル)カルバメート(tert-butyl (2-((4-fluorobenzyl)amino)ethyl)carbamate)(430mg,1.60mmol)をCH
2Cl
2(5mL)中に入れ撹拌した溶液に、DIPEA(698μL,4.01mmol)およびHATU(732mg,1.92mmol)を加えた。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。減圧により溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーにより残留物を精製して、tert−ブチル(2−(4−ブロモ−N−(4−フルオロベンジル)ベンズアミド)エチル)カルバメート(tert-butyl (2-(4-bromo-N-(4-fluorobenzyl)benzamido)ethyl)carbamate)(17a)(537mg,75%)を油として得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)7.53(s,1H),7.31−7.29(m,2H),7.10−7.04(m,4H),5.01−4.75(m,1H),4.53(s,2H),3.58−3.19(m,4H),1.44(s,9H)。
【0143】
tert−ブチル(2−(4−ブロモ−N−(4−フルオロベンジル)ベンズアミド)エチル)カルバメート(17a)(537mg,1.19mmol)、tert−ブチル4−(4,41,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(350mg,1.19mmol)、PdCl
2(dppf)(87mg,0.12mmol)およびCs
2CO
3(775mg,2.38mmol)の混合物を密封試験管に入れてから、アルゴン下で混合溶媒(ジオキサン/H
2O=10/1,6mL)を注入し、混合物を90℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、回転蒸発により溶媒を除去し、残留物に水を加え、EtOAc(15mL×3)で抽出した。有機層を合わせたものを塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/Hex=25%から67%)を用いてシリカゲルで残留物を精製して、tert−ブチル4−(4−((2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)(4−フルオロベンジルカルバモイル)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-((2-((tert-butoxycarbonyl)amino)ethyl)(4-fluorobenzyl)carbamoyl)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(17b)を白色の粉末状で得た(385mg,60%)。
1H−NMR(CDCl3,500MHz)8.32(s,1H),7.59(s,1H),7.53(s,1H),7.47(s,2H),7.14−7.04(m,4H),5.07−4.78(m,1H),4.58(s,2H),3.60−3.33(m,4H),1.68(s,9H),1.45(s,9H)。
【0144】
tert−ブチル4−(4−((2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)(4−フルオロベンジルカルバモイル)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(17b)(300mg,0.56mmol)および1,4−ジオキサン(1mL)の混合物に、1,4−ジオキサン(2.78mL)に入った4M HClを加えた。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。残留物をDCM(6mL)で処理し、ろ過した。ろ過ケークを収集して、N−(2−アミノエチル)−N−(4−フルオロベンジル)−4−(1H−ピラゾール−4−イル)ベンズアミドジヒドロクロリド(N-(2-aminoethyl)-N-(4-fluorobenzyl)-4-(1H-pyrazol-4-yl)benzamide dihydrochloride)(17,200mg,87%)を淡黄色の固体として得た。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:7.99(s,2H),7.40−7.32(m,4H),7.04−6.97(m,4H),4.41(s,2H),3.64(s,2H),3.06(s,2H)。
【0145】
14.化合物18の合成
(19)合成例19
化合物18の合成スキームは以下のスキーム16に示されるとおりである。
【0146】
スキーム16
【0147】
tert−ブチル4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(1540mg,5.24mmol)をTHF(15mL)に入れ0℃で撹拌した溶液に、2M NaOH
(eq)(5.24mL,10.47mmol)を加えてから、30%過酸化水素(1.19mL,10.47mmol)を加え、その反応混合物を先ずは0℃で30分撹拌してから、室温で1時間撹拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、DCMで希釈し、pH値が2になるまで2M HCl
(eq)を加えた。有機層を収集し、乾燥させ、減圧下で溶媒を除去して、tert−ブチル4−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-hydroxy-1H-pyrazole-1-carboxylate)(18a)(965mg,100%)を黄色の固体として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:9.28(s,OH,1H),7.51(s,1H),7.45(s,1H),1.52(s,9H)。
【0148】
tert−ブチル4−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(18a)(965mg,5.24mmol)および1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(1-fluoro-4-nitrobenzene)(739mg,5.24)をDMF(10mL)中に入れ撹拌した溶液にK
2CO
3(1447mg,10.47mmol)を加えた。その反応混合物を90℃で12時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=10%)で残留物を精製して、tert−ブチル4−(4−ニトロフェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-nitrophenoxy)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(18b)を得た(479mg,30%)。それは黄色の固体であった。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:8.22(d,J=8.0Hz,2H),8.01(s,1H),7.65(s,1H),7.10(d,J=8.0Hz,2H),1.67(s,9H)。
【0149】
tert−ブチル4−(4−ニトロフェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(18b)(140mg,0.46mmol)の入ったMeOH(5mL)およびEtOAc(5mL)の溶液に、10%Pd/C(49mg,0.046mmol)を加えた。その反応混合物をH
2雰囲気にて室温で2時間撹拌した。混合物をろ過し、回転によりろ液を蒸発させて、tert−ブチル4−(4−アミノフェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-aminophenoxy)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(18c)(118mg,93%)を茶色の固体として得た。
【0150】
3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパン酸(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanoic acid)(114mg,0.43mmol)およびtert−ブチル4−(4−アミノフェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(118mg,0.43mmol)をCH
2Cl
2(25mL)に入れて撹拌した溶液に、DIPEA(187μL,1.07mmol)およびHATU(196mg,0.51mmol)を加えた。。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。減圧により溶媒を除去してから、残留物を分取逆相高速液体クロマトグラフィー(80%ACN,20%H
2O)で精製し、次いで凍結乾燥して、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)フェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanamido)phenoxy)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(18d)(110mg,49%)を白色の粉末として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:7.79(s,1H),7.56(s,1H),7.42(d,=8.0Hz,2H),7.39−7.29(m,5H),6.98(d,J=8.0Hz,2H),5.15(brs,1H),3.89(t,J=5.0Hz,1H),3.70−3.58(m,1H),3.56−3.54(m,1H),1.64(s,9H),1.51(s,9H)。
【0151】
tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)フェノキシ)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(18d)(110mg,0.21mmol)および1,4−ジオキサン(1mL)の混合物に、1,4−ジオキサン(1.05mL)に入った4M HClを加えた。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。残留物をDCM(5mL)で処理し、ろ過した。ろ過ケークを収集して、N−(4−(((1H−ピラゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドジヒドロクロリド(N-(4-((1H-pyrazol-4-yl)oxy)phenyl)-3-amino-2-phenylpropanamide dihydrochloride)(18)(82mg,22%)を白色の固体として得た。
1H−NMR(500MHz,CD
3OD)δ:7.84(s,2H),7.54(d,J=8.5Hz,2H),7.53−7.40(m,4H),7.37−7.34(m,1H),7.02(d,J=8.5Hz,2H),4.13−4.10(m,1H),3.62−3.57(m,1H),3.24(dd,J=5.5,12.5Hz,1H)。
【0152】
15.化合物19の合成
(20)合成例20
化合物19の合成スキームは以下のスキーム17に示されるとおりである。
【0153】
スキーム17
【0154】
密封管に入った4−ブロモ−2−フルオロアニリン(4-bromo-2-fluoroaniline)(1211mg,6.37mmol)、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(1-Boc-4-pyrazoleboronic acid pinacol ester)(1875mg,6.37mmol)、PdCl
2(dppf)(467mg,0.64mmol)およびCs
2CO
3(4153mg,12.75mmol)の混合物に、アルゴン下で混合溶媒(ジオキサン/H
2O=9/1,36mL)を注入し、次いで混合物を80℃で2時間撹拌した。室温まで冷卻した後、回転蒸発により溶媒を除去し、残留物に水を加え、EtOAc(30mL×3)で抽出を行った。有機層を合わせたものを塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/Hex=15%から17%)を用いてシリカゲルで精製し、tert−ブチル4−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-amino-3-fluorophenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate) (19a)(1362mg,77%)を油として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.17(s,1H),7.89(s,1H),7.15(dd,J=2.0,12.0Hz,1H),7.11(d,J=8.0Hz,1H),6.80(t,J=8.0Hz,1H),1.67(s,9H)。
【0155】
3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパン酸(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanoic acid)(346mg,1.31mmol)およびtert−ブチル4−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(19a)(362mg,1.31mmol)をDMF(2mL)中に入れて撹拌した溶液に、DIPEA(569μL,3.26mmol)およびHATU(596mg,1.57mmol)を加えた。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。減圧により溶媒を除去してから、残留物を分取逆相高速液体クロマトグラフィー(80%ACN,20%H
2O)で精製し、次いで凍結乾燥して、tert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)−3−フルオロフェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanamido)-3-fluorophenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate)(19b)(321mg,47%)を白色の粉末状で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.32(t,J=8.5Hz,1H),8.25(s,1H),7.92(s,1H),7.42−7.33(m,5H),7.29−7.26(m,1H),7.19(d,J=11.5Hz,1H),5.12(brs,1H),3.96(s,1H),3.71−3.68(m,1H),3.60−3.58(m,1H),1.67(s,9H),1.43(s,9H)。
【0156】
1,4−ジオキサン(1mL)に溶かしたtert−ブチル4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)−3−フルオロフェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(19b)(315mg,0.60mmol)に、1,4−ジオキサン(4.0mL)に入った4M HClを加えた。その反応混合物を室温で30分超音波処理した。ろ過により白色の粉末を収集し、DCMで洗浄し、乾燥させて、3−アミノ−N−(2−フルオロ−4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−2−フェニルプロパンアミドジヒドロクロリド(3-amino-N-(2-fluoro-4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-2-phenylpropanamide dihydrochloride)(19)(230mg,96%)を得た。
1H−NMR(500MHz,D
2O)δ:8.05(s,2H),7.42−7.38(m,6H),7.28(t,J=8.0Hz,2H),4.18(t,J=7.0Hz,1H),3.58(dd,J=7.0,13.0Hz,1H),3.39(dd,J=7.0,13.0Hz,1H)。LCMS(ES,m/z):[M−2HCl+H]
+=326.1,[M−2HCl+Na]
+=348.1。
【0157】
16.化合物20および化合物21の合成
(21)合成例21
化合物20および化合物21の合成スキームは以下のスキーム18に示されるとおりである。
【0158】
スキーム18
【0159】
4−(4−(3−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−フェニルプロパンアミド)フェニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシレート(tert-butyl 4-(4-(3-((tert-butoxycarbonyl)amino)-2-phenylpropanamido)phenyl)-1H-pyrazole-1-carboxylate) (15g,29.6mmol,1.0eq)の入ったMeOH(150mL)の溶液にHCl/MeOH(150mL)を加えた。その混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をH
2O(50mL)中に溶かし、NaHCO
3水溶液でpH値を9に調整した。混合物をろ過し、ろ過ケークを真空乾燥して、N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミド(N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-phenylpropanamide)(10g,100%)を白色の固体として得た。キラル分割(chiral resolution)により固体を精製して、(S)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミド(20a)および(R)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミド(21a)を得た。
【0160】
分離条件:
カラム:ChiralPak AD-H Daicel chemical Industries, Ltd, 250*30mm I.D.,10μm
移動相A:Supercritical CO
2、移動相B:MeOH(0.1%NH
3H
2O)
A:B=60:40、50mL/分
カラム温度:38℃
ノズル圧力:100Bar;ノズル温度:60℃;蒸発温度:20℃;微調整温度(TrimmerTemp):25℃;波長:220nm
【0161】
H
2O溶液(10mL)に入った(S)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドに濃HCl(2mL)を加え、濃縮して(S)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドジヒドロクロリド((S)-N-(4-(1H-pyrazol-4-yl)phenyl)-3-amino-2-phenylpropanamide dihydrochloride)(20)(2.1g)を得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6):10.55(s,1H),8.20(s,3H),8.13(s,2H),7.65−7.29(m,9H),4.22−4.19(m,1H),3.51(s,1H),3.04−3.01(m,1H)。LCMS:[M+H]
+=307.1。
【0162】
H
2O溶液(10mL)に入った(R)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドに濃HCl(2mL)を加え、濃縮して(R)−N−(4−(1H−ピラゾール−4−イル)フェニル)−3−アミノ−2−フェニルプロパンアミドジヒドロクロリド(21)(2.1g)を得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):10.50(s,1H),8.16(s,3H),8.11(s,2H),7.64−7.29(m,9H),4.20−4.16(m,1H),3.53−3.48(m,1H),3.06−3.00(m,1H)。LCMS:[M+H]
+=307.1。
【0163】
実施例2
生体外効果テスト
A.Rho関連タンパク質キナーゼ(Rho-associated protein kinase, ROCK)に対する抑制効果テスト
上において合成された各化合物のROCKに対する抑制効果をテストした。
【0164】
A−1.方法
1.DMSOで10mMのテスト化合物を1mMに希釈してから、さらに300nMに希釈した。Netarsudil(AR−13324)は市販の眼圧下降薬であり、AR−13503はAR−13324の活性代謝物である。
【0165】
2.上述した300nMのテスト化合物を段階希釈し、濃度100nM、33nM、11nM、3.7nM、1.2nMおよび0.4nMのテスト化合物をそれぞれ得た。
【0166】
3.上述の段階希釈したテスト化合物1μLを、49μLの調整ROCK反応緩衝溶液(Modified ROCK reaction buffer)(0.1M KCl、0.01M MgCl
2、0.1mM EGTAおよび2.25μg/mL ROCK1を含む0.05M Trizma(登録商標)hydrochloride buffer(pH7.5))に加えて実験群サンプルを得た。DMSOを1μL取り、49μLの調整ROCK反応緩衝溶液に加えて、陽性対照群サンプルを得た(最大値=100%)。DMSOを1μL取り、49μLの緩衝溶液(0.1M KCl、0.01M MgCl
2および0.1mM EGTAを含む0.05M Trizma(登録商標) hydrochloride buffer(pH7.5))に加えて、ビヒクル対照群サンプルを得た(最小値=0%)。
【0167】
4.上述にて作製したサンプル20μLを平底の96ウェルプレートに加え、かつ各ウェル中にROCK ATP緩衝溶液20μLを加えた。
【0168】
5.上記96ウェルプレートをオービタルシェーカー上に置き、室温で90分反応させた。
【0169】
6.次いで、40μLのKinase−Glo luminescent kinase assay solution (Promega, RV6712)を、上述した96ウェルプレートに加え、96ウェルプレートをオービタルシェーカー上に置いて室温で10分反応させた。
【0170】
7.SpectraMax M5 microplate readerで96ウェルプレートの各ウェルの冷光値を測定し、以下の式でROCK抑制率(%)を算出した。
最大値=テスト化合物の非存在下、上記方法により測定された値(酵素と基質とが完全に反応した状況下で測定された値を最大値とする)
最小値=酵素の非存在下、上記方法により測定された値(酵素と基質との反応なしに測定された値を最小値とする)
抑制率(%)=(実験群(テスト化合物を加えた群で測定された値)−最小値)/(最大値−最小値)*100%
【0171】
A−2.結果
結果は表2に示されるとおりである。
【0172】
(表2)
注:++++++はIC
50<1nMを表し;+++++はIC
50=1−10nMを表し;++++はIC
50=10〜100nMを表し;+++はIC
50=100−1000nMを表し;++はIC
50>1000nMを表し;+はIC
50>10000nMを表す。
【0173】
B.ミオシン軽鎖キナーゼ−4(myosin light chain kinase 4,MYLK−4)に対する抑制効果テスト
実験の流れはThermoFisher Scientificにより提示されているLanthaScreen Eu Kinase Binding Assay Screening Protocol and Assay Conditionsを参考にした。
【0174】
B−1.材料の作製
100%DMSO中で調製したテスト化合物保存溶液(1mM)に対し3倍段階希釈を10回行って、そのMYLK−4に対するIC
50の測定に備えた。
【0175】
キナーゼ/抗体混合物(Kinase/Antibody Mixture)を予めキナーゼ緩衝液(Kinase Buffer)で2×作用濃度に希釈しておいた。
【0176】
B−2.分析方法
1.白色384マイクロウェルフラットプレート(Greiner, Cat. No. 784207)にキナーゼ緩衝液3.84μLを加えてから、上述したキナーゼ/抗体混合物8.0μLを加え、次いで、トレーサー剤(AlexaFluor labeled Tracer)4.0μLを加えた後、上述の希釈した適度な濃度のテスト化合物160nLを加え、培養プレートを30秒振とうさせた。
【0177】
2.次いで、培養プレートを室温に静置し60分培養してから、蛍光プレートリーダー(fluorescence plate reader)で読み取ってデータを分析した。下式で各ウェルの反応液の発光比を算出した。
発光比(emission eatio, ER)=AF647発光(665nm)/ユーロピウム発光(europium emission)(615nm)
【0178】
また、上記分析において、LanthaScreen Euキナーゼの結合分析の対照群も同時に準備した:抑制0%対照群(0% displacement control)―反応中に既知の阻害剤を含まず、最大発光比(maximum emission ratio)となる;抑制100%対照群(100% displacement control)―最高濃度の既知の阻害剤を含み、最小発光比(minimum emission ratio)となる;ここで既知の阻害剤はSunitinibである。
【0179】
LanthaScreen Eu Kinaseの結合分析の反応成分は表3に示されるとおりである。既知の阻害剤SunitinibのIC
50は19.0nMであり、所期のIC
50の範囲を満たしている。
【0180】
(表3)LanthaScreen Euキナーゼの結合分析の反応成分
【0181】
3.テスト化合物の異なる濃度におけるMYLK−4に対する抑制率は下式により求めることができる:
抑制%=[(ER
抑制0%対照群−ER
サンプル)/(ER
抑制0%対照群−ER
抑制100%対照群)]*100
【0182】
4.上において得られたテストの異なる濃度におけるMYLK−4に対する抑制率に基づいて、テスト化合物のMYLK−4におけるIC
50を算出した。
【0183】
B−3.結果
結果は表4に示されるとおりである。
【0184】
(表4)テスト化合物のMYLK−4 IC
50
注:++++++はIC
50<1nMを表し;+++++はIC
50=1−10nMを表し;++++はIC
50=10−100nMを表し;+++はIC
50=100−1000nMを表し;++はIC
50>1000nMを表し;+はIC
50>10000nMを表す。
【0185】
C.YSK−4に対する抑制効果テスト
実験の流れはThermoFisher Scientificにより提示されているZ’-LYTE Screening Protocol and Assay Conditionsを参考にした。
【0186】
C−1.材料の作製
100%DMSO中で調製したテスト化合物保存溶液(1mM)に対し、3倍段階希釈を10回行って、テスト化合物のYSK−4に対するIC
50の測定に供した。
【0187】
ペプチド/キナーゼ混合物(Peptide/Kinase Mixture)を予めキナーゼ緩衝液(Kinase Buffer)で2×作用濃度に希釈しておいた。
【0188】
ATP溶液を予めキナーゼ緩衝液(50mM HEPES pH7.5,0.01%BRIJ−35,10mM MgCl
2,1mM EGTA)で4×作用濃度に希釈しておいた。
【0189】
現像剤溶液(development reagent solution)は新規PKC脂質混合物(Novel PKC Lipid Mix)であり、それは2mg/mL Phosphatidyl Serine、0.2mg/mL DAGの入った20mM HEPES、 pH 7.4、および0.3% CHAPSを含有している。予め現像緩衝液で10倍に希釈しておいた。
【0190】
C−2.分析方法
1.黒色384ウェルプレート(Corning, Cat. No. 4514)に、上述の希釈した適度な濃度のテスト化合物100nL、キナーゼ緩衝液2.4μLを加えてから、上述のペプチド/キナーゼ混合物5μLを加え、次いでATP溶液2.5μLを加えて、培養プレートを30秒振とうさせた。
【0191】
2.次いで、培養プレートを室温に静置し60分培養した。
【0192】
3.次いで、現像剤溶液5μLを加え、暗所で培養プレートを30秒振とうさせた後、蛍光プレートリーダー(fluorescence plate reader)で読み取ってデータを分析した。
【0193】
また、キナーゼに対して以下の対照群を作製し、それとキナーゼを同一の培養プレートに置いた。
【0194】
(1)0%リン酸化対照群(100%抑制対照群)
最大発光比を0%リン酸化対照群(100%抑制対照群)により確立した。それはATPを含まないため、キナーゼ活性を示さない。当該対照群は現像反応において100%開裂したペプチドを生成した。
【0195】
(2)100%リン酸化対照群
ペプチド基質の配列と同じ合成リン酸化ペプチドを100%リン酸化対照群とした。この対照群は、現像反応において非常に低い割合の開裂したペプチドを生成した。
【0196】
0%リン酸化対照群と100%リン酸化対照群に基づいて、特定の反応ウェル(実験群)で達したリン酸化の割合(%)を算出した。
【0197】
Z’−LYTE Screening Kinaseの結合分析反応に使用したZ’−LYTE基質のタイプはSer/Thr 07ペプチドであり、ATP反応濃度は5μM(YSK4のKm)とした。本分析において対照として用いた既知の阻害剤はスタウロスポリンである。系におけるIC
50は12.7nMであり、所期のIC
50範囲を満たしていた。各ウェルで測定された数値に基づき、下式によりテスト化合物の異なる濃度におけるYSK−4に対する抑制率を算出すると共に、これに基づいてテスト化合物のYSK−4におけるIC
50を算出した。
【0198】
背景蛍光に対する補正=蛍光強度
サンプル−蛍光強度
TCFIコントロール群
【0199】
発光比=クマリン(Coumarin)発光(445nm)/フルオレセイン発光(520nm)(背景蛍光に対する補正値を使用)
%リン酸化=1−(発光比×F
100%−C
100%)/{(C
0%−C
100%)+[発光比×(F
100%−F
0%)]}*100
%抑制=(1−%リン酸化
サンプル/%リン酸化
0%抑制対照群)*100
C100%:100%リン酸化対照群の平均クマリン発光シグナル
C0%:0%リン酸化対照群の平均クマリン発光シグナル
F100%:100%リン酸化対照群の平均フルオレセイン発光シグナル
F0%:0%リン酸化対照群の平均フルオレセイン発光シグナル
DRI:現像反応干渉(Development Reaction Interference)
TCFI:テスト化合物の蛍光干渉(Test Compound Fluorescence Interference)
【0200】
C−3.結果
結果は表5に示されるとおりである。
【0201】
(表5)テスト化合物のYSK4 IC
50
注:++++++はIC
50<1nMを表し;+++++はIC
50=1−10nMを表し;++++はIC
50=10−100nMを表し;+++はIC
50=100−1000nMを表し;++はIC
50>1000nMを表し;+はIC
50>10000nMを表す。
【0202】
前述の結果をまとめるとわかるように、本開示の上述の合成された化合物はROCK、MYLK−4およびYSK4のいずれに対しても抑制効果を備えており、かつ相乗的なターゲット抑制効果を備え、特に化合物7および化合物20において顕著であった。
【0203】
また、現在すでに、抑制されたROCKの発現により、視神経の保護(例えば、Rothschild et al., ROCK-1 mediates diabetesinduced retinal pigment epithelial and endothelial cell blebbing: Contribution to diabetic retinopathy. Scientific Reports. (2017) 7: 8834.およびTanna et al., Rho Kinase Inhibitors as a Novel Treatment for Glaucoma and Ocular Hypertension. Ophthalmology. (2018) 125:1741-1756.参照)、ならびに高眼圧(例えば、Tanna et al., Rho Kinase Inhibitors as a Novel Treatment for Glaucoma and Ocular Hypertension. Ophthalmology. (2018) 125:1741-1756参照)、緑内障(例えば、Tanna et al., Rho Kinase Inhibitors as a Novel Treatment for Glaucoma and Ocular Hypertension. Ophthalmology. (2018) 125:1741-1756参照)、網膜血管閉塞症(例えば、Yi et al., Protective Effects of Intravitreal Injection of the Rho-Kinase Inhibitor Y-27632 in a Rodent Model of Nonarteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (rAION). J Ophthalmol. (2020) 2020: 1485425.およびNourinia R et al., ROCK inhibitors for the treatment of ocular diseases. Br J Ophthalmol 2018;102:1-5.参照)、黄斑変性(例えば、Sadiq et al., Pharmacological agents in development for diabetic macular edema Int J Retin Vitr (2020) 6:29.参照)、黄斑浮腫(例えば、Sadiq et al., Pharmacological agents in development for diabetic macular edema Int J Retin Vitr (2020) 6:29.参照)、糖尿病網膜症(例えば、Nourinia R et al., ROCK inhibitors for the treatment of ocular diseases. Br J Ophthalmol 2018;102:1-5参照)、角膜内皮細胞損傷(Fuchs endothelial corneal dystrophy, FECD)(例えば、Okumura et al., The ROCK Inhibitor Eye Drop Accelerates Corneal Endothelium Wound Healing Invest Ophthalmol Vis Sci. (2013) 54:2439-2502.参照)、角膜繊維症(例えば、Sloniecka et al., Substance P induces fibrotic changes through activation of the RhoA/ROCK pathway in an in vitro human corneal fibrosis model. J Mol Med (Berl). 2019; 97(10): 1477-1489参照)の軽減または治療等の効果が達成され得ることがわかっているため、ROCKを抑制する効果を備える本開示の上述の合成された化合物は、眼科関連の応用、例えば視神経の保護、ならびに/または高眼圧、緑内障、網膜血管閉塞症、黄斑変性、黄斑浮腫、糖尿病網膜症、角膜内皮細胞損傷および/もしくは角膜繊維症の予防ならびに/または治療等にも適用可能である。
【0204】
また、現在すでに、抑制されたROCKの発現により、肺高血圧症(例えば、Zhang et al., Effects of Fasudil on Patients with Pulmonary Hypertension Associated with Left Ventricular Heart Failure with Preserved Ejection Fraction: A Prospective Intervention Study. Can Respir J. (2018) 2018: 314825参照)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、Liu et al., Influence of Rho kinase inhibitor Fasudil on late endothelial progenitor cells in peripheral blood of COPD patients with pulmonary artery hypertension. Bosn J Basic Med Sci. (2014) 14(1):40-4参照)、特発性肺線維症(例えば、Knipe et al., The Rho Kinase Isoforms ROCK1 and ROCK2 Each Contribute to the Development of Experimental Pulmonary Fibrosis. Am J Respir Cell Mol Biol. (2018) 58(4): 471-481.参照)、肺気腫(例えば、Bewley et al., Differential Effects of p38, MAPK, PI3K or Rho Kinase Inhibitors on Bacterial Phagocytosis and Efferocytosis by Macrophages in COPD. PLoS One. (2016) 11(9): e0163139.参照)、肺がん(例えば、Vigil et al., ROCK1 and ROCK2 are Required for Non-Small Cell Lung Cancer Anchorage-Independent Growth and Invasion. Cancer Res. (2012) 15: 72(20).参照)の軽減または治療等の効果が達成され得ることもわかっているため、ROCKを抑制する効果を備える本開示の上述の合成された化合物は、肺に関連する疾病または症状、例えば肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症、肺気腫および/もしくは肺がんの予防ならびに/または治療等に適用可能である。
【0205】
実施例3
正常なウサギの眼圧下降モデルにおける最大効果(maximal effect, Emax)投与量の評価
A.化合物20
1.方法
動物:オスのニュージーランド白ウサギ(n=7/各群);
テスト化合物の処方:0.01%化合物20;0.03%化合物20;0.1%化合物20;
投薬:各実験動物の右眼(投与眼)にテスト化合物50μLを滴下し、左眼(対照眼)にビヒクル(vehicle)(テスト化合物を含まない)50μLを滴下した。上述した3種の処方を毎日1回、連続3日投与した。
【0206】
1日目および3日目の投与前(0時間目)および投与2、4、6および8時間後にTono−Vet(iCare)で各動物の眼圧を測定した。
【0207】
2.結果
結果は
図1Aおよび
図1B、ならびに表6および表7に示されとおりである。
【0208】
(表6)投与1日目の眼圧測定結果
最大眼圧下降度%=(対照眼の眼圧−投薬眼の眼圧)/対照眼の眼圧*100
【0209】
(表7)投与3日目の眼圧測定結果
最大眼圧下降度%=(対照眼の眼圧−投薬眼の眼圧)/対照眼の眼圧*100
【0210】
図1Aおよび表6は投与1日目の眼圧測定結果を示している。
図1Bおよび表7は投与3日目の眼圧測定結果を示している。
【0211】
結果より、化合物20は眼圧下降効果の面で用量依存作用(dose dependent effect)を示し、0.03%化合物20を投与した群と0.1%化合物20を投与した群との眼圧下降度および傾向が近いことがわかった。
【0212】
また、3日連続で0.03%化合物20を投与した群では、薬効の蓄積の現象がわずかにあった(3日目は1日目の眼圧下降度に比べて平均およそ1mmHg増加した)(表6および表7参照)が、0.03%化合物20を投与した群の眼圧下降度と0.1%化合物20を投与した群の眼圧下降度とは近いものであった(表7参照)。この結果に示されるように、化合物20は濃度0.03%ですでにこのモデルの眼圧テストの限界に近付くはずであるため、それが示す薬効(Emax)の蓄積の差は大したものではない。
【0213】
本実験で示されたデータは、すでに不合格のデータを除き(1日目の両眼の眼圧差≧2mmHg(n=1)および3日目投薬前の両眼の眼圧差>5mmHgであるウサギ(n=1)は除いている)、かつ反跳的な高眼圧のデータ(n=3)を除いたものである。各群のn値≧3であり;0.01%化合物20を投与した群のn値は6であった。
【0214】
上述した結果からわかるように、濃度0.03%がすでに、化合物20の正常眼圧ウサギモデルにおける最大効果(maximal effect, Emax)投与量であると思われる。
【0215】
B.化合物4、5、7、8、11、12および14
化合物20に対するのと類似の方法で、化合物4、5、7、8、11、12および14の正常眼圧ウサギモデルにおける最大効果投与量を確認した。
【0216】
結果より、化合物4、5、7および8の最大効果投与量はいずれも1%であり、化合物11、12および14の最大効果投与量はそれぞれ0.5%、0.25%および0.5%であることがわかった。
【0217】
実施例4
正常眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降効果の評価
A.化合物20
1.材料および方法
実験動物:ニュージーランド白ウサギ、オス、体重約2キロ。ニュージーランド白ウサギは恵鈞養殖場から購入した。1週間の検疫期間の後、温度16〜22℃および相対湿度30〜70%(Relative Humidity,RH)、昼8時間/夜16時間の環境条件で、瑞徳生物科技社にて飼育した。
【0218】
実験方法:
(1)眼圧下降効果の評価
12匹のニュージーランド白ウサギ(2.0〜4.0kg)の体重を量り、グループ分けした後(各グループn=3〜6)、ウサギを布で包んで固定した。ウサギが落ち着いたら、その右眼の下瞼を下に引き、テストサンプル50μL(0.1%または0.03%化合物20を含む点眼薬)をウサギの右眼結膜嚢内に滴下し、瞼を閉じ、少なくとも2分ウサギを安定状態に保って、頭を振り点眼薬が眼から流れ出してしまわないようにし;左眼にはビヒクル(テスト化合物を含まない)を投与して対照群とした。0.02%AR−13324をベンチマーク(benchmark)とし、テスト化合物の薬効の競合性を評価した。眼圧検出の時点は投薬前(0時間)および投薬後1、2、4、6および8時間の時点とした。
【0219】
(2)刺激性の評価
眼圧の測定が完了したら、ウサギの眼の外観の写真を撮影し、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development, OECD)の定める眼刺激性試験ガイドライン(OECD/OCDE 405)に従って、テスト物質がウサギの眼の角膜、虹彩または結膜に対して引き起こす刺激状態(adverse event)を評価した。
【0220】
OECD/OCDE 405の角膜、虹彩または結膜に対する採点方式は表8に示されるとおりである。
【0221】
(表8)眼の刺激のグレード
可能性としての最大値:4
*角膜混濁のエリアに注意
【0222】
(3)角膜の観察
0.1%化合物20の点眼薬をテストサンプルとし、実験方法は上の「(1)眼圧下降効果の評価」で記載した実験方法と同じとした。7日連続で投薬(1日1回)した後、細隙灯で角膜の状態を観察した。
【0223】
(4)投薬後に房水(aqueous humor,AH)中に存在する候補薬剤の含量の分析
正常なウサギに化合物20を投与し、異なる時点にそれぞれ化合物の房水中における含量を確認した。
【0224】
2.結果
眼圧下降効果の評価の結果は
図2に示されるとおりである。
【0225】
図2からわかるように、0.1%化合物20を含む点眼薬および0.03%化合物20を含む点眼薬の最大効果(Emax)は投薬から6〜8時間後に現れ、その最大眼圧下降度は約4.4〜4.9mmHgであり、眼刺激性は軽微なものであった。
【0226】
また、この結果は、正常眼圧ウサギモデルにおいて、0.03%化合物20を含む点眼液で、すでに最大眼圧下降作用に達することも示した。
【0227】
眼刺激性評価の結果は
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示されるとおりである。
【0228】
図3Aおよび
図3Bからわかるように、化合物20は、最大効果投与量(0.1%)での眼刺激性がAR−13324(0.02%)より低かった。
【0229】
また、
図3Cに示されるように、連続7日間投薬しても、角膜には依然として損傷および混濁はなかった。
【0230】
化合物20の投薬後に虹彩および毛様体ならびに房水中に存在する含量の分析結果は
図4に示されるとおりである。虹彩および毛様体については、化合物20の濃度を単位ng/gで測定し;房水については、化合物20の濃度を単位ng/mLで測定した。
【0231】
図4からわかるように、投薬後、化合物20の房水における含量はROCK抑制に必要な含量に達していた。
【0232】
B.化合物4、5、7、8、11、12および14
1.方法
(1)眼圧下降効果の評価
化合物20に対するのと類似する方法で、化合物4、5、7、8、11、12、14、20および21(最大効果投与量を使用)の正常眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降効果を確認した。
【0233】
(2)安全マージン(safety margin)テスト
化合物7を代表として用い、2%化合物7を含む点眼薬をウサギの眼に投与した(1日3回、1回ごとに3時間の間隔をあける。投薬前および1回ごとの投薬1時間後に観察)。また、0.04%化合物7を含む点眼薬をウサギの眼に投与した(1日1回。投薬前ならびに投薬1時間後および6時間後に観察)。上述した経済協力開発機構の定める眼刺激性試験ガイドラインOECD/OCDE 405に従って、化合物7の眼刺激性に対して評価を行った。
【0234】
2.結果
眼圧下降効果の評価の結果は表9に示されるとおりである。
【0235】
(表9)眼圧下降効果の評価の結果
【0236】
安全マージン(safety margin)テスト結果は
図5および表10に示されるとおりである。
【0237】
(表10)安全マージンテスト結果
【0238】
図5および表10からわかるように、AR−133247は、治療指数が2であるとき、OECD405の合計スコアは4であり、一方、化合物7は、治療指数が3であるときに、OECD405の合計スコアは2であり、よって化合物7の安全マージンはAR−13324よりも優れている。
【0239】
実施例5
マカクザル動物モデル
1.材料および方法
0.1%または0.03%化合物20を含む点眼薬を正常なマカクザルに投与した。0.02%AR−13324を基準とし、テスト化合物の薬効の競合性を評価した。気動眼圧計(Model 30(商標) Pneumatonometer)で動物の眼圧を測定した。眼圧測定前に動物に麻酔をかけた。それぞれ局部(topical)に投与した後(1日1回)、所定の時間に動物の眼圧を測定した。
【0240】
2.結果
結果は
図6に示されるとおりである。
【0241】
図6からわかるように、化合物20は、正常な眼圧のマカクザルにおいて、AR−13324と同等またはより優れた眼圧下降作用を示し、かつピンクアイ等の明らかな副作用はなかった。
【0242】
実施例6
高張食塩水(hypertonic saline)で誘発した高眼圧ウサギモデル(急性高眼圧モデル)における眼圧下降効果の評価
1.材料および方法
実験動物:ニュージーランド白ウサギ、オス、体重2.0〜3.0kg。試験に先立ち、ニュージーランド白ウサギを台湾で承認を受けた実験動物ウサギ飼育場から購入し、国立交通大学動物センターにて飼育した。
テストサンプル:0.1%化合物20を含む点眼薬
陰性対照群(negative control)1:生理食塩水
陰性対照群2:テスト物質を含まないビヒクル(5%マンニトール(mannitol)、20mMホウ酸(boric acid)および0.125%ノノキシノール−9(nonoxynol-9)含有)
【0243】
実験方法:オスのニュージーランド白ウサギの体重を量りグループ分けした後、麻酔をかけた。160μLの高張食塩水(5% NaCl)を麻酔状態にあるウサギの左右の眼の硝子体に注入し、ウサギの眼を高眼圧状態とした。次いで、50μLの生理塩水(0.9% NaCl)、0.1%化合物20を含む点眼薬、化合物20の点眼薬を調製するのに用いるビヒクル(化合物20を含まない)および0.02% AR−13324を含む点眼薬を各群のウサギの左右の眼にそれぞれ滴下した。眼圧検出(IOP)時点を、麻醉前(0時間)および投与0.5、1、1.5、3および5時間後の時点とした。生理食塩水およびテスト物質を含まないビヒクルを陰性対照群とし、0.02% AR−13324を含む点眼薬をベンチマーク(benchmark)として、化合物20の高張食塩水誘発高眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降効果を評価した。
【0244】
2.結果
結果は
図7および表11に示されるとおりである。
【0245】
(表11)高眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降テストの結果
最大眼圧差:最大反応を記録した時点における個体の眼圧の示度と陰性対照群1(生理食塩水)の平均眼圧の示度との差(J Ocul Pharmacol Ther. 2010 Apr;26(2):125-132)
【0246】
高張食塩水誘発高眼圧ウサギモデルにおいて、0.1%化合物20を含む点眼薬は眼圧を約18.0±6.8mmHg下げることができ、0.02% AR−13324を含む点眼薬は眼圧を約7.7±4.2mmHg下げたことが、結果により示された。化合物20の眼圧下降効果が、AR−13324に比べて明らかに優れていることがわかる(t−test,p<0.05)。ビヒクルは生理食塩水に比べ、明らかな統計的差異(t−test)はなかった。またAR−13324も、生理食塩水またはビヒクルに比べ、明らかな統計的差異(t−test)はなかった。
【0247】
実施例7
磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデル(眼圧>30mmHgの高眼圧モデル)における眼圧下降効果の評価
落屑緑内障(exfoliation glaucoma, XFG)は原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma)よりも重度であると認められている。落屑緑内障と原発開放隅角緑内障の最大眼圧(38.2mmHg vs 26.9mmHg)、最小眼圧(24.7mmHg vs 18.4mmHg)および平均眼圧変化(13.5mmHg vs 8.5mmHg)には、統計学上明らかな差異がある。また、落屑症候群(exfoliation syndrome)の発症を防止する、またはその進行を遅らせることのできる食事療法、薬剤またはその他の介入処置で知られているものは現在まだ無い(Progress in Retinal and Eye Research Vol. 19, No. 3, pp. 345 to 368, 2000)。上述からわかるように、落屑緑内障の眼圧は>30mmHgにも達し得るが、目下のところこれに対する有効な薬剤は無い。よって、ここに眼圧>30mmHgの高眼圧モデルを提供し、本開示の化合物の落屑緑内障および眼圧>30mmHgの高眼圧の治療における使用の可能性について評価する。
【0248】
A.化合物20
1.材料および方法
実験動物:ニュージーランド白ウサギ、オス、体重2.0〜3.0kg。試験に先立ち、ニュージーランド白ウサギを恵鈞養殖場から購入し、国立交通大学動物センターにて飼育した。
テストサンプル:0.03%または0.1%化合物20を含む点眼薬
陰性対照群1:テスト化合物20を含まないビヒクル(5%マンニトール、20mM ホウ酸および0.125%ノノキシノール−9含有)
陰性対照群2:テスト化合物AR−13324を含まないビヒクル(4.7% D−マンニトールおよび0.05%ホウ酸を含む)
【0249】
実験方法:オスニュージーランド白ウサギの体重を量り、グループ分けした後、Zoletil 50 0.2mL/kgで麻酔をかけた。50μLの磁気ビーズ溶液(50mg/mL、磁気ビーズ粒径10μm)を麻酔状態にあるウサギの左右の眼の前眼房中に注入し、ウサギの眼を高眼圧状態とした。前房注射が完了したら即、眼の周囲に強力ルビジウム鉄マグネットリングをはめて10〜20分処理し、磁気ビーズで房水の排出組織を完全に塞ぐようにした。抗生物質で眼球を消毒した後、保湿用の眼軟膏で眼球を回復させ、眼圧が上昇するのを待った。約3日後、眼圧は>30mmHgの高眼圧に達し、少なくとも10日間持続した。目標の眼圧>30mmHgの高眼圧に達した後、0.03%または0.1%化合物20を含む点眼薬(右眼)、化合物20の点眼薬を調製するのに用いるビヒクル(化合物20を含まない)(左眼)、0.02% AR−13324を含む点眼薬(右眼)、およびAR−13324の点眼薬を調製するのに用いるビヒクル(AR−13324を含まない)(左眼)をそれぞれ一滴(約35μL)ずつ各群のウサギの左右の眼にさした。眼圧検出(IOP)の時点は、投与前(0時間)および投与2、4、6および8時間後の時点とし、連続2日間実験を行った。0.02% AR−13324を含む点眼薬をベンチマークとし、化合物20の磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデル(眼圧>30mmHgの高眼圧モデル)における眼圧下降効果を評価した。
【0250】
2.結果
結果は表12および
図8に示されるとおりである。
【0251】
(表12)化合物20の磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降のテスト結果
【0252】
結果より、磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデル(眼圧>30mmHgの高眼圧モデル)において、0.03%化合物20を含む点眼薬は眼圧を約5.7±0.6mmHg下げることができ(約15.3%下降)、0.1%化合物20を含む点眼薬は眼圧を約12.1±1.4mmHg下げることができた(約28.8%下降)ことがわかった。つまり、0.03%化合物20を含む点眼薬および0.1%化合物20を含む点眼薬の眼圧下降効果はいずれも、0.02% AR−13324を含む点眼薬(眼圧を約4.3±1.4mmHg下げた(約11.0%下降))よりも優れ、かつ0.1%化合物20を含む点眼薬の眼圧下降効果は、0.02% AR−13324を含む点眼薬の2倍以上にもなった。
【0253】
B.化合物7
化合物20に対するのと類似する方法で、化合物7(最大効果投与量0.5%および1%を使用)の正常眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降効果を確認した。
【0254】
結果は表13に示されるとおりである。
【0255】
(表13)化合物7の磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデルにおける眼圧下降テスト結果
【0256】
表13からわかるように、磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデル(眼圧>30mmHgの高眼圧モデル)において、0.5%化合物7を含む点眼薬および1%化合物7を含む点眼薬の眼圧下降効果も、0.02% AR−13324を含む点眼薬よりも優れており、このうち1%化合物7を含む点眼薬の眼圧下降効果は0.02% AR−13324を含む点眼薬の3倍以上にもなった。
【0257】
実施例8
1.MYLK−4の細胞における発現
(1)方法
ヒト線維柱帯(Human Trabecular Meshwork,HTM)細胞(Cat. No. 6590)をScienCell Research Laboratoriesから入手した。HTM細胞を線維柱帯細胞培地(Trabecular Meshwork Cell Medium, TMCM)(Cat. No. 6591)中に維持した。TMCMは、500mL基礎培地、10mL FBS(Cat. No. 0010)、5mL線維柱帯細胞増殖添加剤(TMCGS,Cat. No. 6592)および5mLペニシリン/ストレプトマイシン溶液(P/S,Cat. No. 503)を配合してなる。細胞増殖が70〜80%の飽和に達した後、50μg/mLのデキサメタゾン(dexamethasone)(Cat. No. 4902, Sigma)でHTM細胞を一晩処理した。
【0258】
ウエスタンブロッティングにより細胞溶解物中のMYLK4およびGAPDHの発現を分析した。先ず、細胞を収集し、1×RIPA(50mM Tris−HCl,pH7.4、150mM NaCl、0.25%デオキシコール酸、0.1%NP−40、1mM EDTA,ホスファターゼ阻害剤とプロテアーゼ阻害剤との混合物)で洗浄した。次いで、SDS−PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis,ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で細胞溶解物を分離し、PVDFメンブレン(iBlot(商標)2 Transfer Stacks,ポリフッ化ビニリデンメンブレン,Invitrogen)に転写した。メンブレンに対し、1次抗体(マウス抗MYLK4抗体(1:1000、Cat. No. SAB1412951)およびマウス抗GAPDH抗体(1:1000、Cat. No. G8795))で免疫ブロットを行った。GAPDHをローディング対照群(loading control)とした。次いで、メンブレンを1X TBSTで3回洗い流した。次いで、メンブレンを2次抗体(Cat. No. 111-0350003, Cat. No. 111-035-164)と室温で1時間培養した。増強された化学発光(WBKLS0500, Millipore)検出システム(Fisher Scientific, US)により、メンブレンを可視化した。
【0259】
(2)結果
結果は
図9に示されるとおりである。
【0260】
図9からわかるように、デキサメタゾンで処理したHTM細胞(疾患状態の細胞)のMYLK−4発現量は正常なHTM細胞に比べて高かった。
【0261】
2.MYLK−4の磁気ビーズ誘発疾病ターゲット組織における発現
(1)方法
50μLの磁気ビーズ溶液(50mg/mL、磁気ビーズ粒径10μm)を麻酔状態下のウサギの左右の眼の前房に注入し、ウサギの眼を高眼圧状態とした。磁気ビーズ溶液で処理していないウサギを対照群とした。後にウサギを犠牲死させ、眼球を取り出し、組織病理分析を行った。
【0262】
組織病理の判読法:
顕微鏡:MoticEasyScan
顕微撮影システム:MoticEasyScan
【0263】
判読法:
ウサギ眼球パラフィン組織切片の免疫組織化学染色(immunohistochemical, IHC staining)を行って、眼球線維柱帯(trabecular meshwork)に対し結果判読をした上で、判読結果スコアシートおよび異なる倍率の顕微鏡写真を提供するよう、遠見生物科技社に委託した。
【0264】
取り出した眼球組織をホルマリン固定した後、脱水し、パラフィン包埋を行ってから、3μm厚のパラフィン組織切片を作った。IHC染色のバイオマーカーはMYLK−4およびMLC−2とした。
【0265】
検体所で作製された組織病理切片に基づいて、それぞれ20倍、40倍、100倍、200倍および400倍の顯微鏡で組織の病巣観察および記録を行った。病巣の重症度、分布範囲およびそれが占める組織の割合に基づいて、INHAND(International Harmonization of Nomenclature and Diagnostic Criteria)により推奨される5段階の評定法を参照に病巣の採点を行った:グレード0は明らかな病理変化が無く、病巣が組織全体の1%以下を占めることを表し;グレード1は疾病が極微(minimal,1〜5%)であることを表し;グレード2は疾病が軽い(mild, 6〜25%)であることを表し;グレード3は疾病が中度(moderate, 26〜50%)であることを表し;グレード4は疾病が中重度(moderately severe, 51〜75%)であることを表し;グレード5は疾病が重度(severe/high, >76%)であることを表す。
【0266】
(2)結果
免疫組織化学染色の結果は
図10に示すとおりであり、採点結果は表14に示されるとおりである。
【0267】
(表14)免疫組織化学染色の採点結果
【0268】
図10および表14からわかるように、疾病状態の細胞(デキサメタゾンで処理したHTM細胞)または疾病動物ターゲット組織(磁気ビーズ誘発ウサギ眼)のいずれにおいても、MYLK−4の発現量は正常細胞および組織よりも高く、よって、MYLK−4抑制効果を有する本開示化合物は、ROCK抑制作用によるだけでなく、MYLK−4を抑制することによっても有効に眼圧を下降させ得ることが推測される。
【0269】
前述した実験結果をまとめるとわかるように、AR−13324がROCKのみをターゲットするのに比して、本開示の化合物20はROCK、MYLK−4およびYSK−4を同時にターゲットとすることができる。また、高張食塩水誘発高眼圧ウサギモデル(急性高眼圧モデル)および磁気ビーズ誘発高眼圧ウサギモデル(眼圧>30mmHgの高眼圧モデル)において、本開示の化合物20の眼圧下降効果はいずれもAR−13324より優れていた。また、本開示の化合物20は、最大効果投与量において、AR−13324に比べ刺激性が低かった。
【0270】
好ましい実施形態により本発明を上のように開示したが、それらは本発明を限定するものではなく、任意の当業者は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、いくらかの変更および修飾を加えることができる。よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義したものを基準とすべきである。